ヒトトヒトホールディングスグループは、ヒトトヒトホールディングス及び連結子会社5社(ヒトトヒト(株)、ヒトトヒトキャリアライズ(株)、(株)エース警備保障、(株)エースガード、(株)ノティオ)の計6社で構成されております。
ヒトトヒトホールディングスグループは人財サービス事業の単一セグメントとなりますが、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの3つの分野を主要な事業としております。
それぞれの事業の特徴は以下のとおりです。
(1) イベントマネジメント事業
当事業は、野球やゴルフ、サッカー、バスケットボールなど不特定多数の観客や参加者が集まるイベントの安全を確保する業務を行っております。
当事業は、ヒトトヒトホールディングスグループの祖業である明治神宮野球場での業務に始まります。当初は試合後の清掃から始まって次第にチケット確認や座席への案内、グラウンド整備を行い、警備業の認定を受けて警備業務も実施するようになり、飲食店舗運営やファンクラブ運営にまで幅を広げております。現在は明治神宮野球場に加えて横浜スタジアム、楽天モバイルパーク宮城、みずほPayPayドーム福岡、阪神甲子園球場、京セラドーム大阪、ベルーナドーム、及び北海道ボールパークFビレッジと、プロ野球12球団中8球団の本拠地球場にて各種の業務を実施するまでに至っております。(注)1
ゴルフ競技においては、女子ツアーを中心に警備業務の一部受注から始まり、現在は警備のみならず観客の輸送業務や案内整理業務、更に大会開催前の地元説明会や臨時駐車場の確保、バス輸送体制の整備、警察への説明と対応等多岐にわたる業務を行うことで、2025年3月末現在において国内女子JLPGAツアー37大会中15大会をはじめ、その他女子や男子、シニア等合わせて25大会の運営支援を行うまでに成長しております。
サッカーについては、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)発足翌年の1994年より関与しており、現在は7チームに対して警備や整理案内、その他の業務を提供しております。またバスケットボールについては、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)発足4年目となる2019年-2020年シーズンより関与しており、現在は8チームに対して警備や整理案内、その他の業務を提供しております。(注)1
その他にはマラソンや花火大会、音楽ライブ・コンサートなど季節性・一過性のイベントに加え、近年プロリーグ化が進展するラグビーや卓球などでも、野球やゴルフで培った実績と蓄積された運営ノウハウを顧客に評価され、運営支援の数を増やしております。加えて観客数増加やグッズ売上増等を図るためのマーケティング調査サービスやイベント装飾物の調達・設営サービスも提供しております。
上記の各スポーツ・イベントは不定期に開催されるため、繁閑の差が大きく人員確保が困難という点が共通していますが、ヒトトヒトホールディングスグループは学生を中心とした人財プール(アルバイトスタッフ)を常時一万人近く抱え、協力会社を含めて必要な人員を適宜供給できる人財インフラともいえる体制とそれら人員を統括する現場リーダーのマネジメント力を備えております。この人財インフラを提供することで、主催者がスタッフ人財を流動化しイベント企画等の高付加価値業務に集中できるようなサポートを行っています。全国規模のイベントに柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築しており、イベントが多いシーズンにおいても、グループ横断の連携により安定した人員供給と運営品質を実現しています。このような柔軟な対応力がヒトトヒトホールディングスグループの競争力の源泉となっております。
(注)1.2026年1月現在でヒトトヒトホールディングスが関与する球団・チームは以下のとおりです。
プロ野球:東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、
福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズ、埼玉西武ライオンズ、
阪神タイガース、オリックス・バファローズ
Jリーグ:横浜F・マリノス、ベガルタ仙台、柏レイソル、ヴィッセル神戸、SC相模原、
ジェフユナイテッド市原・千葉、RB大宮アルディージャ
Bリーグ:仙台89ERS、川崎ブレイブサンダース、千葉ジェッツふなばし、サンロッカーズ渋谷、
大阪エヴェッサ、横浜ビー・コルセアーズ、横浜エクセレンス、ライジングゼファー
福岡
(2) ビルマネジメント事業
当事業は、商業施設やオフィスビル、学校等において従業者や来場者の安全確保に努める施設警備と、施設周辺や施設駐車場、及び建築・建設・土木工事現場等での交通を整理し通行者の安全確保に努める交通誘導警備、並びにオフィスビル清掃や興行施設(スタジアム・アリーナ)のイベント前後の清掃業務を主たる業務として行っております。
施設警備においては、安全確保を第一とする警備業務が主たる業務ではありますが、来場者への施設案内や拾得物取り扱い、迷子案内など接客に類する業務も含まれています。ヒトトヒトホールディングスグループの警備員(アルバイト含む)に占める女性の割合は17.2%、また30歳未満の割合は37.5%と、いずれも警備業全体の平均割合(7.3%、10.4%)よりも高く、来場者に対して朗らかで柔らかい応対ができる警備員が多いことが特長です。(注)2
交通誘導警備においても商業施設の駐車場では施設と同様に柔らかい応対が期待されるため、若い警備員が多いことは優位点のひとつとなっているほか、野球場等から一時的に多くの交通誘導警備員を供給することで施設特性や曜日・イベントによる繁閑差に応じた柔軟な配置計画を実現できることも優位点と考えております。工事現場においても工事の進捗や天候によって警備員の人数や警備時間の変動があるため、グループ内だけでなく外注先を含めた警備員の供給力は強みとなっております。
上記のような警備業務のみならず、顧客の大規模商業施設においては、受付やバックヤードの各種庶務業務も行う他、施設の設計段階で自治体や警察から求められる警備計画の立案や作成等の支援も行い、開業初期の安全体制構築にも貢献しております。商業施設での警備実績と経験に基づき立案された交通渋滞や混雑を防ぐためのヒトトヒトホールディングスグループの支援も、商業施設の警備業務を継続的に受注できる要因の一つとなっております。
また清掃業務については、床清掃や窓清掃など清掃箇所別に専業で行う小規模会社が大多数の中、ヒトトヒトホールディングスグループでは協力会社とともに一括での業務実施が可能であることが、ビル管理会社等の発注企業からの継続的な業務受注の要因となっております。
特に商業施設の実績としては、2026年1月末時点において三井不動産株式会社グループが運営する三井ショッピングパークららぽーとや三井アウトレットパーク等の商業施設(都心型商業施設を除く)52施設のうち26施設において警備等の業務を提供しております。
なお、上記業務については直接契約による他、警備会社や統括管理会社(ファシリティマネジメント会社)等の元請企業との契約により、顧客にサービスを提供しております。
(注)2.ヒトトヒトホールディングスグループの割合は都道府県公安委員会への届出書類(2024年12月末現在)より、警備業全体の平均割合は警察庁生活安全局生活安全企画課「令和6年における警備業の概況」より、それぞれ抜粋
(3) 人財サポート事業
当事業は、移動体通信関連企業等への一般事務等の人材派遣業と、モバイル機器や消費財を中心としたセールスプロモーション業を主たる業務としており、人財確保に悩む顧客の業務サポートを行うことで、幅広い企業の営業活動の支援を行っています。
ヒトトヒトホールディングスの人材派遣業における派遣先業務はバックオフィスと呼ばれる顧客サポート窓口や契約事務での業務が中心であり、一般事務といえども派遣先のサービス自体への理解が必要となるため、派遣期間が1年を超える長期になる契約が多く、収益の変動は比較的少ない業務です。
セールスプロモーション業は、メーカーや物販会社から商品の宣伝や販売を受託し実施する業務を中心にしております。モバイル機器については、移動体通信事業者(通信キャリア)からの委託や通信キャリアの販売代理店からの再委託を受け、モバイル機器販売店や家電量販店にて販売業務を行っておりますが、頻繁に変更される料金プランや商品サイクルが短いモバイル機器の特徴といった幅広い販売知識が必要となり、販売員のこれら知識や提案力による販売数量の差が大きいため、安定した販売実績を挙げることができれば顧客からの解約が起こりにくく、逆に取引拡大も可能な業務です。通信キャリアの一つである楽天モバイルの店舗運営業務は2021年の取引開始当初は1店舗のみの受託でしたが、2026年1月時点において27都道府県にて183店舗の受託へと取引が拡大しております。
商品の宣伝においては、数日から1カ月程度の短い実施期間において多数の拠点に多くの宣伝スタッフを配置する必要があるため、東京、大阪、名古屋、札幌など大都市圏に拠点を持つヒトトヒトホールディングスグループのアルバイトスタッフや協力会社からの人財供給力が活かされる業務と考えております。またこれら宣伝は家電量販店で行われることも多いですが、家電量販店は各社独自の商慣習や店内ルールがあり、モバイル機器の販売でそれらを熟知しているヒトトヒトホールディングスグループはその点でも強みを有すると考えております。専門知識と提案力を備えたスタッフを多数育成することで、店舗、バックオフィス、事務、コールセンター、イベント会場、作業サポート、軽作業、キッティング、スタッフサポート、PR補助、整理案内など多様な現場で業務請負や人材派遣業務を提供しています。
その他、個人向け事業として家事代行サービスも行っており、東京都内の一部地域限定ではありますが、顧客ニーズに合わせて家事に関する様々なサービス提供を行っております。
(4) その他の事業
ヒトトヒトホールディングスグループでは、その他の事業として、グループ各社のサービスに付随する資機材・装飾物の調達や工事に関する事業、及び野球やサッカーの練習からスポーツイベント等にも使用可能な屋内多目的練習施設「ヒトスタ!」事業を営んでおります。当事業もグループ各社の事業の伸長とともに成長していくものと考えております。
それぞれの事業の内訳と、事業を行っている連結子会社の内訳は以下のとおりです。
また、事業の系統図は以下のとおりです。
ヒトトヒトホールディングスグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
ヒトトヒトホールディングスは、グループの事業を推進するにあたり、以下の経営理念を定めるとともに、経営理念を具現化するための経営方針として「Vision」と「Mission」を定めております。
ヒトトヒトホールディングスグループは「経済活動において人間性の涵養をはかり、それを表現しうる力を持つ」を経営理念としております。これを経営理念とした理由は、従業員一人一人に対し、自らの働きが顧客を通じて少なからず経済に影響を与えることを意識し、それら影響を理解することが社会人としての成長を促すものであることを伝えたい、という想いからであります。
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、グループ各社に集う「人」がサービスの中核を成しており、従業員一人一人が生み出す付加価値によって収益がもたらされております。それぞれの従業員が社会人として成長することで彼らが生み出す付加価値も高まっていくものと考え、この経営理念を定めております。
② 経営方針
上記の経営理念を具現化して事業に臨むため、経営方針として以下の「Vision」と「Mission」を定めております。
・Vision/志
「あらゆる時代において、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続けること。」
・Mission/使命
「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」
AIやロボット技術が急速に進展する昨今ですが、どのように社会が進化しても人間にしかできない仕事はなくならないばかりか、人間にしかできない新たな仕事が次々と生まれてくる、とヒトトヒトホールディングスは考えており、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続け広げていくことが、即ちヒトトヒトホールディングスグループの成長にもつながるものと考えております。
人と人がつながることで私どもの社会は成立しており、社会の変化も人と人の関係性の中から生じるものであるため、「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」という意識を持って新たな業務に挑戦し続けるという姿勢が、いかなる社会の変化にも対応できる組織力の源泉になるものと確信しております。
これら経営方針のもと、創業以来培った現場力と人財育成のノウハウをもとに、人にしか生み出せない価値の創造を追求し、社会のあらゆる場所へ「ヒトの力」をどこまでも届けてまいります。
(2) 経営環境
ヒトトヒトホールディングスグループは人財サービス事業の単一セグメントとなりますが、人財サービス事業においては、インフレの進展に伴う賃金上昇、少子高齢化による生産年齢人口の減少とそれを補うロボット・AI活用の進展、高齢者や女性の労働参加意欲の高まりといった労働環境の変化の途上にあると認識しております。
なお、ヒトトヒトホールディングスグループでは、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの3つの分野を主要な事業としておりますので、それぞれの事業の市場動向と今後の見通しについて説明します。
イベントマネジメント事業においては、主たる業務として、野球、ゴルフ、サッカー、バスケットボール等のプロスポーツ興行の運営や管理を行っております。各興行の観客数によってヒトトヒトホールディングスが提供する必要人員数が増減し売上高に影響するため、それらスポーツ興行の1試合あたりの平均入場者数(注)に着目すると、プロ野球の入場者数が最も多く、Jリーグ(J1)、女子プロゴルフ、Bリーグ(B1)の順となります。(図)
(図)ヒトトヒトホールディングスグループが関与する主要プロスポーツの1試合あたり平均入場者数
(注)プロ野球は一般社団法人日本野球機構の「セントラル・リーグ年度別入場者数」「パシフィック・リーグ年度別入場者数」、Jリーグは公益社団法人日本プロサッカーリーグの「J.LEAGUE Data Site 入場者数記録」、Bリーグは公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグの「B.LEAGUE SEASON REPORT」、女子プロゴルフは一般社団法人日本ゴルフトーナメント振興協会の「国内女子ツアー競技主催者発表入場ギャラリー数」より、それぞれ抜粋しております。
毎年の推移をみると、各競技とも新型コロナウィルス感染症の影響前となる2019年までは順調に入場者数が増加しています。これは景気拡大の影響に加え、海外の有力選手を招聘したり、顧客(ファン)が選手と触れ合える機会を増加させたり等、各競技団体が興行の魅力を高める企画を打ち出し続け、ファンのリピートを増やしたことや新たなファンを獲得したことが大きく影響しております。2020年と2021年は新型コロナウィルス感染症の拡大による無観客試合や入場者数制限により大きく落ち込みましたが、2022年は徐々に回復し、2024年では、Bリーグは2020年(2019年-2020年シーズン)を上回るリーグ創設以来最多の入場者数を更新し続けており、プロ野球とJリーグにおいては2019年の水準まで回復しております。女子プロゴルフは2019年以前の水準まで回復していないものの、2021年からインターネット動画配信を開始している影響も考慮すると社会的注目度は十分に回復していると考えられます。
イベントマネジメント事業の今後の見通しについて2つの公的資料から推測すると、文部科学省・スポーツ庁策定の「第3期スポーツ基本計画」(2022年3月)では、スポーツ市場の規模を2018年の約9兆円から2025年までに15兆円に拡大することを目指した施策を、経済産業省・スポーツ庁策定の「第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告」(2023年7月)では、部活動や健康増進活動等の地域スポーツとプロスポーツ観戦等の「みる」スポーツの間に好循環を生み出すことで市場規模15兆円に向けたスポーツ産業の成長を実現する施策をそれぞれ掲げており、これら施策の一つとしてスタジアム・アリーナ施設の整備が挙げられています。
近年では2024年の「広島サッカースタジアム(広島県広島市中区)」や2025年の「IGアリーナ(愛知県名古屋市中区)」が地方自治体の指定管理者制度により建設・運営されている他、2023年の「北海道ボールパークFビレッジ(北海道北広島市/日本ハム株式会社)」、2024年の「長崎スタジアムシティ(長崎県長崎市/株式会社ジャパネットホールディングス)」と「LaLa arena TOKYO-BAY(千葉県船橋市/三井不動産株式会社・株式会社MIXI)」、2025年の「TOYOTA ARENA TOKYO(東京都江東区/トヨタ自動車株式会社)」は民間企業の投資により建設・運営されています。スポーツ庁が株式会社日本経済研究所に委託し各種報道資料等を基に作成した「スタジアム・アリーナの新設・建替構想の現状」によると、2025年1月時点では全国でスタジアム34件、アリーナ45件の計画が進行しているとのことで、これらの国や自治体の施策と民間の設備投資により、プロスポーツ興行の入場者数も今後一層の増加を続けるとともに、バスケットボールやラグビーに続く新たなスポーツのプロ化が推進されることが考えられます。
ビルマネジメント事業においては、商業施設やオフィスビルにおいて従業者や来場者の安全確保に努める施設警備と、施設周辺や施設駐車場、及び建築・建設・土木工事現場等での交通を整理し通行者の安全確保に努める交通誘導警備、並びにオフィスビル等における清掃業務を主たる業務として行っております。
