清水建設グループは、清水建設、子会社136社及び関連会社22社で構成され、建設事業、開発事業及び各事業に附帯関連する事業を営んでおります。
建設事業……… 清水建設及び日本道路㈱、日本ファブテック㈱、丸彦渡辺建設㈱、第一設備工業㈱、㈱シミズ・ビルライフケア等が営んでおり、清水建設は工事の一部を関係会社に発注しております。
開発事業……… 清水建設及び清水総合開発㈱等が営んでおり、清水建設は一部の関係会社と土地・建物の賃貸借を行い、また建設工事を受注しております。
その他の事業… 建設資機材の販売及びリース事業を㈱ミルックスが営んでおり、清水建設は建設資機材の一部を購入・賃借しております。建設機械のレンタル事業を㈱エスシー・マシーナリが営んでおり、清水建設は一部の建設機械を賃借しております。清水建設及び関係会社等への資金貸付事業をシミズ・ファイナンス㈱等が営んでおります。公共施設等の建設・維持管理・運営等のPFI事業を多摩医療PFⅠ㈱等が営んでおります。
このほか、北米における清水建設グループの事業活動の統括をシミズ・アメリカ社が行っております。
各事業と報告セグメントとの関連は、次のとおりであります。
清水建設グループは、清水建設における建設事業、投資開発事業及び日本道路㈱が営む事業を主要な事業としており、報告セグメントは、清水建設の建設事業を「清水建設建設事業」、清水建設の投資開発事業を「清水建設投資開発事業」、日本道路㈱が営む事業を「道路舗装事業」としております。また、清水建設が営んでいるエンジニアリング事業、グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業及び日本道路㈱を除く子会社が営んでいる各種事業は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、「セグメント情報」において「その他」に含めております。
事業の系統図は次のとおりであります。なお、関係会社の一部は、複数の事業を行っております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において清水建設グループが判断したものであります。
(1) シミズグループの中長期的な経営方針
清水建設は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により、社会の期待を超える価値を創造し、持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めております。
清水建設は、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」を定めるとともに、その実現に向けて、中期経営計画を策定し、実行しております。2023年度をもって、「中期経営計画〈2019‐2023〉」の計画期間が終了しましたので、その振り返りと清水建設を取り巻く環境認識に基づき、計画期間を3年とする「中期経営計画〈2024‐2026〉」を2024年5月に策定しました。
「SHIMZ VISION 2030」
■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』
建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献します。
■シミズグループが社会に提供する価値
イノベーションを通じた価値の提供により、SDGsの達成に貢献します。
①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現
地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められております。強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。
・強靭な社会インフラの構築
・建物・インフラの長寿命化
・防災・減災技術の普及
・ecoBCP※2の普及
※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある
※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)対策を両立する施設・まちづくり
②健康・快適に暮らせるインクルーシブ※な社会の実現
高齢化や人口減少、都市化などの急速な社会変化が進む中、誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められております。人に優しい施設やまちづくりを通じて、健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していきます。
・ICTを活用したまちづくり
・ユニバーサルデザインの普及
・Well-beingの提供
・人類の活躍フィールドの拡大(海洋、宇宙へ)
※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる
③地球環境に配慮したサステナブル※な社会の実現
