アイビスグループ(アイビス及びアイビスの関係会社、以下「アイビスグループ」)は、アイビス、連結子会社2社(2025年12月31日現在)で構成されており、事業の種類別に、「モバイル事業」、「ソリューション事業」及び「AI歌声合成事業」の3つの事業を展開しております。事業の区分は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」に揚げるセグメント情報の区分と同一であります。
※ 売上構成比は2025年12月期の実績を基に算出しております。
(1) モバイルセグメント
モバイルセグメントは、アイビスの「モバイル無双で世界中に“ワォ!”を創り続ける」をミッションに、「作画工程を動画にして絵を描く楽しさを共有したい」というコンセプトから、アイビスが自社開発したiOS・Android用モバイルペイントアプリ「ibisPaint」の開発及びサービス運営、さらには「ibisPaint」で制作された全世界のユーザーコンテンツに発表の場を与えるオンラインギャラリー「ibispaint.com」の運営を行う事業セグメントであります。モバイルセグメントに関する事業系統図は、次のとおりであります。
※プラットフォーム事業者とは、「Google Play」を運営するGoogle LLCや「App Store」を運営するApple Inc.等のこと。
※SSPとは「Supply Side Platform」の略で、Supply-Side(媒体社、メディア)が広告収益を最大化するためのプラットフォームのこと。
■ ビジネスモデル
アイビスは「ibisPaint」をモバイルアプリ提供プラットフォームである「Google Play」や「App Store」等を通じてユーザーに提供しております。
「ibisPaint」は無料で基本的な機能を使用することのできるペイントアプリで、「ibisPaint」上にバナー広告や動画広告等が表示されるようになっており、アイビスはこの広告枠に複数のSSP事業者から提供される広告をアドネットワーク(注1)を通じて表示することにより、SSP事業者ごとに最適化された広告収益を得ております。SSP事業者への広告枠の提供は本セグメントの広告ビジネスにおける主な収益源となっております。また、より快適に利用いただくために、2つの有料サービスを提供しております。1つは、広告非表示機能を含む追加機能や追加素材等の利用が可能となる定額課金型のプレミアム会員サービス(サブスクリプション課金)の提供であり、月額課金制と年額課金制の2種類の方法があります。もう1つは、アプリ上の広告が非表示となる売切型アプリの提供であり、初回インストール時に広告非表示機能付の有料版を購入する方法と無料版のインストール後に広告除去アドオンを購入する方法があります。両サービスは本セグメントのアプリ課金収入モデルにおける主な収益源となっており、当連結会計年度において、アプリ課金売上(サブスクリプション課金及び売切型アプリの合計)がアプリ広告売上をはじめて上回るなど、課金収入へのシフトが明確になってきております。
上記、アプリ課金収入及びアプリ広告売上については、ユーザーの獲得・維持が収益構造の源泉となっております。そのため広告投資(広告宣伝費)を計画的に行っております。また「ibisPaint」は、世界の19言語に対応したアプリであり、積極的な海外プロモーション(投資対象国は61ヶ国)を実施し、ユーザー数の増加及び収益の拡大に繋げております。
なお、2022年6月にリリースしましたWindows版ペイントアプリ「ibisPaint」については、当初は売切型アプリのみを販売しておりましたが、2024年3月に定額課金型のプレミアム会員サービス(サブスクリプション課金)の提供を開始いたしました。そして、2025年8月にMac版をリリースし、プロユース×マルチデバイス展開の事業方針の元、サブスクリプション課金をはじめとするアプリ課金の成長を加速させております。
(注1):複数の広告媒体を集めて広告配信ネットワークを作り、それらの媒体に広告をまとめて配信する仕組みのこと。
※ 売上高及び売上構成比は2025年12月期の実績を基に算出しております。
■ 事業の特徴
① 基本機能が無料で使い放題、全世界で5.2億ダウンロード超え
「ibisPaint」は自社開発のモバイルペイントアプリであります。世界各国、趣味としてイラストを描く人、職業としてイラストを描く人、すき間時間にイラストを描く人が多く存在します。イラストを描く年齢層も幅広く、スマホを使い始めた子供からシニアまでほとんどを網羅しています。このアプリの最大の特徴は「基本機能が無料で使い放題」であることです。その結果、App Store「グラフィックス&デザイン」カテゴリにおいて、2025年に全世界でもっとも多くのアクティブユーザー数を獲得し、2019年から7年連続でカテゴリ世界1位を維持いたしました(注2)。MAU(注3)は2025年12月に全世界で4,007万人、ダウンロード数は2025年12月末に5億2,052万件に達しております。「ibisPaint」は、世界のどこかで「1秒で2.2人にダウンロード」(注4)され拡がり続けています。
(注2):App Store(2019年–2025年1~11月)、全世界、月次、data.ai by Sensor Tower 調べ。
(注3):「Monthly Active Users」の略で、月あたりのアクティブユーザー数を示す。
ソーシャルメディアやソーシャルアプリなどで、適切な利用者数を示す値として使われる指標。
(注4):2025年の年間新規ダウンロード数70,976,055を基に算出。
※ 2016年12月から2019年9月までの「ibisPaint」の数値はアイビスの財務諸表に含まれておりませんが、参考情報として記載しております。
② 自社運営のオンラインギャラリー「ibispaint.com」(注5)
「ibisPaint」で創り出されたイラストを投稿できるメディア「ibispaint.com」は、ユーザーから投稿された作品がイラスト、マンガ等の種別に日別、月間、年間ランキング形式で閲覧できるようになっている他、投稿されている作品データをダウンロードすることができ、お絵かきのテクニックを学ぶこともできるようになっております。これらの特色により、作品へのコメント等を通じてユーザー同士のコラボレーションが活発に行われており、「ibisPaint」へのエンゲージメントの創出に貢献しております。
(注5):「ibispaint.com」は、2025年12月末現在、作品の投稿、ユーザーの交流等のサービス提供を目的としており、収益はありません。
③ 海外ユーザー数が日本国内ユーザー数を上回る
アイビスアプリの最大の特徴は全世界で支持されていることです。2025年12月末現在、「ibisPaint」の累計ダウンロード数において、海外比率は全体の93.9%に達しており、日本国内のダウンロード数を著しく上回っております。この理由としては、「言語を要しないイラスト制作」分野であること、主要な「19言語」に翻訳されていること、有料版を購入しなくても「基本機能が無料で使い放題である」ことが挙げられます。
ユーザー獲得手法については、2016年9月期以降、世界61ヶ国のインターネット広告に出稿しており、広告出稿による効果に関するデータをモニタリングすることで、効果的な海外プロモーションを実施しております。国内人口は減少が見込まれるなか、まだまだ増える世界人口を相手にすること、増え続ける「モバイル」ユーザーを対象にしていることは大きなアドバンテージであると考えております。
④ α・Z世代のユーザー割合が多い
