人工衛星による地球観測衛星データの取得において、現在主流となっている観測手段は光学衛星です。光学衛星は、地球から反射する太陽光を光学カメラやセンサーによって観測します。そのため衛星と観測地点の間に雲のような遮蔽物が入る悪天候時や、観測地点に太陽光が届かない夜間には、観測データの取得が著しく制限されます。
QPS研究所ではこのような課題を解決し、地球のリアルタイム観測が当たり前となった世界を実現するため、①夜間や悪天候時でも撮影が可能であること、及び②常に衛星が上空を飛んでいる状態にするために多数の衛星を打ち上げることの両方を実現するべく、小型SAR衛星の開発及び製造を行い、小型SAR衛星により取得した地球観測衛星データ及び画像の提供を主な事業(以下「地球観測衛星データ事業」という。)としております。
QPS研究所小型SAR衛星のイメージ
「宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する」という経営理念の下、将来的に36機の小型SAR衛星によるコンステレーションを構築することで、地球上のほぼどこでも任意の地点を平均10分間隔で観測できる、もしくは特定の地域を選んで平均10分ごとに定点観測できる世界の実現を、QPS研究所は目指しております。
36機の小型SAR衛星コンステレーション
衛星コンステレーションとは、多数個の人工衛星が協調動作する様子を星座(英:constellation)に見立てたシステムです。衛星コンステレーションを構築する多数個の人工衛星を打ち上げるには、製造コスト及び打上げコストを大幅に低減させる必要があります。QPS研究所が開発する100kg級の小型SAR衛星は、従来の数トン単位の大型SAR衛星とは異なり小型かつ軽量であるため、製造コストや打上げコストを低く抑えることができ、かつ短期間での開発が可能であります。
QPS研究所では、2019年12月に実証試験機である小型SAR衛星1号機(愛称「イザナギ」)を、2021年1月に同じく実証試験機である2号機(愛称「イザナミ」)を打ち上げました。2021年5月には2号機イザナミにより高精細モード(分解能70cm)の地球観測画像の取得に成功し、2021年12月より2号機による地球観測画像の販売を開始いたしました。3号機及び4号機は2022年10月のイプシロン6号機の打上げ失敗により損失を被ったものの、商用機である3号機以降の衛星開発は1号機及び2号機による実証結果を踏まえて改善を施しており、前事業年度に3機、当事業年度に3機の打上げを成功させ、当事業年度末時点においては7号機(ツクヨミ-Ⅱ)・8号機(アマテル-Ⅳ)の2機によって画像販売事業を展開しております。
SAR衛星とは、Synthetic Aperture Radar(和:合成開口レーダー)と呼ばれるリモートセンシング技術を利用した、地球観測のための人工衛星です。SAR衛星は、衛星自身が観測地点に対して電波を発射し、反射した電波によって対象物の大きさや表面の性質、距離等を測定します。観測地点からの太陽光の反射に頼らないSAR衛星は、天候や時間帯に左右されることなく常時地球を観測できる大きな利点を持ちます。その一方で、SAR衛星は電波の送受信に大量の電力消費と大きなアンテナを要するため小型化と解像度はトレードオフの関係にありました。
光学衛星とSAR衛星の比較
QPS研究所の100kg級小型SAR衛星は、QPS研究所が特許を保有する展開式パラボラ型アンテナを搭載しております。軽量かつ大口径のアンテナを搭載することで、SAR衛星の小型化と解像度の両立を追求してきたQPS研究所は、実証機である2号機において分解能70cm、商用機である6号機以降においては分解能46cmを実現しました。
従来のSAR衛星とQPS研究所小型SAR衛星の比較
等間隔に設置された骨組み(板バネ)と金属メッシュで構成されるQPS研究所の2号機までに搭載されていた展開式パラボラ型アンテナは、24本の板バネと精緻な縫製技術によって、大口径にしてわずか10kgという相反するスペックを持ち得ました。アンテナは直径80cmまで畳まれた状態でロケットに取り付けられ、軌道投入後、展開動作の開始からわずか2秒で、板バネが元に戻る力によって直径360cmの大きさに展開します。3号機以降に搭載されているアンテナでは、板バネを36本に増やし、重量も30kg程度まで増加しておりますが、展開後のアンテナ形状が改善したことで画質の大幅な向上を実現しております。
展開式パラボラ型アンテナ展開後のQPS研究所小型SAR衛星
(アンテナ直径:格納時80cm / 展開時360cm)
SAR衛星は自ら照射・受信したマイクロ波の強弱によって地表を観測しています。例えば高層ビルのような背の高い建築物は、地表からビルに反射するものと合わせて、マイクロ波を強く反射するため白く写ります。反対に海や河川のような水面は、遮蔽物もなく表面が滑らかなので、マイクロ波を受信しづらく黒く写ります。なお、通常、観測データの画像化は地上で行われますが、QPS研究所小型SAR衛星 商用機には観測データを軌道上で画像化する装置を搭載しており、データ撮影から提供までのリードタイム短縮に貢献しております。
QPS研究所小型SAR衛星6号機が撮影した実際の画像
(2023年7月20日、神奈川県横浜市)
観測地点の天候や時刻に左右されないSAR衛星の特性は、第一に災害時における被災地の状況確認等の防災・減災の観点から、災害大国と呼ばれる我が国において人々が安心して暮らす上で、欠かせない価値の創出を期待されています。また、安全保障の分野においては、2022年から続くウクライナに対する軍事侵攻に際し、ロシア軍の動向監視に国外のSAR衛星事業者による画像が活用され注目を集めましたが、一般的に海外政府に対する撮影の優先権は必ずしも高くないため、日本国内の衛星事業者が運用するSAR衛星に対する期待は高まっております。
一方で宇宙開発全般における事業上のリスク、初期投資のスケールや国際的な競争環境等は、QPS研究所にとって課題であると同時に他の民間事業者に対する参入障壁にもなっております。こうした背景を受けて、日本政府は2023年6月、宇宙開発戦略本部において「宇宙安全保障構想」を決定し、人工衛星が災害対応や安全保障を支えているという認識を示した上で、JAXAが大学や企業の民間ビジネスに対して投資を可能にする法改正を進める方針を示すなど、宇宙開発において官民連携でイノベーションを加速していく姿勢を、これまで以上に明確に打ち出しています。
QPS研究所では今後の本格的な事業展開に先立ち、日本政府による宇宙開発利用加速化プログラム(以下「スターダストプログラム」という。)に参画し、地震や津波、台風などの自然災害に強い経済社会システムを構築していく取り組みである国土強靭化等の特に公益性の高い分野において、SAR衛星による観測データを提供しております。スターダストプログラムを通じてQPS研究所は、JAXAを管轄する文部科学省だけでなく様々な官公庁と連携することで、災害時の対応や電力会社等におけるインフラ管理等、多くの分野で協働の可能性を検討しております。
