クリーマグループは、クリーマおよび国内子会社1社・海外子会社1社の計3社で構成され、クリエイターエンパワーメント事業の単一セグメントで事業運営を行っております。
本事業は、「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」というビジョンの達成に向け、創作活動に取り組む全国のクリエイターと生活者(ユーザー)が、オンライン上で直接オリジナル作品を売買できるCtoCのハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を2010年より運営してまいりました。
また、2013年以降は、1開催あたり数万人の来場者を動員する日本最大級のクリエイターの祭典「HandMade In Japan Fes’(東京ビッグサイト)」や、音楽とクラフトの野外フェスティバル「Creema YAMABIKO FES」といった大型イベントを開催。「Creema」に出店するクリエイターにさらなる活躍の場を提供すると同時に、生活者(ユーザー)がリアルの場で作品に触れる機会を数多く創出することで、日本のクラフト文化の創造・発展を牽引しながら、クリエイターの活動支援に長年注力してまいりました。
上述のとおり、クリーマグループの事業活動はクリエイターの活動支援に注力してきた経緯があり、本業として作家活動を行うクリエイターや、これから本格的に作家としての活動を志望するクリエイターなど、プロ志向のクリエイターによるコミュニティが形成されています。プロ志向のクリエイターによる高品質な作品が多く集まることで、クリーマグループのマーケットプレイスでは、高品質な作品を求める生活者(ユーザー)の安定的な集客が可能となっています。これが感度の高い良質なコミュニティの構築につながり、クリーマグループのサービスにおける明確な独自性・競争優位性の一つとなっています。
以下にクリーマグループの事業系統図を記載いたします。
(事業系統図)
<具体的な製・商品又はサービスの特徴>
(1)マーケットプレイスサービス
「Creema」は、オンライン上で個人が直接オリジナル作品を売買できるCtoCマーケットプレイスであり、クリーマの中心的なサービスです。また、日本国内におけるハンドメイドマーケットプレイスの先駆的なサービスでもあり、2010年5月のリリース以降、多くのクリエイターにご参画いただき、現在では約29万人のクリエイターが出店する場となっています。
「Creema」では、クリエイターが自身の作品をクリーマのマーケットプレイスに出品し、ユーザーがその作品を購入する際、クリーマが決済の仲介を行います。購入代金から一定の販売手数料を差し引いた残金を、売上金としてクリエイターに入金するビジネスモデルを採用しています。
また、「Creema」では、各クリエイターのページに掲示板を設けており、ユーザーがクリエイターに直接連絡を取ることが可能です。作品に関する質問やオーダーメイドの相談、発注数の調整など、さまざまなコミュニケーションを行うことができ、オンラインでの購買でありながら「つながる楽しさ」を提供しています。さらに、クリエイターはこうしたコミュニケーション機能を活用することで、自身のファンを構築し、本業としての活動を広げることが可能となっています。
<「Creema」画面イメージ>
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2016年7月には、海外展開の第一歩として、中国語版「Creema」をリリースするとともに、海外子会社「可利瑪股份有限公司」を台湾(台北市)に設立いたしました。これにより、日本国内で活動するプロ・セミプロのクリエイターが、台湾・香港のユーザーに向けて自身の作品を簡単に出品できるようになりました。また、日本国内のユーザーも、台湾・香港のクリエイター作品を手軽に購入できる環境が整っています。
越境取引においては、すべての出店を事前審査制とすることで、作品品質を維持しつつ、ユーザーが安心してお買い物を楽しめる仕組みを構築しています。サイトや出品、取引メッセージまで、中国語版「Creema」はすべて中国語(繁体字)に対応しており、出品やメッセージのやり取りには自動翻訳機能を導入しているため、スムーズで安心な取引が可能です。さらに、日本語・中国語が堪能で、台湾・香港のECに精通したスタッフが、出品や取引に関するコミュニケーションを全面的にサポートしており、クリエイター・ユーザーともに利用しやすい環境を実現しています。
設立当初より、「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」というビジョンのもと、クリエイター支援を主軸として「Creema」を運営してまいりました。こうした企業姿勢や各種取り組みの結果、業界内でもプロおよびプロを目指すクリエイターの作品が出品の中心となり、品質の高い作品が集まる日本最大のハンドメイドマーケットプレイスとしての地位を確立し、現在まで成長を続けております。
