三菱製鋼(5632)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


三菱製鋼(5632)の株価チャート 三菱製鋼(5632)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3 【事業の内容】

三菱製鋼の関係会社は、三菱製鋼と子会社18社及び関連会社5社によって構成されております。主な事業の内容は、特殊鋼鋼材、ばね、素形材、機器装置の製造及び販売を行っているほか、これらに関連する運送・サービス等の事業を営んでおります。 

三菱製鋼及び関係会社の事業内容と当該事業における位置付けは、次のとおりであります。

 

事業区分

主要営業品目

主要会社名

会社数

特殊鋼鋼材事業

特殊鋼鋼材(炭素鋼、低合金鋼、ばね鋼、非調質鋼、軸受鋼、快削鋼、工具鋼、窒化鋼)

三菱製鋼
三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱
PT.MSM INDONESIA
PT.JATIM TAMAN STEEL MFG.
北海製鉄㈱

7

ばね事業

巻ばね、スタビライザ、板ばね、トーションバー、
コイルドウェーブスプリング、精密ばね、各種ヒンジ製品、精密プレス品、樹脂成形品、プレス組立品、シュープレート用ゴムパッド、タイヤプロテクター、タイヤチェーン他各種自動車・建設機械用補修部品・用品

三菱製鋼
MSSC CANADA INC.
MSSC US INC.
MSSC INC.
MSSC MFG MEXICANA,S.A. DE C.V.
MSSC Ahle GmbH
寧波菱鋼弾簧有限公司
MSM SPRING INDIA PVT.LTD.
STUMPP SCHUELE & SOMAPPA AUTO SUSPENSION SYSTEMS PVT.LTD.
MSM Philippines Mfg. Inc.
 

11

素形材事業

特殊合金粉末、同微粉末、精密鋳造品、精密機械加工品、鋳鋼品、一般鍛鋼品、特殊合金素材及び同加工品

三菱製鋼
MSM (THAILAND) CO., LTD.

2

機器装置事業

鍛圧機械、産業機械、鉄構品、環境リサイクル機器

三菱長崎機工㈱

5

その他の事業

内航海運、港湾運送、貨物利用運送、倉庫

菱鋼運輸㈱
菱鋼サービス㈱

3

 

 

上記の事業区分とセグメント情報における事業区分の区分内容は同一であります。

なお、三菱製鋼グループについて図示すると、次ページのとおりであります。

 

 

 


 

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

三菱製鋼グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、三菱製鋼グループが判断したものであります。
 

(1)経営環境及び対処すべき課題

①三菱製鋼グループの対処すべき課題

三菱製鋼グループは昨年、2023年度~2025年度の3ヵ年を対象とする「2023中期経営計画」を策定・公表しました。今回の中計では、まず2030年のありたい姿として「人を活かし、技術を活かし、時代の波に乗りつづける企業でありたい」と定め、そこからバックキャストしたこの3年間の実行施策を立案しました。2022年度で終了した「2020中期経営計画」で残された経営課題や非財務課題の解決と、「2030年のありたい姿」に向けた次なる飛躍の助走を同時に行ってまいります。

 

   2023年度は中計初年度として、前中計より大きな課題となっていた北米ばね事業では、撤退覚悟で顧客との売価アップの交渉を粘り強く行った結果、ほぼすべての顧客と妥結し、大幅な損益改善を果たしました。これは三菱製鋼の存在意義を認めて貰った結果であり、事業再建にも目途が立ったことで、財務体質を強化するため増資も実施しました。一方、特殊鋼鋼材事業では、主要需要先である建設機械向けは中間在庫調整の影響もあり需要が急減、また産業機械・工作機械向けも需要低迷が継続しています。さらには原材料市況の高止まりと円安進行による調達コスト上昇等の影響もあり、前期に比べ損益が悪化しました。加えてばね事業の海外子会社で減損損失を計上したことにより、当期純利益は大幅に悪化し損失を計上しました。

 

   こうした業況の中で、三菱製鋼としては以下を課題と認識し、取り組みを推進することで市場評価を改善させてPBRを向上させることが重要と認識しています。

 

