Heartseed(219a)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3【事業の内容】 HeartseedはiPS細胞由来の心筋細胞の微小組織(心筋球)を心臓に移植する治療法である「心筋再生医療」を確立し、重症心不全患者さんに貢献することを目的として事業活動を行っております。なお、Heartseedの事業セグメントは、医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。(1)事業の特徴① 概要 Heartseedが日本で開発中の治療法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」という。)における再生医療等製品に該当し、日本政府は再生医療等製品の開発・承認期間の大幅な短縮を可能にした法律を世界に先駆けて制定するなど、実用化に向け国を挙げて全面的に後押しをしています。Heartseedは、iPS細胞から作製した心筋細胞を重症心不全患者の心臓の中に移植する世界初の心筋再生医療を実現すべく、本制度を活用した条件及び期限付承認を取得することを目指して開発を進めております。 Heartseedは、より多くの患者さんへの適用・貢献を目指して、投与手法や対象疾患の多様化を図るべく、心筋球による複数の治療プログラムを開発中です。リードパイプラインであるHS-001(他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与)では、虚血性心疾患による重症心不全患者10例(低用量5例、高用量5例)を対象に、冠動脈バイパス手術(※4)と併用して投与するLAPiS試験を実施中です。既に全10例の投与組み入れを完了しており、2026年1月に治験で既定した52週フォローアップが完了しております。また、HS-005(他家iPS細胞由来心筋球のカテーテルによる投与)においては、虚血性心疾患、拡張型心筋症それぞれを原疾患とする重症心不全患者7例ずつ計14例の組み入れを目標としたEMERALD試験を予定しています。2025年11月4日付Heartseedリリースの通り、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による治験届の30日調査が完了済みであり、2026年より治験開始すべく準備を進めております。 HS-001におけるLAPiS試験、HS-005におけるEMERALD試験いずれにおいても、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)ウェブサイト上(https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0019.html ※本書提出日現在にて記載確認)にて、国内開発の最終段階である治験として、Heartseedが終了後承認申請を見込む治験(「主たる治験」)として届け出ております。 なお、Heartseedはグローバル大手製薬企業のノボノルディスク エー・エスと2021年より4年間に渡って提携関係がありましたが、2025年9月29日付Heartseedリリースの通り、事業提携が先方事由により解消となりました。結果として、導出していたHeartseedの開発・製造・販売に関する権利及び知的財産権などがHeartseedへ返還された他、ノボノルディスク エー・エスが提携期間中に独自に開発取得していたノウハウや知財についても、Heartseedが追加コストを支払うことなく受領しております。Heartseedは本書提出日現在において、HS-001ならびにHS-005に関する全世界の権利を保持しており、今後、日本の臨床開発を進めるとともに、グローバル市場への対応方向性につき検討を進める予定です。 ② 対象疾患について 心臓は標準的なヒト成人の心臓ではおおよそ250-350gといわれていますが、心臓全体として筋肉の塊のような構造をしており、体全体に血液を循環させるポンプの役割をしています。日本医師会によると、心臓によって1分間で合計約5Lの血液量が全身に循環され、心臓の拍動の回数は1日約10万回、一生の間には40億回以上も打ち続けることになります(日本医師会website https://www.med.or.jp/forest/check/05_02.html ※本書提出日現在にて記載確認)。心臓の拍動を支えるのが心筋細胞ですが、ヒトは壊死した心筋を元に戻す自己再生能力を持っていないため、加齢や疾患などによるダメージなどで心臓の筋肉量は徐々に低下をしていき、結果、心拍出量は低下していきます。 心臓の収縮能力や拡張能力が低下するなどの原因により、心拍出量が低下し、その拍出量の低下を補うために心臓が拡大し、その結果、肺などの臓器のうっ血や呼吸困難、運動能力の低下をきたす症候群が、心不全です。様々な心臓疾患の病状の進行により起こる終末像とも言え、心不全を引き起こす代表的な原因として、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、高血圧、心臓弁膜症、心筋炎、不整脈等心臓や循環器に起因するものに加えて、糖尿病や肺気腫などの他臓器に関連するもの、心臓が生まれつき正常でない先天性心疾患など数多くの病態が存在します。急性期のショックと、慢性的な病態進行が混ざりながら病態が悪化していきます。心不全では、上記の自覚症状が慢性的に継続しながら病態が進行していった結果、最悪の場合は死に至る可能性もあります。(図1) (図1)心不全の病状進行:虚血状態から心筋壊死へ 世界保健機関(WHO、Key facts、2025年7月報告)によると、心不全を含む循環器系疾患は世界の死因の第一位で、2019年には約1,800万人が命を落としています。中でも心不全は生存率が低い疾患で、患者数も増加を続けており、画期的な治療方法の開発が強く望まれています。心不全患者数は2017年時点で世界に約6,500万人とされ(N.L. Bragazzi et al., ESC European Journal of Preventive Cardiology 2020)、米国では2012年に約650万人だったのが2030年には800万人以上に増加すると予測されています(Benjamin, Circulation 2017)。日本でも2005年に約100万人だった患者数が、2020年時点で約120万人、2030年には約130万人に増加すると予測されています(Okura, Circulation J 2008)。この患者数の増加は、高齢者の増加と医療技術の高度化により一命をとりとめるケースが増えたことが一因で、入院患者数や医療費の増大から「心不全パンデミック」と呼ばれるほどに、大きな社会問題となっています。 また、心不全による死亡者数は、米国では2004年に28万人であったものが、2022年の調査によると45万人まで増えております。(Adler, Circulation 2009、及びCDC website https://www.cdc.gov/heart-disease/about/heart-failure.html ※本書提出日現在にて記載確認)。日本でも2020年には、悪性新生物(がん)のうち死亡数の最も多い肺がんより多い約9万人が心不全で亡くなっています。循環器系疾患で急性心筋梗塞、脳梗塞の死亡者数は減少している一方で、心不全による死亡者数は増加の一途をたどっています。(図2、厚生労働省 令和6年(2024年)人口動態統計からHeartseed作成) (図2)国内年度別死因別死亡者数(人) ③ 既存の治療法について 心不全発症前の治療としては冠動脈閉塞に対するカテーテル術、心不全発症後の病態改善のための治療法としては、心臓の負担を下げるための運動療法や薬物治療など、急性・慢性心不全診療ガイドラインに則して数多くの治療法が整備されておりますが、いずれも対症療法に留まっております。特に近年新薬が登場している薬物治療においても、複数種類の医薬品を組み合わせて、それぞれ最大用量の処方が推奨されるものの、血圧を下げる方向の薬が多いことから併用が難しかったり、患者さんの病態の都合上低用量でしか処方できなかったりと、課題があります。心不全の経過は多くの場合、慢性・進行性であるが故に、急性増悪が繰り返し発生することによって重症化していくことから、こうした対症療法を進めていたとしても、病態コントロールが出来ない場合は結果として、ステージC(心不全ステージ)からステージD(治療抵抗性心不全ステージ)へと進展していきます。 最も症状が進行したステージDの心不全患者さんの病態は厳しく、5年生存率は多くのがんよりも下回る20%程度であり(Amar, Circulation 2007)、重症心不全の根治的な治療法は心臓移植しかありません。心臓移植は世界中で慢性的なドナー不足が続いています。国内では特に深刻で、1997年に「臓器移植に関する法律」が施行され25年を経過した2023年に史上初めて100例を突破(日本心臓移植研究会報告)したものの、過去10年平均では約60例であり、年間の心不全死亡数との対比では約0.1%をカバーするに留まっています。心臓移植は65歳以下が対象となっていますが、平均待機期間が3年程度で5年以上待機しているケースもあり、移植登録ができるのは実質的には60歳までとなっています。 心臓移植を待機している患者さん向けの一時的な治療法として、小型ポンプを体内に埋め込んで心臓の左心室につなげて血液循環を補助する補助人工心臓治療があり、近年では心臓移植件数が伸び悩む中、補助人工心臓を半永久的に使用するDestination Therapyという治療法が許可されております。しかしながら、補助人工心臓治療の適応となるには、様々な選択基準をみたす必要がある他、初回退院後6ヵ月程度の同居によるサポートが可能な介護者がいる体制が必須で、バッテリーや電源の管理をはじめとして、患者さんだけでなく支える家族や周囲の方の生活習慣にも大きな制限があります。また心臓移植や補助人工心臓は費用が高額でかつ、施術後も毎年高額な管理費用が必要であり、施術に踏み切ることのできる心不全患者さんは限られているのが実態です。このように、重症心不全は患者数が多く、死亡者数も多く、かつ新規治療法が強く求められる、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患です。 他方、iPS細胞を用いた心筋再生医療は、心臓移植・補助人工心臓よりも多くの患者さんへの適用を目指すことができます。すなわち、心臓移植を待つ厳しい病態の患者さんへの適用のみならず、病態の早期段階での治療の選択肢としても、心機能の改善、悪化の阻止、病状進行を遅らせるなどの期待があります。多くの患者さんに適用可能になることが望まれております。(図3,図4) (図3)Heartseed治療法の概要心筋細胞は生まれた後は細胞分裂をしないため、心筋梗塞等で一部が壊死してしまうと、その後再生することがありません。根治には、残存心筋のパフォーマンスを改善させるだけでなく、根本的な原因である減少した細胞量を補うことで、ポンプ機能を改善させ、拡大した心臓を縮小させることが必要になります。Heartseedの心筋補填療法は、再生心室筋を心臓壁に直接移植することで心筋を補填する治療法です。 (図4)国内重症心不全の治療法の比較(Heartseedまとめ) ④ Heartseed事業のバリューチェーン、パートナーについて Heartseed事業におけるバリューチェーンは、研究、開発、製造、輸送、販売から構成されます。大学病院や公的研究機関等に加え企業等の開発パートナーとの共同研究等を通じて、心筋再生に関する最先端の研究を遂行しております。そしてこれら研究成果を、特許として出願することにより知的財産を形成しております。 Heartseedは他家iPS細胞由来心筋球による心筋再生医療を実現すべく研究開発を進めております。日本国内の開発については、Heartseed単独で進めており、開発業務委託機関(CRO)である㈱リニカルの支援を得て治験実施中です。治験製品の製造については、製造開発受託機関(CDMO)である㈱ニコン・セル・イノベーションへ、また、心筋球や移植針などの移植デバイスの輸送は再生医療に実績のある㈱メディパルホールディングスの100%子会社であるSPLine(エスピーライン)㈱へ委託しております。なお、日本以外の全世界の権利については、Heartseedは本書提出日現在において、HS-001ならびにHS-005に関する全世界の権利を保持しており、新規パートナーを確保した上で海外開発を委託するか、もしくは自社で研究開発を進めるかなど、グローバル市場への対応方向性につき、今後、検討を進める予定です。(図5) (図5)事業系統図 (2)技術及び開発品の特徴 治療薬の開発は、技術の進化に伴って一般的に、体全体に効果を持つゆえに全身性の副作用が出てしまうものから、患部を局所的に治療ができる高い有効性と限定的な副作用が両立できるものへと進化しており、例えば抗がん剤であれば、化学療法が開発された後、分子標的薬が生まれ、現在では血液がん向けに患者自身の免疫を活用した細胞治療薬(CAR-T)が実現されています。心臓領域の治療法では、標準治療薬の開発が進んだ後、近年では、心不全の近接疾患である肥大型心筋症の治療薬として、心臓の筋肉の収縮・拡張をコントロールする医薬品が実現し、新たなブロックバスターになり得ると期待されております。 再生医療によって心機能改善に取り組む技術開発においては、Heartseedの代表取締役社長である福田惠一が1999年に骨髄間葉系幹細胞から心筋細胞の分化誘導に世界で初めて成功して以降、多くのグループや企業が世界中で試みており、実用化に至る製品も出てきました。しかしながら、それらの多くは、心筋細胞以外の細胞、例えば間葉系幹細胞や骨格筋芽細胞などを移植し、それらの細胞が出す分泌物が移植先の心機能の改善を促す間接的な治療アプローチ(パラクライン効果(※5))でした。 他方、福田は慶應義塾大学における循環器内科医として、医薬品企業各社が進める心臓領域の様々な新薬治験に約30年にわたって携わり、心臓領域の治療法が全身性の標準療法から心筋自体に局所的に作用する医薬品に進化していくであろうイノベーションの方向性を経験しております。その中で、1999年の心筋細胞の分化成功以降、福田は、心筋細胞を患者の心臓に移植をして心機能の改善効果を得ようとする、さらに先進的な治療法の実現を一貫して目指し研究成果を積み上げて参りました。Heartseedが開発するiPS細胞由来心筋球による治療法は、上述のパラクライン効果による心機能改善効果のみならず、移植した心筋球自体が患者さんの心筋の中に長期にわたって(マウスの寿命に近い移植後1年間まで確認)生着(※6)し成長することによって、患者さんの心臓に元来存在する心筋細胞と電気的に同調して拍動し、直接心臓に収縮力を生み出す物理的な効果を期待する治療法です。 この直接的に心筋収縮力を回復させるようとする治療アプローチは、“Remuscularization(心筋補填療法)”と呼ばれております。細胞が定着して効果を発揮することが作用機序であり、移植した心筋細胞が長期間にわたり体内に残存するため、非臨床試験結果を積み上げて安全性を確認していくことが重要です。本手法を用いた開発を進める他社も存在しておりますが、Heartseedは既に治験段階へ入っている世界的にも数少ない企業の1社となっております。(図6) (図6)治療メカニズムの比較※1:LVAD, Left Ventricular Assist Device(左室補助人工心臓)※2:分泌された物質が分泌した細胞の周囲の細胞や組織に直接作用すること※3:STEM CELLS 2012;30:1196–1205, Pluripotent Stem Cell-Engineered Cell Sheets Reassembled with Defined Cardiovascular Populations Ameliorate Reduction in Infarct Heart Function Through Cardiomyocyte-Mediated Neovascularization, Masumoto, Matsuo, Yamamizu et al. Heartseedが積み上げてきた独自の技術の詳細は、下記のとおりです。主に慶應義塾大学にて20年以上の歳月を積み上げ培った技術、知財、ノウハウをHeartseedへと移管もしくは実施許諾を受ける形で活用しております。 ① 他家iPS細胞由来心筋球と自家iPS細胞由来心筋球 iPS細胞を用いた再生医療は、健康な方(健常人ドナー)の血液等の細胞からiPS細胞を作製し、そこから目的の細胞を作製して患者さんに移植する他家iPS細胞治療と、患者さん自身の血液等の細胞から患者さん自身のiPS細胞を作製し、そこから患者さん専用の目的の細胞を作製して移植する自家iPS細胞治療の2つに大きく分けることができます。 Heartseedでは、他家iPS細胞由来心筋球を自家iPS細胞由来心筋球に先行して開発しております。両者のプロセスの全体像は下記のとおりです。(図7) (図7)他家iPS細胞由来心筋球移植と自家iPS細胞由来心筋球移植 Heartseedの他家iPS細胞由来心筋球では、外部機関からiPS細胞の原株を取得し、そこから原株を保存するマスターセルバンク、心筋細胞作製時に都度用いるワーキングセルバンクを製造開発委託機関(CDMO)の協力のもとに作製し、Heartseed自身で維持・管理を実施しております。このため、今後の製品供給に必要なiPS細胞をHeartseed自身で供給できる体制を整えております。 自家iPS細胞由来心筋球移植では、後述のように個々の患者さんから安定して高品質のiPS細胞を作製する技術、個々のiPS細胞から高品質な心筋細胞を作製する技術が求められます。 ② Heartseed独自の技術 Heartseedが開発している再生医療等製品候補である他家iPS細胞由来心筋球、及び自家iPS細胞由来心筋球には複数のステップが必要であり、各段階の重要プロセスにおいてHeartseedは独自の技術ノウハウや知財を確立しております。 他家iPS細胞由来心筋球では、上述のようにiPS細胞は既に作製済みで、既にセルバンク化されていますが、自家iPS細胞由来心筋球では、患者さんの血液等からiPS細胞を製造(a)する必要があります。以降のステップは共通していますが、iPS細胞を大量培養し心筋の中でも心室筋に選択的に分化誘導(b)して大量作製した後、Heartseedが開発した純化精製技術で未分化iPS細胞及び非心筋細胞を除去(c)し、心筋細胞の純度を98%以上へ引き上げる徹底した純化を進めます。その後、約1千個の心筋細胞の塊である「心筋球」を大量に作製(d)し、心臓を傷つけないように先端を加工した特殊な注射針(e)を用いて開胸手術時に心臓に心臓外壁から直接移植します。(図8) (図8)Heartseed技術の全体像 純化精製に代表される本プロセスの実現によって、複数の細胞が混じった複雑な製造基準が不要となったほか、目的外の細胞を除去したことで腫瘍形成リスク、不整脈発現リスクを最小限に抑えることが期待できます。(a)~(c)のプロセスを経て製造した心室特異的心筋細胞は、超低温で長期間冷凍保存することが可能であり、冷凍保存した心筋細胞を患者さんの手術スケジュールに合わせて、解凍して心筋球を製造(d)することが可能です。なお、本プロセスはGMP(Good Manufacturing Practice)下での製造が可能で、既に製造開発受託機関(CDMO)へ製造技術移管を完了させております。詳細は下記のとおりです。 a.iPS細胞作製技術 細胞治療を目指す上では、再生医療等製品の最終製品だけでなくその原材料においても薬機法にて品質や安全性確保が求められております。Heartseedは他家細胞治療にて再生心筋細胞の原料として活用するiPS細胞原株を他社から取得した後、原株を保存するマスターセルバンク、心筋細胞作製時に都度用いるワーキングセルバンクを製造開発受託機関(CDMO)の協力のもとにHeartseed自身で維持・管理を実施しているため、Heartseed自身でiPS細胞を供給できる体制を整えております。 ヒトの身体には細胞の自己と非自己を判断し非自己細胞を免疫が除去する仕組みがあり、それを細胞表面のヒト白血球抗原(HLA)(※7)が担っていますが、他家細胞治療ではこの免疫応答をいかに抑えるかが重要です。下記「c.純化精製技術」にて後述する技術革新や治療後の免疫抑制剤の活用によって、他家細胞治療による免疫拒絶のリスクを低減する仕組みを取り入れております。 なお、図8のとおり、Heartseedは自家細胞治療も可能とするiPS細胞を製造する技術も保有しております。次世代パイプラインにおいて自家細胞治療を樹立していく際にも、豊富な技術知見やノウハウを保有しております。 b.分化誘導技術 慶應義塾大学での研究によって、iPS/ES細胞(※8)から心筋細胞への分化誘導方法が確立されてきました。心筋再生医療には大量の心筋細胞が必要ですが、より安価かつ効率よく心筋細胞への分化誘導が可能になっています。 心筋細胞には、心房筋細胞、心室筋細胞、ペースメーカー細胞と性質が異なる細胞がありますが、それぞれが異なる拍動のリズムを持つため、多くの細胞が混ざった状態で製造された心筋細胞は、不整脈のリスクを誘発する可能性が示唆されております。他方、Heartseedの心筋細胞は、心房筋細胞やペースメーカー細胞を含まない、全身循環のポンプ機能を担う心室筋特異的な心筋細胞です。心室筋特異的心筋細胞は拍動のリズムが他の細胞に比べて遅いために、細胞移植後患者さんの心臓のリズムに連動しやすい利点があり、徹底した純化精製によって拍動リズムの異なる他の細胞を除去したおかげで、結果として不整脈が発生するリスクが低減されていると考えられます。(図9) (図9)細胞別の心拍数の対比 c.純化精製技術 iPS細胞を心筋細胞に分化誘導した段階では、未分化のiPS細胞や心筋細胞以外に分化した細胞が残存していますが、特に残存未分化iPS細胞(※9)を除去せずに移植してしまうと腫瘍形成につながってしまう恐れがあります。このため、未分化iPS細胞を純化精製プロセスの中で極限まで除去していくことが、治療法の安全性を確保する上で重要になっていました。 