<マーケットプレイスサービスの重要指標推移表>
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2022年 2月期末 実績 |
2023年2月期末 |
2024年2月期末 |
2025年2月期末 |
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実績 |
前期比 |
実績 |
前期比 |
実績 |
前期比 |
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登録作品数(万点) |
1,348 |
1,549 |
115% |
1,769 |
114% |
1,972 |
111% |
アプリダウンロード数(万回) |
1,253 |
1,391 |
111% |
1,481 |
107% |
1,548 |
105% |
流通総額(百万円) |
16,067 |
16,834 |
105% |
16,584 |
99% |
15,456 |
93% |
※登録作品数はサービス開始時点から当該期末までの累積数、アプリダウンロード数はアプリリリース時点から当該期末までの累積数、流通総額は当該期間の合計。
また、「Creema」と連携可能な唯一のネットショップ開設サービス「InFRAME」を、2024年1月末にリリースしました。クリエイターは、「InFRAME」で作成した自身のネットショップを日本最大のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」と連携させることで、「Creema」に登録中の作品を自身のネットショップにも一括登録でき、一つの操作で「Creema」と「InFRAME」の両方に同時出品することが可能となります。
さらに、両プラットフォーム間で在庫情報が自動連携され、作品が売れた際には在庫が自動調整される仕組みとなっています。これにより、クリエイターは流通チャネルを拡大しながら、販売管理にかかる手間を削減し、より創造的な活動に集中できるようになります。「InFRAME」がマーケットプレイスサービスに加わったことで、「クリーマ経済圏」全体の価値がさらに向上しました。
(2)プラットフォームサービス
「Creema」のプラットフォームを活用し、出店クリエイター・企業・地方公共団体のマーケティング支援を行うプラットフォームサービスも提供しております。その一環として、「Creema」のプラットフォーム上に蓄積された巨大なユーザー基盤を活用し、企業や地方公共団体をクライアントとする外部広告サービスを展開しています。地方創生を目的として全国各地で市を開く「Creema Craft Caravan」や、様々な業種のメーカーとコラボレーションし、クリエイターが作品を制作する広告企画・タイアップ記事広告など、クリーマならではの独自性のある広告商品を多数提供しております。
さらに、2018年9月には「作品プロモーション」機能をリリースし、内部広告サービスの提供を開始しました。これにより、クリエイターは自身の作品を「Creema」内の広告枠に掲載し、より多くのユーザーに認知してもらうことが可能となりました。本サービスはクリック課金型の収益モデルを採用しており、広告が表示された際にユーザーがクリックするごとに、設定されたクリック単価をクリエイターがクリーマに支払う仕組みとなっています。
上記のほか、会員向けサービスとして「スピード振込サービス」も提供しております。本サービスは、「Creema」での売上金の受け取りを、通常の振込日(月末)まで待たずに早期に行いたいというクリエイターのニーズに対応するものです。振込対象金額に所定の料率を乗じた手数料をいただく形で運営しており、多くのクリエイターにご利用いただいております。
(3)イベントサービス
クリーマは、クリエイター作品の販路として、ハンドメイドマーケットプレイス(オンライン)の提供にとどまらず、クリエイターとユーザーをリアルの場で結びつけるクラフトイベントを積極的に展開しております。これらの取り組みは、クリーマサービスの認知度向上に加え、クリエイターやユーザーとのエンゲージメント強化に寄与するとともに、ハンドメイド市場やハンドメイドカルチャーの拡大にも貢献していると認識しています。
そのため、イベントサービスは、単なるクリエイター支援や収益サービスとしての位置づけにとどまらず、PR活動としての役割も果たす重要な施策として取り組んでおります。
以下に、クリーマが定期的に開催している主要な2つのクラフトイベントをご紹介いたします。
(a) 「HandMade In Japan Fes'」