(三菱製鋼の対処すべき課題)

   ① 稼ぐ力の徹底的な強化(ROE向上)

  ② 戦略事業の育成

  ③ 非財務関連の取り組み推進(カーボンニュートラル、人材への投資等)

 

     三菱製鋼のPBRは1倍を下回る状態が長期に渡って続いておりますが、その最大の要因としては十分なROEを確保できていないことが挙げられます。コスト削減と売価改善によるマージンの維持・拡大に加えて、成長分野である洋上風力等向けの高付加価値製品の開発・市場投入や、採算性による製品ポートフォリオの見直しなど、稼ぐ力の徹底した強化を図っていきます。またROICを用いて資本効率性の点から事業ポートフォリオの最適化を進め、不採算事業の撤退・売却を含めた事業性判断を速やかに行っていきます。これら施策によりROE向上を実現し、安定して利益成長を続けていくことのできる事業構造を構築してまいります。

    また「環境対応」「海外事業」「EVシフト」をキーワードとした5つの戦略事業の育成を進めています。足元では海外鋼材事業において、増産に向けた設備増強投資を行っている他、精密部品事業では2024年度より大型案件が立ち上がることで収益への貢献が期待されます。また特殊合金粉末事業や洋上風力関連でも、設備増強による生産体制強化を進めています。これにより、成熟市場である基盤事業に依存している現在の収益構造から脱却し、将来性が期待できる分野へのシフトを進めてまいります。

    これらの取り組みを進めることで、景気変動や不採算事業の損益悪化の影響を大きく受ける現在の事業ポートフォリオからの変革を果たし、業績のボラティリティを改善させるとともに、時代の変化に対応しながら持続的な成長を実現してまいります。

 

    非財務関連の取り組みも重視しています。社会からの高まる要請に応えるべく、カーボンニュートラル目標について、特に排出量が多い特殊鋼鋼材部門にて再生エネルギー由来の電力使用を前倒しで進めることで、三菱製鋼の2030年の排出量削減目標を総排出量30%減(従来は約15%減)に引き上げました。また自社で発生するCO2排出量の削減に留まらず、例えば燃費向上に資する軽量化した自動車用ばねなど、社会全体のCO2削減に貢献する製品の開発・販売を進めることで、2050年カーボンニュートラル実現という社会課題の解決に対して、三菱製鋼の技術力・製品力を用いて貢献してまいります。

    三菱製鋼の持続的成長を実現するためには、人的資本経営の推進も必要不可欠と考えています。昨年三菱製鋼として初めて従業員向けエンゲージメントサーベイを実施し、課題の抽出と組織全体での課題認識、改善策の立案と実行、その評価を踏まえたさらなる改善といったサイクルを進めています。特に、経営層が先頭に立って社員の声を聞くタウンホールミーティングを全国の各拠点にて行うなど、トップ主導で企業文化の変革を推進しております。

    こうした事業活動を支える基盤としてのガバナンス体制の強化としては、執行役員の業績連動における非財務比率を高めること、取締役会の議論活性化、安全・品質保証やハラスメント対策を含むコンプライアンス遵守、サイバーセキュリティ対策といったリスク管理の強化も推進してまいります。

 

    持続的な成長と経営リスクの低減を進めるとともに、株主・投資家の皆様との対話の深化と認識ギャップの解消を進めていくことで、資本コストの低減を図ってまいります。

 

    一方、株主還元も重要施策と位置付けており、2024年2月には配当方針を見直し、従来の配当性向30%に加え、今中計期間は1株当たり最低60円配当としました。一定金額の配当をお約束することで、株主の方に安心して三菱製鋼株式を購入して頂きたいとの思いから、今回の方針修正を行いました。

 

    こうした三菱製鋼の課題認識とその対応策を実行することで、「2023中期経営計画」で掲げた目標の達成、さらには2030年のあるべき姿の実現を図ってまいります。

 

 ② 中長期的な経営計画

 1.2030年のありたい姿


 

 

