レジルグループは、レジル及び連結子会社(中央電力ソリューション株式会社及び中央電力エナジー株式会社)の計3社で構成されており、主にマンション向けに受変電設備設置による電力供給を行う分散型エネルギー事業、法人の脱炭素化支援や電力供給を行うグリーンエネルギー事業、電力会社等のエネルギー企業の後方業務のDXによる業務改革支援を行うエネルギーDX事業を主な事業として取り組んでおります。
各事業セグメントの内容並びにレジル及び関係会社との関連は以下のとおりであります。なお、以下に示す事業区分は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に掲げるセグメント情報の区分と同一であります。
1.事業内容について
(1)分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業は、「マンション一括受電サービス」を主力サービスとして展開するほか、それに付随して発生するマンション顧客に対する各種サービス(その他サービス)を提供しております。
なお、当該事業は、将来において、後述の「マンション防災サービス」にて設置・展開する太陽光発電設備及び蓄電池設備等の「分散型電源設備」を集約・ネットワーク化することによる事業展開も中長期視点で志向した事業を推進しております。
①マンション一括受電サービス
マンション内に地域電力会社が設置する受変電設備をレジルグループにて入れ替えることで、マンション単位で商業ビル同様に高圧の電力を調達し、レジルグループが設置した受変電設備にて一般家庭向け低圧電力に変換し、マンション各世帯や共用部分等へ電力を供給しております。
当該サービスを適応しないマンションは、各世帯が低圧電力の電気料金を支払っている一方、当該サービスはマンションの各世帯等に高圧料金を基にした電気料金を提供し、地域電力会社から各世帯(専有部分)及び共有部分が低圧電力を受電する場合と比較して、マンション全体での電気料金削減を可能とする仕組みであります。
本仕組みによる電気料金の削減メリットを原資(割引原資)として、マンション各世帯や共用部分に各地域の大手電力会社の料金をベースとした割引率という形で還元を行っております。
<マンション一括受電サービスにおける電力供給の流れ>
(サービス導入にかかる初期投資は不要であること)
一括受電サービス(及び後述のマンション防災サービス)は、顧客のサービス利用にあたっての初期投資を不要とし、必要な設備はレジルグループの資産として保有、電気料金としてサービス料金を回収するモデルを構築しております。
顧客マンションへのサービス導入には、マンション管理組合の総会決議に加えて、全世帯によるサービス利用申込が必要となるものでありますが、初期投資が不要であることを訴求することにより、顧客のサービス導入における意思決定のハードル引下げを図っております。
(長期契約に基づくストックビジネスであること)
当連結会計年度末時点におけるサービス利用顧客は、2,245棟(178,502戸)であります。当該サービスは顧客マンションごとに設備機器を調達・設置することから、導入に際しては10年又は15年間の長期契約を締結(期間終了後は2年又は3年ごとの更新)しております。また、上記期間を経過した顧客を含めて、2004年11月のサービス開始以降における解約実績は1棟のみとなっており、長期に及ぶ安定収益を確保するストックビジネスを構築しております。
なお、レジルグループの過去5期間におけるサービス提供顧客数の推移は以下のとおりであります。
(「マンション防災サービス」の推進)
レジルグループは、「マンション一括受電サービス」を基盤とし、マンション一括受電サービスにおいて設置する高圧受変電設備等に加えて、割引原資を太陽光発電及び蓄電池等の分散型電源設備の設置に充当することにより、平常時における電力供給のみならず災害発生に起因する停電時等においても電力供給を行う「マンション防災サービス」を2023年4月より開始し、現在は本サービスの営業活動に注力しております。
当該サービスは、設備等は自社保有とし、顧客より受領する電気料金により当該コストを回収する仕組みであり、顧客に対してはマンション一括受電サービスの高付加価値サービスとして提供していく予定であります。
なお、レジルグループは、当該サービスを今後の新規顧客獲得の中心と位置付けておりますが、募集開始から間もないこともあり、当連結会計年度末時点において、サービス開始に先行して蓄電池設備を実証導入した2棟(172戸)を除き、顧客マンションに対するサービス提供は開始されておりません。
②その他サービス
マンション一括受電サービスの提供顧客向けに提供する各種サービスであり、マンション内の各種電気設備の改修工事(レジル保有設備を除く)、ガスの小売販売及び取次販売、他社サービス(掃除代行、インターネット回線等)の紹介等であります。
<分散型エネルギー事業の事業概要>
分散型エネルギー事業では、レジル向け電力調達及び顧客マンションへの電力供給等のサービス提供について、中央電力エナジー株式会社がその電力調達の一部を、中央電力ソリューション株式会社がレジル設備(受変電設備等)の設置工事・保守・点検等の業務をそれぞれ行っております。
(2)グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業は、再生可能エネルギーを中心とした電力小売サービスを展開しております。当該事業においては、主にレジルが電力の調達及び顧客に対する電力供給(販売)を行っておりますが、一部調達及び供給は中央電力エナジー株式会社にて同様に実施しており、特に電力調達主体を2社体制とすることにより、効率的かつ良好な条件での調達に努めております。
①電力小売サービス
主に中小企業を対象とした電力供給サービスであり、外部調達した電力を大手電力会社と比較して廉価にて顧客へ供給(販売)しております。レジルグループにおいては、顧客の多くを占める関西エリア及び関東エリアを中心に全国(沖縄県を除く)にてサービスを展開しております。
顧客企業等に対しては、高圧電力、低圧電力及び特別高圧電力を提供しております。主力と位置付ける高圧電力にかかる料金体系については、大手事業者の標準的な料金体系に準拠した「固定型料金プラン」(電力量単価(従量部分)が固定)及び電力量料金が電力卸取引市場(JEPX)の取引価格に連動する「市場価格連動型料金プラン」の2つの料金プランを設定しており、顧客ニーズに応じて提供しております。
また、レジルグループの分散型エネルギー事業のマンション向けの電力調達の一部についても本事業にて実施しております。夜間に電力を多く利用する傾向のマンションのまとまった需要と、昼に電力を多く利用する傾向の法人企業の需要を組み合わせることで、安定的な電力調達を図っております。
(最適な電力調達の推進)
レジルグループは、電力調達先である電力事業者との取引等を通じた関係強化を図り、安定調達及び有利な調達条件の確保に努めております。また、複数の電力会社や発電事業者等の異なる調達先を確保することにより、多様な電力需要及びその変化に柔軟に対応する調達体制を構築しております。
価格変動リスクの高い市場調達への過度な依存を避け、良好な条件による固定調達契約により必要量を確保していくことを基本としており、卸電力取引所(JEPX)からのスポット調達等を含めて様々な電力調達を組み合わせた最適化を図っております。なお、電力の調達エリアと電力の供給を受ける顧客の属するエリアが異なる場合には、電力卸取引市場において一旦調達したエリアで売却した上で、供給先となるエリアで電力を購入し供給することとなります(当該取引を「間接オークション取引」といいます)。当該取引は会計上、売上高及び売上原価の双方に計上されております。
