アンジェス(4563)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


アンジェス(4563)の株価チャート アンジェス(4563)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

 

3 【事業の内容】

アンジェスグループは、アンジェス及び連結子会社3社より構成され、遺伝子医薬品を中心とする医薬品の開発及び販売を進めております。また、希少遺伝性疾患のスクリーニング検査を中心として、検査受託サービスを実施しております。

さらにアンジェス子会社であるEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます。)では、今まで治療法のなかった疾患の治療を可能にするゲノム編集製品の研究開発を進めております。

 アンジェスグループと各事業における位置付け及び事業系統図は、以下のとおりです。

 

<アンジェスグループと各事業における位置付け>

名称

主要な事業の内容

アンジェス

遺伝子医薬品(遺伝子治療用製品、核酸医薬品)などの医薬品の研究開発と販売

希少遺伝性疾患等の検査受託

AnGes USA, Inc.

米国での遺伝子医薬品などの医薬品開発

EmendoBio Inc.

米国でのゲノム編集技術プラットフォーム及びゲノム編集技術による遺伝子治療の研究開発

但し、研究開発はイスラエルの子会社であるEmendo Research and Development Ltd.にて実施

 

 

アンジェスグループの事業の系統図は、次のとおりであります。

 


アンジェスグループのような医薬品開発事業では、新薬開発において候補となる化合物から新薬として上市できる確率は、およそ3万分の1といわれ、その開発期間も10年を超えることも多く、新薬の製品化は大変難しいものであります。そのため、アンジェスグループのような創薬ベンチャーでは、新薬の開発にかかる研究開発費が先行する事業構造となっております。

医薬品の開発では、開発初期から販売までを一貫して行う以外に、他社が開発中の製品を導入して自社品として開発する場合や、その逆で、開発の途中で開発中の製品を他社に導出するなど様々な手法がとられます。これら、他社からの導入や他社への導出にあたっては、契約により、「契約一時金」「開発協力金」「マイルストーン」「ロイヤリティ」などの費用の支払いや、収入が発生します。

アンジェスの研究開発に関する詳細は、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご覧ください。

さらにアンジェスは、2021年4月にアンジェスクリニカルリサーチラボラトリーを開設し、希少遺伝性疾患検査のスクリーニング検査を一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(CReARID)から受託しており、手数料収入に計上しております。

 

 

<医薬品開発における想定される主な収益>

収益

内容

契約一時金

契約締結時に受ける収益

開発協力金

研究開発に対する経済的援助として受け取る収益

マイルストーン

研究開発の進捗(予め設定されたイベント達成)に応じて受け取る収益

ロイヤリティ

製品上市後に販売額の一定比率を受け取る収益

 

 


有価証券報告書(2023年12月決算)の情報です。

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてアンジェスが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

① 経営方針

アンジェスグループは、「生命が長い時間をかけて獲得した遺伝子の力を借りて画期的な遺伝子医薬を開発・実用化し、人々の健康と希望にあふれた暮らしの実現に貢献する」ことを企業理念としています。

「遺伝子医薬のグローバルリーダー」となることがその柱です。これを実現するために、治療法のない病気に対する新薬を開発することで新市場を創出するという目標を掲げております。

② 利益配分に関する基本方針

アンジェスグループの事業のステージは、現時点では創薬における先行投資の段階にあることから、利益配当は実施しておりません。

アンジェスグループは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は、利益配当は実施せず、研究開発資金の確保を優先する方針です。しかしながら株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来、収益が改善した折には、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当も検討する所存です。

③ 投資単位の引き下げに関する方針

投資単位の引き下げは、個人株主増加や株式流動性向上のために望ましい施策であると考えております。このため、投資単位の引き下げについては、株価の動向を見極めつつ、引き下げによる費用増加、アンジェス株式の出来高、株主数、株主分布状況を考慮しながら、慎重に検討していきたいと考えております。

 

(2) 経営環境

従来は低分子化合物が中心であった医薬品市場は、創薬ターゲットの枯渇を背景に、抗体などのバイオ医薬品や核酸医薬品などの市場が拡大してモダリティ(※1)の多様化を迎えていますが、研究開発の成功確率は決して高くなく、研究開発費は年々増大する傾向にあります。また、治療技術の向上により再生医療や遺伝子治療など新たな治療法の開発も進み、さらにはゲノム解析技術の進歩による個別化医療の普及、デジタル・IT技術を用いたデジタル医療の登場など、治療の選択肢は広がりを見せています。一方で、難病、希少疾患をはじめ、未だに治療法のない疾患も多数存在し、高いアンメット・メディカル・ニーズ(※2)があります。それら疾患の治療の実現に向けて、世界中のバイオベンチャーや製薬会社が研究開発を加速しています。

※1 低分子薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子細胞治療、遺伝子治療などの治療手段のこと

※2 未だ満たされていない医療ニーズ、つまり有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズのこと

 