  2.2023中期経営計画(2023年度~2025年度)

  [基本方針]

  ①  稼ぐ力の強化

マージン維持・拡大とコスト削減で稼ぐ力を徹底して追求し、戦略事業拡大および財務基盤強化の原資とする。

    ②  戦略事業の育成

     2023中計で事業拡大に向けた準備と刈り取りを進め、2030年に向けて大きく伸ばす。

      戦略事業に経営資源を積極的に配分し、事業の育成を進める。

    ③  人材への投資

     「人材への投資」を通じて、生産性向上とイノベーションを実現する。

    ④  サステナビリティ経営

      ESGなど財務項目以外の課題を明確にし、持続的企業価値向上を図る。

 

これらの基本方針に基づいた各種施策を進め、実績を出していくことで、中長期的な企業価値向上とPBR1倍以上を目指してまいります。

 

「2023中期経営計画」の詳細については三菱製鋼ウェブサイト(https://www.mitsubishisteel.co.jp/ir/mid-plan/)をご覧ください。

 

(2)各事業における重点施策

[特殊鋼鋼材事業]

当期後半より低迷した国内鋼材の需要動向は、中間在庫調整の影響は徐々に解消を見込むものの、実需ベースでの回復は不透明であり、回復のスピードによっては損益改善が遅れる可能性があります。こうした中でも、円安の追い風を受けた輸出向け鋼材の拡販等を進めることで、損益の確保を図ってまいります。また中長期的には、今後需要の拡大が期待できる海外鋼材事業の強化やEV・洋上風力向け鋼材への参入等、中長期的な需要構造変化への対応も進めてまいります。

さらに、円安の進行による輸入原材料価格の高騰や、物流費・労務費等の諸コストの高騰に対しては、引き続き売価改善を進めることで、マージンの維持・改善を図るとともに、工場DXによる製造コスト削減や営業系DXの推進による顧客満足度の向上により、基盤事業として稼ぐ力の強化を進めてまいります。

また、カーボンニュートラルについては、三菱製鋼の排出量の大部分を占める鋼材部門の室蘭製作所について、2030年度削減目標の引き上げを行いました。目標達成に向け、引き続き施策を進めるとともに、海外事業では、再生可能エネルギー電力等を活用したカーボンニュートラル鋼製造の検討も進める等、社会課題の解決に向けた取り組みも推進してまいります。

 

 [ばね事業]

基盤事業である自動車向けばねについては、さらなる軽量化等による競争力強化に加え、損益悪化の要因となっている低採算事業について、事業ポートフォリオの最適化を進めることで、稼ぐ力の強化を図ってまいります。

当期のばね事業は、長年の課題であった北米MSSCの損益改善により、6期ぶりの黒字となりました。北米MSSCについては、今後は生産性の改善を加速させ、持続的な利益成長ステージに入っていきます。一方で、需要環境悪化等の影響を受け低採算が続く事業については、撤退・売却も含めた事業ポートフォリオの最適化を進めることで、ばね事業全体としてさらなる利益成長を図ってまいります。 
 また、2024年度では戦略事業の一つである高機能ヒンジの大型案件の量産開始を予定しているほか、インド拠点でも現地自動車需要の高まりに応えるべく、生産増強投資を行っています。これらの立上りと収益貢献を計画どおり進めるとともに、将来的には商用車用板ばねにおいて、鋼材事業とのシナジーが発揮できる新拠点への投資等も検討してまいります。

 

 [素形材事業]

不採算製品からの撤退と、タイ子会社における売価改善及び固定費大幅圧縮により、損益改善が進んでいます。

今後に向けては、自動車内燃機関向け部品中心の製品構成からのシフトを進め、戦略事業として位置付ける特殊合金粉末の事業拡大を進めます。顧客の新製品開発にマッチした高性能粉末製品の開発を継続すると共に、生産能力増強投資の検討を進め、収益貢献に向けた準備を進めてまいります。
  さらに将来に向けて、顧客の脱炭素化ニーズに対応すべく、カーボンニュートラル特殊合金粉末の商品化を目指し、市場調査を進めてまいります。