ビルマネジメント事業の主たるサービスである警備業の市場規模そのものを示すデータは存在しないものの、警察庁が公表する「警備業の概況」に記載の警備員数(警備業法に基づく警備員登録数)は、2015年の538千人から2024年の587千人へと毎年着実に増加(2021年から2022年にかけての新型コロナウィルス感染症の臨時警備需要減少期を除く)しており、公共工事や民間のオフィスビル、商業施設投資の増加に加えて安心・安全に関する社会的要請の高まりから、警備業の需要は増加を続けております。
ビルマネジメント事業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症関連の需要は大規模な感染再拡大が無い限りは消滅するものの、警備業の主たる顧客である建設業においては都市部の再開発工事等に伴って交通警備の需要が発生し、その結果として建築されるオフィスビルや商業施設では施設警備の需要も発生するため、以下に述べる状況に鑑みて警備業の市場は成長を続けると考えております。
一般社団法人日本不動産研究所が2025年4月に発表した「全国オフィスストック調査(2025年1月現在)の調査結果」によると、全国47都市において2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは204棟(床面積748万㎡)ですが、1棟あたり床面積は3.7万㎡と既存オフィスビルの平均である0.8万㎡を上回っており、オフィスと商業施設を合わせた大規模な複合ビルの占める割合が大きく、警備員を充実させる必要性が高まると考えられます。ヒトトヒトホールディングスグループの事業の主要展開地域である東名阪地域(東京都区部、大阪市、名古屋市)に絞っても2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは149棟(床面積612万㎡)と過半を占めており、今後も大規模なビルの建設・竣工とそれに伴う警備需要の高まりは続くものと考えております。加えて、労働力のひっ迫に伴い警備業の賃金水準も上昇しており、その全部もしくは一部を価格に転嫁することでも売上の増大につながるため、需要の伸びと併せて、今後も当面は市場規模の拡大が続くものと考えております。
人財サポート事業においては、主たる業務として人材派遣業とセールスプロモーション業を行っております。
人材派遣業の市場規模は、厚生労働省が発表する「労働者派遣事業報告書」における労働者派遣事業に係る売上高によると、2016年度(平成28年度)の約5.0兆円から2023年度(令和5年度)には約9.0兆円へと拡大しております。人財サポート事業で行う一般事務派遣のみの市場規模は集計されていませんが、同報告書における派遣労働者数の集計によると、一般事務派遣従事者は2016年度の238千人から2024年度は392千人へと増加しており、一般事務派遣の市場も拡大していると推測されます。
人材派遣業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症の影響下においても人材派遣の市場は伸び続けており、今後の景気回復期及び少子化進展に伴う労働力減少期において需要は一層拡大すると考えられるため、派遣料金へのコスト転嫁も進み、需要の拡大と売上単価増大の両面により一層の市場拡大が続くと想定しております。
セールスプロモーションのみの市場規模を示す公的統計はありませんが、ヒトトヒトホールディングスが行うセールスプロモーション業務は商品・サービスのPR企画、及び店頭での商品・サービスの紹介や販売であることから、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」にある広告業売上高のうち、SP・PR・催事企画の売上高がそれに近いと考えられます。同調査によると、広告業のうちSP・PR・催事企画の売上高は2015年の約0.8兆円から2024年においては約0.5兆円まで減少しています。一方インターネット広告の売上高は2015年の約0.5兆円から2019年には約0.8兆円まで成長し、新型コロナウィルス感染症の拡大を契機として2024年には約1.6兆円にまで拡大しています。2024年における広告費全体の売上高約5.7兆円のうち両者の占める割合を比較すると、SP・PR・催事企画が9.2%に対してインターネット広告は27.5%であり、新型コロナウィルス感染症の影響下においていわゆる「リアル」なプロモーションから「バーチャル」なプロモーションへの切り替えが進んだことが読み取れます。
セールスプロモーション業については、インターネット広告等のバーチャルなプロモーションは今後も拡大を続けることが予想されますが、リアルな接点から商品やサービスの魅力を直接顧客に訴えることができる街頭や店頭でのプロモーションの需要は消費財や家電、通信サービスを中心に確実に存在しているため、2025年以降も一定の市場規模を保ち続けるものと考えております。
(3) 経営戦略
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、いずれも機械やソフトウェアでは代替が困難な「人」にしかできないサービスを主体としております。全ての事業の根幹にあるのは「人は大切な財産であり、共に成長する存在」という共通の考え方です。各事業で培ったノウハウを相互に活かし、人財の流動化や情報・スキルの共有化を通じて、人財インフラ提供企業としての責務を果たしてまいります。
「(2) 経営環境」にも記載のとおり、イベントマネジメント事業におけるBリーグの入場者数増加や全国のスタジアム・アリーナ建設計画によるプロスポーツ市場の拡大、ビルマネジメント事業におけるオフィスビル供給の拡大、人財サポート事業における安定的なセールスプロモーション需要の見通しに加え、ヒトトヒトホールディングスグループの主要顧客である三井不動産株式会社グループが計画する三井ショッピングパークららぽーと及び三井アウトレットパークの展開やスポーツ・エンターテインメント関連事業の推進、楽天モバイル株式会社の販売促進や店舗拡大が見込まれており、各事業の需要は今後も引き続き拡大するものと考えています。
これらの需要拡大に対応し売上収益に結び付けるため、ヒトトヒトホールディングスグループでは以下の取り組みを推進する計画です。
① 従業員の積極的採用
需要拡大に対応するためには警備員やスタッフ等の従業員採用も拡大する必要がありますが、ヒトトヒトホールディングスグループではスポーツイベントを中心とした魅力的な業務を希望し応募する学生中心の人財プール(アルバイト)を一万人以上雇用しており、これらアルバイトの紹介により低廉な費用で採用できるため、従業員の雇用を比較的容易に拡大することが可能です。特に近年のアルバイト雇用者数は毎年10%前後の増加率で推移しており、2025年11月末時点においては12,000人を超えております。(注)
またヒトトヒトホールディングスグループの業務はスポーツ関連以外にも大型商業施設のように働き手にとって魅力的な職場が多いことから、これらの優位性を活かし、若手や女性等を中心に従業員の採用を積極的に進めてまいります。
② 従業員の稼働率向上
プロ野球やBリーグなどのプロスポーツリーグは開催シーズンが定められていることに加え、シーズン中でも主催試合の開催日しかヒトトヒトホールディングスグループの業務は発生しません。すなわち開催日以外の日に花火やコンサート、屋外プロモーション等の臨時イベント業務を受託することでアルバイトの稼働率を向上させ、収益拡大を図ることができるため、このような業務の受注を推進してまいります。
③ 新規顧客からの受注拡大
ヒトトヒトホールディングスグループでは、既存顧客からの新規案件や、既存業務の評判を聞いた見込顧客の問い合わせからの受注等、既存ネットワークを活用した受注が中心となっております。今後は拡大する市場環境に対応するため、広告宣伝等のプロモーションを積極的に展開することで、新たな顧客の獲得を推進してまいります。
(注)アルバイトの雇用者数は、ヒトトヒトホールディングスグループと雇用契約を締結し、且つ過去12か月間に一度でも給与を支給した人数の合計であります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ヒトトヒトホールディングスグループは、「成長性」、「収益性」、「健全性」に関するそれぞれの指標を定めることで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図っていくことを考えております。
(注)ネット有利子負債とは、借入金とリース負債の合計から現金及び現金同等物と使用権資産の合計を差し引いた額と定義しております。
第6期(2025年3月期)及び第7期(2026年3月期)における各指標の数値については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスグループにおいて、以下の課題に優先的に取り組み、対処すべきと考えております。
① 賃金上昇への対応
2025年度の最低賃金改定で示された全国加重平均の目安額は1,118円となり、前年度比63円(6.0%)の上昇と、金額、率ともに過去最高の上昇幅となりました(注)。今後も最低賃金の上昇が見込まれていますが、これによりヒトトヒトホールディングスグループの収益にも影響が生じることが課題となっております。
この課題に対処するため、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁すべく顧客との交渉を積極的に進めており、その交渉状況をヒトトヒトホールディングスグループ全体の会議体で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」より
② 多様な人財の採用
国内では、様々な業種において人手不足が課題とされておりますが、少子高齢化の進展による就業者数の頭打ちや、働き方改革による一人当たり労働時間の抑制傾向等により、更なる人手不足の深刻化が想定されます。これに伴い各社の求人競争はより激しくなり、応募者数の減少や必要人員確保の長期化などヒトトヒトホールディングスグループの人財採用にも影響が生じる可能性があります。今後も新規大型案件の受託を見込んでおりますが、その大型案件に対応するための人員の充足と体制の強化が引き続きの課題となっております。
この課題に対処するため、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
③ 人財の育成
バスケットボールやラグビー等プロスポーツ化の進展に伴い、専用アリーナやスタジアムの建設が全国の主要都市で計画され進められており、ヒトトヒトホールディングスグループでもプロ野球の球場運営や商業施設警備のノウハウを活かして新たな市場への進出を図っております。また移動体通信事業者の店舗運営業務の展開地域も広がり、そのノウハウを活かして他の業種の店舗運営も行っていきたいと考えております。これら既存展開地域以外での人財確保と教育には一定の時間を要するため、新たな展開地域における体制構築と人財育成が課題となっております。
この課題に対処するため、普段から様々な業務を経験することで新たな業務での稼働を早められるよう、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの各事業間での人事異動を定期的に行うことを検討しております。またAIを活用し、個人の習熟度や適性、希望に応じた教育プログラムを構成してオンライン教育を行うシステムも検討しております。
④ IT技術の活用
近年のIT・AI関連技術の発展に伴って施設警備の一部にロボットや高性能カメラを利用した新たな警備システムの試験導入が進められており、長期的には人的警備から機械警備に置き換わる可能性が想定されます。
現時点での機械警備は、有事の際の機動的対応や接客に類する応対が求められる人的警備とは異なる性質と考えられ、中期的には両者は併存するものと捉えておりますが、この課題に対処するため、ヒトトヒトホールディングスグループにおいても機械警備と人的警備の特長を組み合わせた警備提案を行う他、AIやディープラーニングを活用し、過去の天候やイベントにおけるインシデント(転倒事故や忘れ物、迷子など)をAIで分析し、タブレットを通じて最適な警備配置等を提案することでインシデントを抑制するシステムを開発しており、人的サービスと最新技術の融合による新たな価値の創出を図っております。
⑤ 財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスは過去のLBOに伴い、2025年3月期末の連結財政状態計算書において、資本合計2,223百万円に対し、のれん5,951百万円、借入金5,605百万円をそれぞれ計上しています。現時点においてはのれん減損の可能性や借入金に係る期限の利益喪失の可能性はありませんが、かかる自己資本とのれん及び借入金の比率を健全な水準までいかに良化させるかが課題だと認識しております。
この課題に対処するため、自己資本がのれん残高の50%程度、また借入金残高と同程度の額に達するまでは、利益を自己資本の充実に宛てることを優先したいと考えております。
ヒトトヒトホールディングスグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
ヒトトヒトホールディングスは、グループの事業を推進するにあたり、以下の経営理念を定めるとともに、経営理念を具現化するための経営方針として「Vision」と「Mission」を定めております。
ヒトトヒトホールディングスグループは「経済活動において人間性の涵養をはかり、それを表現しうる力を持つ」を経営理念としております。これを経営理念とした理由は、従業員一人一人に対し、自らの働きが顧客を通じて少なからず経済に影響を与えることを意識し、それら影響を理解することが社会人としての成長を促すものであることを伝えたい、という想いからであります。
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、グループ各社に集う「人」がサービスの中核を成しており、従業員一人一人が生み出す付加価値によって収益がもたらされております。それぞれの従業員が社会人として成長することで彼らが生み出す付加価値も高まっていくものと考え、この経営理念を定めております。
② 経営方針
上記の経営理念を具現化して事業に臨むため、経営方針として以下の「Vision」と「Mission」を定めております。
・Vision/志
「あらゆる時代において、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続けること。」
・Mission/使命
「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」
AIやロボット技術が急速に進展する昨今ですが、どのように社会が進化しても人間にしかできない仕事はなくならないばかりか、人間にしかできない新たな仕事が次々と生まれてくる、とヒトトヒトホールディングスは考えており、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続け広げていくことが、即ちヒトトヒトホールディングスグループの成長にもつながるものと考えております。
人と人がつながることで私どもの社会は成立しており、社会の変化も人と人の関係性の中から生じるものであるため、「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」という意識を持って新たな業務に挑戦し続けるという姿勢が、いかなる社会の変化にも対応できる組織力の源泉になるものと確信しております。
これら経営方針のもと、創業以来培った現場力と人財育成のノウハウをもとに、人にしか生み出せない価値の創造を追求し、社会のあらゆる場所へ「ヒトの力」をどこまでも届けてまいります。
(2) 経営環境
ヒトトヒトホールディングスグループは人財サービス事業の単一セグメントとなりますが、人財サービス事業においては、インフレの進展に伴う賃金上昇、少子高齢化による生産年齢人口の減少とそれを補うロボット・AI活用の進展、高齢者や女性の労働参加意欲の高まりといった労働環境の変化の途上にあると認識しております。
なお、ヒトトヒトホールディングスグループでは、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの3つの分野を主要な事業としておりますので、それぞれの事業の市場動向と今後の見通しについて説明します。
イベントマネジメント事業においては、主たる業務として、野球、ゴルフ、サッカー、バスケットボール等のプロスポーツ興行の運営や管理を行っております。各興行の観客数によってヒトトヒトホールディングスが提供する必要人員数が増減し売上高に影響するため、それらスポーツ興行の1試合あたりの平均入場者数(注)に着目すると、プロ野球の入場者数が最も多く、Jリーグ(J1)、女子プロゴルフ、Bリーグ(B1)の順となります。(図)
(図)ヒトトヒトホールディングスグループが関与する主要プロスポーツの1試合あたり平均入場者数
(注)プロ野球は一般社団法人日本野球機構の「セントラル・リーグ年度別入場者数」「パシフィック・リーグ年度別入場者数」、Jリーグは公益社団法人日本プロサッカーリーグの「J.LEAGUE Data Site 入場者数記録」、Bリーグは公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグの「B.LEAGUE SEASON REPORT」、女子プロゴルフは一般社団法人日本ゴルフトーナメント振興協会の「国内女子ツアー競技主催者発表入場ギャラリー数」より、それぞれ抜粋しております。
毎年の推移をみると、各競技とも新型コロナウィルス感染症の影響前となる2019年までは順調に入場者数が増加しています。これは景気拡大の影響に加え、海外の有力選手を招聘したり、顧客(ファン)が選手と触れ合える機会を増加させたり等、各競技団体が興行の魅力を高める企画を打ち出し続け、ファンのリピートを増やしたことや新たなファンを獲得したことが大きく影響しております。2020年と2021年は新型コロナウィルス感染症の拡大による無観客試合や入場者数制限により大きく落ち込みましたが、2022年は徐々に回復し、2024年では、Bリーグは2020年(2019年-2020年シーズン)を上回るリーグ創設以来最多の入場者数を更新し続けており、プロ野球とJリーグにおいては2019年の水準まで回復しております。女子プロゴルフは2019年以前の水準まで回復していないものの、2021年からインターネット動画配信を開始している影響も考慮すると社会的注目度は十分に回復していると考えられます。