(3) 目標とする経営指標

アンジェスグループは研究開発型の創薬系バイオベンチャーであり、利益が本格的に拡大するのは、現在開発している複数の新薬が上市され、あるいは提携先からロイヤリティの支払いを受ける時期になる予定です。従って、現段階においては、提携先から契約一時金や開発協力金を受け取り財務リスクの低減を図りながら、研究開発を進め、営業利益をはじめとした各種利益項目の黒字化を目指しております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

具体的には以下の方針に沿って事業を進めてまいります。 

・主要製品「コラテジェン」の製品価値最大化

アンジェスの主要製品である遺伝子治療用製品「コラテジェン」は、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品として条件及び期限付製造販売承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売しております。その後、製造販売後承認条件評価を行い、2023年5月に本承認に向けた製造販売承認を申請しました。また、米国においても下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を適応症として承認取得を目指しており、2022年12月には、後期第Ⅱ相臨床試験において予定した症例数の投与を完了いたしました。今後は、米国臨床試験で得られたデータを活用して欧州展開も目指します。

また、イスラエルでは、同国における独占販売権を許諾したKamada社が2022年にイスラエル保健省に対して承認申請を行い、現在販売開始に向けた準備を進めております。適応症についても、慢性動脈閉塞症の他に、「コラテジェン」の生物活性を生かせる強皮症などの種々疾患への適応拡大の可能性を追求していきます。これらの諸施策により、「コラテジェン」の製品価値の最大化をはかります。

・グローバル展開の推進

遺伝子医薬のグローバルリーダーとして、革新的な医薬品を世界中の患者さんにお届けするアンジェスのミッションに従い、世界最大市場である米国及びこれに続く欧州主要国を中心に医薬品の開発並びに事業化のグローバル展開を推進します。既にグローバル展開に取り組んでいる「コラテジェン」以外の品目についても、米国を中心にグローバル展開を視野に臨床開発を進め、グローバル・パートナーとの提携を活用した展開を進めていきます。

・創薬プラットフォームの深化と拡大

基本プラットフォームであるプラスミドDNA(※3)及び核酸(※4)について、プラットフォームの深化をはかりながら創薬を推進します。プラスミドDNAは、構造の改変や最適化、標的の臓器・組織に効率よく届ける薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)を組み合わせて、より効率の高い遺伝子発現を目指します。2022年9月よりスタンフォード大学と共同研究を開始した改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤はこの一例です。核酸医薬については、現在椎間板性腰痛症の治療薬として開発中のNF-κBデコイオリゴDNAにDDS等を組み合わせた他疾患領域への展開、miRNAをターゲットとした核酸医薬にも挑戦していきます。また、プラスミドDNAやウイルスベクター(※5)を用いて遺伝子を補充・付加する従来の遺伝子治療に加え、異常な遺伝子や不要な遺伝子の修復や破壊が可能な、究極の遺伝子治療とも言われるゲノム編集を用いた治療法の開発が世界的に進められ、激しい競争が繰り広げられています。2020年に子会社化したEmendo社は、新規CRISPRヌクレアーゼ(※6)を探索・最適化する独自のプラットフォーム技術(OMNI Platform)により疾患に応じて構築するゲノム編集戦略を用いて、これまでゲノム編集では対象とできなかった疾患を含め、様々な疾患に対する安全で有効な治療の開発を進めております。これらの取り組みにより、アンジェスグループとしてパイプラインの拡大に繋げていきます。

・パイプラインの継続的拡大

アンジェスグループの創薬プラットフォームを利用した研究開発によりパイプラインの継続的な拡大をはかりますが、遺伝子治療、核酸医薬、遺伝子編集を含む遺伝子医薬の領域は極めて進歩が速く、多様なモダリティーの開発が進められている技術分野です。そのため、アンジェスグループは、国内外の大学などで生まれた研究成果や、国内外の企業の開発品を積極的に導入し、開発パイプラインの継続的な拡大を図っていきます。またこれまでに資本参加したMyBiotics Pharma Ltd.(ビジネス対象:マイクロバイオーム(※7)-常在菌の培養、製剤化)なども活用し、各種疾患の治療や予防、健康維持の製品開発及び診断事業など具体的なビジネスに向けた取り組みを行っていきます。

・希少遺伝性疾患への取り組み強化及び検査事業の活用

2021年に希少遺伝性疾患のスクリーニング検査事業を開始したアンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下「ACRL」といいます)では、スクリーニング検査の受託拡大に加え、検査の種類・項目を増やして事業の拡大をはかっていくのと並行して、アンジェスグループの研究開発や事業への活用を推進していきます。