慶應義塾大学での福田惠一及びそのチームの研究において、ヒトiPS/ES細胞及び心筋細胞が細胞培養に必要としている栄養分の代謝解析を進めた結果、どの細胞もグルコース及びグルタミンが培養に必要であるのに対して、心筋細胞だけはグルコース及びグルタミンの欠乏下でも乳酸によって培養可能であることが明らかになりました。本代謝解析の成果を活用して、培養液からすべての細胞の生存に必須とされるグルコース及びグルタミンを除去し、この代替物として心筋細胞だけが効率よく利用することのできる乳酸を添加する工夫をすることで、腫瘍形成の原因となる未分化幹細胞を検出限界値以下までに死滅させ、心筋細胞だけを選別する方法を確立することに成功しました。 これによって、培養液を交換するという極めて単純な工程によって、臨床応用を視野に入れた高純度の心筋細胞を作製することが可能となりました。この研究成果によって安全性の高い大量の心筋細胞を簡便に入手するという大きな課題が解決し、心臓の再生医療の実用化に向けて大きく前進しました。(図10、図11) (図10)腫瘍形成リスクのある残存未分化iPS細胞の除去プロセス (図11)純化精製前後での比較ファイバー状につながっているのが心筋細胞。純化精製前に心筋細胞の間に存在していたiPS細胞や非心筋細胞は、純化精製の結果死滅して、死んだ細胞のみが確認出来る。 また、上述の心筋細胞の純化精製プロセスは、腫瘍形成のリスクを低減させただけでなく、投与に関する安全性の確保に重要なメリットをもたらしています。心筋細胞は他の細胞と比べて、HLAの発現が微小であることが報告されており、純化精製プロセスを通じてiPS細胞を含む目的外の細胞を極限まで除去できた心筋球は、免疫拒絶を受けにくいと想定されます。 d.心筋球作製技術 心筋細胞をバラバラの細胞のまま移植しても、心筋細胞は分散していると脆弱化し、注射針を用いて移植すると90%の細胞は移植直後に拍動に伴う絞り出し現象で心臓外に押し出されてしまう、といった理由で、心臓への生着率が低いことが知られていました。他方、細胞は同種の細胞が凝集すると細胞外マトリックスという物質を介して相互に接着する性質があり、Heartseedでは、約1千個の心筋細胞を塊にした「心筋球」を作製し心臓組織に移植する手法を開発いたしました。実際に免疫不全マウスを活用した移植実験において、心筋細胞単体(シングルセル)よりも心筋球移植の方が、高い割合で生着出来ることが示されました。(図12)ルシフェラーゼというホタルの発光などでも見られる遺伝子を導入したiPS細胞から心筋細胞もしくは心筋球を作製してマウスに移植すると、生着している細胞の量に応じて蛍光を生じさせることができるため、細胞の生着率を相対的に評価することができます。図12では、心筋細胞を1個1個バラバラの状態(シングルセル)で移植したときと比べて、心筋球による移植では蛍光の量は14倍以上になっており、心筋球のほうがより効率的に生着することが示されております。 (図12)心筋球とシングルセルで移植することの細胞定着率の違い サルにHeartseedのヒトiPS細胞由来の心筋細胞を移植した実験(信州大学 柴祐司先生らとの共同研究)でも、移植心筋はきれいに生着しております。(図13)移植したヒトiPS細胞由来心筋細胞は、同方向で収縮できるようサルの心筋細胞と並行に配列され(左図)、また同調した収縮が行えるよう直接的な連結を形成される(右図)ことが確認されました。 (図13) サルに移植したヒトiPS細胞由来心筋細胞(移植後84日) 生着した移植心筋細胞は患者さんの心筋組織内で成長し、低下した収縮機能を補うことで、原疾患を問わず心機能を長期的に改善することが期待されます。 e.投与技術 Heartseedは心筋球のみならず投与技術もあわせて開発しております。多様な心筋壁へのアクセス・ルートにくわえ、心筋球の移植針、カテーテルシステム、補助用アクセサリーなど、術者の手技レベルに依存することなく安全かつ効果的な細胞移植を可能とするシステムを確立しており、(3)開発パイプラインにおいて詳述します。 (3)開発パイプライン Heartseedは、重症心不全の中でも特に収縮不全の重症心不全を対象に、他家iPS細胞由来心筋球による治療法の開発を進めております。 収縮力が低下する重症心不全の原因として、大きく虚血性心疾患(IHD:心筋梗塞や狭心症などで虚血、すなわち、心臓に十分血がいきわたらず、血液が運搬する酸素と栄養素が心筋に供給されず心臓が酸欠状態となり胸痛が起こるもの)と拡張型心筋症(DCM:心臓の筋肉そのものの異常により心臓の筋肉が薄くなり拡張して収縮力が低下するもの)の2つがありますが、Heartseedの開発品は原因疾患にかかわらずに効果を示せると考えられ、これらの両方を対象として考えております。疾患調査に関する論文などの公開情報及び市場調査などの結果をもとにしたHeartseed推計では、虚血性心疾患では、収縮不全の患者層が45%~50%、虚血性且つ難治性の患者層であるニューヨーク心臓病協会(NYHA)分類のII度~IV度を全体の20~30%として、対象患者の母集団としては日本約16万人、米国70~80万人、全世界ベースで約700万人が存在し、また、難病指定をされている拡張型心筋症では日本2万人、米国8~12万人が存在すると想定されます。 心筋再生医療を普及させ、世界中の患者さんにお届けするためには、移植方法と免疫拒絶の抑制の2つの側面からパイプラインを展開する必要があると考えております。そのために、Heartseedでは、リードパイプラインであるHS-001の、最も確実な移植方法である開胸手術下での移植から臨床開発に着手しつつ、同時に以下のHeartseedパイプラインように開発しております。(図14) (図14)Heartseedパイプライン <臨床開発をめざすパイプライン>a.HS-001(他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム) 最初に臨床試験を行うのは、移植したい部位に心筋球を最も確実に移植できるように、開胸手術によって心筋内に直接移植する方法です。移植時に出血を最小限に抑え、安全かつ多数の心筋球を効率的に移植できるように開発した特殊な移植デバイスを用います。更に、患者さんの負担の減少のため、もともと冠動脈バイパス手術(CABG)を予定している患者さんに、CABGとあわせて心筋球の移植を行います。 CABGは虚血部位の血液を再環流させる治療法であり、心筋球へ栄養を行き渡らせる手段として相性が良いと考えられます。他方、CABGの有無や移植部位による心機能改善の差などが治験結果の分析で判明していき、本治験が成功した際には、CABGとの併用に加えて、CABG以外の開胸手術との併用や、他の手術との併用だけではなくHS-001単体での使用の可能性もあると考えております。Heartseedは、再生医療等製品の早期実用化に向けた条件及び期限付き承認制度の活用を想定しており、本治験終了後に承認申請を実施する方針でおります。本治験は、PMDAウェブサイト上(https://www.pmda.go.jp/review-services/trials/0019.html ※本書提出日現在にて記載確認)にて、国内開発の最終段階である治験で終了後承認申請が見込まれる治験(「主たる治験」)として届け出ております。 投与システムHeartseedは開胸投与において心筋球を移植するための特殊な移植デバイスを開発しております。針の先端は盲端加工(先端部分は組織を傷つけないようにとがっていない、鍼灸の針と似た加工)されていて、心臓組織に張り巡らされた血管網を切断せず、針を刺す事での損傷を最小限に抑えて心筋内に到達することが可能で、かつ通常の注射針で見られるような出血は起きません。また、超微細加工により心筋球の大きさに合わせた側孔を6か所に設けており、心筋球がこぼれ出ることを最小限に抑えています。移植時に心臓組織に針が深く侵入し過ぎることを防ぐために、心臓の上に固定するガイドアダプターを使って、常に理想的な角度と深さで移植する手技を開発済みであり、術者の手技レベルに依存することなく安全かつ効果的な細胞移植を可能とするシステムを確立しております。このような移植術者の技術的な負担を軽減し、効率よく心筋球の移植を行うシステムの開発は、細胞移植後の治療効果の安定性と本療法の普及に重要な役割を持つと考えております。(図15) (図15)心筋球と移植デバイス 治験デザイン 虚血性心疾患を原疾患とする患者さんを対象とした第Ⅰ/Ⅱ相治験(LAPiS試験)は、安全性の確認及び有効性の推定を得ることを目的とした治験であり、標準療法である急性・慢性心不全診療ガイドライン薬も既に服用している上で経過が思わしくない患者さんが組み入れられております。低用量5例(細胞含有量5,000万個、1回投与)、高用量5例(細胞含有量1.5億個、1回投与)合わせて計10例を対象とし、2025年1月末に全10例の投与が完了しました。2025年12月末時点におきまして、低用量5例の52週にくわえ、高用量5例の26週のフォローアップ結果を取得し会社発表をしております。主要評価項目は26週の安全性ですが、治験後の承認申請の為に、副次評価項目にて、有効性に関する複数の評価指標を設定しております。免疫抑制剤は、心筋球投与直後は合計3剤を心臓移植用量より低い用量で服用開始し徐々に減少させ、26週経過以降は1剤のみを非常に低い用量で継続します。(図16) (図16)LAPiS試験概要 「心筋の生着」(心筋壁運動、生存心筋量、血流量を確認し、投与前にはなかった心筋が生着し、拍動に機能しているかどうか)、及び「リバースリモデリング(※11)」(左室拡張末期容積(LVEDV)を計測し、心筋補填による構造的な変化・改善を確認する)を有効性の確認のための評価項目としており、標準治療を進める中で心不全が悪化していく患者さんでは通常みられない、心臓の構造的な変化・改善が確認できる評価項目にしております。(図17) (図17)Mechanism of Actionの証明:評価項目の設定の意図 ※:The Kansas City Cardiomyopathy QuestionnaireLAPiS試験の途中経過当治験における症例報告が、第73回日本心臓病学会(2025年9月)や第29回日本心不全学会学術集会(2025年10月)などを通じて治験施設より発表されております。また、それらの内容を総括するかたちで、米国心臓協会学術集会2025(2025年11月)などの国際学会において、低用量群の52週および高用量群の26週データについて会社発表をしております。概要は下記のとおりです。(図18、図19) (a).有効性の示唆について(図18)低用量群52週データ 低用量群の患者背景については、左室駆出率(LVEF)(※10)の移植前における全5例の平均は約25%であるほか、全例でNYHA機能分類はIII、また心不全マーカーであるNT-proBNP値も高いなど、他の治療選択肢を考えづらい重症な心不全患者さんが組み入れられました。52週後の結果において、心筋の動きが改善したにもかかわらず、僧帽弁閉鎖不全症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けた2例目を除き、いずれの指標も著しい改善あるいは軽度の改善を示しております。指標別では、NT-proBNP値が非常に高かった症例でも大きく減少しているとともに、5例中3例において日常生活では症状がないNYHA機能分類Iにまで改善しております。 (図19)高用量群26週データ 高用量群の患者背景についても、左室駆出率(LVEF)の移植前における全5例の平均が20%台前半であり、重症な心不全患者さんが組み入れられました。26週後の結果において、症状の著しい改善を受けて、移植後3カ月以降に活動量を急激に上げたことによる影響を受けた(第73回日本心臓病学会における治験施設医師による学会報告より)8例目を除き、いずれの指標も著しい改善あるいは軽度の改善を示しております。指標別では、左室駆出率(LVEF)が全例で改善したほか、5例中4例で日常生活では症状がないNYHA機能分類Iになり、同じく5例中4例で6分間歩行も高齢日本人の平均的な500メートルを超えており、健常者に近い生活レベルを取り戻されております。 (b).安全性について 低用量群(52週後)と高用量群(26週後)ともに、腫瘍形成、難治性心室性不整脈、治験継続に支障のある重篤な有害事象、いずれも観察されておりません。また、術前に心不全により頻回に入院を繰り返していた患者さんを含め、術後の再入院が必要となったのは、全10例中、僧帽弁閉鎖不全症と新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2例目のみであります。 (c).細胞の生着に関する解析について 心筋球の生着を確認する画像的評価にくわえ、左室壁における部位毎の収縮力の改善確認や収縮強度や構造的変化など、移植後心筋球の生着及び生着に伴う収縮力改善結果に関して、付随的な分析が実施されております。これらの現在確認できている成果を踏まえると、心筋球移植部位での収縮力の改善がみられていることが判明しております。(図20、図21、図22) (図20)本治験2例目における施設PET検査解析結果PET画像診断を用いて、術前には心筋の生存が見られなかった部位において、心筋球移植後に心筋の生存が確認されました。これはCABGでは起きえない変化であり、移植心筋の生着が示唆されました。 (図21)左室壁における部位毎の収縮力の改善確認部位毎の収縮力の改善有無をMRI検査および心エコー検査で確認したところ、再生心筋細胞を移植した部位において、冠動脈バイパス術の有無に拘わらず、局所的な収縮の改善が確認されたことにくわえ、心筋梗塞などにより心筋壁が薄くなった部位における収縮の改善が確認されました。(図21上:黄色系色から青系色へ変化した部位) (図22)本治験3例目における収縮強度や構造的変化の確認MRIストレイン解析を用いて、拡大した心臓の縮小にくわえ、ポンプ機能の改善が確認されました。術後6ヶ月において、心筋球移植部位周辺における「強い収縮」を示す赤い表示が確認できます。 b.HS-005(他家iPS細胞由来心筋球のカテーテル投与による治療プログラム)カテーテルを用いることで、患者さんの負担がより少ない簡便な方法で他家iPS細胞由来心筋球を移植することを目指し、HS-005を開発しております。より広い患者層が対象となること、また、循環器内科医によって施術可能であり心臓血管外科医がいない医療機関でも治療を行えることが期待できます。HS-001で他家iPS細胞由来心筋球の効果を実証した上で、この低侵襲な投与法であるHS-005を、HS-001の次世代品として今後グローバルに展開することを検討しております。HS-005は大動物を用いた非臨床試験において、狙った心臓内の領域へ心筋球を後述の新規開発カテーテルを用いて安全に投与できること、また万が一、左心室腔内で心筋球が散布した際も術中・術後に異常な臨床症状が認められないことなどを確認した上で、 第Ⅰ/Ⅱ相治験(EMERALD 試験)の治験届をPMDAへ提出しました。2025年12月末現在、PMDAによる治験届の30日調査が完了しており、国内での治験開始が正式に可能となった状態です。 投与カテーテルシステムについてHeartseedのリードパイプラインであるHS-001は、開胸手術下において医師の目視により心臓の外側から心筋層内へ心筋球を投与する一方、HS-005はカテーテルを用いて心臓の内側から投与するため、目視できない心臓内部において標的とする心筋層へ心筋球を安全かつ正確に投与する高度な技術が不可欠となります。そこで、Heartseedは心臓循環器領域における有力な医療機器メーカーである日本ライフライン株式会社と共同で、iPS細胞由来心筋球向け投与カテーテルシステムを開発しました。同社は不整脈診断カテーテルにおいて国内トップシェアを有し、心臓向け細胞投与カテーテルの開発実績を持つ国内唯一の企業です。HS-005で使用するカテーテルシステムは、マッピングカテーテルと投与カテーテルの2種類から構成されており、心筋球を標的部位へ正確に投与することを目的とした機構を備えています。(図23) ・マッピングカテーテルマッピングカテーテルは、先端部に配置された複数の電極の位置を3Dマッピングシステムに反映させることで、左心室内部の形状を立体的に構築しモニター表示するとともに、カテーテルの位置情報を得ることができ、標的とする部位への到達に貢献します 。・投与カテーテル投与カテーテルの先端には専用針が備えられており、その側孔より細胞が吐出されます。また、細胞吐出部の手前に組み込まれている電極により、その先が心筋層に到達したことを心電図変化によって確認できる構造となっており、適切な深さでの穿刺に貢献します。 (図23)マッピングカテーテルと投与カテーテル なお本術式は、循環器内科において不整脈に対するカテーテルアブレーション治療の経験を有する医師が中心となって実施することを想定しています。これらの医師は左心室へのカテーテル誘導やマッピング操作に既に習熟していることから、HS-005における医師へのトレーニング負荷は大きくないと考えています。 治験デザイン 虚血性心疾患および拡張型心筋症を原疾患とする心不全患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相治験(EMERALD試験)は、安全性の確認と有効性の推定を得ることを目的とした治験であり、標準療法である急性・慢性心不全診療ガイドライン薬も既に服用している上で経過が思わしくない患者さんが組み入れられる予定です。両疾患群それぞれ7例、合計14例を対象に、高用量(細胞含有量1.5億個)を最大15箇所に分割して投与する計画です。主要評価項目は26週の安全性ですが、治験後の承認申請の為に、副次評価項目にて、有効性に関する複数の評価指標を設定しております。免疫抑制剤は、心筋球投与直後は合計3剤を心臓移植用量より低い用量で服用開始し徐々に減少させ、26週経過以降は1剤のみを非常に低い用量で継続します。 <次世代開発品>c.HS-040(自家iPS細胞由来心筋球)HS-040は、患者さん自身の細胞からiPS細胞を樹立し、そこから心筋細胞への分化・純化を進めた自家iPS細胞由来心筋細胞を活用した治療法を開発しております。開発ステージとしては基礎研究段階であります。免疫抑制剤を必須とする上記「a」「b」の治療法とは異なり、本治療法では、患者さん自身の細胞を活用するため免疫拒絶の懸念が無いと考えられます。特に、常に感染のリスクにさらされているLVAD移植を行うケースもしくは乳がんなどへの抗がん剤治療後に心不全を発症するケースや、免疫抑制剤の活用を出来るだけ避けたいと考えられる小児心不全への適用が期待されます。当開発品が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業 (再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業)」に採択されたことを2023年9月に発表しております。加えて、アイ・ピース㈱(I Peace)と共同で、I Peaceが作製した複数のドナー由来のiPS細胞株に対して、Heartseed独自の心筋分化・純化精製方法を用いて分化誘導した結果、そのすべてのiPS細胞株から高純度の心筋細胞を安定して作製することに成功したことを2023年11月に発表しております。自家iPS細胞由来心筋細胞を活用した治療法の実現に向けて大きく前進しました。 <プラットフォーム技術の活用> Heartseed及び開発パートナーはiPS細胞を用いた心筋再生医療の実現に向けて研究開発を進めておりますが、その過程で、心臓病以外にも適応可能な技術を生み出してまいりました。将来的には免疫拒絶の懸念がない、患者さん自身の細胞からiPS細胞を作製するオーダーメイド治療が期待されます。また、残存未分化iPS細胞を除去することは心臓病以外の治療法においても重要です。これらの技術はiPS細胞を用いた治療の可能性を心筋再生医療以外にも拡げるためのプラットフォーム技術として活用できる可能性があります。 d.高性能iPS細胞作製技術上記「(2)②Heartseed独自の技術」図8にてご説明のとおり、Heartseedが現時点で開発を注力しているパイプラインは他家iPS細胞由来心筋球を活用した心不全の治療となっておりますが、原材料であるiPS細胞を患者さん自身の細胞から取得し心筋細胞へと分化・純化させることが出来れば、いわゆるオーダーメイドの再生心筋治療が可能になります。他方で、本治療実現の為には、心筋細胞へ効率よく分化誘導出来る良質なiPS細胞を高効率で樹立する技術が必要となります。iPS細胞の樹立効率やiPS細胞を目的の細胞に分化させるための分化効率にはばらつきがあり、特に自家再生医療のように患者さん自身の血液などからiPS細胞を作製するプロセスが安定しないことが問題でした。通常の細胞をiPS細胞へとリプログラミングする際の初期化因子の導入時に品質改善剤(H1foo)を追加することでこの課題を解決しており、Heartseedは本研究に関する知財を独占的に保有しております。細胞が多能性を持つための活性化プロセスにおいてリンカーと呼ばれる構造が遺伝子の転写活性の制御に深く関わっており、その中で哺乳類の卵母細胞(※12)特異的なリンカーであるヒストンH1fooが多能性を向上させることで、高品質なiPS細胞コロニーを樹立出来る確率が改善しただけでなく、作製したiPS細胞から心筋細胞への分化効率も上昇させました。本添加剤を活用することで、Heartseedの主事業領域である心筋再生医療のオーダーメイド治療の実現だけでなく、iPS細胞由来の他臓器における再生医療でも応用ができると期待しております。(図24) (図24)H1fooによるiPS細胞の樹立効率改善と心筋細胞への分化効率の安定化(左図)Nanogと呼ばれる多能性遺伝子を高発現しているiPS細胞は質の良い細胞であることが知られている。3つの因子(Oct4、Sox2、Klf4)にH1fooを加えずに作製した場合、Nanogを発現する高品質iPS細胞コロニーの作製効率は50%程度だが、H1fooを加えると、90%以上にまで作製効率が上昇した。 (右図)通常のiPS細胞を心筋細胞に分化させる場合はかなりのばらつきがあり、また分化効率も最大でも80%程度に留まる。しかし、H1fooを添加すると、ばらつきを抑えられ、平均で80%以上と高効率で心筋細胞に分化誘導することができる。 e.