イベントマネジメント事業の今後の見通しについて2つの公的資料から推測すると、文部科学省・スポーツ庁策定の「第3期スポーツ基本計画」(2022年3月)では、スポーツ市場の規模を2018年の約9兆円から2025年までに15兆円に拡大することを目指した施策を、経済産業省・スポーツ庁策定の「第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告」(2023年7月)では、部活動や健康増進活動等の地域スポーツとプロスポーツ観戦等の「みる」スポーツの間に好循環を生み出すことで市場規模15兆円に向けたスポーツ産業の成長を実現する施策をそれぞれ掲げており、これら施策の一つとしてスタジアム・アリーナ施設の整備が挙げられています。
近年では2024年の「広島サッカースタジアム(広島県広島市中区)」や2025年の「IGアリーナ(愛知県名古屋市中区)」が地方自治体の指定管理者制度により建設・運営されている他、2023年の「北海道ボールパークFビレッジ(北海道北広島市/日本ハム株式会社)」、2024年の「長崎スタジアムシティ(長崎県長崎市/株式会社ジャパネットホールディングス)」と「LaLa arena TOKYO-BAY(千葉県船橋市/三井不動産株式会社・株式会社MIXI)」、2025年の「TOYOTA ARENA TOKYO(東京都江東区/トヨタ自動車株式会社)」は民間企業の投資により建設・運営されています。スポーツ庁が株式会社日本経済研究所に委託し各種報道資料等を基に作成した「スタジアム・アリーナの新設・建替構想の現状」によると、2025年1月時点では全国でスタジアム34件、アリーナ45件の計画が進行しているとのことで、これらの国や自治体の施策と民間の設備投資により、プロスポーツ興行の入場者数も今後一層の増加を続けるとともに、バスケットボールやラグビーに続く新たなスポーツのプロ化が推進されることが考えられます。
ビルマネジメント事業においては、商業施設やオフィスビルにおいて従業者や来場者の安全確保に努める施設警備と、施設周辺や施設駐車場、及び建築・建設・土木工事現場等での交通を整理し通行者の安全確保に努める交通誘導警備、並びにオフィスビル等における清掃業務を主たる業務として行っております。
ビルマネジメント事業の主たるサービスである警備業の市場規模そのものを示すデータは存在しないものの、警察庁が公表する「警備業の概況」に記載の警備員数(警備業法に基づく警備員登録数)は、2015年の538千人から2024年の587千人へと毎年着実に増加(2021年から2022年にかけての新型コロナウィルス感染症の臨時警備需要減少期を除く)しており、公共工事や民間のオフィスビル、商業施設投資の増加に加えて安心・安全に関する社会的要請の高まりから、警備業の需要は増加を続けております。
ビルマネジメント事業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症関連の需要は大規模な感染再拡大が無い限りは消滅するものの、警備業の主たる顧客である建設業においては都市部の再開発工事等に伴って交通警備の需要が発生し、その結果として建築されるオフィスビルや商業施設では施設警備の需要も発生するため、以下に述べる状況に鑑みて警備業の市場は成長を続けると考えております。
一般社団法人日本不動産研究所が2025年4月に発表した「全国オフィスストック調査(2025年1月現在)の調査結果」によると、全国47都市において2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは204棟(床面積748万㎡)ですが、1棟あたり床面積は3.7万㎡と既存オフィスビルの平均である0.8万㎡を上回っており、オフィスと商業施設を合わせた大規模な複合ビルの占める割合が大きく、警備員を充実させる必要性が高まると考えられます。ヒトトヒトホールディングスグループの事業の主要展開地域である東名阪地域(東京都区部、大阪市、名古屋市)に絞っても2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは149棟(床面積612万㎡)と過半を占めており、今後も大規模なビルの建設・竣工とそれに伴う警備需要の高まりは続くものと考えております。加えて、労働力のひっ迫に伴い警備業の賃金水準も上昇しており、その全部もしくは一部を価格に転嫁することでも売上の増大につながるため、需要の伸びと併せて、今後も当面は市場規模の拡大が続くものと考えております。
人財サポート事業においては、主たる業務として人材派遣業とセールスプロモーション業を行っております。
人材派遣業の市場規模は、厚生労働省が発表する「労働者派遣事業報告書」における労働者派遣事業に係る売上高によると、2016年度(平成28年度)の約5.0兆円から2023年度(令和5年度)には約9.0兆円へと拡大しております。人財サポート事業で行う一般事務派遣のみの市場規模は集計されていませんが、同報告書における派遣労働者数の集計によると、一般事務派遣従事者は2016年度の238千人から2024年度は392千人へと増加しており、一般事務派遣の市場も拡大していると推測されます。
人材派遣業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症の影響下においても人材派遣の市場は伸び続けており、今後の景気回復期及び少子化進展に伴う労働力減少期において需要は一層拡大すると考えられるため、派遣料金へのコスト転嫁も進み、需要の拡大と売上単価増大の両面により一層の市場拡大が続くと想定しております。
セールスプロモーションのみの市場規模を示す公的統計はありませんが、ヒトトヒトホールディングスが行うセールスプロモーション業務は商品・サービスのPR企画、及び店頭での商品・サービスの紹介や販売であることから、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」にある広告業売上高のうち、SP・PR・催事企画の売上高がそれに近いと考えられます。同調査によると、広告業のうちSP・PR・催事企画の売上高は2015年の約0.8兆円から2024年においては約0.5兆円まで減少しています。一方インターネット広告の売上高は2015年の約0.5兆円から2019年には約0.8兆円まで成長し、新型コロナウィルス感染症の拡大を契機として2024年には約1.6兆円にまで拡大しています。2024年における広告費全体の売上高約5.7兆円のうち両者の占める割合を比較すると、SP・PR・催事企画が9.2%に対してインターネット広告は27.5%であり、新型コロナウィルス感染症の影響下においていわゆる「リアル」なプロモーションから「バーチャル」なプロモーションへの切り替えが進んだことが読み取れます。
セールスプロモーション業については、インターネット広告等のバーチャルなプロモーションは今後も拡大を続けることが予想されますが、リアルな接点から商品やサービスの魅力を直接顧客に訴えることができる街頭や店頭でのプロモーションの需要は消費財や家電、通信サービスを中心に確実に存在しているため、2025年以降も一定の市場規模を保ち続けるものと考えております。
(3) 経営戦略
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、いずれも機械やソフトウェアでは代替が困難な「人」にしかできないサービスを主体としております。全ての事業の根幹にあるのは「人は大切な財産であり、共に成長する存在」という共通の考え方です。各事業で培ったノウハウを相互に活かし、人財の流動化や情報・スキルの共有化を通じて、人財インフラ提供企業としての責務を果たしてまいります。
「(2) 経営環境」にも記載のとおり、イベントマネジメント事業におけるBリーグの入場者数増加や全国のスタジアム・アリーナ建設計画によるプロスポーツ市場の拡大、ビルマネジメント事業におけるオフィスビル供給の拡大、人財サポート事業における安定的なセールスプロモーション需要の見通しに加え、ヒトトヒトホールディングスグループの主要顧客である三井不動産株式会社グループが計画する三井ショッピングパークららぽーと及び三井アウトレットパークの展開やスポーツ・エンターテインメント関連事業の推進、楽天モバイル株式会社の販売促進や店舗拡大が見込まれており、各事業の需要は今後も引き続き拡大するものと考えています。
これらの需要拡大に対応し売上収益に結び付けるため、ヒトトヒトホールディングスグループでは以下の取り組みを推進する計画です。
① 従業員の積極的採用
需要拡大に対応するためには警備員やスタッフ等の従業員採用も拡大する必要がありますが、ヒトトヒトホールディングスグループではスポーツイベントを中心とした魅力的な業務を希望し応募する学生中心の人財プール(アルバイト)を一万人以上雇用しており、これらアルバイトの紹介により低廉な費用で採用できるため、従業員の雇用を比較的容易に拡大することが可能です。特に近年のアルバイト雇用者数は毎年10%前後の増加率で推移しており、2025年11月末時点においては12,000人を超えております。(注)
またヒトトヒトホールディングスグループの業務はスポーツ関連以外にも大型商業施設のように働き手にとって魅力的な職場が多いことから、これらの優位性を活かし、若手や女性等を中心に従業員の採用を積極的に進めてまいります。
② 従業員の稼働率向上
プロ野球やBリーグなどのプロスポーツリーグは開催シーズンが定められていることに加え、シーズン中でも主催試合の開催日しかヒトトヒトホールディングスグループの業務は発生しません。すなわち開催日以外の日に花火やコンサート、屋外プロモーション等の臨時イベント業務を受託することでアルバイトの稼働率を向上させ、収益拡大を図ることができるため、このような業務の受注を推進してまいります。
③ 新規顧客からの受注拡大
ヒトトヒトホールディングスグループでは、既存顧客からの新規案件や、既存業務の評判を聞いた見込顧客の問い合わせからの受注等、既存ネットワークを活用した受注が中心となっております。今後は拡大する市場環境に対応するため、広告宣伝等のプロモーションを積極的に展開することで、新たな顧客の獲得を推進してまいります。
(注)アルバイトの雇用者数は、ヒトトヒトホールディングスグループと雇用契約を締結し、且つ過去12か月間に一度でも給与を支給した人数の合計であります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ヒトトヒトホールディングスグループは、「成長性」、「収益性」、「健全性」に関するそれぞれの指標を定めることで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図っていくことを考えております。
(注)ネット有利子負債とは、借入金とリース負債の合計から現金及び現金同等物と使用権資産の合計を差し引いた額と定義しております。
第6期(2025年3月期)及び第7期(2026年3月期)における各指標の数値については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスグループにおいて、以下の課題に優先的に取り組み、対処すべきと考えております。
① 賃金上昇への対応
2025年度の最低賃金改定で示された全国加重平均の目安額は1,118円となり、前年度比63円(6.0%)の上昇と、金額、率ともに過去最高の上昇幅となりました(注)。今後も最低賃金の上昇が見込まれていますが、これによりヒトトヒトホールディングスグループの収益にも影響が生じることが課題となっております。
この課題に対処するため、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁すべく顧客との交渉を積極的に進めており、その交渉状況をヒトトヒトホールディングスグループ全体の会議体で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」より
② 多様な人財の採用
国内では、様々な業種において人手不足が課題とされておりますが、少子高齢化の進展による就業者数の頭打ちや、働き方改革による一人当たり労働時間の抑制傾向等により、更なる人手不足の深刻化が想定されます。これに伴い各社の求人競争はより激しくなり、応募者数の減少や必要人員確保の長期化などヒトトヒトホールディングスグループの人財採用にも影響が生じる可能性があります。今後も新規大型案件の受託を見込んでおりますが、その大型案件に対応するための人員の充足と体制の強化が引き続きの課題となっております。
この課題に対処するため、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
③ 人財の育成
バスケットボールやラグビー等プロスポーツ化の進展に伴い、専用アリーナやスタジアムの建設が全国の主要都市で計画され進められており、ヒトトヒトホールディングスグループでもプロ野球の球場運営や商業施設警備のノウハウを活かして新たな市場への進出を図っております。また移動体通信事業者の店舗運営業務の展開地域も広がり、そのノウハウを活かして他の業種の店舗運営も行っていきたいと考えております。これら既存展開地域以外での人財確保と教育には一定の時間を要するため、新たな展開地域における体制構築と人財育成が課題となっております。
この課題に対処するため、普段から様々な業務を経験することで新たな業務での稼働を早められるよう、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの各事業間での人事異動を定期的に行うことを検討しております。またAIを活用し、個人の習熟度や適性、希望に応じた教育プログラムを構成してオンライン教育を行うシステムも検討しております。
④ IT技術の活用
近年のIT・AI関連技術の発展に伴って施設警備の一部にロボットや高性能カメラを利用した新たな警備システムの試験導入が進められており、長期的には人的警備から機械警備に置き換わる可能性が想定されます。
現時点での機械警備は、有事の際の機動的対応や接客に類する応対が求められる人的警備とは異なる性質と考えられ、中期的には両者は併存するものと捉えておりますが、この課題に対処するため、ヒトトヒトホールディングスグループにおいても機械警備と人的警備の特長を組み合わせた警備提案を行う他、AIやディープラーニングを活用し、過去の天候やイベントにおけるインシデント(転倒事故や忘れ物、迷子など)をAIで分析し、タブレットを通じて最適な警備配置等を提案することでインシデントを抑制するシステムを開発しており、人的サービスと最新技術の融合による新たな価値の創出を図っております。
⑤ 財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスは過去のLBOに伴い、2025年3月期末の連結財政状態計算書において、資本合計2,223百万円に対し、のれん5,951百万円、借入金5,605百万円をそれぞれ計上しています。現時点においてはのれん減損の可能性や借入金に係る期限の利益喪失の可能性はありませんが、かかる自己資本とのれん及び借入金の比率を健全な水準までいかに良化させるかが課題だと認識しております。
この課題に対処するため、自己資本がのれん残高の50%程度、また借入金残高と同程度の額に達するまでは、利益を自己資本の充実に宛てることを優先したいと考えております。
ヒトトヒトホールディングスグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
ヒトトヒトホールディングスは、グループの事業を推進するにあたり、以下の経営理念を定めるとともに、経営理念を具現化するための経営方針として「Vision」と「Mission」を定めております。
ヒトトヒトホールディングスグループは「経済活動において人間性の涵養をはかり、それを表現しうる力を持つ」を経営理念としております。これを経営理念とした理由は、従業員一人一人に対し、自らの働きが顧客を通じて少なからず経済に影響を与えることを意識し、それら影響を理解することが社会人としての成長を促すものであることを伝えたい、という想いからであります。
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、グループ各社に集う「人」がサービスの中核を成しており、従業員一人一人が生み出す付加価値によって収益がもたらされております。それぞれの従業員が社会人として成長することで彼らが生み出す付加価値も高まっていくものと考え、この経営理念を定めております。
② 経営方針
上記の経営理念を具現化して事業に臨むため、経営方針として以下の「Vision」と「Mission」を定めております。
・Vision/志
「あらゆる時代において、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続けること。」
・Mission/使命
「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」
AIやロボット技術が急速に進展する昨今ですが、どのように社会が進化しても人間にしかできない仕事はなくならないばかりか、人間にしかできない新たな仕事が次々と生まれてくる、とヒトトヒトホールディングスは考えており、人が人間性を最大限に発揮できる機会を作り続け広げていくことが、即ちヒトトヒトホールディングスグループの成長にもつながるものと考えております。
人と人がつながることで私どもの社会は成立しており、社会の変化も人と人の関係性の中から生じるものであるため、「人と人を、人がやるべき仕事でつなぐ」という意識を持って新たな業務に挑戦し続けるという姿勢が、いかなる社会の変化にも対応できる組織力の源泉になるものと確信しております。
これら経営方針のもと、創業以来培った現場力と人財育成のノウハウをもとに、人にしか生み出せない価値の創造を追求し、社会のあらゆる場所へ「ヒトの力」をどこまでも届けてまいります。
(2) 経営環境
