モンスターラボ(5255)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


モンスターラボ(5255)の株価チャート モンスターラボ(5255)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 モンスターラボは、持株会社としてモンスターラボグループの経営方針策定及び経営管理を行っています。モンスターラボグループは、モンスターラボ、国内子会社4社、海外子会社15社、関連会社5社で構成され、12の国と地域に展開しています。

 なお、モンスターラボは有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断することとなります。

 

(1)ミッション

 モンスターラボグループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとしております。世界の課題を解決するようなプロダクトやサービス、エコシステムをデジタルパートナーとしてクライアントと共に作り上げると同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を越えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」などの「機会」を提供することで、より良い世界を実現したいと考えております。

 

(2)事業セグメント

 モンスターラボグループは、メイン事業として主に大企業や自治体に対して、事業課題や新規事業のニーズに合わせてデジタルトランスフォーメーション(注1)を支援する「デジタルコンサルティング事業」を展開しております。また、「その他事業」として、RPA(ロボットによる業務自動化)ツール、音楽配信事業等のプロダクト事業を展開しております。デジタルコンサルティング事業はクライアント毎にカスタマイズされたサービスですが、市場の共通課題に対しては、「プロダクト事業」として複数のSaaS型サービス(注2)を提供しており、「その他事業」の大半を占めております。

① デジタルコンサルティング事業

 デジタルコンサルティング事業では、クライアントのデジタル戦略立案から始まり、デザイン、システム開発、さらにデータ解析、プロセス最適化までワンストップでクライアントのデジタルトランスフォーメーションの包括的なサポートを行っております。

 これらの活動を通して、多数のクライアントに対し、AIやAR等(注3、注4)の先端技術を駆使しながら、新規事業、ビジネス変革、業務改善などクライアントの経営課題解決及びビジネスに大きなインパクトのあるデジタルトランスフォーメーションの実現を目指しております。

 デジタルコンサルティング事業の売上は、大多数は準委任契約(クライアントにサービスを提供する人材の時間あたり単価と稼働時間をベースに請求)となっており、プロダクトリリース後も継続的に改善や新規機能の開発を行うことが多いため、継続性の高い事業になっております。

 世界12の国と地域で事業を展開しており、クライアントの所在地である日本やアメリカ、シンガポールなどはレベニューセンター(注5)として営業やコンサルティング、デザインなど上流工程の人材を配置し、一方でエンジニア人口が多く、コスト水準が低い国にデリバリーセンター(注5)として多くのエンジニアを配置することで、コスト競争力を持ちながらスケーラブルにエンジニアの採用、教育及び開発を行っております。デリバリーセンターは各レベニューセンターの時差に対応できるようベトナム、フィリピン、コロンビアなど各地域に分散して構えております。

注:2024年12月末時点。拠点数は子会社のものも含む。

注:APAC=Asia Pacific

注:Palestineの1名はMonstarlab Bangladesh Ltd.に所属しております。

 

② その他事業

 デジタルコンサルティング事業では、個々のクライアントと伴走するパートナーとしてデジタルトランスフォーメーションを推進しておりますが、その他事業の大半を占めるプロダクト事業では、モンスターラボグループが事業主体として、市場の共通課題を解決する複数のSaaS型サービスを展開しております。プロダクトとしては、店舗向けBGMサービスの「モンスター・チャンネル」、中小企業・自治体向けRPAソフトウェアの「RAX」などを展開しております。

 「モンスター・チャンネル」は、パソコン・スマートフォン・タブレットで簡単に始められる店舗向けBGMサービスです。お店などの商用空間に適した音楽チャンネルが1,000以上あり、業種・業態に合った音楽を探すことができます。著作権管理団体と契約しているため面倒な著作権処理も不要で、従来の有線放送の半額以下の料金で利用できることが強みとなっており、飲食店、美容室、小売店、医療施設を中心にシェアを拡大しております。

 「RAX」は主に大規模なシステム導入のハードルが高い中小企業を対象とした、自社開発のRPAソフトウェアです。労働力が不足しがちな小規模企業及び個人事業者に対して、ソフトウェアの提供に加えて、専門のコンサルタントによる業務の見える化や業務効率改善といった包括的なサービスを、導入しやすい価格帯で提供しております。2024年12月末時点の累計アカウント数は、200以上となっております。

 デジタルコンサルティング事業が予算を確保できる大企業向けオーダーメイド型であるのに対して、プロダクト事業はコンサルティング事業の経験を元に、市場の共通課題に対して市場規模や競争環境から成功可能性が高いと判断したものをSaaSプロダクト化しております。その結果、大企業だけでなく中小企業向けにもデジタルサービスの提供が可能となっております。

 デジタルコンサルティング事業及びプロダクト事業の事業系統図は次の通りであります。

 

 

 

 

(3)事業の特徴

 昨今、多くの領域でスタートアップ企業やテック企業が大企業のビジネス領域まで浸食してきており、大企業はデジタルの力で新規事業やビジネスモデルの変革を行うことを余儀なくされておりました。そこに、新型コロナウイルス感染症の流行によるニューノーマルの定着などを背景としてデジタルトランスフォーメーション市場の成長が加速された結果、市場規模は2023年時点で世界で約132兆円、2030年まで年率26.7%で成長し、世界で約692兆円になると見込まれております。(注6)

 

デジタルトランスフォーメーション市場におけるモンスターラボグループのポジショニング(モンスターラボグループによる分析)

 