残存未分化iPS細胞除去技術Heartseedは、設立母体の慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)内科と共同で、心筋細胞の作製時に残存する未分化iPS細胞や非心筋細胞を効率的に除去するために、細胞のタイプごとのエネルギー代謝の違いに着目し、培養液の成分を工夫することで目的外の細胞が死滅し、目的の細胞のみを得られる「メタボリックセレクション」を開発してまいりました。心筋細胞の純化精製には、培地からグルコースとグルタミンという多くの細胞の生存に必須な栄養素を除去し、代わりに乳酸を添加した培地で培養することが効果的です。これはグルコースやグルタミンがなくても、乳酸を効果的に栄養源として利用できる心筋細胞の特殊な性質を利用しており、他の細胞に適応できるものでは必ずしもありません。他方で、iPS細胞は分化した細胞と比較して脂肪酸合成を活発に行っており、脂肪酸合成阻害剤を添加することで、心筋細胞のみならず神経細胞や肝臓の細胞にもダメージを与えることなく、iPS細胞を選択的に除去出来ることが慶應義塾大学のグループより示されております。(図25) (図25) 脂肪酸合成阻害剤によるiPS細胞の選択的除去(上段がコントロール、下段が脂肪酸合成阻害剤添加) Heartseedでは、心筋再生医療以外の領域でHeartseedのメタボリックセレクションに関する特許を使用する、もしくは使用を希望される企業に対して、ライセンスを進め、iPS細胞を用いた細胞治療の実用化に貢献してまいりたいと考えております。2023年9月にiPS細胞から心筋細胞以外の細胞を作製して治療薬を開発されている企業に脂肪酸合成阻害法を用いた純化精製技術のライセンスアウトを実施したことを発表しております。なお、Heartseedは慶應義塾大学から本技術の再実施許諾権付独占的通常実施権の許諾を受けています。 <用語解説> 用語意味・内容※1iPS細胞iPS細胞とは、皮膚や血液等の細胞から人工的に作られた多能性の幹細胞のことで、全ての組織や器官を構成する細胞に分化でき、ほぼ無限に増殖することができます。ES細胞(胚性幹細胞)も多能性幹細胞ですが、生命の根源である胚細胞を滅失してしまうことから、倫理面での問題が強く指摘されています。2006年8月に京都大学の山中伸弥教授らは世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。※2心筋細胞心臓を構成する複数の細胞のうち、心臓の拡張・収縮に寄与する細胞のことで、心房筋、心室筋(もしくは心室特異的心筋細胞)、洞房結節細胞(もしくはペースメーカー細胞)があります。※3他家移植する細胞や組織が別の個体(ヒトであれば他人)に由来していることを指します。反対に移植する細胞や組織が同一個体(ヒトであれば患者さん自身)に由来していることを「自家」と呼びます。※4冠動脈バイパス手術(CABG)冠動脈バイパス手術(CABG)とは、手術で胸を開き、詰まった冠動脈の先に迂回路(バイパス)をつくる手術で、これにより狭心症や心筋梗塞の原因となる心臓の筋肉の血流不足の改善を目指します。Heartseedが対象としている心不全患者だけでなく狭心症や心筋梗塞の患者にも実施され、国内では年間で約2万件弱の手術が実施されています。※5パラクライン効果分泌された物質が分泌した細胞の周囲の細胞や組織に作用することを指します。心筋再生療法の場合、移植された心筋細胞から産生されるサイトカインや増殖因子などを介して間接的に改善する効果のことです。※6生着移植した心筋細胞が生着するとは、移植した心筋細胞が患者さんの心臓組織内の一部の構成細胞となって長期間とどまることを意味します。これまでの非臨床試験から、移植した細胞は2週間くらいで患者さんの心臓と同期して拍動するようになると考えられます(電気的結合)。※7ヒト白血球抗原(HLA)ヒト白血球抗原(HLA)とは、赤血球を除く、ほぼ体内のすべての細胞の表面に存在する特殊なタンパク質のグループです。人それぞれに構造の微妙な違いがあり、免疫システムが「自己」と「非自己」を区別するための目印として働いています。※8ES細胞多能性幹細胞の一種で、受精卵から発生が少し進んだ胚盤胞の中の細胞を取り出して培養することで作製される細胞のことです。※9残存未分化iPS細胞iPS細胞を分化誘導する過程で、一部分化せずに残るiPS細胞のことを指します。移植する細胞・組織に残存未分化iPS細胞が一定量以上含まれていると奇形種と呼ばれるガンの一種などの腫瘍を形成するリスクがあります。※10左室駆出率(%)(LVEF)左室駆出率(LVEF)とは、左室の心筋収縮力(ポンプ機能)を測定する代表的指標の1つです。心拍ごとに心臓が放出する血液量(駆出量)を拡張期の左心室容量で割って算出されます。※11リバースリモデリング心不全により拡大した左心室が、小さくなり収縮機能が回復することです。※12卵母細胞卵子の形成過程で生じる雌性生殖細胞の1つです。
有価証券報告書(2025年12月決算)の情報です。
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 Heartseedの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末時点においてHeartseedが判断したものであります。 (1)経営環境 日本では、再生医療の承認を後押しする仕組みや法制度が導入されており、国として再生医療の開発を支援している状況にあります。2014年11月には薬機法が改正され、再生医療等製品では、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件及び期限付きで特別に早期に承認できる仕組みが導入されました。また、2015年4月には、「画期性」「対象疾患の重篤性」「極めて高い有効性」「世界に先駆けて日本で申請」を満たす臨床開発中の医薬品及び医療機器に対して、審査期間の早期化や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆け審査指定制度」が試行的に運用開始されました。その後、2019年11月には更に薬機法が改正され、恒常的な活用のために「先駆的医薬品等指定制度」として法制化されています。革新的な医薬品に対する臨床開発上の優遇措置を、日本政府は強化しています。 このような環境のもとで、2014年以降13品目の再生医療等製品が日本において承認されています。そのうち2022年には、角膜上皮幹細胞疲弊症に向けた細胞シートに加え、難治性の多発性骨髄腫向けの製品、合計2品目が承認されています。iPS細胞を活用した再生医療等製品の開発においても、まだ承認事例はないものの、国内では、国立研究開発法人理化学研究所が2014年に世界で初めてiPS細胞を使う臨床研究を実施したほか、2018年には京都大学がパーキンソン病患者さんに対してiPS細胞を使った治療の医師主導治験、2019年には指定国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」という。)がiPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートの臨床研究、2020年には重症心不全患者さんに対して大阪大学がiPS細胞から作製した心筋シートの医師主導治験、2021年には慶應義塾大学が脊髄損傷患者に対するiPS細胞由来神経前駆細胞の臨床研究、さらには2022年に京都大学においてiPS細胞由来HLAホモ型血小板の企業治験が実施されるなど、治療法の確立に向けて臨床開発が進んでいます (2)経営方針・経営戦略 Heartseedは、世界の死因の第一位を占める心臓病に焦点を当て、「再生医療で心臓病治療の扉を開く」ことをミッションとして重症心不全の抜本的治療法の開発を進めております。Heartseedの心筋再生医療は、これまでの細胞治療とは一線を画す、弱まった心臓を再生心筋で置き換える、”Remuscularization(心筋補填療法)”と呼ばれるものです。投与した心筋細胞が患者さんの心臓の中に生着して長期間機能することを期待する治療法であるがゆえに、投与細胞の製造には高い安全性が要求され、サイエンス・技術面での参入障壁が非常に高い領域ともいえます。Heartseedは、本領域の治療法として非臨床試験を完了させ患者投与での検証に入っている世界的にも先駆的な事例となっております。 このような競争環境の中で、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)においては、まず現在実施中のLAPiS試験を完了させ、その後日本での条件及び期限付き承認を目指して販売収益が上がる体制にすることとしております。 同時に、患者さんにとって負荷の少ないカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)の国内での臨床治験を進め、重症心不全に苦しむ日本の患者さんのみならず、世界の患者さんにもHeartseedの心筋再生医療を届けることを目指しております。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標 Heartseedは現在、研究段階の企業であり販売承認を取得した製品群を保有しておらず、現段階においては、リードパイプラインを中心とした早期の上市を目指し、研究開発及び臨床試験の進捗状況及び研究開発資金と費用のバランス等を注視しながら、事業を推進しております。 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題① 臨床応用の加速<HS-001について>Heartseedは、虚血性心疾患患者を対象とした冠動脈バイパス手術併用下の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LAPiS試験)を実施しております。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理された治験計画に基づき、低用量群5例および高用量群5例、計10例への投与を完了し、現在は経過観察中であります。引き続きCRO(開発業務委託機関)や治験参加施設との連携を強化し、本治験について着実な進捗を図ってまいります。 <HS-005について>低侵襲なカテーテル投与による治療プログラム(HS-005)については、国内での臨床試験開始に向け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ治験届を提出いたしました。2026年内の被験者への投与開始という目標に向け、治験施設の選定等も順調に進んでおります。HS-001と同様に、CRO等の外部パートナーや治験参加施設との連携を深め、早期の臨床応用を目指します。② 中長期的事業基盤構築に向けた取り組み事業パートナーであったノボノルディスク・エーエスとの独占的技術提携・ライセンス契約が解消された結果、導出していた開発・製造・販売に関する権利および知的財産権等はHeartseedへ返還され、HS-001およびHS-005に関する全世界の権利をHeartseedが保持することとなりました。今後は、自社保有のプラットフォーム技術および知財のさらなる拡充を図り、将来的な収益の極大化に向けた事業基盤の強化を目標として、戦略的に事業を推進してまいります。