ステムセル研究所グループは、再生医療・細胞治療分野における利用を目的とした「さい帯血」及び「さい帯」等の周産期組織由来細胞のバンク事業を行っております。
株式会社ステムセル研究所において「さい帯」や「さい帯血」等の周産期組織由来の細胞バンク事業の展開及びそれらの細胞等を利用した新たな治療法の開発を行うとともに、子会社であるSTEMCELL INNOVATIONS PTE. LTD.(シンガポール)及び株式会社ミルケアの2社を通じて、海外でのさい帯・さい帯血保管事業及びステムセル研究所の事業に関連する新規分野の事業を推進しております。
なお、ステムセル研究所グループは「細胞バンク事業」の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っていません。
(1)さい帯血とさい帯について
お母さんと赤ちゃんをつなぐ“へその緒”は「さい帯」、さい帯や胎盤に含まれる血液は「さい帯血」と呼ばれ、いずれも赤ちゃんに由来する組織・細胞です。さい帯血及びさい帯には、再生医療分野において炎症抑制や組織修復への関与が研究されている細胞が含まれており、自己又は家族由来細胞を活用した研究及び医療利用への応用が期待されています。また、さい帯血・さい帯は長期保存が可能であることから、将来の医療利用に備えた保管ニーズがあります。さらに、さい帯血・さい帯は、出産後にお母さん及び赤ちゃんへの追加的侵襲を伴わず採取可能であり、通常は医療廃棄物として処理される組織を活用することから、再生医療分野における研究開発及び治療技術開発への活用が進められています。
(2)さい帯血バンクについて
さい帯血には、血液の源となる造血幹細胞や、免疫調節に関与する細胞等が含まれております。さい帯血は、出産時に侵襲なく採取可能であり、長期間の凍結保管が可能であることから、白血病等の血液疾患に対する造血幹細胞移植に活用されております。
近年では、血液疾患以外にも、小児の中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺等)や自閉症スペクトラム障害等を対象として、再生医療・細胞治療分野における臨床研究が国内外で進められており、安全性及び有効性の可能性を示唆する報告がなされております。
さい帯血バンクには、「公的さい帯血バンク」と「民間さい帯血バンク」があります。公的さい帯血バンクは、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」(以下、「造血幹細胞移植推進法」という)に基づき、妊産婦から無償で提供を受けたさい帯血を、白血病等の移植治療を必要とする患者向けに保管・提供する非営利事業です。2026年3月31日現在、厚生労働大臣の許可を受けた公的さい帯血バンクは全国に6施設あります。一方、民間さい帯血バンクは、本人又は家族による将来的な研究利用及び医療利用の可能性を想定し、有償でさい帯血を保管する事業です。
民間さい帯血バンクについては、厚生労働省健康局より「臍帯血取扱事業の届出」の提出が要請されております。2026年3月現在、当該届出を行っている民間さい帯血バンク事業者はステムセル研究所を含め2社であり、当該2社のさい帯血保管総数は95,821件、そのうちステムセル研究所保管総数は95,005件となっております(厚生労働省健康局「臍帯血の引渡し実績等に関する報告」(2025年3月31日時点)より)。
なお、造血幹細胞移植推進法の対象外となるさい帯血利用については、再生医療等を目的とした臨床研究又は自由診療において、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、「再生医療等安全性確保法」という)に基づき、再生医療等提供計画を作成の上、「特定認定再生医療等委員会」又は「認定再生医療等委員会」(注1)の審査を経て、厚生労働大臣へ提供計画を提出し実施する必要があります。
2026年3月31日現在、ステムセル研究所顧客へのさい帯血引渡件数(実利用件数)は、血液疾患2件及び再生医療等分野43件となっております。
(出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/
bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html))
(3)さい帯バンクについて
さい帯には、再生医療・細胞治療分野において研究が進められている間葉系細胞が含まれております。間葉系細胞は、さい帯のほか、骨髄、脂肪及び歯髄等から採取可能でありますが、さい帯は出産時に侵襲なく採取可能であることから、再生医療分野における細胞源の一つとして利用されております。また、炎症抑制作用や組織修復への関与が研究されており、炎症性疾患等を対象とした研究開発及び臨床研究が国内外で進められております。さらに、間葉系細胞は複数の細胞系譜へ分化可能な性質を有することから、細胞・組織再生分野における研究開発も進められております。
なお、間葉系細胞は免疫調節作用を有するとされており、他家さい帯由来間葉系細胞を用いた研究開発も進められておりますが、ステムセル研究所グループは、自家さい帯を活用した研究利用及び医療利用の可能性に着目し、さい帯保管事業を推進しております。