地球温暖化や森林破壊、海洋汚染などが深刻化する中、次世代に豊かな地球を残すことが求められております。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて、地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していきます。
・再生可能エネルギーの普及
・省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進
・事業活動におけるCO2排出量削減
・自然環境と生物多様性の保全
※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な
■ビジョンの達成に向けて
3つのイノベーションの融合により、新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指します。
①事業構造のイノベーション
ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速、及び、グループ経営力の向上
②技術のイノベーション
建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発
③人財のイノベーション
多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積
■目指す収益構造
スマート イノベーション カンパニーへの進化により、2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指します。
連結売上利益の構成は、事業別では、建設65%、非建設35%、地域別では、国内75%、海外25%を想定しております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
「中期経営計画〈2019‐2023〉」の総括
中期経営計画〈2019‐2023〉の最終年度である2023年度の業績について、売上高は大型プロジェクトの竣工及びM&A等の進展により、公表目標を上回りました。一方、コロナ禍及び地政学的リスクの顕在化並びに資材・労務価格の上昇などの環境変化への対応の遅れに加え、国内外の高難度な超大型プロジェクトにおける工程逼迫、工事原価の増大、品質不具合事象等の影響により、売上利益や経常利益は目標未達となりました。
非財務KPIについては、超大型プロジェクトを中心に生産性向上の難しさを経験した一方で、CO2排出量は目標を大幅に上回る削減を果たし、脱酸素社会の実現に向けた取組みを進展させました。また、働きがい指標については、柔軟で多様な働き方が進み、働きやすさが向上したことに加え、1on1ミーティングの職場定着や健康経営の推進等によって、職場の信頼関係及び心身の健康に関するスコアが大きく改善しました。しかしながら、繁忙等により働きがい指標の向上に課題が残りました。
■投資計画の実施状況
清水建設グループは、前中期経営計画〈2019‐2023〉を、長期ビジョン達成のための新たな収益基盤確立に向けた先行投資期間と位置づけ、投資環境を精査しながら5年間で5,240億円の投資を実施しました。今後これらの投資から得られる短期的又は中長期的な成果を、事業活動や更なる持続的成長に向けた投資に活用します。
①生産性向上・研究開発投資
生産性向上・研究開発投資については、実績は460億円となりました。建物高さ300メートル超の超高層建築物をはじめ、超大型・高難度プロジェクトへの挑戦・経験を通じて獲得した対応力・技術は、高い技術競争力と高度なお客様ニーズの実現を可能にしました。また、2020年策定の中期デジタル戦略「Shimzデジタルゼネコン」のコンセプトに基づき、「ものづくりをデジタルで」、「デジタルな空間・サービスを提供」、「ものづくりを支えるデジタル」を着実に進めました。こうした取組みが高く評価され、清水建設は、経済産業省、東京証券取引所及び(独)情報処理推進機構が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に2021~2023年度の3年連続で選定されました。
②不動産開発事業
不動産開発事業では、国内外で3,280億円の新規投資を行い、国内外のオフィス、生産・物流施設、ホテル、集合住宅等、アセットの充実を図る一方で、私募REIT「清水建設プライベートリート投資法人」を設立し、開発から保有、売却、再投資のサイクルを確立するとともに、グループ企業がAM・PM業務を受託することで、清水建設グループのバリューチェーンを拡充する不動産循環型ビジネスモデルを構築しました。
また、東京都江東区豊洲に、オフィスビルとホテル、バスターミナル等で構成する複合施設「ミチノテラス豊洲」を整備しました。ここをスマートシティ推進の拠点と位置付け、国土交通省及び東京都が各々推進する豊洲スマートシティプロジェクトに参画するとともに、全国各地で未来の街づくりを研究する自治体、研究機関、企業等との協働を拡充し、事業機会の探究を図っております。
③インフラ・再生可能エネルギー・新規事業他
