川崎重工業(7012)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


川崎重工業(7012)の株価チャート 川崎重工業(7012)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

 

3 【事業の内容】

川崎重工業グループは、川崎重工業(提出会社)、子会社132社及び関連会社(共同支配企業を含む)28社により構成されており、川崎重工業を中心として航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業、精密機械・ロボット事業、パワースポーツ&エンジン事業及びその他事業を営んでいます。これらの6事業区分はセグメント情報の報告セグメントの区分と同一です。

川崎重工業グループの主な事業内容と川崎重工業及び主要関係会社の位置づけを概説すれば、以下のとおりです。

 

[主な事業内容]

航空宇宙システム事業

航空機、航空機用エンジン、宇宙関連機器等の製造・販売

車両事業

鉄道車両、除雪機械等の製造・販売

エネルギーソリューション&マリン事業

エネルギー関連機器・システム、水素関連設備、舶用推進関連機器・システム、プラント関連機器・システム、船舶、破砕機等の製造・販売

精密機械・ロボット事業

油圧機器、産業用ロボット等の製造・販売

パワースポーツ&エンジン事業

二輪車、オフロード四輪車(SxS、ATV)、パーソナルウォータークラフト(PWC)「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジン等の製造・販売

その他事業

商業、販売・受注の仲介・斡旋、福利施設の管理等

 

 

[川崎重工業及び主要関係会社の位置づけ]

航空宇宙システム事業

川崎重工業で製造・販売を行っているほか、日本飛行機㈱(連結子会社)が独自に製造・販売並びに製造の一部分担を行っています。

車両事業

川崎車両㈱(連結子会社)で製造・販売を行っているほか、海外向け鉄道車両についてはKawasaki Rail Car, Inc.(連結子会社)が一部の製造・販売を、Kawasaki Rail Car Lincoln, Inc.(連結子会社)が一部の製造を行っています。

エネルギーソリューション&マリン事業

川崎重工業で製造・販売を行っているほか、川重冷熱工業㈱(連結子会社)がボイラ及び空調機器の製造・販売を独自に行い、㈱カワサキマシンシステムズ(連結子会社)が産業用ガスタービンの販売を、㈱アーステクニカ(連結子会社)が破砕機等の製造・販売を、安徽海螺川崎工程有限公司(持分法適用関連会社)他が産業機械、環境装置等の製造・販売を、南通中遠海運川崎船舶工程有限公司、大連中遠海運川崎船舶工程有限公司(いずれも持分法適用関連会社)が独自に船舶の製造・販売を行っています。

精密機械・ロボット事業

川崎重工業で製造・販売を行っているほか、Flutek, Ltd. (連結子会社)他が油圧機器の製造・販売を、川崎精密機械(蘇州)有限公司(連結子会社)他が製造を、川崎精密機械商貿(上海)有限公司(連結子会社)他が販売を独自に行っています。また、Kawasaki Robotics (USA) Inc.、川崎機器人(昆山)有限公司、川崎機器人(天津)有限公司(いずれも連結子会社)他が産業用ロボットを、㈱メディカロイド(持分法適用関連会社)が医療用ロボットの製造・販売を行っています。

パワースポーツ&エンジン事業

カワサキモータース㈱(連結子会社)で製造・販売を行っているほか、製造については二輪車、オフロード四輪車(SxS、ATV)、PWC「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジンをKawasaki Motors Manufacturing Corp., U.S.A.、Kawasaki Motores de Mexico S.A. de C.V.、Kawasaki Motors Enterprise (Thailand) Co., Ltd.(いずれも連結子会社)他がそれぞれ製造しています。また、販売面においては、国内向け二輪車他を㈱カワサキモータースジャパン(連結子会社)が、海外向け二輪車他をKawasaki Motors Corp., U.S.A.、Kawasaki Motors Europe N.V.、Kawasaki Motors (Phils.) Corporation、PT. Kawasaki Motor Indonesia(いずれも連結子会社)他が、それぞれ販売しています。

その他事業

川重商事㈱(連結子会社)他が商業を、㈱カワサキライフコーポレーション(連結子会社)他が商業及び福利施設管理等の諸事業を営んでいます。

 