一般的に、1990年代中盤以降に生まれた世代がZ世代、2010年代序盤以降に生まれた世代がα世代と言われています。ニュースにも頻繁に取り上げられているこれらα・Z世代は、SNS等の発信力もあり、これからの社会の消費行動や価値観の中心になり得る存在です。また顧客生涯価値(注6)を高めることにおいてα・Z世代を取り込むことは極めて重要であると考えております。
「ibisPaint」のユーザー属性を年代別に分析したところ、「ibisPaint」のα・Z世代の割合は44.1%を占めておりました(2025年1月-11月の数値。日米2ヶ国、data.ai by Sensor Tower調べ)。「ibisPaint」は全世界のα・Z世代を中心にユーザーを拡大深耕しております。
(注6):顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益(Life Time Value)のこと。
⑤ 無料版ユーザーからの収益
無料版でも「基本機能は使い放題のアプリ」を提供、という部分に、アイビスの一番の強みがあります。通常、アプリビジネスは、サブスクリプション(定額課金)や購入(売切課金)をどれだけ獲得するかが鍵になると考えられています。アイビスの無料版アプリはユーザーに配信される広告から収益を得ています。無料だから簡素なアプリでいい、無料だから縮小版でいい、という考えではなく、全世界中イラストを思い思いの場所・タイミングで描いてほしい、そんな気持ちから「基本機能が使い放題」のアプリを無料で提供し続けています。また、無料版が充実していることから、高い水準の顧客満足度を実現しています。満足度が高いことで以下のユーザー行動につながっております。
※ 2026年1月19日時点のアプリストア評価
a. リテンション(顧客の囲い込み、流失防止)
顧客満足度が低いアプリであれば、顧客は使用を停止し、競合アプリに乗り換えてしまいます。顧客満足度の高さはリテンションに直結しています。またイラストを描くという行動上、慣れたアプリから他のアプリにスイッチする、ということは時間が経てば経つほど難しくなります。
b. 顧客生涯価値への貢献
無料版であっても顧客がアクティブであり続ける限り広告収益をもたらします。
⑥ 差別化の源泉
モバイルセグメントでは、モバイル最適化、優秀なエンジニア、スピードへのこだわりが三位一体となって、「ibisPaint」の開発力・サービス運営において他社製品との差別化を図っております。
※ GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で、画像描写などを行う際に必要となる計算処理を行う半導体チップ(プロセッサ)のこと。
※ UIとは「User Interface」の略で、ユーザーとモバイルアプリとのインターフェース(接点)のことを表す。
※ UXとは「User Experience」の略で、ユーザーがモバイルアプリを通じて得られる体験を表す。
「ibisPaint」の製品ラインナップは以下のとおりです。
(2) ソリューションセグメント
ソリューションセグメントでは大きく分けて2つの事業を展開しております。1つはスマートフォンやタブレット端末などインターネット端末用のアプリケーション開発、クラウドサーバ環境構築及び運用保守等を提供している受託開発事業、そしてもう1つはシステムエンジニア等のIT技術者派遣事業です。アイビスには20年以上培ってきたモバイル開発技術・ノウハウがあり、最新の技術や開発環境にも対応可能な優秀なエンジニアが多数在籍しております。その豊富かつ高度な技術力を受託開発やIT技術者派遣として企業向けに提供を行う事業セグメントであります。ソリューションセグメントに関する事業系統図は、次のとおりであります。
■ ビジネスモデル
受託開発事業は準委任契約(履行割合型・成果完成型)又は請負契約によるもので、モバイルアプリやWebアプリ等の開発や運用保守を受託しております。受託開発に係る売上はフロー型の収益モデルであり、運用保守に係る売上は受託開発したアプリ等の運用保守が継続する限りは安定的に収益が見込めるストック型の収益モデルであります。クラウドコンピューティングを用いたサーバ環境構築・移行・運用保守については原則としてアイビス内のみで行っており、収益モデルはアプリの受託開発・運用保守と同様であります。
IT技術者派遣事業は、アイビスが無期雇用契約を締結したシステムエンジニア等の技術者を、労働者派遣契約に基づき、顧客である求人企業(派遣先企業)に派遣し、その人材派遣料を収益源とするビジネスモデルであります。
※ 売上高及び売上構成比は2025年12月期の実績を基に算出しております。
■ 事業の特徴
① 受託開発の特徴
スマートフォンやタブレット端末の登場以降、急速な情報通信技術の発展により様々な分野においてデジタルサービスの創出、利活用が進む中において、アイビスは顧客のIT戦略やデジタルトランスフォーメーション(DX)化を推進するためのベストパートナーとして技術を提供し、よりエキサイティングでスピーディな社会の創出の一役を担いたいという考えから以下の5つのポリシーを掲げております。
・顧客第一主義
顧客視点に立った場合、時にはお客様と意見が食い違う場合もありますが、過去事例や最新の動向をふまえ、双方納得がいくまでディスカッションし、最良の解を導き出します。
・プロジェクトマネジメント
最初に開発するアプリに最適なプロジェクトスコープをご提案し、合意されたスコープに基づき、安心してお任せいただけるマネジメント体制を確立いたします。
・蓄積された高い技術力
これまで自社アプリを含め、数多くの開発案件に携わり培ってきた高い技術力を最大限に活かし、最新の技術も取り入れながら開発を進めていきます。
・スピード対応
顧客のニーズ、お客様のご要望、トレンドの変化などに、スピーディに対応。また高い技術をもった技術者が密に連携をとってスピーディに開発します。
・ワンストップ
アプリの企画から、設計・開発・テスト・リリースまではもちろんのこと、インフラ設計、構築、運用支援までワンストップでサポートします。
有限会社アイビスとして設立以降、アイビスはNTTドコモ社フィーチャーフォンi-mode用サイト「NetIbis」のリリースを皮切りに、Eコマースシステム「Ibis Ecom System」、フィーチャーフォン用フルブラウザアプリ「ibisBrowser」、フィーチャーフォン用フルメーラアプリ「ibisMail」及びiPhone・iPad用メールアプリ「ibisMail for iPhone/iPad」といった様々なモバイルアプリを時代のニーズに合わせて開発し、提供してまいりました。モバイルセグメントで培ったこれらアプリの開発技術やリリース、運用ノウハウを有していることがソリューションセグメントとしての強みにもなっており、企画段階やユーザーインターフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX) に関するご相談にも対応することができるほか、アプリと連携するバックエンドのWebシステム等も含めた設計から開発・運用までを自社においてワンストップで開発することが可能となっております。
また、アイビスは、クラウドサーバ上で動作するアプリケーションに最適な設計を考慮したサーバレス構築や移行から運用・保守及び新規事業への導入コンサルティング等も行っております。
さらには、本事業では2025年11月21日付でノーコードシステム開発事業を展開する株式会社ゼロイチスタートを完全子会社化し、今後の事業基盤強化に向けた取り組みを進めました。
② IT技術者派遣の特徴