③ 財務基盤の強化Heartseedは、リードパイプラインであるHS-001での早期収益化を目指す中、2025年12月末時点の現預金残高は6,836,009千円、純資産額は7,194,912千円です。上市資金のほか、中長期的な事業拡大に向け研究開発資金を安定的に確保するため、株式市場からの調達に加え、銀行融資や補助金の活用を検討することで資金調達手段の多様化を図り、財務基盤の強化に努めてまいります。④ 組織体制の整備及び人材育成持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、優秀な人材を確保し定着を図るべく、組織体制を整備し、従業員のモチベーションの維持・向上に努めていくとともに、一人ひとりの従業員の能力開発や働きやすい環境を構築してまいります。具体的には、離職者を低減させるため、働きやすさの追求、キャリアのための教育、および健康・メンタルヘルスへの配慮を方針として、人事施策を実行してまいります。⑤ コーポレート・ガバナンス体制の強化 Heartseedは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、経営の公正性・透明性を確保することは極めて重要な経営課題であると認識しております。 取締役会においては、社外取締役の専門的な知見や経験を経営判断に反映させることで、意思決定の妥当性と監督機能を強化しております。さらに2025年2月に、取締役会の諮問機関として、過半数が独立社外役員からなる報酬委員会を設置し、役員報酬の決定について公正性・透明性・客観性を担保するよう努めております。 また、役職員が倫理・コンプライアンスに関して共通認識を保持し、公正で的確な意思決定を行う風土を醸成するため、内部通報制度の周知徹底、定期的なコンプライアンス研修を実施しているほか、代表取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会のもと、コンプライアンス遵守状況のモニタリングおよびリスクの早期発見・未然防止に向けた施策の策定を行っております。特に、研究開発に関する事象について、社内倫理委員会を設置し、倫理的および科学的妥当性についてモニタリングを行っております。 さらに、投資家の皆様に対し、研究開発の進捗状況や事業リスクを適時かつ公平に開示することで、市場との建設的な対話を促進してまいります。
事業等のリスク
3【事業等のリスク】 Heartseedの事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中にはHeartseedとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくはHeartseedの事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。 Heartseedはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、Heartseed株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。 また、Heartseedは、再生医療等製品の開発を行っております。一般的に再生医療等製品を含む医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、Heartseedへの投資はこれに該当します。 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在においてHeartseedが判断したものであり、将来下記に挙げたリスク以外でHeartseedに関する重要なリスクが発生する可能性があります。また、Heartseedはこれら事業等のリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を図り事業活動を行っておりますが、このような諸策の成否には不確実性が存在します。 (1)技術革新及び競合に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大) 再生医療分野及びiPS細胞等の分野では、世界中で研究競争が盛んに行われており、飛躍的な技術革新が短期間で進んでいます。今後、革新的な技術が開発された場合、既存技術の大幅な改善がされた場合、遺伝子治療等新規の治療法について技術革新が生じた場合及び新規参入等の状況によっては、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。このため、Heartseedは、大学や公的研究機関と連携し、最先端技術の開発に先行して取り組むとともに、常に最新の技術動向の把握に努めております。 競合につきましては、大手企業を中心に、新興企業、研究機関等が増加傾向にあるほか、今後の市場拡大を見込み、参入機会を窺っている企業も存在すると思われます。このような競合相手が新たな技術を開発し、Heartseedの技術を上回った場合、あるいは関連特許を取得した場合及びHeartseedより先に上市した場合等には、Heartseedの開発する製品の販売が行えない可能性、あるいは市場において他社が優位を確立しており、Heartseedの製品のマーケティングが困難となる可能性またはHeartseedが事業計画において想定していた売上を達成できず、研究開発費用を賄うことができない等の可能性があります。かかる事象が生じた結果、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (2)再生医療ビジネスに関する想定外のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedは、「薬機法」等の関連法令に準拠し、再生医療等製品の臨床試験を進めてまいります。リードパイプラインであるHS-001では、虚血性心疾患を原疾患とする心不全に向けたLAPiS試験(低用量5例:0.5億個の心筋細胞投与、高用量5例:1.5億個の心筋細胞投与)において、全10例の投与及び52週のフォローアップを完了いたしました。他方、HS-005においては、虚血性心疾患及び拡張型心筋症それぞれの原疾患由来の心不全に関して、全14例のEMERALD試験(それぞれ7例:1.5億個の心筋細胞投与)を実施すべく準備を進めております。これらの試験に先立ち、サルや小動物を用いた非臨床試験において有効性及び十分な安全性マージンを確認した上で、LAPiS試験を開始したほか、EMERALD試験向けにはカテーテル投与が可能かについてブタを用いた非臨床試験にて確認をしております。加えて、LAPiS試験開始後に開示した試験結果等においても、有効性及び安全性を示すデータを取得しております。 しかしながら、今後実施する心筋細胞に関連する治験において、事前に想定していなかったような予期せぬ安全性懸念が発生する可能性は、現時点で完全には否定できません。さらに、患者リクルーティングが難航することなどによる臨床試験の遅延や、承認申請及び審査過程での遅延が生じる懸念があります。場合によっては臨床試験の中止や承認が得られず製品の上市に至らないリスクがあるほか、臨床試験の遅延や予期しない問題点への対応により、研究開発費が見込みより増大するリスクも存在します。各治験施設の責任医師や、関連するステークホルダーとの十分な連携を行うことなどによりリスクの低減を図っておりますが、Heartseedの製品の上市や研究開発活動が当初の予定どおり進まない場合、Heartseedが想定する売上の獲得が遅延・減少・喪失などする可能性があり、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (3)再生医療等製品に関連する法規制のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:中) Heartseedが規制を受けている再生医療等製品に関する法規制については、技術革新や想定外の事態の発生等に対応し、継続的に見直しがなされる可能性があります。Heartseedが戦略的に依拠している薬機法による「条件及び期限付承認制度」において、審査期間の長期化、必要とされる臨床試験数の増加、審査要件の追加・修正等の変更が生じた場合、Heartseed製品の上市時期や上市に必要な臨床開発計画に大きな変更を余儀なくされる場合や、Heartseedの想定した内容での承認が得られない場合があります。加えて、近年は医療費の引き下げ圧力が強まる傾向にあります。中央社会保険医療協議会(中医協)等における議論をはじめ、厚生労働省の薬価に対する考え方の見直しによって薬価制度が変更された場合、上市後の薬価がHeartseedの想定する製品価値を下回るなど、将来の収益見通しに大きな影響を及ぼす懸念があります。 Heartseedは、こうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めております。しかしながら、今後これらの法令や制度等に重大な改廃がありHeartseedの開発想定に影響が及んだ場合には、研究開発進捗の大幅な遅延、研究開発費用の増大、あるいは想定より低い薬価の算定などを招くおそれがあります。かかる事象が生じた結果、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (4)条件及び期限付承認取得後のリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大) 日本では2014年11月の薬機法の改正に伴い、再生医療等製品にて有効性が推定され安全性が確認されれば、対象とする医療機関等の限定や追加の臨床試験等の条件を付し、承認に有効期限を設けることで早期に承認を取得できる条件及び期限付承認制度が導入され、当該制度の導入後多くの再生医療等製品が上市されております。そのため、当該制度によって可能な限り条件及び期限付承認を取得して開発中の再生医療等製品の早期実用化を目指すことを、Heartseedでは最重要戦略として位置付けて臨床開発を進めており、LAPiS試験においても、当該制度の活用を念頭に置いての臨床試験デザインを立案しております。 他方で、条件及び期限付承認制度では、通常の医薬品開発では承認申請時に求められる大規模臨床試験による安全性や有効性の確認を上市後に行うという制度要件となっています。そのため、Heartseed再生医療等製品の条件及び期限付承認後には、一定期間にわたり製造販売後調査を課されることが予見されます。 Heartseedでは各治験施設の責任医師や規制当局など関連するステークホルダーと連携することで、リスクの低減を図っておりますが、当該製造販売後調査の開始後、Heartseed製品の有効性や安全性が不十分である場合、予期せぬ副作用が発生する場合、調査の結果に関するHeartseedと当局との間の見解の相違が生じる場合、または要請された症例数や承認要件を満たせない場合には、本承認を取得できない可能性や条件及び期限付承認が取り消される等の可能性が存在しております。