 

以上で述べた事項を事業系統図によって示せば、次のとおりです。

 


 

(注) 1 実線枠は連結子会社、点線枠は持分法適用関連会社であり、主要な会社のみ記載しています。

2 他3社は安徽海螺川崎装備製造有限公司、安徽海螺川崎節能設備製造有限公司、上海海螺川崎節能環保工程有限公司です。

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、川崎重工業グループが判断したものです。

[経営の基本方針]

川崎重工業グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。

また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の2つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。

 

[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]

2020年11月に、川崎重工業グループの目指す将来像として「グループビジョン2030」を制定し、各種施策を推進しています。現有主力事業の強化、事業間シナジー促進による将来の柱となる新事業育成、更に事業の選択と集中を行って事業ポートフォリオの変革を実現し、持続的な成長を追求します。

進捗状況の詳細は、川崎重工業Webサイト(https://www.khi.co.jp/groupvision2030/archive.html)をご参照下さい。

 

《注力するフィールド》

新たな時代の社会課題を見据え、地球環境保護のための脱炭素社会の実現、先進国を中心とした高齢化社会・労働力不足への対応、医療などの地域間格差の解消、自然災害の抑止や早期復旧、各種資源・物資やエネルギーの安定供給など、様々なソリューションをタイムリーに提供するため、以下の3つのフィールドに注力しています。

「安全安心リモート社会」-ロボティクスとネットワークを活用した新しい価値の創出

医療・ヘルスケア、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、川崎重工業グループが持つ遠隔操作・情報技術、ロボティクス等を用いて、安全かつ安心して暮らせる社会を創るとともに、リモート社会の実現によりすべての人々が社会参加できる新しい働き方・くらし方も提案していきます。

「近未来モビリティ」-新しい輸送システムで人とモノの移動を変革

宅配需要の増加や労働力不足、災害時の交通遮断などに対応するため、無人で物資を運ぶヘリコプタや自動配送ロボットなど、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。

「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて

カーボンニュートラル社会の早期実現に向け、世界に先駆けて水素サプライチェーンを構築します。また、川崎重工業及び国内連結子会社事業所のCO2排出量を2030年までに実質ゼロにするという、自立的なカーボンニュートラルも推進します。世界各地で、様々な方法で作ることができる水素は、カーボンニュートラルだけでなくエネルギー安全保障面からも期待が高まっており、早期に水素社会を実現できるよう取組を加速します。更に、電動化なども含めた川崎重工業グループの脱炭素ソリューションを社会やステークホルダーの皆様にも幅広くその輪を広げ、2040年にZero-Carbon Ready、2050年にはグループ全体でのCO2排出量の実質ゼロを目指します。

 

《成長シナリオ》

「グループビジョン2030」の成長シナリオに沿って、順調に伸長しています。足元では、パワースポーツ&エンジン事業がグループ全体の収益を強力に支え、民間航空機や航空機用エンジン、防衛関連をはじめとする受注系事業の収益も安定的に拡大しています。この先、水素事業や医療・ソーシャルロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業も収益の柱となり、安定した成長軌道を描くことを目指します。成長シナリオの実現のため、モノ売りからコト売りへのシフトなどのビジネスモデルの見直し、政府や自治体、他企業、研究機関との連携による新しい社会創造、ポートフォリオ・組織風土の変革にも取り組み、高収益体質を実現していきます。

それらを支える仕組みとして、AI活用、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進し、業務プロセスの見える化・効率化により、新たなソリューションの創出と経営の意思決定のスピードアップ、更には“やりがい”“成長”を実感できる働き方も実現していきます。成長シナリオを支える最も重要な財産である人財が、その個性と能力を発揮する環境整備に取り組み、前向きに挑戦し続ける人と組織の実現を目指します。年齢・性別・国籍等の属性に関わらず、期待役割と成果を実現し得る人財を社内外から獲得・配置するとともに、行動特性評価による適正配置を行うなど、「グループビジョン2030」の達成と更にその先の飛躍に向けて、人事制度の刷新を含め様々な変革を絶えず推進できる企業風土が醸成されつつあります。

