本田技研工業の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しており、関係会社の情報についてもIFRSの定義に基づいて開示しています。
本田技研工業グループは、本田技研工業および国内外346社の関係会社(連結子会社282社、持分法適用会社64社)により構成され、事業別には、二輪事業、四輪事業、金融サービス事業およびパワープロダクツ事業及びその他の事業からなっています。
二輪事業、四輪事業、金融サービス事業およびパワープロダクツ事業及びその他の事業における主要製品およびサービス、所在地別の主な会社は、以下のとおりです。
(注) 主な会社のうち、複数の事業を営んでいる会社については、それぞれの事業区分に記載しています。
事業の系統図は、以下のとおりです。(主な会社のみ記載しています。)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、本田技研工業、連結子会社および持分法適用会社(以下「本田技研工業グループ」という。)が判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。
本田技研工業グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。「人間尊重」とは、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあうという理念であり、「三つの喜び」とは、この「人間尊重」に基づき、お客様の喜びを源として、企業活動に関わりをもつすべての人々と、共に喜びを実現していくという信念であります。
こうした基本理念に基づき、「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、株主の皆様をはじめとするすべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めていきます。
本田技研工業グループは、モビリティカンパニーとして、「環境負荷ゼロ」「絶対安全」という大きな課題に真摯に向き合い、本田技研工業グループのめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。
こうした想いのもと、この大きな変革の時代を「第二の創業期」と位置づけてさまざまな取り組みを進めてきましたが、さらにスピードを上げ、Hondaで働くすべての仲間が共通の目的に向かって一丸となって取り組んでいくためには、「我々がめざす方向」、そして「提供価値」をより明確にしていく必要があると考え、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。
<グローバルブランドスローガンの再定義>
本田技研工業グループがこれからも提供し続けたい価値は、「時間や空間の制約からの解放」と、「人のあらゆる可能性の拡張」です。この2つの価値を徹底的に追求し続けた先に、本田技研工業グループが夢見るこれからのモビリティと、魅力的なモビリティ社会があると考え、2つの提供価値を「Transcend」と「Augment」としました。
「Transcend(解放)」
モビリティを通じた「時間的制約」と「空間的制約」からの解放という大きな価値の創出をめざしていきます。
「Augment(拡張)」
さまざまなモビリティによって、「これまでできなかったことができるようになる」という、「人の可能性を拡張する」ことをめざしていきます。
そして、「これらの提供価値を生み出し、実現していくカギとなるのが一人ひとりの創造力」であり、全社一丸となって高い目標を掲げ、変化を恐れず、新しい価値を生み出していくための「Create(創造)」に取り組んでいきます。
モビリティカンパニーとして「物理的にひとを動かす」「ひとの心を動かす」(How we move you.)ことで、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となり、世の中から「存在を期待される企業」であり続けることをめざします。
本田技研工業グループを取り巻く経営環境は、大きな転換期を迎えています。価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいます。また、ウクライナおよび中東などにおいて、国際情勢の見通しが不透明な状況が続くなど、地政学的リスクも顕在化しています。さらには、企業活動に関わるすべてのステークホルダーと、長期的な社会課題を解決するための、積極的な関係構築も求められています。将来の成長に向けては、提供価値の質の向上に取り組むことが不可欠です。
四輪事業においては、EV(電気自動車)市場に多種多様な製品が投入され、これまでHondaが強みとしてきたエンジン等のデバイス性能による差別化が難しくなっています。今後は、電動化の加速により、バッテリーに用いられるニッケル、リチウム、コバルトの需要が急拡大するとともに、鉱物など原材料の供給不足によるバッテリー価格の高騰が懸念されます。バッテリーをはじめとする部品調達のあらゆるリスクに備え、リサイクルやリユースなどの再資源化やサステナブルマテリアルの活用を推進することで、リソースサーキュレーションの実現をめざしていきます。
二輪事業は、若年人口が増加する新興国を中心に、今後も市場の拡大が見込まれます。また、先進国だけでなく新興国でも政府による電動化目標が設定されるなど、環境意識の高まりが顕在化しています。対応策としてモビリティの電動化が期待されていますが、その一方で、新興国の電動車需要は、政府のインセンティブによる影響が大きく、かつ電力の安定供給や充電ネットワークの整備など、インフラ面での課題が残ります。電動車へのシフトは、不透明な要素を踏まえ、ICE(内燃機関)車へのニーズが継続する市場、電動化が進む市場を見極めながらリソースを最適配分し、電動新興メーカーに対しては本田技研工業グループの強みを活かし差別化をはかっていきます。
パワープロダクツ事業及びその他の事業においては、環境規制の高まりを背景に、小型建機領域やガーデン領域で比較的「小型」で「短時間運転」の商品から電動化が進んでいます。その一方、ICE商品も「高出力・長時間運転」「お求めやすい価格」といった特徴が用途に見合うことから、需要が継続しています。そのため本田技研工業グループは電動化に主軸を置きながら、ICE領域についても環境対応を進化させることで、多様化する市場ニーズへ応える必要性を認識しています。