インフラ・再生可能エネルギー・新規事業関連では、810億円の投資を実施しました。再生可能エネルギー分野においては、洋上風力発電施設建設の受注トップシェア獲得に向けた、世界最大級の搭載能力及びクレーン能力を備えた自航式SEP船「BLUE WIND」を建造しました。初稼働となった富山県入善町沖の洋上風力発電所に加え、北海道石狩湾新港洋上風力発電所の国内プロジェクトを無事に竣工するなど、着実に実績を積んでおります。現在は、台湾の洋上風力発電所プロジェクトにて稼働するなど、その活躍の場をグローバルに広げており、収益拡大・安定化に寄与しております。
また、日本国内で太陽光・バイオマス・水力発電所のグリーンエネルギー開発を進め、脱炭素社会の実現へ向けた取組みを推進しています。
④イノベーション・人財関連
イノベーション・人財関連では、690億円の投資を実施しました。代表的なものに、イノベーションと人財育成の拠点「温故創新の森 NOVARE」の整備があります。「温故創新」とは、ものづくりの原点に立ち返る「温故」と、進取の精神を育む「創新」を実践するという意味が込められており、「森」はそれが自律的に循環するエコシステムを意味しております。このコンセプトのもと、同施設にて、「SHIMZ VISION 2030」に掲げる事業構造・技術・人財の3つのイノベーションを積極的に推進するとともに、それらを融合させるべく同施設を社内外の交流の場とすることで、オープンイノベーションの実践を目指してまいります。
■非財務KPIの達成状況
前中期経営計画〈2019‐2023〉では、基本方針で「ESG経営の推進」を掲げ、「持続可能な地球環境への貢献」、人権尊重の徹底やサプライチェーンを含む労働環境の整備、地域社会との共生など「すべてのステークホルダーとの共生」、「コンプライアンスの徹底とリスクマネジメントの強化」を図るべく、非財務KPIにおいてE・S・Gに生産性を加えた4つの指標を設定しました。
4指標のうち環境(E)とガバナンス(G)については目標を達成しました。生産性向上と社会(S)については、生産性向上に寄与する技術開発や働きやすさの向上に寄与する人事制度・労働環境面の整備の着実な進展を図った一方で、超高層・高難度工事のマネジメントの難しさや繁忙状況の影響を受け、目標未達となりました。これらの経験を活かし、受注管理の高度化や人事・組織制度を含む生産体制改革を実施していきます。
■環境認識をふまえた中期経営計画〈2024‐2026〉への課題
社内環境(清水建設グループの強み、中期経営計画〈2019‐2023〉の成果・継続課題)及び外部環境をふまえ、中期経営計画〈2024‐2026〉にて取り組むべき経営課題を3つ特定しました。
・戦略実行力の向上を目指した経営基盤強化
・収益力の向上と技術・品質確保に向けた事業戦略・グローバル展開の着実な実行
・強みと先行投資成果の活用、多様化するお客様・社会の本質的ニーズの実現
「中期経営計画〈2024‐2026〉」の策定
■位置付け及び基本方針
社是「論語と算盤」及び経営理念を体現し、長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」で示した目指す姿を実現するための実行計画として中期経営計画〈2024‐2026〉を位置付けるとともに、役員・従業員一人ひとりが新たなマインドセット「超建設※」を共有し、本中期経営計画を実践することとしました。
中期経営計画〈2024‐2026〉の基本方針は、前中期経営計画〈2019‐2023〉の振返りにより浮き彫りとなった諸課題をふまえ、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」としました。この基本方針及びそれに基づく事業展開は、「超建設」のマインドセットのもと、レジリエント・インクルーシブ・サステナブルな社会の実現に象徴される「お客様・社会への提供価値」を常に念頭において実践してまいります。
※超建設:清水建設グループにおいて大切にしてきた価値を基礎とし、既存の事業や組織の枠を超えて、お客様や社会の本質的なニーズや課題を積極的に探究しつつ、建設をはじめとするあらゆる事業を通じて、お客様や社会に新しい価値を提供し、その結果、清水建設グループも共に成長していくという考え方
■経営基盤の強化
中期経営計画〈2024‐2026〉を構成する第一の柱として「経営基盤の強化」を挙げています。経営基盤のコアである人財と組織力の成長と、清水建設グループ内の諸機能の連携を強化することによりサステナビリティ経営の進化を図ることを通じ、戦略実行力の向上を目指します。
①人財と組織力の成長
清水建設グループは、人財の成長を支援する仕組みを整備することによって「挑戦し共創する多様な人財」を育成し、そうした人財が経営戦略・事業戦略の実現に貢献するとともに、経営が更なる人財の成長機会・基盤を提供することで、従業員の自己実現と自律的なキャリア形成を可能にします。それらが好循環の原動力となり、経営基盤のコアである「人財の力・組織カルチャー・マネジメント力」を強化することで、経営戦略・事業戦略の実現と、人財・従業員の自己実現・自律的なキャリア形成を推進していきます。
②機能連携の強化によるサステナビリティ経営の進化