ステムセル研究所は、2021年4月より「さい帯(へその緒)組織保管サービス」を開始しております。2026年3月現在、ステムセル研究所グループが把握する限り、国内において民間企業によるさい帯保管事業を展開する事業者はステムセル研究所のみとなっております。
なお、さい帯保管は、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」の対象外であり、公的さい帯バンクは存在しておりません。また、臨床研究又は自由診療における再生医療等を目的としたさい帯利用については、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき実施されます。
(4)ステムセル研究所グループの「細胞バンク事業」について
ステムセル研究所は、顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」及び(又は)「さい帯保管委託契約」を締結し、国内のさい帯血・さい帯採取協力病院(大学病院、産科クリニック等)において採取されたさい帯血・さい帯を回収の上、自社の細胞処理センター(CPC:東京都港区及び横浜市緑区)へ輸送しております。
CPCに搬入したさい帯血・さい帯については、クリーンルーム内において無菌的操作による処理を行い、長期保管に適した状態に加工した上で、自社の細胞保管センター(横浜市緑区)に設置した超低温タンクにて長期保管しております。
委託契約に係る収益は、さい帯血・さい帯の分離料、検査料、登録料及び細胞保管料等により構成されており、初年度契約収益及び次年度以降の継続保管収益を収受する事業構造となっております。なお、さい帯血・さい帯の採取については、採取協力病院に対して採取技術料を支払っております。
また、ステムセル研究所グループは、主幹事業であるさい帯血・さい帯保管事業に加え、細胞保管に関するノウハウ及びインフラを活用した医療関連支援事業及び新たな保管サービスの開発に取り組んでおります。医療関連支援事業としては、卵子保管業務の受託や、多発性骨髄腫患者を対象とした寛解期末梢血造血幹細胞の保管受託を行っております。
また、新たな保管サービスとして、保管されたさい帯血の一部を活用したiPS細胞作製及び保管サービスの検討を進めております。
(5)品質管理体制
ステムセル研究所は、細胞バンク事業における品質管理体制の整備の一環として、2011年より品質マネジメントシステムに関する国際規格である「ISO9001」の認証を取得しております。また、国際的な品質基準への適合を目的として、2019年7月には、さい帯血保管に関する国際認証基準である「AABB」の認証を取得しております。
ISO9001については毎年、AABBについては2年毎に、第三者機関による品質マネジメントシステムの審査を受けており、2026年3月現在、各認証を維持しております。
また、国内規制対応として、2016年2月に東京細胞処理センター、2021年3月に横浜細胞処理センターにおいて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づく構造設備基準について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の実地調査を経て、特定細胞加工物製造許可を取得しております。
(6)保管したさい帯血の利用状況
さい帯血の利用領域の拡大や利用実績の蓄積は、さい帯血保管に対する顧客認知に影響を与える要素であり、またステムセル研究所グループの事業との関連性も高いことから、ステムセル研究所保管さい帯血に関連する主な利用事例及び研究事例について記載します。
<臨床研究>
2017年1月に高知大学医学部附属病院で開始された「小児脳性麻痺など脳障害に対する自家臍帯血単核球細胞輸血」の第Ⅰ相臨床研究では、ステムセル研究所保管細胞が使用され、2018年4月に6例への投与が完了しております。その後、約3年間の経過観察を経て、2022年11月に論文が公表されております。
また、自家臍帯血を用いたさらなる有効性評価を目的とした第Ⅱ相臨床研究が計画されており、2024年2月に大阪大学第一特定認定再生医療等委員会において実施計画が審査されております。さらに、当該研究については、先進医療Bとしての実施に向け、厚生労働省先進医療会議において継続審議が行われております。
ステムセル研究所保管細胞が使用される他の臨床研究としては、2020年10月5日付でjRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)に公表された「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」及び「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血単核球細胞輸血」があり、この第Ⅰ相臨床研究は、研究終了後、2025年10月に論文が公表されております。