(3) 優先的に対処すべき課題
経営環境を踏まえ、持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、本田技研工業グループがめざす方向性に照らしあわせ、優先的に対処すべき課題を選定しています。従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、本田技研工業グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。
<5つの重要テーマ>
① 環境負荷ゼロ社会の実現
本田技研工業グループは、環境負荷ゼロ社会の実現をめざします。「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組みます。
1.カーボンニュートラルの取り組み
四輪事業は中長期目標として、2030年にはグローバルで年間200万台を超えるEV生産体制を構築し、2040年までにEV・FCEV(燃料電池自動車)販売比率をグローバルで100%とすることをめざしています。
この実現に向けて、本田技研工業グループは、EVラインナップの拡大、複数のバッテリー調達手法の確立、充電サービスの拡大、ソフトウェア開発の加速、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築に取り組んでいきます。
(EVラインナップの展開)
(バッテリー戦略)
バッテリーについては、足元から将来まで複数のバッテリー調達手法を準備し、電動化の加速に対応していきます。新たなバリューチェーンを構築するため、北米ではLGエナジーソリューションとの合弁会社で2025年からバッテリーの量産を開始予定です。重要鉱物の調達については、阪和興業㈱やPOSCOホールディングスと、リサイクル観点ではアセンド・エレメンツやサーバ・ソリューションズとパートナーシップを締結しています。2020年代後半からは、液体リチウムイオン電池の進化に加え、半固体電池・全固体電池などの次世代電池を開発・投入していきます。液体リチウムイオン電池の性能進化に向けては、㈱GSユアサと高容量・高出力なEV用液体リチウムイオン電池の開発に着手し、日本国内における電動化の加速に貢献していきます。また、次世代電池の技術進化に向けて、半固体電池については、SES AI コーポレーションへの出資を通じて、安全で高い耐久性を持つ大容量バッテリーの実現をめざし、共同開発を推進していきます。全固体電池については、2024年に栃木県さくら市での実証ラインを立ち上げ、2020年代後半の市場投入をめざし、取り組みを加速させていきます。
(充電・インフラ戦略)
EVの拡充にあわせた充電サービスの拡大に取り組んでいます。公共充電については、北米でのEVの普及加速をめざし、Hondaの米国現地法人であるアメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッドと、BMWグループ、ゼネラルモーターズ(GM)、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスN.V.の計7社が、米国とカナダでEV用高出力充電網を新たに構築する合弁会社の設立に合意しました。同社は、2024年夏に米国で初となる充電ステーションの開設を計画しており、大都市圏や主要幹線道路沿いから順次充電網を拡大していきます。家庭充電は、北米ですでに展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」をベースとし、EVの電力供給能力を活用したスマートエネルギーサービスを順次、展開予定です。
(ソフトウェア戦略)
ソフトウェアがハードウェアやサービスの価値を定義する「ソフトウェアデファインドモビリティ」の発想に基づき、ソフトウェアの開発を加速させます。具体的には2025年に北米で投入する中大型EVからの採用をめざして、E&Eアーキテクチャーをさらに進化させるとともに、Honda独自のビークルOSの開発を進めています。このビークルOSを基盤として、車載ソフトウェアを常に進化させることで、車両販売後も機能やサービスを進化させていきます。また、EVと親和性の高いデジタルサービスを、安心・快適・信頼をベースとしつつ、一元管理で分かりやすい充電案内などUX起点の魅力的なサービスとしてスピーディに提供していきます。
(EV生産体制)
世界的な電動化加速に伴い、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築を推進しています。北米では、米国オハイオ州内の3つの既存工場(四輪車を生産するメアリズビル工場とイーストリバティ工場、四輪車用パワートレインを生産するアンナ・エンジン工場)をEV生産のハブ拠点と位置づけ、既存工場を活用しながら、高効率かつフレキシビリティの高いEV生産ラインを構築しています。
なお、上記のようなカーボンニュートラルの取り組みおよび後記「② 交通事故ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをさらに加速するためには、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域に関する強化が不可欠となります。そこで、本田技研工業は、2024年3月15日に日産自動車株式会社との間で自動車の電動化・知能化に向けて戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結しました。これを受け、本田技研工業グループでは、同社との間で、自動車車載ソフトウェアプラットフォーム、バッテリーEVに関するコアコンポーネントおよび商品の相互補完を含む幅広いスコープで提携の検討を進めています。
さらに、バッテリー戦略とEV生産体制においては、2024年4月に、北米での将来的なEV需要の増加に向けたEV供給体制の強化をはかるため、EVの包括的バリューチェーンをカナダに構築することをめざし、本格的な検討を開始することを発表しました。このバリューチェーンの内容には、EV専用の完成車工場・EV用バッテリー工場の建設に加え、パートナー企業との合弁会社設立による、セパレーターや正極材といったバッテリーの主要部材のカナダ国内での生産体制の確立を含んでいます。
