東海旅客鉄道(9022)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


東海旅客鉄道(9022)の株価チャート 東海旅客鉄道(9022)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 東海旅客鉄道グループの営んでいる主要な事業内容は以下のとおりです。

(1) 運輸業

 東海道新幹線及び東海地方の在来線における鉄道事業を営むほか、バス事業等を営んでいます。

[主な関係会社]東海旅客鉄道、ジェイアール東海バス㈱

(2) 流通業

 JRセントラルタワーズ内で百貨店業を営むほか、主に、駅構内及び列車内等における物品の販売等を行っています。

[主な関係会社]㈱ジェイアール東海髙島屋、㈱JR東海リテイリング・プラス、ジェイアール東海商事㈱

 

(3) 不動産業

 駅ビル等不動産賃貸事業のほか、不動産分譲事業を営んでいます。

[主な関係会社]東海旅客鉄道、ジェイアールセントラルビル㈱、ジェイアール東海不動産㈱、

新横浜ステーション開発㈱、東京ステーション開発㈱、名古屋ステーション開発㈱、

ジェイアール東海関西開発㈱

(4) その他

 東海旅客鉄道の主要駅等でホテル業を営むほか、旅行業、広告業等を営んでいます。

 また、鉄道車両等の製造、各種設備の保守・検査・修繕、その他事業を営んでいます。

[主な関係会社]

ホテル・サービス業 ㈱ジェイアール東海ホテルズ、㈱ジェイアール東海ツアーズ、

               ㈱JR東海エージェンシー

その他       日本車輌製造㈱、ジェイアール東海建設㈱、日本機械保線㈱、

               中央リネンサプライ㈱、東海交通機械㈱、新生テクノス㈱

以上に述べた事項及び東海旅客鉄道の主な関係会社の概要図は次のとおりです。

(注) ※印は持分法適用の関連会社を示しています。

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 東海旅客鉄道グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において東海旅客鉄道グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 東海旅客鉄道は、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念の下、鉄道事業において、安全の確保を最優先に、お客様に選択されるサービスの提供、業務効率化等について不断の取組みを行うことにより、日本の大動脈輸送を担う東海道新幹線と東海地域の在来線網を一体的に維持・発展させることに加え、大動脈輸送を二重系化する中央新幹線の建設により、「三世代の鉄道」を運営するということを使命としており、これを長期にわたり安定的に果たし続けていくことを基本方針としています。

 東海旅客鉄道グループとしても、名古屋駅におけるJRセントラルタワーズ・JRゲートタワーの各事業展開に代表されるような鉄道事業と相乗効果を期待できる事業分野に加えて、沿線にお住まいのお客様の暮らしを豊かにするための様々なサービスを提供することで、グループ全体の収益力強化を図ります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 東海旅客鉄道グループの中核をなす鉄道事業については、長期的展望を持って事業運営を行うことが極めて重要であり、生活様式や働き方の変化によりニーズが多様化していることや、労働力人口の減少に伴い業務のあり方の変革が求められていることなど、東海旅客鉄道を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、ICT等の最新の技術を活用して効率的な業務執行体制を構築する「業務改革」と新しい発想による「収益の拡大」の2つを柱とした経営体力の再強化に取り組みながら、主要プロジェクトを計画的に推進しています。

 東海道新幹線については、これまで安全で正確な輸送を提供するとともに、不断に輸送サービスの充実に向けた取組みを進めてきました。今後についても、安全の確保を最優先に、全線を対象とした脱線・逸脱防止対策をはじめとする地震対策を進めるとともに、土木構造物の健全性の維持・向上を図るため、大規模改修工事を着実に進めます。また、「のぞみ12本ダイヤ」を活用した弾力的な列車設定を行うとともに、N700Sの投入やN700Aタイプに対しN700Sの一部機能を追加する改造工事を進めるなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。

 在来線についても、安全の確保を最優先に、地震対策、落石対策、踏切保安設備改良等を進めるとともに、特急列車の弾力的な増結や増発、通勤型電車315系の投入、新型特急車両385系量産先行車の新製を行うなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。