前中期経営計画〈2019‐2023〉では、基本方針にESG経営の推進を掲げ、事業活動を通して企業の社会的責任を果たすことを主眼としていましたが、本中期経営計画〈2024‐2026〉では更に前進し、企業の社会的責任と事業機会の探究を両立しながら環境・社会・経済の全てで持続可能性を実現するサステナビリティ経営を体現します。これに向けて、計画期間で重要視する機能としてマーケティング、技術開発・知的財産、デジタル、グローバル化、サプライチェーン、グループ経営の6つを特定し、全社横断でそれらの連携を強めて戦略実行力を強化することにより、企業の社会的責任と事業機会探究の両面でサステナビリティ経営の進化を目指します。
■非財務KPI
中期経営計画〈2024‐2026〉では、経営基盤の強化で掲げた「人財と組織力の成長」及び「機能連携の強化によるサステナビリティの進化」をふまえ、従業員のエンゲージメント・多様性・専門性に加え、ESGの観点で選定した合計9つの指標を設定し、PDCAサイクルによるモニタリングを実施します。
■事業戦略
中期経営計画〈2024‐2026〉における事業戦略では、各事業セグメントの成長段階と位置付けの整理に基づき、各事業に応じた戦略の方向性を策定し、事業ポートフォリオの充実を図ってまいります。
①更なる収益力向上を目指す事業:建設事業(建築・土木)
清水建設グループの建設事業は、「高収益な事業体質への転換」及び「ものづくりの魅力を追求できる生産体制の再構築」の2つの方向性を目指して重点施策を構成し、技術・品質の追求と収益力向上に取り組みます。同時に、建設業界が共通に抱える課題にも挑戦を続け、持続可能な建設業の実現を目指します。
また、社会ニーズに照らし、建築・土木事業における今後の有望マーケットとしてリニューアル、環境、防災・減災、原子力発電関連、伝統・最先端の木質建築、スマートシティ、国土強靭化、インフラ更新、再生可能エネルギー関連施設等を見定め、着実に対応力強化を図っていきます。
②収益拡大と安定化を目指す事業:不動産開発事業、エンジニアリング事業
両事業は事業規模拡大のフェーズにあり、成長と同時に収益の安定化を目指し、技術・ノウハウの蓄積と深化による成長軌道の維持及び発展領域への挑戦に努めます。
不動産開発事業では取組みアセットの多様化、既存ビルのバリューアップ事業、アイマーク、S・LOGI、VIEQU等のグループ不動産ブランド価値の向上、グループ内連携による不動産バリューチェーン拡大等に注力してまいります。
エンジニアリング事業では、再生可能エネルギー・GX、先端・戦略製品の生産施設、DX、環境浄化等の成長分野における受注拡大に注力するとともに、洋上風力のトップランナーとして、発電施設EPC事業とSEP船運用事業で収益安定化・受注拡大を目指します。
③スケール化を目指す事業:グリーンエネルギー開発事業、建物ライフサイクル事業
これらの事業が手掛ける市場は、今後サステナビリティの観点で拡大・多様化が期待されることから、成長ドライブ加速のための投資を継続いたします。
グリーンエネルギー開発事業では、再エネの電源開発と電力小売、そしてHydro Q-BiC等の水素活用技術の開発・実装に注力してまいります。
建物ライフサイクル事業では、建物のライフサイクルを通じ、清水建設グループ全体で一貫したサービス提供と、DX、GXニーズに対応した付加価値の向上を図り、お客様の大切な不動産の価値を高め、長寿命化を実現するソリューションパートナーを目指します。
④ビジネスモデルの確立を目指す事業:フロンティア事業
フロンティア領域として、宇宙開発、海洋開発、自然共生の3分野で、それぞれ技術開発と事業モデルの確立・収益化を目指し、成長投資を継続します。
宇宙開発においては、小型ロケット打上げ事業をはじめとした宇宙輸送関連事業の収益化、高精度衛星測位サービス QuartetS(カルテットエス)の事業化及び月資源利用・月面構造物建設等の研究開発を推進します。
海洋開発では、浮体構造物やその係留に関する設計・施工技術の確立を進めるとともに、浮体式建築の市場創出に向けた活動を推進します。
自然共生については、北海道の大規模ハウスによるイチゴ栽培をはじめとした地域農業の再生・地方創生への貢献に努めます。
■グローバル展開
海外拠点の経営自立化を重点的に推進し、エリアごとの事業機会・リスク・収益性を見究め、進出国に根差した持続的・安定的な事業展開を図る中で収益力強化を目指すとともに、拠点経営を支える人財、ガバナンス、国内外の連携及びローカルパートナーとの連携促進・M&Aを含むグローバルなプラットフォームを進化させ、東アジア・東南アジア、西南アジア・アフリカ、北米の主要エリアで、更なる飛躍を目指します。
■業績目標及び財務KPI
経営基盤強化と事業戦略・グローバル展開の着実な取組みにより、収益力向上と持続的成長に向けた堅固な足場を再構築します。
■キャッシュアロケーション
3年間で稼得する営業キャッシュフローに加え、賃貸用不動産や政策保有株式の着実な売却を通して得たキャッシュを、持続的成長に向けた投資と、積極的・継続的な株主還元に振り向け、更なる企業価値の向上に努めてまいります。
■資本コストや株価を意識した経営の実現