2013年より、「クラフトの市場・カルチャーを日本に確立するために、ミュージシャンにとっての音楽フェスと同様に、クリエイターにも“祭典”と呼べるステージをつくりたい」という想いのもと、東京ビッグサイトにて「HandMade In Japan Fes'」を開催しております。イベント名称には、「日本発のクリエイティブカルチャーを国内外に大きく発信していこう」という想いが込められています。
本イベントは、全国のクリエイターによる作品販売ブースやワークショップが集まる「クリエイターエリア」、人気バンドのステージなどを楽しめる「ミュージック&プレイエリア」、手作りにこだわった食品を提供する「フードエリア」などで構成され、イベント出店者と来場者の感性が直接触れ合い、クリエイティブなうねりを生み出す2日間のフェスティバルとなっています。また、普段はオンライン上で作品の売買を行うクリエイターとユーザーが、リアルな場で交流できる貴重な機会にもなっています。
2013年の初開催以来、動員数を着実に伸ばし、日本最大級のクラフトイベントとしての地位を確立しました。なお、新型コロナウイルスの影響により2020年・2021年は開催を中止しましたが、2022年以降は感染状況の収束を受け、夏・冬の年2回開催を継続しております。
<「HandMade in Japan Fes'」の開催風景>
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(b) 「Creema YAMABIKO FES」
「Creema YAMABIKO FES」は、多彩なミュージシャンによるライブを体感できる野外音楽ステージを中心に、クラフト市やサウナ村、アウトドアエリアなど、音楽とクラフトを同時に楽しめる野外フェスティバルです。
第1回目は2021年秋、静岡県御殿場にて開催されました。クリーマにとって初の音楽フェスティバルながら、1万人を超える関係者の方々にご参加いただき、大盛況となりました。その後、2022年秋に第2回を御殿場で、2024年3月には開催地を横須賀に変更して第3回を開催し、いずれも成功を収めました。
今後も、出演者・出店者・来場者のさらなる増加を見込み、日本の音楽シーンをリードするイベントへと成長させてまいります。
<「Creema YAMABIKO FES」の開催風景>
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(4)新サービス群
上記に加え、クリエイターが抱える様々な課題や想いに応えるため、多様な新サービスを展開しています。現在、新サービス群としては「Creema SPRINGS」と「FANTIST」の2つを提供しています。
「Creema SPRINGS」は、クリエイターやものづくり事業者が自身の実現したいプロジェクトの資金を募ることができるクラウドファンディングサービスです。ハンドメイドマーケットプレイス「Creema」との顧客基盤を活用し、多様で魅力的なプロジェクトを多数展開しており、多くのプロジェクトが目標支援金額を達成しています。
「FANTIST」は、キャンドルやフラワーアレンジメントなど、各業界のアーティストがレッスン動画を販売する動画プラットフォームです。2022年2月期に株式会社FANTISTの全株式を取得し、新サービスのひとつとしてEdTech領域へ本格参入しました。以降、FANTISTは順調に成長を続け、現在ではレッスン動画数が2,500本を超え、日本最大級のコンテンツ規模へと拡大しています。
クリーマグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてクリーマグループが判断したものであります。
(1)経営方針
クリーマグループでは、「まるくて大きな時代をつくろう」を企業理念に、その実現に向けた第一弾の事業として、クリエイターエンパワーメント事業を推進しております。
日本ならびに中国語圏におけるグローバルハンドメイドマーケットプレイス「Creema(クリーマ)」に加え、「Creema」と連携可能な唯一のネットショップ開設サービス「InFRAME」の運営を行うマーケットプレイスサービス、「Creema」のプラットフォームを活用し、出店クリエイター・企業・地方公共団体のマーケティング支援を行うプラットフォームサービス、日本最大級のクリエイターの祭典「HandMade In Japan Fes’(東京ビッグサイト)」等の大型イベントを展開するイベントサービス、さらには、クリエイターの創造的な活動を応援することに特化したクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」、人気アーティストのレッスン動画プラットフォーム「FANTIST」等、クリエイターの活動を支援するサービスを様々な角度から展開し、まだ見ぬ巨大なクリーマ経済圏の確立と、クラフトカルチャーの醸成に力を注いでおります。
(2)経営戦略等