 超電導磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」という。)による中央新幹線については、東海旅客鉄道の使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため計画しているものです。現在この役割を担う東海道新幹線は開業から半世紀以上が経過しており、早期に大動脈輸送を二重系化し、将来の経年劣化や大規模災害に対して抜本的に備える必要があります。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、東海旅客鉄道が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、コストを十分に精査しつつ、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、中央新幹線の建設の推進を図るため、財政投融資を活用した長期借入を行ったことを踏まえ、まずは品川・名古屋間の工事を進め、その開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、早期の全線開業を目指して、取組みを進めます。

 また、このプロジェクトは自己負担により進めるものであり、建設・運営・保守等全ての場面におけるコストについて、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的に圧縮して進めるとともに、経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応していく考えです。

 鉄道以外の事業についても、「会社の経営の基本方針」に則り、諸施策を着実に推進することにより、グループ全体の収益力の強化に取り組みます。

 

(3) 会社の対処すべき課題

 日本経済の先行きは、緩やかな回復が続くことが見込まれています。こうした状況の下、東海旅客鉄道グループは、「会社の経営の基本方針」に基づき諸施策を推進します。重点的に取り組む施策は、以下のとおりです。

 鉄道事業については、地震対策をはじめとした構造物のさらなる強化として、東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策について脱線防止ガードの全線への敷設を進めるとともに、プラットホーム上家の耐震補強、駅の吊り天井の脱落防止対策、名古屋車両区検修庫の建替、在来線の高架橋柱の耐震化等を進めます。また、東海道新幹線の大規模改修工事について、技術開発成果を導入し、施工方法を改善するなどコストダウンを重ねながら着実に進めます。さらに、半田駅及び沼津駅付近の連続立体交差化に向けた工事を進めます。自然災害等への対策としては、ハザードマップ等を踏まえ、鉄道設備の浸水対策を進めるとともに、台風や豪雨等により列車運行に大きな影響が予想される場合に、安全を最優先に適切な運行計画の決定、適時かつ的確な案内情報の提供を行います。また、自然災害や不測の事態等の異常時に想定される様々な状況に適切に対応するため、実践的な訓練を繰り返し実施するとともに、車内防犯カメラについて、全ての車両に整備している東海道新幹線に続いて、在来線についても、近年中に更新する予定の一部車両を除き、名古屋駅を発着する全ての東海旅客鉄道車両への整備を進めるなど、ハード・ソフトの両面から車内のセキュリティ対策に取り組みます。

 東海道新幹線については、「のぞみ12本ダイヤ」を活用して、需要にあわせた弾力的な列車設定を行います。また、N700Sの投入を進めるとともに、既存のN700Aタイプに対し、N700Sの一部機能を追加する改造工事を進めます。

 在来線については、「しなの」、「ひだ」等の特急列車について、需要にあわせた弾力的な増結や増発を行います。また、通勤型電車315系の投入を進めるとともに、新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進めます。

 旅客関連設備については、東海道新幹線について、全駅への可動柵整備に向けた調査設計を進めるとともに、自動運転システム(GOA2)の導入に向けた開発を進めます。また、車椅子スペースを6席設置したN700Sの投入を進めるとともに、新大阪駅で車両とプラットホームの段差・隙間対策を進めます。在来線については、名古屋駅で東海道本線下りホーム及び中央本線ホームへの可動柵設置工事を進めるとともに、刈谷駅でホームの拡幅、可動柵設置等に向けた工事を進めます。また、車椅子スペースを拡充した315系の投入を進めるとともに、駅におけるバリアフリー設備の整備について、国・関係自治体と連携しつつ取り組みます。さらに、3両以上の編成におけるワンマン運転導入に向けて、車側カメラを設置した車両を用いて、お客様の接近等を検知する画像認識技術活用の検討を進めます。加えて、TOICAについて、令和7年のエリア拡大に向けた準備を進めます。