アンジェスグループは、過去に希少遺伝性疾患であるムコ多糖症VI型の治療薬「ナグラザイム」について、バイオマリンファーマシューティカルインク(米国)との提携に基づき、国内で承認を取得して販売した実績があり、小児科KOL(※8)とのネットワーク構築など希少遺伝性疾患治療薬を開発、販売するためのノウハウを有しています。これらの実績とノウハウを活用して、希少遺伝的疾患ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下、「HGPS」といいます)及びプロセッシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(以下、「PL」といいます)の治療薬である「ゾキンヴィ」について、2022年5月に米国のバイオ医薬品企業 Eiger BioPharmaceuticals Inc.(以下「Eiger社」といいます)と日本での独占販売契約を締結し、2024年1月に製造販売承認を取得しました。「ゾキンヴィ」の承認取得に合わせ、ACRLにおいて同疾患の検査を受託できる体制を整えました。さらに、「ゾキンヴィ」に続く希少遺伝性疾患治療薬やゲノム編集における遺伝子検査にもACRLの検査事業を活用していきます。これらの取り組みにより、アンジェスグループの医薬品の研究開発・事業と検査事業を有機的に結び付けてシナジー効果を追求していきます。

※3 染色体とは別個に存在し、独立して複製する小さなDNA分子 遺伝子工学研究においてプラスミドDNAは必須のツール

※4 細胞核の中に存在している物質でDNAとRNA2つがあり、DNAは「親から子へ、細胞から細胞へ」性質を伝える遺伝子の本体として働いており、RNAはDNAの情報に基づいてタンパク質を合成する働きを担っています

※5 分子生物学研究において遺伝物質を細胞に送達するために使用される遺伝子の運び屋(ベクター)のうち、ウイルスをベースとしたもの

※6 ゲノム編集に使用されるDNAを切断する酵素

※7 ヒトの体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体のこと

※8 Key Opinion Leader 知識が豊富で権威性があり影響力を兼ね備えた医師などの専門家のこと

 

<アンジェスグループの経営戦略>

医薬品開発には一般に多額の資金と長い期間が必要であり、加えて開発の成功確率の点で大きなリスクを伴います。最先端の技術を使い革新的な医薬品開発に挑戦しているアンジェスグループの場合には、特にこれが当てはまります。さらに販売面においても、販売・マーケティング機能を自社で構築するには多額の資金を必要とします。このため、経営資源の限られたベンチャー企業であるアンジェスグループは、アンジェスグループが開発中の医薬品の後期臨床開発や販売・マーケティングについては他の製薬企業と積極的に提携することで、提携先が持つ医薬品開発力・販売力を活用し、さらに提携先から契約一時金・マイルストーン及びロイヤリティを受け取ることで、開発・財務面でのリスクを低減することを目指しています。

なお、アンジェスグループは、未だ先行投資の段階にあるため現時点では親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画です。

 

 <開発段階と収益構成>


 

<一般的な新薬開発のプロセスと期間>

 

プロセス

期間

内容

基礎研究

2~3年

医薬品ターゲットの同定、候補物質の創製及び絞込み

前臨床試験

3~5年

実験動物を用いた有効性及び安全性の確認試験

臨床試験

3~7年

第Ⅰ相:少数の健康人を対象に、安全性及び薬物動態を確認する試験

第Ⅱ相:少数の患者を対象に、有効性及び安全性を確認する試験

第Ⅲ相:多数の患者を対象に、有効性及び安全性を最終的に確認する試験

申請・承認

1~2年

国(厚生労働省)による審査

 

 

(5) 会社の対処すべき課題

アンジェスグループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。さらに2020年度より、先進のゲノム編集技術を有するEmendo社を買収し、事業基盤の拡大を推進してまいりました。

一方で、医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、アンジェスグループは継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、全ての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。

このような環境のもと、アンジェスグループは、当該状況の解消と継続的な発展を目指し、下記を重要な課題として取組んでおります。

① 自社既存プロジェクトの推進

アンジェスグループは、現在開発している医薬品等のプロジェクトを確実に進捗させることが重要な課題と認識しております。

アンジェスグループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品コラテジェンの条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。その後、製造販売後承認条件評価のための目標症例数の患者登録が完了し、2023年5月に厚生労働省に条件解除に向けた製造販売承認の申請を行いました。また、米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験は2022年度末までに当初目標症例の投与を完了し、2023年3月に脱落例をふまえた追加登録を完了し、投与後の経過観察を実施しております。

椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAは、米国において後期第Ⅰ相臨床試験を完了し、2023年10月に日本国内における第Ⅱ相臨床試験における最初の患者投与を実施し、安全性が確認され、予定どおり症例登録を実施しております。

Vasomune社と共同開発しているTie2受容体アゴニストはこれまで重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎を対象としておりましたが、重症化リスクが低いオミクロン株への置き換わりが進んだことから、対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸切迫症候群(ARDS)に広げて米国FDAに申請し承認を受け前期第Ⅱ相臨床試験を進めております。

