MabGenesis(653a)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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MabGenesis(653a)の株価チャート MabGenesis(653a)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 

MabGenesisは、自社で構築したイヌ及びネコのファージディスプレイ抗体ライブラリー(注1、2)とモノクローナル抗体単離技術(注3、4)をビジネスの基盤として、創業以来、ペット用抗体医薬品(注5)の創出に取り組んでおります。MabGenesisの保有する抗体ライブラリーと単離技術は、従来困難とされていた創薬標的抗原(注6)に対するモノクローナル抗体の提供を可能とするものです。MabGenesisは、自社主導の研究開発と動物用医薬品企業等との共同研究を事業の両輪として、動物用抗体医薬領域での創薬活動を推進しております。なお、MabGenesisは、医薬品の研究開発事業のみの単一セグメントであります。

 

(1)MabGenesisのビジネスモデル

 ① ビジネスモデルの概略

 MabGenesisは、以下の事業系統図で示しますように、MabGenesis保有の抗体ライブラリーより取得する抗体について、その開発・製造・販売する権利を製薬企業に導出(注7)することで対価を得ております。

 

   

図1.MabGenesisの事業系統図

 

MabGenesisは、藤田医科大学及び宮崎大学が保有するファージディスプレイ抗体技術に関するノウハウの独占実施権許諾を受けて、ペット(イヌ、ネコ)用抗体医薬品にフォーカスしたバイオ医薬品の研究開発を行う企業として創業しました。創業後の早い段階でイヌ及びネコそれぞれのファージディスプレイ抗体ライブラリーを構築することで、MabGenesisの基盤アセットを確立しました。MabGenesisは、これらの抗体ライブラリーから独自の抗体単離技術(「(2)MabGenesisの基盤技術」参照)を用いて取得する創薬標的抗原に対する抗体の開発・製造・販売の権利を製薬企業に導出することで収益を得ています。なお、取得した抗体の特性を評価する過程で必要となる各種試験は、大学等の公的研究機関との共同研究や、医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization: CRO)(注8)への業務委託も活用しデータを取得しています。

MabGenesisでは、抗体を取得する研究の総体をプロジェクトと称します。MabGenesisのプロジェクトは、MabGenesisが設定する標的抗原に対してMabGenesisが単独で抗体を取得するもの(以下、「自社プロジェクト」)と、製薬企業との合意に基づいて設定する標的抗原に対して抗体を取得するもの(以下、「共同研究プロジェクト」)とがあります。自社プロジェクトでは、抗体を取得後、一定の前臨床試験(注9)をMabGenesis主導で実施したのち開発から製造販売までを実施できる製薬企業(以下、「パートナー」)への導出のための事業開発活動を行います。一方、後者の場合は、MabGenesisの基盤技術を評価するパートナーと標的抗原及び取得する抗体の品質条件について同意した共同研究契約を締結後、抗体取得(共同研究)を開始し、品質条件を満たす抗体は、契約に基づきパートナーへ導出します。

 

 図2に現時点におけるプロジェクトの一覧を示します。

 ヒト臨床段階フェーズ1、フェーズ2に相当する動物用医薬品の前臨床段階に本書提出日現在7件のプロジェクトがあり、うち4件はパートナーであるCeva Santé Animale S.A.(以下「Ceva社」)、Virbac S.A.(以下「Virbac社」)、日本曹達(株)及び共立製薬(株)へ、抗体の研究、開発、製造、販売に関する権利を導出済であり、各パートナーが開発を進めております。このうちVirbac社と日本曹達(株)に対しては自社プロジェクトで取得した抗体の導出で、Ceva社と共立製薬(株)に対しては共同研究プロジェクトで品質条件を満たす抗体の取得に成功し、その権利を導出したものです。

 探索段階にある11件のペット用抗体医薬品プロジェクトのうち10件は国内外の大手動物薬企業との共同研究プロジェクトであり、進捗に応じたマイルストーン受領条件を定めた契約に基づいて研究を進めております。また、すい臓がんを適応としたヒト用抗体は国内公的研究機関との共同研究を実施中です。

 共同研究プロジェクト及び導出済プロジェクトについては、動物種、標的分子、適応疾患、開発ステージ等に関する具体的な内容は、提携先の重要な研究開発上の機密情報に該当する場合がありパイプライン情報を明示しておりません。また、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載する各契約との対応関係についても、秘密保持上の理由から明示しておりません。

 

 

 

 

 

図2.MabGenesis進行中プロジェクトの一覧(2026年8月末現在)

 

  自社プロジェクト及び共同研究プロジェクトの契約によって得られる収益の構造は、以下のとおりです。

 

表1.MabGenesisの収益構造

収益の種類

内容

契約時一時金

アップフロントとも呼ばれ、契約締結時に受領する収入

研究マイルストーン

共同研究の進捗に応じて受領する収入

開発マイルストーン

導出後、研究開発の進展や承認取得に応じて受領する収入

販売ロイヤリティ

製品の売上金額の一定料率を受領する収入

販売マイルストーン

製品の年間売上が所定の金額に達した際に受領する収入

 

 共同研究プロジェクトでは、1つの標的抗原に対してはパートナー1社とのみ独占的な共同研究契約を結び、同一の標的抗原に関する共同研究を複数のパートナーと実施しないように管理しております。また、パートナーの経営判断等により共同研究プロジェクトが中止される場合には、パートナーに付与した標的抗原に対する独占的権利は消滅し当該プロジェクトはMabGenesisの判断により自社プロジェクトとしてMabGenesisが継続できる旨を可能な限り契約で定めております。これまでに2件の共同研究プロジェクトがパートナー企業の戦略的な判断で中止に至りましたが、現在自社プロジェクトとして研究・開発を継続しております。

 

② ビジネスモデル選択の背景

 MabGenesisは、以下の理由により、現在はペット用、具体的にはイヌ用及びネコ用の抗体医薬品の研究開発に注力しております。

a) ペット用医薬品市場は現在世界的に急速に拡大していること

世界的にペット飼育数は増加傾向にあり、中でもペット用医薬品の主要市場である欧米においては、イヌ、ネコそれぞれ人口の20~25%に相当する約1億8,000万頭が飼育されています。また、中国、ブラジルにおいても5,000万頭以上のイヌ、数千万頭のネコが飼育されています(出典:Pet Population in Major Markets, HealthforAnimals)。

 

図3.世界のペットの飼育頭数

 

近年のペットの家族化と飼育環境の改善による長寿化に伴い、獣医療、医薬品、フード・サプリ等のペットケア関連市場は、2023年の3,200億米ドルから2030年には5,000億米ドルに達すると予測されています(Bloomberg, March 24, 2023)。その中でもペット用医薬品の世界市場は、年成長率11.1%で拡大が見込まれており、2034年には670億米ドルに達すると予測されています(出典:Grand View Research 2025)(図4)。また、主要慢性疾患である、イヌアトピー性皮膚炎、ネコ慢性腎疾患、イヌ変形性関節症(関節痛)、イヌがんの獣医療の主要市場である欧米のマーケットポテンシャルを、参考文献(Veterinary Medicine; Research and Reports (2024), International Renal Interest Society (IRIS), Journal of American Veterinary Medical Association (2010), American Veterinary Medical Association, Cancer in Pets) に基づき、ペット数(1億8,000万頭、15歳以上のネコ数1,800万頭)、罹患率(15~70%)、受診率(20%)、年間治療費用(2,400米ドル)としてMabGenesisで推計したところ、それぞれ129.6億米ドル、60.5億米ドル、172.8億米ドル、216.0億米ドルと算定され、いずれも高いマーケットポテンシャルがあることが想定されます。

 