 営業施策については、東海道新幹線のネット予約を多くのお客様にご利用いただくための取組みとして、「EXサービス」について、昨年開始した「EX旅パック」、「EX旅先予約」、1年前予約等のサービスも通じて、ご利用の拡大を図ります。需要喚起策としては、「推し旅」キャンペーンや「貸切車両パッケージ」をはじめ、新たな営業施策を積極的に展開するとともに、京都、奈良、東京、飛騨等、魅力ある観光素材の開発に継続的に取り組み、鉄道のご利用の拡大を図ります。また、東海道新幹線開業60周年にあたり、イベントの実施等によりこれまでのご愛顧への感謝を示すとともに、中央新幹線を含む将来の高速鉄道の進化に対する期待感の醸成に取り組み、他社と連携した企画の実施や記念商品の発売等により、グループ会社とも連携しながら収益の拡大を目指します。さらに、訪日外国人に対して、国や地域ごとの旅客動向や商品のご利用の分析を進めるとともに、より効果的な宣伝の展開等、営業施策を強化することにより、鉄道のご利用の拡大を図ります。加えて、東海道新幹線車内における個室タイプの「ビジネスブース」の本格的な導入を進めるなど、ビジネス環境整備をさらに推進するとともに、ビジネスユーザーの出張利用を促す取組みを続けます。このほか、「さわやかウォーキング」等を通じて地域との連携を強化し、「しなの」や「ひだ」等の特急列車をはじめとした鉄道のご利用の拡大を図ります。

 超電導リニアによる中央新幹線計画については、コストを十分に精査し、柔軟性を発揮しながら、健全経営と安定配当を堅持し、プロジェクトの完遂に向けて、着実に推進します。また、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視し、早期開業に取り組みます。具体的には、用地取得等、並びに山岳トンネル、都市部トンネル、駅等の土木を中心とした各種工事を精力的に進めます。このうち、都市部トンネルについては、シールドマシンによる調査掘進を終えて準備が整った工区から、本格的な掘進を進めます。また、関東車両基地(仮称)の造成工事や中部総合車両基地(仮称)の建築工事に着手します。機械及び電気設備等については、契約及び発注時期も考慮の上、低コスト化及び品質向上を図ります。南アルプストンネル静岡工区については、国土交通省の有識者会議の水資源及び環境保全に関する報告を踏まえ、引き続き、トンネル掘削工事の早期着手に向けて、地域の理解と協力を得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、真摯に取り組みます。

 一方、超電導リニア技術については、技術開発によるコストダウンとブラッシュアップに取り組みます。このうち、高温超電導磁石について、営業車両への投入を前提に一層のコストダウンを進めるとともに、安定運用に向けたさらなる検証を進めます。また、ICT等の最新の技術を活用した効率的な運営体制の実現に向けた開発において、AI等による画像やビッグデータの分析システムの改良・実証等を進めます。さらに、営業車両の仕様策定を進め、設計を深度化します。加えて、走行試験を着実に行う中で、高付加価値なサービスの追求を行うとともに、様々な形で超電導リニアの体験乗車を実施し、中央新幹線の開業に向けた期待感の醸成に取り組みます。

 高速鉄道システムの海外展開については、米国における高速鉄道プロジェクトについて、着実に取り組みます。また、台湾における高速鉄道について、継続的な技術コンサルティングとともに、N700Sをベースとした新型車両導入に伴う技術支援を進めます。さらに、日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組みを進めます。

 技術開発については、地震や近年激甚化傾向にある豪雨等の各種自然災害に対して、安全性を最優先に安定性も高めるための技術開発を推進するとともに、車内通信環境の整備等、サービスの充実に資する技術開発を推進します。また、状態監視技術等を活用した検査や保守の高度化・省力化、設備の維持更新におけるコストダウン等による「業務改革」の推進に向けて、社内横断的に課題解決に取り組み、特に、AIやデータ・画像分析技術等について、東海旅客鉄道の業務に最適な形で導入するための準備を進めます。さらに、グループ会社を含めて、労働力人口の減少等に対応するため、ロボット制御等の先端技術の活用を進めます。