これら開発プロジェクトについて今後も優先的に取組んでまいります。

② 開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大

社グループの主力事業である医薬品開発では、開発品の製品化は非常に難易度が高いため、常に開発パイプラインを充実させることが重要な課題と認識しております。

アンジェスグループでは上記プロジェクトに加え、ゲノム編集における先進技術を持つ米国の子会社Emendo社において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集治療のプロジェクト化に向けて準備を進めております。同社は、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼを探索・最適化するプラットフォーム技術(OMNI Platform)を確立し、血液、眼科、肝代謝などの疾患領域についてパイプラインを構築しており、最も進んだELANE関連重症先天性好中球減少症を対象としたプロジェクトは米国での臨床試験実施に向けた準備を進めております。同社はゲノム編集技術の開発をとおして、希少遺伝性疾患に加え様々な疾患へのゲノム編集技術による治療を検討しております。

また、イスラエルにある同社研究所では、研究開発体制を従来の労働集約型から人工知能の活用を中心とする知識集約的な研究開発体制に移行し、規模もそれに見合ったものにするため、事業の再編成を進めてまいります。そのような研究開発体制の再編成に加えて、今般のイスラエルとパレスチナにおける紛争の影響の地政学的リスクを考慮した結果、イスラエルにある同社研究所の人員削減を進めるとともに、米国における臨床試験の準備を加速し、ゲノム編集技術の導出等を進める目的で、米国での体制強化を進めてまいります。

また、広範な免疫応答を刺激し、ウイルスの増殖防止、拡散の阻止が期待される改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤に関する共同研究をスタンフォード大学と推進しており、これまでの研究において薬剤のデリバリーシステムの改良に関する研究の進捗が見られております。

これらの開発並びに提携先との共同開発などにより、事業基盤の拡大を目指してまいります。

開発パイプラインの拡充実績として、2022年5月に米国のバイオ医薬品企業 Eiger社と早老症治療薬ゾキンヴィの日本における独占販売契約を締結し、厚生労働省から希少疾病治療薬(オーファンドラッグ)の指定を受け2023年5月に、同省に国内製造販売承認申請を行いました。ゾキンヴィは、大変希少な致死性の遺伝的早老症であるHGPS症候群及びプロセシング不全性のPLの治療薬として、すでに米国及び欧州で承認を受け、販売されており、2024年1月に厚生労働省から製造販売承認を取得いたしました。

また、事業基盤の拡大として、首都圏を中心に「希少遺伝性疾患の拡大新生児スクリーニング検査」を受託しているACRLでは自治体や民間の検査センター等との連携により受託拡大を進めてまいります。さらに、これまでの拡大新生児スクリーニング検査に加え、希少遺伝性疾患の遺伝学的検査(確定検査)や治療の効果をモニタリングするバイオマーカーの検査など、希少遺伝性疾患の診断から治療に至るまでの包括的な検査を実施できる体制の構築を進め、検査業務の売上拡大を目指してまいります。

今後も、ライセンス導入や共同開発、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。

③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保

アンジェスグループでは、製薬会社との提携により、開発リスクを低減するとともに、契約一時金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進め、上市後にロイヤリティを受領するという提携モデルを事業運営の基本方針としております。

コラテジェンに関しましては、日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、イスラエルにおきましては、独占的販売権の許諾について2019年に基本合意書を締結したKamada社が、2022年にイスラエル保健省に承認申請を行い受理され審査中です。さらにトルコにおいては、2020年にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うEr-Kim社と独占的販売権許諾に関する基本合意書を締結しました。

また、NF-κBデコイオリゴDNAの日本国内における慢性椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅱ相臨床試験では、塩野義製薬株式会社の協力を受けるとともに、続く第Ⅲ相臨床試験の実施について協議いたします。

今後も、更なる製薬会社等との提携を検討するとともに、開発プロジェクトに協力いただける企業を開拓し、事業基盤の強化に努めてまいります。

④ 資金調達の実施

アンジェスグループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2022年10月12日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)について調達開始から2023年3月末日までに46億50百万円(新株予約権発行による入金を含む)を調達いたしました。また、2023年6月26日開催の取締役会において、BofA証券株式会社を割当先とする第43回新株予約権(第三者割当て)発行の決議を行い、2023年12月末日までに9億94百万円(新株予約権発行による入金を含む)を調達いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業活動維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

しかしながら、現時点において、第43回新株予約権の今後の行使される個数、行使価額、行使時期は未確定であり、また上記に記載したプロジェクトを継続的に進めるための更なる資金調達の方法、調達金額、調達時期については確定しておらず、アンジェスは継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。

 


事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。将来に関する事項については有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。なお、アンジェスグループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、アンジェス株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1) 遺伝子治療について

遺伝子治療とは、遺伝子を用いて病気を治療することです。世界初の遺伝子治療は1990年に米国で、アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症という先天的に免疫が正常に働かない遺伝子疾患を対象に実施されました。その後、遺伝子疾患に加え、有効な治療法がない癌や後天性免疫不全症候群などに対しても、遺伝子治療が実施されてきました。国内でも1995年に北海道大学においてADA欠損症を対象とした初めての遺伝子治療が行われ以来、過去20年以上に亘り数多くの臨床試験が行われてきました。