 広大なDX市場の中でモンスターラボが得意とする領域は「新規サービス開発」や「既存ビジネスの変革」「既存ビジネスの顧客体験変革」といった「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションとなっております。一方、SIer(システムインテグレーションを行う事業者)や総合コンサルティングファームは「コスト削減」や「業務効率化」を主とする業務システムの導入、開発、運用を得意領域としてきました。

 モンスターラボグループが得意とする「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションの領域は「業務システム」領域と大きく異なる、「アジャイル開発」「UXデザイン」と呼ばれる手法が必要なため、SIerや総合コンサルティングファームにとっては市場参入が難しい領域となっていました。そのため、モンスターラボグループとSIerや総合コンサルティングファームとで領域の棲み分けが起こることとなり、モンスターラボグループはデジタルトランスフォーメーションにおいて「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションに強いというユニークなポジショニングを獲得しているとモンスターラボグループは考えております。実際、ビジネス変革や新規サービス開発と業務システムが関連した案件などは、これまで総合コンサルティングファームやSIerと協業をしてきた実績があります。

 

DX市場におけるモンスターラボグループの競争優位性(モンスターラボグループによる分析)

注:Business & Strategy = 全社DX戦略策定、ビジネス変革戦略、新規事業戦略。Experience Design = ビジネス&サービスデザイン、UX/UIデザイン。Technology & Development = AI、AR/VR、IoT等。Data Analytics =データプラットフォーム構築、ビジネスインテリジェンス、事業データ分析

 

 新規事業やビジネス変革、顧客体験変革は、戦略→デザイン→開発→データ分析といった必要プロセスを、個別に、かつ順番に推進していくのではなく、これらの一連のプロセスを連携させ、迅速かつ包括的にPDCAサイクルを回しながら推進するアジャイル型アプローチが適しており、従来の総合コンサルティングファームやSIerに比べて当該アプローチに強みがある点がモンスターラボグループの競争優位性となっていると考えております。

 

モンスターラボグループの具体的競争優位性(モンスターラボグループ分析)

注:モンスターラボグループの視点からの傾向

 

 また、「クライアントの売上を向上させる」イノベーション創出、売上向上型デジタルトランスフォーメーションには、アジャイル型プロセスの他に、イノベーションの共創という点が重要になっております。それは新規ビジネスの共創であり、AI、ARなどの最先端のテクノロジーが重要であるとモンスターラボグループは考えており、これらのスキルセットは、スタートアップ企業やテック企業で求められてきたものになっております。そのため、売上向上型デジタルトランスフォーメーションサービスは、これまで大手コンサルティングファームやSIerではなく、世界各国の比較的小規模のファームが主なサービス提供者となっていました。これに対して、モンスターラボグループは、スタートアップやテック企業と同じようなスキルセットやプロセスを持ちながら、大規模プロジェクトへの対応が可能な大企業が必要とする規模、セキュリティ、品質を担保している稀有な企業となっていると考えております。

 さらに、モンスターラボは、世界の主要都市に拠点を有することで、グローバルで最先端のケーススタディを蓄積することが可能になっており、競合他社と対比するとインターナショナル企業の顧客課題により深く接点を持つという点で優位性を保持していると考えております。

 なお、グローバル展開は、モンスターラボグループのケイパビリティ強化の観点からも大きな意味合いを持っております。世界のDXの進行状況は、地域及び業界によって大きく異なっており、ある地域の先進的なDX事例の知見を別の地域に展開することによって、グループ全体としての顧客提供価値の底上げが可能となります。特に、多くの世界的デジタルコンサルティングファームのホームマーケットである米州市場では、競争激化により、業界特化型DXソリューションが多く生まれております。それらの知見を、モンスターラボグループのホームマーケットであるAPACに展開することでそれら市場において大きな成長を目指すと共に、APACでの大規模プロジェクトの知見をAPAC以外の市場に還流することで、各市場でのプレゼンス強化を目指しております。

 

 

(注)

1.デジタルトランスフォーメーション:2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念。2018年12月に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」にて、デジタルトランスフォーメーションとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だと定義しております。デジタルトランスフォーメーションの呼称が「DX」となります。

2.SaaS:Software as a serviceの略称。2008年1月21日に経済産業省が「SaaS向けSLAガイドライン」において「SaaSとは、インターネットを通して必要なアプリケーション(機能)をユーザが利用できる仕組みであり、利用者は自社でシステムを構築、あるいはアプリケーションソフトを購入・インストールしなくても、インターネットに接続された必要条件を満たすPCがあれば、ブラウザ経由で財務会計や顧客管理等の業務アプリケーションを利用することができる。つまり、自社の財務や顧客データ等も含めて情報システムはすべて“ネットの向こう側”にあり、SaaSサービスの提供者が維持管理を行っている。」と定義しております。

3.AI:Artificial Intelligence(人工知能)。人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指します。AIという言葉が初めて用いられたのは1956年にアメリカのダートマス大学で開催されたダートマス会議で、計算機科学者・認知科学者のジョン・マッカーシー教授によって提案され、一般社団法人 人工知能学会では、AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授の言葉を「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と翻訳して紹介しております。

4.AR:Augmented Reality(拡張現実)。VR(Virtual Reality、仮想現実)としばしば併用されます。2020年2月に経済産業省近畿経済産業局が発表した「ビジネスに効果的なVR/AR/MR活用の手引書・事例集」では、次のように定義されております。「VRとはCGで作られた世界や360度動画等の実写映像を、あたかもその場所に居るかのような没入感で味わうことができる技術を指す。ARは、現実世界に、コンピューターで作った文字や映像等などのデジタル情報を重ね合わせて表示することができる技術を指す。」