図4.ペットケア及びペット用医薬品の市場規模

 

b) 世界の大手動物薬企業がペット用抗体医薬の研究開発に活発に取り組んでいること

既にヒト医療において約220種類が製造販売され有効な治療形態としての地位が確立されている抗体医薬品は、その有効性、安全性及び作用時間の長さ(利便性)の観点と、近年の製造技術の進歩(製造コストの低下)により、ペットへの応用が検討されてきました。2016年末に、米国Zoetis社が世界初のペット用抗体医薬品であるサイトポイントⓇ(イヌのアトピー性皮膚炎及びアレルギー性皮膚炎治療薬)の販売を開始し、2022年には世界売上が6.3億米ドルに達しました(出典:The Business Research Company)。その後Zoetis社が製造販売開始したネコ及びイヌ用の変形性関節症に対する抗体医薬品であるソレンシア®とリブレラ®は、2024年には世界で合わせて5.81億米ドルの売上を記録し、ペット用抗体医薬品のポテンシャルの大きさが証明されました(出典:Fourth quarter and 2024 full year financial results, Zoetis Inc.)。ペット用抗体医薬品は、現時点で、欧米ではZoetis社が5品目、業界2位のMSD Animal Health (MAH)社が1品目、業界4位の米Elanco社が2品目と合計8品目が販売されており(表2)、本邦においてはZoetis社の3品が販売されています。Grand View Research, Inc.の最新のレポートによれば、世界のペット用抗体医薬品市場規模は2034年までにグローバルで約61億米ドルに達すると予測されており、2024年から2034年にかけて年成長率(CAGR)18.1%で拡大する見込みです(図5)。

 

図5.イヌ・ネコ用抗体医薬品市場の成長性

 

上述のZoetis社のイヌ、ネコ用抗体医薬品の爆発的な売り上げと市場規模の拡大に呼応し、現在、世界の大手動物薬企業は一斉にペット用抗体医薬の研究開発に活発に取り組んでいます。例えばMabGenesisが共同研究契約又は譲渡契約を締結した業界第2位のMAH社、3位のBoehringer Ingelheim Animal Health(BIAH)社、5位のCeva Santé Animale社、6位のVirbac社及び11位の共立製薬(株)はペット用抗体医薬の研究開発を活発的に推進しています(表2)。

 

c) ペット用抗体医薬品(完全イヌ型抗体、完全ネコ型抗体)(注10,11)創出のための基盤技術を有する企業が限られていること

上述のように、現在、世界の大手動物用医薬品企業の多くは、成長著しいペット用抗体医薬品を重点領域として位置付けております。しかし、医療目的の抗体取得のための基盤技術確立には高い専門性と経験・ノウハウが必要とされるため、大手動物用医薬品企業のほとんどは抗体の創製技術の内製化に至っておりません。

そのため、MabGenesisのようなペット用抗体医薬品創製の基盤技術を有するベンチャー企業との提携又は買収(米Zoetis社による米Nexvet社(2017年、表2)、米Elanco社による米KindredBio社(2022年、表2)、Zoetis社による英PetMedix社と独Adivo社(2023年、表2)、英Dechra社による米Invetx社(2024年))により基盤技術と医薬候補抗体を取得し抗体薬を創出している状況です(出典:各社ホームページ)。さらに、既にヒト用抗体薬では主流となっている安全性に優れた種特異的抗体(注12)(ペット用としては、完全イヌ型抗体、完全ネコ型抗体)を創出できる独立企業はMabGenesisの知りうる限り、現時点で世界的に見ても完全イヌ型抗体はMabGenesisと米Vetigenics社のみ、完全ネコ型抗体はMabGenesisのみです。このような状況下で、MabGenesisは今後のビジネス展開において優位性を保ち、リーディングポジションを確立していると考えております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表2. 抗体医薬に取り組む世界の動物用抗体医薬品企業

世界

売上高

ランキング

企業名

売上高

(2024年)

抗体医薬品(一般名)

買収スタートアップ

(ディール規模)

1

Zoetis(米)

9,256百万米ドル

サイトポイントⓇ(ロキベトマブ)、対象疾患:イヌ皮膚疾患

リブレラⓇ(ベジンベトマブ)、

対象疾患:イヌ変形性関節症

レニヴィアⓇ(イゼニベトマブ)、

対象疾患:イヌ変形性関節症

ソレンシアⓇ(フルネベトマブ)、

対象疾患:ネコ変形性関節症

ポルテラⓇ(レルフォベトマブ)、

対象疾患:ネコ変形性関節症

NexVet(8,500万米ドル)

PetMedix(2億1,000万米ドル)

Adivo(不明)

2

MAH(米)

(MabGenesis提携先)

5,877百万米ドル

ギルベトマブ、対象疾患:イヌがん

 

3

BIAH(独)

4,749百万ユーロ

なし

 

4

Elanco(米)

4,439百万米ドル

トルテクトTM(アニボベトマブ)、   対象疾患:イヌパルボウイルス感染症

ベフレナTM(ティルノベトマブ)、

対象疾患:イヌ皮膚疾患

KindredBio(4億4,400万米ドル)

5

Ceva Santé Animale(仏)

(MabGenesis提携先)

1,770百万ユーロ

なし

 

6

Virbac(仏)

(MabGenesis提携先)

1,397百万ユーロ

なし

 

11

共立製薬(株)(日)

(MabGenesis提携先)

約63,200百万円

なし

 

 

d) 開発成功確率が高く、開発に要する時間が短く、研究開発コストが低いこと

ペットの高齢化に伴って発症する慢性疾患の多くは、上述のようにヒトと共通しています。ヒトでは、そのような疾患の治療標的となる生体内物質(以下、「標的抗原」)が多く特定されており、その結果、種々の安全で高い治療効果を示す抗体医薬品が製造販売されています。ペットとヒトで共通する疾患では、その標的抗原も共通していることから、改めて標的抗原を特定する必要が無く、かつ、そのような標的抗原に対して開発されたペット用抗体医薬品は有効性、安全性が合理的に期待できるといえます。

開発については、前臨床段階で対象動物(イヌ、ネコ)を用いて探索的有効性試験(注13)及び安全性試験(注14)を実施し有効性、安全性を確かめることにより(出典:VICH Guideline)、それに続く臨床試験の成功確率を上げることが可能です。このように、ペット用抗体医薬品の開発は、ヒトにおいて既に同様の標的抗原に対する同様のメカニズムを持った抗体医薬品が販売されている状況と、対象動物を用いた前臨床試験が可能である点から医薬品としての開発の成功確率はヒトバイオシミラー(微生物や動物の細胞を使って製造されるバイオ医薬品の特許切れ後に作られる医薬品のことで、完全に同じ構造を作ることは不可能なため「同等・同質のシミラー」と呼ばれる。バイオシミラーのベースとなる医薬品(先行品)は、既に治療効果も安全性も証明済みであり、製造技術を確立できれば臨床試験で失敗するリスクは下がり、医薬品開発の成功確率が高いことが特徴)の開発の成功確率(出典:Biologics: Targets and Therapy, 2025:19 125–135)と同程度の約70%と高いことが想定されます。

 

図6.ペット用抗体医薬品の開発の利点

 

ヒト用医薬品は、製造販売承認を得るまでに前臨床試験の後にフェーズ1からフェーズ3の原則3段階の臨床試験(注15)を実施する必要があり、これらの実施に7~8年程度を要するといわれています(出典:Research Paper Series No.82, 日本製薬工業協会)。一方、ペット用医薬品の開発は、前臨床試験段階まではヒトとほぼ共通しますが、その臨床試験は大きく異なります。臨床試験は、VICHのガイドライン(VICH, Guideline, Good Clinical Practice)(注16)に則り、実施地域の規制当局(米国における規制当局であるFDA(米国食品医薬品局)又はUSDA(米国農務省)、欧州における規制当局であるEMA(欧州医薬品局)、農林水産省)との合意の下、臨床試験(pivotal study)を行いその安全性と有効性を証明します。ヒトと異なり、3つのフェーズに分かれておらず、有効性、安全性を担保できる1つ以上の臨床試験の結果によって製造販売申請が可能です(出典:Clinical Trials of Veterinary Medications Differ From Drugs for Human Use 2022, Volume 88, Pharmacy Times)。疾患によって異なりますが、通常1-3年程度で完了するといわれています(出典:MabGenesisによるグローバル動物用医薬品企業インタビュー)。このような制度の違いのため、新薬開発に必要な期間はヒト用医薬品の約10年に対し、ペット用医薬品では約5年と短いことから、医薬品開発企業にとってペット用医薬品の開発はヒト用医薬品に比べ低リスクであり、また、そのような企業をパートナーとするMabGenesisにとっても開発マイルストーンや販売ロイヤリティを得られるタイミングがヒト用医薬品よりも早いという利点があります。また、上記の開発期間の短縮に応じて、新薬開発に必要な開発コスト(研究開発から臨床試験に至る総開発コスト)も、ヒト用医薬品の1,000億円以上(出典:医薬品産業の現状、厚生労働省)に対しペット用医薬品は約30億円と抑えられます(出典:Animal Health Institute.org)。このように、ペット用医薬品は一般的なヒト用医薬品開発と比較して、新薬開発に必要な期間を4~6年短縮し、コストは90~95%削減可能であると言えます。