QPS研究所の地球観測衛星データ事業は上記の特徴から安全保障分野の需要が高く、2022年5月期よりサービスを開始しております。現在は特に安全保障、海洋監視、インフラ管理、防災・森林監視について働きかけており、従来の常識では考えられなかった新たなサービスを創出してまいります。なおQPS研究所は地球観測衛星データ事業の単一セグメントであります。
[事業系統図]
QPS研究所の事業系統図は以下のとおりであります。
QPS研究所の小型SAR衛星による観測データは、官公庁のような公的機関や法人等を対象として販売しております。本書提出日現在は売上の大部分を官公庁が占めておりますが、今後は民間企業に対する拡販を推進していくため、データの解析を得意とする販売代理店と提携するなど、更なる付加価値の提供も進めていく方針です。また販売先は国内に留まらず、市場規模のさらに大きな海外市場に対する拡販も推進してまいります。
九州宇宙開発パートナー
QPS研究所の技術は、地元九州の高い技術を持つ企業群を中心とした多くのビジネスパートナーに支えられています。QPS研究所の創業メンバーはQPS研究所の創業に先立ち、2003年より九州を行脚して地場産業の育成に取り組みました。その後、「九州に宇宙産業を根付かせる」ことを目的に創業し、現在では九州北部に宇宙産業クラスターを形成するまでに至っております。
QPS研究所の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在においてQPS研究所が判断したものであります。
(1)経営方針
QPS研究所は、「宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する」という経営理念の下、地球の常識が宇宙では非常識になってしまうそのギャップを技術と創造力で埋め合わせることで、地球上では実現できないソリューションやビジネスを実現し、結果として人類の発展に貢献する企業になりたいと考えております。宇宙全体を巻き込む経営理念の具体化に向けて、まずは「小型衛星コンステレーションによるリアルタイム観測」を実現するべく、36機のSAR衛星コンステレーションの構築を推進しております。
なお、36機のSAR衛星コンステレーションは、各9機のQPS研究所小型SAR衛星を投入された4本の軌道で構成する計画です。QPS研究所小型SAR衛星は、約90分で地球を周回する低軌道へ投入を進めております。同一軌道に等間隔で9機を投入することで、計算上は10分間隔の観測が実現できますが、同時に地球の24時間間隔の自転を考慮しなければ、同一地点を観測することはできません。QPS研究所は、一定地域を除く世界中の任意の地点を平均10分間隔で観測するために4本の軌道へQPS研究所小型SAR衛星を投入し、これまで見えなかった動きや変化を把握できる世界の実現を目指しております。
(2)経営戦略
QPS研究所では上記の経営方針に基づき、36機のSAR衛星コンステレーションの構築を迅速に進めてまいります。
開発戦略
QPS研究所では現在、年間4機のQPS研究所小型SAR衛星を製造できる能力を有しておりますが、工場の新設によって2024年には年間10機に拡大させる方針であり、開発体制の強化とコンステレーションの構築を加速させてまいります。また現状ではQPS研究所小型SAR衛星は、地上局上空を通過する際に地上とデータを送受信しておりますが、静止軌道上の通信衛星を介する衛星間通信を実現させる機能追加を実施することで、QPS研究所小型SAR衛星による撮像から地上でのデータ取得までに生じる時間差を縮小し、リアルタイム観測の実現を推進いたします。また衛星寿命の延伸による収益性の改善にも取り組んでまいります。
打上げ計画
地球観測衛星の周回軌道は、北極・南極の上空を通過し全球を観測できる太陽同期軌道が採用されることが一般的です。しかしながら、地球上における人類の活動圏は赤道近辺に集中しているため、QPS研究所は北緯45度から南緯45度の間を周回する傾斜軌道へQPS研究所小型SAR衛星を投入し、日本近辺や先進国の大都市圏を特に多く撮像することで、他社との差別化を進めてまいります。ただし当面は打上げ機数の確保を優先するべく、打上事業者によるサービスの頻度が高い、太陽同期軌道への投入も実施する予定です。
販売戦略
① 国内官公庁
QPS研究所の地球観測データビジネスは安全保障分野の需要が高く、2022年5月期より防衛省向けのサービスを開始しております。QPS研究所小型SAR衛星2号機により撮像した画像の販売を開始したことにより官公庁におけるニーズの存在を確認しましたため、2023年6月に打ち上げた6号機以降の打上げにより撮像キャパシティが順次増加し、提供枚数も増加することを想定しております。
② 国内民間
安全保障分野以外においては災害時の対応や電力会社等におけるインフラ管理等多くの分野で協働の可能性を検討しております。現在は特に海洋監視、インフラ管理、防災/森林監視の分野について働きかけており、QPS研究所株主でもあるスカパーJSAT株式会社(以下「スカパーJSAT」という。)や日本工営株式会社(以下「日本工営」という。)の他、九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)や株式会社ウェザーニューズ(以下「ウェザーニューズ」という。)、株式会社ゼンリン(以下「ゼンリン」という。)、東京海上日動火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社との実証実験等のプロジェクトを通じて、民間ビジネスの開拓を進めており、案件の具体例は以下のとおりです。
・小型SAR衛星群による新たなサービス創出等に向けた共同実証
協業先:九州電力、JAXA
想定ニーズ:電力会社等の広範囲にインフラを有する事業者のインフラ管理の効率化
想定顧客:電力会社、通信会社、交通インフラ会社、建設会社等
・民間における衛星防災情報サービスの実用化に向けた実証
協業先:スカパーJSAT、ゼンリン、日本工営
想定ニーズ:豪雨・災害時の堤体、田畑や住居における川や池の越流の状況把握、堤防や土手の管理
想定顧客:官公庁、県庁・市役所、土木・建築会社等
・高精度な海氷情報を活用した、船舶の運航を支援するサービス創出に向けた共同実証
協業先:九州電力、九電ビジネスソリューションズ(現Qsol)、ウェザーニューズ
想定ニーズ:北海航路等、船舶向けの夜間・天候不良時の航行情報の提供、海賊対策、
並びに効率かつ安全な航路の提案
想定顧客:海運会社、損害保険会社、商社等
・小型LバンドSAR衛星の開発
協業先:JAXA
内容:大型LバンドSAR衛星(ALOS-2)を運用するJAXAと
小型XバンドSAR衛星を運用するQPS研究所による共同研究
想定顧客:国土交通省、建築会社、地図データ・測量会社、林業、製紙会社等
・小型SAR衛星に対するオンボード高性能計算機の搭載技術実証
協業先:JAXA
内容:現在地上で行っている画像解析を衛星内で行い、解析結果を地上に送る他、
衛星内で解析した結果を元に次の観測計画を自動で行う技術の実証