ヒトトヒトホールディングスグループは人財サービス事業の単一セグメントとなりますが、人財サービス事業においては、インフレの進展に伴う賃金上昇、少子高齢化による生産年齢人口の減少とそれを補うロボット・AI活用の進展、高齢者や女性の労働参加意欲の高まりといった労働環境の変化の途上にあると認識しております。
なお、ヒトトヒトホールディングスグループでは、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの3つの分野を主要な事業としておりますので、それぞれの事業の市場動向と今後の見通しについて説明します。
イベントマネジメント事業においては、主たる業務として、野球、ゴルフ、サッカー、バスケットボール等のプロスポーツ興行の運営や管理を行っております。各興行の観客数によってヒトトヒトホールディングスが提供する必要人員数が増減し売上高に影響するため、それらスポーツ興行の1試合あたりの平均入場者数(注)に着目すると、プロ野球の入場者数が最も多く、Jリーグ(J1)、女子プロゴルフ、Bリーグ(B1)の順となります。(図)
(図)ヒトトヒトホールディングスグループが関与する主要プロスポーツの1試合あたり平均入場者数
(注)プロ野球は一般社団法人日本野球機構の「セントラル・リーグ年度別入場者数」「パシフィック・リーグ年度別入場者数」、Jリーグは公益社団法人日本プロサッカーリーグの「J.LEAGUE Data Site 入場者数記録」、Bリーグは公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグの「B.LEAGUE SEASON REPORT」、女子プロゴルフは一般社団法人日本ゴルフトーナメント振興協会の「国内女子ツアー競技主催者発表入場ギャラリー数」より、それぞれ抜粋しております。
毎年の推移をみると、各競技とも新型コロナウィルス感染症の影響前となる2019年までは順調に入場者数が増加しています。これは景気拡大の影響に加え、海外の有力選手を招聘したり、顧客(ファン)が選手と触れ合える機会を増加させたり等、各競技団体が興行の魅力を高める企画を打ち出し続け、ファンのリピートを増やしたことや新たなファンを獲得したことが大きく影響しております。2020年と2021年は新型コロナウィルス感染症の拡大による無観客試合や入場者数制限により大きく落ち込みましたが、2022年は徐々に回復し、2024年では、Bリーグは2020年(2019年-2020年シーズン)を上回るリーグ創設以来最多の入場者数を更新し続けており、プロ野球とJリーグにおいては2019年の水準まで回復しております。女子プロゴルフは2019年以前の水準まで回復していないものの、2021年からインターネット動画配信を開始している影響も考慮すると社会的注目度は十分に回復していると考えられます。
イベントマネジメント事業の今後の見通しについて2つの公的資料から推測すると、文部科学省・スポーツ庁策定の「第3期スポーツ基本計画」(2022年3月)では、スポーツ市場の規模を2018年の約9兆円から2025年までに15兆円に拡大することを目指した施策を、経済産業省・スポーツ庁策定の「第二期 スポーツ未来開拓会議 中間報告」(2023年7月)では、部活動や健康増進活動等の地域スポーツとプロスポーツ観戦等の「みる」スポーツの間に好循環を生み出すことで市場規模15兆円に向けたスポーツ産業の成長を実現する施策をそれぞれ掲げており、これら施策の一つとしてスタジアム・アリーナ施設の整備が挙げられています。
近年では2024年の「広島サッカースタジアム(広島県広島市中区)」や2025年の「IGアリーナ(愛知県名古屋市中区)」が地方自治体の指定管理者制度により建設・運営されている他、2023年の「北海道ボールパークFビレッジ(北海道北広島市/日本ハム株式会社)」、2024年の「長崎スタジアムシティ(長崎県長崎市/株式会社ジャパネットホールディングス)」と「LaLa arena TOKYO-BAY(千葉県船橋市/三井不動産株式会社・株式会社MIXI)」、2025年の「TOYOTA ARENA TOKYO(東京都江東区/トヨタ自動車株式会社)」は民間企業の投資により建設・運営されています。スポーツ庁が株式会社日本経済研究所に委託し各種報道資料等を基に作成した「スタジアム・アリーナの新設・建替構想の現状」によると、2025年1月時点では全国でスタジアム34件、アリーナ45件の計画が進行しているとのことで、これらの国や自治体の施策と民間の設備投資により、プロスポーツ興行の入場者数も今後一層の増加を続けるとともに、バスケットボールやラグビーに続く新たなスポーツのプロ化が推進されることが考えられます。
ビルマネジメント事業においては、商業施設やオフィスビルにおいて従業者や来場者の安全確保に努める施設警備と、施設周辺や施設駐車場、及び建築・建設・土木工事現場等での交通を整理し通行者の安全確保に努める交通誘導警備、並びにオフィスビル等における清掃業務を主たる業務として行っております。
ビルマネジメント事業の主たるサービスである警備業の市場規模そのものを示すデータは存在しないものの、警察庁が公表する「警備業の概況」に記載の警備員数(警備業法に基づく警備員登録数)は、2015年の538千人から2024年の587千人へと毎年着実に増加(2021年から2022年にかけての新型コロナウィルス感染症の臨時警備需要減少期を除く)しており、公共工事や民間のオフィスビル、商業施設投資の増加に加えて安心・安全に関する社会的要請の高まりから、警備業の需要は増加を続けております。
ビルマネジメント事業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症関連の需要は大規模な感染再拡大が無い限りは消滅するものの、警備業の主たる顧客である建設業においては都市部の再開発工事等に伴って交通警備の需要が発生し、その結果として建築されるオフィスビルや商業施設では施設警備の需要も発生するため、以下に述べる状況に鑑みて警備業の市場は成長を続けると考えております。
一般社団法人日本不動産研究所が2025年4月に発表した「全国オフィスストック調査(2025年1月現在)の調査結果」によると、全国47都市において2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは204棟(床面積748万㎡)ですが、1棟あたり床面積は3.7万㎡と既存オフィスビルの平均である0.8万㎡を上回っており、オフィスと商業施設を合わせた大規模な複合ビルの占める割合が大きく、警備員を充実させる必要性が高まると考えられます。ヒトトヒトホールディングスグループの事業の主要展開地域である東名阪地域(東京都区部、大阪市、名古屋市)に絞っても2025年から2027年に竣工予定のオフィスビルは149棟(床面積612万㎡)と過半を占めており、今後も大規模なビルの建設・竣工とそれに伴う警備需要の高まりは続くものと考えております。加えて、労働力のひっ迫に伴い警備業の賃金水準も上昇しており、その全部もしくは一部を価格に転嫁することでも売上の増大につながるため、需要の伸びと併せて、今後も当面は市場規模の拡大が続くものと考えております。
人財サポート事業においては、主たる業務として人材派遣業とセールスプロモーション業を行っております。
人材派遣業の市場規模は、厚生労働省が発表する「労働者派遣事業報告書」における労働者派遣事業に係る売上高によると、2016年度(平成28年度)の約5.0兆円から2023年度(令和5年度)には約9.0兆円へと拡大しております。人財サポート事業で行う一般事務派遣のみの市場規模は集計されていませんが、同報告書における派遣労働者数の集計によると、一般事務派遣従事者は2016年度の238千人から2024年度は392千人へと増加しており、一般事務派遣の市場も拡大していると推測されます。
人材派遣業の今後の見通しとしては、新型コロナウィルス感染症の影響下においても人材派遣の市場は伸び続けており、今後の景気回復期及び少子化進展に伴う労働力減少期において需要は一層拡大すると考えられるため、派遣料金へのコスト転嫁も進み、需要の拡大と売上単価増大の両面により一層の市場拡大が続くと想定しております。
セールスプロモーションのみの市場規模を示す公的統計はありませんが、ヒトトヒトホールディングスが行うセールスプロモーション業務は商品・サービスのPR企画、及び店頭での商品・サービスの紹介や販売であることから、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」にある広告業売上高のうち、SP・PR・催事企画の売上高がそれに近いと考えられます。同調査によると、広告業のうちSP・PR・催事企画の売上高は2015年の約0.8兆円から2024年においては約0.5兆円まで減少しています。一方インターネット広告の売上高は2015年の約0.5兆円から2019年には約0.8兆円まで成長し、新型コロナウィルス感染症の拡大を契機として2024年には約1.6兆円にまで拡大しています。2024年における広告費全体の売上高約5.7兆円のうち両者の占める割合を比較すると、SP・PR・催事企画が9.2%に対してインターネット広告は27.5%であり、新型コロナウィルス感染症の影響下においていわゆる「リアル」なプロモーションから「バーチャル」なプロモーションへの切り替えが進んだことが読み取れます。
セールスプロモーション業については、インターネット広告等のバーチャルなプロモーションは今後も拡大を続けることが予想されますが、リアルな接点から商品やサービスの魅力を直接顧客に訴えることができる街頭や店頭でのプロモーションの需要は消費財や家電、通信サービスを中心に確実に存在しているため、2025年以降も一定の市場規模を保ち続けるものと考えております。
(3) 経営戦略
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、いずれも機械やソフトウェアでは代替が困難な「人」にしかできないサービスを主体としております。全ての事業の根幹にあるのは「人は大切な財産であり、共に成長する存在」という共通の考え方です。各事業で培ったノウハウを相互に活かし、人財の流動化や情報・スキルの共有化を通じて、人財インフラ提供企業としての責務を果たしてまいります。
「(2) 経営環境」にも記載のとおり、イベントマネジメント事業におけるBリーグの入場者数増加や全国のスタジアム・アリーナ建設計画によるプロスポーツ市場の拡大、ビルマネジメント事業におけるオフィスビル供給の拡大、人財サポート事業における安定的なセールスプロモーション需要の見通しに加え、ヒトトヒトホールディングスグループの主要顧客である三井不動産株式会社グループが計画する三井ショッピングパークららぽーと及び三井アウトレットパークの展開やスポーツ・エンターテインメント関連事業の推進、楽天モバイル株式会社の販売促進や店舗拡大が見込まれており、各事業の需要は今後も引き続き拡大するものと考えています。
これらの需要拡大に対応し売上収益に結び付けるため、ヒトトヒトホールディングスグループでは以下の取り組みを推進する計画です。
① 従業員の積極的採用
需要拡大に対応するためには警備員やスタッフ等の従業員採用も拡大する必要がありますが、ヒトトヒトホールディングスグループではスポーツイベントを中心とした魅力的な業務を希望し応募する学生中心の人財プール(アルバイト)を一万人以上雇用しており、これらアルバイトの紹介により低廉な費用で採用できるため、従業員の雇用を比較的容易に拡大することが可能です。特に近年のアルバイト雇用者数は毎年10%前後の増加率で推移しており、2025年11月末時点においては12,000人を超えております。(注)
またヒトトヒトホールディングスグループの業務はスポーツ関連以外にも大型商業施設のように働き手にとって魅力的な職場が多いことから、これらの優位性を活かし、若手や女性等を中心に従業員の採用を積極的に進めてまいります。
② 従業員の稼働率向上
プロ野球やBリーグなどのプロスポーツリーグは開催シーズンが定められていることに加え、シーズン中でも主催試合の開催日しかヒトトヒトホールディングスグループの業務は発生しません。すなわち開催日以外の日に花火やコンサート、屋外プロモーション等の臨時イベント業務を受託することでアルバイトの稼働率を向上させ、収益拡大を図ることができるため、このような業務の受注を推進してまいります。
③ 新規顧客からの受注拡大
ヒトトヒトホールディングスグループでは、既存顧客からの新規案件や、既存業務の評判を聞いた見込顧客の問い合わせからの受注等、既存ネットワークを活用した受注が中心となっております。今後は拡大する市場環境に対応するため、広告宣伝等のプロモーションを積極的に展開することで、新たな顧客の獲得を推進してまいります。
(注)アルバイトの雇用者数は、ヒトトヒトホールディングスグループと雇用契約を締結し、且つ過去12か月間に一度でも給与を支給した人数の合計であります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ヒトトヒトホールディングスグループは、「成長性」、「収益性」、「健全性」に関するそれぞれの指標を定めることで、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図っていくことを考えております。
(注)ネット有利子負債とは、借入金とリース負債の合計から現金及び現金同等物と使用権資産の合計を差し引いた額と定義しております。
第6期(2025年3月期)及び第7期(2026年3月期)における各指標の数値については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスグループにおいて、以下の課題に優先的に取り組み、対処すべきと考えております。
① 賃金上昇への対応
2025年度の最低賃金改定で示された全国加重平均の目安額は1,118円となり、前年度比63円(6.0%)の上昇と、金額、率ともに過去最高の上昇幅となりました(注)。今後も最低賃金の上昇が見込まれていますが、これによりヒトトヒトホールディングスグループの収益にも影響が生じることが課題となっております。
この課題に対処するため、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁すべく顧客との交渉を積極的に進めており、その交渉状況をヒトトヒトホールディングスグループ全体の会議体で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」より
② 多様な人財の採用
国内では、様々な業種において人手不足が課題とされておりますが、少子高齢化の進展による就業者数の頭打ちや、働き方改革による一人当たり労働時間の抑制傾向等により、更なる人手不足の深刻化が想定されます。これに伴い各社の求人競争はより激しくなり、応募者数の減少や必要人員確保の長期化などヒトトヒトホールディングスグループの人財採用にも影響が生じる可能性があります。今後も新規大型案件の受託を見込んでおりますが、その大型案件に対応するための人員の充足と体制の強化が引き続きの課題となっております。
この課題に対処するため、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
③ 人財の育成
バスケットボールやラグビー等プロスポーツ化の進展に伴い、専用アリーナやスタジアムの建設が全国の主要都市で計画され進められており、ヒトトヒトホールディングスグループでもプロ野球の球場運営や商業施設警備のノウハウを活かして新たな市場への進出を図っております。また移動体通信事業者の店舗運営業務の展開地域も広がり、そのノウハウを活かして他の業種の店舗運営も行っていきたいと考えております。これら既存展開地域以外での人財確保と教育には一定の時間を要するため、新たな展開地域における体制構築と人財育成が課題となっております。
この課題に対処するため、普段から様々な業務を経験することで新たな業務での稼働を早められるよう、イベントマネジメント、ビルマネジメント、人財サポートの各事業間での人事異動を定期的に行うことを検討しております。またAIを活用し、個人の習熟度や適性、希望に応じた教育プログラムを構成してオンライン教育を行うシステムも検討しております。
④ IT技術の活用
近年のIT・AI関連技術の発展に伴って施設警備の一部にロボットや高性能カメラを利用した新たな警備システムの試験導入が進められており、長期的には人的警備から機械警備に置き換わる可能性が想定されます。
現時点での機械警備は、有事の際の機動的対応や接客に類する応対が求められる人的警備とは異なる性質と考えられ、中期的には両者は併存するものと捉えておりますが、この課題に対処するため、ヒトトヒトホールディングスグループにおいても機械警備と人的警備の特長を組み合わせた警備提案を行う他、AIやディープラーニングを活用し、過去の天候やイベントにおけるインシデント(転倒事故や忘れ物、迷子など)をAIで分析し、タブレットを通じて最適な警備配置等を提案することでインシデントを抑制するシステムを開発しており、人的サービスと最新技術の融合による新たな価値の創出を図っております。
⑤ 財務上の課題
ヒトトヒトホールディングスは過去のLBOに伴い、2025年3月期末の連結財政状態計算書において、資本合計2,223百万円に対し、のれん5,951百万円、借入金5,605百万円をそれぞれ計上しています。現時点においてはのれん減損の可能性や借入金に係る期限の利益喪失の可能性はありませんが、かかる自己資本とのれん及び借入金の比率を健全な水準までいかに良化させるかが課題だと認識しております。
この課題に対処するため、自己資本がのれん残高の50%程度、また借入金残高と同程度の額に達するまでは、利益を自己資本の充実に宛てることを優先したいと考えております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