今後も、共同開発や合弁などの手法を用いながら様々な領域での提携を進めバッテリー戦略、充電・インフラ戦略、ソフトウェア戦略、EV生産体制の構築を進めていきます。
二輪事業においては、本田技研工業グループの二輪車は世界中のお客様の「移動のニーズ」に対応し、多くの人々に利用されています。これまでICE車のプラットフォーム展開で培った競争力あるものづくりの技術とノウハウを活かし、各国のお客様のニーズに適応する電動二輪プラットフォームを順次開発していきます。高効率なものづくりにより、電動車においてもICE車同様に「移動の喜び」を適切な価格でお届けすることで、グローバルでの二輪車の電動化を牽引していきます。2026年には電動二輪車をグローバルで合計10モデル以上投入し、販売台数年間100万台をめざします。2030年にはラインナップをさらに拡充し、400万台の販売をめざします。
この実現に向けては、本田技研工業グループの強みである、商品のフルラインナップ展開、開発・生産・調達能力、「走る・曲がる・止まる」の基本性能に加えたコネクティビティの進化、3万店の販売網を活用したオフライン・オンライン融合の顧客接点を活かして取り組んでいきます。
(商品のフルラインナップ展開)
本田技研工業グループは、2030年までにスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATVなど合計30機種以上を積極的に投入し、電動二輪車のフルラインナップ化への取り組みを加速させていきます。またお客様がそれぞれの環境にあわせて選択できるよう、バッテリー交換式と固定バッテリーによるプラグイン充電の2つの方式を用意して幅広い需要に応えていきます。
(開発・生産・調達戦略)
電動二輪車の開発においては、モジュールプラットフォームという形で、バッテリー、パワーユニット、車体をそれぞれモジュール化し、これらを組み合わせることで、多様なバリエーション展開が可能になります。これによりグローバルのさまざまな顧客ニーズに対応できる商品を、スピーディに、かつ、効率よく市場に投入していきます。生産については、まずは既存のICE用インフラを活用しますが、2030年の販売台数400万台の実現に向けた盤石な体制構築と一層の競争力を確保すべく、2027年以降をめどに、電動二輪車専用生産工場をグローバルで順次稼働させます。調達については、これまで完成部品で調達していたものを、材料、加工、組み立て、物流などの各工程を見直すことで、より競争力のある体制にしていきます。
(ソフトウェア戦略)
電動二輪車で大きく進化する装備の一つに、コネクティビティがあります。これにより購入後もOTAなどを通じてソフトウェアの機能追加などのアップデートを行うことが可能となります。将来的には、ICE搭載車と電動二輪車の双方から得られるデータを活用し、車両の利用状況から顧客のニーズを理解することで、新しい発見や安全性を高める機能など、本田技研工業グループならではの体験を提供していきます。
(オフライン・オンライン融合の顧客接点)
電動二輪事業では、店舗に行くことなく二輪車を購入できるオンライン販売を行い、お客様の利便性を向上させていくとともに、グローバルで3万店を超える本田技研工業グループの既存の販売網のサービスによる安心感も提供していきます。既存の販売店の強みに加え、オンラインサービスの強化で、これまで以上に、お客様により便利で安心感のあるオンオフ融合の顧客接点を提供していきます。
また、電動化に限ることなくICE領域での燃費向上、バイオエタノール燃料の対応技術など、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを、地域特性に合わせながら一層加速させていきます。
パワープロダクツ事業の電動商品の展開においては、小型建機領域とガーデン領域の電動化に注力し進めていきます。また、二輪事業で発売した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」をパワープロダクツ事業へも拡大していきます。小型建機領域では、基幹事業で培ったBtoBの顧客基盤を活かした電動化を推進していきます。電動パワーユニット「eGX」の販売と搭載支援を通じ、完成機メーカーの電動化を後押しします。また、既存顧客のみならず、今後電動化が期待される領域での製品搭載の拡大を推進していきます。ガーデン領域では、歩行芝刈機の「きれいに刈れる」「耐久性」といった強みを武器に培った高いプレゼンスがあります。今後は、外部協業先とのパートナーシップも視野に、効率の良い開発・生産スキームで電動化を加速させていきます。マリン領域でも、今後、湖沼等でのICE製品の使用に関する規制が想定されるため、小型船舶用の電動推進機の実証実験を開始するなど、電動化に向けた取り組みを行っていきます。
国や地域によって多様化するニーズに柔軟に対応しながら、ICE製品の投入市場を見極め、二輪事業とのシナジーを活かし、部品の共用化や生産・調達体制の最適化など開発・生産領域における効率的なオペレーションを追求していきます。これを通じて、生産領域においても、商品魅力を向上させて、電動化に向けた事業体質の強化をはかります。同時に燃費改善、カーボンニュートラル燃料対応技術といった環境性能を高めることで、さらなる競争力の高い商品・サービスの展開をめざしていきます。
2.「クリーンエネルギー」3.「リソースサーキュレーション」の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
② 交通事故ゼロ社会の実現
本田技研工業グループは、2050年に全世界で、本田技研工業グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざしています。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で本田技研工業グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者の半減をめざしています。これらは、新車だけでなく、市場に現存するすべての二輪車、四輪車が対象となります。
詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