クリーマグループでは、マーケットプレイスサービスにてクリエイター数・ユーザー数(アプリDL数や訪問数等)を安定的に積み上げつつ、マーケットプレイスの運営を通じて構築される豊富なユーザー基盤、プラットフォーム基盤を活用し、広告サービスやイベントサービス等、周辺領域でのサービス収益もスケールさせていくモデルとなっております。そのため、今後においても、事業の基盤であり起点となるマーケットプレイスサービスの品質向上を通じたストック収益とプラットフォーム基盤の強化に対し優先的にリソースを投下しつつ、そこで得た有形・無形の資産を活用する新サービス群にもリソースを投下することで、シナジーの効く事業領域で収益の多角化を図って参ります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
クリーマグループの事業においては、中心的なサービスである「Creema」の、プラットフォームとしての価値を高めることが重要であるため、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、登録作品数、アプリダウンロード数及び流通総額であると考えております。
(4)クリーマグループの経営成績に影響を与える経営環境
日本のハンドメイドマーケット市場は、2010年、日本初のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」をクリーマがリリースしたことに端を発する比較的新しい市場であり、現在の国内市場では、クリーマグループが運営する「Creema」と、GMOペパボ株式会社が運営する「minne」の二大サービスが市場を牽引しております。
一般社団法人日本ホビー協会が発行している『ホビー白書2017年版』、『ホビー白書2018年版』と『ホビー白書2019年版』によれば、日本のハンドメイドマーケット市場の直近5ヵ年の年平均成長率(CAGR)は154%と非常に高い水準で推移しております。
また、近年ではスマートフォンの普及等を背景に個人間の電子商取引(CtoC)の市場が年々拡大を続けております。それにともない、個人によるECサイトの開設や、企業によるECサイトの提供が増加基調にあり、このトレンドも相まってオンライン上でのハンドメイド製品の流通も一般化しており、今後も市場規模は引き続き一定水準以上の高成長率で拡大することが見込まれます。
さらに、クリーマグループのマーケットプレイスはプラットフォームとしての一面を持つため、流通規模が拡大するにつれて、取引に携わるクリエイター数や会員数、作品数等が増加し、それに伴い、プラットフォームとしての価値も高まっていく構造にあります。プラットフォームとしての価値の高まりが、我々のプラットフォームが生み出す収益、例えば広告サービスからの収益や、クリエイター・会員向けの支援サービスの収益を押し上げることで、クリーマグループの事業が関わる市場規模は一層拡大していきます。そのため、クリーマグループが提供するサービスの潜在市場規模は、単純なハンドメイドマーケット市場の市場規模を優に超える巨大なポテンシャルを保持していると考えております。
クリーマがオンラインハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を立ち上げて以降、業界の先駆者として市場の成長を牽引して参りました。2024年2月期の「Creema」の流通総額は165億円を突破し、日本最大のハンドメイドマーケットプレイス・同市場のマーケットリーダーとしての地位を一層強固なものにしております。また、クリエイターの活動を支援するその他の様々なサービスも力強く伸長し、2024年2月期には、売上も過去最高額を達成しております。今後も市場の動向やトレンド、ニーズを的確に捉えた経営を行い、引き続き「クリーマ経済圏」の拡大に取り組んで参ります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2024年2月期においては、プラットフォームサービス(前期比108%)および、戦略投資を続けている新サービス群(前期比255%)が力強い伸長を継続し、全社成長を牽引しました。一方で、マーケットプレイスサービスにおいて、前年の2023年2月期に実施した大規模なTVCMの反動影響に加え、新型コロナウイルス感染症の5類移行(2023年5月)を境とする外出需要の更なる追加拡大(リオープニング)による反動影響が想定以上に大きく、「Creema」は厳しい環境下での事業運営となりました。結果として、当連結会計年度における流通総額は165.8億円(前期比99%)、売上高は1,602,840千円(前期比98%)となり、僅かながら前年を下回る結果となりました。しかしながら、そのような逆風の中にあってなお、年間の流通規模は165.8億円と引き続き業界No.1であることを前提に、国内ハンドメイドマーケット市場におけるマーケットリーダーとしてのポジションはより一層強固なものとなりました。また、イベントサービスにおいては、年2回開催した大型イベント「HandMade In Japan Fes’」は期初の予算以上の実績とはなったものの、前期には2023年1月をもって全店閉店となったストアサービス(Creema Store)の売上が計上されていたこと、また今年度の開催を見合わせた音楽とクラフトの野外フェスティバル「Creema YAMABIKO FES」の売上も計上されていたこと等から、今期はその売上分の下方圧力があり、当連結会計年度の売上高が141,658千円(前期比69%)となっています。