遺伝子治療が有効と考えられる対象疾患としてはまず、遺伝子の変異が原因の遺伝子疾患があります。遺伝子疾患では、遺伝子治療により正常な遺伝子を補充することで治療効果が期待しやすいと考えられます。

最近では「ゲノム編集」技術の医療への応用が急速に進歩しています。「ゲノム編集」とは、ヒトゲノムの特定の部位で外因性の遺伝子を追加・挿入、あるいは遺伝子変異を修正・削除できる最新の遺伝子工学技術であり、従来の遺伝子組み換え技術と比べて著しく精度と効率が高いため、今後医療や科学にとって不可欠な技術になるとみられております。

「ゲノム編集」の前段階として、1990年代に本格的に始まった遺伝子治療(Gene Therapy)の研究は患者の骨髄から幹細胞を取り出し、正常な遺伝子をその幹細胞の核に組み込み、再度その細胞を患者の体内へ戻すことにより、正常な遺伝子が体内で機能するようにするものでした。 2010年代になり遺伝子を自在に書き換える「ゲノム編集」(Genome Editing)技術が開発され、その技術は今日ますます発展を遂げております。特に遺伝子異常による難病を持つ患者の治療方法として開発が進んでおり、医療・ヘルスケア業界だけでなく、農業・食品分野に革命的な影響を及ぼしており事業性の面からも注目されております。

しかしながら、最新の「ゲノム編集」技術を利用した遺伝子(細胞)治療は新規性が高く有効性が期待されるものの、現段階では未知のリスクを否定できず、幅広い実用化には至らないリスクがあります。

 

(2) 今後の事業展開について

慢性動脈閉塞症を適応症としたHGF遺伝子治療用製品に関しては、田辺三菱製薬に対し末梢性血管疾患を対象とした米国と日本における独占的販売権を付与しており、開発の進捗に伴ったマイルストーンを、さらに上市後には売上高の一定料率を対価として受け取る予定です。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は2019年度に厚生労働省から条件及び期限付きの製造販売承認を受けており、2023年5月に条件解除のための製造販売承認を申請しましたが、当該製造販売承認を取得できない可能性があります。

また、イスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結し、2022年に同国において製造販売承認を申請しております。更にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。今後これらの導出先がそれぞれの国での使用の承認を受けた場合、海外での売り上げを見込むことができます。しかしながら導出先のイスラエルやトルコの薬事承認制度は異なるため、それらの国の当局による判断次第で販売承認を取得できないこともあり、事業計画が実現しない可能性があります。

NF-κBデコイオリゴDNAについては、現在国内で進めている椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅱ相臨床試験に関して塩野義製薬株式会社と契約を締結し、費用の一部を負担いただくとともに、試験結果に基づき第Ⅲ相臨床試験の実施について協議する予定です。

Vasomune社と共同開発を進めている急性呼吸窮迫症候群の治療薬についても、大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画で、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーンを、さらに上市後には売上高の一定料率を対価として受け取る予定です。しかしながら、導出条件やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群及びプロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチーの治療薬として米国Eiger BioPharmaceuticals Inc.より導入したZokinvyは、国内承認を取得し、自社販売により安定的な売り上げを計上していく計画です。しかしながら、対象患者数が想定より少ないなどの理由により、売上が計画を下回る可能性があります。

また、ACRLの検査事業は、事業地域を広げ、検査の種類・項目を増やすことにより、事業の拡大をはかる計画ですが、他の検査会社の進出による競合やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。

以上のように、アンジェスグループが開発、販売する医薬品並びに受託している検査業務が計画通り進捗しない場合には、アンジェスグループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(3) 研究開発について

一般に新薬の開発には、長期に亘る期間と多額の費用が必要です。それにもかかわらず、医薬品の開発は計画通りに進行するとは限らず、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じたりした場合には、研究開発を中止するリスクがあります。このような場合には、アンジェスグループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(4) 製造について

アンジェスグループは、製品及び治験薬等を自社で製造しておらず、他社からの供給に依存しております。従って、製品や治験薬等について、何らかの要因により、品質上の問題が生じたり、もしくは予定通りに必要な数量を確保できない場合には、開発に遅れが生じたり、製品供給の不足によりアンジェスグループの業績が影響を受けたりする可能性があります。

 

(5) 販売について

アンジェスグループが開発中の医薬品については、国内、米国及び欧州等の各地域において、将来競合する可能性のある製品及び開発品が存在するものもあります。アンジェスグループは、競争力の高い製品を早期に開発、上市することで、一定の市場シェアの獲得を目指しております。しかしながら、競合他社がアンジェスの想定より早く承認を取得したり、想定以上のシェアを獲得した場合には、アンジェスグループが開発した製品が上市された場合においても期待通りの収益をあげられない可能性があります。