③ 人的資本経営の進化
本田技研工業グループの人的資本経営の取り組みとして、事業戦略と人材戦略の連動をはかるため、人領域において集中的に取り組むべき課題を「人材マテリアリティ」として定義しています。人材マテリアリティの定義にあたっては、全社重要テーマである「人的資本経営の進化」において中長期的に取り組むべき観点と、事業戦略に資するための短中期的観点の両面で、集中的に取り組むべき方向性を全社での議論を経て定めています。
そして、人材マテリアリティが達成された状態を測る指標として経営管理指標(KGI)とその目標値を定め、この目標値を達成するための人材戦略・施策・施策KPIを一連のストーリーとして定義しています。KGIおよび関連する施策KPIは経営管理の枠組みで定期的にモニタリングされ、必要に応じて指標・目標値の見直しや施策の修正・追加などを行い、PDCAサイクルを実行していきます。
詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標」を参照ください。
④ 独創的な技術の創出
めざす提供価値として定めた「Transcend」・「Augment」の実現に向け、「コア技術の創出こそが将来にわたるサステナブルな事業基盤や競争力を生む源泉になる」という考え方に立脚し、イノベーションマネジメントの強化に取り組んでいます。研究子会社である㈱本田技術研究所は、2019年から2020年にかけて二輪・四輪・パワープロダクツ事業における商品開発機能を本田技研工業㈱へ移管し、より長期的な視点での価値創造に向けた基礎技術の研究に専念できる体制へと再編しました。モビリティの価値のさらなる拡張に向けて、先進技術研究、パワーユニット研究、材料研究などの領域への資源投入を強化するとともに、新たなモビリティやロボット、水素活用をはじめとする次世代エネルギー、バッテリー、知能化/AI、サステナブルマテリアルなどのさまざまな技術ドメインを定め、各領域のエキスパートが新価値の創出に向けた技術開発をリードしています。また国内だけでなく、世界中のさまざまな研究機関と共同研究を行うことで、グローバルでの知の探究と結集をはかっています。
このような体制のもと、それぞれの技術ドメインにおいて生み出された新たな技術を応用し、空、海洋、宇宙など、さまざまなフィールドにおいて新しい価値をお届けできる魅力的な次世代モビリティの開発を進めています。具体的には「eVTOL」、「アバターロボット」、さらには宇宙領域へのチャレンジといった幅広い領域で新価値の創出に取り組んでおり、燃焼・電動・制御・ロボティクス技術などの本田技研工業グループが培ってきたコア技術を活用することで、「人々の生活の可能性を拡げる喜び」の実現をめざしています。
⑤ ブランド価値の向上
Hondaのブランドは、創業時から現在に至るまで、お客様とともに歩み続けたあらゆる企業活動の積み重ねによって形作られてきました。75年の歴史によって紡がれたHondaブランドをさらに輝かせ、将来に亘ってその価値を高めていくことは、本田技研工業グループにとって極めて重要な課題の一つであると認識しています。
この大きな変革期において、本田技研工業グループが創造する価値を世界中のお客様に明確に示すとともに、全ての従業員が共通の目的に向かって一丸となって取り組むことをめざし、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。これを単なる「言葉」に留めることなく、商品・サービスを含めた全ての企業活動へ反映し、一貫性のある「実践」へと繋げていくことが、さらに進化したHondaブランドを創り上げていくと考えています。このような考え方を踏まえ、再定義したグローバルブランドスローガンを本田技研工業グループのブランドマネジメントの起点と位置づけ、その根底に流れる信念をさまざまなブランドアセットへと投影することで、一貫したブランディングの支柱を形成していきます。社内外において、揺らぐことのない共通の基軸に基づくブランディングを展開することで、本田技研工業グループで働くすべての仲間の「夢」を原動力とした創造性の発揮を後押しするとともに、ステークホルダーの皆様から共感いただける魅力的なブランドの確立をめざしてまいります。
<財務戦略>
⑥ 経済的価値の向上
本田技研工業グループを取り巻く環境が大きく変化するとともに、地政学的リスクをはじめとした事業リスクが多様化する中、企業価値の向上に向けては、財務・非財務資本を活用し、キャッシュ・フローの持続的な成長と資本効率の向上を実現する必要があります。この実現に向けては、「事業変革のフェーズごとにめざす目標を明確に定め、戦略的な資源配分を実行すること」「資本コストを意識した経営の強化などガバナンスの強化とリスクマネジメントを適切に行うこと」「ステークホルダーと積極的な対話を行いながら、経営の質と透明性を高めること」が重要なミッションであると考えています。
1.事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分
~2025年:「ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入」フェーズ
事業ポートフォリオの変革に必要なEV事業への資源投入を行うとともに、ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入に注力し全社ROS(売上高営業利益率)7%以上をめざします。また、これまで取り組んできた四輪事業体質の強化により強固な財務基盤を築いた上で、EV事業への資源投入を着実に実行していきます。
~2030年:「ICE製品からEVへの事業転換」フェーズ
EV事業の成長につながる戦略的な投資を加速させるとともに、EVのラインナップを二輪と四輪を中心に拡充し、市場での競争力を強化していきます。一時的な先行投資の影響はありますが、さらにICE事業のキャッシュ創出力を高め、変革に向けた資源投入を支えると同時に、資本コストを上回るROIC(投下資本利益率)(注1)を維持し、2030年度には、全社ROICは10%以上をめざします。
(注) 1 (親会社の所有者に帰属する当期利益+支払利息(金融事業を除く事業会社))÷投下資本(注2)
2 親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債(金融事業を除く事業会社)、期首期末平均により算出しています。