その結果、2024年2月期連結会計年度の連結売上高は2,508,966千円(前期比100%)となり、成長が横ばいとなりました。
一方で、コスト面においては、2024年1月末にリリースされたネットショップ開設サービスの「InFRAME」に係る開発投資など、中長期的な成長を企図した投資は大胆かつ計画通り継続しつつも、網羅的なコストコントロールに取り組み、当初の想定よりも大幅にコストを圧縮することができたことから、2024年2月期連結会計年度の営業利益は41,436千円(前期比427,083千円増)、経常利益は68,923千円(前期比453,640千円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は79,143千円(前期比487,462千円増)となり、売上こそ前年比横ばいとなりますが、各利益についてはいずれも大幅な増益となりました。
このような逆風にあってなお、売上規模の維持と利益の大幅成長を続ける中で、今後もクリーマが持続的かつ非連続的な成長を目指す上では、2025年2月期において、「マーケットプレイスサービスの成長」「利益率の改善」「新規事業の成長促進」の3つがクリーマの戦略課題になると考えています。
マーケットプレイスサービスは、クリーマのクリエイターエンパワーメント事業の中で、売上・利益の規模が最大、かつその他の事業成長に影響を及ぼすクリーマの中核サービスです。しかしながら、上述した通り、新型コロナウイルス感染症の5類移行(2023年5月)を境に外出需要が追加拡大(リオープニング)した反動影響と、2023年2月期に実施したTVCMを含む大規模プロモーションの反動影響が大きな下方圧力となり、「Creema」の流通総額はその成長率が一時的に鈍化しました。ただし、リオープニングによる反動影響も、TVCMの反動影響も、2025年2月期の第2四半期までと想定されるため、マクロ/ミクロ環境ともに第3四半期以降は「Creema」の自力を発揮できる環境が整います。クリーマ全体の成長、競争力の向上を実現するためにも、2025年2月期には、当該事業の再成長に注力する必要があります。
また、2024年2月期は、営業利益で前期比427,083千円増、親会社株主に帰属する当期純利益で前期比487,462千円増と、いずれも大幅増益となっています。一方で、利益率を見ると、最盛期の2022年2月期の営業利益率が14%、経常利益率が16%、当期純利益率が10%であるのに対し、2024年2月期の営業利益率は2%、経常利益率は3%、当期純利益率が3%に留まっています。このような利益率の変遷は、将来的な非連続的成長の実現に向けて、新規事業投資やM&A、プロモーションの拡大、外注人員の拡大による開発投資を増額し続けてきたことによるものですが、そのような成長投資を持続的かつ積極的に推進し続けるためにも、今一度クリーマの利益率を高め、適正利益を確保していく必要があると考えています。
さらに、急成長中のクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」やレッスン動画プラットフォーム「FANTIST」に加え、2024年2月期末には、ネットショップ開設サービス「InFRAME」も「クリーマ経済圏」に新たに加わりました。いずれのサービスも、それ単体で十分な成長ポテンシャルを保持しているとともに、「クリーマ経済圏」全体の価値向上に寄与するものであると同時に、全てのサービスが高成長を継続しています。クリーマの将来の収益基盤強化のためにも、これら新サービスの成長を一層加速させるべく、引き続き戦略投資を継続する必要があります。
「Creema」の流通成長率が再成長軌道にのれば、その周辺事業としてサービス連動しているプラットフォームサービス(内部広告・外部広告等)や新サービス群(クラウドファンディング・レッスン動画プラットフォーム等)も連動して成長速度がさらに加速し、全社の売上が大きく増加します。また、並行してコストの適正化を進めることで、利益率が改善されれば、売上増加も相まって、キャッシュインフローが拡大し、拡大したキャッシュインフローから得た資金を、新規事業やM&Aに投資することで、次の収益の柱を育成し、より大胆に中長期ないし非連続的成長の足場を固めることができます。足元の売上が成長し、利益率・キャッシュ・フローの改善が行われれば、株主の方々への還元が可能となります。加えて、新規事業による将来的な収益向上が本格的に見込まれるタイミングになれば、尚更そのトレンドは高まると考えています。