 

 [機器装置事業]

環境課題の解決をテーマに事業拡大を目指します。サーキュラーエコノミーに貢献する磁力選別機については、足元の売上は好調に推移しており、事業拡大に向け引き続き拡販を進めてまいります。
  さらに戦略事業の一つである洋上風力発電関連機器向けでは、次期中計期間中で本格化するプロジェクト案件の受注に向け、三菱製鋼グループの強みである大型化対応の生産能力をさらに強化すべく、増強投資を進めております。

 


事業等のリスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、三菱製鋼グループが判断したものであります。

 

[経営環境に関するリスク]

(1)製品需要の変動

三菱製鋼グループの製造する特殊鋼鋼材は、国内外の需給や市況等、需要分野の動向によって数量、価格とも影響を受けます。また、中国の粗鋼生産膨張や新興国の増産が世界の鋼材価格の引き下げ要因となり、三菱製鋼グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

また三菱製鋼の主要製品の多くは、主に自動車・建設機械業界に納入されており、日本、北米、アジアを中心とした三菱製鋼グループの主要市場における製品需要の動向は、三菱製鋼グループの業績に影響を与える可能性があります。特に建設機械業界向けは需要変動のボラティリティが高く、また業界の特性上、需要変動によりサプライチェーン上で中間在庫調整が行われるため、三菱製鋼グループは実需変動以上の影響を受ける可能性があります。また、中長期的にはEVやCASEの進展による需要構造の変化の影響等を受ける可能性があります。 

三菱製鋼といたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーであることを強みとし、既存にとらわれない顧客のニーズに対応した製品を提供することで、受注量の維持・拡大を図り、需要変動影響を軽減してまいります。また中長期的には、国内特殊鋼鋼材や自動車ばね等の基盤事業の強化を図るとともに、需要が旺盛な海外鋼材事業、EV・CASE進展に伴い需要拡大が見込まれる特殊合金粉末と精密部品、再生可能エネルギー関連の洋上風力関連機器等の戦略事業の育成を進めることで、事業ポートフォリオの変革を推進し、持続的成長に向けた事業体質を構築してまいります。

 

(2)原材料・副資材・エネルギー価格等の上昇

三菱製鋼グループの主要製品は、鉄鉱石、石炭を使用して生産される溶鋼及び合金鉄を主要原料としており、これ らを外部調達しております。また、電極・耐火物等の副資材につきましても同様であり、さらには電力・ガス等のエネルギーを消費しております。これらの主要原料及び副資材等の価格上昇分に加え、高騰する労務費や物流費につきましても売価転嫁に努めておりますが、売価転嫁が不十分な場合には、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(3)海外拠点及び周辺国におけるリスク

三菱製鋼グループは、北米・中国・東南アジア等に海外事業拠点を有しております。当該国及び周辺国における政治・経済・社会的混乱(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)や法的規制等、更には国際的な貿易規制や関税の変更、国家・経済圏間における貿易協定に起因する影響を受けるリスクがあり、これらの影響を受けた場合には、業績に影響が生じる可能性があります。

貿易規制や関税の変更等に対しては、適切な対応を行うとともに、各拠点の原材料調達構造改革を進めることで影響の軽減に努めております。

 

(4)外国為替相場の変動

三菱製鋼グループは、原材料等の輸入及び製品等の輸出において外貨建取引を行っております。また、三菱製鋼グループの外貨建取引及び連結財務諸表作成のための海外子会社の財務諸表数値は、外貨から円貨への換算において、為替相場変動の影響を受けることとなります。ヘッジ契約等の対応をしておりますが、為替相場変動のリスクを完全に排除することは困難であり、変動影響を大きく受けた場合には、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

なお、為替変動リスク回避のため、海外子会社への親子ローンに実施している為替ヘッジについて、日本と諸外国の金利差により、当期において為替ヘッジコストが増大しました。これについては、特に為替ヘッジコストの負担が大きかった北米MSSCにおいて、さらなる成長に向けた増資を実行し、融資から資本へ切り替えたことにより、今後のコスト増大リスクは軽減されています。