ヒトトヒトホールディングスは3か月に1回開催するリスク・コンプライアンス委員会でリスクの洗い出しや影響度の分析、対策を検討することに加え、日常的なリスクの把握と対応は人事総務部にて行っております。いずれも新たなリスクの発見やリスクの顕在化の兆候が見られた場合は直ちに代表取締役社長に報告し、代表取締役社長はリスク・コンプライアンス委員会または取締役会にてリスクを共有の上、リスクの影響を極小化するべく対応策を検討・実行いたします。リスク・コンプライアンス委員会の構成については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 有利子負債について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは旧株主からの株式取得のための資金をLBOスキームによる金融機関からの借入にて調達しており、その後のM&A資金も金融機関からの借入にて調達しております。2025年3月期末時点で5,605百万円の借入金を計上しており、金利については市場金利と連動して6カ月毎(2025年4月~2026年3月の期間は1カ月毎)に見直される契約となっているため、今後市場金利が上昇した場合、支払利息の増加による業績への悪影響が考えられます。
また、同借入には以下の財務制限条項(財務コベナンツ)が付されており、これらの財務コベナンツに一つでも抵触した場合、借入について期限の利益を喪失して一括返済を求められる可能性があります。
・ 各決算期末における単体及び連結での純資産の部の金額を、前期比80%以上に維持すること
・ 各決算期末における連結での営業損益、経常損益を2期連続で赤字としないこと
これらのリスクに対応すべく、ヒトトヒトホールディングスでは以下の取組を行っております。
① 収益性を重視した戦略立案と経営管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、案件獲得時に維持すべき採算基準(ハードルレート)を設けております。具体的には、見積提出時にハードルレートを上回る採算であれば部門長が決裁可能ですが、ハードルレートを下回る採算の場合は社長決裁となり、安易な値下げによる受注を抑制しております。
また賃金上昇に伴う労務費の増加分を売上に転嫁するためのプロジェクトを組成し、転嫁方針や顧客との交渉状況などを毎月のグループ経営会議で報告・議論することで、交渉の成果・失敗事例を共有し、売上への転嫁を促進する体制を整えております。
② 金利条件に係る金融機関との交渉の継続
ヒトトヒトホールディングスでは、金利条件に係る金融機関との交渉を継続的に実施しており、市場金利上昇の影響の抑制に努めております。
なお、ローン契約条項によりヒトトヒトホールディングスの上場に伴い財務コベナンツが撤廃されるため、上場後は財務コベナンツ抵触による期限の利益喪失のリスクは解消されます。
(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しており、のれんの償却は不要ではありますが、2025年3月期末時点で5,951百万円ののれんを計上しており、総資産に占める割合は53.2%となっております。
2024年3月期において一部の資金生成単位に係るのれんを減損処理しましたが、残る資金生成単位については回収可能価額が使用価値の帳簿価額を大幅に上回っていることから、減損テストに用いた主要な仮定が合理的な範囲内で変更されたとしても、当該資金生成単位又はそのグループの回収可能価額が使用価値の帳簿価額を下回る可能性は低いと考えております。仮に税引前割引率が2.9%上昇した場合、又は将来キャッシュ・フローの見積額が20.5%減少した場合に減損損失が発生する可能性がありますが、今後5年間の成長率がゼロであった場合でも回収可能価額が使用価値の帳簿価額を十分に上回るため、減損の可能性は低いと考えております。
のれんの減損に係るリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループでは事業の収益力強化及び株主資本の充実に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 新規案件の継続的な獲得
ヒトトヒトホールディングスグループでは、日本最大のプロスポーツ興行であるプロ野球において計8球団へのサービス提供実績がございますが、その実績をプロスポーツ化が進むBリーグ等の新たなチームに提案することで、新規顧客の継続的な獲得を目指してまいります。また商業施設等の既存顧客においても、既存施設でのサービス品質や提案力を高めることで、新規施設においての案件獲得を目指してまいります。
② 収益性を重視した戦略立案と経営管理
前述のハードルレートに基づく採算管理と労務費増加分の売上転嫁を進めることで、利益の増大とともに将来キャッシュ・フローの増大も図り、回収可能価額が事業価値の帳簿価額を下回らないよう収益管理に努めてまいります。
③ 株主資本に対するのれん比率の減少
株主還元とのバランスを考慮しつつも利益剰余金の額を高めることで株主資本を充実させ、株主資本に対するのれん比率を減少させることで、万が一ののれん減損時に株主資本へ与える影響を極小化するよう努めてまいります。
(3) ファンドの投資判断の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
プライベート・エクイティ・ファンドの日本成長投資アライアンス株式会社が運用受託するJ-GIA1号投資事業有限責任組合が2026年1月末日時点のヒトトヒトホールディングスの筆頭株主であり、上場時において保有するヒトトヒトホールディングス株式の一部を売出す予定ですが、今後の運用受託者の投資判断により当該株主所有のヒトトヒトホールディングス株式が一部または全て譲渡される可能性があります。
また、J-GIA1号投資事業有限責任組合が大株主としてとどまる場合、運用受託者の判断がヒトトヒトホールディングスグループ役員の選任・解任、他社との合併等の組織再編、増資・減資、定款変更等、ヒトトヒトホールディングスの株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。
J-GIA1号投資事業有限責任組合が上場後も大株主としてとどまる場合、ヒトトヒトホールディングスはこれらのリスクに対応すべく、運用受託者との対話を通じて少数株主にも配慮した投資判断を求めるとともに、企業価値の向上を通じて株主利益を最大化する経営を行ってまいります。
なお、ヒトトヒトホールディングスの取締役1名は、日本成長投資アライアンス株式会社に所属する社外役員でありますが、取締役会や株主総会の決定に関する同社の事前承認事項等は定められておらず、独立性や自律性は維持されているものと考えております。
(4) グループガバナンスについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループは持株会社と5つの事業子会社で組織されており、グループとして健全な成長を続けるためのグループガバナンスはたいへん重要なものと認識しております。しかしながらガバナンスが適切に機能していない場合、法令違反等のコンプライアンスリスクや内部統制の無効化リスク、経営方針の不徹底による事業計画未達のリスク等、持続的な成長や企業価値の向上を阻害するリスクが高まることになります。
これらのリスクに対応すべく、グループガバナンス強化のため、以下の取り組みを実施しております。
① 社外取締役の充実
ヒトトヒトホールディングスは取締役8名(監査等委員である取締役3名を含む)のうち社外取締役が4名(独立役員3名、うち監査等委員である取締役2名)と、取締役の半数を社外取締役が占める構成としております。取締役会においても、これら社外取締役からそれぞれの専門性に依拠した意見が活発に述べられ、業務執行取締役の執行状況の監督に加えて執行判断にも影響を与えるなど、経営の透明性と公正性を高める努力をしております。
② 経営課題の共有と進捗管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、取締役会に加えてグループ全社の常勤取締役と執行役員が参集するグループ経営会議を毎月開催しており、その会議にて月次業績等の経営状況の共有に加え、案件別採算や顧客との労務費転嫁交渉等の重要な経営課題の進捗管理を行い、グループ経営方針の統一に努めております。
③ 法令遵守体制の構築
会社法や金融商品取引法、労働基準法をはじめ、ヒトトヒトホールディングスグループの業務に関する法令についてはヒトトヒトホールディングス人事総務部が主管部門となり、法令遵守のための教育や法令改正情報をグループ全社に共有することに加え、内部監査部門において定期的にグループ全社の遵守状況を監査する体制を整えております。また遵守状況は四半期毎に開催するリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、法令遵守の徹底に努めております。
④ リスク情報の共有と低減策検討
日常的な事故やクレームについてはグループ各社にて報告ルールを定めており、軽微なものを除いてヒトトヒトホールディングス社長にまで直ちに報告されるとともに必要に応じて具体的な指示を行い、事業子会社の事故やクレームについても持株会社として責任を持って解消に努める体制を整えております。加えて重大な事故やクレームについてはリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、解消までの進捗管理に加えて根本原因の解消によるリスク低減策の検討も行う体制を整えております。
(5) 人財の確保について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、常時雇用に加えイベント需要に応じた臨時雇用の人的労働力を確保し、それらを配置・管理しております。現時点では十分な人数の臨時雇用者を雇用できているため問題は発生しておりませんが、有効求人倍率6.74倍(注)という厳しい採用環境にあり、今後人的労働力が流出した場合、または必要な人員が確保できない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
(注)厚生労働省「一般職業紹介状況について 令和7年3月分」の参考統計表 保安職業従事者より
(6) 人件費の上昇について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、人件費の大幅な上昇は売上原価の増加に直結しますが、物価上昇のもとで賃上げが進展し、名目賃金上昇率2.3%の増加(注)となっている環境下にあり、今後、人件費上昇が継続し、人件費上昇に見合った売上増加、価格転嫁ができない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁できるよう顧客との交渉を行うとともに、交渉状況をグループ経営会議で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報」の月間現金給与額 調査産業計より
(7) 法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、警備業法、派遣業法、職業安定法等の法規制の対象となっております。現時点では法令に違反する事実はないと認識しておりますが、仮にこれらの法令に違反した場合、営業停止、営業廃止等の行政処分を受ける可能性があります。万一法令違反により上記行政処分を受けた場合、当該業務の受託等が一時的又は永続的に行えなくなるため売上の減少を招く可能性があります。また行政処分や法令違反の公表に伴うレピュテーションリスクも考えられます。
これらのリスクに対処すべく、「(4) グループガバナンスについて ③ 法令遵守体制の構築」にも記載のとおり、法令遵守のための教育や法令改正情報の共有、内部監査部門における監査、リスク・コンプライアンス委員会での法令遵守状況の共有等により、法令遵守の徹底に努めております。
各業法に関する取得者名、取得年月、所管官庁、許認可等の内容、有効期限、法令違反の要件等については以下のとおりです。
(警備業)
(人材派遣業・有料職業紹介事業)
(廃棄物収集運搬業・建設業)
(8) 労務管理・コンプライアンス違反リスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは多くの従業員(正社員・有期雇用社員等)の人的労働力に依存しております。近時は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の全面施行による同一労働同一賃金の義務付け、ワーク・ライフ・バランスの趨勢とそれに伴う働き方改革関連法の施行、その一環である労働基準法改正による週60時間超の時間外労働に係る賃金割増率の引き上げなど、労働環境とそれに係る法規制に大きな変化が起きており、このような動きへのヒトトヒトホールディングスの対応により、優秀な人財の流出や人件費の上昇が生じる可能性がある他、これら法令への違反が発生した場合には、関係省庁からの改善命令や刑事処分や従業員からの訴訟による社会的信用の失墜、追加コスト発生等の可能性があります。
また、ヒトトヒトホールディングスグループではこれら従業員に対するコンプライアンス教育の充実を図り実践しておりますが、法令違反等のコンプライアンス違反が生じる可能性があり、その場合はクレーム発生によるレピュテーションリスクや社会的信用の失墜に加え、顧客からの訴訟や解約による収益への影響が生じる可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、管理監督者に対してこれら法令の教育を行い、管理監督者を通じてアルバイト含む従業員への指導を行わせることに加え、万が一の法令違反発生の際には「(4) グループガバナンスについて ④ リスク情報の共有と低減策検討」にも記載のとおり、ルールに基づいてヒトトヒトホールディングス社長にまで報告され、持株会社として責任を持ってリスクの軽減に努める体制を整えております。またリスク・コンプライアンス委員会にも共有され、リスク低減策の検討を行う体制を整えております。
(9) 同業他社との競争について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核である業務は小規模業者が多く(警備会社数約1万社(警察庁「令和6年における警備業の概況」より)、派遣会社数約4万4千事業所(厚生労働省職業安定局需給調整事業課「派遣元事業所数の推移」より))、ヒトトヒトホールディングスはサービス品質と価格、独自のスタッフ動員力により他社との競争を制して事業を拡大してまいりましたが、今後何らかの要因によってこれらのヒトトヒトホールディングスの強みを維持できない場合、他社との競合に敗れ業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。
これらのリスクに対処すべく、プロ野球で長年培った興行運営管理のノウハウを他のプロスポーツに展開したり、大型商業施設での施設警備のノウハウを今後開業が見込まれるスタジアム・アリーナに展開したりする等により、小規模事業者には実施困難な業務の開拓を続けてまいります。
(10)気候変動や自然災害等の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの顧客は国内外で幅広く事業を営む企業が多く、それら企業が気候変動や環境保全に関する社会的要請に対応するため、大規模商業施設の開発計画見直しや既存施設の縮小・閉鎖、スポーツ興行事業の再編等を行う場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益機会減少の可能性があります。
ヒトトヒトホールディングスグループは、首都圏や阪神地域をはじめとする日本国内の主要都市に所在する顧客施設等で事業を行っていますが、当該地域に地震や台風等の大規模な自然災害が発生した場合は、顧客施設が営業を休止し収益機会減少の可能性がある他、当該地域に居住する従業員とその家族に人的・経済的な影響が生じる可能性があります。
また新型コロナウイルスの蔓延により2020年3月期以降3年にわたり、各種イベントの中止、延期または規模縮小によるヒトトヒトホールディングスの収益機会の減少の一方、コロナ関連業務の受託による収益機会の増大等がありました。今後も、新型コロナウイルスと同等の感染症の拡大により、感染症対策関連業務の受託による収益機会の増大の反面、行動制限に伴うイベント中止や商業施設休業による収益機会の減少、パンデミック発生によるヒトトヒトホールディングスのスタッフ動員力への悪影響の可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、人財サポート事業のような気候変動の影響を受けづらい業務の拡大を目指すことに加え、地震や台風等の自然災害に対してはBCP計画を定める等により影響の軽減に努めております。また感染症への対応については、収益機会の減少を補うような対策関連業務の対応拡充に努めてまいります。
(11)特定の取引先への依存について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの売上構成においては主要取引先10社の合計が連結売上高の約40%を占めております。現時点では安定した信頼関係・取引関係を築けていると認識しておりますが、仮に取引先の意思決定に伴う業務縮小または解約等が発生した場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益が減少する可能性があります。
これらリスクに対応すべく、主要取引先との良好で安定した信頼関係・取引関係の維持発展に加え、既存業務のノウハウを活かした新たな取引先の開拓に努めております。
(12)個人情報及び顧客情報について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは、事業活動を通して取引先の機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報及び多数の社員・スタッフの個人情報を保有しております。これらの情報は犯罪者、ハッカーなどの悪意を持った第三者やヒトトヒトホールディングスグループ従業員の故意または過失により侵害を受ける可能性があります。万が一上記の侵害が発生した場合、侵害の回復のための費用、訴訟費用の発生、売上や顧客の喪失に加え、信用の失墜等の悪影響の可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員への周知・徹底を図る他、個人情報に関して中核となる子会社2社にてプライバシーマークを認証取得するなど、適切な管理により侵害の防止に取り組んでおります。