さらに、大阪市立大学医学部(現 大阪公立大学医学部)がAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の支援を受け実施した「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する自己臍帯血幹細胞治療(第Ⅰ相)」については、論文公表後、第Ⅱ相多施設共同臨床研究が開始されております。当該臨床研究の予定症例数15例のうち、10例については、ステムセル研究所が細胞加工(さい帯血の細胞分離及び輸送)を受託しております。2026年3月現在の登録症例数は1例となっております。
日本で実施されている臨床研究(ステムセル研究所が細胞の処理・提供を行っているもの)
※ 症例数は変更される可能性があります。また、各臨床研究は研究者の方針、診療結果により、延期・中止となる可能性があります。
<治療等>
米国デューク大学では、脳障害に対するさい帯血投与について、臨床研究及びExpanded Access Protocol(EAP:拡大アクセス制度)を通じた研究的治療が実施されております。2017年10月以降、国内外の患者を対象として、自家又は同胞さい帯血を用いた投与が行われております。2021年9月公表のレポートでは、464名の患者が当該拡大アクセス制度においてさい帯血投与を受けております。ステムセル研究所保管者においても、2026年3月現在、18名が当該制度を通じて米国でさい帯血投与を受けております。
ステムセル研究所グループは、これらの対応を通じ、さい帯血の国際輸送及び関連手続に関する実務ノウハウを蓄積しております。また、参加を希望される保管者に対し、関連情報の提供を行っております。
また、2024年11月には、免疫不全症を有する患者に対し、ステムセル研究所保管さい帯血を用いた同胞間造血幹細胞移植が実施されました。当該移植の実施に際しては、実施医療機関における倫理審査及びステムセル研究所保管さい帯血の品質に関する検討が行われた上で移植に至っております。
さらに、民間さい帯血バンクで保管された同胞さい帯血の移植については、実施医療機関への確認の結果、診療報酬制度の対象となったことが確認されております。
(7)保管したさい帯の利用状況
保管したさい帯組織は、融解し、組織を培養液に浸し培養することにより、間葉系細胞を得ることができます。再生医療においては、間葉系細胞自体を投与する方法の他、間葉系細胞を必要な体組織に変化(分化)させ使用する方法や、間葉系細胞が分泌する成分(各種タンパク質やエクソソーム等)を使用する方法などが期待されています。
ステムセル研究所グループは、間葉系細胞の培養技術を有していることから、2023年6月より、保管したさい帯組織の間葉系細胞の培養及び分泌物(以下、培養上清という)の製造について、医師からの製造依頼に基づく製造受託サービスを開始しました。堅調に受託数を増やし、2026年3月現在までに、37件の製造を受託しております。
細胞自体を投与せず、培養上清やエクソソームを自由診療において使用することについては、2026年3月現在、再生医療等安全性確保法の対象ではありませんが、関連学会等から注意喚起がなされていることから、委託元へ適切な取り扱いを推奨しております。なお、ステムセル研究所グループでは、製造した培養上清について生産物賠償責任保険に加入しております。また、ステムセル研究所グループにおける本製造サービスに関する宣伝広告等の情報は、有識者の見解を踏まえ作成しております。
(8)細胞処理センター(CPC)について
①東京CPC
東京CPCは、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2016年2月に厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を取得しており、2026年3月現在も当該許可を維持しております。
東京CPCでは、主として、さい帯血に含まれる幹細胞の分離、調製及び凍結処理を行っております。また、ISO9001及びAABBの認証を取得し、品質マネジメントシステムに基づく運営を行っております。
②横浜CPC
横浜CPCは、さい帯血及びさい帯の保管需要への対応を目的として2021年3月に開設し、同月に厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を取得しております。2026年3月現在も当該許可を維持しております。
横浜CPCは、再生医療等製品製造に必要となる設備要件等を考慮して設計しており、保管細胞の培養、加工及び製品化研究への対応に加え、各種細胞・組織の受け入れを想定した施設となっております。横浜CPCにおいても、東京CPCと同様にISO9001及びAABBの認証を取得し、品質マネジメントシステムに基づく運営を行っております。
2026年3月現在、東京CPC及び横浜CPCにおける月間受入可能検体数は、さい帯血及びさい帯について、それぞれ1,000~1,500検体程度となっております。
(9)細胞保管センター(CCC)について
細胞保管センター(CCC)は、新耐震基準に基づき設計された施設(ジャーマンインダストリーパーク)内に所在しております。CPCで処理したさい帯血及びさい帯は、CCC内の液体窒素タンクにて保管しております。CCCは、2026年3月現在、第一CCC~第三CCCまで増設しております。2012年に第一CCCを開設し、その後、2021年6月に第二CCC、2025年5月に第三CCCを同施設内に開設しております。2026年3月現在、CCC全体の保管キャパシティは約20万検体(全容量をさい帯血保管に使用した場合)となっております。
