レナサイエンス(4889)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3 【事業の内容】レナサイエンスは、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器)の開発を進めており、医療イノベーションの創出を通じて、生涯にわたり心身の健康を享受できる新たな医療の実現を目指しています。日本を含む先進国では超高齢化が進み、平均寿命と健康寿命(心身ともに健康で自立して生活できる期間であり、平均寿命から寝たきりや認知症などの介護状態の期間を差し引いた期間)の差が約10年あることが大きな課題となっています。加齢と共に生じる種々の疾患、例えば、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病などを治療できれば、健康寿命の延伸に繋げることができます。これら4疾患は全世界の死亡者数の70-80%程度を占めるとされており、世界保健機関(WHO)でも老化や生活習慣に伴う重要な疾患として位置付けています。レナサイエンスは、これら4疾患の治療薬を含め、健康寿命の延伸に資する医薬品、女性・小児の疾患治療薬など医学的あるいは社会的にも重要な課題を解決すべく取り組んでいます。がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病など具体的な加齢疾患に加えて、国際的な超高齢化社会を迎えて著しい成長が期待される「長寿分野」の研究及び事業にも注力します(図表1)。これまでの抗加齢・長寿医療は食事療法、運動療法、サプリメント・健康食品などが大半でした。レナサイエンスは、セノリティック医薬品(老化細胞を除去し、がん化を促進する事なく老化関連疾患を抑制する内服薬)など新たな医療価値の創出に向けても挑戦します。< 図表1 レナサイエンスが目指す新たな医療 > 多様なモダリティ(開発領域)と適応疾患レナサイエンスの研究開発は、当初はコンピューター工学と低分子スクリーニングを基盤として創薬したPAI-1阻害薬などの医薬品開発を主体としていました。その後、医療現場のニーズ及び課題解決の必要性に応えるため、現在では開発領域(モダリティ)を拡大しています。・ 医薬品(様々な適応疾患)・ 医療機器(現場のニーズに直結)・ 人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器(診断・治療支援) レナサイエンスのビジネス・モデルの特長レナサイエンスは、国内外の大学などの研究機関で着想された多様なコンセプトやシーズを、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)まで一気通貫でつなぎ、製薬企業等の実用化企業へ導出することで医療イノベーションを創出しています(図表2)。 < 図表2 レナサイエンスのビジネス・モデル > 効率的な開発とリスク分散(オープンイノベーションの推進)医薬品開発は成功確率が低く、期間と投資が大きい高リスクな事業です。レナサイエンスは以下の方針で研究開発の迅速化及び効率化を図っています。・ 外部公的研究機関や医療機関との連携:国内外の大学など公的研究機関や医療機関との連携を基盤とし、少ない自己資源でも多くのパイプラインの開発を実施・ 多様な事業ポートフォリオ:多様なモダリティや適応を組み合わせることで事業リスクを分散・ オープンイノベーションの活用:東北大学や広島大学に研究開発基盤を有し、オープンリソースに基づく非臨床試験から臨床試験を一気通貫で実施 医師主導治験の活用基礎研究から臨床試験まで実施できる医師(physician-scientist)との共同研究を重視しており、治験は基本的に「医師主導」で実施しています。これまでに31件の医師主導臨床試験(うち治験28件)の実績があります。・ 利点:医師自らが立案・実施するため、医療現場の課題や実情に即した試験計画が可能・ レナサイエンスの特長:既存薬の適応拡大ではなく、全て未承認薬(first-in-human)、新規適応。GLPやGMP、GCPなどの基準を厳格に遵守しているため、薬事承認取得可能(2024年9月、悪性黒色腫治療薬の厚生労働大臣指定「希少疾病用医薬品」を受けています) (1) 事業モデル自社開発品(自社シーズ)を有する一方で、大学等から外部シーズを獲得し医師主導治験を活用しながら治療コンセプトの実証PoC(Proof of Concept)まで成長させ、製薬企業へライセンスアウトすることが、レナサイエンスのビジネス・モデルです。現パイプラインの中で、自社シーズは、PAI-1阻害薬及びピリドキサミン等の医薬品や極細内視鏡(医療機器)であり、外部シーズはプログラム医療機器(AI)が該当します(「事業の内容 (2) レナサイエンスのコア技術」をご参照ください)。多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器等)の研究開発を業務としていますが、大学など公的研究機関との共同研究で基礎研究~非臨床試験を行い、さらに臨床開発(医師主導治験)までを一気通貫でつなげる開発を行っています。自社シーズに対する臨床応用の可能性を広げるために基礎研究~非臨床試験を広く展開する必要があります。レナサイエンスでは、自社化合物をオープンリソースとして研究者に提供することで新たな用途の発見(適応拡大)に積極的に取組んでいます(オープンイノベーション)。非臨床試験の成績から、科学的や医学的な重要性や新規性、事業性の視点からプロジェクトを選定し、臨床試験(医師主導治験)で検討します(図表3)。共同研究を実施した大学等研究機関と共同で基礎研究~非臨床試験に対する特許(用途特許)を出願し、共同研究先から独占実施権の許諾を受けた後に、臨床開発~事業化に取り組みます。 < 図表3 レナサイエンスの事業戦略 >TREx:東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボHiREx:広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ 国内・海外の製薬企業等(出口企業)に対して、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、契約一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しています(図表4)。比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提としたオプション権付き共同研究契約(オプション契約)を出口候補企業と締結することもあります(事業系統図の(共同研究))。レナサイエンスの事業セグメントは、医薬品、医療機器などの開発・販売等のみの単一セグメントであり、事業系統図及び事業収入の形態は以下のとおりです。 < 図表4 事業系統図及び事業収益形態 >(事業系統図) (事業収入の形態) 収入形態内容a.アップフロント収入(契約一時金収入)オプション契約(第一交渉権付与)やライセンス許諾の契約時に一時金として得られる収入b.マイルストーン収入開発段階ごとに設定した目標(開発マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入。また、製品上市後に、売上高に対する目標値(販売マイルストーン)を達成するごとに得られる一時金収入c.ロイヤリティ収入製品が上市された後に、ライセンス許諾の契約を締結した導出先事業会社より当該製品の売上高に対して予め契約によって設定した一定割合を得られる収入d.共同研究・受託研究収入レナサイエンスの知的財産を活用した共同研究・受託研究実施の対価として得られる収入 < 図表5 レナサイエンスの事業戦略 >1研究開発・公的研究機関や医療機関との連携・多様なモダリティ・豊富なパイプラインと適応疾患・医師主導治験の実績と経験■24件の臨床試験(第Ⅰ相、第Ⅱ相)を実施済み・国内バイオベンチャーとして最大級の臨床試験実績■7件の臨床試験(2件の第Ⅲ相を含む)を2026年度実施中■公的研究機関や医療機関と連携し、迅速かつ効率的に基礎研究から非臨床試験、さらに臨床試験までを実施・自社シーズをオープンリソースとして提供し、適応拡大によりパイプラインを拡大・適応疾患に最適な医療機関で臨床開発を実施■オリジナルな医療シーズ・がん幹細胞に着目した慢性骨髄性白血病治療薬・抗加齢、長寿内服薬(セノリティック医薬品)・免疫チェックポイント阻害内服薬(悪性黒色腫、血管肉腫、非小細胞肺がん、膵臓がん)・抗線維化作用、抗炎症作用に基づく肺疾患治療薬(COVID-19肺障害)・脱毛症治療薬(男性型、加齢性)・腹膜透析用の極細内視鏡(径1mm程度)・人工知能を活用した診断や治療を支援するプログラム医療機器■医薬品ではPAI-1阻害薬のがん、抗加齢・長寿領域での開発に注力2企業提携・PoC取得後のライセンスアウトによる開発コストの低減・企業価値の最大化・ライセンスアウトの確度を高めるためのオプション契約等出口戦略を重視■PAI-1阻害薬(RS5441)の脱毛症治療薬としての権利を米国Eirion Therapeutics Inc.(エイリオン社)に導出■ディスポーザブル極細内視鏡(RS9001)を株式会社ハイレックスメディカルに導出■呼吸機能検査診断AIをチェスト株式会社に導出■維持血液透析医療支援AIを、ニプロ株式会社、東レ・メディカル株式会社と共同開発3公的資金活用による自社研究開発費用の削減■慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、ディスポーザブル極細内視鏡、維持血液透析医療支援AI、糖尿病医療支援AIで公的資金活用4多様なモダリティのポートフォリオ形成による事業リスクの低減、早期の黒字化と将来の収益確保■医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が大きく事業リスクは高いが、上市後には極めて高い収益■医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期収益■これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインで進めることでリスクを分散し、早期の黒字化と将来の収益を期待5オープンイノベーションの推進■2022年1月東北大学にオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx)を開設■2023年4月広島大学にオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を開設■2025年1月ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本の研究室を東北大学内のオープンイノベーション拠点である東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(TREx)内に設立 (2) レナサイエンスのコア技術① レナサイエンスのパイプライン概況(2026年5月末現在) < 図表6 パイプライン > ② パイプラインの概要 レナサイエンスの研究開発活動の方針事業ポートフォリオレナサイエンスは、大きく医薬品と医療機器・プログラム医療機器の2つの事業ポートフォリオを手掛けていますが、これはリスクを分散し、早期の黒字化と将来の収益の拡大を目指すからです(図表7)。医薬品事業は研究開発費や研究開発期間の規模が大きく事業リスクが高い分野ですが、上市後には高い収益が期待できます。一方、医療機器やプログラム医療機器事業は医薬品と比べて市場規模は小さいものの、研究開発費や研究開発期間の規模や事業リスクは小さく、比較的早期にレナサイエンス収益に繋がります。 < 図表7 開発戦略 > がんと抗加齢・長寿医薬品領域では、PAI-1阻害薬(RS5614、RS5441)の開発が主体です。PAI-1阻害薬RS5614は、免疫系を活性化しがん細胞や老化細胞の除去を促進させるなどの作用の他に、抗血栓、抗炎症や抗線維化など多様な作用を有しています。がんに対しては、国内で複数のがん種に対する試験を実施中です(慢性骨髄性白血病第Ⅲ相試験、悪性黒色腫第Ⅲ相試験、血管肉腫第Ⅱ相試験、肺がん後期第Ⅱ相試験)。まずは、日本で希少がん(悪性黒色腫、血管肉腫、慢性骨髄性白血病)に対する薬事承認を取得することにより、本医薬品の上市と臨床応用を目指します。悪性黒色腫の第Ⅲ相試験は既に日本で開始しているため(2025年2月18日適時開示)、薬事承認に向けての国外でのブリッジング試験を複数の国の規制当局と協議中です(2025年12月15日適時開示)。血管肉腫に関しては、日本で実施中の第Ⅱ相試験が終了し(2025年12月12日適時開示)、既存治療に比べて極めて良い結果が得られたので(2026年2月10日適時開示)、薬事承認に向けて速やかな第Ⅲ相試験を実施する予定です。並行して、肺がん、膵臓がんなどがん種の適応を拡大し、将来の大きな市場を確保するための第Ⅱ相試験を実施しています(2025年11月26日適時開示、2025年12月16日適時開示)。さらにPAI-1阻害薬では、超高齢化社会の到来を迎えて、今後国際的に著しい成長が期待される「抗加齢・長寿分野」の研究並びに事業にも注力します。近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ[幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去)]が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金が投資されている分野です。レナサイエンスのPAI-1阻害薬(RS5614)は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。本剤は生物製剤や核酸系医薬品ではなく、低コストで大量合成可能な低分子化合物(分子量:424.81、錠剤)です。大量の工業的生産が可能で、安定した品質の医薬品を生産可能で、グローバルな供給が可能です。RS5614は経口投与が可能で、他の生物製剤とは異なり、自宅で投与できます。細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品とは異なり、地理的又は物流上の制約を受けることなく容易に輸送できます。細胞製剤やエクソソームとは異なり、ドナーも必要としません。最も重要な安全性に関しても、細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品に比べて副作用が少ないことはメリットであり、XPRIZE Healthspanのセミファイナル試験でも、高い安全性が確認されています。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。『ヒトが心身共に生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造する』というレナサイエンス理念の実現のみならず、超高齢化という社会的及び医学的に大きな課題を解決することができ、さらにはレナサイエンスの企業価値の向上にも大きく貢献できます。PAI-1阻害薬RS5614は、がんで薬事承認を受けた後に、抗加齢・長寿関連疾患の医薬品として使用されることが想定されるため、国際的な認知度や実績の蓄積が必要であり、XPRIZE Healthspanへの参加と入賞によりセノリティック医薬品としての成果と評価が高まれば、国際的な事業展開が期待されます。