資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、中期経営計画〈2024‐2026〉に定めた事業戦略、成長投資、資本政策、株主還元などを着実に実行することにより、株主資本コストを上回る収益力の確保・維持に加え、持続的成長期待の創出を推進することで、企業価値向上とPBRの早期改善を目指してまいります。
「中期経営計画〈2024‐2026〉」の詳細については、下記URLよりご参照ください。
https://www.shimz.co.jp/company/about/strategy/index.html#sec4
政策保有株式に関する方針・縮減状況
①政策保有株式に関する方針
清水建設は、営業政策上の必要性がある場合、主に「取引先との信頼関係の維持・強化」の目的で、政策保有株式として、取引先の株式を保有します。主要な政策保有株式については、取締役会が保有によって得られる清水建設の利益と取得額、株価変動リスク等を総合的に勘案して取得の可否を判断しています。保有株式については、毎年、個別銘柄毎に、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、取締役会にて、保有の必要性を検証しており、検証の結果、営業上の保有意義が希薄化した株式については、取引先との信頼関係を確認しながら、適宜売却をしております。
なお、清水建設は、資本の有効活用を図るため、2027年3月末までに政策保有株式の残高を連結純資産の20%以下とすることを目標に、取引先との対話を重ね、政策保有株式の縮減を積極的に進めております。
②政策保有株式の縮減状況
2023年度に売却した上場株式の銘柄数は16銘柄(一部売却を含む)、売却額は621億円となり、2018年度から2023年度までに売却した上場株式の銘柄数は67銘柄(一部売却を含む)、売却額は1,500億円となりました。その結果、上場株式の銘柄数は、2018年3月末時点の187銘柄から、2024年3月末時点では138銘柄へと減少しております。
2024年3月末時点における政策保有株式残高の連結純資産に対する割合は、保有銘柄の株価上昇が影響し、2023年3月末の30.6%から34.8%へ上昇しておりますが、目標達成に向けて今後、縮減を加速してまいります。
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清水建設グループは、事業活動の遂行において直面し、あるいは事業活動の中で発生し得るさまざまなリスクを認識し、的確な管理を行うことによって、その発生の可能性を低下させるとともに、発生した場合の損失を最小限にとどめることにより、事業の継続的・安定的発展の確保に努めております。中期経営計画〈2024‐2026〉においても「サステナビリティ経営の進化」を掲げ、「リスクヘッジとリスクテイクの徹底」を図っております。
なお、リスクとは、以下の観点から、清水建設グループの経営において経営目標の達成を阻害する要因すべてを指します。
・清水建設グループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性のあるもの
・清水建設グループ事業の継続を中断・停止させる可能性のあるもの
・清水建設グループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性のあるもの
清水建設は、リスク管理規程に基づき、社長が委員長を務めるリスク管理委員会において、毎年度、全社の「重点リスク管理項目」を定めて各部門の運営計画に反映させており、当該項目には、法令違反リスクや安全・環境・品質に関するリスク等のESG要素も含まれております。同委員会は、本社部門、各事業部門及びグループ会社における機能別のリスク管理状況を定期的(年2回)にモニタリングし、必要に応じて是正・改善措置を指示するとともに、新たなリスクへの対応を図り、その対応状況を取締役会に定期的(年2回)に報告しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が清水建設グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、次のようなものがあります。ただし、清水建設グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見しがたいリスクが顕在化し、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において清水建設グループが判断したものであります。
清水建設グループは、こうしたリスク管理体制のもと、下記に掲げる対応策を適宜実施することにより、リスクの回避又は軽減を図ることで、経営への影響の低減に努めております。
(1)主に外部環境の変化に伴うリスク
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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① |
建設市場の縮小リスク 国内外の景気後退等により民間設備投資が縮小した場合や、財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。 |