アイビスは2001年12月に常時雇用される労働者(無期雇用者)だけを派遣の対象とする特定労働者派遣事業の届出を行いました。以降、システムエンジニア等のIT技術者派遣に特化して事業を行っております。また、2018年3月には労働者派遣事業の許可を取得し、有期雇用者の派遣も行えるようになりましたが、高い技術力や豊富な経験を有するシステムエンジニア等を自社で育て、派遣先企業との長期的な関係を構築するという方針の下、引き続き、無期雇用者の派遣のみ行っております。雇用者に対しては、能力や職位に応じた教育カリキュラムを構築し、アイビスの経験豊富なエンジニアが講師として研修を行う等、スキルアップの機会を多く設けるように努めております。
「ibisPaint」の開発・運用実績やソリューションセグメントにおける様々なアプリ等の受託開発実績は本事業の強みとなっており、ホームページを見た顧客からの直接受注獲得や受託開発の顧客からの紹介受注獲得に繋がっております。
情報通信技術の発展によるDXや多様なITサービスが展開されている中において、IT人材の需要は今後も高まる傾向が見込まれるため、引き続き本セグメントを拡大していく方針であります。
(3) AI歌声合成セグメント
AI歌声合成セグメントは、AI音声合成技術関連事業を展開する株式会社テクノスピーチ(2025年1月31日に完全子会社化)のBtoC向けのAI歌声合成アプリ「VoiSona(ボイソナ)」事業とBtoB向けの受託開発事業の2つを手掛けるセグメントとなり、当連結会計年度第2四半期より損益の連結計上を開始しております。AI歌声合成セグメントに関する事業系統図は、次のとおりであります。
■ ビジネスモデル
「VoiSona」事業は、最新のAI技術で人間らしい自然な歌声や話し声を生成する無料のAI歌声合成アプリ「VoiSona」を通じて提供する有料ボイスライブラリなどのアプリ課金が主な収益源となっております。ボイスライブラリは、お試しの初期搭載のボイスライブラリ(1種)は無料で提供しているものの、著名なキャラクターやアーティストと数多くコラボし、国内外のユーザーに支持される幅広い品揃え(30以上の有料ボイスライブラリ)を取りそろえております。AI歌声合成アプリ「VoiSona」は、現時点では、PC(Windows/Mac)版のほか、iOS用モバイル・タブレット端末がリリースされております。
受託開発事業は、企業ニーズに合った多様なボイスライブラリなどの開発や音声エンジンのライセンシングを行っております。前者に係る売上はフロー型の収益モデルであり、後者に係る売上はストック型の収益モデルとなっております。
※ 売上高及び売上構成比は2025年12月期の実績を基に算出しております。
※ 売上構成比上のVoiSonaには、便宜上、同じBtoC領域のCeVIOの売上高と、VoiSona及びCeVIO向けボイスライブラリ制作の売上高が含まれております。
※ CeVIOとは、2012年に設立された、大手4社と共同で展開するユーザー生成コンテンツを支援するための共同プロジェクトのことを指します。
■ 事業の特徴
AI歌声合成セグメントは、「世界最先端のAI音声関連技術で人々の暮らしを豊かに、世界を楽しませる」を
VISIONに掲げる株式会社テクノスピーチが提供する事業セグメントとなります。同社は、名古屋工業大学を中心と
して開発された世界最先端の音声関連技術の普及を目的として2009年11月に設立されました。事業の特徴としては
以下の4つが挙げられます。
① 今後大きく成長が見込まれる音声合成市場(注7)
グローバル市場において、2023年に6,000億円~8,000億円とみられていた市場規模は、2030年には1兆1,600億円
~1兆4,000億円規模へ急成長が見込まれております。
② 世界にも通じる経営陣と技術力、開発力
音声合成領域を研究領域とする大学教授で唯一、紫綬褒章を受賞した代表取締役 徳田恵一をはじめ、同教授の
研究室卒業生や東京大学卒業の優秀な研究者・開発者を抱え、少数精鋭組織でありその技術力は日本トップクラス
です。
③ 大手企業との太いパイプと取引実績
株式会社コナミデジタルエンタテインメント、株式会社円谷プロダクション、カシオ計算機株式会社、株式会社
河合楽器製作所、ブラザー工業株式会社、株式会社バンダイナムコエンターテインメント、ソフトバンクロボティ
クス株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント等の大手企業との継続的かつ安定的な取引実績
を持っております。
④ 基盤事業であるBtoB事業と今後の成長性が高いBtoC事業
大手企業からの継続的な受託業務をこなすことで技術力、開発力を高めつつ、2012年に参画したCeVIOプロジェク
トに加え、2022年にローンチしたAI歌声合成アプリ「VoiSona」にて、B2C領域を中心に事業拡大を見込んでおりま
す。
(注7):音声合成市場の市場規模は、360iResearch社の「音声合成市場:コンポーネント別(サービス、ソフトウェア、ソリューション)、タイプ別(ニューラル&カスタム、非ニューラル)、言語別、展開モード別、組織規模別、業種別– 2024年~2030年のグローバル予測」によります。
文中の将来に関する事項は、提出日現在においてアイビスが判断したものであります。
(1) 経営方針
アイビスは以下のMission、Vision及びValueを掲げております。
<Mission>
アイビスはモバイルに精通した技術者集団
イラストは 言語も 民族も 宗教も ジェンダーも関係ない
モバイルペイントアプリで世界のコミュニケーションを創造する
<Vision>
アイビスは世界での Made in Japan のプレゼンスを上げていく
<Value>
高い技術のエキスパート集団
最新の技術を習得し続け、高度な技術のエキスパート集団で
あるという自覚を持ち、社会の課題を解決する
スピーディな意思決定と実行
スピーディに動作するソフトウェアを開発するのみならず、
スピーディに意思決定を行い実行する
継続的なチャレンジ
スピードを緩めることなくチャレンジし続けることにより、
新しい価値を創り出す
(2) 経営環境
<モバイル事業>
2023年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の5類感染症移行後は、社会活動や経済活動が活性化し、物価高による実質賃金の不透明感はあるものの、本格的に経済が復調する様子が伺えることとなりました。アイビスの主要サービスである「ibisPaint」を含むモバイル向けアプリ市場規模は、日本だけでなく世界においても年々拡大し、総務省が公表する令和5年版情報通信白書によると、2016年以降右肩上がりで推移しており、2024年以降も拡大していく予測がされております。また、2023年の広告市場はCOVID-19の影響が緩和したことで拡大し、その中でもインターネット広告費は他の媒体と比べ最も大きな成長率(株式会社電通「2022年日本の広告費」)となっており、モバイル向けアプリ市場規模の拡大と相関して今後も拡大していくと予測しております。
アイビスのアプリは累計93.2%が海外からのダウンロードですが、同市場においては、発展途上段階や人口増加の国も多数あり、「ibisPaint」にはまだまだ多くの未開拓ユーザが全世界に存在すると考えております。
アイビスは市場の大きさを以下に想定しております。
a.ネット広告市場
(注)1.TAM(Total Addressable Market)獲得可能な最大市場規模のこと。
2.アイビス売上高実績は2023年12月期の数値(以下、同様)。