(13)AI技術等の新技術について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
AI、ロボット、IoT機器の技術の進化はめざましく、これまで機械化が難しかった業務においても置き換わっております。ヒトトヒトホールディングスグループの業務がこれらに一気に置き換わる可能性は低いと考えておりますが、Chat GPTをはじめとするAIの進化スピードはますます加速しており、今後の技術の進展によってはヒトトヒトホールディングスの業務の一部がAI等のシステムに置き換わる可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループにおいてもこれら技術の活用を図り、「人」の行う業務の補完をさせながら「人」が行うべき業務にリソースを集中していく方針です。
(14)M&Aについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核業務は全国各地に小規模業者が多いため、売上収益拡大のためにはM&Aが有効な手段と考えております。2022年3月期には(株)アプメス(現 ヒトトヒトキャリアライズ株式会社)、2024年3月期には(株)エース警備保障及び(株)エースガードの株式を取得し、連結子会社化いたしました。今後も必要に応じ積極的にM&Aを活用していく方針ですが、未認識債務の発生や事業環境の変化により想定したシナジーが発揮できないこと等、計画通りに事業拡大ができず、業績に悪影響を与える可能性も考えられます。
また、M&Aに伴う有利子負債の増加やのれんの増加するため、M&A先の業績が悪化した場合は、のれん減損の可能性が高まることが考えられます。
これらのリスクに対処すべく、M&A実施時には対象会社の財務内容や法令遵守状況等について詳細なデュー・デリジェンスを行うことによりリスク回避に努めるとともに、「(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて」に記載のとおり、新規案件の継続的な獲得や収益性を重視した戦略立案と経営管理により、のれん減損リスクの軽減に努めてまいります。
(15)季節による収益の変動について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
ヒトトヒトホールディングスグループではプロスポーツ関連の業務を行っておりますが、プロスポーツは年間の数か月間を1シーズンとして開催されております。プロスポーツ関連業務の中ではプロ野球とプロゴルフ関連の売上高比率が高いことから、ヒトトヒトホールディングスの連結業績においても、プロ野球とプロゴルフのシーズン最盛期にあたる第1四半期と第2四半期の売上高が大きく、試合数が減少する第3四半期とオフシーズンに重なる第4四半期にかけて売上高が減少する傾向があります。
第3四半期と第4四半期がオンシーズンとなるBリーグ関連の業務も増加していますが、プロ野球とプロゴルフ関連の売上減少を補うほどではなく、利益についても売上高に連動した増減が生じる可能性があります。
第6期(2025年3月期)第1四半期から第7期(2026年3月期)第3四半期までの四半期毎の売上収益及び営業利益の推移は以下のとおりです。
(売上収益) (単位:百万円)
(営業利益) (単位:百万円)
これらのリスクに対処すべく、Bリーグ業務の拡大に加えて第3四半期と第4四半期の臨時イベント等の業務拡大、及び季節変動の影響が少ないビルマネジメント事業の施設警備及び施設管理業務や人財サポート事業の店舗運営受託業務等の拡大に努めることにより、売上収益の季節変動の低減を図ってまいります。
(16)上場維持基準への抵触について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場への上場を予定しております。スタンダード市場への上場に際して、売出しによってヒトトヒトホールディングス株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、ヒトトヒトホールディングスの流通株式比率は株式会社東京証券取引所が定めるスタンダード市場の上場維持基準に近接した水準となる見込みです。何らかの事情によりスタンダード市場の上場維持基準に抵触した場合、上場を維持できなくなる可能性がありますが、今後、大株主への一部売出しの要請によって流通株式数を増加させること等により、ヒトトヒトホールディングス株式の流動性の向上を図っていく方針です。
(17)経済状況等の事業環境について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループがサービスを提供する顧客の多くは、スポーツ興行や商業施設運営など消費者の余暇への支出を収益とする事業を営んでおります。
現下の経済状況は、不動産や生活必需品のインフレが進展しながらも賃金の上昇も続いており、消費者の余暇支出に関して顕著な変動はみられませんが、国内外の金融・貿易政策や国際紛争等に端を発する経済危機が生じた際は消費者の生活防衛のために余暇支出が抑制され、ヒトトヒトホールディングスグループの顧客の収益低下とヒトトヒトホールディングスグループへの発注量減少によるヒトトヒトホールディングスの収益機会減少の可能性が考えられます。
これらのリスクに対処すべく、新規顧客の開拓や新規事業の創出、M&Aによる事業多角化等により、経済状況の変動の影響を受けづらい経営体制を構築してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
ヒトトヒトホールディングスは3か月に1回開催するリスク・コンプライアンス委員会でリスクの洗い出しや影響度の分析、対策を検討することに加え、日常的なリスクの把握と対応は人事総務部にて行っております。いずれも新たなリスクの発見やリスクの顕在化の兆候が見られた場合は直ちに代表取締役社長に報告し、代表取締役社長はリスク・コンプライアンス委員会または取締役会にてリスクを共有の上、リスクの影響を極小化するべく対応策を検討・実行いたします。リスク・コンプライアンス委員会の構成については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 有利子負債について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは旧株主からの株式取得のための資金をLBOスキームによる金融機関からの借入にて調達しており、その後のM&A資金も金融機関からの借入にて調達しております。2025年3月期末時点で5,605百万円の借入金を計上しており、金利については市場金利と連動して6カ月毎(2025年4月~2026年3月の期間は1カ月毎)に見直される契約となっているため、今後市場金利が上昇した場合、支払利息の増加による業績への悪影響が考えられます。
また、同借入には以下の財務制限条項(財務コベナンツ)が付されており、これらの財務コベナンツに一つでも抵触した場合、借入について期限の利益を喪失して一括返済を求められる可能性があります。
・ 各決算期末における単体及び連結での純資産の部の金額を、前期比80%以上に維持すること
・ 各決算期末における連結での営業損益、経常損益を2期連続で赤字としないこと
これらのリスクに対応すべく、ヒトトヒトホールディングスでは以下の取組を行っております。
① 収益性を重視した戦略立案と経営管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、案件獲得時に維持すべき採算基準(ハードルレート)を設けております。具体的には、見積提出時にハードルレートを上回る採算であれば部門長が決裁可能ですが、ハードルレートを下回る採算の場合は社長決裁となり、安易な値下げによる受注を抑制しております。
また賃金上昇に伴う労務費の増加分を売上に転嫁するためのプロジェクトを組成し、転嫁方針や顧客との交渉状況などを毎月のグループ経営会議で報告・議論することで、交渉の成果・失敗事例を共有し、売上への転嫁を促進する体制を整えております。
② 金利条件に係る金融機関との交渉の継続
ヒトトヒトホールディングスでは、金利条件に係る金融機関との交渉を継続的に実施しており、市場金利上昇の影響の抑制に努めております。
なお、ローン契約条項によりヒトトヒトホールディングスの上場に伴い財務コベナンツが撤廃されるため、上場後は財務コベナンツ抵触による期限の利益喪失のリスクは解消されます。
(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しており、のれんの償却は不要ではありますが、2025年3月期末時点で5,951百万円ののれんを計上しており、総資産に占める割合は53.2%となっております。
2024年3月期において一部の資金生成単位に係るのれんを減損処理しましたが、残る資金生成単位については回収可能価額が使用価値の帳簿価額を大幅に上回っていることから、減損テストに用いた主要な仮定が合理的な範囲内で変更されたとしても、当該資金生成単位又はそのグループの回収可能価額が使用価値の帳簿価額を下回る可能性は低いと考えております。仮に税引前割引率が2.9%上昇した場合、又は将来キャッシュ・フローの見積額が20.5%減少した場合に減損損失が発生する可能性がありますが、今後5年間の成長率がゼロであった場合でも回収可能価額が使用価値の帳簿価額を十分に上回るため、減損の可能性は低いと考えております。
のれんの減損に係るリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループでは事業の収益力強化及び株主資本の充実に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 新規案件の継続的な獲得
ヒトトヒトホールディングスグループでは、日本最大のプロスポーツ興行であるプロ野球において計8球団へのサービス提供実績がございますが、その実績をプロスポーツ化が進むBリーグ等の新たなチームに提案することで、新規顧客の継続的な獲得を目指してまいります。また商業施設等の既存顧客においても、既存施設でのサービス品質や提案力を高めることで、新規施設においての案件獲得を目指してまいります。
② 収益性を重視した戦略立案と経営管理
前述のハードルレートに基づく採算管理と労務費増加分の売上転嫁を進めることで、利益の増大とともに将来キャッシュ・フローの増大も図り、回収可能価額が事業価値の帳簿価額を下回らないよう収益管理に努めてまいります。
③ 株主資本に対するのれん比率の減少
株主還元とのバランスを考慮しつつも利益剰余金の額を高めることで株主資本を充実させ、株主資本に対するのれん比率を減少させることで、万が一ののれん減損時に株主資本へ与える影響を極小化するよう努めてまいります。
(3) ファンドの投資判断の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
プライベート・エクイティ・ファンドの日本成長投資アライアンス株式会社が運用受託するJ-GIA1号投資事業有限責任組合が2026年1月末日時点のヒトトヒトホールディングスの筆頭株主であり、上場時において保有するヒトトヒトホールディングス株式の一部を売出す予定ですが、今後の運用受託者の投資判断により当該株主所有のヒトトヒトホールディングス株式が一部または全て譲渡される可能性があります。
また、J-GIA1号投資事業有限責任組合が大株主としてとどまる場合、運用受託者の判断がヒトトヒトホールディングスグループ役員の選任・解任、他社との合併等の組織再編、増資・減資、定款変更等、ヒトトヒトホールディングスの株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。
J-GIA1号投資事業有限責任組合が上場後も大株主としてとどまる場合、ヒトトヒトホールディングスはこれらのリスクに対応すべく、運用受託者との対話を通じて少数株主にも配慮した投資判断を求めるとともに、企業価値の向上を通じて株主利益を最大化する経営を行ってまいります。
なお、ヒトトヒトホールディングスの取締役1名は、日本成長投資アライアンス株式会社に所属する社外役員でありますが、取締役会や株主総会の決定に関する同社の事前承認事項等は定められておらず、独立性や自律性は維持されているものと考えております。
(4) グループガバナンスについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループは持株会社と5つの事業子会社で組織されており、グループとして健全な成長を続けるためのグループガバナンスはたいへん重要なものと認識しております。しかしながらガバナンスが適切に機能していない場合、法令違反等のコンプライアンスリスクや内部統制の無効化リスク、経営方針の不徹底による事業計画未達のリスク等、持続的な成長や企業価値の向上を阻害するリスクが高まることになります。
これらのリスクに対応すべく、グループガバナンス強化のため、以下の取り組みを実施しております。
① 社外取締役の充実
ヒトトヒトホールディングスは取締役8名(監査等委員である取締役3名を含む)のうち社外取締役が4名(独立役員3名、うち監査等委員である取締役2名)と、取締役の半数を社外取締役が占める構成としております。取締役会においても、これら社外取締役からそれぞれの専門性に依拠した意見が活発に述べられ、業務執行取締役の執行状況の監督に加えて執行判断にも影響を与えるなど、経営の透明性と公正性を高める努力をしております。
② 経営課題の共有と進捗管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、取締役会に加えてグループ全社の常勤取締役と執行役員が参集するグループ経営会議を毎月開催しており、その会議にて月次業績等の経営状況の共有に加え、案件別採算や顧客との労務費転嫁交渉等の重要な経営課題の進捗管理を行い、グループ経営方針の統一に努めております。
③ 法令遵守体制の構築
会社法や金融商品取引法、労働基準法をはじめ、ヒトトヒトホールディングスグループの業務に関する法令についてはヒトトヒトホールディングス人事総務部が主管部門となり、法令遵守のための教育や法令改正情報をグループ全社に共有することに加え、内部監査部門において定期的にグループ全社の遵守状況を監査する体制を整えております。また遵守状況は四半期毎に開催するリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、法令遵守の徹底に努めております。
④ リスク情報の共有と低減策検討
日常的な事故やクレームについてはグループ各社にて報告ルールを定めており、軽微なものを除いてヒトトヒトホールディングス社長にまで直ちに報告されるとともに必要に応じて具体的な指示を行い、事業子会社の事故やクレームについても持株会社として責任を持って解消に努める体制を整えております。加えて重大な事故やクレームについてはリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、解消までの進捗管理に加えて根本原因の解消によるリスク低減策の検討も行う体制を整えております。
(5) 人財の確保について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、常時雇用に加えイベント需要に応じた臨時雇用の人的労働力を確保し、それらを配置・管理しております。現時点では十分な人数の臨時雇用者を雇用できているため問題は発生しておりませんが、有効求人倍率6.74倍(注)という厳しい採用環境にあり、今後人的労働力が流出した場合、または必要な人員が確保できない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
(注)厚生労働省「一般職業紹介状況について 令和7年3月分」の参考統計表 保安職業従事者より
(6) 人件費の上昇について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、人件費の大幅な上昇は売上原価の増加に直結しますが、物価上昇のもとで賃上げが進展し、名目賃金上昇率2.3%の増加(注)となっている環境下にあり、今後、人件費上昇が継続し、人件費上昇に見合った売上増加、価格転嫁ができない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁できるよう顧客との交渉を行うとともに、交渉状況をグループ経営会議で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報」の月間現金給与額 調査産業計より
(7) 法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、警備業法、派遣業法、職業安定法等の法規制の対象となっております。現時点では法令に違反する事実はないと認識しておりますが、仮にこれらの法令に違反した場合、営業停止、営業廃止等の行政処分を受ける可能性があります。万一法令違反により上記行政処分を受けた場合、当該業務の受託等が一時的又は永続的に行えなくなるため売上の減少を招く可能性があります。また行政処分や法令違反の公表に伴うレピュテーションリスクも考えられます。
これらのリスクに対処すべく、「(4) グループガバナンスについて ③ 法令遵守体制の構築」にも記載のとおり、法令遵守のための教育や法令改正情報の共有、内部監査部門における監査、リスク・コンプライアンス委員会での法令遵守状況の共有等により、法令遵守の徹底に努めております。
各業法に関する取得者名、取得年月、所管官庁、許認可等の内容、有効期限、法令違反の要件等については以下のとおりです。
(警備業)
(人材派遣業・有料職業紹介事業)
(廃棄物収集運搬業・建設業)