また、近年サービスに占める割合が上昇している「市場価格連動型料金プラン」向けの電力調達は、卸電力取引所より調達することを基本とし、レジルグループにおける電力価格変動リスクの低減を図っております。
(再生可能エネルギーの取扱い拡大)
レジルグループは、法人小売サービスにおいて供給する電力について、将来的には「非化石証書(※1)」購入により全量を再生可能エネルギーとする方針であります。顧客契約時の同意に基づく供給量について同証書を調達しており、2024年6月期末時点における割合は82.5%(契約数ベース)であります。
(※1)非化石電源で発電された電力が持つCO2を排出しないという環境価値部分を分離して取引ができるように証書化したもの
②自己託送支援サービスからの撤退
レジルグループは、マンション一括受電サービス向けの電力調達及び外部顧客向けの再生可能エネルギー電力供給を目的として、2021年10月に三菱HCキャピタル株式会社との合弁により合同会社リネッツ(現:MHCリニューアブルネットワークス株式会社)を設立し、サービスを提供しておりました。しかし、外部環境変化による採算悪化が想定される状況が生じたため、2023年12月にレジル出資持分の譲渡により合弁を解消し、既に設置済みの設備についての合同会社リネッツ(現:MHCリニューアブルネットワークス株式会社)との取引は継続するものの、外部顧客向け自己託送支援サービスからは撤退しております。
(3)エネルギーDX事業
エネルギーDX事業は、主にエネルギー業界の事業者向けの業務受託サービスを提供しております。自社設備の保安・点検業務のリソースを活用した「電気保安管理サービス」及びレジルグループの分散型エネルギー事業やグリーンエネルギー事業のために開発したシステムや業務フロー等をBPaaS(Business Process as a Service、通称:ビーパース)(※1)形態により顧客企業に提供する「DX支援サービス」を展開しております。
当該事業においては、レジルが顧客に対するDX支援サービスの提供を、中央電力ソリューション株式会社が顧客に対する電気保安管理サービスの提供を、それぞれ実施しております。
(※1)BPaaS(Business Process as a Service)とは、Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス。サービス提供事業者側で稼働しているソフトウェアを、インターネット等のネットワークを経由して、ユーザーが利用できるサービスのこと。)における“ソフトウェア”が“ビジネス・プロセス”に置き換わっており、業務プロセスそのものを提供するサービスを指すもの
①電気保安管理サービス
顧客となる一括受電事業者(同業)、電気設備保安事業者及び一般事業者より、高圧受変電設備等の電気設備の保安・点検業務等を受託しております。顧客が設置する電気設備について、法令及び保安計画に基づく定期(年次・月次)点検等を実施しており、点検結果等の経年履歴をデータベース化により設備更新計画の策定を含む最適な設備管理を実施しております。
なお、電気設備の保安業務については、高圧電気利用地点毎に主任技術者(有資格)を選任する必要があり、業務実施においてはレジル在籍技術者による形態及び外部技術者(個人事業主等)の仲介形態があり、後者は中央電力ソリューション株式会社において、外部技術者より顧客に対する料金請求や顧客窓口等の業務を受託しております。
②DX支援サービス
エネルギー関連企業を主たる顧客として、料金請求・収納代行業務や問合せ・コールセンター業務等の各種後方業務にかかる業務受託サービスを提供しております。
当該サービスは、レジルグループの業務運営を通じて構築した業務オペレーションやシステムツール(料金計算システムや顧客管理システム等)をBPaaS(Business Process as a Service)形態で提供するほか、顧客業務内容及び課題等に応じた業務効率化や改善等にかかるコンサルティングも実施しております。
当該サービスにかかる対価は、顧客企業のエンドユーザー数やレジルグループが提供する席数(人員数)に応じて決定しております。顧客企業がサービス拡大した場合にはレジルグループの収益の拡大にも繋がる仕組みとなっております。
レジルグループ全体の事業系統図は以下のとおりであります。
分散型エネルギー事業では、レジル及び中央電力エナジーが顧客に対して電力の供給を行っております。グリーンエネルギー事業では、レジル又は中央電力エナジーが電力調達を行い、顧客に電力を供給しております。エネルギーDX事業では、レジルがDX支援サービスを顧客に対して行っているほか、中央電力ソリューションが電気設備保安サービスを提供しております。
また、セグメント間の内部取引として、分散型エネルギー事業に対して、グリーンエネルギー事業は調達した電力の一部を供給し、エネルギーDX事業は保安サービスを一部提供しております。
文中の将来に関する事項は、提出日現在においてレジルグループが判断したものであり、経済情勢その他の外部環境の影響を受ける可能性があることから、その達成を保証するものではありません。
今日、地球温暖化による過酷な気候変動や食糧危機、南北に留まらない格差の拡大等、世界規模での社会課題に我々はさらされております。そういった社会課題を解決する人々・主体の結束点となり、志を同じくする人々と協力しつつ一丸となって社会課題を解決する企業となることを目指し、レジルグループは「結束点として、社会課題に抗い続ける」をパーパスとして、またミッションに「脱炭素を、難問にしない」を掲げ、気候変動問題への対応やカーボンニュートラル社会の実現を機会と捉えた事業展開を進めております。
(2) 経営環境
世界のエネルギー市場においては、2015年の「パリ協定」採択を契機とした環境意識の高まりと、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換あるいは脱炭素に向けた動きがより一層加速しております。機関投資家は欧米のみならず我が国においても「ESG投資」に多額の資金を振り向けており、企業側にとってはESGによる事業機会・リスクの整理と対応への取り組みの重要性がますます高まっております。その中でも自社消費電力の再生可能エネルギー調達へのシフトは、RE100(※1)参加企業等の一部の大企業のみならず、サプライチェーンに関連する多くの企業にとっても、既に最重要課題と位置付けられております。その一方、森林面積の多い我が国では太陽光発電の適地が不足し、また、電力需給のギャップにより再生可能エネルギーの出力制御が増加する等、新たな問題も顕在化しています。
レジルグループの事業領域であるエネルギーの分野においては、国内では2000年の特別高圧、2004年・2005年の高圧、2016年の低圧と段階的に小売の自由化が図られ、新規参入事業者を含めた激しい市場競争が続く中、世界的エネルギー価格の上昇、電力需給の逼迫にウクライナ情勢の悪化等が拍車をかける事態となり、2021年頃からは国内で小売電気事業者が相次いで破綻する等の混乱が生じました。現在ではエネルギー価格の上昇は落ち着きを見せておりますが、世界的なインフレ傾向や急激な円安により、先行きが不安定かつ不透明な状況が続いております。