3.ネット広告市場(国内)におけるTAMの額655億円は、株式会社電通が発表した調査レポート「2022年 日本の広告費」上での2022年の「インターネット広告媒体費」2兆4,801億円のうち、ディスプレイ広告7,372億円・動画広告5,920億円・成果報酬型広告965億円、以上合計1兆4,257億円に、総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書(第5章第11節)」上でのスマートフォンの保有割合77.3%、及び経済産業省が発表した調査レポート「電子商取引に関する市場調査の結果(2023年8月31日公表)」上での2022年の「デジタル系分野のBtoC-EC市場規模 > ⑤その他」の割合6.0%の乗算結果4.6%を掛けて算出。又、ターゲット市場の額72億円は、2022年3月25日~2022年3月28日に株式会社クロス・マーケティング経由で実施した日本でのイラストアプリに関するアンケート調査上で、母集団(N=5,154)のうち、デジタルイラストを描く顕在層・潜在層の割合11.1%をネット広告市場(国内)におけるTAMの額に掛けて算出。
4.ネット広告市場(海外)におけるTAMの額4,973億円は、Grand View Research, Inc.が発表した「In-app Advertising Market Report Scope」上での「Market size value in 2022」21兆2,794億円(USD 151.1billion。円へは2023年12月29日時点のTTB140.83円で換算)に、便宜上、(注)3の2022年の「インターネット広告媒体費」に対する前述の媒体費3種類の割合57.5%、及び乗算結果4.6%を掛けて算出した額5,628億円から国内のTAMの額655億円を差し引いて算出。又、ターゲット市場の額552億円は、前述のデジタルイラストを描く顕在層・潜在層の割合11.1%をネット広告市場(海外)におけるTAMの額に掛けて算出。
b.アプリ販売市場
(注)5.アプリ販売市場(国内)におけるTAMの額960億円は、経済産業省が発表した調査レポート「電子商取引に関する市場調査の結果(2023年8月31日公表)」上での2022年の「デジタル系分野のBtoC-EC市場規模 > ⑤その他」1,242億円に、総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書(第4章第11節)」上でのスマートフォンの保有割合77.3%を掛けて算出。又、ターゲット市場の額106億円は、(注)3のデジタルイラストを描く顕在層・潜在層の割合11.1%をアプリ販売市場(国内)におけるTAMの額に掛けて算出。
6.アプリ販売市場(海外)におけるTAMの額1兆7,478億円は、Grand View Research, Inc.が発表した「Mobile Application Market Report Scope」上での「Market size value in 2022」29兆1,306億円(USD 206.85 billion。円への換算方法は(注)4と同じ)から、便宜上、(注)3の2022年の「デジタル系分野のBtoC-EC市場規模 > ⑤その他」の割合6.0%を掛けて算出した額1兆7,478億円から国内のTAMの額960億円を差し引いて算出。又、ターゲット市場の額1,833億円は、(注)3と同様、デジタルイラストを描く顕在層・潜在層の割合11.1%をアプリ販売市場(海外)におけるTAMの額に掛けて算出。
<ソリューション事業>
2019年3月に経済産業省が公表したIT人材需給に関する調査によると、IT人材の供給数は減っていく一方で、需要数が高まることから需給ギャップが拡がり、2030年には約41万人から79万人のIT人材不足が生じると見られております。2023年においてはコロナ禍による世界的な経済停滞の影響から脱して、企業からのシステム投資需要も堅調さを取り戻すこととなり、中長期的に市場は引き続き拡大していくものと考えております。
また、日本企業において経済産業省が推進する「DX化」というトレンドがあります。特に業務の効率化、働き方改革などでは「スマホ化」の需要は一段と増えております。さらに受託開発に目を向けると、大手企業からのロボティクス案件などもあり、これからもアイビスの最新技術思考が顧客にアピールできると考えております。PCから「スマホ×DX化」という相乗効果による追い風を受けて、アプリ開発市場は持続的に拡大していくものと考えられます。
(注)7.受託開発市場におけるTAMの額8兆7673億円は、総務省が発表した「2021年情報通信業基本調査」上での2020年の市場規模の内、「受託開発ソフトウェア業」の額より抜粋。又、ターゲット市場の額5兆7,338億円は、経済産業省が発表した「平成30年特定サービス産業実態調査(経済産業省)」上のアイビスの事業所が存在する都道府県の「受注ソフトウェア開発」の年間売上高(東京都4兆7,585億円、愛知県6,245億円、大阪府1兆4億円)の合計の額6兆3,834億円を「受注ソフトウェア開発」の年間売上高9兆7,661億円で除して算出した割合65.4%をTAMの額に掛けて算出。
8.IT技術者派遣市場におけるTAMの額1兆3405億円は、厚生労働省が発表した「令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」上の情報処理・通信技術者1日当たりの平均派遣料金32,394円を×20日×12ヶ月として算出した額と「労働者派遣事業の令和4年6月1日現在の状況」上の情報処理・通信技術者派遣労働者数172,445人を積算して算出。又、ターゲット市場の額1兆53億円は、前述の一つ目の資料上のアイビスの事業所が存在する都道府県の年間売上高(南関東3兆7,276億円、東海1兆2,042億円、近畿1兆2,433億円)の合計の額6兆1,751億円を労働者派遣事業に係る総売上高8兆2,363億円で除して算出した割合75.0%をTAMの額に掛けて算出。
(3) 経営戦略
<モバイル事業>
モバイル事業は、特にアプリ課金市場においては、ターゲット市場に対して売上規模がまだまだ小さく、当面は世界的なマーケットで売上拡大に注力するステージであると考えております。
① 高機能戦略
「ibisPaint」はリリース当初より、モバイル端末用に適合、最適化することを念頭に置いて開発した自社製品ですが、競合他社の製品は、一般的にハードウェアの性能が高いPC端末用に開発された製品が多く、かつ、開発において多大な人件費を継続的に投入しております。アイビスの製品は、プロのイラストレーター等が使用するパソコンのペイントソフト並みの機能を搭載しているものの、他社との差別化において、継続的な改善と新機能の追加、及びモバイル端末用としてのさらなるUI(ユーザインターフェース)及びUX(ユーザエクスペリエンス)の強化は事業戦略上の根幹をなすものであります。加えて、昨今のAI(人工知能)技術の発展等により、さらに付加価値を高めた製品の開発も可能となっていることから、当面は、高機能戦略を踏襲し、ユーザにとって魅力のある製品を開発し続けることによって、全世界でのシェアの拡大を進めてまいります。
② サブスクリプション強化
同事業におけるBtoCビジネスにおける収益源としましては、広告非表示機能を含む追加機能や追加素材、追加ストレージ等の利用が可能となるサブスクリプション(定額課金)型のプレミアム会員サービスと、アプリ上の広告が非表示となる売切型アプリの2種類の方法があります。これまでは累計ダウンロード数の増加=広告ビジネスにおける収益を最重視しておりましたが、今後は、プレミアム会員サービスへの誘導を強化するプロモーション策を実施し、同サービス経由での売上も増加させることにより、同事業内において、市況の影響を直接受けやすい広告ビジネスの売上に過度に依拠しないような収益構造を目指し、リスク分散してまいります。