(8) 労務管理・コンプライアンス違反リスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは多くの従業員(正社員・有期雇用社員等)の人的労働力に依存しております。近時は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の全面施行による同一労働同一賃金の義務付け、ワーク・ライフ・バランスの趨勢とそれに伴う働き方改革関連法の施行、その一環である労働基準法改正による週60時間超の時間外労働に係る賃金割増率の引き上げなど、労働環境とそれに係る法規制に大きな変化が起きており、このような動きへのヒトトヒトホールディングスの対応により、優秀な人財の流出や人件費の上昇が生じる可能性がある他、これら法令への違反が発生した場合には、関係省庁からの改善命令や刑事処分や従業員からの訴訟による社会的信用の失墜、追加コスト発生等の可能性があります。
また、ヒトトヒトホールディングスグループではこれら従業員に対するコンプライアンス教育の充実を図り実践しておりますが、法令違反等のコンプライアンス違反が生じる可能性があり、その場合はクレーム発生によるレピュテーションリスクや社会的信用の失墜に加え、顧客からの訴訟や解約による収益への影響が生じる可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、管理監督者に対してこれら法令の教育を行い、管理監督者を通じてアルバイト含む従業員への指導を行わせることに加え、万が一の法令違反発生の際には「(4) グループガバナンスについて ④ リスク情報の共有と低減策検討」にも記載のとおり、ルールに基づいてヒトトヒトホールディングス社長にまで報告され、持株会社として責任を持ってリスクの軽減に努める体制を整えております。またリスク・コンプライアンス委員会にも共有され、リスク低減策の検討を行う体制を整えております。
(9) 同業他社との競争について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核である業務は小規模業者が多く(警備会社数約1万社(警察庁「令和6年における警備業の概況」より)、派遣会社数約4万4千事業所(厚生労働省職業安定局需給調整事業課「派遣元事業所数の推移」より))、ヒトトヒトホールディングスはサービス品質と価格、独自のスタッフ動員力により他社との競争を制して事業を拡大してまいりましたが、今後何らかの要因によってこれらのヒトトヒトホールディングスの強みを維持できない場合、他社との競合に敗れ業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。
これらのリスクに対処すべく、プロ野球で長年培った興行運営管理のノウハウを他のプロスポーツに展開したり、大型商業施設での施設警備のノウハウを今後開業が見込まれるスタジアム・アリーナに展開したりする等により、小規模事業者には実施困難な業務の開拓を続けてまいります。
(10)気候変動や自然災害等の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの顧客は国内外で幅広く事業を営む企業が多く、それら企業が気候変動や環境保全に関する社会的要請に対応するため、大規模商業施設の開発計画見直しや既存施設の縮小・閉鎖、スポーツ興行事業の再編等を行う場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益機会減少の可能性があります。
ヒトトヒトホールディングスグループは、首都圏や阪神地域をはじめとする日本国内の主要都市に所在する顧客施設等で事業を行っていますが、当該地域に地震や台風等の大規模な自然災害が発生した場合は、顧客施設が営業を休止し収益機会減少の可能性がある他、当該地域に居住する従業員とその家族に人的・経済的な影響が生じる可能性があります。
また新型コロナウイルスの蔓延により2020年3月期以降3年にわたり、各種イベントの中止、延期または規模縮小によるヒトトヒトホールディングスの収益機会の減少の一方、コロナ関連業務の受託による収益機会の増大等がありました。今後も、新型コロナウイルスと同等の感染症の拡大により、感染症対策関連業務の受託による収益機会の増大の反面、行動制限に伴うイベント中止や商業施設休業による収益機会の減少、パンデミック発生によるヒトトヒトホールディングスのスタッフ動員力への悪影響の可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、人財サポート事業のような気候変動の影響を受けづらい業務の拡大を目指すことに加え、地震や台風等の自然災害に対してはBCP計画を定める等により影響の軽減に努めております。また感染症への対応については、収益機会の減少を補うような対策関連業務の対応拡充に努めてまいります。
(11)特定の取引先への依存について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの売上構成においては主要取引先10社の合計が連結売上高の約40%を占めております。現時点では安定した信頼関係・取引関係を築けていると認識しておりますが、仮に取引先の意思決定に伴う業務縮小または解約等が発生した場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益が減少する可能性があります。
これらリスクに対応すべく、主要取引先との良好で安定した信頼関係・取引関係の維持発展に加え、既存業務のノウハウを活かした新たな取引先の開拓に努めております。
(12)個人情報及び顧客情報について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは、事業活動を通して取引先の機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報及び多数の社員・スタッフの個人情報を保有しております。これらの情報は犯罪者、ハッカーなどの悪意を持った第三者やヒトトヒトホールディングスグループ従業員の故意または過失により侵害を受ける可能性があります。万が一上記の侵害が発生した場合、侵害の回復のための費用、訴訟費用の発生、売上や顧客の喪失に加え、信用の失墜等の悪影響の可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員への周知・徹底を図る他、個人情報に関して中核となる子会社2社にてプライバシーマークを認証取得するなど、適切な管理により侵害の防止に取り組んでおります。
(13)AI技術等の新技術について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
AI、ロボット、IoT機器の技術の進化はめざましく、これまで機械化が難しかった業務においても置き換わっております。ヒトトヒトホールディングスグループの業務がこれらに一気に置き換わる可能性は低いと考えておりますが、Chat GPTをはじめとするAIの進化スピードはますます加速しており、今後の技術の進展によってはヒトトヒトホールディングスの業務の一部がAI等のシステムに置き換わる可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループにおいてもこれら技術の活用を図り、「人」の行う業務の補完をさせながら「人」が行うべき業務にリソースを集中していく方針です。
(14)M&Aについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核業務は全国各地に小規模業者が多いため、売上収益拡大のためにはM&Aが有効な手段と考えております。2022年3月期には(株)アプメス(現 ヒトトヒトキャリアライズ株式会社)、2024年3月期には(株)エース警備保障及び(株)エースガードの株式を取得し、連結子会社化いたしました。今後も必要に応じ積極的にM&Aを活用していく方針ですが、未認識債務の発生や事業環境の変化により想定したシナジーが発揮できないこと等、計画通りに事業拡大ができず、業績に悪影響を与える可能性も考えられます。
また、M&Aに伴う有利子負債の増加やのれんの増加するため、M&A先の業績が悪化した場合は、のれん減損の可能性が高まることが考えられます。
これらのリスクに対処すべく、M&A実施時には対象会社の財務内容や法令遵守状況等について詳細なデュー・デリジェンスを行うことによりリスク回避に努めるとともに、「(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて」に記載のとおり、新規案件の継続的な獲得や収益性を重視した戦略立案と経営管理により、のれん減損リスクの軽減に努めてまいります。
(15)季節による収益の変動について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
ヒトトヒトホールディングスグループではプロスポーツ関連の業務を行っておりますが、プロスポーツは年間の数か月間を1シーズンとして開催されております。プロスポーツ関連業務の中ではプロ野球とプロゴルフ関連の売上高比率が高いことから、ヒトトヒトホールディングスの連結業績においても、プロ野球とプロゴルフのシーズン最盛期にあたる第1四半期と第2四半期の売上高が大きく、試合数が減少する第3四半期とオフシーズンに重なる第4四半期にかけて売上高が減少する傾向があります。
第3四半期と第4四半期がオンシーズンとなるBリーグ関連の業務も増加していますが、プロ野球とプロゴルフ関連の売上減少を補うほどではなく、利益についても売上高に連動した増減が生じる可能性があります。
第6期(2025年3月期)第1四半期から第7期(2026年3月期)第3四半期までの四半期毎の売上収益及び営業利益の推移は以下のとおりです。
(売上収益) (単位:百万円)
(営業利益) (単位:百万円)
これらのリスクに対処すべく、Bリーグ業務の拡大に加えて第3四半期と第4四半期の臨時イベント等の業務拡大、及び季節変動の影響が少ないビルマネジメント事業の施設警備及び施設管理業務や人財サポート事業の店舗運営受託業務等の拡大に努めることにより、売上収益の季節変動の低減を図ってまいります。
(16)上場維持基準への抵触について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場への上場を予定しております。スタンダード市場への上場に際して、売出しによってヒトトヒトホールディングス株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、ヒトトヒトホールディングスの流通株式比率は株式会社東京証券取引所が定めるスタンダード市場の上場維持基準に近接した水準となる見込みです。何らかの事情によりスタンダード市場の上場維持基準に抵触した場合、上場を維持できなくなる可能性がありますが、今後、大株主への一部売出しの要請によって流通株式数を増加させること等により、ヒトトヒトホールディングス株式の流動性の向上を図っていく方針です。
(17)経済状況等の事業環境について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループがサービスを提供する顧客の多くは、スポーツ興行や商業施設運営など消費者の余暇への支出を収益とする事業を営んでおります。
現下の経済状況は、不動産や生活必需品のインフレが進展しながらも賃金の上昇も続いており、消費者の余暇支出に関して顕著な変動はみられませんが、国内外の金融・貿易政策や国際紛争等に端を発する経済危機が生じた際は消費者の生活防衛のために余暇支出が抑制され、ヒトトヒトホールディングスグループの顧客の収益低下とヒトトヒトホールディングスグループへの発注量減少によるヒトトヒトホールディングスの収益機会減少の可能性が考えられます。
これらのリスクに対処すべく、新規顧客の開拓や新規事業の創出、M&Aによる事業多角化等により、経済状況の変動の影響を受けづらい経営体制を構築してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
ヒトトヒトホールディングスは3か月に1回開催するリスク・コンプライアンス委員会でリスクの洗い出しや影響度の分析、対策を検討することに加え、日常的なリスクの把握と対応は人事総務部にて行っております。いずれも新たなリスクの発見やリスクの顕在化の兆候が見られた場合は直ちに代表取締役社長に報告し、代表取締役社長はリスク・コンプライアンス委員会または取締役会にてリスクを共有の上、リスクの影響を極小化するべく対応策を検討・実行いたします。リスク・コンプライアンス委員会の構成については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてヒトトヒトホールディングスグループが判断したものであります。
(1) 有利子負債について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは旧株主からの株式取得のための資金をLBOスキームによる金融機関からの借入にて調達しており、その後のM&A資金も金融機関からの借入にて調達しております。2025年3月期末時点で5,605百万円の借入金を計上しており、金利については市場金利と連動して6カ月毎(2025年4月~2026年3月の期間は1カ月毎)に見直される契約となっているため、今後市場金利が上昇した場合、支払利息の増加による業績への悪影響が考えられます。
また、同借入には以下の財務制限条項(財務コベナンツ)が付されており、これらの財務コベナンツに一つでも抵触した場合、借入について期限の利益を喪失して一括返済を求められる可能性があります。
・ 各決算期末における単体及び連結での純資産の部の金額を、前期比80%以上に維持すること
・ 各決算期末における連結での営業損益、経常損益を2期連続で赤字としないこと
これらのリスクに対応すべく、ヒトトヒトホールディングスでは以下の取組を行っております。
① 収益性を重視した戦略立案と経営管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、案件獲得時に維持すべき採算基準(ハードルレート)を設けております。具体的には、見積提出時にハードルレートを上回る採算であれば部門長が決裁可能ですが、ハードルレートを下回る採算の場合は社長決裁となり、安易な値下げによる受注を抑制しております。
また賃金上昇に伴う労務費の増加分を売上に転嫁するためのプロジェクトを組成し、転嫁方針や顧客との交渉状況などを毎月のグループ経営会議で報告・議論することで、交渉の成果・失敗事例を共有し、売上への転嫁を促進する体制を整えております。
② 金利条件に係る金融機関との交渉の継続
ヒトトヒトホールディングスでは、金利条件に係る金融機関との交渉を継続的に実施しており、市場金利上昇の影響の抑制に努めております。
なお、ローン契約条項によりヒトトヒトホールディングスの上場に伴い財務コベナンツが撤廃されるため、上場後は財務コベナンツ抵触による期限の利益喪失のリスクは解消されます。
(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しており、のれんの償却は不要ではありますが、2025年3月期末時点で5,951百万円ののれんを計上しており、総資産に占める割合は53.2%となっております。
2024年3月期において一部の資金生成単位に係るのれんを減損処理しましたが、残る資金生成単位については回収可能価額が使用価値の帳簿価額を大幅に上回っていることから、減損テストに用いた主要な仮定が合理的な範囲内で変更されたとしても、当該資金生成単位又はそのグループの回収可能価額が使用価値の帳簿価額を下回る可能性は低いと考えております。仮に税引前割引率が2.9%上昇した場合、又は将来キャッシュ・フローの見積額が20.5%減少した場合に減損損失が発生する可能性がありますが、今後5年間の成長率がゼロであった場合でも回収可能価額が使用価値の帳簿価額を十分に上回るため、減損の可能性は低いと考えております。
のれんの減損に係るリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループでは事業の収益力強化及び株主資本の充実に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 新規案件の継続的な獲得
ヒトトヒトホールディングスグループでは、日本最大のプロスポーツ興行であるプロ野球において計8球団へのサービス提供実績がございますが、その実績をプロスポーツ化が進むBリーグ等の新たなチームに提案することで、新規顧客の継続的な獲得を目指してまいります。また商業施設等の既存顧客においても、既存施設でのサービス品質や提案力を高めることで、新規施設においての案件獲得を目指してまいります。
② 収益性を重視した戦略立案と経営管理
前述のハードルレートに基づく採算管理と労務費増加分の売上転嫁を進めることで、利益の増大とともに将来キャッシュ・フローの増大も図り、回収可能価額が事業価値の帳簿価額を下回らないよう収益管理に努めてまいります。
③ 株主資本に対するのれん比率の減少
株主還元とのバランスを考慮しつつも利益剰余金の額を高めることで株主資本を充実させ、株主資本に対するのれん比率を減少させることで、万が一ののれん減損時に株主資本へ与える影響を極小化するよう努めてまいります。
(3) ファンドの投資判断の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
プライベート・エクイティ・ファンドの日本成長投資アライアンス株式会社が運用受託するJ-GIA1号投資事業有限責任組合が2026年1月末日時点のヒトトヒトホールディングスの筆頭株主であり、上場時において保有するヒトトヒトホールディングス株式の一部を売出す予定ですが、今後の運用受託者の投資判断により当該株主所有のヒトトヒトホールディングス株式が一部または全て譲渡される可能性があります。
また、J-GIA1号投資事業有限責任組合が大株主としてとどまる場合、運用受託者の判断がヒトトヒトホールディングスグループ役員の選任・解任、他社との合併等の組織再編、増資・減資、定款変更等、ヒトトヒトホールディングスの株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。
J-GIA1号投資事業有限責任組合が上場後も大株主としてとどまる場合、ヒトトヒトホールディングスはこれらのリスクに対応すべく、運用受託者との対話を通じて少数株主にも配慮した投資判断を求めるとともに、企業価値の向上を通じて株主利益を最大化する経営を行ってまいります。