 

 

[経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]

世界経済は、米国では良好な雇用情勢や所得環境により個人消費を中心に堅調さを維持していますが、不動産不況が長期化する中国経済や地政学リスクの増大等、先行きは引き続き不透明な状況です。

国内においては、物価上昇を上回る賃上げ等による消費マインドの改善が見込まれ、設備投資の拡大やインバウンド需要により緩やかな景気回復が続くものの、日銀の政策変更による金利の上昇や、それに伴う為替相場の変動など経済への影響に注視が必要です。

このような状況の下、川崎重工業グループは収益性の向上に向け、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化、サプライチェーンの多様化に継続的に取り組んでいきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別のほか、適正在庫の実現、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュ・フロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。

 

[経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)及び税後ROIC※とし、グループ全体として事業利益率を2027年度までに8%、2030年度までに10%超、税後ROICは資本コスト(WACC)+3%以上を目標としています。

これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 自己資本の期首・期末平均)の向上も図っていきます。

 

※税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均)

 

[セグメントごとの戦略及び課題]

① 航空宇宙システム事業

P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産の推進及び派生型機への展開と抜本的な防衛力強化という防衛省の方針に沿った活動強化、ボーイング既存機及び民間航空エンジンの需要回復に伴うサプライチェーン及び増産体制の再整備、新たな事業機会獲得に向けた業務効率化による生産性向上、市況動向を踏まえた技術戦略の推進

 

② 車両事業

品質管理の強化、顧客ニーズに適合した技術・製品による差別化、コスト競争力の強化、海外プロジェクトのリスク管理強化、IoTを活用したメンテナンス事業及び軌道モニタリング事業参入等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築

 

③ エネルギーソリューション&マリン事業

 水素関連プロジェクトの研究開発・事業化の推進、コアコンポーネント強化とその組み合わせによる最適システム構築、分散型エネルギー供給システムの提案、新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大、アフターサービス事業の強化、ガス関連船建造におけるコスト競争力の強化、船舶海洋事業における中国合弁会社の収益性改善、防衛事業の収益拡大

 

④ 精密機械・ロボット事業

 油圧事業は、新製品・戦略製品の早期開発・上市、アフターサービスビジネスの拡大、グローバル展開の加速によるコスト競争力の強化。ロボット事業は、それぞれの市場に応じた差別化による製品の付加価値向上、コスト競争力の強化、オープンイノベーションと協業の推進、デジタルプラットフォーム(Robo Cross)の構築、「hinotori™」を中心とする医療ビジネスの拡大

 

⑤ パワースポーツ&エンジン事業

“Kawasaki”らしい魅力ある新機種の継続投入、顧客に訴求する卓越した品質と信頼性、高いブランド価値の実現、新興国市場におけるコスト競争力の強化、連結ベースのマネジメントの徹底による効率化と収益率の向上

 

 


事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が川崎重工業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。これらのリスクは、経営会議等での審議等を経て抽出しており、取締役会において連結財務諸表での重要性、影響度、網羅性を確認した上で選定しています。また、川崎重工業グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性等に応じて、「特に重要なリスク」「その他の重要なリスク」に分類しています。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、川崎重工業グループが判断したものです。

なお、リスクを把握し、管理する体制・枠組みについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照下さい。

 

(特に重要なリスク)

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

①プロジェクトの契 約・履行

 プロジェクトに関しては、特に見積、契約条件、技術仕様、プロジェクト履行能力、債権管理等による損失リスクがあります。

 プロジェクトの契約に際し、受注前のリスク検知と適正なリスク評価、適切なリスク回避策の実行に努めています。過去に多額の損失を計上した案件には、プロジェクト履行中のトラブルに関して、契約条件・条項の不備や契約相手方との解釈の相違等に起因するものが多く、法務部門による事前チェックを強化しています。

 更に、受注後のプロジェクトについては、市場環境やその進捗状況に関して、経営成績等に大きな影響を与える可能性がある兆候を経営会議及び取締役会へタイムリーに報告しています。

