アストロスケールホールディングス(186a)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3 【事業の内容】アストロスケールホールディングスグループは、アストロスケールホールディングス並びに連結子会社である株式会社アストロスケール(日本)、Astroscale Ltd(英国)、Astroscale U.S. Inc.(米国)、Astroscale France SAS(フランス)、Astroscale Israel Ltd.(イスラエル)及びAstroscale Singapore Pte. Ltd.(シンガポール)(注1)で構成されております。アストロスケールホールディングスグループは、宇宙空間における軌道上サービス(注2)を通じて、人工衛星運用者やロケット事業者の事業価値の向上及び宇宙の持続的な利用に貢献してまいります。技術面では、コア技術である「宇宙空間の非協力物体(注3)に対するRPO技術(注4)」及び関連技術の研究開発並びに宇宙空間で提供されるサービスの開発を行っております。RPO技術は、人工衛星やデブリの除去、軌道変更・軌道維持、燃料補給、観測・点検、再利用・交換、製造・修理といった様々な軌道上サービスを実現可能にするものです(注5)。事業面では、非協力物体に対するRPO技術の実証ミッションである、「ELSA-d(後述)」及び「ADRAS-J(後述)」による成果をもとに、2030年までに観測・点検、寿命延長・燃料補給、並びにデブリ除去をそれぞれ複数ミッション打ち上げることで軌道上サービスを日常的なものにすべく、日本、英国、欧州、米国等において、調査研究・研究開発・宇宙空間での実証・サービス等購入に関する契約の締結や補助金の獲得等に取り組んでおります。2035年までにさらに部品交換・修理といったサービス分野にまで広げ、政府機関・防衛機関からの需要獲得を継続・拡大しつつ、民間事業者からの需要獲得拡大によりさらに成長することを目指しております。 図1 アストロスケールホールディングスグループが取り組む軌道上サービスと時間軸 (注) 1.本書提出日現在において、Astroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。2.人工衛星やデブリ等に対して軌道上において提供するサービスのことをいいます。3.「宇宙空間の非協力物体」とは、デブリなど、位置情報を発信せず自由運動(回転など)をして宇宙空間を飛翔している物体を指します。4.Rendezvous and Proximity Operations(ランデブ・近傍運用)技術の略です。5.現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含みます。6.以下、本「3 事業の内容」においては、個別に明記している場合を除き、1米ドル=155円、1ユーロ=180円、1英ポンド=205円の円換算レートを使用しております。 1 宇宙環境と軌道上サービスの必要性1.1 軌道について人工衛星が通る道筋を「軌道」といい、衛星は、1つの決まった平面の中で地球を周回しています。この平面は「軌道面」と呼ばれ、人工衛星が地球を回る軌道面には、必ず地球の中心が含まれます。地球を回る軌道のうち、高度2,000km以下の軌道を低軌道(low Earth orbit、以下「LEO」)、高度約36,000kmの軌道を静止軌道(geostationary orbit、以下「GEO」)といいます。低軌道は地表に近いため、高精度観測を必要とする観測衛星に多用されます。国際宇宙ステーションも低軌道を飛行しています。静止軌道は、同軌道上の衛星が地球の自転周期と同じ時間(約24時間)で地球を一周し、地上の観測者から相対的に静止しているように見えることから「静止軌道」と呼ばれております。静止軌道上の衛星からは地球の片半球全体を常に俯瞰できるため、気象衛星や通信・放送衛星に適します。アストロスケールホールディングスグループは、低軌道及び静止軌道の双方において軌道上サービスを提供すべく、研究開発を行っております。 図2 人工衛星が通る道筋である「軌道」 1.2 衛星データ利用の活発化グローバル経済は人工衛星から受け取るデータに大きく依存しています。自動車、船舶及び飛行機の交通管制、天気予報、衛星放送並びに災害監視のほか、農業や漁業にも衛星データがリアルタイムに活用されています。その他にも、物流、金融市場、インターネット、安全保障等の地球上の社会基盤インフラサービスが、宇宙技術と密接不可分に様々な形で提供されています。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の実現にも、衛星は大きく貢献しています。SDGsは17の目標とそれに因んだ169のターゲットによって構成されていますが、国連宇宙部等の共同研究によれば、そのうち65個のターゲットは地球観測や位置情報といった衛星技術を直接的に必要としており、通信衛星を含めればさらに衛星技術を必要とするターゲットの数は増えると考えられています(注1)。例えば、1番目の目標である「貧困をなくそう」については、インターネット網が行き届かない貧困地域において、通信衛星が宇宙からデータ通信サービスを提供することで、モバイルバンキングシステムを実現しています。また、13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」については、大気、海洋及び地表における気候データの5割以上は衛星の観測データによるものであり、気候変動予測などに役立てられています。これらは一例であり、様々なSDGs目標の実現のために、衛星データの多様な活用がなされています。 図3 地球上の社会基盤インフラサービスは宇宙技術に大きく依存 (注) 1.国連宇宙部: https://sdgs.un.org/un-system-sdg-implementation/united-nations-office-outer-space-affairs-unoosa-24523 1.3 宇宙環境の悪化(これまで)宇宙空間においては、運用終了や故障により役目を終えた人工衛星、人工衛星の打上げに使われたロケットの上段、それらの爆発や衝突で生じた破片などが、デブリとなり地球の周囲を秒速約7〜8kmという非常に速い速度で飛翔しています。その数は年々増加し続けており、大きさが10cm以上の観測可能なデブリは約54,000個となり、大きさが数cm級のものも含めると約120万個にのぼります(2026年6月現在、注1)。また、大型のデブリは質量数トン、大きさ数十m級のサイズになります。稼働中の人工衛星の数も増加しており、約15,800機となっています(2026年6月現在、注1)。これらの人工衛星も、運用終了や故障等により将来のデブリになる可能性があります。 (注) 1.欧州宇宙機関(European Space Agency、以下「ESA」)"Space debris by the numbers (Information last updated on 25 June 2026)" 図4 デブリによる宇宙環境の悪化(イメージ図)(注2) (注) 2.左:アメリカ航空宇宙局(the National Aeronautics and Space Administration(以下「NASA」)ゴダード宇宙飛行センター、右:ESAの公表資料をもとにアストロスケールホールディングス作成 図5 地球周回軌道上における物体数の推移(注3) (注) 3.NASA Orbital Debris Program Office(https://orbitaldebris.jsc.nasa.gov/quarterly-news/pdfs/odqnv29i1.pdf) 宇宙空間の物体(衛星やデブリ)の数は、図5が示すように、増加傾向にあります。特に、2020年以降は、コンステレーション衛星を含む人工衛星の打上げなどにより増加のペースが速まっています。宇宙空間における物体の数は既に危機的な水準にまで達しており、低軌道における衛星の他物体との1km以内のニアミスの数は、2020年以降、加速度的に増加しています(図6)。実際に物体同士の衝突も起きており、小さな破片が多数発生しております。これらの破片は、大きさわずか数mmであっても、衛星やロケットなどの宇宙機に衝突すれば壊滅的な被害を生じさせることが想定されます。宇宙空間の物体の連鎖反応的な衝突はいつ起きてもおかしくない状態であり、速やかに対策を講じなければ、やがて宇宙空間は利用できなくなり、交通管制、通信、放送、測位といった宇宙技術の恩恵を受けられなくなると考えます。したがって、デブリの増加防止及び(衝突や爆発をする前の)既存デブリの除去が、宇宙の持続利用のために急務となっています。 図6 低軌道(LEO)における人工衛星の他物体との1km以内のニアミス数(月次)(注4) (注) 4.The Center for Space Standards & Innovation at COMSPOC, with the Space Data Association, “Evaluation of LEO Conjunction Rates Using Historical Flight Safety Systems and Analytical Algorithms” (2021) をもとにアストロスケールホールディングス作成 1.4 宇宙環境の悪化(これから)宇宙利用は拡大基調にあります。数十機から数千機という多数の小型衛星を一体的に運用する「衛星コンステレーション」という新たな運用形態により、観測衛星による観測頻度を大幅に向上させたり、静止軌道以外での衛星通信を可能にしたりする新たなサービスが生まれています。加えて、ビッグデータ処理や、AI解析、IoTなどの宇宙分野以外における変革により、新たな宇宙利用サービスの創造が起きています。さらに、従来は国が主体となって宇宙開発を行うことが一般的でしたが、宇宙の事業主体が官から民へ移行しつつあります。米国を始めとする先進国では、商業ベースで、衛星の開発・運用や打上げサービス等を提供できるベンチャー企業等を政策的に育成・強化し、国はこれらの事業者からサービスを調達する方式が徐々に採用され始めています。このような、新たなサービスの創造並びに衛星の製造、打上げ及び運用に伴う宇宙利用コストの大幅な低下が、宇宙利用を加速させています。その結果、2030年までに、宇宙空間における宇宙機及びデブリがともに大幅に増加すると予見されており、宇宙環境は今にも増して加速度的に悪化すると考えられています。 1.5 軌道上サービス自動車・船舶・航空業界等には販売後のアフターサービスがあり、点検・保守、修理・延命、移動・廃棄といったバリューチェーンを用意することで、利用環境を持続可能にするとともに、利用者のコストを最適化しています。宇宙環境が持続利用不可能な状態に向かっているのは、そのようなバリューチェーンが存在せず、いわゆる使い捨て文化のまま今日に至ったためです。役目を終えたり故障したりした衛星やロケット上段は、そのまま軌道上に滞在し続けデブリと化しています。すなわち、これまでの宇宙業界は、Reduce(削減)、Reuse(再使用)、Refuel(燃料補給)、Repair(修理)、Relocation(移動)、Remove(除去)、Recycle(再利用)などができない状態であり、それを可能にするのがアストロスケールホールディングスグループの軌道上サービスです。 図7 軌道上サービスは宇宙業界のバリューチェーンを拡大(イメージ図。現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含む) 実際に、宇宙環境の急速な悪化を受け、自動車・船舶・航空業界に交通管理の仕組みがあるように、宇宙機の円滑かつ安全な運行のために、いわゆる「宇宙交通管理(Space Traffic Management、以下「STM」)」が必要との議論が、2018年頃から米国や欧州等の宇宙先進国や国際連合等で行われています。例えば、日本における自動車の交通管理に関しては、道路交通法やその他の交通管制に係る法律があり、また、公益財団法人日本道路交通情報センターのように、国内の交通状態を一元的に把握する仕組みがあります。さらに、故障車や事故車によって交通を妨げず、円滑で適切な運用を実施できるよう、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)等が提供するロードサービスが存在します。このような仕組みを宇宙空間にも整備しようとするSTMの議論が世界で活発になっており、現時点で、そのルールは、各国の法規制や国際的ガイドライン、行動規範、ベストプラクティス事例、業界指針などの集合体になると考えられています。STMのうち、宇宙空間状況を把握することをSSA(Space Situational Awareness)、軌道上サービスをOOS(On-Orbit Servicing)と呼び、安全な宇宙航行のための必要な要素と考えられています。2024年9月には、国連本部において全会一致で「未来のための協定」が採択され、国連宇宙空間平和利用委員会(UN COPUOS)を通じて、スペースデブリ、宇宙交通管理・調整、宇宙資源に関する新たな枠組みの構築について議論することが合意されました。 1.6 RPO技術アストロスケールホールディングスグループの軌道上サービスにとって特に重要な技術は「安全に接近・捕獲し、何らかのサービスを提供する技術」であり、RPO技術と呼ばれます。RPO技術は、複数のプロセスとそれに必要な技術要素の組み合わせになります。例えば、デブリ除去には、(1)対象物体(デブリなど)の軌道要素の推定及び打上時刻の決定、(2)対象物体の絶対位置を推定して接近する遠方域接近(絶対航法)、(3)対象物体の姿を捉えて様々なセンサを用いながら接近する近接接近(相対航法)、(4)対象物体の運動推定、回転を合わせることによる相対運動量の除去、(5)捕獲とその後の合体重心の推定や姿勢の安定化、(6)軌道上サービスの提供、といった各ステップで高度な技術が必要になります。また、必要に応じて制御落下(対象物体が大気圏に突入する際に燃え残った場合の地上への落下災害リスクを低減するため、安全な海域に落下させること)といった技術の開発も求められます。過酷な宇宙環境を想定した試験や、故障が起きた場合の対応、安全性を担保するための高性能なシミュレーション、複雑な衛星運用のための管制センターや運用手順書など、各ステップで必要となる技術の開発やその運用を支える基盤技術やノウハウも、RPO技術を支える重要な構成要素になります。 図8 コア技術であるRPO技術(上図⑥には、現時点で構想段階にあり、提供が開始されていないサービスも含む) 2 事業の内容2.1 グローバル体制図宇宙環境問題の解決には全世界的に取り組む必要があるため、アストロスケールホールディングスグループは、日本に本社を置き積極的なグローバル展開を実施しております。日本のほか、英国、米国及びフランスに現地拠点を有し、世界の政府宇宙予算トップ10か国に含まれる同盟国・同志国(注1)全てにアクセス可能な体制としております。また、アストロスケールホールディングスグループ従業員の約7割を占めるエンジニアは各国に所在しており、現地で研究開発を行っている他、現地の経営陣や営業部隊、生産設備等も有しており、現地企業として直接現地政府から受注可能な体制を整備しております。 図9 アストロスケールホールディングスグループのグローバル体制(注2) (注) 1.Novaspace “Government Space Programs 25th Edition”2.本書提出日現在において、図に記載の他、イスラエル及びシンガポールに連結子会社を有しております。なお、シンガポールの連結子会社であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.は休眠状態にあります。 2.2 軌道上サービス市場軌道上サービスは、宇宙業界でも新しい分野ですが、市場規模拡大が期待されており、2023年から2033年の累計売上収益は182億ドル(約2.8兆円)(注1)と推計されています。これまでは政府機関(非防衛)が需要を牽引しており、アストロスケールホールディングスグループとしては、政府機関からの需要は今後も引き続き拡大していくと見込んでいます。また、2024年4月期中に、地政学的な変化と防衛における宇宙領域の重要性認識の高まりにより、防衛機関からの需要が顕在化し始めました。防衛機関からの需要はこの市場の当面の成長ドライバーになると期待されています。現在、特に静止軌道上では敵国衛星が安全保障上重要な衛星に対して異常に接近するといった脅威が観測されており、重要な衛星を防護する衛星に対するニーズが高まっています。防衛省が2025年7月に公表した宇宙領域防衛指針においては、重要宇宙アセットを脅威から守るために、①SDA(Space Domain Awareness、宇宙領域把握)衛星、②自律的かつ機動的な運用が可能な衛星、③防護能力を持つ衛星の3種類を明示しています。アストロスケールホールディングスは2025年2月に、防衛省より②の衛星に相当する「機動対応宇宙システム実証機」の試作に係る契約を獲得しており、この分野での継続受注獲得を目指しています。また、日本国外でも同様の防護衛星に対するニーズが顕在化しています。この他、米国宇宙軍では次世代のSDA衛星には燃料補給能力を必須化する計画を明示しており、アストロスケールホールディングス米国法人が米国宇宙軍から受注したAPS-Rミッションを通じて実施する燃料補給実証を経て、燃料補給ビジネスに対するニーズの増加も期待しています。加えて、政府機関及び防衛機関からの需要の増加とそれに伴う技術進展並びにアストロスケールホールディングスの寿命延長サービスの実証完了やデブリの低減に関する法規制の議論の前進(注2)などによって民間事業者からの需要の出現がさらなる市場拡大に寄与していくものと考えております。軌道上サービスを受けられるよう、事前にドッキング・インターフェース(例:ドッキングプレート(注3))を搭載した衛星の打上げも進められています。 (注) 1.Northern Sky Research In-Orbit Services Report (NSR IOSM) 3rd, 7th edition2.詳細については、下記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境及び対処すべき課題」の「法規制作りへの働きかけ」をご参照ください。3.あらかじめ識別マーカを備えた磁性体のプレート。衛星に当該プレートを搭載することで、捕獲機(サービサー)による捕獲対象衛星(クライアント)の識別、運動推定、接近、捕獲、軌道離脱を比較的容易にし、除去費用を抑えることが可能になります。 2.3 5つの軌道上サービスアストロスケールホールディングスグループでは、以下5つの軌道上サービスの開発を行いながら、政府機関、防衛機関及び民間事業者の需要獲得に取り組んでいます。① 故障機や物体の観測・点検サービス(In-situ Space Situational Awareness、以下「ISSA」)② 寿命延長・燃料補給サービス(Life Extension Service、以下「LEX」)③ 衛星の修理・改修サービス④ 既存デブリの除去サービス(Active Debris Removal、以下「ADR」)⑤ 衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス(End-of-Life Service、以下「EOL」) 図10 5つの軌道上サービスのイメージ図 各サービスの想定顧客と主な技術の比較は以下の通りです。 図11 各軌道上サービスの想定顧客と主な技術の違い ① ISSA(故障機や物体の観測・点検サービス)概要:故障衛星やデブリといった非協力物体に対し、安全に至近距離に接近することは極めて難易度が高く、その理由は、非協力物体からは位置情報が発信されず、接近して観測・点検を行うことが困難であることにあります。この点、アストロスケールホールディングスグループの故障機や物体の観測・点検サービス(ISSA)においては、観測用衛星を打ち上げ、非協力的物体に安全に近距離まで接近し、可視光カメラ及びその他のセンサ類を用いて、対象物体のデータを取得することで、故障の原因解析への活用や、相手物体の把握(例えば、大型デブリを除去する前に位置や回転状況、形状、表面状態などを確認すること)を可能にするサービスを提供します。ISSAにおける相手物体の把握は、ADRに必要なデータを事前取得する役割も果たします。また、防衛用途では、特に静止軌道上での宇宙領域把握(Space Domain Awareness、以下「SDA」)をはじめとする宇宙監視、情報収集による宇宙作戦能力の向上にも貢献します。主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は主に政府機関や防衛機関となります。提供価値:概要に記した通りです。技術:アストロスケールホールディングスグループは、CRD2のフェーズIとして、2024年2月18日に打ち上げたサービサー衛星ADRAS-Jを用いて、非協力物体への近接、観測のための技術の宇宙実証を行い、フェーズIを完了しました。本ミッションの実証成果につきましては、下記「3.4 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」にて詳述しております。事業上の取り組み:文部科学省の中小企業イノベーション創出推進基金(SBIR基金)における宇宙分野のテーマ「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」において、アストロスケールホールディングスグループが、2023年9月、「軌道上の衛星等除去技術・システムの開発・実証」という研究開発課題に採択されました。アストロスケールホールディングスグループは、2023年10月から最長2028年3月までの期間、文部科学省からの補助を受け、大型の衛星を対象デブリとした近傍での撮像・診断ミッションにおいて、技術開発及びミッション遂行を担います。