5.レベニューセンター、デリバリーセンター:モンスターラボグループでは、主にクライアントと対面して営業及びサービス提供をする拠点を、文字通り売上を上げる拠点ということでレベニューセンターという呼称を使用しており、日本、シンガポール、アメリカ等がレベニューセンターにあたります。この拠点には主に営業、コンサルタント、デザイナーなどクライアントとコミュニケーションをとる人員が主な構成員となっており、反対に、サービスのデリバリーに特化した拠点、主にプログラミングなどクライアントとコミュニケーションをとる必要のない人員が配置されている拠点に対してデリバリーセンターという呼称を使用しております。モンスターラボグループでは、ベトナム、フィリピン、コロンビア等がデリバリーセンターにあたります。

6.データソース:

  Digital Transformation Market Size, Share & Trends Analysis Report By Solution (Analytics, Cloud Computing, Social Media, Mobility), By Service, By Deployment, By Enterprise, By End Use, By Region, And Segment Forecasts, 2022 2030

  USD=150JPYとして算出。

 


有価証券報告書(2023年12月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、モンスターラボグループが判断したものです。

(1)経営方針

 モンスターラボグループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとしております。

 世界の課題を解決するようなプロダクトやサービス、エコシステムをデジタルパートナーとしてクライアントと共に作り上げると同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を越えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」などの「機会」を提供することで、より良い世界を実現したいと考えております。

 

(2)経営戦略

 今後のデジタルコンサルティング事業の中長期的な方向性としてはクライアントの「デジタルトランスフォーメーションのパートナー」になることを目指しております。また、プロダクト事業に関しては既存プロダクトを成長させながら、デジタルコンサルティング事業で成功したプロジェクトにおいて、プロダクトマーケットフィット(注1)や市場規模、競争環境などを勘案した上で市場の共通課題を解決できると判断すれば新たなプロダクトの開発を行っていく予定です。

 

 今後の経営戦略の基本方針は、①大口顧客育成によるオーガニック成長、②成長の源泉地域におけるM&A、③高成長を支える人材及びオペレーション強化、の3つの柱で構成されております。

 

 

①大口顧客育成によるオーガニック成長

 クライアントのコア事業の顧客体験やビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーションの需要が大企業を中心に高まっております。具体的には、デジタルビジネスのコンサルティング、ユーザーエクスペリエンスの設計、テック企業やスタートアップに伍する開発チームの組成及びプロダクト開発、事業成長のサポート、データ設計及び分析、組織設計や人材育成、コア事業のデジタルトランスフォーメーションによってできる他事業のデジタルトランスフォーメーションや業務プロセスのデジタルトランスフォーメーション等と多種多様かつ連続的な需要が想定されます。したがって、一度クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーションに関わることができれば、当該クライアントからデジタルトランスフォーメーションの依頼を継続的に受けることが可能となり、1顧客からの売上が継続的に上昇していくことが期待できます。この、1顧客からの売上の拡大成長のモデルを再現性高く複数クライアントに展開していくことを目指しております。

 クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーション及び他事業や業務プロセスのデジタルトランスフォーメーションを担うにあたり、デジタルコンサルティングやデータ分析、チェンジマネジメント(注2)、人材育成など、クライアントの真のデジタルトランスフォーメーションパートナーになるべくサービスラインを拡大、強化していく予定です。特に、従来のモンスターラボグループの強みである新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革の領域を基盤として、データ領域やそれらに関連する基盤システム領域を強化することで、よりクライアントの包括的なデジタルトランスフォーメーションを実現していきます。さらに、モンスターラボグループの注力領域(テクノロジー・メディア・テレコム、金融、ライフサイエンス等)に関して、グローバルのプロジェクト経験からもたらされる社内知見や、独自市場調査からの知見を集積することで、サービス高度化による単価アップを継続的に進め、もって継続的かつ健全な大口顧客育成を実現したいと考えております。

 これらの経営戦略の進捗状況を適切に管理するために、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上5,000万円以上及び1億円以上の顧客数、年間売上5,000万円以上及び1億円以上の顧客群からの売上成長率を指標として管理しております。

 

②成長の源泉地域におけるM&A

 モンスターラボグループは、グローバル戦略において、APAC及び中東地域を「成長の源泉」地域と位置づけております。成長の源泉地域で高い成長率を実現するためには、モンスターラボグループの強みである新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革に関する領域のサービス高度化に加えて、データ領域や基盤システム領域等のケイパビリティ増強も不可欠と考えております。これらをスピーディーに実現するためにも、オーガニックでの人材獲得に加え、M&Aを積極的に行っていく方針です。

 

③高成長を支える人材及びオペレーション強化

 人員採用、サービスライン拡大、M&A等の施策をグローバルで展開するにあたり、クライアントへのサービスレベルを高く保つ必要があります。そのため、グローバルコンサルティングチームやグローバルデザインチーム、グローバルテックチーム等の機能軸のチームを編成しており、グローバルレベルでの人材育成やサービス提供のプロセスの統一やベストプラクティスの共有などにさらなる投資を行うことで、高付加価値人材の育成及びオペレーショナルエクセレンスの実現を図ってまいります。

 また、このグローバルでのオペレーショナルエクセレンスの実現はファイナンスや総務などのグループ管理部門でも行っており、低コスト国にバックオフィス人員を配置しながらも高いクオリティでグループ管理を行う体制を進めており、将来的なコスト削減効果を見込んでおります。