RS5441の実例(導出先のエイリオン社で男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬として開発中)もあり、今後PAI-1阻害薬RS5614の感覚器(皮膚科など)あるいは骨筋肉領域の医療用医薬品やOTC医薬品に関しても非臨床試験を進める予定です。 (a) RS5614(PAI-1阻害薬) 〔 PAI-1阻害薬 〕PAI-1は血栓の分解(線溶系という)に必要な分子ですが、近年ではがんや抗加齢・長寿に関連して発症する種々の疾患に関与することを強く示唆する一連の知見が明らかとなっており、がんや抗加齢・長寿に関わる創薬の標的と考えられます。しかし、これまでヒトのPAI-1分子の活性を阻害できる医薬品は、臨床応用されていません。レナサイエンスは、加齢に伴い生じる一連の疾患を治療できる可能性を持ったPAI-1阻害薬の開発に取り組んできました。ヒトのPAI-1分子の結晶構造を基に、コンピューター工学を利用した約200万バーチャル化合物ライブラリーの探索から96個のPAI-1阻害候補化合物を取得しました(図表8)。PAI-1活性阻害作用(PAI-1による組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)阻害抑制)及びPAI-1/tPA複合体の形成阻害を指標として、新規阻害化合物を10年以上かけてこれまで1,400個以上合成スクリーニングし、さらにそれらの活性や安全性などを評価する中で、安全性に優れた経口投与可能な臨床開発候補化合物RS5614を取得いたしました。レナサイエンスのPAI-1阻害薬はPAI-1分子内のビトロネクチン結合部に結合し、PAI-1を不安定化してその分解を促進する可能性が示されました(図表9にRS5484を例示、International Journal of Molecular Sciences 2021)。 < 図表8 新規PAI-1阻害薬の合成と構造最適化による臨床開発候補品の取得 >(出典:東北大学) < 図表9 PAI-1とPAI-1阻害薬RS5484複合体のX線構造解析 >(出典:東北大学) 〔 RS5614の薬剤概要 〕非臨床安全性GLP試験1)安全性薬理試験ではhERG試験(10 μM)、ラットの中枢神経系(300 mg/kg)、サルの心血管系及び呼吸器系試験(300 mg/kg)で陰性、2)一般毒性試験ではラットの26週間経口投与試験(無毒性量400 mg/kg/日)、サルの39週間経口投与試験(無毒性量30 mg/kg/日)で陰性、3)遺伝毒性試験では法定3試験で陰性、4)光毒性試験陰性、5)生殖・発生毒性試験も陰性です。以上の安全性試験の成績を含めて、薬物動態試験や物性データなどの製造販売承認を行うために必要な非臨床試験成績を有しています。 第Ⅰ相臨床試験(健常成人男子)薬機法に基づくGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)条件下での医師主導治験で、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)で製造された治験薬を用いて実施しました。第Ⅰ相単回投与試験では、RS5614の240 mgまでの安全性が確認され、第Ⅰ相反復投与試験においては、120 mgを7日間経口投与した際に発現した有害事象はいずれも軽度でした。 知的財産権RS5614に関して、物質特許(出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本・米国・欧州・カナダ・豪州・中国・韓国・インド 登録済、存続期間満了日:米国 2030年8月7日、日本を含むその他各国 2030年3月31日)に加えて、非臨床試験や臨床試験からがんや抗加齢・長寿に関わる複数の用途特許(①慢性骨髄性白血病治療用途、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本・米国・欧州 登録済、存続期間満了日:2034年4月15日、②免疫チェックポイント分子の発現抑制、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、米国・欧州 出願中、存続期間満了日:2040年9月30日)、③線溶系亢進薬、及びその用途、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、米国・欧州 出願中、存続期間満了日:2041年5月30日(見込)、④エフェロサイトーシス亢進剤、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本出願中、⑤PAI-1阻害薬の抗加齢・長寿作用、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本出願中)を出願することで、知的財産権の有効期間を延長しています。RS5441に関して、物質特許(出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本、米国 登録済、存続期間満了日:2029年3月31日)を出願しています。導出先のEirion Therapeutics Inc.(エイリオン社)でも用途特許を出願して、知的財産権の有効期間を延長しています。 導出男性型脱毛症治療を含む皮膚疾患領域におけるRS5441の用途については、2016年6月に米国Eirion Therapeutics Inc.に独占的実施権を許諾しました。RS5614のがん領域(慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、血管肉腫、膵臓がん)や抗加齢・長寿については国内外の製薬企業などに導出し、実用化する予定です。 〔 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬 〕血液がんである慢性骨髄性白血病(CML)は、骨髄内の「骨髄ニッチ」と呼ばれる部位に存在する血液細胞の元になる細胞(造血幹細胞)の遺伝子に変異が生じ、がん化した疾患です。CMLに対する標準治療は、イマチニブなどの分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。TKIの開発によりCML患者の生存率は大きく改善しました。TKIはCML細胞には作用しますが、CML細胞の元になる細胞(CML幹細胞)には作用しないことから、TKIを休薬するとCML細胞は再び増殖し、がんが再発します。CMLを治療するためには長期にわたる高額なTKI治療の継続が必要です。最近、深い分子遺伝学的奏効(deep molecular response、DMR:がんの原因遺伝子が検出されない状態)が一定期間継続しているCML患者では、TKIを中止しても再発が生じない状態(無治療寛解維持)となることが明らかになりました。しかし、3年間程度の治療期間で無治療寛解維持を達成できる患者の割合は5~10%にしか過ぎません。無治療寛解維持を達成するためには、少なくとも2年以上のDMRの維持が必要とされています。レナサイエンスPAI-1阻害薬RS5614はCML幹細胞に作用して骨髄ニッチから遊離させます(Blood 2017)(図表10)。遊離したCML幹細胞はTKIにより死滅するため、骨髄ニッチのCML幹細胞は消滅して、CMLを根治できる可能性が示唆されました。実際に、CMLモデルマウスにRS5614とTKIを併用することで、TKI単独投与に比べて骨髄に残るCML幹細胞数が著明に減少し、生存率を大きく向上させることが可能です(Blood 2017)。 < 図表10 PAI-1阻害薬によるがん幹細胞動員の分子機序 >(出典:東海大学) 後期第Ⅱ相試験CML患者を対象にTKIとRS5614を併用し、RS5614投与開始後48週の有効性と安全性を確認するための後期第Ⅱ相試験(非盲検)を、東北大学、秋田大学、東海大学の大学・医療機関で実施しました。その結果、33例中DMRを達成した症例は11例(33.3%)であり(TKI治療期間が3年以上5年以下の患者では50.0%)、過去の試験結果に基づくヒストリカルコントロールの8%と比較して4倍程度上昇できました。重篤な有害事象も認められず、TKIとRS5614併用の有効性及び安全性が確認されました(Cancer Medicine 2023)。 第Ⅲ相試験後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、東北大学、東海大学、秋田大学など12の大学・医療機関と共同で、CML患者を対象にTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検の第Ⅲ相試験を実施中です(2022年8月3日適時開示)。本試験は日本医療研究開発機構(AMED)「革新的がん医療実用化研究事業(代表機関:東北大学、レナサイエンスは分担機関)」の助成を受けています(2022年3月22日適時開示)。TKI治療期間が3年以上6年未満のCML患者60例を対象とし、TKIとRS5614の併用によるDMR達成率の有意な上昇と2年間の無治療寛解維持を検証します。2024年12月に実施されたAMED「革新的がん医療実用化研究事業」の最終年度評価の結果、第Ⅲ相試験の目標症例数の登録が予定通り2023年12月に完了し、順調に実施されているとの理由から、助成期間が延長されました(2024年12月3日開示)。2026年3月期さらに2027年3月期にも助成を受けることが決定しました(2025年5月7日、2026年2月12日適時開示)。 〔 悪性黒色腫(メラノーマ) 〕悪性黒色腫は表皮にある色素を作る細胞(メラノサイト)のがんで、悪性度が高いがんです。欧米に比較すると日本の患者数は約4,000人と希少ながんです。日本人患者は海外患者とは異なる遺伝子変異を有することから、標準治療である免疫チェックポイント阻害薬、特に抗PD-1抗体(ニボルマブ、商品名オプジーボ)による治療効果が限定的であることが報告されています(Ann Oncol. 2020)。抗CTLA4抗体(イピリムマブ、商品名:ヤーボイ)とニボルマブとの併用による奏効率は33.3%と、ニボルマブ単剤の20%と比べて高いですが、併用患者の約70%で重度の免疫関連副作用が発症することが問題となっています。さらに、2種類の高額な抗体医薬を使用しなければなりません。そのため、副作用が無く、奏効率を向上でき、抗体医薬より安価な、内服で使用できる簡便な併用薬の開発が望まれています。 第Ⅱ相試験民間非営利組織(NPO)「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」に属する東北大学、筑波大学、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の6大学と共同で、悪性黒色腫に対するRS5614とニボルマブとの併用の有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相試験(非盲検)を実施しました。本試験は、AMED「橋渡し研究プログラムシーズC(代表機関:東北大学、レナサイエンスは分担機関)」の助成を受けて実施した多施設共同、非盲検試験です。RS5614をニボルマブと8週間併用することにより、29例の患者のうち7例において奏効(24.1%)が確認され、ニボルマブとイピリムマブの併用の奏効(海外21%、国内13.5%)を凌駕する結果が得られました(2024年2月22日適時開示)。さらに、ニボルマブとRS5614の併用により62%という高い病勢制御率も得られました。一方、ニボルマブとイピリムマブ併用で生じる重篤な免疫関連副作用は認めませんでした(2024年2月22日適時開示)。本試験の結果は科学誌『British Journal of Dermatology』に掲載されました(2024年6月7日適時開示)。第Ⅱ相試験の結果から、厚生労働大臣指定「希少疾病用医薬品」を受けました(2024年9月2日適時開示)。希少疾病用医薬品指定を受けたことにより、悪性黒色腫治療薬としてのRS5614の薬価算定における市場性加算が加わり、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。 第Ⅲ相試験現在、根治切除不能悪性黒色腫患者124例を対象に、ニボルマブとRS5614との併用の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験を、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験として、東北大学病院など国内18施設で実施しています(2025年2月18日適時開示)。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の令和7年度希少疾病用医薬品等試験研究助成事業に、第Ⅲ相試験を対象とした申請が採択され(2025年7月16日適時開示)、2025年4月~2028年3月の間の3事業年度において、悪性黒色腫の関連研究費として支出した経費の2分の1を上限とし、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の当該事業予算の範囲内で事業年度毎に助成を受けられます。本第Ⅲ相試験では、124名の患者を予定していますが、2026年5月末時点で98名登録と順調に進んでいます。台湾における薬事承認を視野に台北医学大学とブリッジングスタディを実施するための契約を締結しました(2025年12月15日適時開示)。現在、台北医学大学が主体となって、台湾の規制当局であるTaiwan Food and Drug Administration (TFDA) と臨床試験に向けた協議を進めています。 〔 血管肉腫の治療 〕血管肉腫は国内約300人程度の極めて希少ながんであり、5年生存率は9%と非常に低く、悪性度の高いがんです。血管肉腫の標準治療の第1選択薬はパクリタキセルですが、血管肉腫患者の全生存率は649日と短く、長期寛解を得ることは困難です。PAI-1は主として血管内皮から産生されるため、血管内皮細胞の腫瘍である血管肉腫には、PAI-1が多く発現しております。血管肉腫の患者検体を用いた解析で、PAI-1が多く発現している患者の予後は悪いことが明らかとなっています。パクリタキセルはがん細胞を死滅(アポトーシス)させますが、PAI-1を多く発現しているがん細胞はアポトーシスに耐性であることから、PAI-1の発現量が多い血管肉腫では、パクリタキセルが効きにくいと考えられます。 第Ⅱ相試験PAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、パクリタキセルの治療効果を増強できる可能性に基づき、東北大学など7医療機関と「皮膚血管肉腫に対するパクリタキセルとRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」を開始し(2023年10月26日適時開示)、16例の症例登録を完了し(2025年6月20日適時開示)、全登録患者の投与を予定どおり完了しました(2025年12月12日適時開示)。主要評価項目の解析対象となる16症例において、治療開始28週時点画像判定(中央判定)では、完全奏効(CR)率は12.5%でした。さらに、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)は、それぞれ4.0ヶ月及び20.8ヶ月であり、本邦で前向き臨床試験として実施されたパゾパニブ(JCOG1605)の試験結果である2.8ヶ月及び12.1ヶ月を凌駕する結果が得られました。また、15例中13例(86.7%)で病勢の安定が確認され、高い病勢制御率が示されました(2026年2月10日適時開示)。