また、世界規模で異常気象が発生するだけなく、国内においても地震や異常気象による風水害等が全国で自然災害が頻発しております。加えて感染症対策やその可能性が危惧される首都直下地震等の不確実性のリスクに対する関心も高まっており、非常時においても事業を継続し、迅速に復旧するための事業継続計画(BCP)の策定・運用等が急務となっております。また、我が国におけるエネルギー安全保障の観点においても、自給率の向上や再生可能エネルギーを含むエネルギー源の多様化、備蓄の拡大等への継続対応が求められております。
このような変化が激しく厳しい事業環境は一方で、レジルグループが展開する各事業や提供サービスへのニーズ向上にもつながるものであり、レジルサービスにより再生可能エネルギーの導入や脱炭素の推進、また災害対策によるレジリエンスを実現する等、これらの社会課題の解決や社会的要請に取り組むことでビジネスチャンスに変えることができると考えております。
(※1)RE100…企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブのこと
(3) 経営戦略等
レジルグループはこうした経営環境を踏まえ、安定的で安価かつ脱炭素効果の高いエネルギーの安定供給やレジリエントなエネルギー需給構造への転換を支えるべく、「分散型エネルギー事業」、「グリーンエネルギー事業」、「エネルギーDX事業」の3つの事業が密接に連携したポートフォリオで事業活動を展開しております。
主力事業と位置付ける分散型エネルギー事業は、20年来の主力商材である「マンション一括受電サービス」で培われた顧客ストックの積み上がりから長期安定収益の獲得を実現するレジルグループの事業基盤となっております。レジルグループは、当該サービスが創出する安定的なキャッシュ・フローを原資として、成長領域と位置付ける「DX支援サービス」(エネルギーDX事業)、あるいは分散型エネルギー事業において今後の主力商材と位置付ける「マンション防災サービス」等の新規サービスへ投資・リソースを傾斜配分することにより、安定的な収益源の維持及び成長領域への投資の両輪による事業規模の拡大を目指しております。
また、事業展開においては、「分散型エネルギー事業」及び「グリーンエネルギー事業」における電力調達及び供給をコア領域として、発電事業者や送配電事業者との関係を構築し、約2,200棟のマンション顧客及び約7,500契約のビル・工場等の法人顧客を確保するほか、再生可能エネルギー発電への取り組みも進める等、電力サプライチェーンの強靭化・高度化に努めております。加えて、エネルギーDX事業では、これまでの事業活動の中で培った知見やシステムを活用し、他のエネルギー事業者等へのBPOサービス提供等、業界における独自のバリューチェーンの構築及び拡大も図っております。更に今後は「マンション防災サービス」の導入拡大によって獲得される電力を基盤とした分散型電源システムの構築及びこれら分散型電源の需給調整領域への展開も構想しており、更なるバリューチェーンの延伸による継続した事業成長と脱炭素社会の実現を目指していく方針であります。
レジルグループの上記の経営環境を踏まえた、各事業セグメントにおける重要な戦略は以下のとおりであります。
①分散型エネルギー事業
分散型エネルギー事業は、これまでレジルグループの基幹事業としてマンション一括受電サービスの導入を図るべく、顧客ターゲット層である修繕積立金の不足に係る問題をかかえるマンション管理組合に対しての電力料金削減の提案のほか、主要なマンション管理会社を通じたアプローチを行うことにより着実な新規獲得を実現してまいりました。
2022年時点の高圧一括受電化されているマンションの戸数は約78万戸と認識しており、この中でレジルのシェアは22.7%程度となっております。(富士経済「2023 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態調査」資料より。事業規模、シェアともに2022年度予測値。)
今後も安定した電力の供給や各種サービスの提供及びそのサービス品質向上等による顧客の信頼性向上に努め、解約抑止を含む顧客ストックの安定性の維持・確保を推進する方針に変更はありません。
また、(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に記載の他社の高圧一括受電提供物件にかかる引継ぎ又は譲受が見込まれる場合には検討を進めていく所存です。
他方、足元の国内の防災意識の高まり等を踏まえ、防災機能をもたないマンションに対して災害発生に伴う停電時の電力供給等の付加価値を訴求すべく2023年4月より「マンション防災サービス」の販売活動を開始し、現在注力しております。
このサービス導入により、当該事業における潜在顧客ターゲット層は、これまでの一括受電サービスに係る全国のマンション世帯数694万戸に修繕積立金不足率である34.8%(全国のマンション世帯数は国土交通省「令和4年(2022年)度マンション総合調査」より。修繕積立金不足率は国土交通省「平成30年(2018年)度マンション総合調査」より。)を乗じた数である約250万戸から694万戸全体へと拡大することとなり、今後も成長の余地があるものと見込んでおります。
当該サービスのターゲットは20世帯以上のマンションでありますが、東京エリアにおいては太陽光設備及び蓄電池設置導入にかかる補助金活用が期待できることから、主に分譲後間もない築浅マンション物件を対象とした新規獲得を、関西エリアにおいては、レジル一括受電サービスの導入済マンションを主たる対象に営業活動を展開していく方針であります。
なお、レジルグループにおける将来的な構想として、マンション防災サービスの導入数が一定規模に成長した際には、レジルグループが設置する受変電設備や太陽光発電設備、蓄電池設備等の分散型エネルギー設備をネットワーク化し、再生可能エネルギーの調達と組み合わせたVPP(Virtual Power Plant)(※1)を構築することにより、電力の安定化に貢献するサービスへの展開を目指しております。
(※1)VPP:仮想発電所。地域内の複数の分散型エネルギーリソースを、情報通信技術を活用しひとつの発電所のように統合・制御し、電力の需給バランスを調整する仕組みのこと
②グリーンエネルギー事業
a)電力小売サービス
電力小売サービスは、競合が激しい事業領域であります。近年はエネルギー価格高騰の影響により一時的に沈静化の傾向を示しておりましたが、現在は電力価格も落ち着きを見せつつあり、今後において事業者間競争は継続していくものと考えております。
当該環境下において、レジルグループは過度な価格競争を回避することを基本としつつ、顧客ニーズに対応した「市場価格連動プラン」等の商材を主体とした営業活動を展開していく方針であります。これらの事業方針に起因して、レジルサービスの事業拡大に制約が生じる可能性があるものの、一定の利益確保を前提とした事業展開を推進していく方針であります。
また、レジルグループは再生可能エネルギーの取り組みとして、2030年までに電力小売サービスにおける顧客への電力供給における再生可能エネルギー比率を100%とする目標を掲げており、顧客理解の向上を含めてこれを推進していく方針であります(2024年6月期末の当該比率(契約数ベース)は82.5%であります。)。
③エネルギーDX事業
a)電気保安管理サービス