 現在履行中の大型プロジェクトのうち、川崎重工業グループが取り組んでいる大規模水素サプライチェーン構築プロジェクトについては、NEDOグリーンイノベーション基金事業で採択された各種事業が、商用化に向けて始動しています。事業推進に際して、各フェーズで発生する問題を早期に認識し、リスクを最小限に抑えながら円滑にプロジェクトを進めています。

②品質管理

 川崎重工業グループは、顧客ニーズや社会課題解決のため、多岐にわたる製品・サービスを提供しています。それらの製造・サービス提供過程においては、社内外の基準に則り厳格な品質管理を実施していますが、予期せぬ製品の欠陥や品質面での不備が発生した場合、発生した損害について賠償を求められ、川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 2017年にN700系新幹線台車枠に亀裂が発生するという極めて重大なインシデントを引き起こしたことを重く受け止め、社内に品質管理委員会を立上げ、原因究明と再発防止に努めてきました。また、2019年度に全社的なTQM(Total Quality Management)を推進する専門組織を立上げ、TQMに則った業務遂行体制の構築、品質管理教育、全員参加での品質向上に努めてきました。

 TQM活動においては、業務プロセスの整流化に加え、人の恣意性を排除しデジタル技術を用いた品質管理を進めています。

 

 

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

③コンプライアンス

 川崎重工業グループの役員・従業員が法令違反行為や企業倫理違反行為等を発生させた場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜、川崎重工業グループ製品の不買運動等に至り、川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 「川崎重工グループ行動規範」を制定し、コンプライアンス違反を容認しない企業風土の醸成及び維持に努めています。また、社長を委員長とする全社コンプライアンス委員会を設置し、企業としての社会的責任を果たすために各種施策の審議・決定、遵守状況のモニタリング等を行っています。

 2022年6月に川重冷熱工業㈱が製造・販売した一部の製品の検査などに関する不適切行為が判明しました。今後このような不適切行為を起こすことがないよう、外部の弁護士で構成する特別調査委員会での徹底した原因究明を踏まえた是正措置を講じるとともに、コンプライアンスの一層の強化を図り、再発防止に取り組んでいます。

④訴訟

 川崎重工業グループは、事業を展開するに当たり、契約条件の明確化、知的財産権の適正な取得・使用、各種法規制の遵守等により、トラブルを未然に防止するよう努めています。

 しかし、予期せぬ事象が生じた場合、損害賠償の請求や訴訟を提起されることがあり、川崎重工業グループの経営成績、社会的信用等に影響を及ぼす可能性があります。

 一方で、取引相手先による契約不履行や川崎重工業グループが保有する知的財産権の侵害等が生じたときには、川崎重工業グループの権利保護を求めて訴訟を提起する場合があります。

 弁護士等の外部専門家と連携する等、最善策を講じるための体制を整備しています。また、法務機能を担う人財の育成及び獲得を行い、より一層の法務対応力の強化にも取り組んでいます。

 なお、当連結会計年度において、川崎重工業グループに重要な影響を及ぼす訴訟に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(2)その他」をご参照下さい。

⑤情報セキュリティ

 川崎重工業グループは、社会インフラから消費者向け製品に至るまで、多様な製品を国内外に提供しており、重要な情報資産として多岐にわたる技術・営業情報や顧客情報を蓄積・保有しています。業務プロセスのデジタル化が進むなか、社外からのサイバー攻撃は増加傾向にあり、重要情報の漏洩やシステム停止、その復旧を条件とした身代金要求といった事象に加え、工場の生産システムが攻撃を受けることで損失が発生するリスクも高まっています。

 情報セキュリティリスクに適切に対処するため、サイバーセキュリティ総括部門を中心に、管理ルールの整備、最新技術の導入、オペレーションの高度化によるサイバーディフェンス態勢の強化を推進しています。

 更に、eラーニング等による役員・従業員への情報セキュリティ教育や訓練を実施し、情報セキュリティ意識の向上を通じたリスク低減にも継続して取り組んでいます。

 

 