これらを実現するため、2025年2月期には、「①マーケットプレイスサービスの成長に向けた顧客基盤の強化」「②コストの適正化、生産性向上による利益率の改善」「③新サービスへの成長投資」の3つを戦略の中心に据え取り組んで参ります。具体的には、①について、検索機能やユーザーインターフェースの大幅改善を始め、顧客の体験品質向上を目的に「Creema」プロダクトの磨き込みを継続して行って参ります。また、「Creema」と補完関係にある「InFRAME」の機能追加ならびに出店拡大戦略に注力し、クリエイターの方々により多くの販路を提供するとともに、「Creema」と「InFRAME」により多くの作品と利用者が集まる状態を構築し、マーケットプレイスサービス全体の価値を高めて参ります。その上で、一定のプロモーションコストを投下し、顧客価値・顧客満足度が一層高まった「Creema」をより多くの方々に体験してもらうことで、「Creema」の顧客基盤をより一層強固なものとし、来期以降の本格成長に向けた足場固めを行います。②については、コスト構成比の中でも割合の大きいプロモーション費について、 前期同様、広告効率の改善に取り組み、効果は維持しつつも、金額は前年比で更に縮小させるとともに、次いで規模の大きい人件費・開発関連費および外注費についても抜本的な見直しを行い、組織の生産性を一層高めることで、まずは営業利益率を前期比3倍程度まで引き上げ、来期以降も必然的に利益率が向上していく体制構築を目指します。③については、「Creema SPRINGS」にて営業および編集強化を通じプロジェクトの数と質の更なる向上を進めます。また、「FANTIST」では、プラットフォームに相当量のレッスン動画が蓄積されてきたため、CRMを今まで以上に強化し、レッスン動画の購入率・購入回数・購入単価の改善を進めて参ります。最後に「InFRAME」は、リリース間もないこともあり、今期は機能追加およびプロモーションに集中し、流通・売上成長の先行指標となる登録者数・出品数を着実に増加させ、将来の飛躍に向けた足場を固めて参ります。
これら全ての施策を連携させながら、全体の顧客価値の最大化を図ると同時に、クリーマサービス及び市場の拡大、「クリーマ経済圏」の確立に取り組んで参ります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてクリーマグループが判断したものであります。
(1)インターネット関連市場について
クリーマグループはオンラインマーケットプレイス「Creema」の運営を主力サービスとし、同サイト上からの販売手数料収入と広告収入を主な収益源としています。同サービスの持続的な成長のためには、インターネットにおける技術の改善、環境の整備、そして利用の拡充が今後とも継続することが重要な要因と考えております。しかしながら、革新的な新技術や大幅な規制変更により、インターネット関連市場の利便性が損なわれ、今後のインターネットショッピングサイトの運営の遂行が困難になった場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)ビジネスモデルや消費者の嗜好の変化について
クリーマグループが主力サービスを運営するインターネット業界は、技術革新のスピードが速く、新技術の開発、新しいビジネスモデルによる新規参入者、顧客のニーズの変化等のリスクが存在します。そのためクリーマグループの事業の成長及び成功は、このような経営環境の変化に対して、迅速かつ柔軟に対応する経営執行能力及び技術開発力に依存しています。しかしながら、クリーマグループが、このような事業環境の変化に機敏に対応できず、消費者のニーズを取り込むことができない場合、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)システムトラブルについて
クリーマグループはオンラインマーケットプレイスの運営が主力サービスであり、その安定的な運用のためのシステム強化及びセキュリティ対策に注力しています。しかしながら、システムへの一時的な過負荷、ソフトウエアの不具合、外部からの不正なアクセスによるシステムへの侵入、地震や火事等の災害、予期せぬ電力供給の停止、事故等によって、クリーマグループのシステムがダウンした場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)情報セキュリティについて
クリーマグループは、第三者からのサーバー等への侵入に対して、ネットワーク監視システム等で常時モニタリングを行い、データの送受信にあたっては暗号化を行う等のセキュリティ対策を講じております。
しかしながら、ハッカー等の悪意をもった第三者の攻撃等により、顧客情報及び顧客の有する重要な情報を不正に入手される可能性や、顧客が利用するデータが改竄される可能性、又は各サービスへの急激なアクセス増加に伴う負荷や自然災害等に起因するデータセンターへの電力供給の停止等、予測不可能な要因によってシステムが停止する可能性は否定できません。