想定顧客:国、画像解析を必要とするすべての分野、業界
③ 海外
小型SAR衛星は地球の自転速度を大幅に上回る約90分で地球を1周するため、日本周辺に限らず世界中の上空を航行しており、該当地域の地表を観測することが可能です。QPS研究所では代理店経由にて、北米を中心に、EUや南米、中東等のエリアの画像販売を推進していくことを想定しております。
現在、SAR衛星の市場規模の拡大としては、Research and Markets社「Synthetic Aperture Rader Global Market Report 2024」が2028年に82.9億ドル(USD@160円換算で1兆3,264億円)、Brandessence Market Research社「Synthetic Aperture Radar Market」は2028年に88億ドル(USD@160円換算で1兆4,080億円)を予想するなど、年間10%以上の成長を遂げることを複数の市場データが示しております。海外市場においては従来から日本国内に先行する形で、SAR衛星による画像データ市場の開拓が進んでおりました。2022年に生じたロシアによるウクライナ侵攻を契機としてSAR衛星の有用性が示されたことで、官民問わず旺盛な需要が見込まれております。QPS研究所では海外市場に向けた販売体制を強化していくと共に、世界各地で行われる展示会へ出展し、代理店候補の調査とコネクションの構築を進めてまいります。
(3)経営環境
QPS研究所が属する地球観測衛星データ事業を含む衛星サービスビジネスの市場は、内閣府宇宙開発戦略推進事務局「宇宙ビジネス拡大に向けた内閣府の取組」(2021年2月10日)にて引用されているSatellite Industry Association「2020 State of the Satellite Industry Report」によると、2019年度の市場規模が1,230億ドル(USD@160円換算で19.68兆円)となっております。
日本における市場は、宇宙開発戦略本部「宇宙基本計画」(2023年6月13日)において、宇宙機器と宇宙ソリューションの市場を合わせて、2020年に4.0兆円となっている市場規模を、2030年代の早期に2倍の8.0兆円に拡大していくことが目標とされています。また、今年度の全府省庁の宇宙関係予算の合計額は8,945億円(令和6年度当初予算及び令和5年度補正予算の合計額)にのぼり、前年度比で約46%増加しています。
このような市場環境のもと、QPS研究所が提供するサービスに対する需要も市場の拡大に伴い高まっていくものと考えております。一例として、QPS研究所が手掛けるSAR衛星は、天候、昼夜関係なく観測が可能であるため、「今」地上で起きていることを把握でき、特定の地域を定点観測することができます。そのため、人・車・船等の“移動体”の動きを把握するセンサーの代替として、下記のような応用活用が期待できます。
・人の数や動きを分析(ヒートマップ等)にして、土地や建物の『真の価値』を算出
・特定の車や船の行動を分析・ダム等の建設の進捗状況を確認
・競合店舗に停まっている車の数をカウント(売れ行きを把握)
・店舗のカメラと連携して、街全体のセキュリティシステムを構築
また、SAR衛星の特性を活かし時間差で同じ場所より観測することで(干渉)、観測対象で起きている「誤差」、「変化」を認識できるため、カメラの表面的な画像以上の情報を得られることにより、下記のような応用活用が期待できます。
・線路のズレより、故障を早期発見
・ビル、住宅の傾きやズレ、反射の変化より経年劣化を検知
・工事現場での地盤の陥没、傾斜、材料の量、使用量を検知、測定・地盤のズレにより地震を予知
・農業での適正収穫時期を判断
・自動運転の実現に必須である高頻度・高精度3Dマップを作成
加えて、QPS研究所衛星により取得した地球観測データ及び画像は、蓄積され継続性のあるものとしてアーカイブしてまいります。QPS研究所が提供する高精細なアーカイブデータを、高度な解析技術を持つ販売代理店が気候データ、市場・経済データ等と組み合わせて解析することで、蓄積された過去のパターンより将来の状況を予測できる下記のようなアプリケーションの構築を目指しております。
・物流や交通量よりその国や地域の経済を予測
・工場、港、店舗等といったサプライチェーンを定点観測することで、業界・市場の未来を予測
・穀物の生育具合、より将来価値を予測
・人、クルマの行動パターン、建物の変化の蓄積より、交通渋滞予測、最適ルートの判断、更には事故・危険の予測等
・地盤の変化より地震や土砂崩れ、火山の噴火、道路の陥没を予測
小型SAR衛星については技術的なハードルが高いこともあり、世界的に見ても参入を果たしている企業は限定的な状況であります。従来、SAR衛星は電波の送受信に大量の電力消費と大きなアンテナを要することから、小型化と高分解能の両立は困難で、実現には省電力化するためのアンテナ等の開発が必要となります。QPS研究所の場合、パラボラアンテナの採用により小型化と高分解能を同時に実現しておりますが、他社が同様のアンテナの開発を行うには長年の研究が必要となり時間的ハードルについてもその参入を困難にしているものと考えられます。なお、光学カメラ衛星とSAR衛星は技術領域が異なり、光学カメラ関連業界からの参入についても他業種からの参入同様のハードルが存在します。
世界における小型SAR衛星の開発、打上げに関してはフィンランド、米国が先行しております。日本においてはQPS研究所を含めた数社となっております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
QPS研究所は、小型衛星コンステレーションによるリアルタイム観測の実現というビジョンを掲げ、地球観測衛星データ事業を推進しております。
当地球観測衛星データ事業は、事業の基盤となる小型SAR衛星製造に向けた技術開発、製造及び打上げに多額の資金を要する等の特性があり、このような環境のもと、QPS研究所は継続的な発展のため、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 小型SAR衛星を活用したビジネスモデルの拡大
安全保障分野に関する販売及び収益の拡大に加え、民間における協働の可能性を模索している分野でのビジネスモデルを早期に構築し、事業の拡大を図ってまいります。
② 小型SAR衛星の技術開発とインフラ構築の推進
継続的な収益拡大のために小型高分解能SAR衛星によるコンステレーションの実現に邁進してまいります。また、同衛星の撮像能力向上とともに、同衛星が取得する観測データを迅速かつ簡便にエンドユーザーに提供するインフラの構築と技術開発を推進いたします。
③ 製造、販売体制の強化
中長期的には自社コンステレーション並びに他社販売に伴う衛星製造数量の増加とコストダウン圧力に対応すべく、開発人材の新規採用や製造工場の新設等により年間10機を生産可能な量産体制の構築を進め、更に衛星の販売並びに地球観測データビジネスのモデル構築のための事業開発、マーケティング及び販売の体制強化を図ってまいります。