③ プロ向け展開強化
「ibisPaint」はモバイルペイントアプリのNo.1ブランドだからこそ、PC版も使いたい既存ユーザが多数存在したため、2022年6月にWindows版をリリースし、随時、機能拡充を行ってまいりました。当初は売切型のみ販売しておりましたが、2024年3月にはサブスクリプション型の提供を開始しております。また、クリエイターの求める機能を引き続き搭載するなど、機能を拡張し続けることで、将来的にプロのクリエイター向けマーケットへの本格的参入も想定しております。全デバイスで「ibisPaint」ブランドを確立し、新たな収入源を獲得してまいります。
<ソリューション事業>
ソリューション事業は、ターゲット市場に対して売上規模が極めて小さく、当面は売上拡大に注力するステージであると考えております。
① SI(システムインテグレーション)体制構築
アイビスのソリューション事業は、受託開発とIT技術者派遣の2つのサービスを提供しておりますが、受託開発を強化し、高付加価値なSler化を推進してまいります。モバイルDX(デジタルトランスフォーメーション)という追い風に乗って、アイビスが得意とするスマートフォンやタブレットなどインターネット端末のアプリケーション開発における最新の技術を磨き続け、システム導入におけるコンサルティングや要件定義から、設計、開発、運用までワンストップで新しい顧客へ提供できる体制を積極的に推進してまいります。
② 新たな開発手法等への取り組み
スマートフォンやタブレットなどのアプリ開発は、アジャイルやスクラムなどの最新のアプリケーション開発手法や、AI・Web3.0などを活用した開発生産性の抜本的向上策などの技術進化が著しい分野であります。アイビスは、高い品質管理マネジメントと利益管理マネジメントの両立を目指して、継続して新しい開発手法等を取り入れてまいります。
③ eラーニング強化
アイビスにおいては、全社従業員向けの教育研修として、2018年よりeラーニングサービスを導入・運用しておりましたが、ソリューション事業所属のIT技術者においては、技術革新が著しい昨今において、最新の開発技術・言語・スキルが学べるより専門性が高いeラーニングサービスの追加提供を2023年より導入いたしました。今後は、更に、社外研修を新規提供するなど、更に充実した教育研修制度を構築、実施してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
アイビスは事業の成長性、収益性を判断する重要な経営指標としまして、売上高、営業利益、営業利益率を重視しております。また、サービス別ではモバイル事業の主要サービスである「ibisPaint」のDAU(注)、サブスクリプション契約数、及びソリューション事業のITエンジニア数を重要な事業KPIとして位置づけ、増加に向けた企業運営に努めております。なお、各指標の推移は以下のとおりであります。
(注):DAUは「Daily Active Users」の略で一日あたりのアクティブユーザのこと。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の見通しにつきましては、国際情勢の不安定さによりエネルギー・原材料価格の高騰や金融引き締め政策、為替相場の急激な変動などが依然として続き、景気の先行きは不透明な状況が続くものと想定しております。そのような中、アイビスは、当事業年度より、モバイル事業、ソリューション事業共に、売上高を成長させるとともに、利益の額及び率を重視する経営方針に転換することといたしました。
<モバイル事業>
モバイル事業については、当事業年度までの8年にわたる海外プロモーション投資の効果により、製品ブランドが世界レベルで各段に向上し、口コミのみでヘビーユーザが獲得できる土壌が整ったこと、全世界でのibisPaintのアクティブユーザ数における対直接競合シェアは当事業年度で83.9%(注)となり、ここ数年、高い占有率を継続している状況が続いていること、以上2点を考慮して、2024年12月期は広告宣伝投資(広告宣伝費)を前年同期比△52.6%と1/2弱に大きく減少させ、オーガニック成長(グロース)へ転換することといたしました。同事業において対処すべき主な課題としましては、以下の2点が挙げられます。
(注)アクティブユーザシェアのデータは2023年の数値。data.ai調べ。比較対象はアイビスが全世界で直接競合するものとして考えている5アプリ。
①マーケティング強化策
自社開発のモバイルペイントアプリ「ibisPaint」について、ユーザのニーズ、トレンドの変化などに今迄以上にスピーディに対応し、AIやディープラーニングなど最先端且つ高度な技術を最大限活用することによって、顧客の更なる拡大及び深耕を図り、引き続き、サブスクリプション(プレミアム会員サービス)の強化とプロマーケットの開拓を目指してまいります。
②開発人材の確保及び育成
同事業の拡大には、急速な技術革新への対応と、海外マーケッターや海外サポートなども含めたあらゆる職種での人材の質及び量の向上が不可欠であり、このような環境や変化に対応し、ニーズにあった適切なサービスを提供できる体制を構築していくことが重要であると認識しております。特に、同事業におけるモバイルアプリ開発エンジニアには、高度なプログラミングの知識はもちろんのこと、画像処理技術を調査・研究・実装するための論理的思考力及び科学的リテラシーが求められます。そのため、高い専門性を有する優秀な理系出身者人材の確保と育成は同事業発展のための根幹と考え、必要な戦力となる社員の採用を行い、育成していくことを高成長の源泉としてまいります。そして、セグメント利益の額及び率の更なる向上を目指してまいります。
<ソリューション事業>
ソリューション事業については、高採算な受託開発の強化を継続しつつ、各拠点への選択と集中を進める方針を掲げております。同事業において対処すべき主な課題としましては、以下の2点が挙げられます。
①営業強化策
スマートフォンやタブレットなどのアプリケーション受託開発について、システムコンサルティングからクラウドサーバ運用・保守まで高い付加価値を提供するSI体制を構築しながら、今迄以上に多彩な業種業態の法人クライアントの開拓・拡大を図ることで顧客満足度の更なる向上を目指してまいります。
②開発人材の確保及び育成
ソリューション事業においても、あらゆる顧客の開発ニーズに応えられるハイスキルな技術力を有する豊かな経験が求められます。優秀な人材の確保と育成は、同事業発展のための根幹と考え、適時必要な戦力となる社員の採用を行い、育成していくことを安定成長の源泉としてまいります。また、最新の技術を駆使して受託案件の開発生産性を更に向上させるなどして、セグメント利益の額及び率の更なる向上を目指してまいります。
<全社>
アイビスは管理機能集中や各種システム導入による情報セキュリティ機能の向上及び、会社法だけでなく金融商品取引法にも対応した内部統制システムの整備を行うなど、有効性が高く、効率の良い内部管理体制の強化を行ってまいりました。今後は、これまでに構築した体制を高機能に維持していくために人員の採用と育成に注力しながら、引き続き内部管理体制を強化していく方針であります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在においてアイビスが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① インターネット広告市場動向の変化(顕在化の可能性:高、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