なお、市場動向を見極めながら投資タイミングは柔軟に変更するものの、2030年にEV200万台生産体制の構築に向けて、2021年度からの10年間で、設備投資と研究開発費などで合わせて10兆円の資源投入を計画しています。
2030年代:「EV事業の成長と新たな価値の創造」フェーズ
2040年にEV・FCEVの販売比率100%をめざし、キャッシュ・フローの持続的な成長を実現します。新たな価値創造の実現に向けては、カーボンニュートラル技術を中心とした基礎研究領域に、年間1,000億円レベルの研究予算を今後も安定的に資源配分していきます。
なお、成果の配分については、株主の皆様に対する利益還元を、経営の最重要課題の一つとして位置づけており、長期的な視点に立ち将来成長に向けた内部留保資金や連結業績などを考慮しながら決定していきます。配当は、連結配当性向30%を目安に、変革に向けた資源投入を加速させながらも、本田技研工業グループの強みを活かしたキャッシュ創出力を原資に安定的・継続的な配当に努めます。また、資本効率の向上および機動的な資本政策の実施などを目的として、自己株式の取得も適宜実施していきます。
2.ガバナンスの強化とリスクマネジメント
大きな変革の時代において、環境変化に柔軟かつ適切に対応し企業価値の向上を実現するために、資本コストを意識した経営の浸透をはかりガバナンスを強化していきます。具体的にはROICツリーを活用し、現場のアクションと全社目標を有機的に結び付け、ROICの分子である利益を最大化するとともに、保有する資産の効率的な活用や必要投資の見極めを通じて分母の投下資本を最適化することで資本効率を向上させます。金融サービス事業については、負債による資金調達を基本とするため、ROE(自己資本利益率)を活用することで収益性と健全性のバランスをはかりながら、資本効率を最大化し、変革を支えていきます。
3.ステークホルダーとの積極的な対話
企業価値の向上には、キャッシュ・フローの持続的成長と資本効率の向上に向けたロードマップを発信するとともに、本田技研工業グループの将来性が資本市場に浸透することが重要と考えています。そのためには、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーに、経営の方向性が正しく理解され評価いただけるよう、経営陣が主体となり、イベントや個別面談等を通じて、これまで以上に対話を積極的に行っていきます。また、対話を通じて資本市場が求めていることや関心のあることを経営陣が直接把握し、これをステークホルダーからの貴重なフィードバックとして経営に活かしながら、さらなる企業価値の向上へつなげていきます。
以上のような企業活動全体を通した取り組みを行い、株主、投資家、お客様をはじめ、広く社会から「存在を期待される企業」となることをめざしていく所存でございます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
本田技研工業グループでは、リスクマネジメント委員会において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。以下のリスクも同委員会で審議のうえ特定されたものです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において本田技研工業グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。
(1) 地政学的リスク
本田技研工業グループは、世界各国において事業を展開しており、それらの国や近隣地域での関税、輸出入規制、租税を含む現地法令・制度・協定・商習慣の変化、戦争・テロ・政情不安・治安の悪化、政治体制の変化、ストライキなど様々なリスクにさらされています。これら予期せぬ事象が発生し、政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりに伴いサプライチェーンが寸断されるなど、事業活動の遅延・停止が発生した場合、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
その中でも、主に①経済安全保障、②国家間・地域紛争、③人権に関する法規の3つの地政学的リスクを認識しています。これらの地政学的リスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、人的資本経営の進化、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。これらの地政学的リスクが将来及ぼしうる各地域の事業規模については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」を参照ください。
① 経済安全保障
<リスク>
各国において重要資源・部品、先端技術などに対する輸出入規制、ブロック化を促進する政策の強化の動きが活発化しています。2024年は米国をはじめとする各国で選挙が相次ぐため、これらの結果で政策などの変更が発生する可能性があります。各国において輸出入などに関する政策が変更された場合、生産活動の停滞や遅延、開発・購買・営業などの事業活動にかかる対応費用などが生じる可能性があり、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、国内および海外の各部門が連携し各国の政策動向などの情報収集・モニタリングするインテリジェンス機能を強化するとともに、本田技研工業グループの事業に影響を与える可能性がある案件が確認された場合は、リスクマネジメント委員会が先行的に検討を行うことで、早期にリスクヘッジできる体制を構築しています。
② 国家間・地域紛争
<リスク>
ウクライナおよび中東などにおいて、国際情勢の見通しが不透明な状況が続いています。新たな紛争が発生した場合、発生した国や地域のみならず、それ以外の国や地域でも、人的および物的被害、サプライチェーンの寸断などが生じる可能性があり、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、国家間・地域紛争の動向などの情報収集・モニタリングするインテリジェンス機能を強化するとともに、本田技研工業グループの事業に影響を与える可能性がある事象が確認された場合は、「人命・安全の確保」および「社会からの信頼の維持」を前提としたうえで、本田技研工業グループの会社資産・体制の保全、事業継続をはかるための対応を迅速に行っています。