「電気保安管理サービス」については、全国的に高圧受電設備等の保安を担う人材の不足が生じており、今後もレジルグループにおいて一定の受注機会が継続して生じるものと考えております。
レジルグループにおいては、サービスの品質向上に努め、既存顧客における受託契約数の拡大を図るとともに、「DX支援サービス」との連携による事業サービスの展開に注力してまいります。
b)DX支援サービス
「DX支援サービス」は、エネルギー関連企業を顧客対象としており、当連結会計年度末において11社(新電力事業者、一括受電事業者及びLPガス事業者等)との継続取引があります。
顧客であるこれらエネルギー関連企業においては、資源高に伴う電力価格高騰等の影響から新規顧客獲得数の鈍化傾向が生じておりましたが、外部環境の落着きから顧客獲得活動も再度強化されつつあり、当該サービスの収益のベースとなる顧客企業のエンドユーザー数や業務量等の拡大が期待されております。
また、エネルギー関連企業の後方業務のDXの流れは今後も継続すると考えており、レジルグループにおいては、既存顧客に対する業務受託範囲の拡大や、新規顧客獲得を推進することで事業サービスの成長を図っていく方針であります。
(4) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
レジルグループは、事業を継続的に発展させていくためには、収益力を高め、適正な利益確保を図っていくことが重要と認識しており、売上高、営業利益及び経常利益等の各業績指標の管理に加えて、以下項目を重要な経営指標として位置付けております。各指標項目の概要等は以下のとおりであります。
①分散型エネルギー事業
(マンション一括受電サービス:「サービス導入棟数・戸数」)
「サービス導入戸数」は、分散型エネルギー事業の事業基盤となる要素であります。なお、「戸数」は、サービス導入マンションの契約数(空室等による未稼働を含む)を記載しております。
(マンション防災サービス:「サービス導入棟数・戸数」 )
現在、当該サービスの事業立ち上げに注力しておりますが、サービス開始前に先行的に蓄電池を導入した2棟を除き、当連結会計年度末においてサービス導入に至った実績はありません。
なお、顧客マンションへのサービス導入までのプロセスにおいては、顧客提案、管理組合理事会の承認、管理組合総会の決議、契約締結及び対象マンション全世帯のサービス申し込みにより受注に至りますが、サービス開始後から当連結会計年度末にいたるまでの受注実績は3件であります。
②グリーンエネルギー事業
(電力小売サービス:「契約数」 及び 「再生可能エネルギー比率」)
「契約数」は、レジルグループが供給する低圧・高圧・特別高圧の各電圧区分の契約数(同一顧客の複数事業所を含む)の合計であります。
「再生可能エネルギー比率」は、上記供給中契約数に占める再生可能エネルギーによる電力供給件数の比率であります。レジルグループは非化石証書の調達により顧客への再生可能エネルギー供給を実現しております。顧客との契約締結時(更新時含む)時における合意に基づき「再生可能エネルギー」による電力供給を行い、対象となる電力量を考慮して非化石証書を取得しております。
③エネルギーDX事業
(DX支援サービス:「顧客企業のエンドユーザー数」)
DX支援サービスは、受託する業務量に応じた対価を受領するため、顧客企業のエンドユーザー数又は提供座席数に契約単価を乗じた金額を受領しております。「顧客企業のエンドユーザー数」については、エンドユーザー数が料金の根拠となるものについてはその数を、提供座席数等が料金の根拠となるものは顧客企業からの取得情報(千件単位)を記載しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①分散型エネルギー事業における営業体制の再構築
分散型エネルギー事業においては、マンション防災サービスのサービス立ち上げを契機として、顧客営業体制の強化を実施しており、人員の拡充に加えて、営業推進手法の拡充、展示会やセミナー等による集客強化、エリア別の営業方針に基づく活動等のマーケティング面を強化すること等により、マンション一括受電サービスの顧客獲得及びマンション防災サービスの事業立ち上げを推進していく方針であります。
②他社の高圧一括受電提供物件にかかる引継ぎ又は譲受の検討
レジルグループは、当連結会計年度において、他事業者からの要請を踏まえて高圧一括受電サービス提供顧客(13棟:1,121戸)について引継ぎを行っております。
また、レジルグループが属する業界の一部において、近年における電力価格高騰等による混乱等を踏まえ、高圧一括受電サービス事業又はその顧客等について第三者への引継ぎ又は譲受等を模索する動きが生じているものと認識しております。レジルグループは、それらの動向について事業サービス拡大の機会と捉えており、今後において対象案件の情報収集や発掘を行うとともに、機会があればその取得(引継ぎ又は譲受等)について慎重に検討を行っていく方針であります。
また上記と異なる取り組みではありますが、当連結会計年度において、営業活動における顧客マンションからの引合いにより、他事業者の高圧一括受電サービス提供顧客(15棟:1,445戸)を自社顧客として獲得しており、今後も顧客ニーズに応じた対応を進めてまいります。
③DX支援サービスにおける受託業務の拡充
レジルグループは「DX支援サービス」において、既に提供する受託サービス領域(料金計算、請求及びコールセンター業務等)に加えて、レジルグループの業務ノウハウ等に基づく受託サービス領域の拡大を検討しております。これらの取り組みを通じて既存顧客との取引拡大及び新規顧客開拓を行うことにより事業拡大を図っていく方針であります。
④事業間シナジーの高度化
レジルグループは、各事業における経営資源(業務オペレーション及びノウハウ・業務システム・顧客ストック・その他)について、他事業と共有・活用することにより事業拡大を図っております。具体的には、a)分散型エネルギー事業及びグリーンエネルギー事業とエネルギーDX事業間における自社業務オペレーションやシステム等の外部顧客向けサービスへの展開(電気保安管理サービス及びDX支援サービス)、b)グリーンエネルギー事業と分散型エネルギー事業間における電力調達業務集約による業務効率向上及びコスト低減、c)各事業サービスのクロスセル拡大や顧客紹介等、事業間におけるシナジーを発揮することにより事業成長に結び付けております。
引き続き、これらシナジーの高度化に向けた取り組みを加速させ、更なる事業成長を図ってまいります。
⑤ソフトウェア開発体制の強化
レジルグループにおいては、各事業運営において活用する、電力料金計算や請求管理、電力調達や需給管理、蓄電池制御等の各種システムについて、独自に開発及び構築を行っております。過年度における開発業務は主として業務委託先の活用により実施しておりましたが、当連結会計年度より自社エンジニアの採用強化を図り、開発業務の一部内製化を推進しております。
今後、専門性の高い人材の採用及び育成、社内における技術ノウハウの蓄積等に努めるとともに、業務委託先や特定分野において先端技術を有するパートナー企業と連携を図ることにより、システム開発の高度化及び柔軟性の確保に努めていく方針であり、事業サービス展開の強化に結び付けてまいります。
⑥人材の確保と育成