 これらのグローバルチームでのオペレーショナルエクセレンスの実現は、サービス提供により世界やクライアントに貢献するだけでなく、新興国での雇用や人材育成、産業の発展につながる、モンスターラボグループのミッションを達成するものであると考えております。

 

グローバルで協働している現行活動例

(注1)プロダクトマーケットフィット:提供しているプロダクトやサービスが顧客が満足する形で顧客の課題を解決し、市場にフィットしている状態のこと。

(注2)チェンジマネジメント:組織において、組織体制や業務、文化など様々な事柄を変革することを推進、加速させ、経営を成功に導くというマネジメントの手法。

 

(3)経営環境

 世界のデジタルトランスフォーメーション市場は2023年時点で約132兆円という巨大市場でありながら、2030年まで年率26.7%で成長し、約692兆円の市場になるとされております(上記「3 事業の内容 (注)6」参照)。一方、日本の人口は2008年をピークに今後100年で約4,300万人にまで減少していくというデータ(注1)も出ており、2030年には約79万人のIT人材が不足すると経済産業省が発表しております(注2)。この様に、デジタルトランスフォーメーションのニーズが高まる一方、デジタルトランスフォーメーションの担い手が不足するという環境に日本を含め多くの先進国が置かれており(注3)、デジタルトランスフォーメーションに関連するサービスへのニーズは今後も底堅く推移するものと考えております。

 特に、モンスターラボグループが得意とする領域である、新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革に関する領域は、デジタルをいかに活用することで差別化できるかが競争力(市場シェアや価格プレミアム等)に直結するものと考えております。そのため、新たなテクノロジーをどう取り入れるか、いかに優れたUXやUIをデザインできるのか、それをどう一連のプロセスに組み込むことができるのか、といった専門的サービスに対するニーズは、今後も一層高まっていくものと予想しております。

 デジタルトランスフォーメーション市場は、クライアントの属する業界、成長ステージ、競争上のポジション等に応じて求められるサービスニーズが大きく異なるため、同様の特徴を有するシステムインテグレーションやコンサルティング市場と同様、極めて細分化された競争環境であると捉えております。そのため、地域やサービスによって、多くの会社と競合することになる一方、少数の大企業による寡占が生じにくい市場であることから、モンスターラボグループの強み(上記「3 事業の内容 (3)事業の特徴」参照)を強化していくことで、高い成長率を今後も維持できるものと考えております。

(注1)データソース:内閣府“選択する未来-人口推計から見えてくる未来像–“

(注2)データソース:経済産業省“IT人材需給に関する調査”

(注3)データソース:Capgemini Digital Transformation Institute “The Digital Talent Gap”

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 モンスターラボグループは高い粗利率を維持した売上成長を重視して経営を行っております。

 モンスターラボグループのメイン事業であるデジタルコンサルティング事業において、クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーションをパートナーとして担うことで、同一クライアントからの売上が年々継続的に上昇することが重要であり、クライアントに対して提供している価値を図るものであると考えております。したがって、売上成長において、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。

 また、売上成長の中、粗利率を維持することは、高クオリティのサービスをクライアントに提供できているという指標となると同時に、財務的観点では営業利益率の上昇に大きく寄与すると考えております。

 デジタルコンサルティング事業の販管費については、売上が成長する一方で、グループ内シェアードサービス化などによりグローバル経営効率が上がることで、売上に占める販管費率が年々低減していくことにつながり、売上成長率と粗利率を維持することで年々営業利益率が増加するという構造を目指しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1.人材獲得競争

 昨今のデジタルトランスフォーメーション市場の成長は、人材獲得競争を熾烈なものにしています。モンスターラボのビジネスは売上の成長のために優秀な人材の獲得が至上命題となっております。モンスターラボは、以下に記載するモンスターラボの強みを生かした取り組みにより、優秀な人材の獲得を目指しております。

(ⅰ)人材獲得における競争優位性の確立

 モンスターラボの求めるコンサルタントやデザイナー、エンジニアの採用はスタートアップ企業からテック企業、コンサルティングファームなど様々な企業と競合します。

 モンスターラボは採用における以下の点において採用の競争優位性を有していると考えております。

・大手企業のコア事業や新規事業に企画から開発、グロースまで一貫して複数関わることができる(事業会社であれば、多くの場合一つのプロダクトにしか関われない)

・最先端の技術や新規領域に関わる案件が大半を占めるのでスキルアップの機会が多い(コンサルティングファームやSIerでは依然として業務システムの導入などの案件が大半を占める)

・ほぼ全ての案件でグローバルなチームを組成するため、グローバルな環境で働くことができる(コンサルティングファームやSIer、テック企業などほとんどの企業は国内で完結したチームでプロジェクトを行うことが多い)

・スタートアップ企業やテック企業の様な、自由で多様なカルチャーで働くことができる

(コンサルティングファームやSIerや事業会社は保守的なカルチャーである企業が多い)

 結果、幅広い業種から人材採用することで、基幹システム連携のノウハウや業界知見などの獲得にも繋がっております。

 

(ⅱ)19の国と地域での採用によるスケーラブルかつスピーディーな採用

 モンスターラボは19の国と地域、33都市で展開しているため、各国に採用担当を配置し、最適な人材を最適な場所でスピーディーに採用することに取り組んでいます。拠点の世界展開が世界中のタレントプールへのアクセスを可能としております。

 

(ⅲ)大学との連携

 より優秀な学生を獲得するため、ベトナムのハノイ工科大学などの大学と連携し、毎年インターン生を受け入れ、その中から優秀だと判断した学生の採用を行っております。

 