 

図7.動物用医薬品の開発プロセスの特徴

 

 

(2)MabGenesisの基盤技術

MabGenesisの基盤技術は、ファージ抗体ライブラリー(完全イヌ型、完全ネコ型、完全ヒト抗体及びラクダVHH抗体の各抗体ライブラリー)、及び抗体ライブラリーから目的とする抗体を効率よく取得する技術・ノウハウから成立しています。

図8.MabGenesisの基盤技術

 

① 抗体ライブラリー

 MabGenesisがビジネスの基盤とする完全イヌ型及び完全ネコ型の各抗体ライブラリーは、MabGenesisが独占的に保有するファージディスプレイライブラリー作製技術を応用して構築したもので、それぞれイヌMOURA(網羅)ライブラリー、ネコMOURAライブラリーと称しています。MOURAライブラリー構築の基となる技術は、元藤田医科大学学長 黒澤良和教授が30年以上にわたる抗体研究をもとにして構築したものを、さらに宮崎大学 森下和広教授(創業当時、現在はMabGenesis従業員で医学専門家)と藤田医科大学 黒澤仁講師(創業当時、現在はMabGenesis従業員で最高技術責任者)が発展させ確立させたもので、その商業目的での使用権はMabGenesisが独占しております。各MOURAライブラリーは、対象とする動物種の脾臓等から取り出した抗体産生細胞より抽出した抗体遺伝子を鋳型として、独自の技術・ノウハウで個体が持つ抗体を網羅するように抗体遺伝子群を増幅させることで作製します。MabGenesisのMOURAライブラリーは、生体由来の抗体群から構成されるナイーブライブラリー(注17)であり、抗体の研究開発効率と品質、安全性面で優れた方法といえます。

 表3にモノクローナル抗体取得技術の比較を示します。モノクローナル抗体の取得方法には大きく分けて動物に抗原を免疫する免疫法(注18)と、抗体の遺伝子を試験管内で発現させるディスプレイ法の2つの方法があります。免疫法ではマウスなどの動物にその抗原を投与し免疫を行い、脾臓からモノクローナル抗体産生細胞を分離した後、細胞融合技術を用いてモノクローン抗体産生細胞を作成しその中から求める抗体を産生する細胞を特定します。一方、ディスプレイ法では、動物を用いずに、予め作製した抗体ライブラリーから試験管内で抗原に結合する抗体を絞り込み、求める抗体を特定する方法です。MabGenesisの強みであるファージディスプレイ法を含むディスプレイ法の特徴を以下に説明いたします。

 a) 各動物種が持つ抗体産生細胞(注19)を用いて抗体ライブラリーを作製するため、完全(100%)種特異的抗体を取得することができます。すなわち、イヌ用の抗体薬の探索には完全イヌ型抗体ライブラリー、ネコ用の抗体薬の探索には完全ネコ型抗体ライブラリーを作製し、各ライブラリーから完全種特異的抗体を取得するため、取得した抗体は生体適合性が高く、安全性の高い抗体医薬品になることが期待されます。

 

 b) ディスプレイ法で使用される抗体ライブラリーは、大きく二つに分類されます。一つは抗体の構造のうち抗原に結合する領域に人工的に多様性を持たせるために核酸配列(注20)を挿入した合成ライブラリー(注21)であり、もう一つは、生体が保有する抗体遺伝子をそのまま組み込んだナイーブライブラリーです。MabGenesisのMOURAライブラリーはナイーブライブラリーに分類され含まれる抗体のアミノ酸配列がもともと対象とする動物種が持っている配列であるため、その種に投与した場合の安全性が高いことが期待されます。

 

 c) ファージディスプレイ法は免疫法に比べて、動物に免疫反応を引き起こすために要する時間は必要なく、また、モノクローン化のために細胞融合技術を用いないため、比較的短期間で抗体が取得できることが期待されます。

 

 d) 近年、世界的に、特にEUでは、医薬品開発のための実験動物の使用規制が厳しくなっており、抗体を取得する過程で動物を使用しないファージディスプレイ法は、世界的に実験動物の使用削減方針に則った方法といえます。

 

 

 

 

表3.モノクローナル抗体取得技術の比較

 

MabGenesis採用技術

 

 

 

抗体取得技術

ナイーブライブラリーを用いるファージディスプレイ法

 

対象とする動物種の血液や脾臓等から取り出した細胞より抽出した抗体遺伝子をもとにPCR法(注22)を用いて作成した抗体ライブラリーから、目的とする抗体を取得する

合成ライブラリーを用いるファージディスプレイ法

 

抗体遺伝子の抗原結合領域にランダムなアミノ酸配列が生じるようにPCR法を用いて作成した抗体ライブラリーから、目的とする抗体を取得する

トランスジェニックマウスを用いる免疫法

 

イヌまたはネコの抗体遺伝子を組み込んだトランスジェニックマウスに対して抗原を免疫し、目的とする抗体のみを産生する細胞から抗体を取得する

通常マウスを用いる免疫法

 

 

遺伝子改変を行っていない通常のマウスに対して抗原を免疫し、目的とする抗体のみを産生する細胞から抗体を取得する

動物の使用

不要

不要

必要

必要

非免疫原性抗原/毒性抗原に対する抗体の取得

可能

可能

困難

困難

抗体取得に要する時間

短い

短い

長い

長い

取得できる抗体の種類(注)

完全イヌ型/ネコ型抗体

人工抗体(注23)

イヌ化/ネコ化抗体(注24)

キメラ抗体(注25)

開発効率

良い

 

イヌ/ネコ生体の抗体配列のレパートリーを再現するため、効率的な抗体スクリーニングが可能。

悪い

 

生体で効果を示さない抗体がライブラリーの多くを占めるため、抗体スクリーニングに工数を要する。

悪い

 

免疫(動物体内で抗体が作られるようになるまで)に長時間を要する。
マウスの免疫機構が働かない抗原に対しては抗体が産生されない。

悪い

 

免疫に長時間を要する。
マウスの免疫機構が働かない抗原に対しては抗体が産生されない。

抗体の品質

高

 

イヌ/ネコ生体由来の配列が100%であるため、取得される全ての抗体に免疫原性(注26)はなく、安全性が高い。

低

 

取得した抗体がイヌ/ネコの生体では存在し得ない抗体の場合、免疫原性を有する可能性がある。

中

 

イヌ/ネコ生体に由来しない配列が10%程度含まれるため、取得した抗体が免疫原性を有する可能性がある。

低

 

イヌ/ネコ生体に由来しない配列が30%程度含まれるため、取得した抗体が免疫原性を有する可能性がある。

(注) 完全イヌ型/ネコ型抗体:抗体タンパク質の配列すべてが、イヌ又はネコが生体内で産生する抗体と同一である抗体(相同性100%)。

人工抗体:抗体のうち抗原結合部位のタンパク質の配列について、イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は不明です。配列を人工的にデザインするためイヌ又はネコの生体に存在しない抗体が含まれます。

イヌ化/ネコ化抗体:イヌ・ネコ以外で産生された抗体をイヌ又はネコの生体で産生される抗体との類似性を高めるために、抗体タンパク質のうち可変領域の結合性に関わらない部分と定常領域をイヌ又はネコの配列に改変した抗体。イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は90%程度といわれています。