レジルグループは、電力供給サービスを主体とする事業展開において、電力調達や需給管理、顧客営業やマーケティング、業務受託サービス、業務用ソフトウェア開発から高圧電気設備の工事や保守等のハードウェアの分野までを含む各種領域において、業務オペレーションを実施しております。レジルグループの強みとなる専門性を高めて競争力を向上させるためには、優秀な人材の確保及び育成が重要と考えております。
人材採用については、レジルグループの軸となる人材の確保及び育成のために新卒採用を行いつつ、即戦力となる人材の中途採用を適宜行うことにより、継続的な事業成長を実現するための人員体制の構築を図ってまいります。
また、専門性の高い優秀な人材にとって魅力ある会社づくりを行うために、組織構成や人事考課制度の見直しを図るとともに、公正な評価基準設定と目標達成度に応じた評価及びフォローアップ、教育研修の充実等に取り組むほか、人材の育成面についても強化を図ってまいります。
⑦内部統制及びガバナンスの強化
レジルグループは、事業拡大に伴いレジルのステークホルダーが拡張する中で、持続的かつ健全な成長を果たすためには、レジル及び関係会社の内部統制及びガバナンス体制の一層の強化や、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化が重要であると考えております。そのような考えのもと、リスクマネジメント委員会の設置運営による事業運営上のリスク管理を図るとともに、定期的な内部監査の実施や、社外取締役を含めた監査等委員会による監査の実施等によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等を図ってまいります。
⑧コンプライアンス対応
レジルグループの事業は、規制業種として各種法令の規制を受けるとともに、事業運営の上でも「個人情報保護法」をはじめとする各種規制を受けております。レジルグループでは、法令、定款及び社内規程等の遵守は勿論のこと、日々の業務を適正かつ確実に遂行し、クリーンで誠実な姿勢を企業行動の基本とするために、コンプライアンスに関する最上位の規範としてコンプライアンスポリシーを定めております。また、レジルにおいては、コーポレートガバナンス本部長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置しており、当該委員会の充実を通じてコンプライアンス意識の浸透を徹底し、コンプライアンス管理体制の強化を図っております。
また、今後もコンプライアンス委員会の定期的開催、コンプライアンス憲章の制定及びコンプライアンス・プログラムに基づく活動と効果検証、並びに各種取引の健全性の確保及び情報の共有化等を通じ、トラブルが起きた際は再発防止策の策定等を行うことで更なるコンプライアンス意識向上に継続して取り組んでまいります。
⑨資金調達について
レジルグループは、マンション一括受電サービスにて獲得するキャッシュ・フローを事業成長領域へ投資することにより事業成長を目指しております。
将来において、マンション防災サービスの新規獲得が拡大する等、追加の資金調達等が必要となる可能性がありますが、その対応としては金融機関借入や株式市場からの資金調達のほか、プロジェクトファイナンスや資産流動化スキーム等も視野に入れた柔軟な資金調達を検討していく方針であります。
以下には、レジルグループの事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主要な事項について記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在においてレジルグループが判断したものであり、将来において発生する可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。また、レジルグループがコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。
レジルグループは組織全体での観点からリスクを管理することを目的に、リスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会の組織や運営に関しては、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
レジルグループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、レジルの経営状況、将来の事業についての判断及びレジル株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
(1) 法的規制について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:大)
レジルグループの事業は、いわゆる規制業種として、「電気事業法」、「建設業法」、「電気工事業法」及び「ガス事業法」等の特有の法的規制を受けており、また、事業運営においては、「個人情報保護法」、「下請法」、「景表法」、「特定商取引法」及び「不正競争防止法」等の規制を受けております。レジルグループは、法令等の改廃状況のチェック体制を構築し、関係する法令等の動向を注視する等、法的規制の遵守に努めております。
しかしながら、これら関係法令について、レジルグループの想定外の改正や新たな制定等が生じた場合、レジルグループの事業に制約が生じる又は対応のために多額の費用や時間を要する等の可能性があり、レジルグループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、将来において、レジルグループがこれらの法令等に違反する行為を行った場合には、違反の意図の有無にかかわらず、行政機関から行政処分や行政指導等を受ける可能性があり、万が一、レジルグループが取得している許認可等が取り消された場合は、レジルグループの事業展開や社会的信用、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、レジルグループが取得している主要な許認可等の状況は以下のとおりでありますが、本書提出日(2024年9月27日)現在において、当該許可の取り消しとなる事由に該当する事実はありません。
(2)エネルギー政策の動向について
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期、影響度:中)
レジルグループが事業展開するエネルギー分野においては、東日本大震災を契機として、再生可能エネルギー固定価格買取制度の創設、電力・ガス小売の全面自由化や送配電事業の法的分離の実施、ベースロード市場(※1)や容量市場(※2)の整備等大規模な改革が政府主導で行われており、近年においては、2020年における電気事業法及び再エネ特措法の改正により、電力データの活用促進や分散型電源の推進に向けたアグリゲーター事業者の法的位置付けの整理、計量法規制の合理化、再生可能エネルギーの買取価格の市場連動型(FIP制度)の導入、政府として150兆円超のGX(※3)投資を官民で実現していくため、国として20兆円規模の大胆な先行投資支援を実行する方針(GX実現に向けた基本方針)等が制定されております。
レジルグループの事業は、上記のとおり政府又は地域のエネルギー政策により影響を受けております。今後も2050年カーボンニュートラルに向けた環境配慮を含む施策の推進や、市場競争環境の公平性の強化及び市場活性化を促す目的から、各種制度変更等が進められる可能性があり、その動向によりレジルグループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、レジルグループでは政府または地域のエネルギー制度や施策に関する検討状況のレポートを外部の委託先より毎月取得する等、早期に情報を取得し対応策を検討できる状態を構築しております。