(ⅳ)M&A

 オーガニックでの採用に加えて、積極的にM&Aを行うことにより、スピーディーかつスケーラブルな人員獲得に取り組んでいます。M&A対象企業に関しては、自社でのM&A対象企業のソーシングを行っており、1,000社以上のリストを社内で保有しております。また、これまで10社以上のM&A及びPMIを内部で行ってきたため、ソーシングリストの全社戦略視点での絞り込み、ターゲットとの戦略的関係性の構築、デューデリジェンス、交渉・妥結という、M&Aに関する一連のプロセスを自社で確立しており、M&Aマーケットにおいてモンスターラボの競争優位性となっています。

 

(ⅴ)パートナー企業やフリーランサーとの協業

 人材確保の緊急度が高い場合は、グローバルでパートナー企業やフリーランサーのリストを共有しており、パートナー企業やフリーランサーと協業することで対応しております。

 

2.M&AにおけるPMI

 M&A後のPMIについては、グローバルで営業・マーケティング、コンサルティング、デザイン、開発など機能軸のチームを組成しており、戦略やプロセス、トレーニングを統一することでグローバルでのオペレーショナルエクセレンスの実現を実行しています。今後も、モンスターラボのこれまでのPMIのノウハウを生かし、M&AにおけるPMIに取り組んでまいります。

(注) PMIはPost Merger Integrationの略称で、M&A成立後の経営統合プロセスを指しております。

 

3.営業利益の創出及び営業利益率の改善並びに純利益率の改善

 モンスターラボグループはこれまで売上成長と粗利率を最重要KPIとして経営を行ってきております。売上収益については2016年から過去6年間で40%のCAGR(注)を達成しており、拠点数は2023年12月末時点では19の国と地域まで拡大いたしました。この拡大に伴い、拠点管理、新規拠点開発コストのほか、迅速な意思決定とマネジメント及びオペレーションの最適化を実現するグループ経営チームの組成やグループ全体の統一基盤システムへの投資が先行し、販管費が高い構造になり営業利益を圧迫してきました。

 しかしながら、直近では成長のための先行投資が完了し、今後は売上成長率に対する販管費の増加率が低くなることで、売上成長に伴って営業利益率が改善していくことを見込んでおります。さらに、純利益につきましても、先行投資を行っていた赤字拠点を黒字に転換していくことにより、法人税等負担率が連結全体として下がることから、純利益率の改善を見込んでおります。また、以下の取り組みによって、営業利益の創出及び営業利益率の改善並びに純利益率の改善を図ってまいります。

(注) CAGRとは、“Compound Annual Growth Rate”の略で、企業の複数年にわたる成長率から1年当たりの幾何平均を求めたものです。

(注) 記載の数値は過去の実績・状況であり、将来の成長性を保証するものではありません。

 

デジタルコンサルティング事業の地域別業績推移及びモンスターラボグループ連結業績推移

                     (単位:百万円)

 

2023年12月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

APAC

売上収益

1,913

1,694

1,741

1,806

売上総利益

570

583

603

709

構造改革費用を除いた営業利益

65

22

117

434

当期利益

38

221

△44

△44

EMEA

売上収益

1,367

1,137

1,349

1,192

売上総利益

352

130

△9

△51

構造改革費用を除いた営業利益

△89

△629

△394

△486

当期利益

△141

△46

△888

△1,332

AMER

売上収益

233

190

153

134

売上総利益

89

41

△4

△32

構造改革費用を除いた営業利益

△47

△48

△127

△83

当期利益

△53

△49

△179

△160

連結

売上収益

3,638

3,121

3,350

3,236

売上総利益

1,084

828

731

695

構造改革費用を除いた営業利益

353

△822

△1,025

△562

親会社の所有者に帰属する当期利益

197

△189

△1,098

△1,264

 (注) APACとは、日本国内及びアジア・パシフィック地域を指しております。

 (注) EMEAとは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ地域を指しております。

 (注) AMERとは、北米、中米及び南米地域を指しております。

 (注) APAC、EMEA、AMERの業績数値の合計値は、その他事業を含まないこと及び本社費用(株式会社モンスターラボホールディングス・Monstarlab Enterprise Solutions Ltd.)、連結修正仕訳を配賦していないことから、連結業績数値と一致しておりません。

 

(ⅰ)販管費のモニタリング

 売上に対する販管費率に関しては、戦略的コスト(営業&マーケティング費用、育成及びR&D費用)と、運用コスト(経営陣の人件費やバックオフィス人件費、グローバルチームの人件費など戦略的コスト以外の販管費)という2つの大項目にわけて管理しております。

 戦略的コストである営業&マーケティング、育成及びR&D費用は売上に対する比率がある程度一定の比率で推移する様に管理し、運用コストは先行投資が完了しており売上成長率よりも低い増加率で年々増加するため、売上に対する比率が年々減少する様に管理しております。

 

(ⅱ)グローバルシェアードサービス

 経理や人事などの管理部門機能に関しては、高コスト地域には管理部門の戦略や方向性を決める人材のみを配置し、オペレーションチーム機能は低コスト地域に配置することで、グループでの管理コストの低減を目指した組織を構築しております。

 具体的にはバングラディシュに本社直轄のMonstarlab Enterprise Solutions Ltd.を設立し、グループの経理業務をまとめて行って、グループの経理業務のコスト及びオペレーションの効率化を行っております。

 