取締役会で建設事業の受注見通し、案件量を毎月フォローし、執行役員会議・事業部門長会議等において適宜必要な対策を指示しております。 2030年を見据えた長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」において収益構造の転換を掲げ、中期経営計画〈2024‐2026〉によって各事業に応じた成長戦略を実行しております。 |
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② |
建設資材価格及び労務単価の変動リスク 建設資材価格や労務単価等が、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、建設コストの増加につながり、損益が悪化する可能性があります。 |
厳格な受注前審査の実施、見積提出時における業務範囲の明確化等により、リスクの低減に努めております。 工事請負契約の締結にあたっては、契約条件に労務賃金・建設物価の変動に基づく請負代金の変更に関する規定(スライド条項等)を含めた契約の徹底に努めております。 |
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③ |
取引先の信用リスク 発注者、協力会社、共同施工会社などの取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性があります。 |
取引先に対する与信審査の徹底と継続的なモニタリングを行うとともに、清水建設グループの債権保全が可能な契約の締結に努めております。 |
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④ |
海外事業リスク 海外での事業を展開するうえで、進出国での政治・経済情勢、為替、租税制度や法的規制等に著しい変化が生じた場合や、テロ・戦争・暴動等の発生、資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇や労務需給のひっ迫があった場合には、工事の進捗や工事損益に影響を及ぼす可能性があります。 |
海外事業展開にあたって、事業機会とともにカントリーリスク等も踏まえて地域や国を絞り込み、必要な対策を図っております。 (主な取組み) ・海外大型案件取組み時の審査体制の強化 ・契約リスク管理部署の設置 ・コンサルの活用等によるテロ対策の実施 ・腐敗防止の取組み |
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⑤ |
投資開発事業リスク 景気の減速による不動産市況の低迷や金融市場の変動など、投資開発分野の事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
企業体力に見合ったリスクの範囲内で事業を行うよう毎年度投資計画を策定するとともに、個別案件の取組みにおいては、投資取組基準に基づき、出口戦略(投資の回収計画)も含めて計画的に投資を行っております。 取締役会で投資開発事業の進捗状況、投資残高、事業ポートフォリオ、時価評価を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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⑥ |
長期にわたる事業におけるリスク PFI事業、再生可能エネルギー事業等の長期にわたる事業において、諸物価や人件費、金利等の上昇、取引先の信用不安など、事業環境に著しい変化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
取締役会でPFI事業、再生可能エネルギー事業等の進捗状況を定期的にフォローし、必要な対策を図っております。
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⑦ |
投資有価証券の価格変動リスク 投資有価証券の時価が著しく下落した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
毎年、個別銘柄ごとに、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、保有意義を見直し、取締役会にて、保有の必要性を検証したうえで、保有意義の低下した銘柄は、原則として売却しております。 |
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⑧ |
金利水準・為替相場の変動リスク 金利水準の急激な上昇、為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
金融相場変動リスク管理規程に従い、リスク管理を行っております。 (主な取組み) ・固定金利による資金調達、金利スワップによる金利変動リスクの低減 ・為替予約、通貨スワップ、現地通貨による資金調達、外貨持高の調整による為替相場変動リスクの低減 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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⑨ |