なお、ヒトトヒトホールディングスの取締役1名は、日本成長投資アライアンス株式会社に所属する社外役員でありますが、取締役会や株主総会の決定に関する同社の事前承認事項等は定められておらず、独立性や自律性は維持されているものと考えております。
(4) グループガバナンスについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループは持株会社と5つの事業子会社で組織されており、グループとして健全な成長を続けるためのグループガバナンスはたいへん重要なものと認識しております。しかしながらガバナンスが適切に機能していない場合、法令違反等のコンプライアンスリスクや内部統制の無効化リスク、経営方針の不徹底による事業計画未達のリスク等、持続的な成長や企業価値の向上を阻害するリスクが高まることになります。
これらのリスクに対応すべく、グループガバナンス強化のため、以下の取り組みを実施しております。
① 社外取締役の充実
ヒトトヒトホールディングスは取締役8名(監査等委員である取締役3名を含む)のうち社外取締役が4名(独立役員3名、うち監査等委員である取締役2名)と、取締役の半数を社外取締役が占める構成としております。取締役会においても、これら社外取締役からそれぞれの専門性に依拠した意見が活発に述べられ、業務執行取締役の執行状況の監督に加えて執行判断にも影響を与えるなど、経営の透明性と公正性を高める努力をしております。
② 経営課題の共有と進捗管理
ヒトトヒトホールディングスグループでは、取締役会に加えてグループ全社の常勤取締役と執行役員が参集するグループ経営会議を毎月開催しており、その会議にて月次業績等の経営状況の共有に加え、案件別採算や顧客との労務費転嫁交渉等の重要な経営課題の進捗管理を行い、グループ経営方針の統一に努めております。
③ 法令遵守体制の構築
会社法や金融商品取引法、労働基準法をはじめ、ヒトトヒトホールディングスグループの業務に関する法令についてはヒトトヒトホールディングス人事総務部が主管部門となり、法令遵守のための教育や法令改正情報をグループ全社に共有することに加え、内部監査部門において定期的にグループ全社の遵守状況を監査する体制を整えております。また遵守状況は四半期毎に開催するリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、法令遵守の徹底に努めております。
④ リスク情報の共有と低減策検討
日常的な事故やクレームについてはグループ各社にて報告ルールを定めており、軽微なものを除いてヒトトヒトホールディングス社長にまで直ちに報告されるとともに必要に応じて具体的な指示を行い、事業子会社の事故やクレームについても持株会社として責任を持って解消に努める体制を整えております。加えて重大な事故やクレームについてはリスク・コンプライアンス委員会でも共有され、解消までの進捗管理に加えて根本原因の解消によるリスク低減策の検討も行う体制を整えております。
(5) 人財の確保について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、常時雇用に加えイベント需要に応じた臨時雇用の人的労働力を確保し、それらを配置・管理しております。現時点では十分な人数の臨時雇用者を雇用できているため問題は発生しておりませんが、有効求人倍率6.74倍(注)という厳しい採用環境にあり、今後人的労働力が流出した場合、または必要な人員が確保できない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、プロスポーツや大型商業施設など働き手にとって魅力的な職場の開拓や、女性や高齢者の活躍の場を広げるべくそれぞれの適性を考慮した職場の創出と役割分担を進め、より多くの求職者に応募してもらえる環境を整えてまいります。
(注)厚生労働省「一般職業紹介状況について 令和7年3月分」の参考統計表 保安職業従事者より
(6) 人件費の上昇について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは警備員、イベントスタッフ、派遣社員等の人的労働力に依存しており、人件費の大幅な上昇は売上原価の増加に直結しますが、物価上昇のもとで賃上げが進展し、名目賃金上昇率2.3%の増加(注)となっている環境下にあり、今後、人件費上昇が継続し、人件費上昇に見合った売上増加、価格転嫁ができない場合、業績へ悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、労務費の上昇分を適正に販売価格へ転嫁できるよう顧客との交渉を行うとともに、交渉状況をグループ経営会議で毎月報告し成功事例を共有することで、適正な収益管理を進めてまいります。
(注)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年3月分結果確報」の月間現金給与額 調査産業計より
(7) 法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの事業は、警備業法、派遣業法、職業安定法等の法規制の対象となっております。現時点では法令に違反する事実はないと認識しておりますが、仮にこれらの法令に違反した場合、営業停止、営業廃止等の行政処分を受ける可能性があります。万一法令違反により上記行政処分を受けた場合、当該業務の受託等が一時的又は永続的に行えなくなるため売上の減少を招く可能性があります。また行政処分や法令違反の公表に伴うレピュテーションリスクも考えられます。
これらのリスクに対処すべく、「(4) グループガバナンスについて ③ 法令遵守体制の構築」にも記載のとおり、法令遵守のための教育や法令改正情報の共有、内部監査部門における監査、リスク・コンプライアンス委員会での法令遵守状況の共有等により、法令遵守の徹底に努めております。
各業法に関する取得者名、取得年月、所管官庁、許認可等の内容、有効期限、法令違反の要件等については以下のとおりです。
(警備業)
(人材派遣業・有料職業紹介事業)
(廃棄物収集運搬業・建設業)
(8) 労務管理・コンプライアンス違反リスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは多くの従業員(正社員・有期雇用社員等)の人的労働力に依存しております。近時は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の全面施行による同一労働同一賃金の義務付け、ワーク・ライフ・バランスの趨勢とそれに伴う働き方改革関連法の施行、その一環である労働基準法改正による週60時間超の時間外労働に係る賃金割増率の引き上げなど、労働環境とそれに係る法規制に大きな変化が起きており、このような動きへのヒトトヒトホールディングスの対応により、優秀な人財の流出や人件費の上昇が生じる可能性がある他、これら法令への違反が発生した場合には、関係省庁からの改善命令や刑事処分や従業員からの訴訟による社会的信用の失墜、追加コスト発生等の可能性があります。
また、ヒトトヒトホールディングスグループではこれら従業員に対するコンプライアンス教育の充実を図り実践しておりますが、法令違反等のコンプライアンス違反が生じる可能性があり、その場合はクレーム発生によるレピュテーションリスクや社会的信用の失墜に加え、顧客からの訴訟や解約による収益への影響が生じる可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、管理監督者に対してこれら法令の教育を行い、管理監督者を通じてアルバイト含む従業員への指導を行わせることに加え、万が一の法令違反発生の際には「(4) グループガバナンスについて ④ リスク情報の共有と低減策検討」にも記載のとおり、ルールに基づいてヒトトヒトホールディングス社長にまで報告され、持株会社として責任を持ってリスクの軽減に努める体制を整えております。またリスク・コンプライアンス委員会にも共有され、リスク低減策の検討を行う体制を整えております。
(9) 同業他社との競争について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核である業務は小規模業者が多く(警備会社数約1万社(警察庁「令和6年における警備業の概況」より)、派遣会社数約4万4千事業所(厚生労働省職業安定局需給調整事業課「派遣元事業所数の推移」より))、ヒトトヒトホールディングスはサービス品質と価格、独自のスタッフ動員力により他社との競争を制して事業を拡大してまいりましたが、今後何らかの要因によってこれらのヒトトヒトホールディングスの強みを維持できない場合、他社との競合に敗れ業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。
これらのリスクに対処すべく、プロ野球で長年培った興行運営管理のノウハウを他のプロスポーツに展開したり、大型商業施設での施設警備のノウハウを今後開業が見込まれるスタジアム・アリーナに展開したりする等により、小規模事業者には実施困難な業務の開拓を続けてまいります。
(10)気候変動や自然災害等の影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの顧客は国内外で幅広く事業を営む企業が多く、それら企業が気候変動や環境保全に関する社会的要請に対応するため、大規模商業施設の開発計画見直しや既存施設の縮小・閉鎖、スポーツ興行事業の再編等を行う場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益機会減少の可能性があります。
ヒトトヒトホールディングスグループは、首都圏や阪神地域をはじめとする日本国内の主要都市に所在する顧客施設等で事業を行っていますが、当該地域に地震や台風等の大規模な自然災害が発生した場合は、顧客施設が営業を休止し収益機会減少の可能性がある他、当該地域に居住する従業員とその家族に人的・経済的な影響が生じる可能性があります。
また新型コロナウイルスの蔓延により2020年3月期以降3年にわたり、各種イベントの中止、延期または規模縮小によるヒトトヒトホールディングスの収益機会の減少の一方、コロナ関連業務の受託による収益機会の増大等がありました。今後も、新型コロナウイルスと同等の感染症の拡大により、感染症対策関連業務の受託による収益機会の増大の反面、行動制限に伴うイベント中止や商業施設休業による収益機会の減少、パンデミック発生によるヒトトヒトホールディングスのスタッフ動員力への悪影響の可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、人財サポート事業のような気候変動の影響を受けづらい業務の拡大を目指すことに加え、地震や台風等の自然災害に対してはBCP計画を定める等により影響の軽減に努めております。また感染症への対応については、収益機会の減少を補うような対策関連業務の対応拡充に努めてまいります。
(11)特定の取引先への依存について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループの売上構成においては主要取引先10社の合計が連結売上高の約40%を占めております。現時点では安定した信頼関係・取引関係を築けていると認識しておりますが、仮に取引先の意思決定に伴う業務縮小または解約等が発生した場合、ヒトトヒトホールディングスグループの収益が減少する可能性があります。
これらリスクに対応すべく、主要取引先との良好で安定した信頼関係・取引関係の維持発展に加え、既存業務のノウハウを活かした新たな取引先の開拓に努めております。
(12)個人情報及び顧客情報について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループは、事業活動を通して取引先の機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報及び多数の社員・スタッフの個人情報を保有しております。これらの情報は犯罪者、ハッカーなどの悪意を持った第三者やヒトトヒトホールディングスグループ従業員の故意または過失により侵害を受ける可能性があります。万が一上記の侵害が発生した場合、侵害の回復のための費用、訴訟費用の発生、売上や顧客の喪失に加え、信用の失墜等の悪影響の可能性があります。
これらのリスクに対処すべく、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員への周知・徹底を図る他、個人情報に関して中核となる子会社2社にてプライバシーマークを認証取得するなど、適切な管理により侵害の防止に取り組んでおります。
(13)AI技術等の新技術について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
AI、ロボット、IoT機器の技術の進化はめざましく、これまで機械化が難しかった業務においても置き換わっております。ヒトトヒトホールディングスグループの業務がこれらに一気に置き換わる可能性は低いと考えておりますが、Chat GPTをはじめとするAIの進化スピードはますます加速しており、今後の技術の進展によってはヒトトヒトホールディングスの業務の一部がAI等のシステムに置き換わる可能性も考えられます。
これらのリスクに対処すべく、ヒトトヒトホールディングスグループにおいてもこれら技術の活用を図り、「人」の行う業務の補完をさせながら「人」が行うべき業務にリソースを集中していく方針です。
(14)M&Aについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)
ヒトトヒトホールディングスグループの中核業務は全国各地に小規模業者が多いため、売上収益拡大のためにはM&Aが有効な手段と考えております。2022年3月期には(株)アプメス(現 ヒトトヒトキャリアライズ株式会社)、2024年3月期には(株)エース警備保障及び(株)エースガードの株式を取得し、連結子会社化いたしました。今後も必要に応じ積極的にM&Aを活用していく方針ですが、未認識債務の発生や事業環境の変化により想定したシナジーが発揮できないこと等、計画通りに事業拡大ができず、業績に悪影響を与える可能性も考えられます。
また、M&Aに伴う有利子負債の増加やのれんの増加するため、M&A先の業績が悪化した場合は、のれん減損の可能性が高まることが考えられます。
これらのリスクに対処すべく、M&A実施時には対象会社の財務内容や法令遵守状況等について詳細なデュー・デリジェンスを行うことによりリスク回避に努めるとともに、「(2) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて」に記載のとおり、新規案件の継続的な獲得や収益性を重視した戦略立案と経営管理により、のれん減損リスクの軽減に努めてまいります。
(15)季節による収益の変動について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)
ヒトトヒトホールディングスグループではプロスポーツ関連の業務を行っておりますが、プロスポーツは年間の数か月間を1シーズンとして開催されております。プロスポーツ関連業務の中ではプロ野球とプロゴルフ関連の売上高比率が高いことから、ヒトトヒトホールディングスの連結業績においても、プロ野球とプロゴルフのシーズン最盛期にあたる第1四半期と第2四半期の売上高が大きく、試合数が減少する第3四半期とオフシーズンに重なる第4四半期にかけて売上高が減少する傾向があります。
第3四半期と第4四半期がオンシーズンとなるBリーグ関連の業務も増加していますが、プロ野球とプロゴルフ関連の売上減少を補うほどではなく、利益についても売上高に連動した増減が生じる可能性があります。
第6期(2025年3月期)第1四半期から第7期(2026年3月期)第3四半期までの四半期毎の売上収益及び営業利益の推移は以下のとおりです。
(売上収益) (単位:百万円)
(営業利益) (単位:百万円)
これらのリスクに対処すべく、Bリーグ業務の拡大に加えて第3四半期と第4四半期の臨時イベント等の業務拡大、及び季節変動の影響が少ないビルマネジメント事業の施設警備及び施設管理業務や人財サポート事業の店舗運営受託業務等の拡大に努めることにより、売上収益の季節変動の低減を図ってまいります。
(16)上場維持基準への抵触について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場への上場を予定しております。スタンダード市場への上場に際して、売出しによってヒトトヒトホールディングス株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、ヒトトヒトホールディングスの流通株式比率は株式会社東京証券取引所が定めるスタンダード市場の上場維持基準に近接した水準となる見込みです。何らかの事情によりスタンダード市場の上場維持基準に抵触した場合、上場を維持できなくなる可能性がありますが、今後、大株主への一部売出しの要請によって流通株式数を増加させること等により、ヒトトヒトホールディングス株式の流動性の向上を図っていく方針です。
(17)経済状況等の事業環境について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)
ヒトトヒトホールディングスグループがサービスを提供する顧客の多くは、スポーツ興行や商業施設運営など消費者の余暇への支出を収益とする事業を営んでおります。
現下の経済状況は、不動産や生活必需品のインフレが進展しながらも賃金の上昇も続いており、消費者の余暇支出に関して顕著な変動はみられませんが、国内外の金融・貿易政策や国際紛争等に端を発する経済危機が生じた際は消費者の生活防衛のために余暇支出が抑制され、ヒトトヒトホールディングスグループの顧客の収益低下とヒトトヒトホールディングスグループへの発注量減少によるヒトトヒトホールディングスの収益機会減少の可能性が考えられます。
これらのリスクに対処すべく、新規顧客の開拓や新規事業の創出、M&Aによる事業多角化等により、経済状況の変動の影響を受けづらい経営体制を構築してまいります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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