4.新たな技術領域のスキル獲得

 IT業界は常に新しい技術が生まれ続ける上、クライアントのデジタルトランスフォーメーションのニーズも多様化していることから、モンスターラボも常に新しい技術やこれまでモンスターラボが強みとしていなかった技術にキャッチアップしていく必要があります。近年はAI、data、IoTなどのニーズが増えてきておりますが、以下の取り組みによって、新たな技術領域のスキル獲得を目指してまいります。

(ⅰ)グローバルCTOチームによるR&D及び教育

 グローバルでCTOチームを組織しており、市場のトレンド、クライアントのニーズを勘案し、必要な技術を特定し、グローバルレベルでR&Dや教育などを実行しております。

(注) R&DはResearch and Developmentの略称で研究開発活動を指しております。

 

(ⅱ)グローバルで最適な場所での採用及び拠点設立

 技術によっては、ある地域にハイスキルな人材が集まっていることがあります。そういった場合は、国や都市を限定して採用や拠点設立を行います。

 

(ⅲ)M&A

 クライアントのニーズが高く、スケーラブルなチームが必要な技術領域に関しては積極的にM&Aを行うことで技術の獲得を行っています。

 

5.デリバリーセンターのコスト上昇

 モンスターラボはベトナムやフィリピン、バングラデシュ、チェコ、ウクライナ、コロンビアといった国にデリバリーセンターを抱えております。現在、これらの国のインフレによる賃金等のコスト上昇が起こっており、この上昇は長期化すると考えております。

 過去においては、レベニューセンターにおいてインフレに応じてマーケット全体が単価を上昇させるということが起こっており、モンスターラボグループもマーケット同様インフレ上昇に応じて販売単価を上昇させることで対応してまいりました。そのため、デリバリーセンターのコスト上昇についても販売単価の上昇により対処していく方針です。

 

6.情報管理体制の更なる強化

 モンスターラボグループでは、国内外問わず多様な事業者様との案件を通じ、機微な情報を扱う事業内容であることを鑑み、情報セキュリティの国際規格であるISO/IEC 27001:2013の認証を取得しています。19の国と地域に事業展開、グローバル市場における多言語対応案件の増加と共に、より多様な顧客へのサービス提供の機会拡大が予測されます。情報資産の漏洩や不正アクセスの脅威に対し、業界や国境を問わず対策強化が求められる今、スピード感を持ってグローバル市場を広げているモンスターラボにとっても、対策の強化は最優先課題であり責務であると捉え、この度ISMS認証取得の運びとなりました。

 ISO/IEC 27001認証取得により、情報リスクの低減や回避、業務効率の改善や組織体制の強化、海外企業を含む取引要件の達成等の効果が見込まれます。今後もより一層、万一の緊急事態に際した対処を含む情報管理体制の維持、改善等のリスクマネジメントの実現により、組織内外両面の安心・安全の確保・提供に努めてまいります。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 モンスターラボグループの事業その他に関するリスクとして、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。モンスターラボグループでは、これらのリスクを把握し、発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてモンスターラボグループが判断したものであります。

(1)事業環境に関わるリスクについて

① デジタルトランスフォーメーション市場について

 デジタルトランスフォーメーション市場は今後高い成長率で成長すると予測されるものの、モンスターラボグループの予想を上回るほどの景気悪化や経済情勢の変化に伴い、企業のデジタルトランスフォーメーションへの投資が抑制される等、事業環境が悪化した場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

 モンスターラボグループは、新規事業や顧客体験の変革、ビジネスモデルの変革などクライアントの売上向上に関わる部分のデジタルトランスフォーメーションに強みを持ち、さらにグローバルでスケーラブルなサービスが提供できるというユニークなポジショニングを作り上げてきました。

 しかしながら、モンスターラボグループを取り巻く市場の競争環境が激化し、コスト面や技術力等で競合他社に対し、競争優位性を確保することが困難となる場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容に関わるリスクについて

① 人材の確保について

 モンスターラボグループは、デジタルトランスフォーメーションを担う人材の確保が重要な事業となっております。そのため人材採用やM&Aといった手段でグローバルに人材を確保できるよう取り組んでおります。しかしながら、モンスターラボの想定を超える人材市場の逼迫や何かしらの組織的要因により人材が確保できなくなった場合、モンスターラボグループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 かかるリスクに対し、モンスターラボグループでは人材育成プログラムの強化、人事評価の適正性の確保、ワークライフバランスの実現等により、優秀な人材の確保・育成及び流出防止に努めております。

 

② 外注先について

 モンスターラボグループは、自社の人材の確保及び育成に注力していますが、一方でプロジェクトを成功させるためには、プロジェクトの各局面に応じてタイムリーに適切な外注先を確保することも必要と考えています。そのため、パートナー・外注先との関係を強化し、柔軟に事業規模の拡大が図れるような仕組み作りに取り組んでいます。しかしながら、プロジェクトに対するパートナー・外注先の関与割合が高まった場合には、顧客が要求する品質水準に達するまでに、契約時点では予見不能な追加コストが発生する可能性があるほか、モンスターラボグループの品質水準を満たすパートナー・外注先を選定できない可能性や、パートナー・外注先の経営不振等によりプロジェクトが遅延し又は遂行できなくなったり、パートナー・外注先の提供するサービスの瑕疵によりモンスターラボが顧客に対して責任を負担することとなったものの当該パートナー・外注先からのモンスターラボの損害の回復が困難となったりする可能性があります。