かかる事象が生じた結果、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (5)特定のパイプラインへの依存について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedは現在、複数のパイプラインを推進するとともに、新規パイプラインの開発にも注力しております。メインパイプラインであるHS-001は、LAPiS試験の52週フォローアップが完了しデータがほぼ出揃っております。他方で、HS-005はEMERALD試験の初期段階にあり、さらに、新規パイプラインは基礎研究の初期段階にあります。これらのパイプラインや今後検討を開始する製品等について、製品化及び収益化に至るかは非常に不確実であり、仮に、製品化が可能となった場合でも、相当程度の期間及び費用を要するものと考えております。 具体的には、技術的な困難や競合による開発の先行、技術革新、法規制の変更、Heartseedの人材不足、サプライチェーン構築の不確実性といった制約要因が存在します。これにより、研究開発から製品化・収益化に至るまでの過程において、想定以上の時間や費用を要する、あるいは期待する進捗や成果が得られない可能性があります。加えて、仮に研究開発に成功した場合であっても、臨床試験段階や上市後において、予期せぬ品質問題や副作用等が発生するリスクも存在します。 Heartseedは、開発の各フェーズにおけるリスク管理や行政当局とのコミュニケーション、開発に必要な資金の確保などを通じて、これらのリスク低減に努めてまいります。しかしながら、以上の問題が顕在化した場合、新規パイプラインによる収益が見込めなくなる懸念があります。その結果、リードパイプラインであるHS-001への収益依存度が増し、同製品の開発や販売状況に大きく左右されることとなり、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (6)製造・輸送・販売体制の構築に関する不確実性について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedは、研究開発活動にとどまらず、その後の製造、輸送及び販売を見据えた事業展開を視野に入れ、細胞の大量培養技術の開発をはじめとする製造方法の確立に注力しております。しかしながら、医薬品の開発・製造には多岐にわたる高度な技術が求められます。そのため、今後何らかの理由でこれらの体制構築が困難となった場合、治験薬や承認後の製品供給に遅延が生じる懸念があります。かかる供給遅延により、臨床試験の中止や撤回を余儀なくされるリスクに加え、体制の再構築に多大な時間と費用を要するリスクが想定されます。また、サプライチェーンにおいても特有のリスクが存在します。製造場所、原材料、製造プロセスの変更が生じた際や、当局から提出データ・管理体制の十分性や信頼性に疑義が示された場合には、追加の説明やデータ提出が求められます。その結果、再度の非臨床試験や臨床試験の実施を指示される可能性や、臨床試験、承認申請、あるいは販売の中止・撤回を要請されるおそれがあります。さらに、販売承認後のフェーズにおいても、先端技術を用いた新規性の高い製品であるため、適切な需給予測が困難となることや、患者様から想定以上の忌避感が生じる懸念があります。加えて、期待された治療効果や費用対効果が達成できない場合や、国内外のプロモーション等に関する規制違反により訴訟・罰金の対象となった場合には、計画していた売上の獲得に至らない可能性があります。 Heartseedは、製造拠点、原材料、輸送体制などサプライチェーンを担う各企業との連携強化に努めるとともに、細胞の保存技術の開発を進めること等を通じて、これらのリスク低減を図っております。しかしながら、以上のリスクが顕在化した場合、Heartseedの経営成績及び事業展開に大きな影響を及ぼす可能性があります。 (7)他社からの原材料供給(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) 再生医療等製品の開発や販売開始後の安定供給について、Heartseedは多くの協力企業との取引によって、必要な原材料や資材等の調達を受けております。特に、製造プロセス中に用いる原材料や試薬、投与に活用する針やカテーテル等は代替性が乏しく、仮に代替品に変更できたとしても現状の開発スケジュールを大きく遅延させる可能性があります。この点、協力企業との供給契約を締結し安定供給を確保できるように努めております。 外注先の取引方針の変更、供給能力の低下もしくは品質の低下、または自然災害及びこれに起因する事象等により現在の協力企業への委託が困難になった場合、Heartseedは代替外注先探索などの対応を行います。しかし、適切な企業の発見が困難である可能性に加えて、仮に適切な企業を発見できたとしても製造体制再構築に相応の時間及び費用を要する場合、あるいはHeartseedに不利な内容での契約締結を余儀なくされる場合等が発生した場合は、Heartseed事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。 (8)予期せぬ副作用及び製造物責任等の発生について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseedの開発品である再生医療等製品を含む製品には、臨床試験段階及び上市後においても、予期せぬ品質問題や副作用等が発生する可能性があります。 そうした事態に備え、Heartseedでは、入念な製造方法の移管プロセスを経た上で、現在進捗中の臨床試験製品を再生医療等製品の製造や品質管理に実績のある製造開発委託機関(CDMO)に委託しております。また、医薬品開発上求められる安全管理に関しても臨床開発や販売停止・中止に関して独立した権限を持つ信頼性保証部を社長直下に組成し、不測の事態に対応できる体制を整備しております。さらに、実施中の臨床試験においても、製造物責任を含めた各種賠償責任に対応するための適切な保険に加入する予定です。 しかしながら、こうした安全管理が何らかの理由や事象で十分でなかった場合、Heartseedの賠償責任が保険金額を上回る場合、あるいはHeartseedに対する損害賠償の請求が認められずとも製造物責任請求等がなされたことによるネガティブ・イメージを受けた場合には、Heartseed及びHeartseedの製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。 さらに、Heartseedの治療法に品質問題や予期せぬ副作用発現等の問題が発生した場合には、製品回収もしくは販売中止、医療機器の仕様変更等の対策の実施もしくは臨床試験の中止、製品の安全性に関する追加データの当局への提出、または再度の試験の実施もしくは罰金の命令等により、医薬品の売上の減少及び多額の費用が発生する可能性があります。 かかる事象が生じた結果、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (9)知的財産権に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseedにおける知的財産権のリスクは、主にHeartseedの特許権が第三者に侵害されるリスクと、Heartseedが第三者の特許権を侵害するリスクがあります。Heartseedの技術保護に向けては、研究開発で得られた成果を必要に応じて迅速に特許出願し、各種データベースや特許事務所を活用して情報収集に努めております。しかしながら、出願中の特許がすべて成立する保証はなく、仮に成立した場合でも、他社による優れた研究開発によってHeartseedの技術が淘汰される可能性は常に存在します。万が一、第三者によって秘密裏にHeartseedの特許が侵害された場合、Heartseedの技術的優位性が損なわれるおそれがあります。特許侵害を認識した際には必要な法的措置を検討する方針ですが、保有する特許権の範囲が事業保護に十分でない場合や、費用対効果・特許無効審判等を提起されるリスクを勘案し、あえて法的措置を見送る場合もあり得ます。その結果、当該第三者がHeartseedと競合する事業を行う展開を許し、Heartseedが期待していた収益が失われるリスクがあります。Heartseedの権利侵害を未然に防ぐ点においては、事前の情報収集を徹底し、適法な手続きのもとに事業に必要な特許権を使用しております。しかし、事前の特許調査等でも認識できず、意図せずに第三者の知的財産権に抵触する可能性を完全に排除することはできません。他社の権利への抵触を認識した時点では、遅滞なく実施許諾(ライセンス)契約の締結を図る方針です。しかし、事業が拡大すればこうしたリスクは増大するため、適時・適切な契約締結が困難な場合や、ライセンサー側が他の第三者の知的財産権に抵触している場合等には、Heartseedに対し製品の製造販売の差止請求や多額の損害賠償を請求される可能性があります。 加えて、Heartseedは各種公的機関や共同研究先から事業に不可欠な特許の実施許諾を受けております。当該機関・企業との良好な関係の維持・構築に努めておりますが、何らかの事由によりこれらの協力が得られなくなる懸念もあります。以上のような知的財産権に関する訴訟やトラブルが顕在化し、Heartseedの主張が認められない場合、または解決に想定以上の費用や時間を要する場合には、Heartseedの事業計画に大きな支障をきたし、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (10)資金繰り(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:中長期、影響度:大) Heartseedは研究開発期間において継続的に営業損失を計上するため、開発品が上市され安定的な収益源が確保されるまでの間、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。 Heartseedの開発品は現在において上市に至っておらず、製品化までには多額の費用を要します。具体的には、研究開発や臨床試験の実施、必要となる許認可の取得、製造・輸送・販売体制の確立に加え、経営体制の維持・拡充や知的財産の運用体制の構築などが挙げられます。さらには、開発プロセスには不確定な要素が多く存在します。臨床試験の実施時期や当局による許認可の時期、追加的な研究開発の要否などによって、資金需要が増加するタイミングを正確に予測することが困難となる傾向があります。 Heartseedといたしましては、増資による資金調達を中心に、取引先銀行との融資契約やコミットメントライン契約、各種補助金等の活用を検討することで安定的な資金確保に努める方針です。しかしながら、必要な時期に十分な額の資金を確保できなかった場合には、Heartseedの財務状況や事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (11)重要な契約等に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedの重要と思われる契約は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載のとおりであり、これらに基づき事業推進に必要な支援を得ております。