また、長期的な保管体制の確保を目的として、2025年2月に神奈川県横浜市内の土地を取得しております。当該土地については、将来的な保管施設用地等としての活用を含め検討しておりますが、具体的な用途については、今後の事業環境その他の要因を踏まえ判断してまいります。
(注1)再生医療等技術や法律の専門家の有識者からなる合議制の委員会で、特に高度な審査能力、第三者性を有するもので、一定の手続きにより厚生労働大臣の認定を受けたものをいいます。
(注2)第Ⅰ相試験は、主として安全性の評価を目的として実施されるものです。
(注3)第Ⅱ相試験は、探索的に有効性及び安全性を評価することを目的として実施されるものです。
[事業系統図]
また、ステムセル研究所は「細胞バンク事業」の単一セグメントでありますが、売上高は「技術料」、「保管料」、「その他」の3つから構成されております。
① 技術料
細胞分離及び細胞処理の際に必要となる分離料、検査料及び登録料を技術料として分類しております。
② 保管料
細胞保管料を保管料として分類しております。保管料は契約時に契約年数に応じた保管料総額を前受金として計上し、保管期間の経過に応じて年間の保管料を毎期収益として計上しております。
③ その他
上記の他、契約更新時の更新手数料等をその他として分類しております。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてステムセル研究所が判断したものであります。
ステムセル研究所は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」のノウハウの蓄積・技術開発・サービスの向上に努めて参ります。
そして、細胞バンクに保管されている細胞を用いて「新しい医療」を提供しようと日々努力を重ねられている医師や研究者の方々と協力し、これまで治療法のない病態に苦しむ患者さんに寄り添い、医療の発展に寄与する事を目標としております。
また、ステムセル研究所独自の、細胞バンク事業のネットワークを基盤とした新たなビジネスモデルの構築による収益拡大に取り組んでおります。
(2) 目標とする経営指標
ステムセル研究所は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、事業の状況を的確かつ容易に把握する上で、年間保管(売上)検体数をベンチマークとし、年間保管(売上)検体数増加を目指し、事業規模拡大に努めて参ります。また「細胞バンク事業」の安定した運営のため、内部留保を充実させ、自己資本比率を高めて参ります。
ステムセル研究所の中長期的な経営戦略は下記の3点であります。
・ 「さい帯(へその緒)」等を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)の採取、保管に向けて、医療機関・研究機関と協力しながら事業の拡大を図って参ります。また、アジアを中心とした、まだ「細胞バンク事業」が発達していない国々への事業展開を企図して、市場調査や現地の医療機関等との提携などを進めて参ります。
・ 保管する幹細胞を使用して、中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害等)等に対する再生医療・細胞治療に取り組む医療機関と協力して、臨床研究を推進し、ステムセル研究所の「細胞バンク事業」の利用者拡大に繋げて参ります。
・ 細胞バンク事業において構築した、産婦人科へのネットワークを活用した、妊婦及びそのご家族等へ向けた、他に無い、新しいサービス・製品を開発して参ります。
① 経営環境について
近年の再生医療分野の発展は目覚しく、さい帯血についても米国を中心に臨床研究が進展しております。米国デューク大学においては、脳神経疾患に対するさい帯血投与の第Ⅱ相臨床研究が終了し、良好な結果が発表され現在ではFDA(米国食品医薬品局)承認のもと、2017年10月より「拡大アクセス制度」(注)がスタートし、2021年9月までに464名の患者さんが治療を受けられております。日本国内でも、2014年に再生医療等安全性確保法が施行され、ステムセル研究所のような事業会社が臨床研究に参加する仕組みが整えられた事から、さい帯血等を利用した臨床研究が開始され、さい帯血等の体性幹細胞の医療応用のニーズは高まってきております。
ステムセル研究所としては、国内のさい帯血を用いた臨床研究を推進し、さい帯血の保管の意義を訴求しております。また、さい帯血のみならず、さい帯由来の間葉系細胞を用いた研究開発も世界的に着実に進展しており、さらには、さい帯由来間葉系細胞そのものではなく、それらが分泌する因子(生理活性物質)を用いた医療開発も近年では活発に行われております。このように多様化するさい帯由来間葉系細胞の応用は今後ますます進むと考えられ、さい帯組織の保管の必要性が高まるものと予想されます。ステムセル研究所は2021年4月よりさい帯保管事業を開始しており、将来のさい帯の医療化に備えた保管を訴求しております。ステムセル研究所としては、さい帯由来間葉系細胞及びその培養因子の研究開発を積極的に行い、いち早く臨床応用すべく推進しております。