 かかるリスクに対し、モンスターラボグループでは外注先に委託する比率を低減するほか、国内・海外拠点のリソースをグローバルで管理するチームを組成し、外注先の選定について与信等も含めて十分な検討を行っております。さらに、プロジェクトの遅延や外注先の納品物の品質水準に懸念が生じる可能性がある場合には、早い段階で顧客に相談して調整を図ることで、リスクの低減に努めております。しかしながら、これらの取り組みによってもリスクを回避できない場合、プロジェクト業績の採算の低下等により、モンスターラボグループの事業展開、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

③ 開発プロジェクトの採算性について

 モンスターラボグループでは、プロジェクト管理者が品質・納期・コスト・リスク等の管理を行うとともに、プロジェクト管理システム等で工期や費用の費消の状況をモニタリングしております。しかしながら、システム開発においては、契約の受注時に採算性が見込まれるプロジェクトであっても、開発中の大幅な仕様変更等が発生し、作業工数が当初の見積り以上に増加することにより、最終的に案件が不採算化することがあります。また、長期のプロジェクトは環境や技術の変化に応じた諸要件の変更が生ずる可能性があると考えられます。

 かかるリスクに対して、モンスターラボグループではプロジェクトのフェーズを顧客と合意の上で細分化し、各フェーズにおいて追加の対応やスケジュールの調整などの必要性を顧客と都度整理しております。また、追加の見積等が発生する可能性が見えた段階で顧客ときめ細かいコミュニケーションを取ることにより、不採算化のリスク低減に努めております。しかしながら、突発的で大幅な仕様変更や諸要件の変更あるいは品質上のトラブルが発生した場合、プロジェクトの採算の低下等によりモンスターラボグループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新等について

 IT業界では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に速く、それに伴い、常に新しい技術やサービスが生み出されております。モンスターラボグループのデジタルコンサルティング事業においては技術力が競争力の源泉であるため、技術革新への対応が遅れることはモンスターラボグループにとって重大なリスクになると考えております。従いまして、技術革新に迅速に対応できるよう、グローバルで優秀なエンジニアを確保し、世界の各地域ごとの市場動向を注視し情報を共有することやクライアントのニーズや他社状況を把握することで技術革新への対応を講じることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。

 しかしながら、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、モンスターラボグループのサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合には、新規受注の減少や既存顧客の離反を招来し、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 売掛債権等の貸倒れについて

 モンスターラボグループは、受注時には信用リスクの回避のために与信枠を設定し、かつ貸倒れリスクに対して適正な会計処理を行っていますが、景気の悪化等によりモンスターラボグループが計上している貸倒引当金を上回る予想し得ない貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、モンスターラボグループの今後の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 海外での事業展開について

 モンスターラボグループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東に事業拠点を設置し、事業を展開しております。海外での事業展開において適用を受ける関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、並びに解釈の相違、政治経済情勢・外交関係の変化、法令・規制・商慣習の実務上の取扱いの変更、人件費の上昇、著しい為替レートの変動等が発生した場合や、一般的に売掛債権の回収期間が長期となることなど日本との商習慣との違いから生じる取引先等との潜在的リスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 かかるリスクへの対応として、モンスターラボグループでは海外で事業展開する各子会社と本社(日本)との連携を通じてグローバルな政治・経済情勢や各国法規制動向等を定常的に把握しております。また、地域毎に弁護士等の専門家と連携し、モンスターラボの事業運営に影響を及ぼすリスクが顕在化した場合には、対応策を早急に講じることができる体制を整えています。為替レートの変動リスクについては、海外拠点において日本から包括的に外貨建て預金残高の調整を行い、海外子会社でも必要に応じて外貨建て預金残高を増減させることにより、為替変動リスクの低減に努めております。また、モンスターラボグループは収益を実現する拠点及び原価の発生する拠点が世界各国に分散していることから、為替変動の影響を自然とヘッジできる収益構造となっております。インフレに関連した人件費の上昇につきましては、顧客へ理解を求めつつ、同時に海外拠点の従業員のスキル向上も推進することで、顧客が売価上昇の要因を許容しやすくなるよう努め、売価上昇を実現することで収益性を維持しております。

 

⑦ 自然災害や事故、新型コロナウイルス感染症等について

 モンスターラボグループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東において事業を展開しており、拠点がある国において様々な自然災害、伝染病、テロ、戦争、電力・輸送・通信等のインフラの停止や遅延等の影響を受ける可能性があります。モンスターラボグループでは地域毎に想定されるこれら事象に対して、各拠点との月次の報告会議を通じて、現地情勢を迅速に把握し対応策を早急に検討できる体制を整えているほか、各拠点の関係部門と常に連携し、情報の錯綜を防ぐ有事発生の際のレポートラインの強化に努めております。また、状況によっては事業継続計画(BCP)を検討し、情勢の変化に応じて適宜見直しを行っております。しかしながら、モンスターラボグループが甚大な人的または物的被害を受けた場合には、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染症等の感染症拡大によるリスクについては、モンスターラボグループはリモートワーク環境下においてもオンラインでサービス提供できる体制・ノウハウを構築しており、サービス提供への影響の最小化を図っています。今後も、感染の状況等を注視しながら事業運営を行っていきますが、感染拡大の長期化により経済活動が停滞した場合には、顧客企業のIT投資の抑制によるプロジェクト数の減少やプロジェクト規模の縮小を招き、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3)事業運営体制に関わるリスクについて