キメラ抗体:イヌ又はネコ以外で産生された抗体をイヌ又はネコの生体で産生される抗体との類似性を高めるために、抗体タンパク質の配列のうち定常領域のみをイヌ又はネコの配列に改変した抗体。イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は70%程度といわれています。

 

② 抗体単離技術

 上述のイヌ及びネコMOURAライブラリーは、約10億種類の抗体から構成されています。そのため、特定の抗原に対する抗体をライブラリーから効率よく取得する技術が必要となります。例えばサイトカイン(注27)や膜タンパク質(注28)は、外界からのシグナル伝達(受容体)(注29)や物質輸送・チャンネル機能などを担う重要な役割を果たしていることから、それらの多くが創薬標的分子になりうると考えられています。MabGenesisはこれらの分子に対して、基盤技術であるMOURAライブラリーと抗体単離技術とノウハウを組み合わせて、高機能性、高親和性の医薬品候補抗体を効率よく取得することに成功しております。図9の左のグラフは、MabGenesisが取得した抗体を用いて試験管レベルで機能阻害活性を測定したグラフで、抗体の濃度(X軸)が高くなるにつれて、阻害活性(Y軸)が強くなることを示しています。この抗体は、医薬品が特定の生体機能の働きを示す指標で「50%阻害するのに必要な濃度」として知られるIC50(Half maximal inhibitory concentration)が、130 pM(ピコモル、注30)という一般的に薬品として高い有効性が期待できるレベルの阻害活性を保有しています。また、右のグラフは抗原タンパク質と抗体の分子間相互作用(親和性)を測定した試験のグラフを示します。光を透過するチップの先端に抗体を貼り付け、チップを抗原溶液に浸すと抗原と抗体が結合し、センサーグラムが上昇します(X軸の0-1000秒)。その後、チップを抗原を含まない溶媒に浸すと親和性の弱い抗体は抗原との結合を失い、センサーグラムが下降しますが、MabGenesisの取得した抗体は親和性が高いため、抗体が結合を失わず、センサーグラムは高い値を示しています(X軸の1000-2000秒)。この反応を6水準の抗原濃度溶液を用いて試験を行い、平衡解離定数(KD)を測定し、MabGenesisの抗体のKDは31 pM(ピコモル)という強い親和性を示しました。

今後も基盤技術の向上を進め、安全で治療効果の高い完全イヌ型・完全ネコ型抗体を新たな治療選択肢としてパートナー企業、獣医師、ペットオーナー・ペットに提供していきます。

 

図9.MabGenesisの抗体単離技術を用いて取得した抗体の機能性及び親和性に関する評価データの一例

 

(3)MabGenesis事業の優位性・可能性

MabGenesisの所有する各種のMOURAライブラリー及び抗体単離技術・ノウハウに関しては、その技術の詳細を保持、秘匿していることから、同業他社の模倣が困難な優位性を確立しています。ファージディスプレイ抗体ライブラリーは、上記「(2)MabGenesisの基盤技術①b)」で述べたように、合成ライブラリーとナイーブライブラリーに大別されます。抗体ライブラリーを有する企業の多くは合成ライブラリーですが、生体内に人工的な配列を持つ抗体を投与した場合、生体の免疫機能によって、それが異物として認識され、結果的に抗体が排除されることで効果が現れなくなる可能性も示唆されています。一方、MabGenesisが保有するMOURAライブラリーは、ナイーブライブラリーでイヌ及びネコそれぞれに特化したものであり、その生体内で産生され得る抗体のみを網羅しています。その結果、このライブラリーから取得される特定標的に対するモノクローナル抗体は、生体内で産生される抗体に等しいものです。すなわち、MOURAライブラリーより取得されるモノクローナル抗体は、合成ライブラリーにより取得されるモノクローナル抗体に比して、医薬品として開発が成功する可能性が高いことが想定されます。このようなナイーブライブラリーの構築には、技術、ノウハウ及び経験が必要であり、競合他社が新規に構築するには高い障壁が存在するといえます。また、MabGenesis独自の抗体単離技術・ノウハウは、従来の方法では難しいとされている膜抗原に対するモノクローナル抗体の取得を可能としています。このようなビジネス基盤上の優位性をもとに、MabGenesisは、動物用抗体医薬品に特化して創薬ビジネスを展開しています。

また、MabGenesisが展開する動物用抗体医薬品は、競合する企業も製品もまだ限定的です。さらに動物用抗体医薬品は、ヒト用医薬品として既に製品化され販売されている実績のある抗体薬と作用機序(注32)を同じくすることから、開発の成功確率が高いことが想定されます。このような背景から、MabGenesisは、現在動物用医薬品としての抗体薬の研究に事業資源を集中させております。複数の国内外の大手動物用医薬品企業とは、当初単独案件の提携から複数案件の提携へと移行しており、MabGenesisのMOURAライブラリー及び抗体選別法は高く評価されております。MabGenesisの独自技術の有用性に基づくこれら大手動物用医薬品企業との関係性構築の実績から、同様の協働関係が今後も継続すると期待されます。

また、MabGenesisは、VHHラクダ抗体ライブラリー、完全ヒト抗体ライブラリー(ヒトMOURAライブラリー)も保有しています。現在は、イヌ用、ネコ用抗体医薬品に集中してビジネスを進めておりますが、近い将来ウシ、ブタ等の産業動物、また、安定的な収益を見込める状況になった時点で、成功確率を精査した上でヒト用抗体医薬品の分野にもビジネスを拡大していくことを計画しております。

 

(用語解説)

本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。

No.

用語

用語の定義

注1

ファージディスプレイ

細菌に感染するウイルスであるファージに抗体分子を表出する技術

注2

抗体ライブラリー

特定の手段あるいは目的をもって試験管内で作製された、生体の防御反応を担う抗体(重鎖、軽鎖から形成され、それぞれ定常領域と抗原結合領域を含む可変領域からなる)の遺伝子の集合

注3

モノクローナル抗体

数億種類存在する抗体から選び出した、単一種類の抗体

注4

単離技術

目的とする抗体を選択的に取り出す技術

注5

抗体医薬品

私たちの体内に存在する生体防御物質(タンパク質)である抗体を、遺伝子組み換え技術で人工的に製造したバイオ医薬品。創薬標的にピンポイントで作用させることができるため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できる

注6

標的抗原

抗体医薬品の治療標的となる生体内物質(抗原)

注7

導出

成果物を他社へライセンス供与または権利譲渡すること

注8

医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization: CRO)

製薬企業や医療機器メーカー等から、医薬品・医療機器の開発にかかわる業務の全部又は一部を受託して行う専門機関

注9

前臨床試験

開発中の新薬候補物質や医療機器について、ヒト、イヌ、ネコ等を対象とした臨床試験(治験)を実施する前に、実験動物や培養細胞などを用いて有効性(薬理作用)や安全性(毒性、副作用など)を評価・検証する試験をいう

注10

完全イヌ型抗体

完全に100%イヌ由来のパーツから構成される抗体。医薬品として応用した際、アレルギー反応を引き起こす可能性が低く、安全性に優れていると考えられる

注11

完全ネコ型抗体

完全に100%ネコ由来のパーツから構成される抗体。医薬品として応用した際、アレルギー反応を引き起こす可能性が低く、安全性に優れていると考えられる

注12

種特異的抗体

抗体は動物種に特有のアミノ酸配列を持っており、例えばヒトの抗体はイヌやネコにとっては異物として認識される。そのため、イヌ用の抗体医薬品の開発にはイヌ抗体、ネコ用の抗体医薬品の開発にはネコ抗体を作製する必要がある