広告市場は市場変化や景気動向の変動による影響を受けやすく、今後、急激な景気の変化等が生じた場合、広告及びインターネット広告の需要に影響する可能性があります。
アイビスはモバイル事業において広告市場の影響を抑えるような収益構造を目指し、定額課金型である「ibisPaint」のプレミアム会員サービスへの誘導を強化するプロモーション策を実施してまいりますが、急激な景気の変化等が生じた場合、広告掲載案件や広告単価の減少等により、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② ユーザ嗜好の変化(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
モバイルアプリ市場内外において新しいコンテンツサービスが次々とリリースされ、ユーザの嗜好の移り変わりが激しい競争環境において、アイビスの提供するモバイルアプリがユーザのニーズ及びトレンドの変化にスピーディに対応できなかった場合、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。アイビスはマーケティングによるユーザ嗜好の把握や既存ユーザからの意見の適時収集を通じて、モバイルアプリの開発、改良を行い、最適なモバイルアプリの提供に努めることで事業の継続及び拡大を図ります。
③ システム投資動向の変化(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
生産性向上のためのシステム化需要や情報通信技術の発達に伴うデジタルサービス等の需要増加により、システム投資動向が上向きである中、IT人材の数が不足していると感じている企業が増加傾向にあることから、アイビスソリューション事業に関連する受託開発、IT技術者派遣の市場は拡大していくものと予測しております。しかし、経済状況の変化や景気低迷により、アイビスの予測に反してシステム投資動向が抑制傾向になった場合は、受注量の減少や取引価格の低下等によりアイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。アイビスは顧客のニーズに的確に対応できる人材確保のためにITエンジニアへの研修及び優秀な人材の採用と育成を推進することで事業の継続及び拡大を図ります。
世界的にSNS系のアプリや動画、音楽、ゲーム等のコンテンツ系アプリの利用ユーザが年々増加傾向にあり、アイビスモバイル事業に関連するモバイルアプリ市場は今後も拡大していくものと予測しております。しかし、アイビスの予測に反してモバイルアプリ市場が急激に縮小した場合、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。アイビスはモバイル事業だけでなくソリューション事業についても収益の柱として位置づけており、事業ポートフォリオを拡大することでリスクを分散してまいります。
⑤ 技術革新について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスは情報通信技術との関連性が高い事業を行っておりますが、当該分野はハード面、ソフト面いずれにおいても技術革新の速度及びその変化が著しく、新技術の開発や新サービスの提供が次々と行われております。技術革新へ対応できるようにアプリ関連の研究開発、システムエンジニア等のITエンジニアへの研修及び優秀な人材の採用と育成に努めておりますが、これらの施策を上回る速度で技術革新が進んだ場合や適切な対応ができなかった場合には、競合他社に対するアイビスの競争力が低下し、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスク
① 「ibisPaint」への依存について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
アイビスの売上構成比において、特定のサービス「ibisPaint」の比重が高く、その売上高の大半はユーザの広告閲覧による広告収入となっております。アイビスは、「ibisPaint」の利用を維持・促進するため、機能改善や新機能の追加、各種プロモーション等によるユーザの利用の活性化を図っておりますが、かかる対策が適時適切に行えなかった場合、又はかかる対策が功を奏さなかった場合など、何らかの理由によってユーザの興味・関心を維持できない場合、又は競合他社がアイビスより魅力あるサービスをリリースするなどして「ibisPaint」の競争力が低下した場合、アクティブユーザ数の減少、広告収入の低下等により、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
② 海外展開について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
アイビスはモバイルアプリ提供プラットフォームである「Google Play」や「App Store」等を通じて海外ユーザにもモバイルアプリを提供しており、さらなるダウンロード数、ユーザ数の増加を目指して事業展開を行っていく方針であります。しかし、ユーザの嗜好や商慣習等が国ごとに本邦と大きく異なることもあり、アイビスの提供するサービス内容によってはアプリの提供停止や想定どおりに事業展開できない可能性があります。海外展開にあたってはこれらのリスクが発現しないように調査、翻訳、サービスの実装等を行っているものの、リスクが顕在化した場合は、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、2022年2月以降のロシアによるウクライナ侵攻の影響については、プラットフォームからのアプリ提供も含め、ロシア国内におけるサービスを一時的に停止しておりますが、アイビスの業績に及ぼす影響は限定的であります。ウクライナ情勢の長期化やその他地政学的リスクの顕在化等により経済状況が悪化した場合には、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ サービスの健全性について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスの運営するモバイルアプリは、数多くのSSP事業者へ広告の掲載を委託しており、「ibisPaint」を配信する前に国内外のSSP運営事業者の基準やアイビスの基準に照らし、「ibisPaint」に表示される広告、自社運営オンラインギャラリー「ibispaint.com」へ掲載されるコンテンツ、その表現等の健全性を確保するように努めております。アイビスはSSP事業者との取引開始時における審査の実施や社内にて広告掲載基準を設けるなど、広告及びリンク先のサイトの内容についての管理を実施しております。また、アイビス従業員が定期的に既に掲載されている広告、広告のリンク先サイト及び「ibispaint.com」を巡回し、広告掲載基準の遵守状況や公序良俗に違反するイラスト投稿の有無、アイビス広告の掲載状況を監視しております。広告掲載基準に違反する行為や公序良俗に違反するイラスト及び公序良俗に違反する媒体でのアイビス広告掲載が発見された場合には、当該SSP事業者やイラスト投稿ユーザに対する警告、契約解除といった措置を講じております。