また、日本や欧州においては新薬の価格は原則として政府あるいはそれに準じた公的機関により決定され、また、米国においては保険会社・マネージドケア(健康保険運営団体)及び政府のメディケア・プログラムとの交渉により決定されます。そのため、アンジェスグループが開発した製品についてアンジェスグループが想定した薬価とならない場合があり期待通りの収益をあげられない可能性があります。

加えて、アンジェスが販売する医薬品について、予期しない副作用が発生した場合には売上高の減少要因となり、アンジェスグループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(6) 薬事法制による規制について

薬事法制は、医薬品・医療機器等の品質、有効性、安全性確保の観点から、企業が行う開発・製造・販売等に関して必要な規制を行う法律であり、アンジェスグループが実施している医薬品の研究開発は日本をはじめ各国の薬事法制の規制を受けております。

各国において、様々な要因による承認要件の変更、さらに薬事法制度の変更により、承認を計画通りに取得できない可能性があります。このような場合には、アンジェスグループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(7) 知的財産権について

①  特許戦略

アンジェスグループが現在展開しているHGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAの研究開発活動は、主にアンジェスグループが保有する又はアンジェスグループが実施権を有する特許権あるいは特許出願中の権利に基づき実施しております。以下において、それらのうち特に重要なものを記載しております。

しかしながら、アンジェスグループが現在出願中の特許が全て登録されるとは限りません。また、アンジェスグループの研究開発を超える優れた研究開発によりアンジェスグループの特許が淘汰される可能性は、常に存在しております。仮にアンジェスグループの研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合、アンジェスグループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

さらに、アンジェスグループの今後の事業展開の中でライセンスを受けることが必要な特許が生じ、そのライセンスが受けられなかった場合には、アンジェスグループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

対象

表題

保有者

登録(出願)状況

HGF遺伝子治療用製品

糖尿病性虚血性疾患遺伝子治療

アンジェス

日本において延長登録済

NF-κBデコイオリゴDNA

NF-κBに起因する疾患の治療及び予防剤

アンジェス

米国、欧州(EP)にて成立済。
日本においては、物質特許及び虚血性疾患・臓器移植・癌などの医薬用途特許について成立済

デコイを含む薬学的組成物及びその使用方法(アトピー性皮膚炎が対象)

アンジェス

日本、米国、欧州(EP)にて成立済。なお日本においては乾癬に対する用途特許も分割出願として成立済

椎間板の疾患を治療、阻害及び回復するための方法及び組成物

アンジェス

ラッシュ大学(米国)

日本、米国、欧州(EP)、カナダにて成立済

キメラデコイ

 

アンジェス

株式会社ジーンデザイン

 

物質特許。日本、米国、欧州(EP)にて成立済

 

 

②  知的財産権に関する訴訟、クレーム

連結会計年度末現在において、アンジェスグループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。 

 ただし、他社がアンジェスグループと同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後とも知的財産について問題が発生しないという保証はありません。
 アンジェスグループとしても、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許調査を実施しており、アンジェスグループ特許が他社の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、アンジェスグループのような研究開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。

 

(8) 業績の推移について

アンジェスグループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。

 

 

第21期

第22期

第23期

第24期

第25期

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

(1) 連結経営指標等

 

 

 

 

 

 

事業収益

(千円)

326,759

39,998

64,148

67,061

152,985

経常損失

(千円)

△3,293,214

△6,618,353

△13,588,973

△14,610,015

△5,651,225

親会社株主に帰属する当期純損失

(千円)

△3,750,823

△4,209,511

△13,675,587

△14,714,772

△7,437,607

純資産額

(千円)

12,055,351

32,679,675

38,634,741

30,425,406

26,103,166

総資産額

(千円)

12,524,600

38,354,611

45,455,746

38,820,711

28,892,536

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

△2,179,918

△2,961,329

△11,380,546

△11,214,246

△8,745,759

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

△1,249,757

△6,963,969

△154,873

△97,141

△356,653

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

7,676,981

11,403,576

17,378,670

3,572,543

2,036,465

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

10,040,595

11,537,028

17,835,704

10,969,684

4,092,160

(2) 個別経営指標等

 

 

 

 

 

 

事業収益

(千円)

326,759

39,998

64,148

67,061

138,919

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

△3,310,372

△5,318,582

△7,932,836

△8,001,351

1,989,979

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

△3,773,328

△5,318,038

△8,086,792

△8,115,452

1,067,726

資本金

(千円)

13,291,912

24,612,076

33,359,568

35,146,368

35,053,890

純資産額

(千円)

11,919,841

29,356,326

38,688,587

34,141,342

37,266,789

総資産額

(千円)

12,434,672

34,147,677

44,879,500

40,718,613

38,691,268

 

アンジェスグループは、事業のステージが先行投資の段階にあるため、現時点では、上記記載のように、第21期から第25期において親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、現在の研究開発を着実に進め、パイプラインの拡充を図り、将来医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益の拡大を目指してまいります。