② 事業上及び財務上の対処すべき課題について
ステムセル研究所は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、前項の経営戦略を推進するにあたり、下記の4点を課題と捉え対処して参ります。
・ステムセル研究所は、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」を主事業としております。この「細胞バンク事業」において、さい帯血の保管については、厚生労働省健康局より、「臍帯血取扱事業の届出」の提出を要請されており、ステムセル研究所は今後も同省と協議しながら、適切に事業運営を行って参ります。
・ステムセル研究所の主事業である「細胞バンク事業」においては、近年その需要が急激に高まってきており、ステムセル研究所は2021年3月に新たな細胞処理センター(横浜市)を増設いたしました。今後も2021年4月に開始した「さい帯(へその緒)保管サービス」を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)等の採取、保管事業の拡大に備え、細胞処理能力、細胞保管能力の増強を行って参ります。
・ステムセル研究所では、人員の増強、組織の強化が重要な経営課題の一つと捉えております。今後も、専門知識を持った優秀な人材を継続的に採用、また育成を行い、組織を強化して行くとともに、「デジタル化」による、より効率的な業務運用を目指して参ります。また、社員のモチベーションを上げるための研修制度、福利厚生も充実させて参ります。
・ステムセル研究所では、持続的な企業価値向上を図る手段として、ESGの推進に注力しております。そして、経営の健全性、透明性及び客観性を高めるため、ガバナンス強化の取組みとして、社外役員の充実等、意思決定プロセスの透明化を図って参ります。また、役職員に対して、コンプライアンス意識を高めるための啓蒙活動を継続して参ります。
(注)デューク大学で行われている「拡大アクセス制度」では、さい帯血を用いた臨床試験の選定基準に満たないお子さんに、所定の手続きを経て自家(お子さん自身)あるいは他家(ごきょうだい)のさい帯血投与の機会を提供しております。本書提出日現在、26歳未満の、脳性麻痺、低酸素性脳症、脳卒中、水頭症、言語失行症、自閉症スペクトラム、その他の脳障害を持つお子さんが対象となります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてステムセル研究所が判断したものであります。
ステムセル研究所の顧客は、臨床研究が進められている「さい帯血」を用いた再生医療(例えば、低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺などへの再生医療)において、将来「さい帯血」が治療に使用できることを想定して、「さい帯血」を保管しております。一方、「さい帯血」の再生医療分野での臨床研究は開始されたばかりであり、有効性や治療効果が十分に検証されておりません。臨床研究の過程では、臨床研究が長期化する等、想定通り進捗しない可能性、そして、その有効性が明確に確認されない可能性があります。臨床研究が想定通り進捗しない場合や臨床研究において有効性が検証されない場合の他、その他の新たな治療法が出現した場合には、ステムセル研究所にさい帯血を保管する保管者が減少するリスクがあります。ステムセル研究所は、当該リスクが顕在化する可能性は低く、発生時期は長期的な将来と予測しております。仮に顕在化した場合、経営成績及び財務状態に重大な影響度を及ぼし、事業継続が困難になる可能性があります。そこで対応策として、治療法が確立されていない疾患及び研究段階のものはまだ多数あり、それらを開発目標に設定し、アカデミアパートナーとともに臨床応用を目指します。
ステムセル研究所の主事業「細胞バンク事業(さい帯血保管)」は、厚生労働省への「臍帯血取扱事業の届出」を求められており、また、「再生医療等安全性確保法」、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」、「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」、「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律」、「個人情報の保護に関する法律」の法規制を受けております。しかしながら、これらの法規制の改正・強化、新たな法規制が制定された場合、あるいは、これらの法規制を遵守できない場合、追加的な対応や事業への何らかの制約が生じることにより、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。ステムセル研究所は、当該リスクが顕在化する可能性は低く、発生時期は不明と予測しております。仮に顕在化した場合、経営成績及び財務状態に重大な影響度を及ぼし、事業継続が困難になる可能性があります。そこで対応策として、関係官庁や学会の情報を注視し、また全社的な内部監査、細胞技術本部を対象としたISO9001に係る内部監査、プライバシーマーク制度に係る内部監査を実施し、法的規制への適合性を定期的に確認しております。