 

(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化

三菱製鋼グループは、事業活動に必要な資金を金融機関からの借入により調達しており、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、健全な財務体質の維持に努めておりますが、景気の後退や金融市場が悪化した場合や、三菱製鋼グループの信用低下等により必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できない場合には、資金調達コストが増加することにより、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

[事業戦略・計画の遂行に関するリスク]

(6)固定資産の減損損失

三菱製鋼グループは、これまで行った設備投資による有形固定資産・無形固定資産等を有しており、今後も持続的成長に向けた新たな設備投資を計画しております。しかし、経営環境の変化等により、収益性が低下し、投資額が回収できない場合、固定資産の減損損失の計上等により、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。これらのリスクに対し、投資判断については、投融資委員会による妥当性やリスク等を精査する体制を整えています。また投資実施後は、ROICを用いた事業分析を活用することで、不採算事業については早期に改善策を講じるとともに、必要に応じて撤退や売却の検討を行うことで、リスクの軽減を図ってまいります。

 

 

(7)競争優位性及び新技術・新製品の開発・事業化に係るリスク

三菱製鋼グループは、国内鋼材事業と自動車ばね事業の基盤事業に加え、「環境対応」「海外事業」「EVシフト」をキーワードとした5つの戦略事業の育成を推進しています。戦略事業を含めた三菱製鋼グループが展開する各事業において、三菱製鋼グループと同種の製品を供給する競合会社が存在しております。顧客ニーズの把握、脱炭素社会を実現するための環境負荷低減に向けた製品を含む新技術・新製品の開発・事業化に努めておりますが、顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や新技術・新製品の開発・事業化が長期化した場合、開発案件が事業化できなかった場合には、三菱製鋼グループの成長性や収益性を低下させ、三菱製鋼業績や中長期計画に影響が生じる可能性があります。

三菱製鋼グループといたしましては、素材となる特殊鋼から製品までを一貫して製造するメーカーである競争優位性の維持・強化に向けて、工場DXによる製造コスト削減や営業系DXの推進による顧客満足度の向上で競争力の強化を進めてまいります。また、基盤事業で創出した利益を戦略事業に積極的に投資することで、顧客ニーズの変化に対応できる技術開発・生産能力強化を進めてまいります。

 

[事業運営に関するリスク]

(8)自然災害・事故・感染症等の発生

三菱製鋼グループは、大規模な自然災害等不測の事態の発生に備え、耐震面の強化など防災対策を強化しております。また、三菱製鋼グループの生産設備の中には、高温、高圧での操業を行っている設備があり、高熱の生産物等を取り扱っている事業所もあります。対人・対物を問わず、事故の防止対策には万全を期しておりますが、万が一重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、三菱製鋼グループの生産活動等に支障をきたし、業績に影響が生じる可能性があります。また、新型コロナウイルス等の感染症が世界的に流行した場合には、感染拡大防止による法令等に基づく事業活動及び社会活動の自粛要請等により、三菱製鋼グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。これらの不測の事態に備えるためにもBCP(事業継続計画)に関する施策としてサプライチェーンのリスクを想定し、国内外の供給体制を維持してまいります。

 

(9)環境規制や気候変動に伴う社会変革への対応に関するリスク

三菱製鋼グループでは、事業活動において廃棄物、副産物等が発生いたします。そのため、環境マネジメントシステムを構築・運用し国内外の法規制を遵守し、環境保全活動を行っております。過去、現在、将来の事業活動に関し、環境に関する責任リスクを有しており、関連法規制の強化等によっては対応するための費用が発生し、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

また、国際社会では、2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、脱炭素化の動きが加速しております。三菱製鋼グループは、2022年6月より、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づき、気候変動に起因する事業リスクやビジネス機会とその財務的影響等についての情報開示を行っております。自社のCO2排出量削減を進め、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すとともに、お客様や社会全体のCO2削減に貢献する三菱製鋼製品の開発・販売を進めることで、環境負荷低減に貢献するとともに、需要構造の変化にも対応してまいります。開示内容の詳細につきましては、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組-(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)」をご覧ください。
 