④ 資金調達の実施
QPS研究所にとって技術開発活動及び事業基盤の拡充を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じて機動的に資金調達を行う必要があります。今後も技術開発活動及び事業基盤の拡充に向けて資金調達の可能性を検討し、推進してまいります。
(5)経営上の目標達成状況を判断するための客観的指標等
企業価値を継続的に向上させるためには利益の確保が重要であることから、QPS研究所は売上高成長率を最も重要な経営指標として採用しております。
QPS研究所が取得、提供する地球観測データ及び画像について、36機を上限としてSAR衛星の軌道投入・運用機数を増やしていくことにより、地球観測地域とデータ取得頻度を高めることが可能となり、サービス品質の向上に繋がります。そのため売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、地球観測衛星データ取得のためのSAR衛星の軌道投入・運用機数を重要指標とし、2028年5月期中に24機の小型SAR衛星によるコンステレーション構築を目指しております。
QPS研究所の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があるリスク要因として考えられる主な事項には、以下のものがあります。必ずしもリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しています。QPS研究所は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、QPS研究所株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。
QPS研究所のリスク管理体制としては、リスク・コンプライアンス規程を定め、社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会にて、事業を取り巻く様々なリスクを洗い出し、適切な対応策の検討並びに実践を図り、リスクの未然防止及び低減に取り組んでおります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてQPS研究所が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 市場について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所が属するSAR衛星の世界市場は近年急速に成長を続けており、2024年の市場規模は49.7億ドル(USD@160円換算で7,952億円)と推測され、2028年には82.9億ドル(USD@160円換算で1兆3,264億円)まで拡大する(出典:Research and Markets社「Synthetic Aperture Rader Global Market Report 2024」)と想定されています。しかしながら、光学衛星に対するSAR衛星の認知は徐々に高まってはいるものの依然として不十分であり、QPS研究所の取引は、防衛・防災等の特に公益性の高い分野に需要のある国内官公庁に限定されております。民間部門への拡がりはまだ端緒についたばかりであり、国内市場の成長ペースが大きく伸長しない可能性があり、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、市場の拡大が進んだ場合であっても、QPS研究所が同様のペースで順調に成長しない可能性があります。さらに、市場が成熟していないため、今後、大手企業や新興企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所は、衛星リモートセンシング領域において事業展開しております。当該分野のうち光学衛星については大型から小型の衛星まで多くの企業等が事業を展開しておりますが、QPS研究所が手掛けるSAR衛星については、大型衛星の運用実績は見られるものの、小型衛星については技術的なハードルが高いこともあり世界的に見ても参入を果たしている企業は限定的な状況であります。QPS研究所としましては、優位性をもって引き続き事業の拡大及び競争力の強化を努めてまいりますが、今後優れた競合企業の登場、競合企業による更なる技術革新や付加価値の高いビジネスモデル・ソリューションの出現等により、QPS研究所の競争力が低下する可能性があり競争優位性を失った場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所は、小型SAR衛星のQPS研究所特有の製造技術・ノウハウ・知見及び運用実績を軸に事業を展開しており、当該技術及びその周辺技術の競争優位性を維持・強化し続けることが重要であると認識しております。また、QPS研究所は、すでに保有している技術・ノウハウ等の維持・強化だけでなく、継続的な研究開発による新技術の積極的な獲得・展開を行い、一層強固なサービス提供体制を構築していく方針であり、優秀なエンジニアの採用・育成や職場環境の整備により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。しかしながら、技術革新等への対応が遅れた場合や、研究開発費等の想定以上の多額の費用が発生した場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 法規制等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所の主要な事業活動の前提となる事項について、QPS研究所は無線局(人工衛星局及び地球局)に対する総務大臣の免許(電波法第4条)、衛星リモートセンシング装置に対する内閣総理大臣による使用の許可(衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(以下「リモセン法」という。)第4条第1項)及び人工衛星に対する内閣総理大臣による管理の許可(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(以下「宇宙活動法」という。)第20条)を取得しております。
電波法第13条に基づき、無線局(人工衛星局及び地球局)に対する免許の有効期間は、免許の日から起算して五年を超えない範囲内において総務省令で定められており、再免許を受けることも可能となっています。電波法第5条に定める欠格事由(外国の法人又は団体、等)に該当する場合には、免許が与えられません。また、同第76条に定める取消事由に該当する場合等には、総務大臣は無線局の運用の停止や免許の取り消しができます。QPS研究所は外国籍の者を代表者とせず、外国人株主の議決権は三分の一未満であるため、電波法第5条の欠格事由には該当いたしません。また、通常の無線局の運用を行う上において、同第76条の取消事由に該当する要因は無いと考えます。