今後も、研究開発や製造・輸送・販売体制の構築に向けて、様々な企業との事業提携を見込んでおります。 しかしながら、これら既存及び将来の契約において、期間満了や解除等による終了、Heartseedに不利な条件改定が発生する懸念があります。加えて、相手先企業・機関の経営状態の悪化や経営方針の変更など、Heartseedがコントロールできない事情により契約の継続が困難となった場合、代替となる提携先との再契約に多大な時間と費用を要する、あるいは代替先を確保できず円滑な事業運営に支障をきたすおそれがあります。 提携に伴う知的財産権の取り扱いについても留意が必要であり、共同研究等によって生じた発明に基づく特許権が、相手方との共有名義になる、あるいは他社に帰属する可能性があります。Heartseedの事業領域における独占的実施権の確保に努めておりますが、仮に他社への権利帰属によって追加の実施料支払いが生じた場合や、他社による当該権利の実施を制限できない場合には、今後の研究開発や製品販売に支障が生じる懸念があります。 これらの事象が顕在化した場合、Heartseedの財務状況及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (12)人材の確保に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseedの成長戦略を実現するためには、高度な専門的知識、技能及び経験を有する人材の確保並びに育成が不可欠といえます。Heartseedは、常に優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、Heartseedの事業活動に支障が生じ、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (13)内部管理体制について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedの事業の運営に当たっては再生医療等製品、医薬品、医療機器に関する法令、自主規制等が及ぶ他、より一般的に製造物責任、情報保護、知的財産権、競争法、消費者保護、腐敗防止、税金等、各国での法令等の規制が及ぶことから、Heartseedは、コンプライアンス及びコーポレート・ガバナンスの強化を図るための様々な施策を実施しております。また、業務の適正化及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大や、主要メンバーの離職、経営環境の大幅な変化等の理由により、内部管理体制の構築が追い付かないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (14)小規模組織であることについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedの業務執行体制及び経営管理組織は、事業規模に応じた比較的小規模なものとなっており、大企業と比べると、業務の遂行能力は、個々の経験や能力に大きく依存していると考えられます。業務を遂行するために最適と考えられる体制を構築し続けるとともに、今後の事業拡大に伴い積極的な人員の増強、経営管理組織の一層の充実を図る方針です。しかしながら、当初計画を超えた規模で事業が成長するため体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の採用及び育成が順調に進まず、離職者が発生する場合などには、組織的な対応が有効に機能しないことが考えられ、これによりHeartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (15)内部統制に関するリスク(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseedは法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用しておりますが、Heartseedの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、Heartseedの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、Heartseedの財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。 (16)社歴の浅さについて(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedは、2015年11月に設立され2024年7月から上場する社歴の浅い会社であり、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の期間比較の情報が限られております。今後のIR活動などを通じて経営状況を積極的に開示してまいります。しかしながら、経営成績等の期間比較をするための情報には時間の経過が不可欠であり、今後Heartseedが成長を継続していけるか否かを現時点において予測するためには、過年度の経営成績のみでは客観的な判断材料として不十分な可能性があります。 (17)配当政策について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:小) Heartseed事業の特徴として、多額の先行投資を要し、投資回収までの期間も長期に及ぶことからHeartseedは創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。 株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存であります。しかしながら、現時点においては繰越利益剰余金がマイナスであるため、当分の間は研究開発の積極的な推進による企業価値の向上を目指し、配当は行わない方針です。 (18)特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedの代表取締役社長である福田惠一は、Heartseedの創業者であり、設立以来Heartseedの研究開発活動の遂行において重要な役割を担っております。こうした状況から、Heartseedは特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部役職員への情報共有や権限の委譲によって福田に過度に依存しない経営管理組織の整備を進めておりますが、何らかの理由により福田のHeartseedにおける業務遂行が困難になった場合、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 (19)資金使途について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseedが株式上場において公募増資により調達した資金の使途につきましては、主としてリードパイプラインのほか、新規のパイプラインの開発や必要な経営資金にも充当していく方針であります。 ただし、急激な外部環境の変化などに対応するために現時点における資金使途以外の使途に充当する可能性があります。また、Heartseedの計画どおりに使用したとしても、計画どおりの効果を上げられない可能性もあります。資金使途に関して、開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。 (20)新株発行による資金調達(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedは医薬品の研究開発型企業であり、事業提携先が現状存在しないことにより将来のパイプライン開発進捗に伴うマイルストン収入等を現状受領できないことから、将来の研究開発活動の進捗、遅延、もしくは失敗などに伴い、増資を中心とした資金調達を実施していく可能性があります。その場合には、Heartseedの発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 (21)株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する可能性がある期間:各新株予約権発行後から10年の間、影響度:小) 株式価値の最大化を図るため、インセンティブを目的とした役員及び従業員に対する新株予約権によるストック・オプション制度、並びに役員に対する譲渡制限付株式報酬制度を採用しております。今後においてもストック・オプション制度や譲渡制限付株式を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権等の権利行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。 (22)自然災害等について(発生可能性:低、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:大) Heartseed、あるいは研究開発の委託先である企業や研究機関の拠点において、自然災害や火災といった不測の事態が発生した場合、設備に被害が生じるおそれがあります。これにより、事業活動の一部または全部が中断して研究開発に遅延が生じるほか、損害を被った設備の修復に多額の費用を要する懸念があります。 とりわけ、近年懸念されている気候変動に伴い、台風や洪水をはじめとする自然災害が頻発・激甚化した場合、自社のみならずパートナー企業を含めたサプライチェーン全体に甚大な被害をもたらすリスクが存在します。これらの事象が顕在化した場合、Heartseedの経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (23)情報管理について(発生可能性:中、発生する可能性がある期間:特定時期なし、影響度:中) Heartseedの事業において、研究または開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。Heartseedは、その流出リスクを軽減するため、必要に応じて取引先等との間で守秘義務等を定めた契約を締結するとともに、個別の事情に応じた情報開示を行うなど、厳重な情報管理に努めております。また、情報セキュリティ管理規程を定め、これを基に情報セキュリティの維持・管理に努めております。 しかしながら、取引先等によりこれが遵守されなかった場合、あるいは、何らかの原因により、情報システムの停止、個人・顧客情報の流出やコンピュータ・ウイルス、ハッカー、不正侵入等が生じた場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には、Heartseedの経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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