一方、重篤な副作用や未知の副作用の発現は乏しく、治験薬との因果関係が否定できないGrade3以上の有害事象は16例中5例(31.25%)であり(肝機能障害及び白血球減少)、いずれも回復しており、重篤な治験薬関連有害事象は認められませんでした。JCOG1605におけるGrade3以上の有害事象の70%と比較しても、本剤はより良好な忍容性を示していると考えられます。現在、本試験の評価及びデータ解析を進めており、最終的な治験総括報告書は2026年6月頃を予定しています。 〔 非小細胞肺がんの治療 〕肺がんは日本のがん死亡原因の第一位であり、非小細胞肺がんは全体の85%を占めます。その中で根治的手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者は年間1万人にも至ります。非小細胞肺がんモデルマウスを用いた非臨床試験により、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブとRS5614の併用投与はニボルマブ単剤投与よりも高い治療効果が得られることを確認しました。さらに、PAI-1ががん血管の新生をもたらし、肺がん細胞の増殖能を亢進していること、ニボルマブに耐性となった肺がん細胞がPAI-1を多く発現していることなどを見出しました。 前期第Ⅱ相試験切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療以降の患者)を対象に、広島大学、島根大学、岡山大学、鳥取大学、四国がんセンター、広島市民病院などの医療機関と協力して、ニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を確認するための前期第Ⅱ相試験(非盲検試験)を開始し(2023年9月26日適時開示)、36症例の登録を終了しました(2025年7月3日適時開示)。その後、治験調整医師(治験代表医師)及び治験責任医師(実施医師)から、有効性(奏効)が確認できている患者もいることから、RS5614の投与継続の依頼があり、試験期間を3ヶ月延長し(2025年11月26日適時開示)、試験は終了しました(2026年3月5日適時開示)。全症例(3次治療以降)での評価は、主要評価項目である奏効率(ORR)は8.3%、副次評価項目である6ヶ月無増悪生存割合(PFS)22.5%でした。そのうち3次治療として本治験治療を受けた11例で評価すると、奏効率18.2%、6ヶ月無増悪生存割合 27.5%と高い有効性を示す結果が得られました。最終的な治験総括報告書は2026年8月頃を予定しています。 後期第Ⅱ相試験局所進行非小細胞肺がん患者に対しては、根治を目的として化学放射線療法が標準治療として行われ、化学放射線療法後に病勢進行や重篤な放射線肺障害を含む合併症が認められない症例では、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法が施行されます。前期第Ⅱ相試験において、RS5614の免疫チェックポイント阻害薬の効果増強が期待されること、また、早期の治療がより有効性が高い結果が得られていることから、後期第Ⅱ相として「局所進行非小細胞肺がんを対象に、初回標準治療である化学放射線療法とデュルバルマブによる地固め療法に対するPAI-1阻害薬(RS5614)併用療法の有効性と安全性を検討する医師主導治験(2025年11月26日適時開示)」を、広島大学病院など12医療機関と2026年4月頃に開始しました(2026年4月24日適時開示)。非小細胞肺がんに対する初回標準治療の課題として、1)放射線治療に対する抵抗性、2)化学治療に対する耐性、3)免疫チェックポイント阻害薬に対する耐性、4)放射線や免疫チェックポイント阻害薬に伴う肺障害(副作用)などがあります。次相試験の目的は、根治手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者対象とし、根治照射を含む化学放射線療法及びデュルバルマブによる地固め療法にPAI-1阻害薬RS5614を併用することで、1)化学放射線療法及びデュルバルマブによる抗腫瘍効果増強による根治率の向上と、2)放射線療法及びデュルバルマブによる肺障害(副作用)の抑制による治療安全性の改善が得られるかを検討し、RS5614併用治療が現行の初回標準治療を上回る新たな治療となり得るかを明らかにすることです。レナサイエンスは、国立大学法人広島大学と非小細胞肺がんに対する非臨床試験及び臨床試験に向けての共同研究契約を締結し、さらに包括的研究協力に関する協定書を締結して(2023年4月24日適時開示)、オープンイノベーション拠点(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を設けています。これら肺がんの試験はHiRExを主体に実施しています。 〔 膵臓がんの治療 〕膵がんは悪性腫瘍における疾患別死亡数の第3位ですが、早期発見が極めて困難な悪性疾患であり、診断時に切除可能な膵がんは15-20%に過ぎず、46.3%が遠隔転移陽性と診断される予後不良のがんです。膵がんで長期生存を得るには根治的切除が必須ですが、たとえ根治的切除が達成しても切除後の再発が極めて多い悪性腫瘍であり、その予後は18.8-31.3%と未だに不良です。遠隔転移を有する膵がんや切除後再発膵がんに対する標準治療は化学療法ですが、有効な治療法が少なく、FOLFIRINOX療法(奏効率、31.6%;全生存期間、11.1ヶ月)やゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法(GnP療法:奏効率、29%;全生存期間、8.5ヶ月)にても5年生存率は全体で10%程度であり(遠隔臓器やリンパ節に転移した段階であるステージ4では1~3%)、既存の標準治療を増強する治療薬が求められています。PAI-1は、膵臓がんの予後不良因子の1つです。PAI-1阻害薬RS5614は、がん組織において、上皮間葉転換の抑制、Tリンパ球の活性化、腫瘍浸潤マクロファージ(TAM)の減少、腫瘍内のTリンパ球数の増加、がん細胞上の免疫チェックポイント分子発現の低下、がん細胞の免疫チェックポイント分子阻害薬への耐性解除、腫瘍免疫微小環境の改善、腫瘍免疫の活性化など作用を有しています(2025年11月11日レナサイエンスニュース掲載)。さらに、PAI-1阻害薬の薬理作用である抗血栓作用や抗線維化作用、さらにはがん関連線維芽細胞(CAF)の減少は、膵がんの腫瘍環境を考える上でも有用な薬理作用を有しています。 第Ⅱ相試験「遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がんに対するゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法とRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」を開始しました(2025年12月16日適時開示)。2026年5月12日に東北大学病院など3医療機関で最初の患者登録が行われ、試験が開始されました(2026年5月12日適時開示)。遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がん患者50名を対象に、主要評価項目を奏効率として本試験を実施します。 〔 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害治療薬 〕2020年初頭、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、医療面及び社会面の双方で深刻な問題となりました。感染者の多くは軽症でしたが、一部の高齢者や糖尿病、腎臓病患者は重症肺炎に至りました。軽症患者は在宅療養で様子を見ていましたが、発症時は軽症でも急速に重症化する症例も多く、外来患者にも経口投与が可能である安全な肺炎の重症化を防ぐ治療薬の開発が喫緊の課題でした。COVID-19による重症肺炎では炎症や線維化などの病変が急速に進行し、血管内皮障害や凝固亢進の特徴的な所見が認められることから、PAI-1阻害薬の有する抗血栓、線溶、抗線維化、抗炎症などの作用が有効と考えられました。そこで、速やかに試験の準備に着手し(PMDA相談、治験薬製造、臨床プロトコール確定)、半年後の2020年秋にはCOVID-19肺炎に対するPAI-1阻害薬の安全性を評価するための前期第Ⅱ相試験(非盲検)を実施し、2021年6月に治験総括報告書を纏めました。PAI-1阻害薬RS5614を投与された肺炎の入院患者26名全員が副作用もなく無事退院されました(Scientific Reports 2024)。2021年3月にAMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(代表機関:東北大学、レナサイエンスは分担機関)」に採択され、2021年4月のPMDA事前面談に基づき実施計画書を確定し、2021年6月から東北大学、京都大学、東京科学大学、東海大学等国内20の大学等の医療機関と共同で、COVID-19に伴う肺傷害患者(中等症、入院患者)を対象とするプラセボ対照二重盲検の後期第Ⅱ相試験を開始しました。本試験は、COVID-19の流行時期やウイルス株変異の影響を受け、試験の対象となる肺炎入院患者数が減少したため、最終的に入院患者75例(RS5614群39例、プラセボ群36例)を対象に試験を終了し、治験総括報告書を纏めました(2023年4月17日適時開示)。有効性の主要評価項目である「酸素化悪化指標スケールの総和」は、両群間で統計学的な有意差は認めませんでしたが、プラセボ群に対してRS5614群で悪化の抑制が見られ、特に中等症Ⅰ患者での有効性が示唆されました。さらに、酸素治療が必要となる症例の割合も、入院後3~5日でRS5614群の方が少ないことから、早期治療でのRS5614の有効性が示唆されました。また、RS5614群では、プラセボ群と異なり、肺炎画像所見の改善も認めました。副作用発現率はRS5614群とプラセボ群で同程度であり、COVID-19に伴う肺傷害患者に対するRS5614の安全性も確認できました。RS5614は抗ウイルス薬とは作用機序が全く異なり、内服が可能な医薬品です。現在、COVID-19は落ち着いていますが、将来の新たなウイルスの発生に際して速やかに臨床試験が実施できるよう準備をしています。前期及び後期第Ⅱ相医師主導試験の結果は、2024年1月に科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。 〔 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)の治療 〕全身性強皮症(systemic sclerosis)は、皮膚と内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患で難病に指定されています(指定難病51)。全身性強皮症は免疫異常、血管障害、線維化を主な病態として、臓器線維化による臨床症状として、レイノー症状、皮膚硬化、間質性肺疾患(Interstitial lung disease、ILD)、強皮症腎クリーゼ、心病変、肺動脈性肺高血圧症など、さまざまな多臓器障害を生じます。他の自己免疫疾患に比してステロイドや免疫抑制薬の効果は限定的です。特に間質性肺疾患は全身性強皮症の死因の35%を占めており、また間質性肺疾患が直接の死因とならない場合でも、高度な呼吸機能低下により生活の質(QOL)や日常の生活動作(ADL)の著しい低下を招きます。間質性肺疾患に対しては、ステロイドや免疫抑制薬が第一選択薬ですが、その治療効果は充分ではありません。近年、抗線維化薬であるニンテダニブが承認されましたが、進行を抑制する作用はあるものの、間質性肺疾患を改善する作用は無く、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対する新規治療薬の開発が強く望まれています。 第Ⅱ相試験AMEDの令和5年度「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、レナサイエンスは分担機関)」に採択され(2023年3月15日適時開示)、東北大学など12医療機関と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するPAI-1阻害薬RS5614の第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検)」を開始し(2023年10月19日適時開示)、全登録患者の投与(1年間)を予定通り完了し(2025年11月25日適時開示)、試験は終了しました(2026年4月10日適時開示)。試験の結果、主要評価項目である48週時点の%FVCの変化量については、RS5614群においてプラセボ群に対する有意な上乗せ効果は認められませんでした。一方、皮膚硬化の指標であるmRSSについては、48週時点単独では明確な群間差を認めませんでしたが、治療経過全体を踏まえた追加解析において改善傾向が示唆されました。 〔 抗加齢・長寿研究 〕PAI-1阻害薬RS5614を用いた国内及び米国の研究機関との共同研究により、加齢に関連して発症する種々の疾患の予防や健康寿命を延伸できる可能性を示唆する一連の知見を明らかにしました。 ⅰ 細胞の老化(Senescence)生物の細胞は、細胞老化と呼ばれる現象のために無制限には増殖できません。細胞老化には、遺伝子のテロメア長の短縮、p53,p21,p16ink4aなどの細胞周期調節因子が関与しています。老化した細胞はPAI-1の発現が極めて高く、PAI-1阻害薬により細胞周期調節因子、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)染色、IL-6等インターロイキンなどの細胞老化随伴分泌現象(SASP:senescence-associated secretory phenotype)、DNA損傷応答などの老化バイオマーカーは改善し、心筋細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞の細胞老化が阻害されます(Oncotarget 2016)。また、PAI-1阻害薬はヒト早老症であるハッチンソン-ギルフォード症候群の患者線維芽細胞のDNA損傷を減弱し、ミトコンドリア障害を改善し、細胞の老化を改善します(Cell Death and Disease.2022)。 ⅱ 組織や個体の老化(Aging)細胞のみならず、老化した組織や個体(klothoマウス、早老症として有名なウェルナー症候群のヒト)でも、PAI-1の発現が高いことが報告されました(Proc Natl Acad Sci USA. 2014)。老化(早老症)モデルであるklothoマウスを用いた非臨床試験で、PAI-1阻害薬の経口投与によりこのモデルの老化症状が改善できます(Proc Natl Acad Sci USA. 2014)。 ⅲ 加齢に関連する疾患加齢とともに、がん、血管(動脈硬化)、肺(肺気腫、慢性閉塞性肺疾患)、代謝(糖尿病、肥満)、腎臓(慢性腎臓病)、骨筋肉(骨粗鬆症、変形性関節症、サルコペニア)、脳(脳血管障害、アルツハイマー病・認知症)などの様々な疾患が発症します。興味深いことに、これら疾患ではPAI-1の発現は極めて高く、PAI-1阻害薬RS5614を投与することにより病態が改善できます(Biomedical J, 2026)。RS5614は、血管老化の進展を抑制するだけでなく、RS5614投与前の血管老化症状よりもさらに症状を改善することが明らかになりました(J Clin Invest. 