③ 人権に関する法規
<リスク>
各国において、企業に人権の取り組みを求める法規の制定が進んでおり、サプライチェーン全体での人権リスク対応の必要性が急速に高まっています。これらの法規に対して適時適切な対応が出来なかった場合、ブランドイメージや社会的信用の低下に加え、本田技研工業グループの生産活動の停滞や遅延、開発・購買・営業などの事業活動にかかる対応費用などが生じる可能性があり、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、「Hondaフィロソフィー」に掲げる人間尊重の基本理念のもと、事業活動において影響を受けるステークホルダーの人権を尊重する責任を果たすため、「Honda人権方針」を定めています。本方針に基づき、人権デューデリジェンス、適切な教育・啓発活動の実施など、各国法規を踏まえ自社およびサプライチェーンにおける取り組みを行っています。
(2) 購買・調達リスク
<リスク>
本田技研工業グループは、良い物を、適正な価格で、タイムリーにかつ永続的に調達することをめざして、多数の外部の取引先から原材料および部品を購入していますが、製品の製造において使用するいくつかの原材料および部品については、特定の取引先に依存しています。効率的かつ適正なコストで継続的に供給を受けられるかどうかは、本田技研工業グループがコントロールできないものも含めて、多くの要因に影響を受けます。それらの要因のなかには、取引先が継続的に原材料および部品を確保できるかどうか、また、供給を受けるにあたって、本田技研工業グループがその他の需要者に対してどれだけ競争力があるか等が含まれます。
取引先から原材料および部品が継続的に供給を受けられなかった場合、原材料および部品の価格が上昇した場合、もしくは主要な取引先を失った場合、生産活動の停滞や遅延、本田技研工業グループの競争力の損失に繋がる等、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。また、取引先から供給された部品に起因する本田技研工業グループ製品の品質不具合が発生した場合、お客様の安心、安全を脅かすとともに本田技研工業グループのブランドイメージが毀損され、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
これらの購買・調達リスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、事業、業績への影響を最小化するため、サプライチェーンの見直しおよび強化を継続的に行っています。また、部品の供給状況についてモニタリングを行い、本田技研工業グループの生産などの事業活動に悪影響を与える可能性がある事象が発生した場合には、取引先と連携し速やかに対応を実施しています。
新型コロナウイルス感染症が拡大した後の経済回復などに起因する半導体需要の高まりを受け、半導体の調達不足が顕在化しました。本田技研工業グループにおいて、国内外の一部の生産拠点における四輪車および二輪車の生産停止、減産といった影響が発生したものの、有価証券報告書提出日現在、半導体の調達不足は解消しています。
なお、一部の原材料および部品において価格上昇が発生している、もしくは今後見込まれています。本田技研工業グループにおいては、取引先と連携し事業継続の観点から事業、業績への影響を最小化するための対応を行っています。
(3) 情報セキュリティリスク
<リスク>
本田技研工業グループは、委託先によって管理されているものを含め、事業活動および本田技研工業製品において様々な情報システムやネットワークを利用しています。特にAI技術の活用を含む自動運転や安全運転支援システム、デジタルサービスに代表されるソフトウェア領域のニーズが高まっています。サイバー攻撃は攻撃手法の高度化、複雑化が進んでおり、その攻撃対象は世界各国に渡っています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している 本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。
また、近年世界各国で個人情報保護規則が急速に整備されています。新たな価値創造への取り組みにおいては、従来の事業と比べ取り扱う個人情報の量と質が異なる可能性があるため、個人情報保護に向けた対策の重要性は高まっています。本田技研工業グループ、取引先および委託先におけるサイバーセキュリティリスクのほか、機器の不具合、管理上の不備や人為的な過失、さらには自然災害やインフラ障害等の不測の事態により、本田技研工業グループの重要な業務やサービスの停止、機密情報・個人情報等の漏洩、不適切な事務処理、あるいは重要データの破壊、改ざん等が発生する可能性があります。
このような事象が起きた場合、ブランドイメージや社会的信用の低下、影響を受けた顧客やその他の関係者への損害責任、制裁金の支払い、生産活動の停滞や遅延、本田技研工業グループの競争力の損失に繋がる等、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、事業、業績への悪影響を最小化するため、情報システムのセキュリティに関する管理体制および基準を定めています。本基準に基づき、ハード面およびソフト面でのセキュリティ対策を実施し、情報システムのセキュリティ強化をはかっています。
なお、サイバーセキュリティリスクに対しては、上記に加え以下の対応を行っています。
品質改革本部ならびにコーポレート管理本部内にそれぞれ設置している主管部門を中心に、業務・生産システム、ソフトウェア、品質などの領域を横断する対応体制を構築しています。法規を踏まえた規程・手順書などの整備、対応フロー策定、サイバーセキュリティに関する演習を通じた改善点の検証・対策、人材育成などを行っています。
セキュリティ情報およびイベント情報の管理、悪意のあるアクティビティの監視のためのソリューションを活用し、サイバー攻撃の脅威および脆弱性の監視・分析を行っています。なお、サードパーティのパッケージ製品やクラウドサービスの導入に際しては、定められたセキュリティ基準を基にリスクを評価し、導入判断および導入後の年次確認を行っています。