リモセン法に有効期限その他の期限はございませんが、衛星リモートセンシング装置の使用を終了するときは、同第15条第2項に基づき終了措置を講じ、遅滞なくその措置の内容を内閣総理大臣に届け出なければなりません。また、通常の無線局の運用を行う上において、同第17条の取消事由に該当する要因は無いと考えます。
宇宙活動法に有効期限その他の期限はございませんが、人工衛星の管理を終了するときは、宇宙活動法第28条第1項に基づきあらかじめその旨を内閣総理大臣に届け出るとともに、終了措置を講じなければなりません。また通常の無線局の運用を行う上において、同第30条の取消事由に該当する要因は無いと考えます。
その他法規制として国内においては、人工衛星の製造・輸出に関する法規制として、関税法、外国為替及び外国貿易法、及び輸出管理令、衛星通信に関する法規制として、国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則(ITU)、及びその他法規制として、知的財産関連法(知的財産基本法、特許法、著作権法、不正競争防止法等)、製造物責任法、民法等の法的規制の適用を受けております。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁・事業停止命令等を受けた場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、国内外における衛星の打上げ、運用及び商業利用に対して適用される現行の制度を変更するような法令等が新たに制定されたり、QPS研究所の事業に不利益となる改正等が行われたりした場合には、事業運営上の制約が生じる可能性があり、これによりQPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクへの対策として、QPS研究所はリスク・コンプライアンス規程を制定しQPS研究所役職員に対し規程の遵守を求めるとともに、リスク・コンプライアンス統括責任者を任命し、同責任者を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置して定期的に開催することとしております。また、コンプライアンスを社内に定着させていくために、「コンプライアンスマニュアル」を定めるとともに、取締役及び使用人への教育、研修等を行っており、QPS研究所の事業活動又は取締役及び使用人に法令違反の疑義のある行為等を発見した場合、速やかに通報・相談できる窓口を社内及び社外に設置し、適切に運用しております。しかしながら、このような法令遵守の体制及び対策を取ったとしても、法令違反の可能性を完全に排除できないリスクや国内外における新たな法令等の制定や改正に関する情報の入手が遅れる等、適切な対応が行えず、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ いわゆる外資規制に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所は、運用する人工衛星につき電波法で定める無線局としての免許を受けております。電波法には、 (ⅰ)日本の国籍を有しない人、(ⅱ)外国政府若しくはその代表者又は(ⅲ)外国の法人若しくは団体(以下「外国人等」という。)が議決権の三分の一以上を占めるものには無線局の免許を与えない旨の規定があり、QPS研究所の株主構成の変動により上記に該当することとなった場合には、新たに無線局の免許を受けることができないこととなることに加え、保有している無線局の免許が取り消される可能性があります。
しかしながら、電波法には、一定の場合に外国人等の株主名簿への記載又は記録を拒む権利等、上記の事態を防止する手段が定められていません。QPS研究所では、当事業年度の期末日現在における外国人等の議決権比率が1.99%であることからも、当該比率が早急に三分の一以上となることは想定していませんが、将来的に外国人等の議決権比率が三分の一以上となり、QPS研究所が電波法に基づく免許を受けることができないこととなった場合には、QPS研究所の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、本リスクについては顧問弁護士と協議をしており、対応策についても検討を進めております。
⑥ 為替相場の変動リスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所が衛星製造のために調達する部材・デバイスを海外から輸入する場合や衛星を打ち上げるために海外のロケットを利用する場合には、主に米ドル建てにより資金決済を行っておりますが、特に円安基調に推移した場合には仕入コストが増加する可能性があります。QPS研究所では、為替予約の実施によりリスクヘッジに取り組んでおりますが、急激な為替変動があった場合には、QPS研究所事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に由来する事項
① 衛星打上げ失敗リスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所は、衛星打上事業者にSAR衛星の打上げを委託しております。昨今の主要ロケットの打上げ成功確率は高く、QPS研究所小型SAR衛星2号機及び6号機の打上げ実績があるFalcon 9系ロケットにおいては、打上事業者であるSpace Exploration Technologies Corp.(米国、通称:SpaceX社)が2023年内に96回の打上げを全て成功させ、また打上事業者Rocket Lab USA,Inc.(米国、通称:Rocket Lab社)によるElectronロケットにおいても、QPS研究所小型SAR衛星5号機を含む9回の打上げを2023年内に成功させております。一方で、ロケットの不良による失敗、並びに衛星打上事業者との契約で合意した軌道への投入失敗の可能性があります。QPS研究所のSAR衛星の打上げには全て宇宙保険(打上保険)を付保しており、衛星の打上げに失敗した場合、SAR衛星の製造費用や打上費用等は保険金の対象となっています。しかしながら、衛星打上げに失敗した場合には、当初見込んでいた画像販売ができなくなる機会損失が発生し、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、宇宙保険市場環境の変動による保険料高騰のリスク及び戦争やテロ等の免責事項に該当する場合に保険金支払いの対象にならないリスクがあります。また、衛星打上事業者への打上費用の多くは打上げ実施前に前払いしていますが、打上げ実施前に衛星打上事業者が経営破綻した場合は前払金が回収不能となる可能性があります。
② 開発・打上げ等の各種計画の進捗に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