2025)。「人は血管とともに老いる」といわれるように、加齢とともに血管が老化し、この血管の老化が健康寿命に大きく影響すると考えられます。現代の様々な生活習慣病(高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、高脂血症)が血管老化を加速します。PAI-1阻害薬が血管の老化を防止するだけでなく、回復できる事実は極めて興味深い知見です。 ⅳ 長寿家系の疫学的調査米国ノースウエスタン大学との共同研究で、アーミッシュコミュニティーの人々を調査し、PAI-1遺伝子を持たない人は持っている人に比べて10年長生きすることを見出しました(Science Advances 2017)。この事実は、2017年11月にニューヨーク・タイムズを始め(THE NEW YORK TIMES, NOVEMBER 21, 2017)、多くの新聞で報道されました。さらに、アーミッシュのヒトと同じPAI-1遺伝子の異常を有するマウスの寿命は、正常のマウスに比べて20%程度長いことも示されました(J Clin Invest. 2025)。 これらPAI-1阻害薬の抗加齢作用に基づき、「老化細胞を除去し、がん化を促進する事なく老化関連疾患を抑制する新たな新規低分子医薬品」のコンセプト(セノリティック医薬品)を提唱し、東北大学、東海大学、広島大学の研究機関及び医療機関との共同でXPRIZE Healthspan(https://www.xprize.org/prizes/healthspan)に応募しました。XPRIZE財団が主催するXPRIZE Healthspanは、健康寿命を積極的に10年以上延伸することを目的とし、2030年までに健康寿命を延ばすことができた研究チームに対して、総額1億米ドルを支払うという世界的な長寿コンペティションです。世界から600以上のエントリー、200以上の書類申請があり、治療アプローチとして、低分子医薬品、バイオ医薬品(エクソソーム、免疫調節剤、抗体医薬)、遺伝子治療、幹細胞治療、医療機器(デジタルヘルスデバイス、電気医療機器、磁気医療機器)、サプリメント、機能性食品、食事制限、運動療法、さらにそれらの組み合わせが提案されました。レナサイエンスは、米国ニューヨークで開催されたXPRIZE Healthspanの受賞セレモニーでTOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを受け取りました(2025年5月13日適時開示)。セミファイナリストは、セミファイナル臨床試験を実施し、2026年4月に報告書を提出しました。2026年8月にTOP10(ファイナリスト)が選出され(賞金100万米ドル)、最終コンペティションのための4年のファイナル臨床研究が実施されます。ファイナル臨床研究を実施したTOP10のチームの中からグランプリが選ばれます(最大8,100万米ドル)。セミファイナル試験は、特定臨床研究として東北大学病院で開始し(2025年8月18日適時開示)、20例の患者登録を完了しました(2025年10月1日適時開示)。速報結果では、RS5614を4ヶ月間投与することにより、生物学的年齢(エピジェネティック・クロック)が平均2~3歳若返り(Horvath法で3.4歳、PC-Horvath法で1.9歳の有意な若齢化)、老化関連microRNA(SA-miRNA)の有意な減少、免疫系の活性化(NK細胞数の正常化、樹状細胞数の増加)、造血幹細胞の機能回復(造血幹・前駆細胞数の有意な増加)、ならびに酸化ストレスマーカーの改善(AGEs/CML低下)など、広く各種臓器に対して抗加齢作用が確認されました(2026年5月14日適時開示)。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されました。今回のセミファイナル試験結果とファイナル試験概要を取りまとめて、2026年4月中旬にXPRIZE Healthspan評価委員会に提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)として採択されれば、ファイナル試験は日本・米国・サウジアラビア・台湾との国際共同臨床試験として実施し、100~150名程度の高齢者を対象としたプラセボ対照盲検試験で免疫機能、筋肉機能、認知機能を評価する予定です。本プロジェクトに関して、下記に記載するように、ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)、台北医学大学(2025年12月15日適時開示)、サウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)(2026年2月9日適時開示)との間で、臨床試験を共同で実施するための基本合意書を締結しています。長寿関連事業(医療用医薬品、OTC医薬品、さらには動物医薬品)は、超高齢化を背景に経済や生活に与える効果も極めて大きな成長分野です。PAI-1阻害薬RS5441の脱毛症治療薬としての実例もあり、レナサイエンスのPAI-1阻害薬の抗加齢・長寿研究をさらに展開する予定です。なお、レナサイエンスのがん及び抗加齢・長寿領域に関連する取材記事が、科学誌『Nature(Digital edition)』に掲載されました(2025年12月1日開示)。 〔 RS5441_男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬 〕毛髪は毛が伸びる成長期、毛が抜けやすくなる退行期、毛が抜ける休止期と複数の相からなる周期を持って成長しています。男性型脱毛症(AGA)は,毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり,休止期にとどまる毛包(毛根を包み成長させる組織)が多くなる疾患で、日本人男性の頻度は50代以降で40%以上です。米国ノースウエスタン大学との共同研究により、PAI-1を過剰発現するマウスは脱毛が激しく、一方このマウスにPAI-1阻害薬RS5441を経口投与すると著明な発毛が認められることが分かりました。RS5441の投与により総毛包数が93.5%増加し、退行期の毛包数は64%減少しました。2016年10月に皮膚科疾患用途におけるRS5441の独占的権利をエイリオン社に許諾し、同社で男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬(ET-02)として開発されています。男性型脱毛症患者の頭皮組織移植片60検体を用いた非臨床試験で、ET-02による治療4ヶ月目の発毛率は標準治療薬ミノキシジルによる発毛率の4倍高いという結果が得られました。男性型脱毛症(加齢性脱毛症)治療に対する安全性と有効性を評価する第Ⅰ相臨床試験が開始され(2024年7月3日適時開示)、ET-02(RS5441)は安全で、良好な忍容性を示し、プラセボ群と比較して非軟毛(又は正常)の毛数が6倍に増加することが報告されました(2025年1月9日適時開示)。同社において、引き続き米国における第Ⅱ相臨床試験に向けた準備・検討が進められており、将来的にET-02が商業化された場合にはエイリオン社からロイヤリティを受領する予定です。なお、特許期間満了(2029年3月31日)後も一定期間((a) ET-02の製品がレナサイエンス許諾特許の有効な請求範囲でカバーされる最終日、(b) ET-02の製品に関する規制又はデータ独占権の満了日、及び (c) ET-02の製品の最初の販売から10年後、のいずれか遅い日まで)ロイヤリティが受領できる契約となっております。 (b) RS8001(ピリドキサミン)〔 ピリドキサミンと精神疾患 〕私たちが喜怒哀楽を感じたり、様々なことを感じたりする時、脳内では「神経伝達物質」が行き交っています。神経伝達物質は神経細胞と神経細胞を接続する部分(シナプス)から分泌され、他の神経細胞へ情報を伝達します。神経伝達物質には様々な種類があり、その中でアミノ基を有した物質を脳内モノアミンと言います。代表的なものとして、抗ストレス作用を有するγ-アミノ酪酸(GABA)、精神安定をもたらすセロトニン、意欲や多幸感を高めるドーパミンなどがあり、これらは月経前症候群 / 月経前不快気分障害、更年期障害の精神疾患などの発症に関与することが知られています。レナサイエンスで開発中のRS8001(ピリドキサミン)は、天然ビタミンB6のひとつのタイプです。水溶性のビタミンで、極めて安全な医薬品ですが、日本を含めて先進国では未承認の医薬品です。ピリドキサミンは、GABAやセロトニンの産生や代謝を改善し、脳内でのこれら神経伝達物質の増加をもたらすことが、化学反応や動物試験から推測されています。レナサイエンスは、東京都医学総合研究所と共同で、自殺や殺人といった自傷他害行為を伴う重篤な統合失調症の多発家系からグリオキサラーゼ1(GLO1)遺伝子変異が原因であることを見出したことを皮切りに精神疾患領域における検討を開始しました。グリオキサラーゼは解糖系から生成する反応性カルボニル化合物(RCOs)であるメチルグリオキサールを無毒化するので、グリオキサラーゼの活性低下に伴い蓄積するRCOsにより脳内モノアミンが捕捉されてしまうことが、統合失調症の一部の発症機序であると示唆されました。また、東北大学との共同研究で、ピリドキサミンがカルボニル化合物と脳内モノアミンの反応を阻止することを発見しました。ピリドキサミンは、脳内モノアミン生合成に不可欠な補酵素としてその産生を促進するだけでなく、カルボニル化合物による脳内モノアミンの分解を阻害することで、脳内モノアミンの量を調節する作用を有すると考えられます(図表11)。 < 図表11 ピリドキサミンの作用機序と天然ビタミンB6の構造 >■ピリドキサミンの作用コンセプト (出典:東北大学) 実際に、マウスを用いた実験において、脳の細胞外液に含まれる各種伝達物質を、最新の質量分析技術で解析したところ、ピリドキサミン投与により、額のすぐ後ろにある前頭前皮質ではGABA濃度は変化しませんでしたが、脳の深いところにある海馬及び線条体では脳内GABA濃度が上昇していました。神経細胞に光感受性分子を発現するラットを使い、光ファイバーを介して海馬の神経細胞を刺激してピリドキサミンの作用を検討したところ、光刺激を繰り返すとラットは興奮性の発作を引き起こしますが(4日目がピークとなる)、ピリドキサミン投与により発作は著明に抑制されました。このようにピリドキサミンは神経細胞の過剰な興奮性を抑制します。 〔 ピリドキサミンの薬剤概要 〕ピリドキサミンの製造販売承認申請に必要となる非臨床試験の成績は、薬機法に基づく医薬品GLP(医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令)とICH(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに従って収集しました。 非臨床安全性GLP試験1)安全性薬理試験ではhERG試験で陰性、2)ラットの中枢神経系(1,000 mg/kg)、イヌの心血管系及び呼吸器系試験(300 mg/kg)で陰性、3)一般毒性試験ではラットの6ヶ月間経口投与試験(無毒性量100 mg/kg/日)、イヌの12ヶ月経口投与試験(無毒性量50 mg/kg/日)、4)遺伝毒性試験は3法定試験で陰性、5)生殖・発生毒性試験も陰性です。以上の安全性試験の成績を含めて、薬物動態試験や物性データなどの製造販売承認を行うために必要なフルセットでの非臨床試験成績を有しています。 第Ⅰ相臨床試験(健常成人男子)薬機法に基づくGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)条件下での医師主導治験で、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)で製造された治験薬を用いて実施しました。第Ⅰ相単回投与試験では、RS8001の1,200 mgまでの安全性が確認され、第Ⅰ相反復投与試験においては、900 mg(1日2回分服用)を7日間経口投与した際に発現した有害事象はいずれも軽度でした。 知的財産権RS8001について、パイプライン各適応症の用途特許を出願しております(①自閉スペクトラム症用途特許、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:米国 登録済、存続期間満了日:米国 2038年9月25日;②月経前不快気分障害及び月経前症候群用途特許、出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、存続期間満了日:2035年12月28日)。また、RS8001大量投与に伴いビタミンB1欠乏(ウェルニッケ脳症)が起こることを見出したので、ビタミンB1(チアミン)と組み合わせて予防する特許も日本及び米国に出願して権利を補強しています(出願人:株式会社レナサイエンス、最新状況:日本、米国 登録済、存続期間満了日:2035年8月26日)。また、三井化学株式会社と、RS8001を組換え微生物で製造する製法特許を共同で出願しています(出願人:三井化学株式会社・株式会社レナサイエンス、最新状況:日本 登録済、存続期間満了日:2038年5月11日)。 適応症更年期障害の臨床研究を実施中です。 第Ⅱ相臨床試験(医師主導治験)の課題精神領域での薬剤の有効性を評価する第Ⅱ相試験で重要な点は、1)適切な対象患者の選定と2)プラセボ効果を減少する治験計画です。更年期障害は多様な精神症状を呈するheterogeneous(質的に異なる)な疾患集団ですが、ピリドキサミンは全ての症状に有効な薬剤ではありません。本薬剤の有効性を適切に評価するための対象患者を適切に選択することが重要な課題です。heterogeneousな疾患や症状のために統計学的な有意差を得るには多くの症例数が不可欠です。また、精神領域での試験では、プラセボ効果が強く影響することが試験の評価を困難にする大きな原因となっています。そこで、更年期障害の臨床研究では、最初にプラセボ薬のみを登録患者全員に服用頂き、有効性を認めた患者(プラセボ効果が高い患者集団)を除外した患者を対象に、実薬とプラセボ薬の二重盲検法による試験(プラセボリードイン方式)を採用し、プラセボ効果の排除による適切な薬剤評価の手法を採用しています。 〔 更年期障害 〕更年期障害は、内分泌学的変動に加えて心理・社会的ストレスが加わることにより発症するホットフラッシュ・発汗などの血管運動神経症状、易疲労感・関節痛などの身体症状、うつ・不安・不眠などの精神症状です。東京科学大学・女性健康医学講座では、これら症状がビタミンB6の摂取量と逆相関することを見出しました。2021年12月更年期障害に対するRS8001(ピリドキサミン)の臨床研究に関して東京科学大学と共同研究契約を締結し(2021年12月15日適時開示)。2023年3月にAMED「女性の健康の包括的支援実用化研究事業(代表機関:東京科学大学、レナサイエンスは協力機関)」に採択され、臨床研究が開始されました。本臨床研究では、プラセボ効果をできる限り排除する目的でプラセボリードイン方式を採用した二重盲検法(各群25名)で実施しています。 (c) 核酸医薬品(概要)レナサイエンスは、医療の課題を解決するため様々なモダリティを活用した医療ソリューションを研究開発しており、医師主導治験を活用した臨床試験を複数のパイプラインで実施しています。ルクサナバイオテク株式会社(以下、「ルクサナバイオテク」)は、国立大学法人大阪大学大学院薬学研究科の小比賀聡教授が開発した人工修飾核酸を活用した創薬基盤技術を活用して、高い有効性と安全性を有するバイオ医薬品(核酸医薬品)を研究開発しています。