注13

探索的有効性試験

開発早期段階において、開発品の有効性の兆候(シグナル)を探索・確認するために実施される試験。仮説の検証や、より大規模な試験へ進むかどうかの意思決定の基準となる

注14

安全性試験

開発中の医薬品が、生体に対して及ぼす毒性や副作用の有無、及びその程度を評価・確認するために実施される試験

注15

フェーズ1からフェーズ3の原則3段階の臨床試験

ヒト用医薬品の臨床試験を実施する際、通常フェーズ1からフェーズ3の3段階に分けて臨床試験が実施される

第1相試験(フェーズ1試験):少数の健康成人を対象に、開発中の医薬品候補物質を初めてヒトに投与し、主に安全性と薬物動態(投与した物質の吸収、分布、代謝、排泄)を評価すること

第2相試験(フェーズ2試験):第1相試験で安全性が確認された後、少数の患者を対象に、医薬品候補物質の有効性及び安全性を確認し、最適な用法・用量(投与量や投与間隔など)を検討することを目的とした臨床試験

第3相試験(フェーズ3試験):第2相試験で得られた情報に基づき、多数の患者を対象に、既存の標準治療薬やプラセボ(偽薬)との比較を行う臨床試験。医薬品候補物質の有効性及び安全性を統計学的に検証することを目的とし、製造販売承認申請における最も重要な根拠データとなる

注16

VICHのガイドライン(VICH, Guideline, Good Clinical Practice)

動物用医薬品の承認申請資料の共通利用を通じて開発費の削減や承認審査を迅速化を図る目的で、日本・アメリカ・EUの三極を中心に策定されている動物用医薬品の承認申請データや試験基準の国際的な統一ガイドライン

 

 

No.

用語

用語の定義

注17

生体由来の抗体群から構成されるナイーブライブラリー

生体に存在する抗体の遺伝子を遺伝子組み換え技術を用いて生体から取り出し、作製された抗体遺伝子の集合

注18

免疫法

実験動物に抗原を投与してその抗体を取得する方法

注19

抗体産生細胞

生体に存在する白血球の一種であり、抗体を産生する細胞

注20

核酸配列

DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)の並び順のことで、抗体などのタンパク質の設計図

注21

合成ライブラリー

抗体など目的とするタンパク質等の遺伝子を機械で人工的に合成し、作製された抗体遺伝子の集合

注22

PCR法

Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略。微量なDNA(デオキシリボ核酸)サンプルの特定領域を、酵素反応を利用して短時間で大量に増幅させる技術

注23

人工抗体

抗体のうち抗原結合部位のタンパク質の配列について、イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は不明です。配列を人工的にデザインするためイヌ又はネコの生体に存在しない抗体が含まれる

注24

イヌ化/ネコ化抗体

イヌ・ネコ以外で産生された抗体をイヌ又はネコの生体で産生される抗体との類似性を高めるために、抗体タンパク質のうち可変領域の結合性に関わらない部分と定常領域をイヌ又はネコの配列に改変した抗体。イヌ又はネコが生体内で産生する抗体との相同性は90%程度といわれている

注25

キメラ抗体

遺伝子組み換え技術を用いて作製されたマウスとヒト、マウスとイヌ等、異なる種の抗体のパーツからなる人工的な抗体

注26

免疫原性

医薬品の副作用の原因となる免疫反応を誘発する能力のことを指し、安全性に関する指標

注27

サイトカイン

免疫細胞などから分泌される細胞間の情報伝達を担うタンパク質であり、免疫や炎症反応を引き起こすような働きをする

注28

膜タンパク質

細胞膜に存在するタンパク質

注29

シグナル伝達(受容体)

細胞外部からの情報(ホルモン、増殖因子、サイトカインなど)が、細胞膜の受容体を介して細胞内部へと順次伝えられ、最終的に特定の遺伝子発現や細胞の増殖、分化、死(アポトーシス)などの生存応答を引き起こす一連の化学反応の連鎖。がん、炎症疾患などはこのシグナル伝達経路(パスウェイ)に異常が生じて引き起こされるケースが多い

注30

pMレベル

10の-12乗モルレベルの強い結合で、一般的に医薬品として高い有効性が期待できるレベル

注31

平衡解離定数

2つの物質(抗原と抗体)がどのくらい結合しやすいか、または離れやすいかを数値で表した指標

注32

作用機序

開発中の医薬品候補物質が、生体内の特定の標的分子(受容体、酵素、イオンチャネルなど)に結合し、どのような生化学的なプロセスを経て治療効果(薬効)を発揮するかという分子レベルでのメカニズム

 


有価証券届出書の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 MabGenesisの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてMabGenesisが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

 MabGenesisは、30年以上にわたる国内アカデミアによる抗体研究を実用化し、ヒト及び動物領域で革新的な治療用モノクローナル抗体医薬品を提供するバイオ医薬品企業です。機能性と網羅性を備えた抗体ライブラリー(MOURAライブラリー)と高効率モノクローナル抗体単離技術を有し、従来技術では取得が困難な高品質・高機能性モノクローナル抗体等を提供することで製薬業界に新薬の研究開発機会の拡大をもたらします。主力事業である新規ペット(イヌ、ネコ)用抗体医薬を広く世界に提供し、ペットの健康を通して家族全体の生活の質向上に資することでミッションの具現化を行ってまいります。

 

(2)経営戦略

 ヒト用医薬品開発は一つのパイプラインへの投資も高額になり、かつ、複数の疾患分野のパイプラインを開発するための人的資源にも制限があることから、従来のバイオスタートアップ企業のビジネスモデルは、単独又は多くても数本のパイプラインに依存するビジネスモデルです。MabGenesisは、これらとは全く異なる、19件の豊富なパイプラインからなるリスク分散型のポートフォリオの推進と、「高い成功確率」「短い開発期間」「低いコスト」というペット用抗体医薬品開発の特徴を活かしたビジネスモデルにより、着実に事業を拡大していきます。また、最新の機器、AI技術の導入、及び高度研究人材の獲得により常に世界のトップレベルの技術力を維持し、高機能かつ高品質な新規抗体取得を確かなものとします。短期的(2029年まで)には、継続的なパイプラインの拡充、進捗による確実なマイルストーンと導出の達成、中長期的(2030年以降)には世界のパートナーによる製品の製造販売開始を見込み、さらなる事業拡大を目指します。

①パイプライン売上の成立・拡大

 豊富な既存共同研究パイプラインを推進し、着実にマイルストーンを達成します。また、世界の既存及び新規顧客とのパートナーシップ拡大により、確実に事業計画を達成及び継続的な黒字化を目指します。

②高付加価値の自社研究パイプラインの導出

 自社研究パイプラインの対象動物における探索的有効性等のデータ付加により、自社開発パイプラインの価値最大化を行い、収益拡大を目指します。

③パイプライン製品化による更なる収益拡大

 中長期的(2030年以降)には国内外のパートナーによるパイプライン製造販売開始に伴うロイヤリティと販売マイルストーン獲得による収益拡大に伴う事業価値の飛躍的向上を見込みます。

 

(3)経営環境

 世界のペット用医薬品市場は、2024年の235億米ドルから年成長率11.1%で成長し、2034年には670億米ドルに達すると予測されています(「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)MabGenesisのビジネスモデル ② ビジネスモデル選択の背景」参照)。ワクチンや駆虫薬の普及と(出典:Grand View Research 2025)、ペットの家族化と住環境の充実によりペットの高齢化が進行した結果、ペットでもヒト同様加齢に伴う慢性疾患が問題となり、抗体医薬や再生医療等の新しいペット用医薬品が必要とされるようになっており、今後の同市場における成長はそれらが牽引することが期待されています。世界的に見ると、日本のイヌ及びネコの飼育頭数は人口の約10%ですが、最大のペット用医薬品市場である米国と欧州はイヌ、ネコとも人口の20%を超えており、中国、南米も含め今後も拡大が期待されます(出典:HealthforAnimal.org)。近年、ペットの家族化により、家計あたりのペットケアにかける支出が増大しており、この点も市場が拡大する要因となっています(出典:Bloomberg, March 2023)。