SAR衛星の軌道投入・運用機数については毎月の取締役会で継続的に状況を補足、検討しており、事業計画に沿ったスケジュールを実現するために取り組んでおります。しかし、当初の開発計画どおりに開発が進まない場合や打上げスケジュールが遅延する等の理由により、当該計画どおりのSAR衛星の軌道投入・運用が図られなかった場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 知的財産権について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所は、QPS研究所の事業に関する知的財産権の獲得に努めるとともに、「知的財産管理規程」を制定し知財責任者を定め、知的財産の全社的管理を行っています。また、QPS研究所による第三者の知的財産権侵害の可能性についても調査可能な範囲で対応を行っておりますが、QPS研究所の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、QPS研究所が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性があります。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 部品・部材等の調達について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所は、研究開発活動に必要な部品・部材等の多くを外部の取引先から調達しておりますが、取引先からの供給が中断した場合や代替先の確保が困難な状況に陥った場合には当該活動が制限され、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。特にSARシステムのデータ処理部、信号発生部の設計・製造・役務業務の委託先は、国内では極めて限定されております。
また、QPS研究所は、調達にあたっては、品質確認等の受入れ検品を慎重に実施しております。しかしながら、品質に問題が生じた場合や、調達品の調達先における生産体制及び品質管理体制に問題が生じる等、QPS研究所の事業運営に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 衛星の運用について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所が保有し運用する衛星は最低5年を目途に使用されますが、運用期間中に製造上の瑕疵や欠陥部品、また宇宙放射線や太陽活動に伴う磁気嵐等による宇宙空間特有の環境における電子部品の性能劣化、加えて衛星管制上又は運用上の不具合その他の要因による衛星の機能不全又は機能低下を招く可能性があります。このような事態が生じた場合、地球観測衛星データ及び画像が提供できない、またできたとしても提供するデータ・画像精度が落ちることによる収益の低下により、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、上記要因により、衛星の収益が悪化し、回収可能価額を著しく低下させる変化が認められ、帳簿価額の回収が見込めない場合には、減損損失を計上することとなり、QPS研究所の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
QPS研究所は、衛星コンステレーションを構築することで、運用中の衛星に不具合が生じた場合であっても可能な限り短期間でバックアップができる体制を図っており、また衛星単体においても冗長系を組むなど信頼性を向上させる施策を取っております。しかしながら、現在想定している対策を講じても、不測の事態により、コンステレーションによる代替機能が確保できないことによる収益低下により、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥ 設備及びネットワークの安定性について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所の事業を支えるサーバーは、QPS研究所が契約するクラウドサービスプラットフォームで管理されており、複数のサーバーによる負荷の分散、冗長化、定期的なバックアップの実施等を図り、システム障害を未然に防ぐべく取組を行っております。上記取組には、衛星との間で通信を行う地上局の負荷の分散、冗長化も含まれており、限定的な火災、地震等の自然災害や外的破損の発生時にもサービスの維持が可能となるよう体制を構築しております。
しかしながら、上記取組にも関わらず、例えば日本全土に渡るような大規模災害、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象の発生により、万が一、QPS研究所が契約するクラウドサービスプラットフォーム、地上局やネットワークの利用に支障が生じた場合は、衛星の運用やサービスの停止等を余儀なくされることとなり、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦ 特定の取引先への依存について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所は売上高の大部分を内閣府や防衛省等の官公庁に依存しております。なお、官公庁向けの売上げ及び比率については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ 生産、受注及び販売の実績 c.販売実績」をご参照ください。これら依存度の高い取引先とは現在良好な関係を維持しておりますが、何らかの事情によりこれら販売先との取引が大きく変動した場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 衛星取得データ及び画像販売における他社との提携について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
地球観測衛星データ事業では、直販に加え販売代理店を経由しエンドユーザーに販売いたします。
具体的にはスカパーJSAT株式会社及び日本工営株式会社と販売支援に関する契約を締結しております。
各企業の販売目標を目安に販売計画を作成しておりますが、何らかの事情により計画どおり販売が行われない場合、各社の事業方針に変更等があった場合には、QPS研究所の業績に影響を与える可能性があります。
⑨ 重要情報の流出や取扱い及びサイバーセキュリティについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
QPS研究所は、技術情報や地球観測衛星データを含む重要な情報を保有しております。当該情報が、ハードウエア、ソフトウエアの不具合及び人為的ミスによるシステム障害や第三者による不正アクセス等により流出した場合や、当該情報の不適切な取扱いが発生した場合は、社会的信用の低下や損害賠償その他対応に係るコスト負担等により、QPS研究所の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、大規模なサイバー攻撃を受けた場合、当該情報が流出するのみならず、地球観測衛星データの取得や同データの提供サービスの運用に障害が生じる可能性があります。