そこで、ルクサナバイオテクの有する人工修飾核酸技術とレナサイエンスの有する医師主導治験における実績と経験を活かして、新たな医薬品モダリティであるバイオ医薬品に関する共同研究契約を締結し、低分子医薬品に加えて核酸医薬品の研究開発に着手しています。核酸医薬は従来の低分子医薬や抗体医薬では狙えない遺伝子を創薬ターゲットとする新しい創薬モダリティですが、副作用や標的臓器へのデリバリーシステムなど課題も多いです。ルクサナバイオテクは、世界に先駆け架橋型人工核酸(LNA/BNA)の創製に成功し、核酸医薬品の革新的基盤技術となる有効性向上のための人工核酸(AmNA,GuNA,scpBNA,BANAなど)や安全性向上のための化学修飾(糖部修飾5'-cpや塩基部修飾5-OH-Cなど)、さらには脳や筋肉へ核酸医薬を送達させるデリバリー技術などを確立し、核酸医薬品の抱える課題の幾つかを解決してきました。レナサイエンスとルクサナバイオテク社は、AMEDの令和6年度「スマートバイオ創薬等研究支援事業」に分担研究者として申請し、「革新的核酸医薬技術を基盤とした神経・筋難病治療薬の開発」に採択されました。本事業では、大阪大学、京都大学とのオープンイノベーションに基づき、難病疾患である多系統萎縮症・パーキンソン病、筋ジストロフィーを対象として、アンチセンス核酸(ASO)やアンチmiRNA核酸(AMO)の核酸医薬シーズの開発を実施します。 (d) RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)腹膜透析は在宅での透析を可能とし、医療経済的にもメリットのある治療法です。しかし、腹膜が経年劣化し重篤な合併症を引き起こす事があるので、5年程度で腹膜透析治療が中止される症例が多いです。腹膜の状態を確認するためには、開腹手術若しくは腹腔鏡による侵襲的な観察しか無く、患者にも負担を強いています。腹膜透析患者は透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入した状態にあるため、この細いチューブを通して挿入し非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡の開発を着想し、東北大学、順天堂大学、東京慈恵会医科大学らと共同開発しました。多くの医師の意見を基に、医療現場のスペックに適した外径約1mm程度のディスポーザブルファイバースコープです。本医療機器は、従来の消化器系の内視鏡とは異なるコンセプトで開発されたもので、胃瘻チューブ、尿道バルーン、気管チューブ、注射針からの挿入が可能で、様々な臨床的有用性も期待できますこの極細内視鏡は、腹腔内を可視化するためのファイバースコープ部分と操作性を容易にするためのガイドカテーテル部分から構成されています。ファイバースコープはPMDAに承認申請され(2022年9月14日適時開示)、厚生労働省から薬事承認されました(2022年12月26日適時開示)。本製品の詳細は、以下のとおりです。・ 承認番号:30400BZX00294000・ 一般的名称:軟性腹腔鏡・ 販売名:経カテーテル腹腔鏡 PD VIEW・ 類別コード:器 25株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルと付属品であるガイドカテーテル作成を含めた医療機器開発に関する共同研究契約を締結し(2022年9月1日適時開示)、その後株式会社ハイレックスメディカルとライセンス契約を締結し(2024年5月20日適時開示)、開発を進めてきました。ガイドカテーテルの開発及び製造の目処もつき、多施設共同臨床試験でも有害事象は認められず、安定期腹膜透析患者の臨床評価を補完する有意義な非侵襲的検査法であることが確認されました(2024年6月24日、2026年3月4日適時開示)。ガイドカテーテルとファイバースコープを合わせて2026年内に薬事申請する予定です。 (e) AIを活用したプログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD)レナサイエンスは、1)医療ニーズの把握と医療現場での開発を重視する視点、2)多くの医師や診療科とのネットワーク、3)医薬品や医療機器の医師主導治験で蓄積された経験やノウハウを基に、医師と医療機関、AI技術を有するITベンダー、出口の製薬・ヘルステック企業間を結ぶハブとなり、医療分野でのAI研究から事業までを繋げるエコシステムの創出にも取り組んでいます。薬機法に則った臨床試験(医師主導治験)が実施できるために、実地臨床に役立てられる本格的なAI医療ソリューション(診断、治療)の開発も可能です。現在、呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援、嚥下機能低下診断などの領域でAIを活用したプログラム医療機器(SaMD)を開発しています。レナサイエンスのAIを活用したプログラム医療機器の開発に関しては、科学誌『Nature』の取材記事も参照ください(2024年3月18日開示)。プログラム医療機器における海外展開として、台北医学大学の100%子会社であるTaipei Medical University(TMU)-Biotech社と共同研究契約を締結しました(2024年8月30日適時開示)。台北医学大学は6つの病院を擁し、ベッド数は3,000床に至り、それら豊富な医療データを活用してSaMDの研究開発が実施可能です。また、サウジアラビア最大の研究・医療機関である「キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC)」との間でも、プログラム医療機器の開発や事業化に向けた連携を進めていくための基本合意書を締結しました(2025年10月6日適時開示)。 〔 RSAI01_呼吸機能検査診断プログラム医療機器 〕世界保健機関(WHO)では、がん・糖尿病・循環器疾患に加えて呼吸器疾患を重要な疾患として考えています。代表的な呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などです。呼吸器機能を診断する検査の普及が不充分なために、COPDなど呼吸器疾患の有病率、罹患率、死亡率などは明らかでは有りません。呼吸器疾患や呼吸器機能の検査の中でスパイロメトリーが最も重要ですが、患者の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈することが非専門医には難しいためです。非専門医でも簡便に結果解釈できるシステムの開発は、呼吸器疾患を診断し、早期治療を行う上で重要な医療課題と考えられます。フローボリューム曲線を解釈するプログラム医療機器を、京都大学、チェスト株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で開発しています。2023年3月に開発段階の研究を終了し、チェスト株式会社より事業化段階への移行に関するマイルストーンを受領し(2023年6月14日適時開示)、さらに対象地域拡大(国際展開)に係るオプション権行使に伴う一時金を受領しました(2025年2月12日適時開示)。 〔 RSAI02_維持血液透析医療支援プログラム医療機器 〕慢性腎不全患者は、廃絶した腎臓の代わりに除水と老廃物の除去を行うために週3回、生涯にわたって血液透析を受けます。除水不足は心不全、高血圧等心肺機能に障害を与える一方、過度な除水は透析中の低血圧を生じ、気分不良、意識消失といった有害事象をもたらします。不適切な除水量の設定により除水不足や過除水が生じ有害事象が発生すると医療従事者は患者対応に追われ、大きな負担となります。透析病院では数十名の患者を対象に、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士を中心に管理が行われていますが、人的資源は充分ではなく、透析中に発生する急激な低血圧などの合併症の発生は、少ない人的資源を消費し、患者の生命予後にも悪影響を及ぼします。安全安心な血液透析を実現するために、適切な目標総除水量を予測するプログラム医療機器を、聖路加国際大学、東北大学、ニプロ株式会社、日本電気株式会社(NEC)、NESと共同で開発しています。このプログラム医療機器はNEC北米研究所と共同で開発した人工知能(AI)であるDual-Channel Combiner Network(DCCN)をコア技術として活用しています。AMED「医療機器開発推進研究事業(代表機関:東北大学、レナサイエンスは協力機関)」に採択され(2023年2月27日適時開示)、2023年4月にPMDA開発前相談を実施し、2024年1月にはPMDAプロトコール相談を完了しました。薬事承認申請のための臨床性能試験を実施し(2024年10月21日適時開示)、目標症例数である150症例の登録を達成し(2025年4月9日適時開示)、最終結果は当初設定していた主要評価項目の目標正解率80%を10%上回る成績(正解率90.0%)であり、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証されました(2025年10月20日適時開示)。また、AMEDより本事業の実用化を加速するための研究費(調整費)143,000千円の追加配賦を受けました(2025年9月10日適時開示)。これにより、本来レナサイエンスの費用負担にて実施する予定であった実用化に向けたシステム開発費用が削減されました。本プログラム医療機器の実用化に向けて、東レ・メディカル株式会社(2023年12月8日適時開示)、ニプロ株式会社(2024年3月14日適時開示)と共同開発契約を締結しました。さらに、薬事承認申請や事業化に向けた取組みを加速するため、ニプロ株式会社との間で共同開発契約の変更に関する覚書を締結しました(2025年10月30日適時開示)。2022年10月に基本となる知的財産権を出願し、2023年5月に国際出願、2024年1月には新たな知財を追加出願しました。(「第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください)。 〔 RSAI03_糖尿病治療支援プログラム医療機器 〕糖尿病の血糖値を厳格にコントロールし、糖尿病合併症を予防するためにはインスリン注射治療が必要です。しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。非専門医にも専門医レベルのインスリン治療を実行できるよう支援するプログラム医療機器を東北大学及びNECと共同で開発しています。このプログラム医療機器は、NECが開発したAIであるSkill Acquisition Learning、SAiL(スキル獲得学習)を東北大学で医療用にカスタマイズしたDM-SAiLをコア技術として活用しています。東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく学習が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から2単位程度の誤差で予測するプログラム医療機器が開発できています。AMED「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(レナサイエンスが代表機関)」に採択され(2022年4月20日適時開示)、2024年2月にPMDAプロトコール相談を実施し、臨床性能試験のプロトコールが確定しました。薬事承認のための臨床性能試験を実施し(2024年8月19日適時開示)、目標症例数である130症例のデータを取得しました。解析の結果、最終的な正解率は85.46%と、主要評価項目の目標正解率80%を上回る結果であり、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証され、総括報告書を纏めました(2025年3月6日適時開示)。また、2022年6月に基本となる知的財産権を出願し、2023年4月には国際出願を行いました。また、東北大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマッチングファンドに採択され、国際共同研究を推進しています(2026年3月3日適時開示)。 〔 その他のプログラム医療機器 〕実用化を視野に入
有価証券報告書(2026年3月決算)の情報です。
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてレナサイエンスが判断したものであります。(1)会社の経営方針レナサイエンスは、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器)を、医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献することで、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造することを経営理念として掲げています。 (2)経営戦略① 多様なモダリティ開発レナサイエンスは特定の技術に特化したベンチャーでは無く、広くモダリティ(医薬品、医療機器など治療の様式)の開発に取り組みます。医薬品産業も、低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療)へと、モダリティが多様化しつつあります。近年の工学系や情報系技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体のビジネスから医療ソリューション全般にわたるビジネスへの転換を迎えております。医薬品、医療機器、さらにはAIを活用したプログラム医療機器など、医療現場での治療のオプションも広がりつつあります。レナサイエンスもこれまで主体であった化学系や生物系の研究に加えて、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、がん、抗加齢・長寿、人工知能(AI)など重点研究領域(図表12)を主体に多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創出します。 < 図表12 重点研究領域 >(出典:レナサイエンス作成) 広くモダリティ開発に取り組むことには、早期の黒字化と将来の収益確保の両立という経営面での利点もあります。医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が比較的大きく事業リスクが高い分野ですが、上市後には極めて高い収益が期待できる事業です。一方、医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期にレナサイエンス収益につながります。レナサイエンスは、これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインで進めることにより、リスクを分散しながら早期の黒字化と将来の収益の拡大を目指します。 ② 少子高齢化の医療課題平均寿命と健康寿命(平均寿命から寝たきりや認知症などの介護状態の期間を差し引いた期間)の差が約10年あることが大きな課題となっています。加齢と共に生じる種々の疾患、例えば、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病などを治療できれば、健康寿命の延伸に繋げることができます。これら4疾患は全世界の死亡者数の70-80%に至り、世界保健機関(WHO)でも老化や生活習慣に伴う重要な疾患として位置付けられています。レナサイエンスは、これら4疾患の治療薬を含めた健康寿命を伸ばすための医薬品開発という医学的あるいは社会的にも重要な課題を解決すべく取り組んでいます。