ステムセル研究所の取り扱う「さい帯血」は、再生医療等安全性確保法において、第二種再生医療等に区分されており、その処理を行うにあたり、細胞培養加工施設における「特定細胞加工物製造許可」の取得が義務づけられ、ステムセル研究所はその許可を取得しております。特定細胞加工物製造許可はステムセル研究所の主要な事業活動を継続する上で不可欠な許可であり、本書提出日までの間において、取消事由は発生しておりません。しかしながら、将来において、当該許可の取消等があった場合には、主要な事業活動に支障をきたすとともにステムセル研究所の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。ステムセル研究所は、当該リスクが顕在化する可能性は低く、発生時期は中長期的な将来と予測しております。仮に顕在化した場合、経営成績及び財務状態に重大な影響度を及ぼし、事業継続が困難になる可能性があります。そこで対応策として、構造設備基準への適合状況に関して、内部監査ISO9001に係る内部監査及びAABB査察(2年に1回)により、再生医療等安全確保法やAABBで求められる基準への不適合事項が無いか定期的に確認しております。
(主な許認可の状況)
近年、ステムセル研究所の事業分野である「さい帯血保管」及び「再生医療」に関する世の中の関心が高まって来ておりますが、さい帯血は、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」及び「再生医療等安全性確保法」の規制を受けております。ステムセル研究所以外の事業者がこれらの関連する法令に違反し、当該違反の事実がマスメディア等に取り上げられた場合、また、SNS等でネガティブな情報が掲載された場合、ステムセル研究所も風評被害を受ける可能性があります。ステムセル研究所は、風評被害を受ける可能性のある事象が発生した場合に備え、速やかに対応策を検討できるよう、情報収集に努めております。また、風評被害を受ける可能性のある事象が発生した場合には、プレスリリース及び適時情報開示等により、発生した事実とステムセル研究所との関係を公表することで、風評被害等を最小限に低減するよう対処して参ります。しかしながら、このような対処・対応策にも関わらず、風評被害が発生・拡散した場合、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ステムセル研究所の主事業である「細胞バンク事業」においては、現在、出産時に採取できる「さい帯血保管」を行っておりますが、2023年に生まれた子どもの数(出生数)は72万7,277人と80万人を下回ったことが厚生労働省人口動態統計で公表されています。また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(平成29年推計)によると、我が国の出生数は今後も減少を続けると推計されています。我が国の出生数とステムセル研究所のさい帯血の保管数は必ずしも比例しませんが、出生数の想定を上回る減少が将来のステムセル研究所の事業や業績に影響を与える可能性があります。
ステムセル研究所は、グローバル品質規格であるAABBやISO9001といった第三者の認証機関より査察を受け、品質や設備運用の維持向上に努めております。しかしながら、細胞の分離・処理作業に必要な試薬やステムセル研究所の心臓部分ともいえる長期保管用タンクの冷却用液体窒素の供給が滞ったり、必要な設備が正常に稼動しないなど細胞の輸送、分離、保管の品質維持に支障を来した場合には、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。ステムセル研究所は、当該リスクが顕在化する可能性は低く、発生時期は中長期的な将来と予測しております。仮に顕在化した場合、経営成績及び財務状態に重大な影響度を及ぼし、事業継続が困難になる可能性があります。そこで対応策として、2021年3月に新たな細胞処理センターを横浜市に建設し、東京と横浜の2施設あることで、万が一どちらかに支障が生じても対応できます。またグローバル品質規格であるAABBやISO9001といった第三者の認証機関より査察を受け、品質や設備運用の維持向上に努めております。
ステムセル研究所は、さい帯血の保管に際して秘匿性の高い個人情報を取得しているため、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」の中でもより厳格な、保健医療福祉分野のプライバシーマーク(MEDIS)制度に基づき、入手した個人情報の管理に努めておりますが、何らかの理由で個人情報の漏洩や不正使用等が発生した場合、社会的信頼の低下や賠償金の支払い等により、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼし、事業の継続が困難となる可能性があります。