 ペット用抗体医薬市場はその安全性、有効性、利便性から新たな巨大市場が形成されると期待されています。人体薬の医薬品市場において抗体医薬は約30年の歴史を持ち、その有効性と安全性から現在200種類以上の抗体医薬が製造販売されるに至っており、2022年から2028年にかけての世界医薬品市場でのシェアは約25%を占めると見込まれています(出典:創薬モダリティの潮流と展望、科学技術振興機構)。ペット用抗体医薬も同様のトレンドを踏襲することが期待されます。現時点で、Zoetis社が大きくリードしているペット用抗体医薬市場(「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)MabGenesisのビジネスモデル ② ビジネスモデル選択の背景」参照)に参入すべく、世界の動物用医薬品企業は積極的に抗体医薬の研究開発への投資を行っており、MabGenesisと類似の抗体取得スタートアップ企業の買収や共同研究契約の締結が進められています。

 

 

(市況)

2010年代後半、MabGenesisよりも早く操業したペット用抗体医薬品スタートアップの多くは、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)MabGenesisのビジネスモデル ②ビジネスモデル選択の背景」に記載のとおり、ここ数年の間に大手動物薬企業に買収され、現在独立して医薬品レベルの品質を示す完全イヌ型抗体及び完全ネコ型抗体を世界の大手動物薬企業各社に自由に提供できるのはMabGenesisの知りうる限りMabGenesisのみです。

 

(4)目標とする経営指標

  MabGenesisは、2026年8月末時点で19件の研究開発パイプラインを進めています。国内外大手製薬会社との導出契約に基づく契約一時金及び研究開発の進捗に応じたマイルストーンの達成による売上高が計上されてはおりますが、将来のパイプライン製造販売開始後の事業価値を正確に反映しているとは考えられないため経営指標等は定めておりません。

①各パイプラインの研究開発の進捗状況

 豊富に保有している共同研究パイプライン及び自社パイプラインの進捗状況(開発候補品の特定、臨床試験開始、申請段階移行等)を四半期毎、又は適宜モニタリングし、その結果を更新、視覚化し、目標に対する達成状況を一目で判断出来るよう開示してまいります。

②ポートフォリオの充実状況

 将来の事業価値の確実な向上のため、既存及び新規顧客とのパートナーシップ強化によるポートフォリオの充実を進めております。その進捗を四半期毎、又は適宜モニタリングし、その結果をタイムリーに更新、視覚化してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①持続的・安定的な事業収益の獲得

 新規及び既存パートナー(共同研究開発企業)との共同研究を円滑に進めマイルストーンを早期に確実に達成すること、並びに各パートナーとの良好な関係を維持し自社パイプラインの導出を積極的に推進し、持続的かつ安定的な収益を生み出す研究開発ポートフォリオを構築してまいります。

②優秀な人材の確保・育成

グローバルな活躍、最先端医薬品技術開発への取組を前面に出し優秀な人材の確保を図るとともに、誠実さ、革新、挑戦、環境と倫理をコアバリューとして重んじる文化形成に継続的に取り組んでおります。

③技術競争力の強化

ヒト及び動物薬技術の発展に常にアンテナを張り、引き続き抗体技術を基盤とし、有効性と安全性のみならず付加価値の高い二重特異性抗体、細胞内抗体技術等の新規技術の確立とパイプラインの構築を行ってまいります。

④事業領域の拡大

 動物医薬領域においてはペットのみならず、同程度の市場規模である産業動物への抗体技術の応用が考えられます。また、現在は動物用抗体医薬品に特化してビジネスを行っておりますが、上場し、安定的な収益を見込める状況になった時点で、メディカルニーズ、成功確率を精査し、ヒト用抗体医薬品の分野にも徐々にビジネスを拡大していく計画です。

⑤財務基盤の拡充

 MabGenesisは、事業拡大に応じ、人材の確保と併せて研究設備の拡充を図方針であり、これに伴う財務体質の強化が課題であると認識しております。そのため、導出契約の締結を始めとした国内外のパートナーとの提携や、株式市場からの資金調達等により財務体質の強化に努めてまいります。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 

 MabGenesisは、動物用医薬品の研究開発を主たる事業とする創薬ベンチャー企業であり、事業活動は新薬の研究開発の成否に大きく依存しております。一般に、ヒト用医薬品に比べ、動物用医薬品では新薬の研究開発には研究開発期間は短く研究開発費用は少額となりますが、一定の期間と投資を必要とします。また、ヒト用医薬品と比べ、MabGenesisが手掛ける動物用医薬品は、既に同様の標的抗原に対する同様のメカニズムを持ったヒト用抗体医薬品が販売されている状況から各開発段階において有効性又は安全性が確認されないこと等により、開発の中止又は遅延が生じる可能性は相当に低減されておりますが、一定のリスクがあります。また、臨床試験において一定の結果が得られた場合であっても、規制当局による承認が得られない、又は想定よりも長期間を要する可能性があります。このように、創薬事業は本質的に高い不確実性を内包しており、MabGenesisのビジネスモデルにより、ヒト用医薬品創薬事業に対して軽減されているとはいえ、とりわけ販売開始前の研究開発段階のパイプラインを有するMabGenesisへの投資は、相応のリスクが考えられます。以下に記載する各リスクは、かかる不確実性がMabGenesisの事業、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性がある事項を具体的に示したものです。

 なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在においてMabGenesisが判断したものであります。

 

(1) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク

① 研究開発の不確実性に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 医薬品の研究開発は、初期の創薬研究から上市に至るまで長期間を要するとともに、上市までに多額の研究開発投資が必要となります。また、有用な薬効を確認できない場合や副作用など安全性への懸念が生じた場合研究開発の延長や中止の判断が行われるなど、研究開発には不確実性が存在します。一般に医薬品開発の成功の可能性は、他の産業と比較して相対的に低いものとされております。このような一般的な状況のほか、MabGenesisは共同研究によってパイプラインを開発しているプロジェクトが多く存在するため、研究開発の進行が、自社のみではコントロールできず、提携先の方針等によって左右される点、現時点で臨床開発候補品までの創薬研究プロセスを自社で完遂した実績がない点がリスクとして挙げられます。

 しかしながら現在のMabGenesisのビジネスモデルでは、MabGenesisは、非臨床試験前の創薬研究を主な業務としており、製薬パートナーが行う非臨床試験以降の開発に係るコストを負担することはありません。また、MabGenesisは現状では開発・上市まで進捗しなくとも短期の一時金、研究支援金、研究マイルストーンの事業収益が計上される契約を締結することにより、安定的な収益確保を可能としております。さらに、MabGenesisの業務範囲である創薬研究は、その後の開発・販売と比較して期間が短く、「医薬品の研究開発」全期間と比較すると、リスクが限定されると考えております。

 MabGenesisは、戦略的にヒトにおいて製品化されている抗体医薬品と同一の抗原に対する動物用抗体医薬品を研究開発することで、研究開発が失敗するリスクを低減させております。MabGenesisが手掛ける動物用医薬品は、ヒト用医薬品に比して臨床開発の期間が短く研究開発コストも低額であり、更に、MabGenesisは複数の製薬会社等と契約し複数の創薬研究プロジェクトを実施することで、契約一時金、研究支援金、マイルストーン等の多様な収益を獲得してリスクを分散し、軽減するよう努めておりますが、研究開発の不確実性がMabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 薬機法などの規制に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬機法やその他の関連法令、ガイドラインにより様々な規制を受けております。MabGenesisは、製薬会社との共同研究で開発候補抗体を取得した場合、当該製薬会社に当該抗体を開発する権利を導出する予定であり、かかる場合には薬機法等の規制の影響を直接受ける可能性は低いと考えております。しかしながら、導出先の法域で特殊な法規制が存在する場合、各国の薬機法等の規制に今後大きな変更が生じ、導出した抗体の薬事承認の取得等に影響が出た場合や、MabGenesisが新たに規制の対象になった場合等には、計画どおりの売上高が獲得できず又はMabGenesisに体制整備等の負担が生じ、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 医薬品行政に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 ヒト用医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の医療保険政策など薬価に関する規制の影響を受けます。MabGenesisは、開発候補抗体を製薬会社に導出する方針であるため、これらの規制の影響を直接受けることはありません。しかしながら、今後、導出した開発候補抗体が最終的に医薬品として上市され、当該医薬品にとって想定外の薬価改定や医療保険制度の改定等が実施されるなどにより、計画どおりの売上高を獲得できなくなる可能性があり、あるいは中長期的に薬価が引き下げられた場合には、今後開始する共同創薬研究契約の条件が悪くなる可能性があるなどにより、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、動物用医薬品においては公的な薬価制度が存在しないため、薬価改定等による価格面への直接的な影響は限定的ですが、製造販売の承認取得や品質・安全管理等に関しては、農林水産省等による関係法令・行政の適用を受けます。