また、2025年1月に、英国政府プログラムの一環としてBAE Systems plc社から観測ミッションに関する契約(プロジェクト名:Orpheus(オルフェウス))を獲得しています。さらに、2025年2月に、防衛省より機動対応宇宙システム実証機の試作に係る契約を獲得しており、2028年3月末までに納品予定です。実際の打上げ、運用、実証に関しては別契約を予定しています。 ② LEX(寿命延長・燃料補給サービス)概要:アストロスケールホールディングスグループの寿命延長サービス(LEX)は、燃料が枯渇した衛星や、想定外の燃料消費により予定より早く寿命を迎える衛星、あるいは軌道がずれてしまった衛星に対して、ドッキング(捕獲)を行い、アストロスケールホールディングスグループのサービサー衛星の燃料を用いる、若しくは燃料補給を通じて、衛星の運用期間の延長や別の軌道への遷移などのサービスを提供するものです。主な顧客:想定する対象顧客は、低軌道や静止軌道で衛星を運用する政府機関・防衛機関や民間事業者になります。特に、静止軌道では毎年20機以上の衛星が退役しております。提供価値:静止衛星は、軌道上の特定の場所において、地上に対して相対的に静止し続ける必要がありますが、衛星には外力(月や太陽による引力等の様々な力)が働くため、ステーションキーピングと呼ばれる軌道を維持するための制御を随時行う必要があり、かかる軌道制御のために定常的に燃料を消費します。そのため、静止衛星は、燃料が枯渇すると運用ができなくなります。静止衛星は、軌道制御のほかにも、①軌道投入に失敗した場合の位置補正、②フリートマネジメント(静止衛星を別経度に移動させること)、③墓場軌道への移動(国際ガイドラインにより、運用を終了した静止衛星は高度を300kmほど上げ、墓場軌道と呼ばれる場所に退避することが勧告されています)などのために、燃料を消費します。静止衛星の運用者は、静止衛星の燃料枯渇の数年前から後継衛星の開発を開始しますが、静止衛星の大型化に伴い、打上げ費用を含めた数百億円の投資が必要となります。LEXサービスは、そうした衛星運用者の、既存の衛星を極力使用し続けたいというニーズに応えるものです。技術:アストロスケールホールディングスグループは、イスラエルに連結子会社であるAstroscale Israel Ltd.を設立し、2020年6月に、同国で寿命延長サービスを開発する、Effective Space Solutions社の知的財産権を取得し、同社のR&D拠点の従業員を承継しました。この事業譲受により、低軌道(LEO)から静止軌道(GEO)までを対象とした軌道上サービスに取り組むことが可能になりました。LEXサービスに用いるLEXI(レクシー)という名称のサービサーは、将来需要を鑑み、本書提出日現在、アストロスケールホールディングスグループの自己資金で開発しております。LEXIの捕獲機構は、ペイロード・アダプター・リング(PAR)という、宇宙業界で幅広く採用されている、打上げ時のロケットと衛星のインターフェースとなる円形状の構造物を把持する設計で、軽量であり、様々なサイズのPARを把持できる特徴を持っています。事業上の取り組み:アストロスケールホールディングスの米国子会社であるAstroscale U.S. Inc.は、寿命延長サービスに興味を示している静止衛星を運用する民間事業者と協議を継続しております。アストロスケールホールディングスでは、2027年4月期から2031年4月期にかけて毎年約20~30基の静止衛星が退役し、寿命延長サービスに関する需要が生じると見込んでおります。その上で、アストロスケールホールディングスは、LEXサービスのうち軌道修正に関して、毎年1~2社程度の各国の顧客に軌道修正サービスを提供することを目指しております。LEXサービスのうち燃料補給に関しては、Astroscale U.S. Inc.が、2022年1月に米国Orbit Fab社との間で、静止軌道上の衛星への燃料補給に関する商業契約を締結したほか、2023年9月に米国宇宙軍より静止軌道における燃料補給衛星の開発を受注しております。その後、3回にわたり契約金額が増額され、燃料補給衛星のプロトタイプの開発から、静止軌道上での実証運用に契約範囲が拡大しています。国内では、内閣府主導のもと創設された「経済安全保障重要技術育成プログラム(以下「K Program」)において、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下「JST」)が公募した「協力衛星を対象とした宇宙空間における燃料補給技術の確立」の研究開発の募集が行われ、2025年1月に、日本子会社である株式会社アストロスケールが委託先として採択されました。2025年9月には初年度の契約を締結し、衛星名をREFLEX-Jとしてプロジェクトが開始いたしました。その後初年度の契約額増額、2年目の契約締結を行っております。なお、燃料補給サービスに必要な衛星給油口接続システムについては、本田技術研究所と共同で開発し、本ミッションにおいて使用される予定です。 ③ 衛星の修理・改修サービス概要:衛星の修理・改修サービスは運用中の既存衛星に接近した上で安全に接続し、ロボティクス等の技術を用いて劣化・旧式化したシステムの交換等による衛星の修理や機能アップグレードを通じた寿命延長を計るサービスです。主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は政府機関、防衛機関や民間事業者です。提供価値:軌道上での修理・改修を可能とすることにより、顧客は代替機を打ち上げることと比較して低廉な投資額で損傷した衛星を修理し、運用を継続できる他、運用中に機能アップグレードを施すことで獲得できる収益を増加させること等が期待できます。また、修理を前提とした衛星の設計を採用することにより、必要となる冗長性を減らし、当初必要となる設備投資額を緩和させる効果も期待できます。技術:修理・改修サービスでは、ADRやEOLサービス同様、対象衛星に接近・ドッキングすることが求められます。その上で、ロボットアーム等の機構を用いて、部品の交換等を実施します。また、軌道上で精密な動きを求められるほど修理に係るコストが高くなることが想定されるため、対象となる衛星を容易に修理可能となるようモジュール化しておくことで、運用期間全体にわたるコストの低減を狙うことが可能となります。事業上の取り組み:アストロスケールホールディングスグループは英国で2025年12月に欧州宇宙機関から軌道上改修・アップグレードサービス(In-Orbit Refurbishment and Upgrading Service)の調査案件を受注いたしました。この調査案件においては、ロボット技術とサービス技術を用いて、軌道上の既存衛星に安全に接続し機能向上を図る方法を検討し、劣化・旧式化したシステムの交換等による衛星の機能アップグレードや寿命延長が、技術的及び商業的に実現可能か評価することを目的としています。また、米国では2026年1月に米国航空宇宙局(以下「NASA」)よりNASAのHabitable Worlds Observatory (以下「HWO」)への軌道上サービス提供の可能性を調査する新規案件に採択されました。本案件は、NASAと初めての直接契約です。HWO は、他の恒星を周回する惑星において生命の兆候を探すことを目的に設計された、初めての宇宙望遠鏡です。NASA は今回初めて、将来軌道上サービスを受けることを前提としたミッション設計を検討し、軌道上サービスを受けることで、HWO の運用を世代を超えて長期的に継続することを目指しています。本件では、ASUSの軌道上サービスの技術を取り入れることで、HWOの①プログラムリスクの低減、②科学的成果の向上、③資源利用の最適化、④観測停止期間の最小化、⑤メンテナンス及びアップグレード機会の最大化を実現する方法を調査します。 ④ ADR(既存デブリの除去サービス)概要:ADRサービスは、捕獲用アームを用いたデブリの除去サービスであり、アストロスケールホールディングスグループのサービサーを打ち上げ、既存デブリを捕獲し、軌道を降下させ、大気圏で燃焼させて除去するサービスです。既存デブリのうち、特に質量数トン級の巨大なデブリは破砕すると宇宙環境に大きな影響を与えるため、早期の除去が必要です。主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は政府機関です(過去に排出されたデブリの大半が政府機関によるミッションに由来するものであることに加え、過去に民間事業者により排出されたデブリについては、その排出の責任を当該民間事業者に遡及的に問うことは困難であるため)。提供価値:既存デブリを早期に除去することで、既存デブリが破砕し、捕捉も捕獲もできない小さなデブリとなることを防ぎます。宇宙環境を保全し、宇宙空間に配置されている衛星群を持続的に利用するためには、既存デブリの除去が必要です。技術:ADRサービスにおいては、アストロスケールホールディングスグループのサービサーが、既存デブリ(重量数トンまで)をクライアントとして、接近し、捕獲用アームで捕獲後、軌道を降下させることで、クライアントを混雑軌道から退避させて破砕による宇宙環境の悪化を防ぎます。EOLサービスと異なり、クライアントがドッキングプレートを搭載していないことから、捕獲に磁石ではなく捕獲用アームを使用するため、運動推定や捕獲の難易度はEOLサービスより高くなります。事業上の取り組み:日本では、宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)が民間事業者と連携し、世界初の大型デブリ除去等の技術実証(CRD2:商業デブリ除去実証)を開始しました。アストロスケールホールディングスグループは、2020年に同ミッションのフェーズIを受注しました。フェーズIは、サービサーが、非協力物体であり日本を登録国としているロケットの上段へ接近し、その運動や損傷・劣化状況を観測するものです。そのため、フェーズIで実証された技術の内容は、先述のISSAに相当します。アストロスケールホールディングスグループは、CRD2のフェーズIを遂行するアストロスケールホールディングスグループのサービサー衛星であるADRAS-Jを2024年2月18日に打ち上げ、JAXA要求ミッションを完了しました(後述の「3.4 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」参照)。また、フェーズII(ADRAS-J2)においては、当該ロケット上段に接近後、捕獲し軌道降下させる実証実験が計画されております。アストロスケールホールディングスグループは、フェーズIIに係るフロントローディング技術検討を2022年8月に受注し、2023年12月に完了しており、フェーズII本体についても、2024年4月にJAXAから株式会社アストロスケールを選定企業として選定する旨の選定結果通知書を受領し、2024年8月に契約締結いたしました。英国では、英国宇宙庁(United Kingdom Space Agency、以下「UKSA」)のデブリ除去プログラムCOSMICに関し、2021年10月にADRの概念設計(フェーズ0/A)を受注、2022年9月には基礎設計に該当するフェーズBを受注し、2024年4月にはフェーズBを完了しました。さらに、従前アストロスケールホールディングス開示資料にてCOSMICフェーズCと呼称していた後続ミッションの初期段階を切り出したフェーズ2を2024年9月に受注し、2025年5月に完了しました。2025年7月に後続フェーズであるミッション契約の公募が公表され、Astroscale Ltdは入札に参加しています。フランスでは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)と、2023年6月に同国由来のデブリのうちいずれを優先的に除去すべきか検討するための共同研究契約を締結しました。今後、日本での実証を経て技術が成熟化し、尚且つ世界の主要国で各国が排出したデブリを除去するためのサービス調達が始まることを想定して、アストロスケールホールディングスグループは、世界主要国の政府機関や宇宙機関を主要顧客としてADRサービスを展開します。 ⑤ EOL(衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス)概要:EOLサービスは、運用を終了した衛星のデブリ化を防止するための除去サービスです。具体的には、アストロスケールホールディングスグループの捕獲機(サービサー)を打ち上げ、故障機や寿命を迎えた衛星を捕獲し、のちに軌道を降下させ、大気圏で燃焼させて除去するサービスです。ADRと異なり、打上げ前にドッキングプレートを潜在顧客衛星に取り付けておくことで、磁石を用いた捕獲機構で捕獲が可能となります。接近・捕獲の難易度を下げることに加え、1,000kg以下の故障衛星を対象とし、サービサー1機で複数の故障衛星を除去することを想定しており、ADRに比して安価な除去サービスが可能になります。主な顧客:本サービスが想定する対象顧客は衛星コンステレーションの運用事業者です。衛星コンステレーションは、多数の衛星を一つの軌道面に配備し、その上で、複数の軌道面を用いることで、数十機から数千機の衛星を用いて地球全体をカバーする運用を行います。故障機等がデブリとして軌道上にそのまま放置され続けると、デブリと故障機の衝突により生じた微小デブリによる軌道面汚染、自社の他衛星との衝突によるサービス停止、及び衝突回避のための燃料消費による衛星の短命化等の危険性が高まり、かかるリスクによって収益が減少する恐れがあるため、速やかに故障機等を除去するニーズがあります。2020年前後より、数社が大型のコンステレーション衛星の打上げを開始し、現在、世界中で100以上の会社・組織がコンステレーション衛星の設計・開発又はその検討を進めています。 図12 コンステレーション衛星の配置イメージ 今後生まれるデブリの大半は、コンステレーション衛星から発生すると考えられています。各コンステレーション衛星は、ミッション終了後に軌道離脱(デオービット)する機構を保有しますが、故障した場合の軌道離脱のバックアップ手段を有しません。国際機関間スペースデブリ調整委員会(以下「IADC」)によるデブリ低減ガイドライン及び国連デブリ低減ガイドラインでは、低軌道(LEO)においては、衛星の運用終了後25年以内に、大気圏に突入し燃焼することでの廃棄を行うこと(Post Mission Disposal、以下「PMD」)とされています。軌道上の衛星のうち、運用終了後25年以内に大気圏に落下させることによる廃棄の成功率(Post Mission Disposal Rate、以下「PMD率」。自然に25年以内に落下する軌道の物体は除く)は、2000年以降改善してきたものの、7割程度にとどまっており(注1)、全体の衛星数の増加を考えると、運用終了又は故障後の衛星の多くが宇宙空間に長期にわたり残存して宇宙環境を悪化させていることがうかがえます。提供価値:上述のデブリと故障機の衝突により生じた微小デブリによる軌道面汚染、自社他衛星との衝突によるサービス停止、及び衝突回避のための燃料消費による衛星の短命化等、並びにこれらのリスクによってもたらされる収益減少のリスクを低減します。また、米国、欧州、日本等の各国・地域において進んでいるデブリ低減のための新たな法規制づくりの遵守を可能にします(注2)。さらに、EOLはコンステレーション衛星のエコノミクスを最適化します。コンステレーション衛星自らによる軌道離脱だけでPMD率を100%に近づけようとすると、全ての衛星に二系統の軌道離脱機能を持たせることなどが必要になりますが、その反面、重量や打上げ費用の増加等によりコストが大幅に上昇します。加えて、コンステレーション衛星は、寿命が近づくと次の新たな衛星群に世代交代しサービスを継続しますが、新たな衛星群の準備が間に合わない場合には、軌道離脱用の燃料を用いて運用寿命を延長し、自力で軌道離脱できなくなった衛星にEOLサービスを用いるという選択肢も提供します。技術:EOLサービスは、コンステレーション衛星に、ドッキングプレートを搭載することを前提としています。故障機又は運用終了後の衛星である捕獲対象衛星(クライアント)を捕獲する際は、あらかじめドッキングプレートを付けたクライアント(主に重量100kg~1,000kg)に対し、捕獲機(サービサー)が磁石を用いた捕獲機構を駆使して捕獲・除去します。事業上の取り組み:グローバルに衛星通信サービスを提供するNetwork Access Associates Ltd(以下「Eutelsat OneWeb社」)は、2019年12月にはアストロスケールホールディングスグループが設計に参画した、Altius Space Machines Inc.(以下「Altius社」)製ドッキングプレートを事前にEutelsat OneWeb社の衛星に搭載することを発表し、2020年12月以降に打ち上げられた同社の全ての衛星にドッキングプレートが搭載されています。また、ESAによる支援のもと、アストロスケールホールディングスグループは、Eutelsat OneWeb社とSunriseプロジェクトを契約し、故障や運用終了により役目を終えたコンステレーション衛星を複数機除去可能なEOLサービサー「ELSA-M」(後述)を開発中です。Sunriseプロジェクトは、2024年7月、全部で4つのフェーズのうちの最終フェーズ(フェーズ4)の契約を獲得しました。また、他の衛星コンステレーション運用事業者も、ELSA-Mによる磁石捕獲が可能なインターフェースの事前の搭載を検討しております。Astro Digital US Inc.(以下「Astro Digital社」)は、同社が製造するコンステレーション衛星等向けのバスにアストロスケールホールディングスグループ製のドッキングプレートを搭載することを発表し、2025年1月に搭載済み衛星が打上げられました。Airbus Constellations Satellites SAS社からは、2025年3月に100個以上のドッキングプレートを受注いたしました。また、上記以外の衛星コンステレーション運用事業者ともドッキングプレートの搭載について議論を続けており、2025年11月に公表した詳細非開示のドッキングプレートの受注をもって、将来ドッキングプレートを搭載した軌道上の衛星は1,000基を超える見込みです。本書提出日現在、ドッキングプレート(ELSA-Mと互換性のある第三者製造のドッキングプレートを含む)を搭載した衛星は軌道上に571機存在しております。 (注) 1.ESA's Annual Space Environment Report 20262.詳細については、下記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境及び対処すべき課題」の「法規制作りへの働きかけ」をご参照ください。 図13 ドッキングプレートについて左:ELSA-Mがドッキングプレートを目標として故障衛星に接近する様子(イメージ図)右:ドッキングプレート 2.4 事業系統図アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービサーの設計・開発及び製造から、サービス提供に至るまで一貫して自社で行います。アストロスケールホールディングスのサービス提供領域は宇宙空間ですが、ミッション遂行時の取得データを地上で顧客に提供する場合もあります。5つの軌道上サービスのいずれも、対象物体(衛星やデブリなど)の保有者や運用者から依頼を受けてサービスを提供し、かかるサービス提供の対価を受領する仕組みです。サービサーの一部部品の調達や加工においてはサプライヤーと協業し、ロケットによる打上げは、打上げサービス業者に委託します。 図14 アストロスケールホールディングスグループの事業系統図 アストロスケールホールディングスグループが想定する収入形態は、政府機関・防衛機関等の需要に応じたプロジェクトか民間需要に応じたミッションかによって異なります。また、今後市場の成長・成熟化に伴い、想定される収入形態が変化する可能性もあります。政府機関・防衛機関と締結する契約に基づく収入は、現時点においては、調査研究・研究開発・宇宙空間での実証のいずれについてもマイルストーン収入がメインとなっており、実証完了後のサービスの提供についてもマイルストーン収入がメインになると想定しております。マイルストーン収入は、後述する、宇宙業界特有の技術開発段階等に応じて設置された審査会の審査結果をもって支払われるケースが多く、ミッション完了まで複数回に分けて支払いを受けることになります。なお、LEXサービスは、政府機関・防衛機関の顧客に対しては、アストロスケールホールディングスグループが開発したサービサーを宇宙空間において顧客に引き渡し、以後の宇宙空間におけるサービサーの運用は政府機関顧客が行い、収入体系についてもサービサーの販売収入となることを見込んでおります。また、政府機関顧客との契約締結からサービサーの提供までには、約2〜3年を要すると見込んでおります。他方で、民間事業者を顧客とする場合は、契約時の少額の頭金と寿命延長期間のサービスフィー収入になることを見込んでおります。民間コンステレーションを主な顧客と想定するEOLサービスについては、費用の大部分は衛星開発や打上げに関するものであり、打上げ時までに発生するため、打上げまでにかかる費用の大部分に対応する打上げ前のマイルストーン収入とミッション成功時の支払いの組み合わせを標準的な支払モデルとして想定しております。アストロスケールホールディングスグループとしては、支払モデルの変更(定額払い等の採用)については顧客の要望に柔軟に対応しつつも、アストロスケールホールディングスグループの事業運営上確保されるべき資金回収のタイミング及びマージンは堅持する方針です。 図15 収入形態(イメージ図) アストロスケールホールディングスグループへのマイルストーン収入の入金は、原則としてマイルストーンの達成に関する審査の完了後となります。