さらに、超高齢化社会の到来を迎えて、今後国際的に著しい成長が期待される「抗加齢・長寿分野」の研究並びに事業にも注力します。近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ[幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去)]が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金が投資されている分野です。レナサイエンスのPAI-1阻害薬(RS5614)は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。 ③ 公的研究機関や医療機関との連携医薬品のように成功確率が極めて低く、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスク分散をすることが不可欠です。レナサイエンスは外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティを展開し、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境にも注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えています。医療イノベーション創出におけるアカデミアなどの研究機関や医療機関の役割が広がりつつあります。低分子医薬品と異なり、バイオ医薬品の技術基盤やシーズは研究機関にあります。また、AIを活用したプログラム医療機器の開発に必要な医療データは企業ではなく医療機関が有しています。レナサイエンスは、多くの医療機関や診療科と複数の医療分野で医師主導治験を実施しているので、医師から医療現場の課題を把握する機会が多く、またAI開発に必要な医療データも比較的短期間でビッグデータが取得しやすい環境にあります。 ④ 基礎研究から医師主導治験まで一気通貫での開発レナサイエンスは、国内外の大学などの研究機関で着想された多くのモダリティにわたるコンセプトやシーズを、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)まで一気通貫でつなげる研究開発を行い、大手製薬企業等につなぐことで医療イノベーション創出に貢献します。臨床開発は販売の許可を受けるための承認申請に近いところまで自社で対応します。例えば、2022年12月に厚生労働省から承認を得た医療機器(極細内視鏡)は、製品コンセプトから試作品開発、非臨床試験の実施、検証のための医師主導治験まで複数の大学と共同で開発を進め、レナサイエンスが取得した成績で薬事承認を得ることができました。また、血液がんの一種である慢性骨髄性白血病及び悪性黒色腫の治療薬は承認申請に必要な検証試験である第Ⅲ相試験を実施中ですが、その他のパイプラインについても今後、可能な場合は第Ⅲ相試験まで自社で実施したいと考えています。その理由は、希少疾患などの治療薬は大手製薬企業からは注力されにくい場合が多いことや、さらに第Ⅲ相試験まで自社で実施することで大きな事業収益が期待できるからです。 ⑤ 医師主導治験レナサイエンスは、基礎研究から医師主導治験まで一気通貫で実施できる医師(physician-scientistという)との共同研究を重視しています。レナサイエンスは、これまで31件に至る医師主導治験等の実績(図表13)があり、医師主導治験には多くの利点があります。医師自ら治験を立案及び実施できますので、医療現場での課題や実情に合った試験計画や枠組みで実施できます。レナサイエンスが行う治験は全て未承認の薬剤(first-in-human)を対象としており、海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大のための治験ではありません。 < 図表13 医師主導治験等の数 >(31件の内訳は、実施済み24件、実施中5件、実施予定2件)(出典:レナサイエンス作成) ⑥ オープンイノベーションレナサイエンスは、大学との連携を基にオープンイノベーションを推進し、効率的な開発を推進していきます。具体的には、東北大学との「Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx」、広島大学との「Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx」、ノースウェスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本研究室などオープンイノベーション拠点の設置、台北医学大学やサウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)との連携などです。 < 図表14 TRExの風景 > (3)目標とする経営指標レナサイエンスの事業収益は、医薬品、医療機器、プログラム医療機器の研究開発成果を実用化企業に導出して得る一時金、マイルストーン及びロイヤリティ収入がメインです。そのため下記の経営指標を掲げています。① 臨床段階にある開発パイプライン数(臨床試験数)パイプラインを実用化企業に導出するためには、非臨床試験や第Ⅰ相試験(健常者での安全性確認試験)では難しく、少なくとも患者での有効性の確認(第Ⅱ相試験)の治験が終了していることが必要です。そのため、臨床段階(特に第Ⅱ相試験以後)にある開発パイプライン数は重要な数値目標になります。レナサイエンスは当事業年度末日現在において、2027年3月期に臨床試験を実施予定のパイプラインを7本(医師主導6本、企業治験1本)有しており、内訳は第Ⅲ相試験3本(慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、皮膚血管肉腫)、第Ⅱ相試験3本(非小細胞肺がん、膵臓がん、脱毛症)、臨床研究1本(抗加齢)に至り、国内バイオベンチャーとして最大級の臨床試験実績です。 ② 契約締結パイプライン数レナサイエンスは、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、契約一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しています。また、比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提としたオプション権付き共同研究契約(オプション契約)を出口企業候補と締結することもあります(図表4 事業系統図の(共同研究))。レナサイエンスは、現在5本の契約締結パイプライン数を有しており、内訳はライセンス契約3本(エイリオン社に脱毛症など皮膚疾患治療薬、ハイレックスメディカル社にディスポーザブル極細内視鏡、チェスト株式会社に呼吸機能検査診断プログラム医療機器)、オプション契約等2本(ニプロ株式会社に維持血液透析医療支援プログラム医療機器、東レ・メディカル株式会社に透析装置搭載型AI)です。 ③ 研究開発費レナサイエンスの成長や将来の収益を考えると、上記経営指標である臨床段階にある開発パイプライン数、契約締結パイプライン数、医師主導を含む臨床試験実施数の拡大が望ましい一方、医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。レナサイエンスは、開発シーズを、医師主導治験を含む臨床試験を活用しながら開発し、製薬企業等へライセンスアウトするビジネス・モデルを基本としているため、高額な研究開発費を自社で負担する必要があります。そこで、研究開発費(特に自己資金)は重要な経営指標と考えています。開発パイプライン数及び医師主導臨床研究の実施数は順調に増加しており、全体の研究開発費は2024年3月期23,633万円、2025年3月期13,286万円、2026年3月期20,166万円となっております。これらリスクの高い医師主導治験に対しては、公的研究助成金を積極的に活用することで、研究開発費の自己負担の軽減に努めてきました。その結果、2024年3月期13,317万円、2025年3月期6,194万円、2026年3月期3,629万円の公的資金が獲得でき、自己負担の研究開発費は2024年3月期10,316万円、2025年3月期7,092万円、2026年3月期16,536万円に抑えることができました。2027年3月期において、医薬品では慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、非小細胞肺がんが公的資金を確保できています。医療機器、プログラム医療機器ではディスポーザブル極細内視鏡、維持血液透析医療支援AI、糖尿病医療支援AIが公的資金を確保できています。< 図表15 レナサイエンスの経営指標 > (4)経営環境研究環境バイオベンチャーの取り組む最先端医療研究は、環境変化のスピードが極めて早く、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。医療のあり方もブロックバスターから個別化医療へ大きく変遷しています。重要なことは、最先端の研究、技術、シーズをいち早く取り入れる枠組み、速やかに臨床現場で実証することと考えます。このため、多くの疾患領域に対する最先端の科学技術成果の活用の「場」、医師や研究者とのFace to Faceの交流の「場」、行政や医療産業企業とのオープンイノベーションの「場」が必要であると考え、2022年1月、東北大学に東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx)を開設しました。その結果、血管肉腫や膵臓がんなどの医薬品パイプライン、乳がん病理診断、心臓植込み型デバイス患者における不整脈・心不全発症予測、人工心臓患者における血栓発生予測などのプログラム医療機器パイプラインが立ち上がっています。さらに、日本電気株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、チェスト株式会社、株式会社ハイレックスコーポレーション、株式会社ハイレックスメディカル、ニプロ株式会社、東レ・メディカル株式会社などの契約締結につながっています。さらに、第二のオープンイノベーションラボとして、2023年4月には広島大学に広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を開設しました。その結果、非小細胞肺がん、皮膚血管肉腫、全身性強皮症及び膵臓がん等において複数の第Ⅱ相医師主導治験を実施しているほか、糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器については、それぞれ臨床性能試験を完了しPoCを取得しており、医薬品及びプログラム医療機器の両領域において開発成果の創出が進展しております。また、ノースウェスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本研究室などオープンイノベーション拠点の設置、台北医学大学やサウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)との連携など研究環境の充溢、拡大に努めております。 財務環境レナサイエンスは、2021年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資により総額1,653,616千円の資金調達を行いました。この調達資金を活用して、既存のパイプラインの開発(慢性骨髄性白血病や悪性黒色腫などの医師主導治験の実施)、新規プロジェクトの導入と医師主導治験の実施、AIを用いたプログラム医療機器の開発を実施しました。また、2026年3月期にはHeights Capital Management, Inc.が運用する CVI Investments, Inc.との間で、株式及び新株予約権発行プログラムの設定に係る Equity Program Agreementを締結し、第三者割当によって総額1,903,820千円の調達を実施しました。この調達資金を活用して、がん分野における実用化の加速と適応拡大、抗加齢・長寿の国際共同臨床試験や動物用医薬品(イヌ、ネコ)の臨床試験を実施しています。医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。レナサイエンスは、公的研究資金を活用し、限られた自己資金の中で効率的な研究開発を心がけており、パイプライン数及び医師主導臨床研究の実施数は順調に増加しております。 (5)優先的に対処すべき研究や事業医薬品領域では、「がん」分野での開発を重点領域として実施してきましたが、国際的な規模での事業成長が期待される「抗加齢・長寿分野」での研究並びに事業にも注力しています。 (「がん」の開発方針)「がん」に対しては、国内で複数のがん種に対する治験を実施中です(慢性骨髄性白血病第Ⅲ相試験、悪性黒色腫第Ⅲ相試験、血管肉腫第Ⅱ相試験、肺がん第Ⅱ相試験)。まずは、日本で希少がん(悪性黒色腫、血管肉腫、慢性骨髄性白血病)に対する薬事承認を取得することにより、本医薬品の上市と臨床応用を目指します。悪性黒色腫の第Ⅲ相試験は既に日本で開始しているため(2025年2月18日適時開示)、薬事承認に向けての国外でのブリッジング試験を複数の国の規制当局と協議中です(2025年12月15日適時開示)。血管肉腫に関しては、日本で実施中の第Ⅱ相試験が終了し(2025年12月12日適時開示)、既存治療に比べて極めて良い結果が得られたので(2026年2月10日適時開示)、薬事承認に向けて速やかな第Ⅲ相試験を実施する予定です。並行して、肺がん、膵臓がんなどがん種の適応を拡大し、将来の大きな市場を確保するための第Ⅱ相試験を実施しております(2025年11月26日適時開示、2025年12月16日適時開示)。 (「抗加齢・長寿」の課題と開発方針)「がん」に比べて「抗加齢・長寿」の研究や事業は課題が多いです。「がん」など従来の医薬品開発は、「単一疾患」、「単一標的」、「明確な臨床評価指標(エンドポイント)」を前提としています。一方、「老化」は加齢に伴う生理的変化の延長でもあり、連続的かつ個体差の大きい現象でもあるため、現在の医療保険の制度上は「疾患」とはみなされていません。「老化」を医療保険上の単独の適応症として定義し、一般的な疾患のように明確な診断基準や評価指標で医薬品として開発することは困難です。ですから、事業化にあたっては薬事規制、臨床試験デザイン、保険償還制度、ビジネス・モデルといった様々な課題が存在しています。しかし、近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ[幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去)]が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金も投資されている分野です。老化の病態は単一ではなく、エピジェネティック情報、代謝、炎症、幹細胞機能、免疫などが相互に影響し合い、生体全体の恒常性が崩れた状態です。除去されずに蓄積した「老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカイン(老化関連分泌形質:SASP)を持続的に放出し、周囲の健全な細胞や組織に慢性炎症を引き起こします。これが動脈硬化、線維化、神経変性、代謝異常といったあらゆる老化関連疾患の共通基盤を形成しています。したがって、老化介入には「どの病態を改善するか」ではなく、「生体機能への多面的な介入により、崩れた全体のバランスをどう改善するか」という考え方が重要です。