しかしながら、こうした対応・措置等にもかかわらず公序良俗に反する広告が掲載されてしまう可能性があります。広告主等が公序良俗に反する広告や商品・サービスの提供、コンテンツの掲載をアイビスの意図に反して継続することにより、アイビスの提供するアプリやアイビスのアカウントがプラットフォーム運営事業者により削除された場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自社運営オンラインギャラリー「ibispaint.com」へ公序良俗に違反するイラストが多数投稿された場合やアイビスが広告主として出稿した広告が公序良俗に違反する媒体に掲載された場合においても、アイビスのブランドイメージの毀損、悪化に繋がり、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 広告宣伝について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスモバイル事業においては、アプリダウンロード数の増加並びに新規ユーザの獲得が売上高増加に繋がることから、広告宣伝活動は重要な投資であると認識しております。広告宣伝費の支出に関しては、費用対効果を測定し、最適な広告宣伝を実施するように努めております。しかしながら、アイビスの想定どおりの効果が得られない場合や、競合環境の変化等により広告宣伝費が増加した場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定の取引先への依存について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスモバイル事業はビジネスモデル上、Apple Inc.やGoogle LLC等のプラットフォーム運営事業者への依存が大きくなっております。そのため、これらプラットフォーム運営事業者の事業戦略の転換及び動向によっては、プラットフォーム運営事業者へ支払う手数料率の変動等の理由により、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対する予防策として、アイビスはプラットフォーム運営事業者の動向を注視するとともに、業界団体等からの情報収集を適時に行うことで適切な対応策を講じてまいります。
⑥ 為替変動について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスモバイル事業では、海外のSSP事業者及び海外ユーザと取引しており、海外売上高の比率は全社売上高の約4割以上を占めております。アイビスは想定為替レートの変動を織り込んだ事業計画を策定しておりますが、想定の範囲を超えて円高が進んだ場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 見積り違い及び納期遅延等について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスソリューション事業の受託開発は、予定工数等に基づきコストの見積りを行っておりますが、仕様変更や追加作業に起因する作業工数の増大により実績が見積りを超えた場合、低採算又は採算割れとなる可能性があります。また、あらかじめ定めた期日までに顧客に対して作業を完了・納品できなかった場合には損害遅延金、最終的に作業完了・納品ができなかった場合には損害賠償請求が発生し、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。アイビスはプロジェクト管理の徹底や各事業部責任者によるモニタリングを実施することで、リスクの早期発見、対策をしております。
⑧ 風評に関するリスクについて(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスは、アイビスの製品やサービスに対する悪質な風評がインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合、速やかに適切な対応を図ってまいりますが、それが正確な事実に基づくものであるか否かにかかわらず、アイビスの社会的信用が毀損し、アイビスの事業、業績に影響を与える可能性があります。
⑨ 待機工数について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスソリューション事業のIT技術者派遣においては、システムエンジニア等のITエンジニアと無期雇用契約を締結しております。そのため、これら派遣技術者に係る人件費は派遣先での稼働時間に関係なく発生し、固定費として売上原価に計上されます。経済状況の変化等に伴い、顧客の情勢が劇的に変化し、労働力に対する需要が減少した場合は、派遣技術者の稼働率、稼働単価の低下等により相対的に原価率が上昇し、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。アイビスは取引先との長期・安定的な取引関係を構築し、顧客の多様化を図ることで外部環境に左右されづらい収益構造の構築に努め、顧客からソフトウェア投資計画や技術者需要を確認することで待機工数の最小化に努めてまいります。
(3) 法的規制に関するリスク
① 法的規制(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
アイビスが行う事業では、主に不正競争防止法、不当景品類及び不当表示防止法、著作権法、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)等の法的規制を受けております。特に、労働者派遣法においては、偽装請負に巻き込まれる等の何らかの理由により、同法に定める派遣元事業主としての欠格事由(労働者派遣法第6条)に該当した場合や当該許可の取消事由(同第14条)に該当した場合に、IT技術者派遣事業の全部又は一部の継続が困難となる可能性があります。また、法令等の改正・制定等により新たな制約を受けるリスクや既存の制約が強化されるリスクがあります。アイビスでは関連する法令等の情報を適時収集し、定期的な内部監査やコンプライアンス研修により法令順守に努めているものの、これらのリスクが顕在化した場合は、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、アイビスの提供する「ibisPaint」は、海外売上比率が高く、GDPR(注1)、CCPA(注2)等の国内外の個人情報に関する海外の法的規制等を受けております。アイビスではEU代理人、DPO(注3)の設置及びアプリ内での同意画面の実装等を行い対応しておりますが、海外の法的規制内容の変更があった場合には、想定どおりに事業展開できない可能性があり、アイビスの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注1):「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)の略称。
(注2):「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(CCPA:California Consumer Privacy Act)の略称。
(注3):「データ保護責任者」(Data Protection Officer)の略称。