また、顧客契約については、顧客セグメントによって支払形態や収益認識方法が異なります。 図16 顧客セグメントと契約形態及び収益認識の関係 3 研究開発の状況3.1 先進的技術アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービスを事業化させるために、先進的な技術開発を自社内で行っております。主なイノベーションとして、RPO技術、様々な宇宙機・物体を捕獲するための捕獲機構及び事前に衛星に取り付けるドッキングプレート、接近や捕獲動作等をアルゴリズムで自律的に判断することでより正確、安全、効率的な運用を可能にする自律化技術、複雑な運用を安全に実現するための地上局(アンテナ)網と管制局などがあります。 図17 イノベーションを支える革新技術 3.2 開発方針品質、信頼性、安全性、コンフィギュレーション、スケジュール等のプロジェクト管理を含む品質保証体系については、航空宇宙業界のグローバルスタンダードとされる品質マネジメントシステム(QMS)要求規格である、AS/EN/JIS Q 9100に準拠した規定を制定し、実業務への浸透を行っております。また、アストロスケールホールディングスグループは、宇宙機のような大規模で複雑なシステムの開発アプローチ方法の基本である、システムズエンジニアリング手法の開発V字モデルを忠実に採用しています。このモデルは、NASA、ESA、JAXAのほか、多くの航空宇宙企業が採用しております。このモデルに沿った設計・試験を実施する場合、例えば、システム試験を行う段階では、下位のコンポーネントやサブシステムそのものにおける不具合は、全て洗い出し・修正が完了しているとみなせます。このため、システム試験では、システム設計とサブシステム間インターフェースの不具合を洗い出すことに専念でき、手戻りがありません。また、最終的な地上でのシステム試験が完了したということは、軌道上でのミッションの実現を担保するものになっていると考えられます。他方で、軌道上サービスのような新規性の高いミッションでは、伝統的な開発プロセスではシステム要求を定義し難いことや、新規技術に対する耐環境性や機能の検証作業に要する時間が長くかかりすぎて問題の発見が遅れ、手戻りが発生するなどのリスクがあります。そこで、信頼性を担保しつつ、合理的な開発スケジュールと収益性を実現するために、開発アプローチ、試験検証単位の考え方、信頼性工学に基づく手法など、柔軟かつ効果的な方法を取り入れています。 図18 開発の基本となるシステムズエンジニアリングのV字モデル MCRMission Concept Reviewミッション概念審査ミッションのニーズを確認し、提案されたミッションの目的と、その目的を達成するための概念を審査MDRMission Design Reviewミッション定義審査ミッションを遂行するために必要なシステムの要求事項をまとめ、要求事項を実現するためのシステムを定義するための全体計画を策定SRRSystem Requirement Reviewシステム要求審査必要なシステムに関する機能や性能の要求及び、その検証方針の妥当性を審査し、定義したミッションを満たすことを確認PDRPreliminary Design Review基本設計審査契約書やシステム仕様の各項目を満足する製品の実現性などを検討し、詳細設計に移行できることを確認する設計審査CDRCritical Design Review詳細設計審査フライトモデルの製造に先立ち、製品の詳細な設計内容が技術仕様書の要求事項を満足し、製造に移行できることを確認する設計審査PSRPre-shipment Review出荷前審査衛星の出荷に際し、衛星や管制センターなど全体システムが契約書・技術仕様書の要求事項を満足し、出荷に問題がないことを確認する審査ORROperational Readiness Review運用準備審査運用へ移行する準備が整っていること、あらゆる運用モード(正規、緊急、計画外)も考慮して運用の準備が整っていることを確認する審査 3.3 ELSA-d(エルサ・ディー)ELSA-dは、EOLサービス(衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス)に係る一連のコア技術の宇宙実証を目的として開発されました。ELSA-dの名称は、End-of-Life Service by Astroscale – demonstrationの略です。ELSA-dで培われた技術は、ADR、LEX、ISSA等他の軌道上サービスに必要な技術開発の基盤にもなります。ELSA-dはサービサー衛星(捕獲機)とクライアント衛星(模擬デブリ)から成り立っており、デブリ除去に必要な一連の技術(上記RPO技術の重要な部分を包含します。)を搭載したend-to-endの世界初のデブリ除去実証です。アストロスケールホールディングスグループの知る限り、非協力物体の捕獲、連続可視のない状況下での接近・捕獲を目的とする宇宙実証は世界初と認識しています。 図19 宇宙空間航行中のイメージ図左:サービサー(捕獲機)、右:クライアント衛星(模擬デブリ) 図20 デブリ除去技術実証衛星ELSA-d(エルサ・ディー)左:打上げ直前のELSA-d最終確認の様子、右:英国オフィス管制センターと運用チーム ELSA-dは、2021年3月に高度550kmの軌道へサービサーとクライアントを固定した状態で打ち上げられました。約1年をかけて、デブリ除去に必要な技術要素である、クライアントの捕獲・分離機構や、接近に必要なセンサ群やスラスタ機能及び航法誘導制御技術(サービサーの位置や速度等を把握し、目標地点へ到達するための軌道を生成し、サービサーを制御していく技術)、また、それらを実現する管制センターや運用技術等の実証を行いました。ELSA-dミッションにて、以下を含むデブリ除去のためのコア技術を実証することができました。・自律制御機能と航法誘導制御アルゴリズム・航法センサ群を駆使した閉ループ制御(自律的に望ましい状態との差を縮めていく制御)・スラスタによる自律的な接近マヌーバ及び姿勢制御・絶対航法の技術(GPSと地上観測)を活用したサービサーの誘導航法(クライアントから約1,700kmの距離から約160mへの接近)・絶対航法から相対航法への移行(サービサー搭載のLPRセンサを活用)・2年以上にわたる軌道上でのミッション運用経験・ドッキングプレートと磁石を用いた捕獲機構 図21 ELSA-dの宇宙実証の内容(*はサービサーとクライアントの距離) ELSA-dは、2022年には、米宇宙業界誌Via Satelliteの「Satellite Technology of the Year」や内閣府主催第5回宇宙開発利用大賞の「内閣府特命担当大臣(宇宙政策)賞」を、2023年には、国際宇宙会議(International Astronautical Congress)において国際宇宙航行連盟(International Astronautical Federation)より「The IAF Excellence in Industry Award」を含む数々の賞を受賞しており、この先駆的な技術開発とその宇宙実証により宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)や軌道上サービスの実現への道を切り拓いたという観点で評価を得たものと考えております。 3.4 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)ADRAS-Jは世界で初めて、実際にデブリに至近距離まで接近し観測・点検を行った画期的な衛星です。対象となるデブリへのRPOを実施し、接近・近傍運用を実証し、長期にわたり放置されたデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行いました。具体的には、低軌道(LEO)にあるロケット上段(H-IIAロケット15号機の第2段(2009年1月打上げ))について、遠方域接近、近接接近、運動推定・回転などを行いました。 図22 宇宙空間航行中のイメージ図左:サービサー(捕獲機)、右:クライアント衛星(H-IIAロケット上段) ADRAS-Jは、Rocket Lab, Inc.のロケット「Electron」により、ニュージーランドのマヒア半島所在の同社第1発射施設(Launch Complex 1)より、2024年2月18日に打ち上げられました。打上げは、正確なタイミングで行われ、予定通りの軌道に投入されました。ADRAS-Jは、軌道投入後の4日間の初期運用を無事に終えた後、同年2月22日に接近フェーズへと移行しました。同年4月16日に赤外線カメラによって取得するデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(Model Matching Navigation)を開始し、同年4月17日にデブリの後方数百mへの接近に成功しました。また、同年5月23日には、観測対象のデブリから約50mの距離へ接近に成功し、さらにその距離において定点観測に成功しました。これは、民間企業がRPO(ランデブ・近傍運用)を通じて実際のデブリに世界で最も近接した距離(注1)となります。加えて、同年6月19日にデブリの状態や動きを詳細に把握するために観測対象のデブリの周回観測も行い、その実施中に行われた自律的なアボート(クライアントに対する衝突を回避するためマヌーバを実施し安全な距離まで待避すること)により、安全運用のための衝突回避機能の有効性も実証いたしました。同年7月15日、16日には、観測対象のデブリの周回観測(デブリの周囲を約50mの距離を維持しつつ姿勢を制御しながら360度周回飛行する運用)に成功いたしました。本物のデブリの周囲を飛行する運用の成功は世界初となります(注1)。さらに、同年11月30日には、最終接近を実施し、将来のデブリ除去としてその捕獲や軌道離脱も行うADRAS-J2のミッションで捕獲箇所として想定している衛星分離部(PAF)の下方に回り込んで接近し、約50mから約15mへとデブリとの距離をさらに縮めました。2026年3月25日には、全実証を終了し、軌道上での運用終了に向け、軌道降下の運用を開始しました。今後は軌道降下運用を継続し、最終的には大気圏に再突入する予定です。 (注)1.過去の同様ミッション実施の有無に関するアストロスケールホールディングス調査に基づき判断しています。 図23 ADRAS-Jの定点観測により撮影された観測対象のデブリ 図24 ADRAS-Jの周回観測により撮影された観測対象のデブリ 3.5 開発・製造体制の確保現在、アストロスケールホールディングスグループの衛星の設計・開発・製造は、日本、英国、米国、イスラエル、フランスの各オフィスにて分担し、日々連携しております。各国で開発・製造体制を整えることで、プロジェクトや従業員の採用を並行して進められることに加え、各国の政府機関・宇宙機関プロジェクトの受注にあたっては、その国での製造、雇用その他サプライチェーンの活用などが要件とされる場合があることなどから、複数地域で開発・製造体制を整備することはアストロスケールホールディングスグループの成長に寄与します。開発・製造体制については、今後とも軌道上サービス市場の伸びに応じて、また、セキュリティ面で特段の配慮を必要とする防衛機関からの需要にも対応できるよう、拡張していく予定です。 図25 各国の拠点
有価証券報告書(2026年4月決算)の情報です。
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、アストロスケールホールディングスグループが判断したものであります。 (1) 経営方針アストロスケールホールディングスグループのミッションは、軌道上サービスを通じて宇宙機の安全な航行を確保し、宇宙空間の持続的な利用を実現することにあります。このミッションの実現に向けて、アストロスケールホールディングスグループは、技術開発、事業開発、さらには法規制作りへの働きかけなど、複数の課題解決に同時並行で取り組んでおります。アストロスケールホールディングスグループは、高速道路におけるロードサービスのように、軌道上サービスを宇宙空間における定常的・恒久的な基盤インフラサービスとして確立し、成長著しい軌道上サービス分野において世界のリーダーとなることで、グローバルな収益機会の獲得を目指しています。アストロスケールホールディングスグループの事業は、技術開発を中核とするディープテック領域に属し、市場が未成熟な段階から立ち上げる市場創造型のビジネスであり、ミッションの性質に即したグローバル経営を特徴としております。草創期にある軌道上サービス市場において、アストロスケールホールディングスグループは世界に先駆け着実に受注を積み重ねています。アストロスケールホールディングスグループは、常に企業価値の継続的な向上を目指し、その目指す姿を見据えた経営を行っております。 (a) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等アストロスケールホールディングスグループは、企業価値の継続的な向上を図るための客観的な指標として、①軌道上サービスミッションの受注状況及び②ミッションごとの開発スケジュールの進捗管理、並びに③防衛及び民間顧客向け継続受注案件の獲得に向けた進捗状況を重視しております。「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.5 開発・製造体制の確保」に詳述の通り、アストロスケールホールディングスグループは各国のオフィスを通じて多様な用途の軌道上サービスミッションをグローバルに受注しており、技術革新の加速と市場シェアの拡大が、アストロスケールホールディングスグループのミッション実現への近道であると考えております。このため、①軌道上サービスミッションの受注状況を重視しています。具体的には、アストロスケールホールディングスグループの将来収益を生み出し事業の推進・成長を支えるパイプラインの確保状況を測定するための「受注残総額」を重要な経営指標等として位置づけております。受注残総額の詳細については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 3 生産、受注及び販売の実績 b. 受注実績」をご参照ください。また、「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.2 開発方針」に詳述の通り、アストロスケールホールディングスグループは開発スケジュールに沿って、システムズエンジニアリングのⅤ字モデルにおける各審査を着実にクリアすることが、品質管理、事業の進捗及びプロジェクト収益の実現に直結すると考えており、②ミッションごとの開発スケジュールの進捗管理も重視しております。加えて、持続的な収益性向上のためには、反復性のある継続受注案件の獲得を中心とした、継続性・拡張性・収益性を兼ね備えた事業モデルへと進化させることが重要となります。この継続受注案件の獲得において、今後期待される分野は防衛及び民間顧客向け寿命延長サービスが中心となるため、各国の宇宙防衛戦略の策定や予算配分、それらに基づく案件の顕在化及び民間事業者の需要動向、並びにアストロスケールホールディングスグループによる案件受注に向けた進捗状況を重視しております。 (b) アストロスケールホールディングスグループの強みアストロスケールホールディングスグループの競争優位性は、以下の点にあります。まず技術面においては、世界初となるデブリ除去実証衛星「ELSA-d」による宇宙実証及びデブリ観測衛星「ADRAS-J」の打上げに成功しております。アストロスケールホールディングスは、2026年6月時点において、アストロスケールホールディングスグループ以外に、非協力物体に対するRPO技術の宇宙実証に成功した競合事業者の存在を認識しておりません。アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービスのコア技術であるRPO技術を自社開発し、当該技術に関する知的財産権を保有しております。コア技術を自社開発することで初めて、継続的な技術改善を行うことができるとアストロスケールホールディングスグループは考えております。次に事業面では、日本、英国、米国、フランスといった宇宙産業の主要地域に拠点を構え、各地域において研究開発チームを組成し、契約を受注しております。アストロスケールホールディングスグループのミッションの達成のためには、グローバルに同時並行で活動することが不可欠であり、アストロスケールホールディングスグループ各社は、各地域において、豊富な経験に加え、政府機関や宇宙機関及び各地域の宇宙産業界等との広範なネットワークを兼ね備えた経営陣を擁し、各地域に根ざした企業として活動しております。加えて、アストロスケールホールディングスグループは、各国・各地域における宇宙政策や法規制づくり等の整備に関しても積極的に提言・関与しており、軌道上サービスの利用拡大を通じたアストロスケールホールディングスグループのミッションの実現に取り組んでおります。また、それらの国・地域での取り組みを統括し、アストロスケールホールディングスグループをグローバルに成長させるため、多様かつ多面的なバックグラウンドを有する経営陣及び取締役会を構成しております。 (2) 企業価値向上に向けた取り組み(a) 企業価値の考え方一般に、企業価値とは、企業が生み出すキャッシュ・フローを、割引率(将来の価値を現在の価値に換算する際の利率)とキャッシュ・フローの成長率との差で除したものとして算出されます。この計算式において、分子であるキャッシュ・フローの最大化を図り、分母にあたる割引率は、キャッシュ・フローを損なうリスク(割引率)を低減させることで安定性を高め、さらにキャッシュ・フローの成長率を向上させることが、企業価値の最大化に寄与すると考えられています。このような考え方を踏まえ、アストロスケールホールディングスグループが捉える企業価値向上の要因は、以下の式によって表すことができます。 アストロスケールホールディングスグループは、企業価値を持続的な価値創造の原動力と位置付けております。具体的には、(1)財務価値、(2)無形資産から創出される将来価値、そして(3)アストロスケールホールディングスグループの存在の不可欠性に基づく総合的な価値をアストロスケールホールディングスグループの企業価値の主要な構成要素と考えております。上記(2)におけるアストロスケールホールディングスグループの無形資産とは、特許群や営業秘密といった知的資産、アストロスケールホールディングスグループのブランド、国際的な会議体や各国の政府、宇宙機関、宇宙関連企業、アカデミアなどとのネットワーク、さらに世界5カ国に亘るグローバルな経営管理プロセスなどを指します。また、上記(3)におけるアストロスケールホールディングスグループの存在の不可欠性とは、宇宙の持続的開発がグローバルアジェンダになる中、アストロスケールホールディングスグループの技術開発の進展状況、顧客との取り組み、軌道上ミッションにおけるベストプラクティスや法規制づくりに関する考え方や知見が、多くの場面で参照され、また必要とされていることを意味します。このように、宇宙の持続的開発に不可欠な存在としての立ち位置を維持することは、アストロスケールホールディングスグループが最先端の情報を取得・発信し、様々なステークホルダーとの信頼関係を醸成し、ひいては市場におけるリーダーとしての地位を確立することに貢献すると考えております。 (b) 着実なキャッシュ・フローの創出アストロスケールホールディングスグループは、技術開発型かつ市場創造型の企業として、これまで投資活動によるキャッシュ・アウトフローが先行しており、営業活動によるキャッシュ・フローも赤字の状態にあります。こうした状況を踏まえ、アストロスケールホールディングスグループではフリー・キャッシュ・フローの創出に向けて、戦略的なKPIと財務的なKPIを設定しております。定性的な観点では、世界に先駆けて実証したコアRPO技術を活用し、ビジネスセグメントの拡充と各サービスの事業化を推進することが重要であると考えております。そのため、アストロスケールホールディングスグループは、まず4つの軌道上サービスについて、最短で2028年4月期までに顧客との契約に基づく宇宙空間でのミッションを完了することで、サービスの提供事例と提供価値を証明することを目指しております。また同時に、軌道上ミッションの機会をより多く獲得することで、技術の革新と成熟化を加速させ、コスト削減を図り、市場において先行的にシェアを獲得することを目指しております。アストロスケールホールディングスグループは、2025年4月期以降、各国拠点において複数のミッションを同時に開発するフェーズへと段階的に移行しつつあり、最短で2030年には、各種軌道上サービスがあたりまえと認識されるようになることを目指しております。財務的なKPIとしては、損益計算書(PL)面では営業利益の黒字化に向けて、キャッシュ・フロー(CF)面ではフリー・キャッシュ・フローの黒字化に向けて取り組んでまいります。貸借対照表(BS)面では、仕入債務回転期間や売上債権回転期間の最適化に加え、設計・開発から製造工程までを常に見直し、バランスシートが過度に膨まないよう事業活動を遂行してまいります。アストロスケールホールディングスグループが開発する軌道上サービスにおいては、現状、主に政府(Civil)向けミッションを中心に、顧客ごとに求められるサービス仕様が異なる案件が多く、一品一様のプロジェクト型開発となっております。そのため、個別最適を優先した結果、案件ごとの新規開発要素が大きくなり、開発コストが増大しやすい構造にあります。こうした状況を踏まえ、アストロスケールホールディングスグループは今後、限られた数のサービスプラットフォームを基盤として活用し、設計の共通化・標準化を段階的に進める方針としております。具体的には、既存の技術基盤やプラットフォームを大幅な追加開発を伴うことなく再利用し、同型又は類似型のミッションを複数かつ継続的に受注することで、開発コストの抑制と収益性の改善を図ってまいります。