 鉄道以外の事業については、東海旅客鉄道グループの共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」について、駅売店等を対象施設に追加するなど利便性の向上を図るとともに、駅売店等について、土産品、弁当等をワンストップで購入できるように集約・大型化するなど、便利で魅力ある店舗づくりを進めます。また、JRセントラルタワーズとJRゲートタワー等の駅ビル事業について、店舗の品揃え強化やサービス向上を図るとともに、名古屋駅・岐阜駅等の駅商業施設の拡張・リニューアルを実施します。さらに、中央新幹線神奈川県駅(仮称)付近で、イノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO」を運営し、神奈川県、相模原市、有識者、企業等と連携して、まちづくりに参画しながら将来のさらなる事業開発を検討します。加えて、令和8年度開業予定のホテル「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」等の沿線不動産の開発を進めるとともに、新たな取組みとして、不動産ファンド事業のノウハウ獲得を目的に、不動産ファンドへの出資を行います。このほか、東海道新幹線「こだま」号の業務用室を活用した法人向け荷物輸送サービスを開始し、JR各社とも連携しながら、新たな需要創出に取り組みます。

 持続可能な社会の実現に向けた取組みについては、政府による「2050年カーボンニュートラル」政策を前提に2050年のCO排出量実質ゼロを目指すとともに、2030年度のCO排出量についても、同政策を前提として、2013年度比で46%削減することを目指すなど、地球環境保全に資する諸施策を推進します。具体的には、東海旅客鉄道のCO排出量の約5%を占める「燃料の使用に伴う直接排出」について、模擬走行試験を通じて、水素動力車両(燃料電池車、水素エンジン車)に関する開発を進めるとともに、蓄電池車及びカーボンニュートラル燃料について、調査研究を継続します。残りの約95%を占める「電力使用に伴う間接排出」については、N700S及び315系といった省エネルギー車両の投入を進めるなど、さらなる省エネルギー化に取り組むとともに、東海道新幹線の「のり面」を活用した太陽光発電システムの施工を開始するなど、再生可能エネルギーの活用にも取り組みます。また、鉄道各社と連携しながらPRを強化するなど、鉄道の環境優位性への社会的な理解を広め、鉄道のご利用を促進することで、脱炭素社会への移行に貢献します。さらに、東海道・山陽新幹線におけるCO排出量実質ゼロ化のサービスについて、「エクスプレス予約」法人会員向けに開始します。加えて、TCFD提言を踏まえた気候変動に関するリスク分析等を深度化し、長期にわたる安定的な事業運営に活かします。このほか、「東海道新幹線再生アルミ」の活用等、廃棄物の削減や資源の再利用等を通じて、地球環境への負荷を低減します。

 以上のように、引き続き、安全の確保を最優先に輸送機関としての使命を果たしつつ、「業務改革」と「収益の拡大」の2つを柱とした経営体力の再強化を図っていきます。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 東海旅客鉄道グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。ただし、以下は東海旅客鉄道グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において東海旅客鉄道グループが判断したものです。

(1) 事業に係る法律関連事項

① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)

 鉄道事業者は、本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、鉄道事業を休廃止しようとするときは、事前に国土交通大臣に届け出なければならないこととされています(第28条、第28条の2)。また、旅客の運賃及び料金の設定・変更については、原則としてその上限額について国土交通大臣の認可を受けなければならないこととされています(第16条)。

 これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や事業活動の制限により、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成13年法律第61号)

 東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)をJR会社法の適用対象から除外するための措置等を講じたJR会社法改正法が平成13年12月1日から施行され、本州旅客会社はJR会社法の適用対象から除外されました。

 なお本法附則において、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及び本州旅客会社の鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営する者のうち国土交通大臣が指定する者(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を公表するものとされ(附則第2条)、当該指針は平成13年12月1日より適用となりました(平成13年国土交通省告示第1622号)。その主な内容は以下のとおりです。

○会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項

○国鉄改革実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

○新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは新会社に対して指導及び助言をすることができ(附則第3条)、さらに、新会社が正当な理由なく指針に沿った事業経営を行っていないと認めるときなどには必要な措置をとるべき旨を勧告及び命令することができるものとされています(附則第4条)。

 なお、東海旅客鉄道はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の東海旅客鉄道の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。

(2) 運賃及び料金の設定又は変更

① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き

 鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されています(鉄道事業法第16条第1項)。

 また、上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっています(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。