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

⑥人財の獲得・維持

 人財の獲得・維持は、事業活動の継続及び成長のための重要な経営課題と考えています。

 しかし、少子高齢化による労働人口の減少、人財の獲得競争の激化やキャリア意識の多様化に伴う労働市場の流動化により人財の獲得・維持が困難となり、川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 川崎重工業グループは、人的資本に関する基本方針「川崎重工グループ人財マネジメント方針」を掲げ、より多くの人財が働きがいと働きやすさを実感できる環境づくりに取り組んでおり、これからも職場として選んでいただける会社であり続けたいと考えています。施策の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。

 また、ロボットやAIの活用、DXによる業務プロセスの見える化・効率化により、事業の成長ステージにおいても従業員の増加を抑えます。更に、従業員が付加価値の高い仕事に集中することにより、“やりがい”や“成長”を実感できる働き方を実現することでキャリア意識の多様化にも対応していきます。

⑦経済安全保障

 近年、地政学リスクが高まるなか、世界各国の政府が地政学的な課題解決のために、経済的手段を行使する場面が増加する等、経済活動と安全保障の関係が深くなっており、日本においても2022年に経済安全保障推進法が制定されるなど経済安全保障についての取組が進められています。

 川崎重工業グループでは、連結売上収益の約半分が海外向けであり、米国・中国をはじめとする多くの国に生産・販売拠点を構えています。また、原材料や部品についても海外から多く調達し、多くの製品を海外へ輸出しています。そのため、重要な部品や原材料の安定的な確保、他国への技術流出防止等の対応が、従来以上に必要となっています。

 国際情勢の動向や各国の法規制の改正等を注視しつつ、経済安全保障に関する変化に対応すべく、2022年に経済安全保障推進に関する専門組織を設置しました。また、国際情勢や各国の政策・法制度の動向等の調査・分析、各種リスクの評価等、状況の変化に迅速に対応できる社内体制を構築し、情報の共有及び対応策を実施しています。

⑧調達品価格の高騰

 国内外のインフレ進行、円安、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等に伴い、原材料価格、人件費、エネルギー価格、物流費等の上昇が続いています。

 事業計画策定にあたっては一定のコスト上昇を織り込んでいますが、想定を超える価格の上昇や部品供給の不足が川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 コストダウン活動を継続しつつ、販売契約へのエスカレーション条項の織込みや調達品価格の高騰を適切に販売価格へ反映するなどの対策を行っています。

⑨脱炭素社会・ゼロエミッション

 川崎重工業グループが提供する輸送機器やエネルギーシステムの多くは、化石燃料をベースにしています。また、生産をはじめとする事業活動においてCO2を排出しています。脱炭素社会やゼロエミッションの到来によって、現在の製品・技術が各種規制によって使用できなくなることや、顧客をはじめとする様々なステークホルダーへの価値を創出できなくなることで、事業そのものが淘汰される可能性があります。

 また、事業活動におけるCO2排出を削減するための莫大な追加コストが発生するリスクも存在しています。

 水素サプライチェーン商用化に向けた活動や、水素を燃料とする輸送機器・エネルギーシステム、電動機器など脱炭素社会に対応した事業に向けた研究開発を行うとともに、水素エネルギーを活用して2030年までに川崎重工業グループの国内事業所のCO2排出量を実質ゼロにする等、様々な対策を進めています。

 更に、川崎重工業グループの脱炭素ソリューションを社会や各ステークホルダーへと広げ、2040年にZero-Carbon Ready、2050年にはグループ全体でのCO2排出量の実質ゼロを目指します。

 

 

 

(その他の重要なリスク)

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

⑩開発投資

 川崎重工業グループは、社会課題の解決と持続的な企業価値向上のため、将来の収益が期待できる分野への研究開発投資や設備投資を行っています。開発の項目や内容の選定判断を誤ることで競合に対する競争力を失い、事業・製品のシェアを低下させるリスクがあります。

 また、水素利活用分野など基礎研究から実証、製品化へは長期にわたる投資が必要なものが多く、市場変化や顧客、競合動向、各国規制の変化等によっては開発戦略の見直しや撤退を迫られる分野もあり、過去には投入した開発費が回収できなかった事業も存在しています。