このような「継続受注」を前提とした事業モデルへの移行にあたっては、安全性・品質を確保しつつ、設計・製造・運用プロセス全体における効率化が重要となります。アストロスケールホールディングスグループでは、コスト構造の可視化及び最適化を推進するため、ヒト・モノ・カネ・情報を統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)システムを導入し、2025年4月期中より運用を開始しており、これにより、プロジェクト横断でのリソース配分の最適化と、継続的なコスト低減の実現を目指してまいります。また、中長期的には、各国における輸出管理規制等の法令遵守を前提としつつ、可能な範囲で技術及び設計の共通化及びプラットフォームの汎用化を進めるのと同時に、技術戦略及び技術ロードマップについては継続的な見直しを行い、事業の成長段階に応じて最適なコスト構造を確立することで、事業キャッシュ・フローの創出につなげてまいります。 (c) 資本コスト(WACC)の低減資本コストの低減は、事業の不確実性を抑え、持続的な成長を支える体制を整えることと同義であるとアストロスケールホールディングスグループは認識しております。アストロスケールホールディングスグループでは、単一のミッションや地域への集中を避け、ISSA、LEX、ADR、EOLといった複数のサービスを複数地域にわたって展開しており、本書提出日現在、9件のミッションに取り組んでおります。今後は、現在受注済みの実証ミッションを通じて開発されたプラットフォームや技術を、大幅な改変を要することなく再利用し、多様な顧客に提供する方針です。それにより新規開発コストを抑制し、継続性・拡張性・収益性を兼ね備えた事業モデルへと進化させることで、事業全体の不確実性の低減を図ってまいります。また、アストロスケールホールディングスグループは、事業面での進捗に加え、社会的にも持続可能な企業であることを目指し、ESGの観点を常に意識した経営に取り組んでおります。(i) 環境(E:Environment)アストロスケールホールディングスグループの事業は、宇宙環境の持続利用や宇宙技術・データの活用を通じて、地球社会の持続的開発に資するものであり、「E」はアストロスケールホールディングスグループの中心的なテーマとなっております。(ii) 社会(S:Social)アストロスケールホールディングスグループは、企業価値を高める行動が豊かな社会の実現につながると考えており、その観点から、従業員のダイバーシティの確保や労働環境の改善に日々取り組んでおります。2026年4月末時点において、アストロスケールホールディングスグループの従業員は32カ国以上の国籍で構成されており、女性比率(28%)やエンジニア比率(74%)は先端技術企業としては高い水準を維持しております。(iii) ガバナンス(G:Governance)アストロスケールホールディングスグループは、健全な経営を行うための管理体制を重視しており、取締役会は国籍・性別・専門的背景において多様性に富み、卓越した経歴を有するメンバーによって構成されています。2026年4月末時点において、社内取締役と社外取締役の比率は3対4です。アストロスケールホールディングスグループのESGに関する取り組みについては、下記「2 サステナビリティに関する考え方及び取り組み」もご参照ください。これらの取り組みを前提としつつ、アストロスケールホールディングスグループは資本コストや財務の安定性に十分配慮しながら、負債(Debt)と資本(Equity)の最適な構成についても検討を進めております。 (d) 事業の成長の維持・促進アストロスケールホールディングスグループでは、事業の成長の維持・促進とは、中長期的な価値創造のための基盤を築くことであると考えております。アストロスケールホールディングスグループは、事業の成長に向けて、保有するコアRPO技術を以下のように活用してまいります。短中期的には、世界各国で増加しつつある軌道上サービスの事業機会を獲得し、ミッションを成功に導くことが、アストロスケールホールディングスグループの成長の促進に繋がります。そのためには、世界の主要国に事業拠点及び研究開発チームを保有する必要がありますが、2023年に新たにフランス子会社を設立したことで、宇宙産業における主要国・地域を網羅できる体制が整いました。現在、アストロスケールホールディングスグループは宇宙産業における世界の主要地域である日本、英国、米国、フランスに拠点を有し、各地域で研究開発チームを組成し、契約を受注しております。また、近年では、各国政府の防衛機関において宇宙安全保障に関する政策の抜本的な見直しが進み、日本をはじめとする各国で予算化・案件化に向けた検討も進展するなど、防衛領域において軌道上サービスの必要性が国家戦略の中で明確に認識される状況となっております。こうした環境変化を背景に、アストロスケールホールディングスグループは、各国政府及び関係機関の意思決定者との直接対話を通じて、軌道上サービス分野におけるリーディングカンパニーとしての地位をグローバルに確立するとともに、継続受注案件の獲得が中長期的な成長ドライバーになると期待しております。アストロスケールホールディングスグループ各社は、各地域において豊富な経験を有する経営陣を擁し、政府機関・宇宙機関・宇宙産業界との広範なネットワークを活かし、地域に根ざした企業として活動しております。なお、案件獲得には1件につき1〜5年程度の期間を要するため、常に将来の顧客ニーズを見据えた営業活動を展開しております。中長期的には、政府機関からの需要を契機として民間需要の創出・取り込みを図ることが、事業成長の促進に繋がると考えております。EOLサービス及びLEXサービスに関して潜在的な民間需要が存在しており、中長期的に民間事業者向けのLEXサービスが立ち上がり、その後、EOLサービスが立ち上がると想定しております。LEXについては、サービサーがクライアント衛星を捕獲したまま軌道変更や軌道維持を支援する方法に加え、捕獲後に燃料補給を行い離脱する方法についても、主要国において研究が進められており、アストロスケールホールディングスグループは燃料補給ミッション2件について契約済です。EOLについては、打上げ前の衛星へのドッキングプレート装着に関する契約を着実に受注しておりますが、さらなる契約獲得に向けて、衛星運用者や衛星メーカーとの議論を継続しております。アストロスケールホールディングスグループでは、LEXサービサーがクライアント衛星の燃料補給口に対応できるように、また、EOLのサービサーがドッキングプレートに接近・捕獲できるように、エコシステム構築に尽力してまいります。さらに、軌道上サービスに対応した衛星バスの他企業への提供についても検討を進めております。さらに、軌道上における修理・改修等の高度なサービス領域に関しても、欧州宇宙機関(ESA)及び米国航空宇宙局(NASA)から調査研究案件を受注しており、将来の新たなサービス市場の創出に向けた技術的蓄積を進めております。また、軌道上サービスに必要なRPO技術以外の周辺技術についても、当該技術がアストロスケールホールディングスグループの企業価値向上に資すると判断した場合には、自社開発に加え、M&Aによる獲得も視野に入れてまいります。AI技術については、すでにシミュレーション、契約書作成、マーケティング等に活用しておりますが、RPO技術への応用に関する研究も開始しております。さらに、後述のような世界的な法規制づくりへの積極的な参画も、アストロスケールホールディングスグループの市場規模拡大及び事業成長の維持・促進に寄与すると考えております。 (3) 経営環境及び対処すべき課題アストロスケールホールディングスグループは世界に先駆け着実に受注を積み重ねているものの、軌道上サービス市場は草創期にあり、アストロスケールホールディングスグループを取り巻く環境には引き続き高い不確実性が存在しております。また、宇宙事業は、研究開発から顧客開拓、衛星の設計・開発、打上げ、運用等に至るまで、長期間を要する特性を有しています。一方で、宇宙環境問題の深刻化と宇宙空間の持続利用に対する社会的な認識は、2020年以降急速に高まりを見せています。2023年5月には、G7外務大臣会合、科学技術大臣会合、そしてG7広島サミットにおいてデブリ問題が取り上げられ、公式声明(コミュニケ)において、宇宙の持続利用が喫緊の課題であること、及びデブリの低減(これ以上増加させないこと)並びに改善の必要性が明記されました。さらに、2024年6月のG7プーリア・サミットのコミュニケでは、宇宙の持続可能性に関する基準及び規制の策定に向けた取り組みが明記され、デブリ低減に向けてより踏み込んだ内容が示されました。また、2024年9月に開催された国際連合の未来サミットにおいて、「未来のための協定(Pact for the Future)」が全193か国の加盟国が参加する国連本部において全会一致で決議されました。協定の行動目標56番に、宇宙の探査と利用に関する国際協力を強化することが規定されており、具体的には、宇宙の安全で持続可能な利用は、SDGsの達成において重要な役割を果たすとし、スペースデブリや宇宙交通管理等に関する新たな枠組みについて、国連宇宙空間平和利用委員会(UN COPUOS:United Nations Committee on the Peaceful Uses of Outer Space)で議論すること、関係する民間セクターを含め利害関係者が宇宙の安全性と持続可能性の向上に関する政府間プロセスに貢献できるように関与を求めること等が決定されました。同時に、「(1)事業の経過及びその成果」で記載の通り、近年では世界中で宇宙防衛の強化を主な目的とした取り組みが多数見られました。グローバルに地政学リスクの高まりが意識される中、軌道上サービスを安全保障用途に利用するニーズが急速に高まっております。このように、宇宙の持続利用は、主要先進国のみならず世界における重要課題の一つとして認識されるようになり、各国において具体的な行動が求められる段階に至っております。こうした状況を受け、軌道上サービス市場の拡大を見越した企業による参入表明が世界各地で相次いでおりますが、アストロスケールホールディングスグループはその中にあって、先駆的な技術開発企業としてのポジションを確立してまいりました。競争環境が今後さらに激化することが予想される中、技術開発の推進、事業化の加速、関連法規制の整備への働きかけ、そして安定的なキャッシュ・フローの創出をいかに継続していくかが、アストロスケールホールディングスグループにとって極めて重要な課題であると認識しております。これらの課題に対処し、中長期的に持続的成長を実現するため、アストロスケールホールディングスグループは以下の取り組みを進めております。 ■技術開発軌道上サービスに使用される衛星の開発、打上げ及び運用は、極めて複雑なプロセスを伴います。開発の過程では、地上において宇宙環境を模擬的に再現した各種試験を実施した上で宇宙空間へ打ち上げますが、宇宙空間において衛星に予期せぬ故障が発生し、システム全体に影響を及ぼすことでミッションの成否に関わるリスクが生じる可能性があります。さらに、コストやスケジュールに関する制約、政府等による許認可制度や公募内容などの条件も加わり、先進的な技術開発を進めることは非常に困難な課題となっております。このような状況を踏まえ、アストロスケールホールディングスグループでは、開発段階に応じた審査体制の整備、品質・信頼性に関する管理基準等の策定、開発工程の文書化の徹底など、再現性があり、かつ改善可能な開発手法を採用しております。アストロスケールホールディングスグループが必要とする技術のうち、非協力物体へのRPO技術を含むコア技術については、自社設計・自社開発を行っており、継続的な技術向上が可能な体制を構築しています。これにより、非協力物体へのRPO技術等を活用した軌道上サービスという新たな選択肢を衛星オペレーターに提供してまいります。また、自社技術の優位性を確保するため、アストロスケールホールディングスグループでは長期的な技術ロードマップを定期的に更新し、様々な事業機会を通じて技術的優位性を継続的に維持できるよう、研究開発体制の強化及び知的財産ポートフォリオの充実を図ってまいります。なお、本書提出日現在におけるアストロスケールホールディングスグループの技術開発に関する取り組みについては、「第1 企業の概況 3 事業の内容 3 研究開発の状況」に記載しております。 ■事業開発政府・宇宙機関からの事業機会を獲得するためには、宇宙産業における世界の主要地域に拠点を保有すること、並びに各拠点がそれぞれの国・地域の政府・宇宙機関及び宇宙業界と密接な関係を築き、関係性を深めていくことが必要となります。宇宙業界では、政府・宇宙機関、民間企業のいずれも、数年から数十年単位で政策や事業計画を策定しており、アストロスケールホールディングスグループは、創業後からISSA、LEX、ADR、EOLといった各種サービスに関し、中長期的な視点から潜在顧客との議論を重ね、基礎調査などを通じて各国での受注機会を拡大してまいりました。その結果、2020年代前半には世界初となる非協力物体へのRPO技術の軌道上実証を成功させたことを契機として、主要なグローバルマーケットにおいて大型ミッションを複数受注することに成功致しました。これまでに開発した技術やプラットフォームの汎用化、並びに蓄積した実証実績を元に、持続的な収益性を確立する観点から、今後は反復性のある継続受注案件の獲得に注力する方針であり、特に今後期待される分野として、防衛領域と民間事業者向け寿命延長サービスに経営資源を投下してまいります。防衛については、前述の通り宇宙安全保障環境の厳しさと不確実性が増す中、防衛機関から静止軌道での宇宙監視衛星への需要が顕在化しつつあります。アストロスケールホールディングスは既に日本の防衛省から2025年2月に機動対応宇宙システム実証機の施策に関する契約を獲得しており、この案件で開発されるプラットフォームを今後複数の案件に活用していくことを狙っています。また、日本国外でも複数の防衛機関から受注を獲得しており、将来の潜在案件についても議論を活発化させています。民間においては、静止軌道衛星の寿命延長サービスへの需要が増加しております。民間の静止衛星運用者は、燃料切れにより運用終了を迎えてしまう自社の大型衛星を新しい衛星で代替するのではなく、弊社の寿命延長サービスを利用し、衛星をそのまま運用することで安価にサービスを継続でき、新規衛星の打ち上げに必要な多額の設備投資費用を先送りし、新規衛星の製造遅延等のリスクも回避することが可能になります。これは経済合理性が極めて高いサービスであり、顧客ニーズが旺盛な分野です。本書提出日現在における事業上の取り組みについては、「第1 企業の概況 3 事業の内容 2.3 5つの軌道上サービス、3.3 開発・運用状況」に記載しております。 ■法規制作りへの働きかけデブリ除去に必要な環境整備としての「法規制作り」は、2つの観点に分類することが可能です。アストロスケールホールディングスグループでは、ひとつを「制度構築」、すなわち「宇宙の持続利用に資するような、各国の宇宙法政策及び二国間・多国間等の国際的な協調関係に基づく枠組みづくり」と定義し、もうひとつを「標準化」、すなわち「宇宙の持続利用に資するような、宇宙機の設計や運用に関する基準づくり」と定義しております。それぞれの観点に基づき、アストロスケールホールディングスグループは以下の通り取り組みを進めております。 a. 制度構築について制度構築とは、各国においてデブリ増加への対応やデブリ除去を促進・実現するための国内法規制等を整備することに加えて、長期的には各国間の国際的な連携・協調を通じて、デブリ除去がグローバルに実施される体制を構築することを目指しております。例えば、各国は強制力を伴う国内法規制により、ミッション許可等の制度(米国では、衛星運用事業者に付与される周波数ライセンスの管理も含む)を通じて、デブリ増加を抑制するための措置を事業者に要求することができます。また、各国は、行動計画の策定等の政策を通じて、自国由来のデブリの低減・除去を推進することも可能です。デブリ低減に関する議論は、2000年代以降、国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)やUN COPUOSなどの国際機関において進められてきましたが、米国、欧州、日本などの各国では、さらなる措置に関する議論が活発化しており、アストロスケールホールディングスグループも可能な限りこれらの議論に参画しております。米国では、深刻化するデブリ問題を受けて、米国連邦通信委員会(FCC)が2004年に策定した周波数の許可に際して考慮されるデブリ低減ガイドラインの見直しに関するパブリックコメントを募集しました。これに対し、アストロスケールホールディングスグループは米国企業7社をとりまとめ、2019年2月に計8社共同でコメントを提出しました。このコメントは米国内の関係者の間で広く参照され、2020年4月に公表された新たなFCCの立法案公告においても、アストロスケールホールディングスグループの共同コメントが言及されています。その後、FCCは、同ガイドラインを見直し、2022年9月には、いわゆる「25年ルール」(高度2,000km以下の軌道を周回する衛星の場合、運用終了から25年以内に大気圏に突入するような設計にする旨のガイドライン)を「5年」に短縮する命令を発出し、2024年9月に発効しました。さらに、2024年1月には、軌道上サービス認可の枠組みに関する立法案公告の草案が発出されました。欧州では、宇宙機関の宇宙活動に関するイニシアティブとして、ESAが2022年に「Zero Debris Approach」を公表し、2030年までに地球軌道及び月軌道におけるデブリの生成を停止することを目標に掲げました。これに基づき、ESAは2023年11月に、デブリ低減に関する要求を定めた技術ガイドラインである「ESA Space Debris Mitigation Requirements」を見直し・公表するとともに、民間事業者等40団体と共同で「ゼロ・デブリ憲章」を策定・公表しました。同憲章では、2030年までにデブリ生成ゼロを実現するための基本原則や目標値などが定められています。英国では、2023年6月にチャールズ国王が、宇宙の持続可能性を促進するための枠組みとして「アストラ・カルタ(宇宙大憲章)」を公表しました。さらに、国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)は、2023年11月の無線通信総会において、デブリ除去を含む軌道上サービスなどの新技術を考慮し、低軌道上の衛星に対する「安全かつ効率的な軌道離脱及び/又は廃棄の戦略と方法論に関するガイダンス」の研究を行うことを決議しました(決議ITU-R 74)。また、先述の2023年のG7広島サミット及び2024年G7プーリア・サミットのコミュニケや、2024年に国連総会において決議された「未来のための協定(Pact for the Future)」のように、宇宙空間の持続利用に対する社会的な認識は世界レベルに拡大しております。このように、世界の主要国及び国際的な団体において、宇宙の持続利用に向けた対応は、提案・検討の段階から実施の段階へと移行しつつあります。 b. 標準化について衛星の設計や運用に関する国際的な標準化の議論は、衝突回避能力、運用終了時の廃棄処理、無害化、デブリ低減、打上げサービスの選択、デブリ除去サービス、サイバーセキュリティ、RPO実施時の安全性確保や情報の共有など、多岐にわたるテーマを対象としています。これらの事項については、国際団体、政府機関、NPOなど、様々な場で議論が進められております。アストロスケールホールディングスグループは、先端技術を保有する企業として、標準化を最重要課題の一つと位置付け、積極的に取り組んでおります。日本、米国、英国、フランスにグローバルなポリシーチームを配置し、標準化に関する主要な会議体に参加するとともに、一部の会議体ではリーダーシップを執るなど、独自のポジションを築いております。また、各国の宇宙機関や主要国の政策決定者・担当省庁とも緊密に連携し、世界各国の議論動向を踏まえた整合性の確保に貢献するとともに、アストロスケールホールディングスグループのミッションにも先進的に反映させることで、業界全体のベストプラクティスの形成に寄与してまいります。アストロスケールホールディングスグループが積極的に関与している標準化に関する会議体の一つに、Consortium for Execution of Rendezvous and Servicing Operations (以下「CONFERS」)があります。本会議体は、米国国防総省の国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency、以下「DARPA」)がシードマネーを提供して設立された業界団体です(現在はDARPAからの資金的援助を受けずに運営されています)。CONFERSは、RPOに関する自主的なコンセンサスに基づくベストプラクティスを策定しており、ISOなどの標準化団体によって、軌道上サービスに関するこれらのベストプラクティスが採用されることが期待されています。アストロスケールホールディングスグループは、CONFERSの設立初期から主要メンバーとして参画しており、現在はSustaining Memberとして活動しております。 ■許認可等への対応アストロスケールホールディングスグループは、必要な許認可の取得を行い、適用される各国の法令を遵守するよう努めております。一般的に、衛星の運用に関しては、衛星を運用する事業主体が所在する国の当局が求める技術・安全性などの要件を満たすことで、当該当局から運用の許可を得ることができます。これを「ミッション許可」と呼びます。ELSA-dでは英国宇宙庁(UKSA)から、ADRAS-Jでは内閣府から、それぞれミッション許可を取得しました。衛星の物体登録については、ELSA-d及びADRAS-Jともに日本が登録国となっております。衛星との通信に使用する周波数の利用についても、ITUの規定に基づき、各国の法令に従って必要な手続きが定められています。