 これらの手続きが変更される場合、また物価上昇時等において何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、東海旅客鉄道グループの収益に影響を与える可能性があります。

 鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっています。

 (注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きです。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められています。

2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められています。

 なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、旅客運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしています。

② 運賃改定に対する東海旅客鉄道の考え方

a 東海旅客鉄道では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月、平成9年4月、平成26年4月及び令和元年10月)を除くと、これまで運賃改定を実施していません。

 大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。東海旅客鉄道の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保しうるような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えています。

b 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する利益配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えています。

③ 国土交通省の考え方

 東海旅客鉄道の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されています。

a 東海旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。なお、原価計算期間は3年間とする。

b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。

c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。

総括原価=営業費等(注1)+事業報酬

・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率

・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)等

・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)

×他人資本報酬率(注5)

 (注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。

2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部

3 自己資本比率は30%、他人資本比率は70%

4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り及び全産業の自己資本利益率の過去5年平均(年数については、直近に急激な景気動向の変化があった場合等は、合理的と認められる範囲で適切に設定する。(注5)において同じ)を基に、以下の算定式により算定する。ただし、全産業の自己資本利益率が公社債応募者利回りを下回る場合には、公社債応募者利回りによる。なお、公社債利回り実績値は国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均とし、βはTOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散をTOPIXの変化率の分散で除したものとする。

  自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業を除く)平均自己資本利益率

          -公社債利回り実績値)

5 他人資本報酬率は、法定債務を除き、債務実績利子率のJR旅客会社のうち北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社を除くグループ平均の過去5年平均とする。

d なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃又は料金が、次のア又はイに該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃又は料金を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。

ア 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき

イ 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき

 

(3) 競合等

 東海旅客鉄道グループは、鉄道事業において、航空会社及び他の鉄道会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、鉄道以外の事業においても、既存及び新規の事業者と競合しています。加えて、これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである首都圏、中京圏、近畿圏における景気動向等の影響を受けていることから、既存及び新規の事業者との競合状況や今後の経済情勢及び少子高齢化等に伴う将来的な人口動態が、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 特に、東海旅客鉄道グループの主力事業である東海道新幹線においては、航空会社との間で、航空運賃の著しい引下げ、空港の発着枠の拡大、さらには空港と都市中心部とのアクセス改善など航空機による移動の利便性向上等に起因した競争に直面しています。

 また、近年はリモートワークやWeb会議が浸透しており、今後も鉄道のご利用に影響を与える可能性があります。

 以上のような競合等に対しては、安全・安定輸送を確保しつつ、新幹線においては、「のぞみ12本ダイヤ」による需要にあわせた弾力的な列車設定、N700Sの投入及び「EXサービス」のさらなるご利用拡大等に取り組むとともに、在来線においては、通勤型電車315系の投入や新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進めるなど、さらなる輸送サービスの充実に向けて取り組みます。

(4) 長期債務

 昭和62年の会社設立に際し、東海旅客鉄道は、日本国有鉄道改革法(昭和61年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち3,191億円を承継しました。さらに、東海旅客鉄道は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東海道新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構(以下「保有機構」という。)より5兆956億円で譲り受け、このうち4兆4,944億円については25.5年、6,011億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことに関して、保有機構との間に契約を締結し、その譲渡価額を鉄道施設購入長期未払金として計上しました。なお、4兆4,944億円については、平成29年1月に支払を完了しています。

(注) 保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は鉄道整備基金に承継されました。さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は運輸施設整備事業団に承継され、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、その一切の権利及び義務は法律により国が承継する資産を除き、鉄道・運輸機構に承継されました。

 また、平成28年11月に、中央新幹線の建設の推進のため、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(以下「鉄道・運輸機構法施行令」という。)に基づき、財政投融資を活用した長期借入の申請を鉄道・運輸機構に対して行い、平成29年7月までに、長期、固定かつ低利の中央新幹線建設長期借入金について、総額3兆円の借入を行い、金利上昇リスク、資金調達リスク、償還リスクを低減しました。

 これらを含めた連結長期債務残高は、当期末現在で4兆8,461億円、そのうち中央新幹線建設長期借入金を除いた長期債務残高は1兆8,461億円となっており、当期の支払利息は790億円となっています。