QPS研究所は、上記リスクへの対策として、国際的な規格に基づくISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得し、情報セキュリティマネジメントシステムを構築し、厳格な情報管理を行っております。当該活動の一環で、情報セキュリティ管理規程に基づき情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティ管理の状況をモニタリングしております。しかしながら、現在想定している対策を講じても新技術を用いた高度なサイバー攻撃など、現在想定している対策を超える事態の発生により、技術流出やサービスに障害が発生する可能性があります。
⑩ 継続的な投資について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所は継続的な成長のために、衛星開発のための必要な研究開発活動を継続する必要があると考えており、これまで積極的に研究開発費を投下しており、今後も継続して研究開発活動を促進していく方針であります。
その結果として前期まで継続的な営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローとなっておりましたが、2024年5月期においては商用衛星の収益貢献が始まったこと等により、営業利益及びプラスの営業キャッシュ・フローを計上しております。
今後の研究開発活動については、その費用対効果を勘案しながら慎重に行っていく方針ではありますが、研究開発活動の効果が十分に得られない場合や、費用発生が先行する研究開発案件の増加等により開発コストの増加等が生じた場合、想定以上の投資に係る費用が発生することが想定され、中期経営計画が達成できない可能性や営業損益等が一時的にマイナスとなる可能性があり、QPS研究所の業績に影響を与える可能性があります。
(3)組織体制に関するリスク
① 特定人物への依存について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所の代表取締役社長である大西俊輔は、経営方針や戦略の立案・実行、SAR衛星の開発・運用を推進し、QPS研究所を牽引してまいりました。QPS研究所の事業規模が拡大するとともに、権限委譲を進め、過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、QPS研究所の事業へ関与できない状況が発生した場合、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 組織規模について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所は小規模な組織であり、現在の人員構成において最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。QPS研究所は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材確保・育成について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所が今後事業を拡大していくためには、人材の確保、育成が重要であると認識しております。しかしながら、QPS研究所が求める優秀な人材の確保が滞る、社内の人材の流出が進むと言った場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 退職者による技術・ノウハウ流出について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所のSAR衛星関連技術について、特許等によりコアとなる技術は保護されている状態を保っておりますが、退職者によって、QPS研究所技術と異なるも近しい技術が他社により開発され、独自性が失われ市場への訴求力が低下するような事態となった場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他のリスク
① 配当政策について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低
QPS研究所は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な課題として認識しております。しかしながら、QPS研究所は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、各期の財政状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく所存でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。
② 税務上の繰越欠損金について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所は税務上の繰越欠損金を有しております。QPS研究所の業績が順調に推移することにより、期限内にこれら繰越欠損金の繰越控除を受けられる可能性があります。しかしながら、QPS研究所の業績の下振れ等により、繰越期限の失効する繰越欠損金が発生した場合には、課税所得からの控除が受けられなくなり、通常の税率に基づく法人税住民税及び事業税が計上されることになり、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
QPS研究所は役員及び従業員等に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的としてストック・オプションを付与しております。今後も優秀な人材確保のためのストック・オプションを発行する可能性があり、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、QPS研究所の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、当事業年度の期末日における新株予約権による潜在株式数は3,573,900株であり、発行済株式総数36,337,800株の9.8%に相当しております。
④ ベンチャーキャピタル等のQPS研究所株式保有比率について
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
QPS研究所の株式上場後、ベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合及びベンチャーキャピタル又は投資事業有限責任組合が株式事務を委託した代行機関、金融商品取引業者(以下「VC等」という。)が、その所有するQPS研究所株式の全部又は一部を売却しましたが、依然としてその一部は保有されており、QPS研究所の期末日における発行済株式総数36,337,800株に対するVC等が保有する割合は18.0%となっております。