② 知的財産権について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスは所有する知的財産権を管理し、その権利を保護することによって社業の発展と業績の向上に努めておりますが、当該権利を第三者により侵害される可能性や何らかの理由により知的財産の権利化ができない可能性があります。一方で、アイビスが第三者の知的財産を侵害した場合には、損害賠償請求や使用差し止め請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらのリスクが顕在化した場合は、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。アイビスは「知的財産権管理規程」を定め、知的財産権の管理及び権利化を行うとともに、権利化に際しては特許事務所等を利用して他社の知的財産権を侵害する恐れがないか事前調査することでリスクへ対応しております。
③ 請負契約に基づく契約不適合責任について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
アイビスソリューション事業の受託開発における契約形態のうち、請負契約につきましては、設計・開発を請負って完成すべき業務の遂行や成果物に対して対価を受領しており、請負契約で完成すべき業務や成果物に係る契約不適合責任等の追及を受ける可能性があります。アイビスでは契約不適合責任等に係るリスクを軽減するために、履行割合型準委任契約での業務受託を推進するほか、請負契約上の個別契約(注文書)において、完成すべき業務や成果物の仕様、検収方法を明確に定義しております。しかし、当該リスクが顕在化した場合は、アイビスの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 組織体制に関するリスク
① 人材の確保及び育成について(顕在化の可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスが今後とも持続的に成長していくためには、市場動向の変化や技術革新に対応できる優秀なモバイルアプリ開発エンジニア、システムエンジニア等のITエンジニアや事業規模に適した内部管理体制を構築するための管理人材といったあらゆる職種での人材の質及び量の向上が不可欠であると認識しております。そのため、優秀な人材の確保と育成は、事業発展のための根幹と考え、アイビスとして必要な人材の定義を改めて明確化した上で、適時必要な戦力となる社員の採用を行い、育成してまいりますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定どおりの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定人物への依存について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビス代表取締役である神谷 栄治は、創業者であると同時に「ibisPaint」を始めとするアイビスのモバイルアプリ開発において、創業以来重要な役割を担ってまいりました。同氏はアプリ開発を中心に豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略、新規開発において重要な役割を担っております。アイビスは取締役及び従業員への情報共有や権限委譲、組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、万が一、同氏に不測の事態が生じ、アイビスの経営執行を継続することが困難となった場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報管理について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスはモバイル事業においてアプリ利用者の個人情報を取得する場合があります。アイビスに起因する問題により個人情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、企業イメージの悪化、損害賠償請求の発生等の可能性があります。また、第三者の故意又は過失その他の事由により、アプリサービスの核となるソースコード等の機密情報が流出、模倣等された場合、アイビスの開発するモバイルアプリの優位性が損なわれる可能性があります。
ソリューション事業においては顧客が保有する各種機密情報、新製品開発等の設計に係る重要な情報を取り扱う場合があります。アイビスに起因する問題により顧客機密情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、取引解消請求、損害賠償請求の発生等の可能性があります。
アイビスは情報統括管理者を選定し、情報システム・セキュリティに関する規程類の整備運用を行っている他、プライバシーマーク制度に基づく個人情報保護マネジメントシステムの運用等により情報管理を徹底しているものの、リスクが顕在化した場合は、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ システム障害について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスの事業はスマートフォンやPC、コンピューターシステムを結ぶネットワークに依存しており、インターネットを利用したサービスを提供するにあたっては、バックアップ体制の構築等の様々なトラブル対策を実施しております。しかし、自然災害や不慮の事故等によって、これらのネットワークが正常に機能しなくなった場合は、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 内部管理体制について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
アイビスは企業価値の持続的な拡大にはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底するため、管理部門の人員の充実及び内部管理体制の強化に努めております。しかし、事業の急速な拡大や事業内容等の変更により、事業規模に適した内部管理体制の構築、管理人材の確保及び育成が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、アイビスの事業に影響を及ぼす可能性があります。
(5) その他のリスク
① 自然災害、事故等について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスは自然災害、事故等に備え、定期的にシステムのバックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかし、アイビス所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、アイビス設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生し、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 感染症の拡大について(顕在化の可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
アイビスでは、新型コロナウイルスをはじめとする感染症の流行に備え、従業員の健康と安全の確保を最優先に感染防止対策を徹底しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症の蔓延などにより、長期にわたって人々の行動に制限が課され、経済状況が悪化した場合には、アイビスの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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