生産設備やサプライヤーのサイバー攻撃に対しては、国内外の各拠点の生産設備やサプライヤーのセキュリティ対策状況についての検証を行うとともに、検証結果を踏まえ、セキュリティ情報およびイベント情報の管理、悪意のあるアクティビティの監視のためのソリューション導入支援等のセキュリティ強化に向けた対策を行っています。このようなセキュリティ強化のための活動については、セキュリティに関するコンサルティング会社や外部スペシャリストと業務委託契約を締結し、支援を受けています。
また、各国における個人情報保護規則やサイバーセキュリティ関連法規に対しては、現行の規制のほか、今後施行が見込まれている規則の動向などの情報収集・モニタリングを実施したうえで対応を行っています。
なお、本田技研工業グループに重大な影響を与えるサイバー攻撃に関するセキュリティインシデントが発生した場合には、リスクマネジメントオフィサーの監視、監督のもとグローバル危機対策本部を設置し、サイバーセキュリティリスクに対する主管部門が中心となり迅速に実態把握を行ったうえで、影響を最小化するための対応を全社横断的な観点で実施します。
(4) 他社との業務提携・合弁リスク
<リスク>
本田技研工業グループは、相乗効果や効率化などを期待、もしくは事業展開している国の要件に従う場合に、他社と業務提携・合弁による事業運営を行っています。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みを進めるにあたっては、業務提携・合弁の活用の重要性は高まっており、今後も業務提携・合弁を進めていきます。
業務提携・合弁において、当事者間における利害の不一致、利益や技術の流出、意思決定の遅れ、業務提携・合弁先の業績不振が生じた場合、あるいは業務提携・合弁の内容に関する変更や解消が生じた場合、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、中長期の事業戦略に基づき業務提携・合弁の戦略を議論・策定したうえで、デューデリジェンスを通じた情報収集・リスク検証を行っています。契約締結後においても業務提携・合弁に関する運営状況のモニタリングを行い、本田技研工業グループの事業、業績への影響が発生する可能性がある場合には、業務提携・合弁先と連携し影響を最小化するための対応を行っています。
(5) 環境に関わるリスク
<リスク>
本田技研工業グループは、世界各国において事業を展開しており、気候変動、資源枯渇、大気汚染、水質汚染、生物多様性などをはじめとする環境に関する様々なリスクの可能性を認識しています。また、これらに関する様々な政策および規制の適用を受けています。
その中でも気候変動および燃費・排出ガスに関する政策および規制について、世界各国で見直しが実施もしくは今後予定されています。見直しの動向によっては、二輪事業、四輪事業、パワープロダクツ事業及びその他の事業において、生産・開発・購買・営業などにかかる対応費用などが生じる可能性があり、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
これらの環境に関わるリスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。
なお、気候変動に関するリスクと機会については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)」を参照ください。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、製品だけでなく企業活動を含めたライフサイクルでの「環境負荷ゼロ」の実現に向け、カーボンニュートラル、クリーンエネルギー、リソースサーキュレーション、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」に関する取り組みを行っています。
また、上記の政策および規制に対しては、国内および海外の各部門が連携し情報収集・モニタリングを実施するとともに、それらの状況に基づく最適な生産・開発体制の構築などの対応を行っています。
(6) 知的財産リスク
<リスク>
本田技研工業グループは、長年にわたり、自社が製造する製品に関連する多数の特許および商標を保有し、もしくはその権利を取得しています。本田技研工業グループにおいては、「新たな成長・価値創造を可能とする企業への変革」を支えるため、パワーユニットのカーボンニュートラル化、エネルギーマネジメントシステム、リソースサーキュレーション、自動運転・安全運転支援システム、IoT・コネクテッドを注力領域として選定しています。これらの特許および商標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。
本田技研工業グループの知的財産が広範囲にわたって保護できないこと、あるいは、広範囲にわたり本田技研工業グループの知的財産権が違法に侵害されることによる競争力の低下、さらには特許権侵害訴訟による製造・販売の差し止めや高額の損害賠償金、ライセンス料の請求によって、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、外部の専門家、取引先と連携し、特許保有者からの特許権侵害訴訟を想定した対策を実施しています。また、関連法規の動向を注視・分析し、将来の法的手続で不利な判断がなされた場合など本田技研工業グループの事業、業績への悪影響が発生する可能性がある場合には、影響を最小化するための対応を行っています。
(7) 自然災害等リスク
<リスク>
地震、風水害、感染症などの発生時に本田技研工業グループの拠点や従業員が被害を受け、生産・開発・購買・営業などの事業活動の停止・遅延が発生した場合、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。また、これらの事象によって取引先が被害を受けた場合、あるいはインフラの停止が発生した場合にも、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