自然災害・感染症リスク 地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症の世界的流行が発生した場合は、清水建設グループが保有する資産や従業員に直接被害が及び、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 災害規模が大きな場合には、受注動向の変化・建設資材価格の高騰・電力エネルギー供給能力の低下等で事業環境が変化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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BCP委員会を設置し、BCPの継続的見直しや訓練計画の決定及び実施状況のフォローを行っております。 (主な取組み) ・首都直下地震、南海トラフ地震等の巨大地震を想定した震災訓練の定期的な実施 ・風水害発生時の行動基準の策定、風水害に関する従業員向け研修(eラーニング)の実施及び風水害を想定した訓練の実施 ・災害時情報共有システムの整備 ・非常用電源の確保及び備蓄品の拡充 ・データセンターのバックアップ体制の構築
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⑩ |
サイバーリスク 標的型メールやマルウェアによるウイルス感染、不正アクセス等のサイバー攻撃の被害にあった場合、事業活動や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
デジタル戦略委員会を設置し、情報セキュリティに関する事項を審議し、必要な対策を図っております。 (主な取組み) ・従業員対象の標的型メール訓練の実施 ・社外公開サーバーの脆弱性診断 ・外部委託によるウイルスの常時監視 ・未知のマルウェア対策の実施 |
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⑪ |
法令の新設・改廃等に係るリスク 社会や時代の変化により、新たな法規制の制定や法令の改廃等があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
事業活動に影響を及ぼす法令の新設・改廃等について適切に対応するため、関連規程・規則を整備し、各種会議体・イントラネット等を用いた社内周知、社内教育・研修(eラーニングを含む)を実施しております。 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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⑫ |
気候変動リスク 脱炭素社会への移行に向けて、建築物の新築時の各種規制の強化や炭素価格付けの導入等がなされた場合、また気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇や気象災害が頻発・激甚化した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。 |
2019年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、2020年から毎年、気候変動に関するリスクと機会を分析・開示するとともに、気候変動への対策を図っております。 (主な取組み) ・気候変動関連のリスクと機会について、取締役会で事業戦略との整合性を確認 ・サステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置し、気候変動を含む地球環境問題に関する基本的な方針・施策を審議・決定 ・環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」、CO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030‐2050」を掲げ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、活動を推進 ・気象災害の頻発・激甚化に対し、グループ会社や協力会社を中心にサプライヤーとの連携を強化 |
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⑬ |
退職給付債務に関わるリスク 年金資産の時価の下落及び割引率など退職給付債務の数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
年金資産運用委員会を設置し、資産運用実績や財政決算シミュレーション等について審議を行い、年金資産運用に関する基本方針並びに政策的資産構成割合の見直し・改定を実施するとともに、委託先の運用機関による運用状況について適切なモニタリングを行い、毎年、取締役会に報告しております。 |
(2)主に業界特性・組織内部に起因するリスク