今後もVC等がその所有するQPS研究所株式の一部、又は全部を売却することが想定され、QPS研究所株式はその売却により需給バランスの悪化が生じる可能性があり、QPS研究所株価形成に影響を与える可能性があります。
⑤ 訴訟等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所は、現在において訴訟を提起されている事実はなく、法令等遵守体制の強化を通じて訴訟等が提起されることを防止するべく努めております。しかしながら、将来の法規制等の改正等に適時適切に対応できないことや各種契約等の解釈の齟齬が生じたこと等を原因とする訴訟が提起された場合、内容及び結果によってはQPS研究所の事業、業績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 投融資について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
QPS研究所は、現在において投資を行っている事実はありません。しかしながら、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、合弁事業の展開、アライアンス、M&A等の投融資を実施する場合があります。投資判断においては、投資先候補企業の事業内容を吟味し、QPS研究所との事業シナジーが得られること、投資先候補企業の事業計画、QPS研究所の財務状況や投資先候補企業への影響力等を考慮し、投資先候補企業の評価額が適切な水準であることを慎重に確認し、投資判断を行う予定です。ただし、投資先企業の事業が計画どおりに進捗しない場合や投融資額を回収できなかった場合、減損の対象となる事象が生じた場合には、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模災害、新型感染症等による事業継続リスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
大規模な地震等の自然災害、新型感染症等の大流行等が発生した場合、施設の設備損傷や施設の閉鎖または活動自粛等により事業継続が困難となるリスクがあります。また、打上施設やサプライヤーが自然災害等により損害を被った場合、悪天候により打上げスケジュールが遅延した場合、サプライヤーが所在する地域においてテロや政治的混乱が生じた場合等にもQPS研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。QPS研究所では、すべての災害に共通した災害発生時の危機管理対策に加え、災害別の実施要領を必要に応じて個別の災害BCPに定め運用しております。
現在想定している対策を講じていても、なお現在想定している対策では対処しきれない大規模災害等が発生した場合には、QPS研究所事業に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 調達資金の使途について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所が今後予定しております調達資金については、SAR衛星の製造に充当する予定であります。しかしながら、QPS研究所を取り巻く外部環境や経営環境の変化に伴い、当該資金が想定どおりの使途に充当されない可能性があります。また、QPS研究所の計画に沿って調達資金を使用した場合でも、想定した投資効果が得られない可能性があります。この場合、QPS研究所の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクを踏まえ、QPS研究所を取り巻く外部環境や経営環境の変化については適時その動向を注視するとともに、資金調達の使途が変更になった場合には、適時適切に開示を行います。
⑨ 継続企業の前提に関する重要事象等について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:高
QPS研究所は、小型衛星コンステレーションによるリアルタイム観測の実現というビジョンを掲げ、地球観測衛星データ事業を推進しております。
当地球観測衛星データ事業は、事業の基盤となる小型SAR衛星製造に向けた技術開発、製造及び打上げに多額の資金を要する等の特性があり、QPS研究所は、前事業年度までは6期連続で営業損失を計上しておりました。この主たる要因は、地球観測衛星データ事業においては衛星の製造及び打上げに伴う大規模な先行投資を行う必要があり、かつ打ち上げた衛星から得られる地球観測データ及び画像の販売による投資回収までに期間を要することにあります。
QPS研究所は、当事業年度より商用機の運用を開始したことで、営業利益及び経常利益を計上しておりますが、当事業年度末において6号機の減損処理を行ったことで、427,028千円の当期純損失を計上しております。また、翌事業年度以降も大規模な先行投資及び利息の支払が発生するため、翌事業年度は経常損失及び当期純損失の発生を見込んでおり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
このような事象又は状況を解消するために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、小型SAR衛星を活用したビジネスモデルの拡大、小型SAR衛星の技術開発とインフラ構築の推進、製造、販売体制の強化等を行い、衛星コンステレーションから得られる地球観測衛星データ及び画像について販売を推進してまいります。また、「5 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとするコミット型シンジケートローン契約を2023年10月24日付で締結し、総額5,000,000千円を上限とする借入が可能となっており、そのうち当事業年度において計1,800,000千円を実行しております。加えて、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資及び第三者割当増資により、総額3,679,960千円を調達しております。
以上により、継続的な事業運営に十分な資金を確保しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
⑩ 資金調達について
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
QPS研究所は、小型SAR衛星コンステレーションを構築するため、今後も多額の設備投資が必要となります。そのため、今後におきましても、市場において増資を含む資金調達を実施する可能性があります。この場合、QPS研究所の発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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