(10)製品の瑕疵・欠陥に係るリスク

三菱製鋼グループの製品には、重要保安部品に該当するもの等、高い信頼性を要求されるものが存在し、各製造拠点において、世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しております。製品の製造に当たっては、瑕疵・欠陥の生じた製品及び顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が市場に流出することのないよう厳格な品質管理体制を構築しております。また、本社管理部門にリスク管理室を置き、品質データー改ざん・偽装の防止が効果的にかつ確実に実施されることを目的とする監査マニュアルを作成し、それに基づいた各拠点の監査を実施しております。それでも尚、瑕疵・欠陥のある製品又は顧客とあらかじめ取り決めた仕様に満たない製品が万が一市場へ流出し、製品の補修、交換、回収、損害賠償請求又は訴訟等に対応する費用が発生した場合には、三菱製鋼グループの評価に重大な影響を与え、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(11)情報システムの障害、情報漏洩等

三菱製鋼グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、情報システムの利用とその重要性は増しております。震災等による情報システムのBCP対策としてシステムのクラウド化または二重化等でより安定的なシステム運用の取り組みを行っております。また、自社及び顧客・取引先の営業機密や技術情報、個人情報等の機密情報を保有しておりますが、機密情報の漏洩対策については最重要の経営課題として認識し、システムによる防御対策に加えて従業員への教育を含む、情報セキュリティ強化を行っております。しかしながら、三菱製鋼グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等により、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。なお、これら万が一の不測の事態に対し被害を最小限に留められるよう、グループ全社でサイバーセキュリティ保険の加入を推進しています。

 

(12)人材確保に係るリスク

三菱製鋼グループは、事業の維持、成長のため、必要な人材の確保に努めておりますが、今後、国内生産年齢人口の減少傾向や人材の流動化の進展等により、人材の確保が想定どおりに進まない場合、安定的な生産体制が損なわれたり、三菱製鋼の持続的成長の実現が難しくなる等、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。三菱製鋼グループといたしましては、多様な背景を持つ従業員が持てる力を最大限に発揮するため、働き方改革や女性活躍の推進といったダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでまいります。「2023中期経営計画」でも、「人材への投資」を基本方針の一つに掲げ、教育・福利厚生の拡充等を積極的に行い、優秀な人材の安定的確保に向け努めてまいります。また、DXを活用した製造工程自動化による省人化等で、生産人口減少による人材不足への対応も行ってまいります。人的資本の取り組みの詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組-(3)人的資本」をご覧ください。

 

[その他のリスク]

(13)法令・公的規制

三菱製鋼グループは、日本国内及び事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。

三菱製鋼グループは、内部統制体制の充実を図り、従業員に向けての周知、徹底を行い、法令・公的規制の遵守に努めておりますが、万が一、遵守できなかった場合、課徴金や行政処分を課されるなどにより業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、これら法令・公的規制が改正もしくは変更される場合、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

 (14)人権

三菱製鋼グループは、国内外で事業を行い、サプライヤーも国内外多数の国に及んでいます。三菱製鋼グループやサプライチェーンにおいて、差別やハラスメント、強制労働や児童労働など人権に係る問題が発生し、適正に対応がされなかった場合、訴訟や行政罰、社会的信用の低下等が生じ、三菱製鋼グループの業績に影響が生じる可能性があります。

三菱製鋼グループは人権の尊重が事業活動の基本であるとの考えのもと、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「三菱製鋼グループ人権方針」を定めております。本指針は三菱製鋼グループのすべての役員および従業員に適用されます。従業員向けの人権に関する研修の実施に加え、人権デューデリジェンスの実施や救済メカニズムの構築等により、三菱製鋼の人権尊重の取り組みを強化してまいります。なお、2023年度は国内外のグループ会社を対象とした人権デューデリジェンスを実施し、是正が必要な問題は無いことを確認しております。2024年度は対象範囲をサプライヤーまで広げ、人権デューデリジェンスを実施する予定です。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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