加えて、世界各国において、気候変動の影響などにより気象災害が激甚化・頻発化しており、この傾向は今後も継続すると予想されます。その結果、これらの災害が本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、事業、業績への影響を最小化するため、これらの事象のリスク評価や事業継続計画(BCP)の策定および定期的な見直しを行っています。また、各国で顕在化した事象に基づき、対応体制および規程・手順書の見直し、訓練実施による改善点の検証・対策などを行っています。
なお、本田技研工業グループに重大な影響を与える事象が発生した場合には、グローバル危機対策本部を設置し、各地域の情報収集および影響の最小化に向けた対応を全社横断的な観点で実施します。
2024年1月に発生した能登半島地震においては、取引先の被災により国内の一部生産拠点において四輪車の減産といった影響が発生しました。本田技研工業グループにおいては、グローバル危機対策本部を設置し、取引先と連携のうえ、在庫活用や代替開発も含め、事業、業績への影響を最小化するための対応を行いました。
(8) 金融・経済リスク
<リスク>
① 経済動向、景気変動
本田技研工業グループは、世界各国で事業を展開しており、様々な地域、国で生産活動を行い、製品を販売しています。これらの事業活動は経済低迷、景気変動などの影響を受けることで、市場の縮小による販売台数の減少、部品調達価格および製品の販売価格の上昇、信用リスクの上昇、資金調達金利の上昇などに繋がる可能性があります。その結果として本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
② 為替変動
本田技研工業グループは、日本をはじめとする世界各国の生産拠点で生産活動を行っており、その製品および部品の多くを複数の国に輸出しています。各国における生産および販売では、外貨建てで購入する原材料および部品や、販売する製品および部品があります。したがって、為替変動は、購入価格や販売価格の設定に影響し、その結果、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
<対応策>
本田技研工業グループにおいては、金融・経済などの動向をモニタリングし本田技研工業グループに対する事業影響を把握するとともに、事業計画に反映し、対応を実施しています。
(9) 市場環境変化リスク
本田技研工業グループは、世界各国で事業を展開しており、市場の長期にわたる経済低迷、消費者の価値観、ニーズの変化や、燃料価格の上昇および金融危機、原材料の高騰・供給量低下による製品価格上昇などによる購買意欲の低下、他社との競争激化は、本田技研工業グループの製品の需要低下につながり、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
(10) 金融事業特有のリスク
本田技研工業グループの金融サービス事業は、お客様に様々な資金調達プログラムを提供しており、それらは、製品の販売をサポートしています。しかしながら、お客様は本田技研工業グループの金融サービス事業からではなく、競合する他の銀行およびリース会社等を通して、製品の購入またはリースの資金を調達することができます。本田技研工業グループが提供する金融サービスは、残存価額および資本コストに関するリスク、信用リスク、資金調達リスクなどを伴います。お客様獲得に関する競合および上記金融事業特有のリスクは、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
(11) 法務リスク
本田技研工業グループは、訴訟、関連法規に基づく様々な調査、法的手続を受ける可能性があります。係争中、または将来の法的手続で不利な判断がなされた場合、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
(12) 退職後給付に関わるリスク
本田技研工業グループは、各種退職給付および年金制度を有しています。これらの制度における給付額は、基本的に従業員の給与水準、勤続年数およびその他の要素に基づいて決定されます。また、掛金は法令が認める範囲で定期的に見直されています。確定給付制度債務および確定給付費用は、割引率や昇給率などの様々な仮定に基づいて算出されています。仮定の変更は将来の確定給付費用、確定給付制度債務および制度への必要拠出額に影響を与えることにより、本田技研工業グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
(13) ブランドイメージに関連するリスク
本田技研工業グループのブランドに対するお客様や本田技研工業グループを取り巻く社会からの信頼・支持が、企業の永続性において重要な要素の一つとなっています。このブランドイメージを支えるため、製品の品質や法規制への対応、リスク管理の実施、内部統制の充実などあらゆる企業活動において常に社会からの信頼に応えられるように努めています。しかしながら予測できない事象により、本田技研工業グループのブランドイメージを毀損した場合や迅速で適切な情報発信などの対応が実施出来なかった場合、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。
これらのブランドイメージに関連するリスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している本田技研工業グループの5つの重要テーマのうち、ブランド価値の向上への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。
なお、本田技研工業が過去に販売した四輪車について、型式指定申請時の認証試験に関する不適切な事案があったことを確認し、2024年5月31日に国土交通省に報告しました。今後もコンプライアンスおよびガバナンスの強化をはかり企業活動を行っていきますが、この事案により、または類似した事案が発生した場合には、本田技研工業グループのブランドイメージを毀損し、本田技研工業グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。なお、これらの事案による法務リスクについては、「(11) 法務リスク」を参照ください。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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