① 特定人物への依存について

 モンスターラボグループの代表取締役社長である鮄川宏樹は、創業以来モンスターラボグループの事業に深く関与しており、また、モンスターラボ事業に関する豊富な経験と知識を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して極めて重要な役割を担っております。モンスターラボグループは、特定の人物に依存しない経営体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏のモンスターラボグループにおける業務執行が困難になった場合、モンスターラボグループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 訴訟等の可能性について

 モンスターラボグループは、国内外に事業を展開しており、国内外の法令の適用を受けております。それら法令を遵守することに努めていますが、将来においてモンスターラボグループを構成する企業及びその役職員の法令違反等の有無に関わらず、顧客や第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。モンスターラボグループに対して訴訟が提起された場合には、その訴訟の内容及び結果によっては、損害賠償責任の負担その他多大な訴訟対応費用や企業ブランドイメージの悪化等により、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 かかるリスクについて、モンスターラボグループではコンプライアンス行動指針を定めたコンプライアンス規程を制定しております。さらに、コンプライアンス委員会を設置し、社内研修及び教育活動を通じて、各拠点の従業員1人1人が法律や社内規程等で決められたことを守り、かつ社会の常識に従って行動するよう周知徹底を図ることで、法令違反等の発生リスクの低減に努めています。また、拠点がある国において現地弁護士と契約して法務的な確認を都度実施することで、リスクの顕在化を未然に防ぐことに努めております。

 

(4)法的規制及び知的財産等に関するリスクについて

① 知的財産について

 モンスターラボグループは、事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう、常に注意を払うとともに、必要に応じてモンスターラボグループの知的財産権の登録を申請することで、当該リスクの回避を図っています。しかしながら、モンスターラボグループの認識していない第三者の知的財産権が既に成立している可能性やモンスターラボグループの事業分野で新たに第三者の知的財産権が成立する可能性があること等から、モンスターラボグループによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性があり、その第三者より、損害賠償請求、使用差止請求及びロイヤリティの支払い要求等が発生した場合には、モンスターラボグループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報セキュリティについて

 モンスターラボグループでは、事業遂行にあたり、顧客の企業情報や顧客が保有する個人情報等、様々な機密情報に接する機会があります。万が一、当該機密情報が外部に漏洩した場合には、モンスターラボグループの信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、モンスターラボグループの経営成績や財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 かかるリスクについて、当該機密情報が外部漏洩のないよう従業員等と秘密保持契約を締結するとともに、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報システム管理規程を整備するとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、情報の適正な取扱いと厳格な管理を的確に行うための対策を講じております。さらに、リスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外拠点のセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威にたいしてリスク管理とセキュリティ施策を行っております。また、従業員教育を通じて情報セキュリティへの意識向上を促すことやグループ内をグローバルに横断するセキュリティ委員会の設置を通じて、セキュリティインシデントの低減に努めると共にリスクを網羅的に把握できる仕組みの構築に取り組んでおります。

 

(5)その他

① M&A等の投融資に関するリスクについて

 モンスターラボグループでは、今後の事業拡大の過程において、サービスラインの強化、グローバル展開の加速及び新たな事業領域への展開等を目的として、出資、M&A等の投融資を実施する場合があります。投融資については、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言も得ながら緻密にデューディリジェンス(適正価値精査)を実施し、投資リスクを十分に検討しております。しかしながら、事業環境や競合状況の変化等に伴ってモンスターラボグループが期待する利益成長やシナジー効果が当初の想定どおりに実現できない可能性があり、これが顕在化した場合には、モンスターラボグループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生タイミングの予想は困難でありますが、定量的かつ明確なKPIの設定及びそれに基づく定期的なモニタリングを通じ、最重要会議体にて適宜報告・議論を行う体制をとることにより、リスクに備えております。また、モンスターラボグループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、モンスターラボグループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。

 なお、企業買収に伴い発生した相当額ののれんについて減損発生の兆候が識別された際は、適切な測定手続きを実施して、適正に財務諸表に反映する体制を構築しております。業務執行と監督の体制は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、リスクが顕在化したときの影響額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 9.のれん及び無形資産、11.非金融資産の減損」をご参照ください。

 また、投融資を計画する場合において、適切な対象会社が発掘できない際には、事業成長を視野に入れた出資、M&A等が実施できないことが想定され、事業成長に悪影響を与える可能性があります。

 

② のれんについて

 モンスターラボグループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれんを計上しております。当該のれんにつきまして、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られない場合、減損損失が発生し、モンスターラボグループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。リスクの発生時期、対策、規模等については上記「① M&A等の投融資に関するリスクについて」をご参照ください。

 

③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 モンスターラボグループでは、取締役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。2023年12月末時点における新株予約権による潜在株式数は3,327,500株であり、発行済株式総数34,326,950株の9.69%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主の保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。

 

④ 過年度の経営成績及び税務上の繰越欠損金について

 モンスターラボグループは、過年度を含め当期純損失を計上しているため、当事業年度末において税務上の繰越欠損金が1,169,172千円(国内拠点)存在しております。一般的には、繰越欠損金を課税所得から控除することにより、税額を減額することができます。しかし、今後の税制改正の内容によっては、納税額を減額できない可能性があります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、モンスターラボグループの経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。

 

⑤ 配当政策について

 モンスターラボは、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としています。しかしながら、本書提出日現在では事業の成長段階にあることから財務体質の強化及び事業拡大のための内部留保の充実を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。このことから、創業以来配当を実施しておらず、内部留保資金につきましては、財務体質の強化及び事業拡大のための財源として利用していく予定です。

 なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。なお、モンスターラボは、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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