このような事態が生じた場合には、クリーマグループに対する法的責任の追求、企業イメージの悪化等により、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)個人情報の管理について
クリーマグループは、オンラインマーケットプレイスの運営が主力サービスであり、そこで扱っている会員等の個人情報につきまして、システムを設計するうえでの配慮は当然ながら、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定や外部のデータセンターでの厳重な情報管理等、サーバー、管理画面及び物理的な側面からもその取り扱いに注意を払っております。
また、社内での個人情報保護に関する研修を行なっており、個人情報を漏洩した際のリスクを含め個人情報保護の重要性の認識の周知徹底を行なっております。
しかしながら、外部からの不正アクセスや、故意又は過失による情報漏洩、またそれら以外の想定していない事態は完全には排除できないことから、個人情報の外部流出等が発生する可能性があります。
このような事態が生じた場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権について
クリーマグループは、運営するサイト及びイベントの名称について商標登録を行っており、クリーマグループが使用する知的財産権の保護を図っています。しかしながら、クリーマグループの知的財産権が第三者に侵害された場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、クリーマグループは、第三者の知的財産権の侵害を行わないよう監視を行っていますが、知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起された場合、またその紛争解決のために多額の費用が発生する場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)第三者への依存について
クリーマグループは、ユーザーにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle LLCが運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが現段階のクリーマグループの事業にとって重要な前提条件となっております。また、クリーマグループは、ユーザーの決済手段として、クレジットカード決済、コンビニ決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しています。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及びクリーマグループとの関係等により、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、クリーマグループは商品の配送についてヤマト運輸株式会社や日本郵便株式会社等の配送業者に依存していることから、今後これらの配送業者について取引条件の変更、事業方針等の見直し及び配送状況の変化等があった場合、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)人材の確保と育成について
クリーマグループは、継続的な成長を達成するためには、優秀で熱意のある人材を確保し育成することが重要な課題の一つであると認識しており、優秀な人材の確保、育成及び活用に努めております。しかしながら、クリーマグループが求める優秀な人材を計画どおりに確保できなかった場合、クリーマグループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)組織体制と内部管理体制について
クリーマグループの組織体制は小規模であり、内部管理体制もそれに準じたものとなっていますが、今後の事業の成長とともに人員増強及び人材育成を図り、内部管理体制の一層の強化に努める方針であります。しかしながら、内部管理体制強化のための施策が十分に執行できず、内部統制管理に重大な不備が発生した場合や財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合には、クリーマグループの事業、業績及び財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
(10)新規事業について