ただし、現在の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、アンジェスグループが将来においても親会社株主に帰属する当期純利益を計上できない可能性もあります。

また、上記記載のように、第21期から第25期においては、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスであり、現状の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、将来においても営業活動によるキャッシュ・フローがプラスにならない可能性もあります。

 

(9) 経営上の重要な契約等について

アンジェスグループのビジネス展開上重要と思われる契約の内容を本報告書「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。なお、アンジェスグループは、これらの契約に関して、いずれもアンジェスグループの根幹に関わる重要な契約であると認識しております。したがって、当該契約の解除及び解約が行われた場合、あるいはアンジェスグループにとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない等の場合は、アンジェスグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)組織体制について

①  人材の確保

アンジェスグループの競争力は研究開発力にあり、専門性の高い研究及び開発担当者の確保が不可欠です。また、事業の成長拡大を支えるためには事業開発、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。アンジェスグループは、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画どおりに進まない場合には、アンジェスグループの業務に支障をきたす可能性があります。

 一方、アンジェスグループは、業務遂行体制の充実に努めますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、アンジェスグループの業務に支障をきたす可能性があります。

②  特定人物への依存

 アンジェスグループの事業の推進者は、代表取締役である山田英です。代表取締役山田英は、アンジェスグループの最高責任者として、アンジェスグループの経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。また、アンジェスメディカルアドバイザーである森下竜一には、研究開発の面でアドバイスを受けております。

 アンジェスグループではこれらの特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っていますが、当面の間はこれらの特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、これらの特定人物が何らかの理由によりアンジェスグループの業務を継続することが困難になった場合には、アンジェスグループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)訴訟について

アンジェスグループは、有価証券報告書提出日現在において医薬品の副作用、製造物責任、知的財産権及び労務問題等に関して、訴訟を提起されておりません。ただし、将来、アンジェスグループが上記に関して提訴された場合には、その内容次第でアンジェスグループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(12)配当政策について

アンジェスグループは、創薬系バイオベンチャーであり、2019年9月よりHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」を販売しているものの、「コラテジェン®」は条件及び期限付の承認であります。また他の主要なプロジェクトにおいても医薬品の開発段階であり、事業のステージは、先行投資の段階にあります。このため、現時点においては、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、剰余金の配当は実施しておりません。

ただし、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって利益が計上され分配可能額が生じる時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、剰余金の配当を検討したいと考えております。

しかしながら、開発中の新薬の上市や販売が計画通りに進捗しない場合は配当政策を見直す必要が出る可能性があります。

 

(13)外国為替変動について

アンジェスグループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動、海外企業とのライセンス、海外からの製品及び治験薬の仕入等において外貨建取引が存在します。また、アンジェスグループが現在開発を行っている製品は、日本のみならず、米国を含む海外市場での販売が見込まれます。そのため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、アンジェスグループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。

 

(14)地政学的リスクについて

アンジェス連結子会社Emendo社は独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってまいりましたが、これまで蓄積された大量のデータをベースに、人工知能、なかんずく機械学習を活用し、知識集約的な研究開発体制に移行することを検討しております。

Emendo社は、イスラエル中部のテルアビブ近郊に研究施設を有しており、今般のガザ地区における紛争の影響で、Emendo社のイスラエルにある研究施設(以下、「Emendo R&D」といいます)における研究開発体制の見直しを行いました。今後のゲノム編集に関するEmendo社の研究開発活動は知識集約的な研究開発体制に移行する計画ですが、事業計画策定にあたり地政学的リスクを考慮する必要が増しております。

以上のように、Emendo社では人工知能の活用を中心とする研究開発機能を集約し、Emendo R&Dの規模もそれに見合ったものに再編成するとともに、その他の機能を米国に段階的に移管し、米国の拠点化を促進する計画ですが、ガザ地区の紛争が拡大する場合には、今後Emendo社の研究開発活動の遅延やアンジェスの経営戦略に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)継続企業の前提に関する重要事象等について

医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーであるアンジェスグループは、継続的に営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

アンジェスグループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取組んでおります。

① 自社既存プロジェクトの推進

アンジェスグループは、現在開発している医薬品等のプロジェクトを確実に進捗させることが重要な課題と認識しております。

アンジェスグループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品コラテジェンの条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。その後、製造販売後承認条件評価のための目標症例数の患者登録が完了し、2023年5月に厚生労働省に条件解除に向けた製造販売承認の申請を行いました。また、米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験は2022年度末までに当初目標症例の投与を完了し、2023年3月に脱落例をふまえた追加登録を完了し、投与後の経過観察を実施しております。

椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAは、米国において後期第Ⅰ相臨床試験を完了し、2023年10月に日本国内における第Ⅱ相臨床試験における最初の患者投与を実施し、安全性が確認され、予定どおり症例登録を実施しております。