レナサイエンスのPAI-1阻害薬RS5614は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。RS5614のセノリティクス医薬品としての可能性を検討する重要な臨床試験を、XPRIZE Healthspanセミファイナル試験として実施しました(2025年8月18日適時開示)。RS5614を4ヶ月投与することにより、エピゲノム(遺伝子修飾)あるいは遺伝子レベルでの改善が認められました。特筆すべきは、生物学的年齢の2~3歳の若齢化です。タンパクレベルでも、免疫機能、骨・筋肉機能、代謝機能、並びに認知機能の改善など、抗加齢作用に関わる複数のタンパクの改善が認められました。細胞レベルでも、免疫細胞、造血幹細胞の機能回復や若齢化が認められ、さらに全身での酸化ストレスの軽減も確認されました。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されたのみならず、4ヶ月間の短期間の投与にも関わらず、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、広く各種臓器に対して抗老化作用が確認されました(図表16)(2026年5月14日適時開示)。これらの分子、細胞レベルでの変化が、各種臓器の抗老化作用に繋がり、最終的に健康寿命の延伸につながるかどうか、大変興味深いところです。< 図表16 セミファイナル試験結果 > 今回のセミファイナル試験結果及びファイナル試験の計画を取りまとめ、2026年4月にXPRIZE Healthspan評価委員会へ提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)に採択されれば、日・米・サウジアラビア・台湾の大規模な国際共同臨床試験(100~150名規模のプラセボ対照盲検試験)を実施する予定です。本プロジェクトに関して、ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)、台北医学大学(2025年12月15日適時開示)、サウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)(2026年2月9日適時開示)との間で、臨床試験を共同で実施するための基本合意書を締結しています。長寿関連事業(医療用医薬品、OTC医薬品、さらには動物医薬品)は、超高齢化を背景に経済や生活に与える効果も極めて大きな成長分野です。PAI-1阻害薬RS5441の脱毛症治療薬としての実例もあり、レナサイエンスのPAI-1阻害薬の抗加齢・長寿研究をさらに展開する予定です。なお、レナサイエンスのがん及び抗加齢・長寿領域に関連する取材記事は、科学誌『Nature(Digital edition)』、『Nature Biotechnology』、『Nature Reviews Drug Discovery』に掲載されました(2025年12月1日、2026年2月26日開示)。レナサイエンス技術(セノリティクス内服薬)に競合する技術として、幹細胞治療、細胞内成分治療(エクソソーム)、遺伝子治療(エピジェネティック・リプログラミング)などが挙げられます。特に、エピジェネティック・リプログラミングは、米国Life Biosciences社、米国Altos Labsなど20~30億ドルの資金調達を実施して開発を進めているバイオテック企業が注力している分野です。「老化」への治療法の開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業となり得るため、多額の資金が集まっています。2026年1月、米国FDAはLife Biosciencesが開発する「ER-100」の臨床試験開始を許可しました。ER-100は、遺伝子治療によりOSK(OCT4、SOX2、KLF4の3つの転写因子)を導入し、細胞を部分的に初期化(時間を巻き戻す)する方法です(OSKは「山中4因子」から腫瘍化リスクの高いc-Mycを除いたものです)。治験は視神経症という具体的な疾患が対象ですが、「老化」を視野に入れた研究です。一方、レナサイエンスのアプローチは細胞の時間を巻き戻す(エピジェネティック・リプログラミング)ための遺伝子治療ではなく、蓄積した老化細胞を除去(セノリティクス)するための内服薬です。セノリティクスのアプローチをとるバイオテック企業も複数あり、細胞治療(CAR-T)、遺伝子治療、既存の低分子医薬品の適応外使用(ドラッグリパーパシング)など複数モダリティが提案されていますが、レナサイエンスは低分子医薬品(内服薬)で挑戦しています。レナサイエンスのPAI-1阻害薬RS5614は生物製剤や核酸系医薬品ではなく、低コストで大量合成可能な低分子化合物(分子量:424.81、錠剤)です。大量の工業的生産が可能で、安定した品質の医薬品を生産可能で、グローバルな供給が可能です。RS5614は経口投与が可能で、他の生物製剤とは異なり、自宅で投与できます。細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品とは異なり、地理的又は物流上の制約を受けることなく容易に輸送できます。細胞製剤やエクソソームとは異なり、ドナーも必要としません。最も重要な安全性に関しても、細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品に比べて副作用が少ないことはメリットであり、XPRIZE Healthspanのセミファイナル試験でも、高い安全性が確認されました。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。(図表17) < 図表17 RS5614の優位性 >
事業等のリスク
3 【事業等のリスク】レナサイエンスの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。なお、レナサイエンスとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断やレナサイエンスの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。レナサイエンスは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生を全て回避できる保証はありません。また、以下の記載内容はレナサイエンスのリスク全てを網羅するものではありません。レナサイエンスは、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、レナサイエンスへの投資はこれに該当します。また、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在においてレナサイエンスが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。 (1) 医薬品、医療機器及びプログラム医療機器開発の事業全般に係るリスクについてレナサイエンスは、研究の初期段階の探索的研究から承認申請に必要な試験(医薬品の場合は第Ⅲ相臨床試験、プログラム医療機器の場合は臨床性能試験)に至るまで、幅広い段階の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発経験を有しておりますが、研究の初期段階から医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の製造販売の段階に至るまでには、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間に及ぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業、医療機器会社等や、国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。① 収益の不確実性についてレナサイエンスの主たる事業は、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)から承認申請に必要な試験(医薬品の場合は第Ⅲ相臨床試験、プログラム医療機器の場合は臨床性能試験)までをアカデミアや研究機関との共同研究及び医師主導治験などの創薬エコシステムを活用して行い、その後、製薬企業、医療機器会社等に対してレナサイエンスが有する医薬品・医療機器・プログラム医療機器の候補の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンスアウト)を行い、当該製薬企業、医療機器会社等からライセンス収入を得るものです。ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストーン収入(臨床試験の開始や終了時又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストーン)ごとに支払われる収入)、上市後において導出先である製薬会社、医療機器会社等が行う医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の販売に対するロイヤリティ収入等があります。ライセンス契約の締結は、製薬企業、医療機器会社等から、それまでの研究開発で得られた医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の有効性及び安全性、並びに予想される対象患者数や保険償還価格、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価を獲得する必要があります。したがって、製薬企業、医療機器会社等から研究開発成果に対する評価が得られない可能性、研究開発の遅延により想定どおりのタイミングで評価されない可能性、想定どおりの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入をレナサイエンスの想定する規模の金額で契約できない可能性、レナサイエンスが想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性又はライセンス契約に至らない可能性があります。また、導出後も次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績等が得られない可能性、開発途中で競合する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の上市、疾病の治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業、医療機器会社等が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性やライセンス契約解消に至る可能性があります。さらに上市に至った場合においても、保険償還価格が当初の想定を大きく下回ることや、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性がありますが、このような場合には、レナサイエンスの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。マイルストーン収入及びロイヤリティ収入の発生については、導出先製薬企業、医療機器会社等の研究開発の進捗及び医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の発売・販売の状況等に依存するものであることから、営業収益として計上されるまでに長期間を要する可能性があり、また、マイルストーンを達成できない場合、これらの営業収益が計上されない可能性があります。さらに契約一時金収入、マイルストーン収入は継続的な収入ではなく、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発に係る一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入であることから、当該収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。また、上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表した業績予想が大幅に変更される可能性があります。当該リスクへの対応については、パイプラインプロジェクトの数を増やすとともに、複数の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発等経験者、ビジネスディベロプメント経験者を社内外に確保するよう努めております。また、研究開発の開始時から開発の体制・期間・資金、知財、薬事などロードマップを明確にして取り組んでいますが、特に出口の戦略を重視しています。研究開発の初期から導出候補企業と導出条件などを協議しながら、なるべく出口の方針が定まった後に開発を実施しています。さらに、自社シーズを、オープンリソースとして外部研究者に提供し研究いただくことで新たな医療用途を発見し、この中から科学性、医学性、経済性(事業性)の観点から取捨選択し医師主導治験につなげることで、自社シーズの価値向上に努めています。 ② 医薬品、医療機器及びプログラム医療機器開発の不確実性についてレナサイエンスが開発している医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補が上市に至るまでには、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされます。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、導出前であればレナサイエンスが、導出後であれば導出先製薬企業、医療機器会社等が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を中止・終了せざるを得ない状況になる可能性があります。研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性があり、また、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。さらに、ライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされることもあり、その場合ライセンス契約中にマイルストーンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。研究開発を中止・終了せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、レナサイエンスのような規模においては影響が大きく、レナサイエンスの事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発の不確実性を低減するために、試験の設計及び実施においては、外部の開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)及び規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験の立案と実施を行っております。 ③ 法的規制等に係る不確実性についてレナサイエンスが携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、保険償還制度及び医療保険制度並びにその他の関係法規・法令による規制が存在します。