クリーマグループは、今後のさらなる事業拡大及び非連続的な成長を目指し、新サービスや新規事業に取り組んでいく方針であります。新規投資においては、将来性を考慮し慎重な判断を行う考えではありますが、人材、システム開発、固定資産や広告宣伝費等の追加投資が発生する可能性があります。そのような場合には、クリーマグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、新サービスや新規事業の属する市場の拡大スピードや成長規模によっては、当初想定していた成果を挙げることができない可能性があり、事業の停止、撤退等を余儀なくされ、当該事業用資産の処分や減損により損失が生じる可能性があり、そのような場合、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)自然災害等について
大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、システム開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、配送網の分断、混乱等の不測の事態が発生した場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)新型コロナウイルス等の感染症の影響について
新型コロナウイルスに代表される感染症・伝染病の流行等によって、拡散脅威や外出禁止令による経済活動の停滞や、国内消費量が減退する可能性があります。感染症の再流行・長期化が起きることで、イベントの開催自粛の継続や、直接顧客訪問ができないことで新規営業活動が想定通りに進まなくなる等のリスクがあると考えております。これらのリスクが顕在化した場合は、クリーマグループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
(13)関連法規制について
クリーマでは、「Creema」上で発生した取引の代金をクリーマにて一時的にお預かりし、作品到着後にクリエイターに代金をお支払いする「あんしん決済システム」や、作品プロモーションサービスにおいて、クリエイターから広告費用としてデポジット金額を受領の上、作品プロモーションの利用料金をそのデポジット金額から充当する等、決済領域での会員への価値も提供しておりますが、いずれも資金決済に関する法律に定める資金移動業や前払い式支払い手段の発行には該当せず、資金決済に関する法律の適用を受けておりません。クリーマグループでは事業運営にあたり、上記の資金決済に関する法律のほか、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法、特定商取引に関する法律、著作権法、意匠法、商標法、個人情報の保護に関する法律、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、電気通信事業法といった法令に抵触することが無いよう、顧問弁護士等の外部専門家と協議し、法改正等の情報収集を行い、従業員教育等を徹底するとともに、法令遵守体制の構築と強化を図っております。
しかしながら、これらの法令の改正や新たな法令の制定、監督官庁の見解の変更、社会構造の変化等想定外の事態の発生等によりクリーマグループの展開する事業が法令に抵触した場合には、クリーマグループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)新株予約権について
当連結会計年度末における新株予約権による潜在株式は、345,000株であり、発行済株式総数6,733,100株の5.1%に相当します。クリーマの株価が行使価格を上回り、かつ権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(15)ベンチャーキャピタル等の株式保有割合について
当連結会計年度末におけるベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下、「ベンチャーキャピタル等」という。)が所有している株式数は678,700株であり、発行済株式総数6,733,100株に占める割合は10.1%となっております。
一般的にベンチャーキャピタル等が未上場会社の株式を取得する場合、株式公開後には保有する株式を売却し、キャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであります。クリーマにおきましても、クリーマの株式公開後、既にベンチャーキャピタル等が保有するクリーマ株式の一部が売却されていますが、今後もベンチャーキャピタル等の保有株式の売却によってクリーマ株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価の形成に影響を及ぼす可能性があります。なお、上記ベンチャーキャピタル等が所有している株式数には、株式公開後に取得された株式数を含めておりません。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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