 今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 東海旅客鉄道は、引き続き調達手段の多様化や低利かつ安定的な資金の確保に努めてまいります。

(5) 自然災害等

 東海旅客鉄道グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、地震・台風等の自然災害、テロの発生、感染症の流行等により大きな影響が生じ、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、鉄道インフラについて東海旅客鉄道は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、会社発足以来、自然災害等への対策に積極的に取り組んでいます。具体的には、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災などにおける他社線の被災状況等を踏まえて、東海道新幹線の橋脚については必要な箇所の耐震補強を完了し、高架橋柱及び盛土の耐震補強は協議案件等と関係する一部を除き完了しました。そのほか、脱線防止ガードの敷設をはじめとする脱線・逸脱防止対策等も積極的に進めています。また、在来線においても、輸送の安全確保のため、構造物等の耐震補強や盛土補強、落石対策等を継続的に実施しています。さらに、感染症の流行時には、お客様及び社員への感染拡大防止を徹底しながら十分な輸送力の確保に努めるなど、鉄道事業への影響を最小限のものとするための取組みを行うこととしています。

 

(6) 安全対策

 東海旅客鉄道グループの事業、特に東海道新幹線をはじめとする鉄道事業については、仮に列車の運行により事故が発生した場合、大きな損害が生じ、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
 東海旅客鉄道は、安全の確保は最優先の課題であるとの認識の下、ソフト・ハード両面にわたり、会社発足当初から安全に関する取組みを積極的に進めています。
 ソフト面の取組みとしては、規程・マニュアル類を常に整備するとともに教育訓練を徹底し、社員自らが能力を高める職場風土の構築に努めることにより、社員一人ひとりが知識・技能を身につけ、規律と使命感をしっかり持って業務を遂行するように取り組んでいます。また、東海旅客鉄道の研修センターにおいて、グループ一体として、安全に主眼を置いた社員教育の一層の充実に取り組んでいます。
 一方、ハード面においては、保安・防災対策を一層進めているほか、車両・軌道・電気設備の維持・更新等を積極的に推進しています。新幹線では、新ATC(自動列車制御装置)システムや新型車両を導入するなど、安全の確保のため、必要な設備投資を積極的に行っています。また、在来線においても、全線でATS-PT(パターン照査式自動列車停止装置)の導入を行うなど、より一層の安全性向上に努めてきました。
 これらの結果、当期の鉄道運転事故件数(32件)は会社発足初年度である昭和62年度(60件)と比較して大幅に減少しました。

(7) コンピュータシステム・顧客個人情報保護

 東海旅客鉄道グループは、現在、鉄道事業や鉄道以外の事業における様々な業務分野で、多くのコンピュータシステムを用いています。また、東海旅客鉄道グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム㈱等においても、コンピュータシステムが重要な役割を果たしています。したがって、サイバー攻撃や自然災害、人為的ミス等によってこれらのコンピュータシステムの機能に重大な障害が発生した場合、東海旅客鉄道グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスへの感染や人為的不正操作等によりコンピュータシステム上の顧客個人情報が外部に流出した場合等には、東海旅客鉄道グループが提供する様々なサービスへの影響を通じて、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 東海旅客鉄道グループでは、障害対策として、日常より最新の技術動向等を勘案しながら自社システムのセキュリティ機能の向上を図るとともに、関係する社員の教育・訓練等を充実させ、万一障害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制及び復旧体制の構築等に努めています。

 また、個人情報保護対策として、社内の管理体制を整えるとともに、社内規程やマニュアルを整備し、社員に周知徹底をしています。さらに、顧客個人情報へのアクセス権限を限定し、システムセキュリティを強化するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めています。

(8) 超電導リニアによる中央新幹線

 東海旅客鉄道は、健全経営と安定配当を堅持しながら、自己負担により、超電導リニアによる中央新幹線計画を進めています。中央新幹線計画を進める目的、必要性等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりです。

 東海旅客鉄道は超電導リニアによる中央新幹線計画について、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で合理的と考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。