非臨床試験においては、医薬品等の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品等の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。レナサイエンスの事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を遵守した治験実施計画を基に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展、市場の動向などにより適宜改定されます。医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発・販売等事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改定される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金の確保が必要となるリスク等があり、レナサイエンスの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、治験の実施や計画立案の前に、可能な限り医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの事前相談を活用して、適切な助言を受けるよう心がけています。 ④ 競合についてレナサイエンスが携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の研究開発がレナサイエンスと同じ疾患領域で先行した場合、レナサイエンスの事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の登場によりレナサイエンスの臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、レナサイエンス事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、レナサイエンスの事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、競合する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発が先行し又は競合品が上市されたことにより、レナサイエンスの医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業、医療機器会社等が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合など、期待された売上が達成できず、想定したロイヤリティが得られない等により、レナサイエンスの事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、①パイプラインプロジェクトを増やし、リスクの軽減を図り、②プロジェクトごとの開発計画を戦略的に策定し、差別化が見込まれるパイプラインの獲得と開発を図るように努めております。 (2) 事業体制について① 少数の事業責任者への依存レナサイエンスの研究開発(基礎研究~非臨床試験)は、国内外の外部研究機関との共同研究に基づいています。また、臨床開発も企業治験ではなく医師主導治験として実施しており、外部医療機関、医薬品開発業務受託会社(CRO)、アカデミア臨床研究機関(ARO)への完全委託によって実施されているため、社内に多くの研究人材は必要ありません。社内業務は経営と管理業務が主体であり、取締役6名、執行役員3名、従業員3名及び平均臨時雇用者1名の小規模組織で対応しており、実務は事業を推進する各部門の責任者に強く依存しています。執行役員には適切な人材を配していますが、人材の流出が生じ、人員確保が順調に進まない場合には、レナサイエンスの事業活動に支障が生じ、レナサイエンスの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。レナサイエンスが取り組む医療分野、特に医薬品開発は、国内外バイオベンチャーや製薬企業との競争が激しく、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になります。そのため、創造的かつ独創的な研究活動を推進し、会社の経営を支える優秀な人材(責任者)の獲得は、レナサイエンスの重要な経営課題でもあります。そこで、年齢や性別に関わらず、研究開発や事業に貢献できる人材や意欲溢れる優秀な人材については積極的に採用しています。 ② 特定人物への依存レナサイエンスはこれまで、創業者であり、多くの社有特許の発明者でもある宮田敏男(現 レナサイエンス代表取締役会長兼社長)を中心として、基礎研究をはじめとする事業を推進してまいりました(同氏は、PAI-1阻害薬物質特許、用途特許及び用法用量特許、ピリドキサミン用途特許及び物質特許、糖尿病治療支援プログラム医療機器の特許並びに維持血液透析医療支援プログラム医療機器の特許の発明者)。レナサイエンス設立の発端は、同氏の研究成果の事業化を目的とするものであり、レナサイエンスの研究開発及び事業活動において重要な役割を有しており、その依存度は極めて高い状況です。レナサイエンスは、今後も同氏による会社経営の執行が必要不可欠であると考えており、何らかの理由により同氏の会社経営の執行が困難となった場合等には、レナサイエンスの事業等に大きな影響を及ぼすことが想定されます。 ③ 情報管理についてレナサイエンスは、情報管理について、情報セキュリティ管理規程、個人情報取扱要領、特定個人情報取扱要領、情報セキュリティ・マニュアルに沿って情報セキュリティ管理責任者が中心となって運用を行っておりますが、レナサイエンスの研究又は開発途上の治験、技術、ノウハウ等、重要な機密情報が流出した場合にはレナサイエンスの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクを低減するため、レナサイエンスは役職員、取引先との間で、守秘義務契約等を定めた契約を締結しております。また、重要な機密情報を含む社内クラウドサーバーへは必要最低限の役職員のみしかアクセスできない様にするなど、厳重な情報管理に努めております。しかし、役職員、取引先等により、これらが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏えいする可能性があり、このような場合にはレナサイエンスの事業に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 知的財産権について① レナサイエンスが保有する知的財産権についてレナサイエンスは研究開発活動において様々な特許等の知的財産権を保有しております。しかし、レナサイエンスの研究開発を超える優れた研究開発が他社によってなされた場合や、レナサイエンスの出願した特許申請が成立しないような場合には、レナサイエンスの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、①競合品の開発状況を随時把握し、プロジェクトの優先順位付けを行い、②パイプラインを増やし、リスクの軽減を図るように努めております。また、出願した特許に対しては、なるべく早期に審査請求し、知財成立によるリスクの軽減を心がけています。事業に重要な知的財産権の有効期間に関しても、レナサイエンスの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、必要なRS5614に関しては、物質特許に加えて、非臨床試験や臨床試験からがんや抗加齢・長寿に関わる複数の用途特許を出願して、知的財産権の有効期間を延長しています。また、RS5441に関してもレナサイエンスが出願済みの物質特許に加えて、導出先のEirion Therapeutics Inc.(エイリオン社)でも用途特許を出願しています。 ② 知的財産に関する訴訟及びクレーム等の対応に係るリスクについて当事業年度末において、レナサイエンスの事業に関連した特許等の知的財産権に関して、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。レナサイエンスは現在、早期の特許出願を優先する方針をとっており、特許出願後において事業展開上の重要性等を考慮しつつ必要な調査等の対応を実施しておりますので、本書提出日現時点においては他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。もとより、レナサイエンスのような研究開発型企業において、この様な知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。今後において、レナサイエンスが第三者との間で法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士との協議のうえ、その内容に応じて対応策を講じていく方針でありますが、法的紛争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合レナサイエンスの事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、顧問弁護士及び特許事務所と連携し訴訟及びクレーム等に迅速に対応する体制としております。 (4) 製造並びに安定供給に関するリスクについてレナサイエンスは、臨床開発のために複数の医師主導治験を実施しています。治験に必要な治験薬は充分な量を前もって確保しておりますが、使用期間(通常は最大3年間)もあり、継続的に製造確保が必要になります。レナサイエンスの外部委託先である製造施設等において、技術的・規制上の問題若しくは自然災害・火災などの要因により生産活動の停滞・遅滞若しくは操業停止などが起こった場合、レナサイエンスの事業に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、現在、レナサイエンスの医薬品パイプラインは低分子化合物かつ製造施設は容易に代替可能であり、原薬及び治験薬製剤製造委託候補施設を複数確保するように努めております。 (5) 業績等に関する事項① マイナスの繰越利益剰余金を計上していることについてレナサイエンスは研究開発型企業であり、ロイヤリティ収入が得られるようになるまでは営業収益が安定せず、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、第18期(2017年3月期)から第25期(2024年3月期)まで連続して当期純損失を計上しており、第26期において当期純利益を計上したものの、第27期に当期純損失を計上しており、第27期末においてマイナスの繰越利益剰余金を計上しております。レナサイエンスは、将来の利益拡大を目指しておりますが、将来において計画どおりに当期純利益を計上できない可能性があります。また、レナサイエンスの事業が計画どおりに進展せず当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。 ② 資金繰りについて特に医薬品の開発期間は基礎研究から上市まで通常20年以上の長期間に及ぶものでもあり、収益に先行して研究開発費が発生しているなどにより、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが生じております。今後も開発の進捗に伴って研究開発資金の需要が予想され、収益確保又は資金調達、資金繰りの状況によっては、レナサイエンスの事業活動等に重大な影響を与える可能性があります。また、2026年3月期にはHeights Capital Management Inc.が運用する CVI Investments Inc.との間で、株式及び新株予約権発行プログラムの設定に係る Equity Program Agreementを締結し、第1回から第4回までの株式発行に係る払込みが完了しております。一方、新株予約権の行使に伴う資金調達に関しては、その行使の進捗状況によっては、必要な資金を十分に確保できない可能性があります。 ③ 税務上の繰越欠損金について本書提出日現在において、レナサイエンスは税務上の繰越欠損金を有しております。しかし、繰越欠損金の繰越期間内に、繰越欠損金の全て又は一部を利用するために十分な課税所得をレナサイエンスが得られるという保証はありません。また、レナサイエンスの業績が順調に推移する結果、繰越欠損金が解消され課税所得控除が受けられなくなった場合、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益及びキャッシュ・フローの計画に影響を与える可能性があります。 (6) 為替変動リスクレナサイエンスは、海外企業とライセンス契約を締結しており、主に外貨建での決済が行われておりますが、レナサイエンスにおいては特段の為替リスクヘッジは行っておりません。そのため、想定以上に為替相場の変動が生じた場合には、レナサイエンスの業績はその影響を受ける可能性があります。 (7) 調達資金の使途について2021年9月の株式上場時の公募増資等により調達した資金については、主に研究開発費に充当し、2026年3月までに計画どおり全額充当しました。また、2026年3月期において、第三者割当による新株式及び新株予約権の発行を組み合わせた資金調達を実施しております。なお、資金需要の発生時期及びその規模は公的研究費の獲得状況、研究開発の進捗等により変動する可能性があり、また、新株予約権の行使の進捗状況によっては想定どおりの資金を確保できない可能性があります。調達資金の使途を変更した場合には、速やかに開示する予定です。 (8) 大株主についてレナサイエンスの代表取締役会長兼社長である宮田敏男及び二親等内の親族の実質議決権所有割合は、当事業年度末日現在で42.33%です。同株主等は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針です。大株主である同株主等の持分比率が低下する場合には、レナサイエンス株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。 (9) ベンチャーキャピタル等のレナサイエンス株式保有比率当事業年度末におけるレナサイエンスの発行済株式のうち、ベンチャーキャピタル(VC)が組成した投資事業有限責任組合が所有している株式の所有割合は0.41%であります。一般に、VCが未公開株式に投資を行う主な目的は、株式上場後の当該株式を売却してキャピタルゲインを得ることであり、VCはレナサイエンスの株式上場後に、それまで保有していた株式の一部又は全部を売却することが想定されます。なお、当該株式売却によっては、短期的な需給バランスの悪化が生じる可能性があり、レナサイエンス株式の市場価格が低下する可能性があります。 (10) 自然災害等の発生について自然災害、事故、重大な感染症の流行等が発生した場合には、リスクマネジメント規程に基づいてリスク低減の措置を講じます。しかし、事業所周辺においてあるいは世界的に大規模な自然災害等が発生した場合にはレナサイエンスの設備等に大きな被害を受け研究開発が遅延する可能性があります。また、感染症の流行等が発生した場合には事業所の一時閉鎖等の事態により研究開発が遅延する可能性があり、その結果、レナサイエンスの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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