(※1)新電力と呼ばれる小売電気事業者が石炭火力・大型水力・原子力・地熱等の安定電源の電気を年間固定価格で購入可能とする市場。
(※2)実際に発電された電力量(kWh)を取引する「卸電力市場」ではなく、将来の供給力(kW)を確保するための市場。国内では2024年より導入された。
(※3)グリーントランスフォーメーション:化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のこと
(3) 電力価格の変動
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期、影響度:中)
レジルグループの電力調達については、主に複数の電力事業者(小売電気事業者、一般送配電事業者及び発電事業者等)との相対契約(固定)にて調達しており、一部は卸電力取引所よりスポット調達等を実施しております。電力価格は、原油・天然ガス等の資源価格(原燃料費)の動向、為替変動、季節や時間帯及び気候変動による需要動向、原子力発電所や太陽光発電等の稼働状況等、様々な要因によって変動しており、特に近年はロシア・ウクライナ情勢等に起因する国際エネルギー情勢を反映した資源価格の高騰により、電力価格の高騰が生じておりました。
レジルグループでは、上記の相対契約での調達に加え、顧客に調達価格に連動した料金で提供する等、多様な手段によりリスクの低減に努めております。今後においてレジルグループが調達する電力価格が高騰し、規制や競合その他の何らかの要因により販売価格への転嫁が困難となった場合、事業採算が悪化し、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 特定の電力調達先への依存について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:中期、影響度:中)
レジルグループの電力調達のうち、最大の取引先である関西電力株式会社が占める割合は2024年6月期においては37.79%であり、その依存度は高い状況となっております。レジルグループは、同社との間でレジルグループが電力需要家となる電力調達契約である「法人特約契約書」及びレジルグループが小売事業者となる卸電力調達契約である「卸電力売買契約書」の2形態の契約を締結しており、同社はレジルグループの安定調達先となっております。同社との取引については、大口需要家としての割引等の適用はあるものの、他の一般事業者と同等の条件であると認識しております。
レジルグループは、継続した取引等において同社との良好な関係を構築しているものと考えておりますが、今後において何らかの要因により同社からの電力安定調達が困難となった場合は、代替調達先の確保が必要となるほか、状況によっては電力調達コストの上昇等が生じ、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 非化石証書コストの上昇について
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループは、グリーンエネルギー事業(電力小売サービス)における調達電力の再生可能エネルギー比率の向上を進めており、当該取り組みにおいて非化石価値取引市場を通じて「非化石証書」を調達することにより「実質100%再生可能エネルギー電力」の調達及び供給を目指しております(2024年6月期末時点:82.5%)。
当該取り組みにより中期的に非化石証書を継続購入することとなりますが、中長期的にその調達コスト上昇が生じる可能性があります。当該状況が生じた場合は、顧客に再生可能エネルギーの必要性を提起し相応の費用負担を要請して行く方針でありますが、十分な価格転嫁が困難となる場合には事業採算が悪化し、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 電力需給管理について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループは顧客に対する電力供給について、一般送配電事業者を通じて行っており、送電線網の利用に際しては、レジルグループの電力調達量(供給)にかかる計画値と、顧客における使用電力量(需要)にかかる実績値を30分単位で一致させる義務(同時同量制度)を負っております。事前に送配電事業者に提出した需要計画と実際使用量に差異(余剰・不足)が発生した場合、差異にかかる「インバランス料金」を送配電事業者との間で精算する必要が生じることとなります(インバランス制度)。
レジルグループにおいては、年間計画に加えて地域毎の月次・週次・日時・時間帯別に気象情報や電力使用量の統計データに基づく需要予測を実施する等、電力需給管理の精度向上に努めております。また、天候変化等に伴う需要変化に対しては適宜の計画調整や追加市場調達等により差異解消に努めております。しかしながら、インバランス発生を完全に回避することは困難であり、気候変動その他何らかの要因による差異拡大や電力価格高騰による多額のインバランス料金が発生した場合、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 競合及び競争の激化について
(発生可能性:大、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループが事業展開をしている電力業界においては、2016年4月の電力小売全面自由化以降、多数の電力小売事業者(新電力)が参入し、家庭向け(低圧電灯)、法人向け(特高・高圧)ともに地域電力事業者からの切替数の拡大が図られております。レジルグループの事業は、これら事業者と競合が生じており、近年は電力価格高騰により事業者間の直接的な競合は小休止の状況にありましたが、電力価格が落ち着きを取り戻す中において、今後、事業者間競争が激化する可能性があります。
レジルグループの事業のうち、分散型エネルギー事業(マンション一括受電サービス)においては、長期契約を締結することにより既存顧客の解約の抑制が実現しておりますが、一方で競合事業者が多様な料金プランを展開していることに起因して、レジルグループの新規顧客獲得数は過年度と比較して鈍化しております。また、グリーンエネルギー事業(電力小売サービス)においては、比較的事業者間競争が生じやすい環境にありますが、レジルグループの取り組みとしては価格競争を行うのではなく、従来からの固定料金プランに加えて顧客ニーズに対応した市場価格連動プランの提供等による価格面以外による競争力確保に努めております。しかしながら、今後において競合環境が一層激化した場合には、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 解約について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:中期、影響度:大)
当連結会計年度末現在、分散型エネルギー事業(マンション一括受電サービス)において2,245棟178,502戸のマンションストックを有しております。当該サービスにおいては契約期間10~15年の長期契約を締結することにより、長期安定収益の確保を図っており、事業サービス開始以降、当初契約期間満了後も解約実績は限定的なものとなっております。