日本の場合、電波法に基づき、他国の地上無線局に有害な干渉を与えない(又は他国から干渉を受けない)ようにするため、総務省を通じて国際周波数調整を行った上で、総務大臣への申請により無線免許を取得します。また、衛星の運用に必要な地上局(人工衛星との通信を行うために地上に設置するアンテナやデータ送受信装置等)の使用については、地上局が所在する国ごとに必要な許可を取得する必要があります。アストロスケールホールディングスグループは、ELSA-d及びADRAS-Jの運用に関して、日本、米国、カナダをはじめとする複数の国から必要な許可を取得しております。その他にも、輸出管理に関する許可や危険物輸送等に係る許可の取得など、必要な手続きを適切に実施しております。今後実施予定のISSA、LEX、ADR、EOLといった各ミッションにおいても、上記のような許認可の取得が必要となります。さらに、アストロスケールホールディングスグループは、RPO技術が先進的な技術であることを踏まえ、ミッションの目的や運用の透明性を確保するため、自主的な取り組みも行っております。ELSA-dやADRAS-Jのミッションの目的・内容については、国際的な学会等での発表や論文提出に加え、展示会、講演会、SNS、メディアなどを通じた広報活動を通じて開示しているほか、政府関係者などに対しても必要な説明を行っております。加えて、両衛星にはレトロリフレクター(レーザ反射を有する機構)を搭載しており、地上から軌道上での位置を詳らかに把握できるよう配慮されています。また、アストロスケールホールディングスグループは、衛星とデブリとの衝突可能性のリスク評価及び衝突回避のため、世界の主要なSSA(Space Situational Awareness:宇宙状況把握)プロバイダーと契約を締結しております。保険の組成については、顧客との責任分担のあり方や保険料の相場などを踏まえて、ミッションごとに適切に対応してまいります。例えば、ELSA-dは自社資金によるミッションであり、打上げ失敗に備えた打上げ保険、ミッション失敗に備えたミッション保険及び軌道上で第三者に損害を与えた場合に備えた第三者賠償責任保険に加入しました。ADRAS-Jでは、軌道上での第三者賠償責任保険にのみ加入しております。なお、宇宙条約第6条では、非政府団体(企業、研究機関など)による宇宙活動であっても、「自国の宇宙活動」については当該国が国際的な責任を負うことが定められており、また、宇宙活動に起因する損害についての国際的な責任については、損害責任条約が具体的な定めを設けております。特定のミッションについて複数の国が関係する場合に、条約上は複数の打上げ国間で連帯して責任を負うこととされていますが、その具体的な責任分担のあり方などについては十分な国家実行がなく民間事業主体の責任のあり方(当該国と民間事業主体との関係や、民間事業者間での責任分担)についても現時点では不明確な点が多く残されています。このため、アストロスケールホールディングスグループでは、保険の組成を通じてこれらのリスクを事前に低減しておりますが、保険に加入している場合であっても、ミッション遂行に際して予期せぬ損害賠償責任を将来的に負う可能性があることを認識しております。 ■資金調達アストロスケールホールディングスグループは、多額の先行投資と長期の開発期間を要する人工衛星及び宇宙機器の研究開発に従事していることから、2020年4月期以降、フリー・キャッシュ・フローの赤字が継続しております。今後も、軌道上サービスを目的とした人工衛星の開発を加速するとともに、多種多様な軌道上サービスの需要に対応するための技術適用の拡大を図るため、先行投資を継続する必要があり、資金調達を行っていく必要があります。このため、アストロスケールホールディングスは資金調達手段の確保・拡充に向けて、2024年6月に東京証券取引所グロース市場に株式上場し、6月から7月にかけて20,070百万円を調達いたしました。その後、2025年3月に株式会社りそな銀行とのコミットメントラインにより3,000百万円を調達し、2025年5月には、上場時には見られなかった防衛関連需要の顕在化や民間向け寿命延長サービスの急速な関心の高まりを背景とした事業機会の確実な獲得と競争優位性の向上のため、海外募集による新株式の発行により10,985百万円を調達いたしました。加えて2026年5月には、継続受注獲得に向けた成長資金の確保を目的に、海外募集及び第三者割当による転換社債型新株予約権付社債の発行並びに第三者割当による新株発行を通じて、総額30,600百万円を調達いたしました。今後はこれまでに調達した資金で実施した投資を基に事業進捗をさらに加速し、早期の損益分岐及びフリー・キャッシュ・フロー黒字化を目指してまいります。借入金の借り換えを除き、現時点で資金調達は計画しておりませんが、今後魅力的な投資機会が生じた場合、必要に応じて機動的な調達を可能とすべく、引き続き資金調達手段の多様化を図ってまいります。 ■人材獲得アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービスに必要な先進技術の研究開発、衛星の設計から製造・試験に至る衛星製造プロセス、さらには衛星の運用までを自社で一貫して行っております。そのため、今後の人工衛星の開発や技術適用の拡大に伴い、複数の開発ラインを同時に進行させるためには、適切な人材の確保が不可欠です。具体的には、株式上場等を通じてアストロスケールホールディングスグループの知名度を高め、新卒・中途を問わず積極的な採用活動を推進してまいります。また、長期的な雇用の安定を図るため、社内における教育・研修体制を充実させ、人材の育成にも注力してまいります。 ■安定的なキャッシュ・フローの創出アストロスケールホールディングスグループは、先端的なRPO技術等を活用した軌道上サービス事業に特化し、これらの技術の多角的な展開・拡大を目指しております。これまでに構築してきた研究開発技術を最大限に活用し、対象となるデブリや運用中の衛星に対して、コストパフォーマンスに優れたソリューションを提供することで、安定的なキャッシュ・フローの創出を図ってまいります。 このように、アストロスケールホールディングスグループは経営環境における課題を解決しつつ、デブリ除去を含む軌道上サービスを通じて安定的なキャッシュ・フローを確保し、それを背景とした規律ある成長投資と継続的な株主価値の向上の両立を目指してまいります。
事業等のリスク
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【事業等のリスク】本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは、以下のようなものがあります。アストロスケールホールディングスグループでは、グループ横断的なリスクの識別、評価及び対応を継続的に実施するため、リスクマネジメント委員会の設置等により管理体制を強化し、リスク顕在化の回避及び顕在化した場合の適切なリスクコントロールに努めておりますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。したがって、アストロスケールホールディングス株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容を併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しておりますが、以下の記載は、アストロスケールホールディングス株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではない点にご留意ください。アストロスケールホールディングスグループは軌道上サービスの研究開発を行っておりますが、アストロスケールホールディングスグループが想定する軌道上サービスやその提供に必要な技術の開発及び実証は未だ完了しておらず、また、研究開発・実証ミッションを除く商業サービスとしての顧客への提供実績もありません。軌道上サービスの研究開発及び実証は、長い年月をかけて複数の段階を経て行われるものであり、多くの時間と多額の研究費用を要するとともに、全ての研究開発及び宇宙空間でのミッションが成功する保証はなく、様々な事情による遅延のリスクもあります。また、軌道上サービス市場は、アストロスケールホールディングスグループは世界に先駆け着実に受注を積み重ねているものの未だ市場草創期にあり、確立した市場は存在しておらず、将来の市場規模及びその拡大には不確実性を伴います。このように、アストロスケールホールディングスグループの事業はその性質上、様々な不確実性とリスクを有しており、アストロスケールホールディングス株式への投資は、一般投資者による投資対象としては相対的にリスクが高いものといえます。アストロスケールホールディングス株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外に記載されるアストロスケールホールディングスグループの事業の性質、事業環境、研究開発・実証の状況、不確実性、リスク等を慎重に検討した上で行われる必要があります。なお、本項における将来に関する事項については、本書提出日現在においてアストロスケールホールディングスグループが判断したものであります。 (1)技術開発・実証に係るリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループ事業の成長には、軌道上サービスに必要な技術開発が完了し、当該技術が実証実験を通じて確認されることが不可欠です。本書提出日現在において、アストロスケールホールディングスグループの想定するビジネスモデルに対して、軌道上サービスやそれに必要な技術のうち、ELSA-dミッション及びADRAS-Jミッションにおいて、非協力物体への接近、観測、手動制御による模擬デブリの捕獲など、RPO技術の実証に成功しております。しかし、ISSA以外のサービス(LEX、ADR、EOL(一部を除く))に関して、いずれも実証できてはおりません。EOLサービスの技術開発については、2021年8月25日に、実証実験機であるELSA-dが宇宙空間で磁石を使用した手動制御による模擬デブリの捕獲実験を成功させたほか、2022年1月25日より実施した一連の実証実験において、自律的な軌道維持アルゴリズムにより模擬デブリから30メートルの距離を維持するとともに、最大1,700キロメートル離れた模擬デブリに対して安全に160メートルの距離まで接近し、遠距離からの物体の観測及び追跡、非制御物体への誘導接近、絶対航法から相対航法への切替えなど、複雑で高難度な技術を実証いたしましたが、現在完了しているEOLサービスの技術に関する宇宙空間での実証実験はこれらに限られ、協力物体又は非協力物体の自律的な捕獲等については、今後も更なる実証実験が必要です。また、ISSAサービスの技術開発については、同サービス初となる実証ミッションのサービサー衛星であるADRAS-JでRPO技術実証に成功しております。(ミッション詳細については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.4 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」参照)。ADR、LEX及び修理・改修につきましては、本書提出日現在において、地上での技術開発や試験の実施にとどまっており、宇宙空間での実証実験はなされておりません。そのため、今後も技術開発・実証実験等を進める必要があり、そのために更なる時間を要する見込みです。アストロスケールホールディングスグループは、前記「第1 企業の概況 3 事業の内容 3 研究開発の状況」に記載の通り、必要となる技術開発を進めておりますが、技術開発に想定以上の期間を要する場合や技術開発に失敗するリスクも考えられます。このような場合には、軌道上サービスとしての提供開始が遅延し、又は軌道上サービスとしての提供を断念する可能性があります。また、予期せぬ事故などによってサービサー衛星が故障又は喪失する事態が発生した場合、原因究明や実証実験の再開に相応の期間を要する可能性もあります。加えて、実証実験に成功した場合でも、軌道上サービスとしての提供に至る保証はなく、また、軌道上サービスの提供が実現した場合においても、顧客に提供する将来の各ミッションの成功が保証されるものではありません。さらに、実証実験やミッションの失敗や遅延等によってアストロスケールホールディングスグループに対する評価が低下し、既存顧客との契約解除が増加し、新規顧客の獲得が困難となる可能性や、顧客からの損害賠償請求や契約に基づく補償請求など、保険では賄いきれない金額の損害をアストロスケールホールディングスグループが負う可能性があります。これらの事態が発生した場合には、軌道上サービスの提供の時期が想定よりも大幅に遅れたり、提供を断念せざるを得なくなったりすることで、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 (2)人工衛星の開発・製造及び運用に係るリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、将来に向けて継続的に軌道上サービスを提供・維持・拡大するために、効率的な人工衛星の開発・製造と打上げが欠かせません。人工衛星は極めて精密な機器であり、僅かな欠陥でもシステム全体に対して甚大な影響を及ぼす可能性があります。例えば、ELSA-dにおいては、サービサーに搭載されたスラスタの一部が故障したため、予定されていた実証の一部を実施することができませんでした。そのため、細心の注意を払いつつ、輸出入規制を含む複雑な規制要件を遵守した開発・製造に努めておりますが、他の業界と比較して、経費増大や設計・開発・製造に関するスケジュール遅延が生じる可能性が高いといえます。例えば、アストロスケールホールディングスは2023年4月にELSA-Mの構造適格性評価モデル(SQM)について一連の試験を実施し、その結果、一部の部品に構造上の脆弱性があることが判明いたしました。この問題に対処し、追加テストを実施した結果、ELSA-Mの開発に遅れが生じる結果となりました。上記に加え、人工衛星の製造から運用開始までの過程で発生するサプライヤーによる部品納入遅延、許認可取得の遅れなど、何らかの事由により、運用開始の遅延が生じる場合があります。商業サービスにおいては、サービスの提供を既存の他の衛星で代替できない場合、顧客の利益の喪失及び損失が生じる可能性もあり、これらのリスクはアストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (3)人工衛星の打ち上げに係るリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、衛星の打上げ技術を有していないため、契約を締結するロケット打上げ事業者の打上げ時期の遅延や軌道投入の精度の低さなどによって、運用開始までの期間が当初の想定より延びる可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループは、打上げに失敗した場合、サービサー衛星を完全に喪失する可能性があります。さらに、打上げ契約は、打上失敗時の相互免責条項など、技術提供者側にとって有利な契約条件で締結されることが一般的であり、また、打上げに必要な許認可の取得や打上げ時の天候条件、技術提供者側の都合等によって、アストロスケールホールディングスグループの想定通りの内容で打上げ許可が下りない、打上げ許可の取得に想定以上の時間を要する、又は何らかの事情により打上げが遅延若しくは再契約を要することとなる可能性もあります。その結果、打上げ機会が制限され、次の打上げ機会までに相応の時間を要する場合があります。実際に、ADRAS-Jミッションにおいては、当初2023年9月の打上げを予定していたところ、直前のRocket Lab社の打ち上げ失敗の影響を受け、打上げが遅延したことにより、最終的には2024年2月18日付での打上げとなりました。さらに、契約の相手方である打上げ事業者が、アストロスケールホールディングスグループのような民間事業者よりも国家プロジェクトを優先する場合や、近年の世界的な打上げ需要の増加等により、スケジュールの変動や費用の増大の可能性もあります。これらのリスクはアストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (4)衛星関連部品等に関するサプライチェーンに関するリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループが人工衛星の研究開発及び製造を行うにあたり、原材料の高騰や重要部品の供給不足が生じた場合、開発及び製造のスケジュールに遅延が生じる可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループは、人工衛星の研究開発・製造にかかる部品の製造、外注加工及びそれらに付随する業務の一部について、他社に委託しています。調達先が輸出規制その他の事由により部品の品質や供給を確保できない場合や、新規委託先における供給体制の整備がアストロスケールホールディングスグループの想定どおりに行われない場合には、アストロスケールホールディングスグループによる開発・製造に遅延が生じる可能性があります。現在進行中の国際的な貿易摩擦に伴う関税の引き上げやその他の貿易障壁、武力紛争等も、部品や装置のコスト増加や必要な部品・装置の調達の混乱を引き起こす可能性があります。かかる部品の品質や供給をアストロスケールホールディングスグループが完全にコントロールできる保証はなく、また、調達先の業務に影響を及ぼす部品の不足や価格上昇等を、事前に予想することも容易ではありません。特に、長納期部品の需要が急増した場合、部品不足が起きる可能性が高まります。さらに、原材料や燃料価格の高騰、災害や感染症の発生・拡大等により、調達先の製造能力や財政状態に悪影響が生じる可能性もあります。また、調達先との間で既に締結されている契約を、アストロスケールホールディングスグループが想定する条件で更新することができない可能性もあります。アストロスケールホールディングスグループでは、部品単位で、製造拠点・調達先における対策状況などを定期的に確認し、サプライチェーンに関するリスクの低減に努めておりますが、サプライチェーンに関するこれらの問題が発生した場合、期待した通りの外注サービスの提供を受けることができない、又は必要な部品の確保ができない状況が生じ、また、代替となる調達先や部品の選定等にも困難をきたす可能性があります。その結果、アストロスケールホールディングスグループの衛星開発・製造に遅延が生じ、計画を断念せざるを得ない可能性があります。その際には、アストロスケールホールディングスグループの評判、事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (5)衛星の稼働と寿命に関するリスク(顕在化可能性:中~大、発生時期:特定時期無し、影響度:中~大)アストロスケールホールディングスグループの衛星運用において、いくつかの重要なリスクが考えられます。まず、研究開発における不確実性が挙げられます。複雑な宇宙技術の開発には多額の資金と時間を要しますが、地上試験で問題が発生し、開発が遅延、若しくは中止される可能性があります。また、宇宙空間は極めて厳しい環境であり、真空状態、温度変化、放射線などが衛星に影響を及ぼす可能性があります。これにより、地上試験で問題なく作動した機器や部品及びシステムが宇宙環境下で予期せぬ誤作動や故障を引き起こす可能性が考えられます。加えて、宇宙空間での実証実験で問題なく作動した衛星についても、商業サービス時に同様の性能を発揮できない可能性もあります。さらに衛星の運用中に不適正な指示などの人為的なミスが生じ、サービサー衛星又はクライアント衛星の機能に重大な影響を及ぼす可能性も考えられます。衛星の寿命設計も重要なポイントであり、設計段階で設定された寿命が、宇宙環境の影響などにより達成できない可能性があります。その場合は、予定よりも早い段階で衛星の機能が低下することとなります。設計寿命前に衛星が機能停止した場合、顧客へのサービス提供に重要な影響が生じる恐れがあります。加えて、クライアントとなる衛星のPMD率の向上等の技術の進歩により、既存のサービサー衛星がその設計寿命を迎える前に、当該既存サービサー衛星又はその部品が陳腐化し、有用性が失われる可能性もあります。アストロスケールホールディングスグループでは、これらの不測の事態に対し事前に取り得る限りの対策に努めておりますが、かかる対策にもかかわらず上記のリスクが現実化した場合、顧客へのサービス提供に影響を及ぼす可能性があります。特に、商業サービスの提供が想定通りに進まない場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (6)打ち上げ時や運用中の事故により衛星が損傷若しくは喪失し、保険でも損失を回収できないリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループが宇宙事業を行う際には、故障、爆発、デブリとの衝突などの事故によって、衛星が損傷又は喪失するリスクがあります。加えて、LEXサービスにおいて、運用中のクライアントの衛星との衝突によりクライアントの衛星に損傷等が生じた場合に、クライアントから損害賠償請求を受けるリスクもあります。また、宇宙業界の慣行として、打上げ時に発生した事故による損失に対する求償権は、打上げを実施する政府機関・事業者と顧客が相互に放棄することが一般的であるため、アストロスケールホールディングスグループに原因がない打上げ時の事故によって、アストロスケールホールディングスグループの衛星に損傷や喪失が発生した場合でも、補償を受けることができない可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、実施するミッションの契約内容と費用対効果を考慮し、打上げ危険担保保険や第三者賠償責任保険などに必要に応じて加入することで、事故に伴うリスクを一部カバーすることを基本方針としております。