 

 

④ 抗体医薬品市場に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisは、ペット用抗体医薬品の開発を行っております。MabGenesisは、動物用医薬品業界動向を示すデータや予測などから抗体医薬品市場が当面安定的に成長すると見込んでおり、今後も継続的に業界動向の情報収集に努め、経営環境の変化に応じた事業運営を行う方針です。しかし、抗体医薬品と競合する低分子医薬品、中分子医薬品、核酸医薬品及び細胞治療をはじめとする再生医療等製品の開発・発展等によりMabGenesisの想定どおりに抗体医薬品市場が拡大しなかった場合、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 技術革新に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisの創薬コア技術である抗体ライブラリー (MOURAライブラリー)とモノクローナル抗体単離技術は独創的かつ先進的なものであり、またその技術の詳細を保持、秘匿していることから、同業他社の模倣が困難な優位性を確立しています。MabGenesisは引き続き、新技術の開発等を通じて創薬プラットフォームの技術力強化に努めますが、MabGenesisが保有する技術・ノウハウが陳腐化しMabGenesisと同等以上の技術力を持つ競合先が増加した結果、MabGenesisの競合優位性が保てなくなる場合、また、医薬品業界特有の急激な技術革新等により新技術への対応に遅れが生じた場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 競合製品に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisでは、早期の上市に向けた研究開発活動を続けており、特許の取得等によって競争優位性の確保に努めておりますが、競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が、MabGenesisの有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行し、MabGenesisの候補物質の明らかな優位性が見出されない場合、MabGenesisの事業の優位性は低下する可能性があります。そうした場合、MabGenesisの事業において優位性確保のために多額の資金が必要となる可能性があり、MabGenesisの事業、経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、競合する新薬の開発が先行し、又は競合新薬が上市されたことにより、事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性があるだけでなく、ライセンス契約そのものの解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合、適切な薬価が付かず、当初想定したロイヤリティが得られない等により、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業活動に由来するリスク

① 研究用資材の調達に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは、研究用資材を購入し研究を行っているため、研究用資材の調達先の多様化を進めており、現時点では、特定の調達先に依存しておりません。しかしながら、調達先における事故、生産地における災害発生等による被害、社会不安(テロ、戦争、感染症)等により、研究用資材の調達が困難になった場合や研究用資材が値上がりした場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 外部委託に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは、汎用技術による試験の一部を外部のCRO等に委託して研究を行っているため、複数の委託先を確保して研究を進めており、現時点では、特定の委託先に依存しておりません。しかしながら、委託先における事故、委託先所在地における災害発生等による被害、社会不安(テロ、戦争、感染症)等により、委託が困難になった場合や委託費用が著しく値上がりした場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 契約に基づく制約に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisが締結している一部の共同研究契約、ライセンス契約又は知的財産権譲渡契約等においては、一定の標的分子、候補抗体、地域又は製品に関して、契約の相手方に独占的な権利が付与され、又はMabGenesisによる競合する研究開発若しくは権利付与が制限される場合があります。そのため、競合製品の開発状況や契約内容によっては、MabGenesisが想定する事業展開又は収益機会が制約を受ける可能性があります。

 

④ 法的な紛争の可能性に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisの事業展開上、MabGenesisの瑕疵又は責任の有無にかかわらず、第三者の権利や利益を侵害した場合、又は相手側が侵害されたと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性があります。また、取引関係や労使関係その他において何らかのトラブルが生じた場合、訴訟等に発展する可能性があります。さらに、取引先やMabGenesis従業員がコンプライアンス違反を犯した場合、MabGenesisに対しても責任を問われる可能性があります。MabGenesisと第三者との間に法的な紛争が生じた場合には、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされるなどにより、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 研究所の使用に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは名古屋大学内及び宮崎大学内の施設を契約下でMabGenesis研究所として使用しております。このため、これらの施設の使用ができなくなった場合には、新たに研究施設を確保する必要が生じ、一定期間の活動休止と追加的な設備投資や賃借料の発生などによって、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 名古屋大学との契約は2026年10月末で期限を迎えますが、既に3年間の延長契約を締結することに合意しており、変更契約により2029年10月末まで施設が使用可能となっております。宮崎大学との契約は2029年3月末までを期限と定めております。いずれの契約も、延長契約の締結は可能であり、かつ、相手方による解約条項は設けられておりません。

 仮に現行の施設を使用できなくなった場合は、愛知県内又は宮崎県内でレンタルラボを手配し、研究の再開まで半年程度が必要と想定しております。なお、MabGenesisの研究設備は大掛かりな機器等はなく、主要機器の移設は容易であり、機器の再取得への投資はほとんど必要ありません。

 

⑥ MabGenesis取締役の兼業に関するリスク(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisの創薬コア技術である抗体ライブラリー(MOURAライブラリー)とモノクローナル抗体単離技術は独創的かつ先進的なものであり、またその技術の詳細を保持、秘匿していることから、同業他社の模倣が困難な優位性を確立しています。MabGenesis取締役小泉信一が兼業している株式会社AskAt及び株式会社坪田ラボの2社については、その現在の事業領域はMabGenesisと大きく異なり、MabGenesisの技術とは競合しません。さらに、将来的にも競合する可能性は事業領域が異なることから限りなく低いですが、今後兼業先が事業領域を大きく変更または新たに追加し、動物用抗体医薬品の自社探索を開始し、MabGenesisの技術に競合する技術を開発した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 知的財産に関するリスク

① 第三者知的財産権に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは、第三者の知的財産権の侵害及び事業運営上第三者より使用許諾を受けた知的財産権の権利失効を、リスクとして認識し、専門分野の弁理士・弁護士と連携して、第三者の知的財産権の侵害や知的財産権の失効を回避するよう努めております。知的財産権の使用許諾については、許諾先との適切な契約締結により極力リスクを回避しておりますが、MabGenesisが保有する知的財産権が予期せずに失効した場合には、MabGenesisにて当該知的財産権にかかる技術等を独占して使用できなくなります。また、第三者の知的財産権の侵害についてはMabGenesis側で完全に検知することは難しく、予期せず侵害した場合には、損害賠償請求、使用差止め、権利に関する使用料等の支払い請求等が発生します。このように、第三者知的財産権に関するリスクが顕在化した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産に関する紛争に係る事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisの事業に関連した特許権等の知的財産権について、現在、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。MabGenesisは、専門分野の弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。今後、MabGenesisが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大な費用を要する可能性があり、また、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされるなどにより、このような事象が発生した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 職務発明について(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisの知的財産権管理規程では、職務発明者である役職員等から特許を受ける権利を譲り受けることが規定されており、その際にはMabGenesisは特許法に定める「相当の対価」を当該役職員等に支払うことを規定しています。MabGenesisでは、相当の対価の支払い請求等に問題が生じる場合を想定し、その際の取扱いを知的財産権管理規程に定めております。これまでに発明者との間で対価の支払い等で問題が生じたことはありませんが、そのような問題が生じた場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 業績、財務及び資本政策等に関するリスク

① 資金繰りに関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisの属する医薬品業界では、一般的に多額の研究開発資金を長期にわたって先行投資する必要があります。MabGenesisにおいても現在、技術力の強化及び研究の効率化のために先行投資をしております。今後も事業拡大のために自社での非臨床試験の実施や必要に応じて設備投資等に資金を投じていく方針です。