ステムセル研究所は顧客より受託を受け、分離した幹細胞を細胞保管センターで保管しております。同センターは、新耐震基準に基づいた設計で耐震性を有しており、先の東日本大震災においても保管設備の被害はありませんでした。また、ステムセル研究所は、長期間の液体窒素の供給停止や電気の供給停止に備え、液体窒素製造プラントを複数持つ大手ガス会社2社との提携や発電機の配置によりリスク低減に努めております。なお、液体窒素及び電気の供給が維持できれば、保管された幹細胞を超低温に保ち、品質を維持することが可能と考えております。しかしながら、想定を超える大規模な自然災害や事故が発生し、ステムセル研究所の保管業務・細胞処理業務に支障が生じた場合、その他不測の事態が発生した場合には、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ステムセル研究所の主事業である「細胞バンク事業」は、細胞の輸送、分離、保管作業等において手作業によるものが多く、人為的なミスを防ぐ為、ISOやAABB、Pマーク等の外部認証制度を積極的に取り入れ、チェック体制の整備に取り組んでおりますが、何らかの人為的なミスにより、ステムセル研究所の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
ステムセル研究所の代表取締役である清水崇文は、医療関連事業全般に関する豊富な知識と経験、ネットワークを有しており、経営方針や事業戦略の決定等、事業継続の上で重要な役割を果たしております。ステムセル研究所では、人材の確保・育成を進め、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの事情により、同氏がステムセル研究所から離職した場合、または十分な業務執行が困難となった場合には、ステムセル研究所の事業や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
ステムセル研究所は、協力産科施設で開催される母親学級(注1)においてさい帯血保管サービスを紹介しており、母親学級でのサービス紹介が売上検体数の獲得や認知度向上のための主力チャネルの一つと認識しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の広がりに伴い、2020年2月以降、多くの施設において母親学級の開催中止・開催自粛しておりました。母親学級の中止・自粛に伴い、ステムセル研究所ではパンフレットの配布等を順次施設に協力いただき、ステムセル研究所サービスの紹介、認知度の向上に努め、現在は、Web広告をはじめとするインターネットを通じたステムセル研究所サービスの紹介・認知度向上のための新たなチャネル確立に加えて、産科施設における新たな施策(注2)を確立していますが、このような認知度向上のための施策が進まない場合、売上検体数やステムセル研究所サービスの認知度が低下する可能性があります。
(注1)妊娠、出産、赤ちゃんのお世話などについて基本的な知識や情報を教えるもので、妊娠中の体のことや、体調管理、栄養指導、安産体操、出産の流れや呼吸法、新生児のお世話についてなど学ぶものです。多くの産科施設で実施されています。
(注2)産科施設における新たな施策
・産科施設が、出産にあたっての妊婦の希望をヒアリングする「バース・プラン」にさい帯血保管を希望するかどうかの項目を設ける。
・産科施設のホームページからステムセル研究所のランディングページ(LP)へ誘導するバナー広告を掲載する。
・産科施設の待合室のモニターに、さい帯血保管の紹介動画を放映する(デジタルサイネージ)。
・産科施設のホームページへ掲載する出産に関する情報や産科施設の紹介動画をステムセル研究所が制作に協力する事で施設との関係強化を図ると同時に、さい帯血に関するPR動画も差し込む。
① 資本的関係について
ステムセル研究所は、㈱日本トリム(東証プライム上場)の企業グループに属しており、同社の100%子会社である㈱トリムメディカルホールディングスが、ステムセル研究所の議決権の72.1%を保有する親会社であります。ステムセル研究所は親会社への事前承認事項はなく、独自に経営方針・政策決定及び事業展開についての意思決定を行っておりますが、同社は、ステムセル研究所の筆頭株主として基本事項に関する決定権又は拒否権を保有しているため、ステムセル研究所の意思決定に対して同社が影響を与える可能性があります。
② ㈱日本トリム及びそのグループ会社との取引関係について
ステムセル研究所は、㈱日本トリム及びそのグループ会社と取引を行っており、当事業年度における主な取引は、次のとおりとなっております。
・ 機器購入について
ステムセル研究所は、㈱トリムメディカルホールディングスの子会社であり研究用機器の製造販売を主な事業内容とする、ストレックス㈱より検体を緩慢凍結する機器の購入や機器のメンテナンス作業の委託をしておりますが、取引に当たっては他のメーカーと性能、価格優位性を慎重に考慮し取引を行っております。
なお、当事業年度における取引金額は、12,120千円となっております。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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