しかしながら、今後、顧客に対する訴求力の高い他社競合サービスの提供やレジルサービスに対する顧客満足度の低下等により解約が増加する事態が生じた場合、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) マンション防災サービスによる顧客獲得について
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:中期、影響度:中)
レジルグループでは、分散型エネルギー事業における新たな取り組みとして、マンション向けに蓄電池、太陽光発電、EV充電等の電気設備を設置し、日常生活の利便性に加えて大規模災害時等のレジリエンスの向上を図る「マンション防災サービス」を2023年4月にリリースし、募集活動を開始しております。
当該サービスは、「マンション一括受電サービス」が電気料金にかかる経済性等を訴求するものであるのに対して、災害時における電力供給等の防災対応にかかる付加価値を訴求するサービスであります。レジルグループは、顧客ニーズに応じたマーケティング及び営業活動を推進しておりますが、当連結会計年度末現在においては、募集開始より間がないこともあり、サービス開始前に先行的に蓄電池を導入した2棟を除き、サービス開始実績はありません。
レジルグループは、事業展開における注力領域としてサービス拡大を推進していく方針でありますが、顧客獲得活動において、上記の付加価値を反映した電気料金が設定されることへの抵抗感やマンション管理組合の総会決議及び全世帯同意が必要となること等がサービス導入の障壁となり、今後の分散型エネルギー事業全体の新規顧客獲得がレジルグループの想定どおりに進捗しない可能性があります。
(10) 他社からのサービス提供物件の譲り受けについて
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループは、2023年10月に他社が一括受電サービスを提供するマンション顧客(13棟/1,121戸)の引継ぎを行っております。当該引継ぎは、他社において顧客との契約を解消すると同時にレジルグループにて新たな契約を締結し、他社が設置する受変電設備等のみをレジルグループが取得する形態により実施しております。
レジルグループにおいては、他社のサービス提供顧客の引継ぎや事業譲渡等について打診を受ける場合があり、今後においては個別案件毎に適宜検討の上で当該引継ぎや事業譲受を実施する可能性があります。
実施に際しては、必要と考えられる調査や収益性判断を行うほか、対象顧客への十分な説明及び合意を得た上で実施する方針でありますが、事後的に何らかの瑕疵等が判明する又は顧客との関係が悪化する等、トラブルに発展する可能性があり、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 事業上のトラブル及びサービス品質等について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループの事業展開において、顧客マンションに受変電設備等の設備機器等を設置するほか、業務における顧客管理システムや料金計算・請求管理システム、電力需給管理システムを自社にて構築して業務オペレーションを行っております。また、一部システムについてはエネルギーDX事業における受託業務に活用しております。
これら設備機器や各種システムに不具合や人的ミスにより障害が発生した場合、電力供給を含むサービス提供の停止又は中断、料金誤請求その他のトラブルが発生する可能性があります。また、業務におけるオペレーション又はその管理体制の不備等に起因して、サービス上の瑕疵やその品質低下につながる可能性があります。そのためBCPプランの作成、データのバックアップや業務の標準化をおこなっておりますが、当該事象が発生及び頻発した場合には、事業サービスに対する信頼性低下等による顧客の離反等に繋がる可能性があり、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 情報管理について
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループは、分散型エネルギー事業におけるマンション居住者等の各種個人情報やグリーンエネルギー事業における法人顧客等の情報、エネルギーDX事業における顧客企業及び受託業務において取り扱う顧客情報等、多くの重要情報を取り扱っております。
レジルグループは、これら重要情報の適切な取り扱いを図るため、2018年1月にプライバシーマークを取得したほか、社内規程やマニュアル・基準等の整備、従業員に対する教育啓発、委託先管理の徹底等、情報セキュリティ対策の強化を推進しております。しかしながら、システム障害や従業員のミス又は故意により、又は外注先管理の不備等に起因して、重要情報等の流出・漏洩があった場合には、レジルグループの信用失墜や損害賠償請求等の発生により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 労働災害について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループの電気設備工事等の施工や保安管理業務において、人的ミスやその他の要因により労働災害等が発生する可能性があります。保安管理業務において月次で電気主任技術者の会議を実施し安全衛生に関する周知や情報交換を実施すること等により、事故・労働災害等の発生に努めておりますが、重大な労災事故が発生した場合には、補償等の費用発生やレピュテーションの悪化により、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 訴訟等について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループにおいて、提供サービスに関連して顧客、取引先及びその他第三者との間で予期せぬトラブルが生じた場合、訴訟に発展する可能性があります。サービス開始時の説明を徹底すること、網羅的にクレーム情報等を集約する等の仕組みを構築しておりますが、かかる訴訟の内容及び結果によっては、訴訟対応費用の発生や社会的信用の失墜等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点で継続中の訴訟等はありません。
また、レジルグループやサービス又は役職員に対して、否定的な風評等が拡大した場合には、社会的信用の低下等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 自然災害について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:大)
レジルグループの事業運営において、大規模な地震・津波、台風等の自然災害又は感染症の流行等により、レジルグループの設備や人材等が直接的な被害を受けた場合、又は電力調達先を含む取引先及びそのサプライチェーンに被害が生じた場合、レジルグループの事業運営影響を生じる可能性があります。そのためBCPプランの作成、データのバックアップ等の対策を図っておりますが、事象の規模によってはレジルグループの事業運営に重大な支障が生じる可能性があります。
(16) 経営成績について