しかし、ミッションの途中に既存の保険が解約される可能性があることに加え、保険の適用期間や補償金額には限界があり、例えば、打上げ危険担保保険については、人工衛星の損傷の度合いや原因によっては十分な補償を得られない可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループの保険調達先である宇宙保険市場環境の変動性が大きいことから、アストロスケールホールディングスグループの今後のミッションの成否等の実績によっては、将来打ち上げられる人工衛星について、アストロスケールホールディングスグループの希望どおりの条件で保険を付保できず、又は保険を一切付保できない可能性があります。また、近年の事故発生状況や保険引受環境の変化等により、保険料の上昇や補償条件の厳格化が生じる可能性もあります。これらの結果、事故によりアストロスケールホールディングスグループの衛星の損傷又は喪失が発生した場合、保険でも損失を回収できないリスクがあり、その場合にはアストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。加えて、宇宙活動において第三者に損害を生じさせた場合の責任について、宇宙条約等の国際的な取り決めは存在するものの、国家間の具体的な責任分担のあり方や、民間事業主体の責任のあり方については、不明確な点が多いのが現状です。従って、保険の組成にもかかわらず、アストロスケールホールディングスグループが第三者に対して、現時点で予期し得ない損害賠償責任を負う可能性もあります。 (7)特定の顧客への依存について(顕在化可能性:中、発生時期:長期的に低下、影響度:中~大)アストロスケールホールディングスグループは政府機関及び防衛機関と多数の契約を締結しており、これらの政府機関及び防衛機関から獲得する収入は、2026年4月期のプロジェクト収益の99.1%を占めています。取引先別には、文部科学省32.5%、防衛省15.6%、JAXA 15.2%、米国宇宙軍14.8%となっております。政府予算の縮小や事業環境の悪化、他の事業者との組織再編等といった主要顧客側での事情又はアストロスケールホールディングスグループによるサービス提供の遅延等により、主要顧客との関係が悪化した等の事情により、当該主要顧客との取引が縮小、又は解除された場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、政府機関及び防衛機関が実施するミッションでは、フェーズごとに入札手続が設けられていることがあります。アストロスケールホールディングスグループが初期フェーズを受注しているミッションについても、特に競合入札事業者が存在する場合には、アストロスケールホールディングスグループが当該ミッションの後続フェーズを受注できない可能性があります。今後も、ISSA、LEX(主に燃料補給)、ADRの各サービスについては、政府機関及び防衛機関が需要の大部分を占めると考えられ、アストロスケールホールディングスグループの収益の大部分を政府機関及び防衛機関に依存する状況が継続する可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、民間事業者からの新規契約の獲得を通じて収益の分散化を図っていきますが、今後何らかの事情により、収益分散が予定通り実現できない可能性も考えられます。なお、下記「(17)収益認識方針に関するリスク」の通り、政府機関からアストロスケールホールディングスグループに拠出される資金は、会計上、その他の収益のうち政府補助金収入として計上されることがあり、その場合、当該資金の受領はアストロスケールホールディングスグループの売上収益として計上されず、売上収益の伸長に貢献しないことになります。また、アストロスケールホールディングスグループは、将来実施するプロジェクトについても政府補助金の申請をすることがありえますが、申請した政府補助金を取得できない可能性があります。政府機関や防衛機関との契約は、相手国の政策方針の変更その他アストロスケールホールディングスグループのコントロールが及ばない要因によって、契約締結や更新の時期が想定より後ろ倒しとなる、又は終了となる可能性があります。また、一部の契約では、アストロスケールホールディングスグループが追加の規制、監督、報告義務等の対象となる可能性があり、これに対応するために追加的費用が発生し、利益の減少、法令や契約上の義務違反時の課徴金及び他のミッションへの入札禁止等につながる可能性があります。加えて、特に機密性の高い案件に関与した場合、機密保持の観点で案件情報の開示が制約される可能性もあり、その場合は投資家への情報提供が十分に行えない可能性があります。また、アストロスケールホールディングス米国子会社のAstroscale U.S. Inc.が、米国における国防に関する一定の事業(Classified Business)に関与する場合等においては、米国のFOCI(Foreign Ownership, Control, or Influence)規制等に基づき、非米国企業であるアストロスケールホールディングスによる米国子会社等の管理について、一定の制約が生じる可能性があります。さらに、政府機関や防衛機関との契約においては、アストロスケールホールディングスグループに支払われる対価の額が契約時点で確定額として設定されることが一般的であるため、契約締結後にアストロスケールホールディングスグループにおいて予期せぬサービス提供費用の増加等が生じた場合、これを顧客に転嫁することができず、当初想定していた利益を得られなくなる可能性があります。また、政府機関や防衛機関からのISSA、LEX及びADRのサービス収益は、プロジェクトの進捗度に応じて測定され、その収入は所定の成果達成に基づくマイルストーン収入となることを見込んでいます。しかし、この収益及び収入の発生時期は、開発・実証の進捗に依存する不確実なものです。したがって、開発・実証の遅延や未達が生じた場合、アストロスケールホールディングスグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (8)事業の急成長に伴うリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは、2013年にシンガポールで設立され、その後、日本、英国、米国、イスラエル、フランスに拠点を広げ、企業として成長してきました。複数の国・地域にまたがる事業運営の拡大は、現地の政府機関や関係当局との関係構築や情報収集等に寄与しており、今後も高い成長性を維持するためには、技術開発の進展、製造設備の充実、事業運営体制の強化、人材等の拡充などが必要となります。しかしながら、これらの課題に対する対策が適時かつ適切に実行されない場合、失注による成長の鈍化、市場シェアの低下、事業の効率性低下などにつながり、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、成長に応じた管理体制の整備が追いつかない場合、特にグループ内の連携や統制が十分に機能しない場合や技術基盤の共通化が進まない場合には、意思決定の遅延やコスト増加などにより、サービス品質の低下を招く可能性があり、アストロスケールホールディングスグループに対する評価の低下につながる可能性があります。このような事態が生じた場合、その対応に経営陣や主要な従業員のリソースが割かれ、他の経営課題への対応が遅れることで、アストロスケールホールディングスグループの成長や業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、製造設備への投資や人材採用等において、想定を上回る費用が必要となる場合にも、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響が及ぶ可能性があります。 (9)人材の獲得・維持ができないリスク(顕在化可能性:低~中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループ事業の成功には優秀な人材の獲得と維持が不可欠です。特に、アストロスケールホールディングスグループの技術開発やミッションを推進する上で、高度な技術者の存在が極めて重要です。アストロスケールホールディングスグループはグローバル企業であり、世界中の人材を採用対象としておりますが、宇宙業界全般において人材不足が常態化しており、人材獲得競争も激しくなっております。政府機関や大手企業との競合もあり、優秀な人材を獲得及び維持するためには高額の報酬や働きやすい環境を提供する必要があります。現在のアストロスケールホールディングスグループの人材採用における優位性については、アストロスケールホールディングスグループが軌道上サービス業界のリーディングカンパニーであるとの市場からの評価が大きく寄与していると認識しており、今後の採用活動においても、かかる評価を維持・向上させることが不可欠となります。しかし、アストロスケールホールディングスグループが想定通りに適切な人材を確保できない場合や、既存の人材が他社へ流出する場合には、新規案件への取り組みや新技術の開発を断念する場合や、顧客満足度の低下による顧客流出により、予定していた成長を実現することができず、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (10)サイバーセキュリティに関するリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループが日常業務で使用するデータ・ネットワーク基盤の防御が十分でない場合、外部攻撃やハッキングなどのサイバー攻撃により、個人情報や技術情報の喪失や流出が発生するリスクがあります。また、アストロスケールホールディングスグループは、事業を展開する上で、政府機関や防衛機関、民間事業者の宇宙開発技術に関する情報や機密情報等、守秘性の高い情報・技術を取り扱っていることに加え、アストロスケールホールディングスグループの事業は民間需要向け及び軍事用途というデュアルユースの可能性を有するため、他の業界と比べてサイバー攻撃の対象となる可能性が相対的に高いと認識しております。したがって、アストロスケールホールディングスグループ(役職員や委託先の関係者を含む。)の故意・過失、又は悪意を持った第三者によるサイバー攻撃、ハッキング、その他不正アクセス等により、これらの情報の流出や消失等が発生する可能性があり、それによりアストロスケールホールディングスグループの競争力の著しい低下や適用法令への抵触が生じた場合には、アストロスケールホールディングスグループの損害その他の影響は甚大なものとなる可能性があります。特に、アストロスケールホールディングスグループは現時点で政府機関及び防衛機関案件の比重が高いため、新規商談案件への入札の停止や対策完了までの取引停止などが生じた場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループの提供する軌道上サービスにおいて、ハッキングや通信妨害等により不適切な干渉が行われた場合には、アストロスケールホールディングスグループが提供すべきサービスを適切に遂行できなくなる可能性があります。こうした事態が生じた場合、アストロスケールホールディングスグループの信頼性や企業イメージが低下し、顧客の維持・獲得が困難になるほか、競争力が低下したり、損害賠償やセキュリティシステム改修のために多額の費用負担が発生したりする可能性があります。その結果、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、アストロスケールホールディングスグループは、災害復旧計画の策定や事業保険への加入等、サイバーセキュリティに対する適切な対策を講じることが事業継続と競争力の維持に不可欠であると認識し、これらの対策を実行しております。しかしながら、これらの対策を講じていても、実際にアストロスケールホールディングスグループに生じる悪影響や損害に対して不十分である可能性があります。加えて、近年においては生成AI等の技術の進展に伴い、攻撃手法が高度化・巧妙化しており、従来の対策では十分に対応できない新たな脅威が生じる可能性があります。 (11)主要経営陣への依存リスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループの運営において、経営陣や特に重要な従業員が果たす役割は極めて大きなものです。特に、アストロスケールホールディングスの創業者であり代表取締役社長 グループCEOである岡田光信は、ミッションの策定や実行、企業理念、文化、戦略的方向性、サービス戦略、ブランドの確立等に大きな役割を負っているとともに、2023年9月まで国際宇宙航行連盟(IAF)の副会長として、また、現在は、IAF名誉アンバサダーとして、引き続き業界の規制の発展にも深く関与しています。グローバル経営体制の強化には継続的に取り組んでおりますが、重要な経営陣及び従業員につき、不測の事態や辞任が発生した場合、また、準備された代行体制が十分に機能しない場合、アストロスケールホールディングスグループの事業に支障が生じる可能性があることを認識しております。なお、アストロスケールホールディングスが株式会社三菱UFJ銀行との間で2024年3月15日付で締結したリボルビング・クレジット・ファシリティ契約(借入実行可能額5,000,000千円)及び2024年3月15日付で締結した劣後特約付金銭消費貸借契約(借入実行金額2,000,000千円)においては、代表取締役社長である岡田光信がアストロスケールホールディングスの代表取締役社長でなくなった場合には、一定の例外を除き、同契約に基づきアストロスケールホールディングスが負う一切の債務(借入金返還債務を含む。)につき、期限の利益を喪失し、直ちに支払い義務が生じることが規定されており、かかる事態が顕在化した場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業や業績及び財務状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 (12)アストロスケールホールディングスグループのブランド・評判に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループでは、既存顧客の維持と新規顧客の獲得、さらには新規採用等の観点で、宇宙空間の持続利用に資する軌道上サービス業界のリーディングカンパニーとしての評判を保持し、向上させることが不可欠です。そのためには、ミッションの成功を重ねること、革新的な技術開発の継続、営業活動、広報活動等、多岐にわたる取り組みが求められます。しかしながら、実証実験やミッションの失敗、サービス上の瑕疵、サイバー攻撃による技術や顧客情報の漏洩、メディアによる不利な報道や風評、労務管理その他の事象に関する従業員による告発、不法行為等によってアストロスケールホールディングスの評判に悪影響が及ぶ可能性があります。また、競合他社が市場での認知度を高めることで、アストロスケールホールディングスグループのブランド価値が相対的に低下する可能性も考えられます。こうした状況が発生した場合、アストロスケールホールディングスグループの事業の成長が阻害され、競合対比での競争優位性が低下し、顧客獲得や維持に課題が生じる可能性があります。それに伴い、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性もあります。 (13)軌道上サービスの市場が想定通りに創造・拡大しないリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループでは、合理的と考えられる情報に基づき軌道上サービスの市場規模を推計しておりますが、アストロスケールホールディングスグループは世界に先駆け着実に受注を積み重ねているものの、当該市場は未だ草創期にあり、現時点では正確な市場規模の測定や予測は困難です。政府機関、防衛機関や民間事業者から寄せられる軌道上サービスに対するニーズは近年著しく増加しているものの、軌道上サービス市場が、以下のような要因等により、アストロスケールホールディングスグループの想定する規模に達しない可能性があり、その場合はアストロスケールホールディングスグループが目指す収益性を達成することができず、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 ① 民間事業者の需要の変化民間事業者向けLEXサービスについては、静止軌道(GEO)の衛星を想定しています。官民合わせて、現在、静止軌道衛星は590機存在しますが、毎年20-30機程度の衛星が燃料切れによる退役を迎えると見込まれます。技術が確立されれば、経済合理性の観点で、LEXサービスの需要が増えると見込んでおりますが、アストロスケールホールディングスグループが想定する技術レベルを上回る技術革新等により、想定以上に顧客衛星の寿命が延びた場合、又は経済合理性に基づく判断がなされない場合等においては、軌道上サービスの市場がアストロスケールホールディングスグループの想定通りに拡大しない可能性もあります。アストロスケールホールディングスグループのEOLサービスは、コンステレーション事業者を主な顧客として想定しています。2026年6月時点の軌道上の衛星の数は約15,800機(ESA Space debris by the number)ですが、コンステレーション事業者による打ち上げを中心として、70,000機超の打ち上げが計画されています(内閣府宇宙開発戦略推進事務局(2025)“宇宙輸送に係る最近の状況”)。しかしながら、景気減速その他様々な理由によるコンステレーション事業者の財政状態の悪化、技術的な障害、デブリ抑制に関する規制の動向、コンステレーション事業者のサービスへの需要の減退、事業者間での統合その他の組織再編等の原因により、現在予定されているコンステレーションの打ち上げが予定通りに実現しない可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループでは、顧客衛星の寿命を概ね5~7年と想定し、かつ、ミッション期間中の故障率を7~8%と見込んでおりますが、アストロスケールホールディングスグループが想定する技術レベルを上回る技術革新等により、想定以上に顧客衛星の寿命が延びた場合、故障率が低下した場合、軌道修正能力が向上した場合のほか、近年向上傾向にある顧客衛星のPMD率がさらに向上し、アストロスケールホールディングスグループによるデブリ除去と遜色ないコストで実現可能となった場合等においては、軌道上サービスの市場がアストロスケールホールディングスグループの想定通りに拡大しない可能性があります。 ② 宇宙環境の悪化過去、一部の国による衛星破壊実験が実施されており、一回の実験当たり数千個のデブリが発生しています(出所:https://www.nasa.gov/mission_pages/station/news/orbital_debris.html、NASA「Space Debris and Fuman Spacecraft, May 27, 2021」)。また、2024年には破砕事故の頻度が増え、少なくとも6件の破砕事故が宇宙空間で発生し、宇宙に1,500個以上の観測可能な破片が発生いたしました。今後、衛星破壊実験がさらに増加することや、宇宙空間における武力行為等やデブリ同士の衝突によって、デブリの急速な増加が起きる可能性があります。小さな破砕の生成が指数関数的に増加する可能性もあります。その場合、宇宙環境の悪化により、宇宙空間での活動自体が難しくなり、軌道上サービスの市場がアストロスケールホールディングスグループの想定通りに拡大しない可能性があります。 ③ 法規制改正、政府推進政策及び予算の変化本書提出日現在、国際機関や業界団体、米国、EUや日本をはじめとする宇宙開発先進国等においては、宇宙開発やそれを取り巻く環境に係る各種の政策推進・取り組みが実施されております。その中でも、デブリ除去を促進し、若しくは義務付ける関連法規や業界内のベストプラクティス等が確立しない(若しくは、確立に時間を要する)、又は、違反時の罰金が低額であるなど確立した関連法規の実効性が低い等の理由により、関係者がこれを遵守しようとしないことにより、軌道上サービス市場の需要がアストロスケールホールディングスグループの想定ほど顕在化しない(又は、顕在化が遅れる)リスクが存在します。また、各国政府における政権交代や政策上の優先度の変化、景気減速等を要因とした宇宙関連予算の削減等によっても、軌道上サービスの市場が想定通りに拡大しない可能性があります。 ④ その他の要因デブリ問題に対する社会全体の関心の低下、或いは軌道上サービスに対する社会的評価の低下が生じた場合、軌道上サービスの市場が想定通りに拡大しない可能性があります。 (14)アストロスケールホールディングスグループが目指すビジネスモデルが実現できないリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、サービサー衛星ADRAS-JでISSAサービスに必要となる一部のRPOコア技術実証に成功しておりますが、大半のサービスに対しては現在も、研究・開発段階にあります。政府機関及び防衛機関からは、具体的な大型の実証ミッションの獲得に成功し始めている一方で、民間事業者との間では、複数のミッションに関する商談を継続しておりますが、現状、民間事業者からの実際の収益寄与は限定的であります。現時点では、各事業について以下のようなビジネスモデルを想定しているものの、想定通りのビジネスモデルが実現できない場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、アストロスケールホールディングスグループは衛星の修理・改修等のサービスについても調査を行っておりますが、当該分野についてはまだ調査段階にあり、現時点で確立したビジネスモデルを有しておりません。 ① ISSAISSAサービスにおいては、主に政府機関及び防衛機関を顧客とし、マイルストーン収入を前提とした収入体系を想定しています。しかしながら、かかる収益体系、ミッション当たりのマイルストーン収入などが想定通りに実現できない場合、アストロスケールホールディングスグループは計画通りの業績を達成することが難しくなる可能性があります。 ② LEXLEXサービスにおいては、政府機関、防衛機関及び民間事業者を顧客として想定しており、顧客の属性に応じた収益体系を想定しています。政府機関や防衛機関に対しては、アストロスケールホールディングスグループからサービサー衛星を提供し、静止衛星等へのドッキングによる引渡し以降は、アストロスケールホールディングスはサービサー衛星の運用に関与しない形態を想定しており、収入体系としてはサービサー衛星の販売収入を見込んでいます。しかしながら、かかる収益体系、一基当たりの販売価格などが想定通りに実現できない場合、アストロスケールホールディングスグループは計画通りの業績を達成することが難しくなる可能性があります。一方で、民間事業者に対しては、年間の手数料収入を前提とした収入体系を予定しています。しかしながら、かかる収益体系、ミッション当たりの年間手数料収入などが想定通りに実現できない場合、アストロスケールホールディングスグループは計画通りの業績を達成することが難しくなる可能性があります。 ③ ADRADRサービスにおいては、主に政府機関を顧客とし、マイルストーン収入を前提とした収入体系を想定しています。しかしながら、収益体系やミッション当たりの収入などが想定通りに実現できない場合、アストロスケールホールディングスグループは計画通りの業績を達成することが難しくなる可能性があります。 ④ EOLEOLサービスでは、アストロスケールホールディングスグループは顧客となる民間衛星コンステレーション事業者から、サービス提供の対価として、研究開発段階ではマイルストーン収入を受領することを想定しております。また、商業サービス段階では、衛星開発や打上げに関する費用の大部分に対応する打上げ前のマイルストーン収入とミッション成功時の支払いの組み合わせを標準的な支払モデルとして想定しておりますが、アストロスケールホールディングスグループとしては、事業運営上確保されるべき資金回収のタイミング及びマージンを堅持しつつ、支払モデルの変更(定額払い等の採用)については顧客の要望に柔軟に対応する方針でおります。しかしながら、実際に顧客との間でアストロスケールホールディングスの想定通りの契約内容で合意できる保証はなく、また、サービサー衛星の製造費用、顧客衛星の寿命、故障率、運用高度及び重量等により、前述の収益体系、顧客衛星一基あたりの除去収益、一つのミッションで除去する顧客衛星の数などは、アストロスケールホールディングスの想定通り実現できない可能性があり、その結果、アストロスケールホールディングスグループは計画通りの業績を達成することが難しくなる可能性があります。 (15)軌道上サービス市場における競合に関するリスク(顕在化可能性:低~中、発生時期:特定時期無し、影響度:小~中)軌道上サービス市場はまだ草創期にあり、技術実証に成功しているアストロスケールホールディングスグループは世界に先駆け着実に受注を積み重ねているものの、国内外を問わず、国際的な巨大企業を含む数多くの企業や研究機関等との激しい競争状況が存在しています。アストロスケールホールディングスグループは、本書提出日現在において、軌道上サービスの技術に関する先導的な立場に位置していると認識していますが、新たな企業の参入や技術実証に向けた取り組みは進んでおり、アストロスケールホールディングスグループが今後常に優位性を維持できる保証はありません。また、競合他社が、提携や統合、政府からの支援等を背景に多くの経営資源を投入し、技術開発を急速に進展させ、アストロスケールホールディングスグループを超える技術水準を達成する可能性や、アストロスケールホールディングスグループが研究開発中の磁力捕獲等の技術よりも低コスト又は効果的な技術を新たに開発する可能性も考えられます。競合他社との競争が、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動に影響を与え、アストロスケールホールディングスグループの競争優位性が低下し、事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。同時に、デブリ除去サービスに関する法規制の整備は、アストロスケールホールディングスグループにとって重要ですが、その進捗や内容によっては、新規事業者の参入が容易になる可能性があります。 (16)知的財産権の保護及び侵害防止に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループの事業において、研究開発活動に関わる成果を、特許やその他知的財産権として確保することは、事業推進上の技術開発戦略及び知的財産権戦略として極めて重要であると認識しております。しかしながら、全ての研究成果を適切に権利化できる保証はなく、既に保有している特許や将来取得する特許によって、アストロスケールホールディングスグループの権利を確実に保全できるという保証もありません。また、研究成果を機密情報として公開しないことを企図し、敢えて特許を取得しない場合もあります。現時点では、アストロスケールホールディングスグループの研究開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生している事実はありません。アストロスケールホールディングスグループでは、このような問題を未然に防止するため、弁護士/弁理士の協力を得て知的財産権の侵害等に関する事前調査を実施しておりますが、知的財産権の侵害に関する問題を完全に回避することは困難であると認識しております。また、仮にアストロスケールホールディングスグループが第三者との法的紛争に巻き込まれた場合、その第三者の主張の正当性の有無にかかわらず、解決に多大な時間と費用を要する可能性や、アストロスケールホールディングスグループの信頼性や企業イメージが低下する可能性が考えられるため、アストロスケールホールディングスグループの事業戦略、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、アストロスケールホールディングスグループは、前述の通り、営業秘密や独自のノウハウを特許化せずに機密情報として管理する場合もあります。これらの情報に関しては、従業員や取引先との間で機密情報に関する譲渡契約や秘密保持契約を締結しております。ただし、これらの契約により機密情報の管理が確実となる保証はありません。これらの機密情報はアストロスケールホールディングスグループの競争力の源泉であり、その管理に失敗した場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (17)収益認識方針に関するリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは、政府機関や防衛機関の研究開発案件等、長期にわたるプロジェクトにおいて、財又はサービスを顧客に移転する履行義務の充足に対応する形で、一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の完全な充足に向けた進捗度を合理的に測定できる場合には、発生したコストに基づいたインプット法などにより進捗度を測定し、当該進捗度に基づき収益を認識しております。また、進捗度を合理的に測定できない場合には、履行義務の結果を合理的に測定できるようになるまでに発生した原価のうち、回収可能性が高いと判断される部分と同額を収益として認識しております。本書提出日現在における主要なプロジェクトについては、発生した原価のうち、回収可能性が高いと判断される部分と同額を収益として認識しておりますが、今後のプロジェクトの内容及び契約条件によって、現在とは異なる収益認識方針が適用された場合には、アストロスケールホールディングスグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、アストロスケールホールディングスグループでは進捗度に基づく収益認識の適用範囲の拡大等を検討しており、これに伴い収益認識額や収益認識のタイミングが変動する可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループのいずれの事業も、本書提出日現在において商業サービスを開始しておらず、将来において商業サービスが開始された際に採用される収益認識方針も、現時点で確定しておりません。実際に適用される会計処理及び採用される収益認識の方針が現時点での想定と異なる場合、収益認識額や収益認識のタイミングが想定と異なるものとなり、アストロスケールホールディングスグループの期間損益に影響を与える可能性があります。 (18)収益の不確実性について(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)本書提出日現在、アストロスケールホールディングスグループは、締結済みの軌道上サービスの提供に関する法的拘束力のある契約件数を着実に積み上げています。一方で、本書に記載されたアストロスケールホールディングスグループが取り組むプロジェクトには、アストロスケールホールディングスグループがその全部又は一部のフェーズにつき法的拘束力のある契約を締結していないものが含まれます。そして、アストロスケールホールディングスグループがこれらのプロジェクトにつき法的拘束力のある契約を締結し、また、契約上定められたマイルストーンを達成するなどして想定される収益を確保できる保証はありません。また、法的拘束力のある契約は、一般に、アストロスケールホールディングスグループによる契約違反、顧客側の都合、不可抗力等を理由として、顧客側より解除される可能性があります。そして、顧客が契約を解除した場合、アストロスケールホールディングスグループは、当該契約から得られるはずであった潜在的な収益の全てを失う可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループは、本書提出日現在において、少数の見込み顧客との間で、将来のLEXサービスの提供に関する一定の覚書等を締結しています。しかしながら、これらの覚書等は、将来のサービス提供に関する拘束力のある契約ではなく、また、かかる契約を将来締結する義務を課すものでもありません。また、これらの覚書等には多くの場合、サービス提供価格やサービスの独占提供に関する具体的な合意が含まれておらず、また、見込み顧客による必要な許認可の取得が拘束力のある契約の締結の前提条件とされている場合もあります。そのため、覚書等の締結によって、アストロスケールホールディングスグループが想定する条件での将来のサービス提供やそれに伴う収益が確保されたわけではなく、また、かかる契約が将来締結される保証もありません。加えて、アストロスケールホールディングスグループが締結するこれらの覚書等は、何年も先のサービス提供開始を見据えたものであることも多いため、覚書等を締結した見込み顧客が覚書等の締結時に想定していた取引や条件を実行可能な経済的基盤を将来にわたり有している保証はなく、覚書等が締結されていても実際にはアストロスケールホールディングスグループが想定した収益にはつながらない可能性があります。また、覚書等において想定されているサービスは、アストロスケールホールディングスグループにおいて研究開発途上の技術に依拠したものである場合があり、その場合、アストロスケールホールディングスが実際にかかるサービスを想定する条件で提供できるか否かは、当該研究開発の成否に依存することになります。他方で、宇宙ミッションの計画及び開発には長期の準備期間を要するため、アストロスケールホールディングスグループは、見込み顧客との法的拘束力のある契約の締結を待たずにミッションの開発に着手する場合があります。そのため、アストロスケールホールディングスグループの想定するタイミングや条件でサービス提供に関する契約が締結されない場合や、最終的にかかる契約の締結に至らない場合には、アストロスケールホールディングスグループが現時点で想定するタイミング及び金額での収益を実現することが難しくなるほか、アストロスケールホールディングスグループが先行して支出したミッションの開発費用が回収不能となり、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 (19)「受注総額」、「受注残総額」及び「想定受注残総額」の数値について(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスは、アストロスケールホールディングスの軌道上サービスミッションの受注状況を管理するための経営指標である「受注総額」及び「受注残総額」を開示しております。アストロスケールホールディングスグループの技術開発の進捗その他当該契約において定められた条件が実現に至らない場合、サービス提供に応じて支払われるマイルストーン収入の一部が支払われない可能性があり、そのため、アストロスケールホールディングスが開示した「受注残総額」の全てにつき、収益認識に至らない可能性があります。加えて、アストロスケールホールディングスは本書において、特定の連結会計年度又は四半期連結累計期間の末日時点において、アストロスケールホールディングスが選定済みのミッション及び契約の締結には至っていないものの、アストロスケールホールディングスが現時点で競合の存在を認識していないことから、アストロスケールホールディングスグループによる受注が期待できると認識する既存ミッションの後続フェーズに係る「想定受注残総額」を開示しておりますが、かかる後続フェーズについては契約の締結に至っていないため、アストロスケールホールディングスグループが後続フェーズを受注できず、又は、実際の受注金額がアストロスケールホールディングスの想定と異なる可能性があります。 (20)黒字化を達成及び維持できないリスク(顕在化可能性:低~中、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービスに関する宇宙技術開発を主軸とするベンチャー企業です。このような宇宙技術の研究開発には多額の初期投資が必要であり、その回収も他産業と比べて長期に及ぶ特徴があります。そのため、ベンチャー企業が宇宙技術開発分野に取り組む場合は、一般的に期間損益において損失が先行する傾向にあります。アストロスケールホールディングスグループも、第2期以降継続的に営業損失及び当期純損失を計上しています。アストロスケールホールディングスグループは、軌道上サービスに関する宇宙技術開発を通じて、将来の利益拡大を目指していますが、現在まで当期純損失を計上しており、今後も研究開発や人員増加に伴う経費が増加することにより、一定期間は損失が続く可能性があります。また、既存の顧客契約の途中解約や顧客の倒産による収益源の喪失が生じた場合、想定顧客の獲得に失敗した場合、技術開発や衛星製造における遅延、打上げの遅延や失敗が発生した場合等には、想定した収益の達成やコスト管理が困難となり、黒字化達成が遅延し若しくは困難となり、又は黒字化達成後にそれを維持できなくなる可能性も考えられます。これらの要因により、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響が及ぶ可能性があります。 (21)収益化サイクルの長期化と収益未確保の営業活動のリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは、アストロスケールホールディングスグループのサービスの価値を伝えるために、営業活動に多くの時間と労力を投下しています。また、顧客との契約締結にあたっては、初期の研究開発段階において、見込み顧客との間で法的拘束力のない覚書を締結し、その後時間をかけて実際のミッションに係る契約に移行するケースが一般的となっています。アストロスケールホールディングスグループは、経営陣や技術者の深い関与の下、顧客ニーズを正確に理解するように努めておりますが、上記の要因により、収益化までのサイクルが長く、長期間にわたって収益が得られない営業活動が継続する可能性があります。さらに、見込み顧客との間で最終的にミッションの受注に至らず、これまでの営業活動が収益に繋がらない可能性もあります。アストロスケールホールディングスグループは、営業活動を通じて、経費を賄える十分な水準の収益を確保することを目指しておりますが、収益化が遅れる場合や見込み収益が実現しない場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (22)為替変動に関するリスク(顕在化可能性:高、発生時期:1年以内、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは、日本、米国、英国、欧州等に拠点を有し、顧客契約、研究開発、調達、グループ内資金取引等を複数通貨で行っております。このため、外貨建取引及び外貨建金銭債権債務に係る取引リスク、並びに在外子会社等の財務諸表の円換算に伴う換算リスクにさらされております。アストロスケールホールディングスグループは、日本円、米ドル、英ポンド及びユーロを主要通貨として使用しており、連結財務諸表の作成にあたり、為替相場が大幅に変動した場合、現地通貨ベースの業績に変動がない場合でも、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客との契約、取引先からのサービス・部品・機器等の調達、海外子会社の事業運営に伴うグループ内資金供給等において、外貨建てで対価を受領又は支払う取引を行っております。これらの取引では為替相場の変動により、売上収益、費用、外貨建債権債務の評価額が変動し、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、主要通貨ごとの社内レートの設定、実勢レートとの差異、外貨建収支見通し等の把握により、為替変動の影響管理に努めております。為替変動の影響が最も大きい海外子会社向けの外貨建て貸付に関しましては、DES(債務の株式化)を活用しながら、連結PLへのインパクトをコントロールしており、また実際の資金決済においては、必要に応じて同一通貨建ての外貨預金を保有し決済に充当するなど、自然ヘッジにより影響の低減を図っております。ただし、為替変動リスクを完全に回避することはできず、現時点で為替予約等のデリバティブ取引を利用した会計上のヘッジも行っていないため、為替相場が急激又は大幅に変動した場合には、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。 (23)金利変動に関するリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは資金調達の手段として、借入を積極的に活用しております。現在の借入の大部分は借入時に固定金利が設定されていますが、将来的に借入の借り換えや新たな借入を行う場合、金利の変動によって借入コストが影響を受ける可能性があります。現在のインフレ環境では、各国の中央銀行及び市場金利が上昇しており、将来的な金利上昇は借入コストの増加につながる可能性があります。日本では金利は比較的低水準にありますが、近年はある程度上昇しており、2024年3月には日本銀行が長期国債利回りの操作をほぼ撤廃し、翌日物金利をマイナス0.1%から0〜0.1%に引き上げました。その後、複数回にわたって引き上げられ、現在は1.0%となっています。今後も日本銀行の政策変更などにより金利がさらに上昇する可能性があります。さらに、アストロスケールホールディングスはグローバルに事業を展開しているため、将来的に日本円以外の通貨で借入を行う場合、他国の中央銀行の政策の影響を受けやすくなります。必要なときに十分な資金を、満足のいく条件で調達できない場合、事業の運営及び成長を支える能力が著しく損なわれ、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (24)受注損失引当金について(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループが受注するプロジェクトについて、見積総原価が見積総収益を超過する可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合、受注時に損失見込額を受注損失引当金として計上し、引当金の変動額については連結損益計算書の売上原価に計上しております。そのため、見積総原価が見積総収益を超過する案件を受注した場合は、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。アストロスケールホールディングスグループにおいては、プロジェクトの開始時点において最善の見積を行い、プロジェクトに対する見積総原価及び見積総収益を算定しておりますが、原価総額の見積りは、プロジェクトに対する専門的な知識と経験に基づく一定の仮定を伴い、またプロジェクトの状況に応じて、契約金額の変更や追加コストの発生等によって当初見積りの修正が発生した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する金額に重大な影響を与える可能性があります。 (25)減損損失に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループは、事業を遂行する過程で、資金をさまざまな資産に投資します。その結果、例えば、軌道上サービス事業に関する人工衛星や、その製造工場、人工衛星のために必要な管制局、地上局等の有形固定資産や、ソフトウエアなどの無形資産、他社との業務提携にあたり出資した株式等の金融資産を含む資産を保有しています。