 MabGenesisが進めるビジネスに関して、コスト面では、主に研究開発費と販売費及び一般管理費が多くを占め、年度によって大きな変動はありません。しかし、将来は、自社研究プロジェクトを進め、その価値を増大化するための臨床試験を実施することでさらなる成長を目指すことを検討しております。そのような成長段階では追加で臨床試験等の費用負担が発生する可能性があります。

 収益面では、短期的には既存の共同研究契約あるいは知的財産譲渡契約等に基づく、契約一時金収入及びマイルストーン収入を確保しておりますが、共同研究先あるいは知的財産の譲渡先での研究開発が順調に推移した場合は、ロイヤリティ収入が主な収益となることを想定しております。

 MabGenesisは、今後の成長の中で、自社創薬研究の要否及び契約締結状況を鑑み、必要に応じて適切な時期に資金調達を実施する可能性がありますが、適切な時期に資金調達ができない場合や投資に比べ収益が小さい場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 調達資金の使途に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

MabGenesisは、上場時の公募増資により調達する資金を研究開発費、関連する設備・人材への投資等に充当する方針です。しかし、研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要するうえに、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はありません。その結果、調達した資金が期待される利益に結びつかない可能性があります。また、MabGenesisやMabGenesisのポートフォリオを取り巻く環境の変化、法令等の改正等によって、調達資金を当初の計画以外の目的で使用する可能性があります。

 

③ 新株の発行または新株予約権の行使に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは、将来の事業拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。また、MabGenesisは、MabGenesis取締役、従業員及び社外協力者の意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用しています。新株が発行または新株予約権が行使された場合には、MabGenesisの発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

④ 配当政策に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは創業以来、株主に対する利益配当及び剰余金配当を実施しておりません。当面は、企業体質の強化及び研究活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針です。株主への利益還元については、MabGenesisの重要な経営課題と認識しており、将来的には財政状態及び経営成績を勘案しつつ利益配当及び剰余金配当を検討する所存ですが、収益計上額の大幅な変動又は収益計上の時期の遅延等により、将来的な利益配当及び剰余金配当が遅れる可能性があります。

 

⑤ 収益の変動性に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisの収益構造は、現時点では契約時一時金及び研究開発段階でのマイルストーン達成等に伴う一時金収入が中心です。MabGenesisでは、複数の共同研究プロジェクトを並行して進めることにより、個々のプロジェクトの開発進捗の変動に伴う収益の変動が最小限となるよう努めております。しかしながら、契約を想定どおりに締結できなかった場合、また契約締結後でも研究が想定通りに進捗しなかった場合や提携先との研究方針の不一致等により共同研究契約等が解消された場合、当初想定した時期に収益が得られない可能性があります。その結果、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、MabGenesisが締結している一部の共同研究契約、ライセンス契約又は知的財産権譲渡契約等においては、相手方による任意解除権、相手方の裁量による研究開発の終了又は契約期間の終了、支配権の移転等を理由とする解除権その他の終了事由が定められている場合があり、これによって契約が終了する可能性があります。さらに、マイルストーン又はロイヤリティの発生条件については、相手方における研究開発の進捗、販売実績、対象となる知的財産権の有効性又は範囲、その他契約上定められた条件の成否に左右される場合があります。そのため、MabGenesisが想定するマイルストーン収入又はロイヤリティ収入が発生しない、又はその発生時期が遅延する可能性があります。

 

⑥ 為替変動に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 MabGenesisは、海外に拠点を置く複数の企業との取引を行っております。これらの企業とは、外貨建取引を行っているため為替変動リスクにさらされる可能性があります。したがって、急激な為替変動が生じた場合等には、MabGenesisの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ ベンチャーキャピタル及び事業会社による株式保有・比率について(発生可能性:大、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisの発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)及び事業会社の所有割合は本書提出日現在56.9%であります。MabGenesisの株式公開後において、MabGenesis株式の株価推移によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場におけるMabGenesis株式の需給バランスが短期的に損なわれ、MabGenesis株式の市場価格が下落する可能性があります。

 

(5) 人材及び組織に由来するリスク

① 小規模組織に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisは、医薬品等の研究を行う企業としては小規模組織であるため、各役職員が担当する業務及び責任範囲は相対的に広範となる場合が多く、退職あるいは休職等に対応する要員を十分に補充できない可能性があります。今後の事業拡大に伴い、必要な人員補強を図っていきますが、十分な人員の確保又は教育ができる保証はなく、また、多くの人材流出等があった場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材への依存に関する事項(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisは、小規模な組織であります。MabGenesisでは、特定の人物に過度に依存しない組織的な経営体制の強化を進めており、何らかの理由により、MabGenesis代表取締役新庄勝浩をはじめとする特定の経営陣や責任者等がMabGenesisの業務に従事することが困難になった場合でも、対応可能な体制を取っております。しかし、これらの対策にもかかわらず、その移行期間においては、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 情報セキュリティに関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 MabGenesisは、製薬企業の創薬ターゲットに関する情報をはじめ、社内外の技術、事業開発等に関する機密情報を有しています。予期せぬ事態により情報が流出する可能性は否定できないため、外部への機密情報の流出に対する対策として、セキュリティシステムの継続的な改善を図るとともに、情報の取扱いに関する社員教育、情報へのアクセス権限管理、及び内部管理体制の強化に取り組んでいます。これらの対策にもかかわらず、機密情報の漏洩が生じた場合には、社会的信用の失墜を招くなど、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 自然災害等に由来するリスク

① 災害等の発生に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中)

 MabGenesisは、神奈川県横浜市港北区に本社、愛知県名古屋市千種区と宮崎県宮崎市に研究部門である研究所をそれぞれ設置することにより、自然災害等の影響を分散する対策を取っておりますが、現所在地の周辺地域において、地震、噴火、水害等の自然災害が発生し、MabGenesis設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 感染症に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 MabGenesisは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、役職員に感染リスクの軽減及び安全確保を目的として在宅勤務、時差出勤の推進、及びオンラインミーティングの活用を推進しております。しかしながら、将来的に新型コロナウイルス感染症やその他の感染症の感染拡大等により、本社・研究所の活動に影響が生じた場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) その他に由来するリスク

① コンプライアンスに関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大)

 MabGenesisは、法令等諸規則が遵守されるよう、役職員に対するコンプライアンスの徹底に関する教育・啓蒙等を行っておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。法令違反等が発生した場合や事故または不正等を役職員が起こした場合、損失の発生、行政処分やMabGenesisの社会的信用の失墜を招くこと等により、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 社歴の浅さに関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesisは、2019年6月に設立された社歴の浅い企業であります。MabGenesisは、国内外企業での豊富な経験を有する経営陣及び各部門責任者により運営されているものの、企業としては未経験のトラブルが発生する可能性は否定できず、その場合の組織としての対応能力については、一定のリスクがあるため、そのような未経験のトラブルが発生した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 風説・風評の発生に関する事項(発生可能性:小、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小)

 MabGenesis並びにMabGenesisの関係者及び取引先に対する否定的な風説や風評は、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、MabGenesisの社会的信用に悪影響を与える可能性があります。マスコミ報道、アナリストレポート又はインターネット上の書き込み等によりこうした事態が発生した場合には、MabGenesisの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 契約内容及びパイプライン等の情報開示に関する事項(発生可能性:大、発生する可能性がある期間:常、影響度:小)

 MabGenesisのパイプラインに示された共同研究プロジェクトおよび導出済プロジェクトに関する情報は、パートナー企業の重要な研究開発上または事業上の機密情報に該当する場合が多く、パートナーが公表していない、動物種、標的分子、適応疾患、開発状況、および具体的な契約の経済条件については事業上のリスクを考慮して開示を控えております。また、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載する各契約についても、上記の理由から、契約の名称及び契約内容のうち個別パイプラインを特定し得る情報を省略又は一般化して記載しており、各契約とMabGenesisパイプライン上の個別プロジェクトとの対応関係を明示しておりません。そのため、特定の契約の終了、変更、進捗遅延や契約相手に発生した事象等がどのプロジェクトに影響するかにつき、投資家において個別に評価することが困難となる可能性があり、投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性があります。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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