 開発投資に関しては、対象分野の選定やその内容、人財投入計画等については、経営戦略や事業ポートフォリオ上の位置付けなども踏まえて決定し、進捗管理についても適宜フォローしています。

⑪景気変動

 景気変動が川崎重工業グループの事業活動に影響を及ぼし、売上収益等に影響する可能性があります。

 官公庁向けと民間向け、先進国向けと新興国向け、受注生産型と見込み生産型、B to BやB to Cなど、景気サイクルの異なる多様な事業でポートフォリオを構成しており、景気変動リスクを分散させています。また、社会情勢や国際動向を注視し、社会課題、市場ニーズ等に対応した開発・受注活動を継続することで売上収益を確保するほか、見込み生産型事業においては、販売や在庫の状況をモニタリングして生産調整をタイムリーに行うなど、景気が減速する局面においても経営成績等に及ぼす影響が最小限になるように努めています。

⑫為替変動

 川崎重工業グループの業績見通しにおいては、一定量の為替変動リスクが含まれています。

 現在、日米金利差拡大、日本の貿易赤字の影響等を背景とした円安は、売上収益には好影響を及ぼす一方で、調達価格やエネルギー価格上昇などのコスト増をもたらしており、今後も為替相場の変動が川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 為替変動リスクに対しては、実需の外貨建債権・債務に対し、投機的な要素を排除した形で日本円のディスカウントコストを考慮しながら為替予約等のリスクヘッジを行っています。また、パワースポーツ&エンジン事業を中心として、為替影響分の価格転嫁、海外調達の拡大及び海外生産比率の増加等を通じて為替リスクの低減に取り組んでいます。

 

 

 

リスクの内容

リスクに対する対応策

⑬資金調達・金利変動

 川崎重工業グループは、金融機関からの借入や社債の発行等により資金調達を行っていますが、金融危機が発生する等、金融市場が正常に機能しない場合には、一時的に資金調達を想定どおり行うことが難しくなる可能性があります。

 また、市場金利の急激な上昇によって資金調達コストが増大した場合、支払利息等の金利負担増加により金融収支が悪化し、川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、金融機関からの借入金には、コベナンツ(財務制限条項)が付されていることがあり、コベナンツに抵触する事象が発生した場合、当該借入金についての期限の利益を喪失する可能性があるほか、その他の債務についても一括返済が求められる可能性があります。その結果、川崎重工業グループの信用力や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 資金調達の実行リスクに対しては、資金調達手段の多様化やコミットメントラインを含む十分な融資枠を確保する等の対策を講じています。資金調達コストの増大リスクに対しては、固定金利での長期資金調達を行うこと等により、金利変動リスクの抑制に努めています。

 なお、財務制限条項への抵触リスクに関して、現在の財務状況に鑑みるとその可能性は低いと考えています。

 川崎重工業グループは引き続き財務体質の強化に取り組み、資金調達力の維持・向上を図るほか、サステナブルファイナンスを積極的に活用することで、資金調達の面からも「グループビジョン2030」の実現に向けて取り組んでいきます。

⑭固定資産の減損

 川崎重工業グループは、継続的に設備投資を行いながら事業活動を進めており、多くの固定資産を有しています。現時点において、多額の減損を計上するような懸念事項はないと考えていますが、今後外部環境の変化等により減損処理を行う必要性が生じた場合、損失が発生するリスクがあります。

 大規模事業投資(設備投資を含む)案件について、大型プロジェクトの受注前プロセスと同様、投資決定前のリスク審査を強化する取組を行っています。

⑮繰延税金資産の回収可能性

 川崎重工業グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産は、事業計画を基礎として将来の課税所得の発生やタックスプランニングに基づき、回収可能性を検討しています。

 なお、将来の見通しに変化が生じた際は回収可能性の見直しが必要となり、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなったと判断された場合には、川崎重工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 将来の見通しの変化等により事業計画にダウンサイドリスクが判明した場合には、繰延税金資産に関しての見直しの要否を適時に判断できるような体制を構築しています。

 

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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