これらの固定資産の連結貸借対照表計上額につきましては、IFRS会計基準に準拠しており、当該資産から得られる将来のキャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価しています。そのため、資産の陳腐化やその他の理由によって事業収益性が低下し、当該資産が十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、減損損失が発生し、アストロスケールホールディングスグループの事業、財政状態及び業績に重大な影響を与える可能性があります。 (26)買収、ジョイント・ベンチャー、戦略的提携に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:小)アストロスケールホールディングスグループは、成長戦略の一環として、他社の事業や技術に対する投資や買収、ジョイント・ベンチャー及び戦略的提携を含む機会を探求し、実行する可能性があります。しかしながら、これらの取引には、適切な投資や提携の機会を見いだせない機会探求リスク、適切な資金調達を行えず、計画した取引を実行することが難しくなる資金調達リスク、買収や提携に必要な規制当局の承認が得られない規制リスク、買収や提携後、組織の統合が円滑に進まない統合リスク、買収によって取得したのれんが期待通りの価値を生み出せず、また、これによりのれんの減損が生じるリスク、合弁事業や提携により、既存の取引先や第三者との関係が悪化するリスクなど、多岐にわたるリスクが想定されます。なお、アストロスケールホールディングスは、米国法人を通じて、2020年にLEXサービスに関連してイスラエルのEffective Space Solutions R&D Ltd.の寿命延長サービス事業を買収しています。当該買収はLEXサービスの推進に大きく貢献しておりますが、将来の買収でも同様に期待通りの成果が達成できるとは限らず、事業環境の変化や様々なリスクに対処する体制を整えることが重要と考えております。 (27)内部統制に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループでは、財務報告に係る内部統制を構築しております。アストロスケールホールディングスグループでは、内部統制は、その基本的要素が組み合わさり一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものと捉えており、このような内部統制が十分に機能しない場合、財務報告の虚偽記載を完全には防止又は発見することができないリスクが存在します。アストロスケールホールディングスグループが適正な財務報告に係る内部統制を維持できなかった場合、適切なタイミングで正確な財務報告を提供できず、投資家の信頼が低下し、アストロスケールホールディングスの株式価値に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (28)法的規制に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループの事業は、人事労務、労働安全衛生、税務、輸出入管理、個人情報及びデータの保護、人の身体の健康・安全、環境保護、危険物取扱いなど、様々な関連法令による規制を受けております。また、アストロスケールホールディングスグループは、宇宙に関連する事業を行う上での様々な規制も受けます。各ミッションに関して、適用法令上必要となる許認可を適切な時期に都度取得する必要があるとアストロスケールホールディングスグループは認識しております。取得が必要な主な許認可として、人工衛星の運用に関わる許可、無線免許に関わる許可(人工衛星及び地上局の無線局免許)、人工衛星に関わる許可(人工衛星の管理に係る許可、軌道上サービスを実施する人工衛星の管理許可、衛星リモートセンシング装置使用許可、宇宙物体登録)、輸出入管理に関わる許可(人工衛星及び測定機器類)、米国・国際武器取引規則(ITAR)、一般包括許可(輸出及び役務取引)、運用に関わる対応(監視システムSWライセンス、打上げ許可、ペイロードライセンス、米国FCCの許認可など)、などがあります。上記以外にも、プロジェクト遂行に必要な許認可を事前に取得する方針です。アストロスケールホールディングスグループでは法令遵守を徹底し、免許等の取消事由や更新欠格事由が発生しないように努めておりますが、将来、アストロスケールホールディングスグループの免許等が何らかの理由により取消し等になった場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業や業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。宇宙開発に関連する法規制は、国際法及び各国の国内法の両方で整備途上にあり、最新の技術革新に適応するために常に変更や見直しがなされる可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、現時点では、アストロスケールホールディングスグループの事業活動に直接的な制約を与える宇宙法や規制等の基本的枠組みは存在しないと認識しておりますが、今後、法律やガイドラインの追加・改正により、これまで使用が認められてきた部品等が突然全く使用できなくなるリスクや、アストロスケールホールディングスグループの想定通りの内容で打上げ許可が下りないリスク、又は打上げ許可の取得に予想以上の時間や費用がかかるリスクが生じる可能性も排除できません。このような場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業戦略、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、事業の継続性を保つためにコンプライアンスを徹底し、法令遵守のための体制を整備しております。現時点では、事業の継続に支障をきたす事項は認識しておりませんが、将来において適用法令への違反が発生する可能性も排除できません。かかる違反が発生した場合、刑罰、業務停止を含む行政処分その他の制裁が課される可能性があり、社会的信用やイメージが毀損されることによって、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、法令の改廃や新たな法令規制が設けられた場合、かかる改廃等がアストロスケールホールディングスグループの研究開発及びサービスの提供にとって不利に働いたり、アストロスケールホールディングスグループのさらなる体制の整備・変更等が必要になる可能性があります。こうした規制への対応は、アストロスケールホールディングスグループの事業戦略に悪影響を与え、また、これに対応するために多額の費用を要するなど、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (29)重要な訴訟等に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:小)アストロスケールホールディングスグループは、顧客、取引先、従業員、株主等を含む第三者の権利・利益を侵害したとして、損害賠償請求などの訴訟を提起される可能性や、行政機関による調査等の対象となる可能性があります。アストロスケールホールディングスグループでは、法令や契約の遵守に関する従業員への教育などの対策を積極的に講じるなど、法的問題の発生を最小限に抑えるために、リスクマネジメントに注力しておりますが、将来において法的紛争が発生し、又は行政機関による調査の対象となる可能性は排除できません。仮に法令違反等が発生した場合は、アストロスケールホールディングスグループの企業イメージが低下する可能性が考えられます。さらに、損害賠償責任や課徴金等の金銭負担の発生等により、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、重要な訴訟等の事象は発生しておりません。 (30)国際課税に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:小)アストロスケールホールディングスグループは、2019年1月の組織再編により、日本法人であるアストロスケールホールディングスと、シンガポール法人であるAstroscale Singapore Pte. Ltd.を含むアストロスケールホールディングスの子会社より構成される資本関係を有しております。このため、親子間の資本関係や取引関係に起因する課税上の取扱いは、国際税務に関わる問題となります。アストロスケールホールディングスグループは、国際税務に関する課題に対処するため、専門家である税理士と業務委託契約を締結し、税務情報の収集や税務リスクの排除に努めております。しかしながら、現在想定していない国際税務リスクが潜在的に存在している可能性や、将来的にアストロスケールホールディングスグループに不利な国際税務関連の税制改正が行われる可能性を否定できません。仮にこれらのリスクが顕在化した場合、追徴税額を含む将来の税負担額が増加し、アストロスケールホールディングスグループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループは海外法人間の取引も行っており、移転価格税制等の国際税務リスクの低減に、大手税理士法人から助言を受けて取り組んでおります。ただし、国家間の法解釈の相違による紛争が発生する可能性があり、その結果として将来の税負担が増加し、アストロスケールホールディングスグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (31)地政学及び海外展開に関する事業リスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、事業戦略の一環として、海外に拠点を構え、海外市場における事業の拡大を図っております。また、政府機関との複数の契約を締結しており、その事業は契約相手である政府の施策やその優先順位、政策決定及び国際的な地政学的状況の影響を受ける可能性があります。これらの地政学的事象は、アストロスケールホールディングスグループの事業や輸出権限に影響を与えるだけでなく、必要なライセンスの取得を困難にし、国家側での意思決定や商品・サービスの提供・支払いに遅延をもたらす可能性があります。例えば、米国の政府機関や企業との関係性を考慮し、アストロスケールホールディングスグループは、本書提出日現在において、ロシア又は中国に所在する政府機関や企業を顧客とする契約を締結しない方針を採用しています。また、中東情勢も、イスラエルに製造拠点を有するアストロスケールホールディングスグループのLEXサービスに影響を及ぼす可能性があります。本書提出日現在において、事業面への影響は認識しておりませんが、今後情勢が悪化した場合には、予備兵招集による人的リソースへの影響、サプライチェーンやロジスティクス面での影響、製造拠点への物理的損害などの影響も想定されます。本書提出日現在において、アストロスケールホールディングスグループは不安定で流動的な国際政治情勢の影響を大きく受けておりませんが、将来的にはアストロスケールホールディングスグループの調達、事業提携の機会、顧客基盤などが制約を受け、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 さらに、アストロスケールホールディングスグループの海外事業は、事業を行う海外の各国において、以下を含む様々な要因による悪影響を受ける可能性があります。・投資及び輸出入に関する規制、関税、公正な競争に関する規制、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制(国際課税を含む。)、知的財産に関する規制、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、宇宙関連の事業に関する規制・契約条項等に関する商慣習の相違、不公正な取引慣行・各国の言語や文化の違い・人事採用、従業員研修、労使関係その他労働慣行における相違・その他の政治的及び社会的要因、経済の動向アストロスケールホールディングスグループは、各国の制度改定や社会・経済情勢の変化の把握に努めております。本書提出日時点において、アストロスケールホールディングスグループの事業等に重大な影響を与えるこれらの事象等を認識してはおりませんが、今後、想定を超える制度改定や情勢の変化等が生じた場合には、これらの要因により、アストロスケールホールディングスグループが、海外における成長戦略の目的を達成できる保証はなく、アストロスケールホールディングスグループの事業の成長見通し及び経営成績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 (32)新型ウイルスや未知のウイルスによる感染症の事業への影響に係るリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:中)2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大は、アストロスケールホールディングスグループの事業に様々な影響を及ぼしたと認識しています。特に、国際的な事業展開を行っているアストロスケールホールディングスグループでは、国境を超える拠点間の移動制限により、研究開発や事業活動等に一定の影響が生じました。過去には、感染拡大防止のための渡航制限がELSA-dの打上げ延期につながるなど、ミッションの実施に直接的な影響が及んだこともあります。今後も、未知のウイルスの感染拡大が生じた場合、サプライヤーからの調達に影響が生じる可能性や、経済環境の悪化による宇宙関連事業に係る政府予算の縮小や顧客企業の財務体質悪化などが生じ、顧客需要に悪影響を及ぼす可能性があります。また、アストロスケールホールディングスグループでは従業員の安全への配慮にも努めていますが、アストロスケールホールディングスグループ内で感染が拡大した場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業活動に悪影響が発生する可能性があります。上記のような影響が発生した場合、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 (33)自然災害など予測困難な事情に関するリスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、宇宙技術の開発や軌道上の人工衛星との通信など、軌道上サービスの提供のため、通信ネットワークや情報システムの整備と構築を行っております。しかしながら、地震・台風・洪水・津波・竜巻・豪雨・大雪・火山活動などの自然災害、太陽フレアや微小隕石の衝突など、宇宙空間における災害、火災や停電・電力不足、テロ行為などの要因により、製造施設、通信ネットワーク、情報システムが正常に稼働せず、アストロスケールホールディングスグループの軌道上サービスの提供に支障を来す可能性や、ミッションのスケジュールの遅延を生じさせる可能性が考えられます。これらの影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要する場合、アストロスケールホールディングスグループの信頼性や企業イメージが低下し、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。また、通信ネットワークや情報システムの復旧や改修にあたり、多額の費用負担が発生する可能性があります。さらに、大規模な自然災害は、アストロスケールホールディングスグループが事業を行う国の経済に減速をもたらし、人工衛星の部品や原材料の調達先における工場の閉鎖など、アストロスケールホールディングスグループのサプライチェーンを停滞させる可能性があります。アストロスケールホールディングスグループでは、これらの自然災害等による損害に対処するため保険に加入しておりますが、全ての潜在的損失に対して保険が付保されているわけではなく、保険の対象となる損失であっても、その全額が補償されない可能性があります。また、保険金の支払いについて保険会社から異議が申し立てられること等により、損害の補填に遅延が生じる可能性も考えられます。以上の要因により、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 (34)資金調達リスク(顕在化可能性:低、発生時期:特定時期無し、影響度:大)アストロスケールホールディングスグループは、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、長期にわたって先行投資の期間が続きます。研究開発型企業は一般に、この先行投資期間において、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向にあり、アストロスケールホールディングスグループも、創業以降営業キャッシュ・フローのマイナスが続いており、かつ現状では安定的な収益源を十分に有しておりません。今後も、軌道上サービスを目的とした人工衛星の開発を加速するとともに、多種多様な軌道上サービスの需要に対応するための技術適用の拡大を図るため、先行投資を継続する必要があり、資金調達を行っていく必要があります。このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合、或いは適切な条件で資金調達ができなかった場合は、アストロスケールホールディングスグループの事業、業績及び財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、アストロスケールホールディングスグループでは、長期的視点での資金調達戦略の検討や適切なリスク管理対策の実施を進めております。なお、アストロスケールホールディングスグループは複数の金融機関からコベナンツ条項が付された借り入れを行っております。アストロスケールホールディングスグループは、本書提出日現在において財務制限条項には抵触しておりませんが、今後、当該コベナンツ条項を遵守できなかった場合には、期限の利益を喪失し、返済を余儀なくされる可能性があります。また、今後、アストロスケールホールディングスグループが負債性の資金調達を行う場合には、アストロスケールホールディングスグループの事業活動を制約する契約条件が付される可能性があります。 (35)資金使途に関するリスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスは2024年6月に実施した上場時の公募増資及び2025年5月の海外公募並びに2026年5月の海外一般募集及び第三者割当による資金調達を実施し、調達資金を主に軌道上サービス事業に関するプロジェクト開発費・研究開発費や設備投資及びアストロスケールホールディングスグループの人件費や物件費等の運転資金に充当しております。ただし、当該研究開発に関わる研究開発活動の成果が収益に繋がるまで長期間を要する一方で、研究開発投資から期待通りの成果が得られる保証はありません。研究開発の成果が実際に収益を生むまでの過程は複雑であり、収益計上時期の予測は困難です。さらに、想定される需要に対応した設備投資を行った場合でも、期待通りの需要を獲得できる保証はありません。そのため、調達した資金が期待される利益に結び付かない可能性があります。アストロスケールホールディングスグループは、慎重な投資と事業計画の実行に努め、資金の適切な充当と成果の最大化のためのリスクマネジメントを行っており、事業の不確実性を考慮しつつ、将来リターンの最大化を見据えた計画と実行を進めていくことが重要と捉えています。 (36)四半期或いは事業年度の収益変動による株価の変動リスク(顕在化可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中)アストロスケールホールディングスグループの四半期或いは事業年度ごとの収益は、様々な要因により大きく変動する可能性があります。例えば、ミッションの進捗、売上や費用の増大、新サービスの導入や拡大、競争環境の変化、政府機関・防衛機関案件の入札・受注状況、予期せぬ問題の発生、訴訟の発生、経済や市場環境の悪化など、アストロスケールホールディングスグループの管理が及ばない要因によって、当該期間に計上されるアストロスケールホールディングスグループの収益は影響を受ける可能性があります。また、研究開発段階では、プロジェクトの計画の遅延、プロジェクトに関連する収益の減少や費用の増大が生じた場合、アストロスケールホールディングスグループの収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。こうした収益の変動が市場の期待を下回る水準となった場合、アストロスケールホールディングスの株価は大きく下落する可能性があります。 (37)既存株主による売出しや新株発行、新株予約権の行使に伴うリスク(顕在化可能性:大、発生時期:特定時期無し、影響度:中)当事業年度末時点におけるアストロスケールホールディングスの発行済株式総数は135,905,600株であり、このうち3,586,700株(発行済株式の2.64%)をベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下、「ベンチャーキャピタル等」)が保有しております。一般的に、ベンチャーキャピタル等が未上場会社の株式を取得する場合、上場時又は上場後に保有する株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、アストロスケールホールディングス株式についても、今後ベンチャーキャピタル等
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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