レジルグループの分散型エネルギー事業(マンション一括受電サービス)及びグリーンエネルギー事業(電力小売サービス)の業績は、各期の気候変動(冷夏・猛暑、暖冬・厳冬等による気温変化等)に伴う電力使用量(電力販売量)の増減により影響を受けております。
電力使用量(販売電力量)は夏季及び冬季(現在の6月決算においては、第1四半期及び第3四半期が該当します)に増加する傾向があり、また、各四半期の売上高は、季節要因による電力販売量の変動に加えて、各期における気候変動や各時点の電力料金の動向等の要因により変動が生じております。一方で、利益面では、電力調達価格の変動やその他費用項目の増減等も複合的に影響しており、レジルグループの各期における四半期業績変動は必ずしも季節要因のみに連動して推移するものではありません。レジルとしてはこれらの変動要因を考慮した予算と余裕のあるキャッシュフロー計画を策定するとともに、必要に応じ機動的に資金を確保するための当座貸越枠を設定しております。
なお、レジルグループの最近連結会計年度3期分の四半期業績等の推移は以下のとおりでありますが、レジルグループの2023年6月期決算については、決算期変更を実施したことから15か月決算となっております。また、当該連結決算期においては、第1四半期に資源価格上昇を受けた電力調達価格の高騰に対して、燃料費等調整価格の上限設定により一部販売価格への転嫁が困難となったこと等から営業損失を計上するにいたりましたが、燃料費等調整価格の上限設定の撤廃を第2四半期に実施したことにより以降の業績は回復しております。
(単位:百万円)
※上記のうち2022年3月期及び2023年6月期の各四半期業績数値については監査法人の監査を受けておりません。
※上記販売電力量は、分散型エネルギー事業(マンション一括受電サービス)及びグリーンエネルギー(電力小売サービス)における顧客に提供した電力量の合計数値であり、販売電力単価は上記2サービスの売上高を販売電力量で除した平均値を記載しております。
※燃料費等調整額単価は、上記2サービスの売上高に含まれる燃料費等調整額分の合計額を、販売電力量(燃料費等調整額が発生しない市場価格連動型料金プランを除く)で除した平均値を記載しております。
(17) 有利子負債及び資金調達等について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:中期、影響度:中)
レジルグループは、主として分散型エネルギー事業におけるマンションに設置する受変電設備等の新設及び更新にかかる設備投資資金等の調達を目的として、金融機関借入等を実施しており、2024年6月末における連結総資産額に占める有利子負債(借入金及びリース債務の合計)の割合は24.16%の水準となっております。レジルグループにおいては、収益・支払それぞれのサイトを踏まえた余裕をもった流動性預金を確保することで本リスクに備えておりますが、今後において大幅な金利上昇等が生じた場合には金利負担の増加により、レジルグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
今後は「マンション防災サービス」にかかる太陽光発電や蓄電池設備を含めた設備投資資金について、そのサービス拡大に応じた資金需要が生じる可能性があり、一部は金融機関借入にて調達する可能性があります。
なお、将来において、レジルグループの企図する条件での資金調達に支障が生じた場合には、レジルグループの事業活動の制約要因となる可能性があります。
(18) 大株主との関係について
①中村誠司氏との関係について
(発生可能性:小、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:大)
レジル創業者である中村誠司氏は、2024年6月末において、同氏の資産管理会社であるTeam Energy GI株式会社の所有株式を含めてレジル発行済株式総数の57.19%を所有する大株主であり、今後も引続き大株主となる見込みであります。
同氏は、資産管理会社を通じて、レジル以外にも複数社の事業会社に対して資産管理会社を通じた出資を実施しているほか、一部出資企業については直接の経営関与を行っております。レジルグループは、同氏が出資する各企業とは独立した経営を行っており、今後も原則としてそれら企業との取引は行わない方針であります。
なお、同氏はレジルグループの経営に関与する意向はない旨を示しており、レジルグループにおいても、経営及び事業運営における同氏からの特段の指示、報告又は承認事項等は生じておらず、自ら経営責任を負った事業経営を行っております。レジルグループは、同氏との間で現在と同様の良好な関係を維持していくことで合意しておりますが、同氏は大株主としてレジル株主総会における取締役の任免等を通じてレジルグループの経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、同氏の利益はレジルの他の株主の利益と一致しない可能性があります。
②ふるさと熱電株式会社に対する出資について
(発生可能性:大、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:小)
レジルは、中村誠司氏及びTeam Energy GI株式会社が株式の62.81%を保有し、同氏が取締役を務めるふるさと熱電株式会社に対して、一部出資(5%)を行っております。
同社は、九州地域において地熱発電事業等を行う企業であり、過年度において同社再生可能エネルギー電力にかかる協業等を目的として、レジルが同社株式の20%を保有する関連会社としておりましたが、2024年6月期末現在、協業関係及び資本関係解消のため関連当事者関係解消のため同社株式を段階的に売却することとしております。現在保有する株式(5%)についても、今後第三者へと売却する方針です。
なお本書提出日時点において、一部株式保有以外に同社との事業上の関係はありません。
(19) 人材確保
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期無し、影響度:中)
レジルグループは、今後における事業体制の一層の強化を図るため、優秀な人材確保を図っていくことが重要であると認識しております。また、事業の持続的な発展のためには、継続的かつ一定数の人材確保と技術・知見の継承が不可欠であると考えております。
しかしながら、レジルグループが必要とする優秀な人材確保が計画どおりに進展しない場合や人材確保にかかる費用増加が生じた場合、また、既存人材の育成が図られない場合や社外流出が生じた場合、レジルグループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント等の労務関連リスクも社会問題化する中、レジルグループにおいては、管理体制の強化に加え、研修の実施等を通じた従業員のコンプライアンスモラル醸成及び働きやすい職場環境の整備に努めております。レジルグループのこれら施策について十分な効果が生じなかった場合、事業運営に支障が生じる可能性があります。
これらのリスクに対応するため、人材の確保では企業認知度の向上に資する施策を行っております。また、人材育成では多様な研修企画を実施し、社員のコンプライアンスモラルの醸成と働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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