 また、平成19年12月には、全幹法の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。

 その後、全幹法の手続きが進み、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会の答申を受け、平成23年5月、国土交通大臣は、東海旅客鉄道の同意を得た上で、東海旅客鉄道を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、東海旅客鉄道の同意を得て整備計画を決定し、東海旅客鉄道に建設の指示を行いました。

 

【中央新幹線の整備計画(平成23年5月決定)】

 建設線

 中央新幹線

 区間

 東京都・大阪市

 走行方式

 超電導磁気浮上方式

 最高設計速度

 505キロメートル/時

 建設に要する費用の概算額

 (車両費を含む。)

 90,300億円

 

 その他必要な事項

 主要な経過地

 甲府市附近、赤石山脈(南アルプス)中南部、

 名古屋市附近、奈良市附近

 (注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。

 これを受けて東海旅客鉄道は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法の手続きを進め、平成26年8月に、最終的な環境影響評価書(以下「評価書」という。)を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。また、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。

 品川・名古屋間の総工事費については、工事実施計画(その1)及び平成30年3月に認可を受けた電気設備等を含む同(その2)の段階において、5.52兆円と見込んでいました。その後、工事を進める中で、個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、令和3年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、難工事への対応、地震対策の充実、発生土活用先の確保等により、総工事費が7.04兆円に増加する見通しとなりました。これを受け、一定の合理的な前提条件を置いて資金確保の状況を試算し、健全経営と安定配当を堅持しながら工事を完遂できることを確認しました。その後、令和5年12月に、総工事費を7.04兆円とした、駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等の工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。

 品川・名古屋間の開業時期(工事の完了の予定時期)については、工事実施計画(その1)及び同(その2)において、令和9年(2027年)として認可を得ました。一方、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いています。このため、令和9年(2027年)の開業は困難であり、新たな開業時期を見通すことができない状況を踏まえ、令和5年12月に、工事の完了の予定時期を令和9年(2027年)以降とした工事実施計画(その3)及び変更の認可を受けました。その後、令和6年3月に開催された国土交通省の「第2回リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」で、静岡工区の工事計画を示し、工事契約締結から既に6年4か月が経過している静岡工区が品川・名古屋間の開業の遅れに直結しており、令和9年(2027年)の開業は実現できない旨を説明しました。引き続き、静岡工区のトンネル掘削工事の早期着手、さらには品川・名古屋間の早期開業に向けて取り組みます。

 名古屋・大阪間については、品川・名古屋間と同様に、工事に着手する前段の環境影響評価法の手続きの中でルートの絞り込みや駅位置の選定を行い、工事費等を精査した上で、工事実施計画の認可申請を行います。これらは品川・名古屋間の開業が近づいた際に行う計画ですが、その時点で合理的と考えられる前提条件の下で健全経営と安定配当を堅持できることを確認した上で工事を進めます。

 大阪までの全線開業については、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり実施した長期試算見通しにおいて、品川・名古屋間の開業後、大阪への工事に着手するまでに必要となる経営体力回復期間を設けることなどを前提として試算を行った結果、開業時期は令和27年(2045年)となりました。その後、政府からの提案を受け、鉄道・運輸機構から財政投融資を活用した総額3兆円の長期借入を行ったことを踏まえ、経営の自由及び投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けによる経営リスクの低減を活かし、全線開業までの期間の最大8年前倒しを目指すこととしました。品川・名古屋間について、令和9年(2027年)の開業は実現できず、新たな開業時期を見通すことができない状況ですが、品川・名古屋間の開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手する方針に変更はありません。

 今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期開業を目指して、計画を推進していきます。

 

 中央新幹線の建設は東海旅客鉄道の自己負担で進め、工事費に充てる資金は、営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。プロジェクトの推進にあたり、例えば、次のようなリスクが考えられ、東海旅客鉄道グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

  ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大

  ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ

  ⅲ 金利上昇

  ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減

  ⅴ 他輸送機関との競合による収入減

  ⅵ 社会全体の物価上昇

  ⅶ 訴訟の提起

 このうち、ⅰからⅵの経費増、収入減を伴うリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。

 ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。

 

≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線

 

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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