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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① |
重大事故や契約不適合等のリスク 設計、施工段階における技術・品質面での重大事故・不具合や人身事故、環境事故が発生し、その修復に多大な費用負担や施工遅延が生じたり、重大な契約不適合となった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
「安全第一」「人命尊重」「顧客第一」「品質確保」「環境保全」の事業姿勢を社内で共有し、安全と品質への意識向上を図っております。 (主な取組み) ・技術・品質委員会、安全・環境委員会の設置 ・品質管理部署の追加設置 ・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の運用、安全衛生管理基本方針の制定、全社安全衛生計画の策定 ・QMS(品質マネジメントシステム)の実施、品質方針の策定、CS(顧客満足)推進活動の実施 ・EMS(環境マネジメントシステム)の実施、環境基本方針の策定 ・事故・不具合事例のフィードバック、全社水平展開、PDCAの実施 |
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② |
個人情報・機密情報漏洩リスク 事業活動において取得した個人情報、機密情報が漏洩した場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
「プライバシー・ポリシー」の制定や個人情報保護規程等の整備、全社個人情報保護管理者の設置により、個人情報の適切な管理を実施するとともに、情報セキュリティリスクに対応するため、各種取組みを実施しております。 (主な取組み) ・「情報セキュリティガイドライン」の適宜見直し ・「情報セキュリティハンドブック」の配布、デジタルサイネージを利用した啓発 ・情報セキュリティeラーニング、情報セキュリティ監査の定期的実施 ・日本シーサート協議会への加盟とCSIRT体制によるインシデント対応 |
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主なリスクの概要 |
主な対応策・取組み |
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③ |
法令違反リスク 清水建設グループの主な事業分野である建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには安全・環境、労働、ハラスメント関連の法令等、さまざまな法的規制を受けており、清水建設グループにおいて違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。 |
社是「論語と算盤」を拳拳服膺し、グループ全体で倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図っております。 (主な取組み) ・「企業倫理行動規範」の制定 ・各種法令等に適切に対応するための関連規程類・社内体制の整備 ・企業倫理委員会(委員長:社長)、企業倫理室の設置、内部通報制度(相談連絡先:企業倫理相談室、ハラスメント相談窓口、外部相談窓口、グループ会社相談窓口等)、内部監査体制の整備等、コンプライアンス推進体制の構築 ・経営幹部向け企業倫理研修の定期的実施 (グループ会社幹部含む) ・全従業員へのコンプライアンス研修(eラーニング含む)を毎年実施 ・独占禁止法順守プログラムや行動規準等の整備、独占禁止法違反行為に対する再発防止策の継続実施 ・社内媒体(社内報・法務ニュース等)を通じた啓発 ・グループ会社も清水建設に準じてこれらの取組みを実施 |
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④ |
中長期的な担い手不足リスク 建設業の担い手である技能労働者の高齢化が進んでおり、団塊世代が大量離職するまでに、新規入職者の増加による世代交代が進まない場合、生産体制に支障をきたし、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
官民連携のうえ、担い手の確保・育成、処遇改善、建設業界の魅力向上等に取り組んでおります。 (主な取組み) ・適正な請負代金と工期の確保 ・協力会社を通じた技能労働者の賃金水準の向上、社会保険加入促進 ・週休二日推進 ・協力会社への入職支援、優良技能者の表彰・手当支給、多能工化支援 ・技能者訓練施設(清水匠技塾)を活用した、技能者の適応・定着教育の実施 ・女性の活躍推進 ・建設業の魅力をPRする広報活動 ・外国人材の適正な活躍推進 ・建設キャリアアップシステムの普及・推進 ・省人化工法・建設ロボットの開発・採用、ICTの活用を含む生産性向上の取組み |
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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