Vasomune社と共同開発しているTie2受容体アゴニストはこれまで重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎を対象としておりましたが、重症化リスクが低いオミクロン株への置き換わりが進んだことから、対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸切迫症候群(ARDS)に広げて米国FDAに申請し承認を受け前期第Ⅱ相臨床試験を進めております。

これら開発中の医薬品について、今後も優先順位を意識しながら開発を進めてまいります。

 

② 開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大

アンジェスグループの主力事業である医薬品開発では、開発品の製品化は非常に難易度が高いため、常に開発パイプラインを充実させることが重要な課題と認識しております。

アンジェスグループでは上記プロジェクトに加え、ゲノム編集における先進技術を持つ米国の子会社Emendo社において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集治療のプロジェクト化に向けて準備を進めております。同社は、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼを探索・最適化するプラットフォーム技術(OMNI Platform)を確立し、血液、眼科、肝代謝などの疾患領域についてパイプラインを構築しており、最も進んだELANE関連重症先天性好中球減少症を対象としたプロジェクトは米国での臨床試験実施に向けた準備を進めております。同社はゲノム編集技術の開発をとおして、遺伝性希少疾患に加え様々な疾患へのゲノム編集技術による治療を検討しております。

また、イスラエルにある同社研究所では、研究開発体制を従来の労働集約型から人工知能の活用を中心とする知識集約的な研究開発体制に移行し、規模もそれに見合ったものにするため、事業の再編成を進めてまいります。そのような研究開発体制の再編成に加えて、今般のイスラエルとパレスチナにおける紛争の影響の地政学的リスクを考慮した結果、イスラエルにある同社研究所の人員削減を進めるとともに、米国における臨床試験の準備を加速し、ゲノム編集技術の導出等を進める目的で、米国での体制強化を進めてまいります。

また、広範な免疫応答を刺激し、ウイルスの増殖防止、拡散の阻止が期待される改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤に関する共同研究をスタンフォード大学と推進しており、これまでの研究において薬剤のデリバリーシステムの改良に関する研究の進捗が見られております。

これらの開発並びに提携先との共同開発などにより、事業基盤の拡大を目指してまいります。

開発パイプラインの拡充実績として、2022年5月に米国のバイオ医薬品企業 Eiger社と早老症治療薬ゾキンヴィの日本における独占販売契約を締結し、厚生労働省から希少疾病治療薬(オーファンドラッグ)の指定を受け2023年5月に、同省に国内製造販売承認申請を行いました。ゾキンヴィは、大変希少な致死性の遺伝的早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群及びプロセシング不全性のプロジェロイド・ラミノパチーの治療薬として、すでに米国及び欧州で承認を受け、販売されており、2024年1月に厚生労働省から製造販売承認を取得いたしました。

また、事業基盤の拡大として、首都圏を中心に「希少遺伝性疾患の拡大新生児スクリーニング検査」を受託しているACRLでは自治体や民間の検査センター等との連携により受託拡大を進めてまいります。さらに、これまでの拡大新生児スクリーニング検査に加え、希少遺伝性疾患の遺伝学的検査(確定検査)や治療の効果をモニタリングするバイオマーカーの検査など、希少遺伝性疾患の診断から治療に至るまでの包括的な検査を実施できる体制の構築を進め、検査業務の売上拡大を目指してまいります。

今後も、ライセンス導入や共同開発、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。

③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保

アンジェスグループでは、製薬会社との提携により、開発リスクを低減するとともに、契約一時金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進め、上市後にロイヤリティを受領するという提携モデルを事業運営の基本方針としております。

コラテジェンに関しましては、日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、イスラエルにおきましては、独占的販売権の許諾について2019年に基本合意書を締結したKamada社が、2022年にイスラエル保健省に承認申請を行い受理され審査中です。さらにトルコにおいては、2020年にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うEr-Kim社と独占的販売権許諾に関する基本合意書を締結しました。

また、NF-κBデコイオリゴDNAの日本国内における慢性椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅱ相臨床試験では、塩野義製薬株式会社の協力を受けるとともに、続く第Ⅲ相臨床試験の実施について協議いたします。

今後も、更なる製薬会社等との提携を検討するとともに、開発プロジェクトに協力いただける企業を開拓し、事業基盤の強化に努めてまいります。

④ 資金調達の実施

アンジェスグループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2022年10月12日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)について調達開始から2023年3月末日までに46億50百万円(新株予約権発行による入金を含む)を調達いたしました。また、2023年6月26日開催の取締役会において、BofA証券株式会社を割当先とする第43回新株予約権(第三者割当て)発行の決議を行い、2023年12月末日までに9億94百万円(新株予約権発行による入金を含む)を調達いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業活動維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。

しかしながら、現時点において、第43回新株予約権の今後の行使される個数、行使価額、行使時期は未確定であり、また上記に記載したプロジェクトを継続的に進めるための更なる資金調達の方法、調達金額、調達時期については確定しておらず、アンジェスは継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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