鹿島建設グループは、鹿島建設、子会社206社、関連会社107社で構成され、鹿島建設は土木事業、建築事業、開発事業等の事業活動を展開するとともに、国内関係会社が主に日本国内において多様な事業を、海外関係会社が海外地域において建設事業、開発事業等を展開している。
鹿島建設グループに属する各社の事業に係る位置づけ及びセグメント情報との関連は、次のとおりである。なお、次の5つは、セグメント情報と同一の区分である。
鹿島建設が建設事業のうち、土木工事の受注、施工等を行っている。
鹿島建設が建設事業のうち、建築工事の受注、施工等を行っている。
鹿島建設が不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業を行っている。
鹿島建設の国内関係会社が主に日本国内において行っている事業であり、大興物産㈱が建設資機材の販売を、カジマメカトロエンジニアリング㈱が建設用機械の納入を行っているほか、鹿島道路㈱、ケミカルグラウト㈱、㈱クリマテック、㈱イリア等が専門工事の請負を行っており、その一部を鹿島建設が発注している。
また、鹿島リース㈱が総合リース業を、鹿島建物総合管理㈱が建物総合管理業を行っており、その一部を鹿島建設が発注している。
イートンリアルエステート㈱が不動産の売買及び賃貸等を、鹿島東京開発㈱がビル賃貸・ホテル経営を、鹿島八重洲開発㈱がビル賃貸事業を、㈱森林公園ゴルフ倶楽部がゴルフ場の経営を行っているほか、熱海インフラマネジメント合同会社が有料道路の運営・管理を行っている。
鹿島建設の海外関係会社が海外地域において行っている事業であり、主にカジマ ユー エス エー インコーポレーテッドが米国を中心とする北米で、カジマ ヨーロッパ リミテッドが欧州で、カジマ アジア パシフィック ホールディングス ピー ティー イー リミテッドがアジアで、カジマ オーストラリア ピー ティー ワイ リミテッドが大洋州でそれぞれ建設事業、開発事業等を行っている。
事業の系統図は次のとおりである。
鹿島建設グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。
鹿島建設グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。
こうした方針に基づく取組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。
鹿島建設グループを取り巻く経営環境は、近年、産業構造や人々の生活・行動、価値観の変容に加え、地球規模での気候変動と脱炭素化、デジタル化の進展などにより、急速に変化している。
こうした経営環境において、鹿島建設グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、鹿島建設グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。
ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、鹿島建設グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。
鹿島建設グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ鹿島建設グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。当連結会計年度において、「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」並びに新しい環境ビジョン「鹿島環境ビジョン2050plus」の検討と並行して、マテリアリティの見直しを議論した。社会環境の変化、外部有識者及び社内の意見等を踏まえて検討した結果、環境に関する項目(「脱炭素社会移行への積極的な貢献」を「脱炭素・資源循環・自然再興への貢献」に変更)をはじめ一部を更新している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。
参考:「鹿島環境ビジョン2050plus」(2024年5月公表)
2013年に策定した環境ビジョンを「鹿島環境ビジョン2050plus」として改定。3つの分野「脱炭素」「資源循環」「自然再興」が相互に関連しあっていることを認識したうえで、グループの目標や行動計画を再構築したもの。
NbS : Nature-based Solutions
目標とKPI
(4) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、多くの国や地域においてインフレ率が鈍化傾向にあり、政策金利は利上げから据え置きの局面に移行した。経済成長のペースについては、物価や金利が上昇した影響等により停滞が見られた国・地域もあったが、全体としては底堅く推移した。我が国においては、物価が緩やかに上昇する中、雇用環境の改善やインバウンド需要の持ち直しなどにより景気の回復基調は継続し、日本銀行のマイナス金利政策が解除されるなどの変化が見られた。
国内建設市場においては、公共投資が安定的に推移し、企業の設備投資も着実に進んだことから、建設投資の増勢が続いた。建設コストに関しては、資機材費が総じて高い水準で推移する中、工事量の増加に伴い、労務費も上昇傾向となった。
今後の世界経済においては、インフレの減速に伴って金利が低下し、成長ペースが次第に回復することが期待される。しかしながら、景気の先行きには依然として不透明感が残り、経済情勢の見極めが難しい状況が続くと見通している。さらに、脱炭素や循環型経済への対応、人的資本の重要性の高まりなど、社会の要請、顧客のニーズは一段と多様化が進むと見込まれる。こうした経営環境の中で、持続的な成長を実現するためには、変化に伴う様々なリスクに必要な対策を施すとともに、機会を的確にとらえた事業を推進することが重要であると考えている。
建設市場では、環境・先端技術に関連する生産施設や建物・インフラの老朽化対応等への投資がけん引し、国内、海外ともに建設需要の拡大傾向が続くと見込んでいる。一方で、国内の建設業における時間外労働上限規制の適用や世界的に建設コストが上昇する可能性に留意する必要があり、持続可能な建設業の観点から、建設業従事者の処遇改善と働き方改革並びに生産性向上を推進しつつ、需要に応え良質な価値やサービスを提供することが求められている。
<「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」の推進>
このような経営環境の中、2025年3月期からスタートする新たな中期経営計画を策定した。中核である国内建設事業、不動産開発事業、海外事業のさらなる強化を進めるとともに、技術立社としてバリューチェーンの拡充やR&D、イノベーション推進により新たな価値を創出し、社会や顧客とともに未来を開拓していく計画としている。
① ありたい姿
中期経営計画の策定にあたり、経営理念や受け継いできた企業風土、価値観などを「ありたい姿」として具体化している。鹿島建設グループの基盤である人と技術をつなぎ合わせ、顧客、さらにその先にある社会に貢献することを目指していく。
② 成長戦略
「ありたい姿」を念頭に置きつつ経営環境などを踏まえ、成長戦略は、1)国内建設事業を深める、2)成長領域を伸ばす、3)技術立社として新たな価値を創る、4)サステナビリティを4つの柱としている。
1)国内建設事業を深める
国内建設事業は、鹿島建設グループの技術や経験から生み出される強みを最も発揮できる領域である。需要が拡大している半導体・医薬関連の生産施設、再生可能エネルギー発電施設などの重点分野における設計施工力、エンジニアリング力を強化するとともに、デジタル化の推進により生産性や業務効率を高め、社会や顧客に質の高い付加価値を提供していく。また、時間外労働上限規制を遵守し、安全かつ魅力ある現場環境を追求することが、国内建設事業の持続的な収益力確保につながると考えている。
2)成長領域を伸ばす
建設ノウハウを活かした不動産開発事業、各地域に根づいた海外事業は、鹿島建設グループが独自性を持つ成長領域である。国内・海外の不動産開発事業においては、地域ごとの市場動向を見極めた投資と適時の売却による回収を推進し、収益拡大を図っていく。また、建設事業と不動産開発事業のシナジー効果を発揮する事業の推進、外部パートナーとの連携やM&Aなどにより、バリューチェーンの拡充を進めていく。
3)技術立社として新たな価値を創る
日本、シンガポール、米国の拠点を中心に、グローバルなR&D体制の構築を進めている。社会や顧客、ものづくりの最前線である建設現場の課題を特定し、鹿島建設グループの技術や外部の先端技術等との組み合わせによる解決を目指していく。また、グループ内外のリソースを連携させたイノベーションを推進することにより、鹿島建設グループの競争力向上と技術立社としての新たな価値創出を図っていく。
4)サステナビリティ
環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現を目指し、新たに策定した「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、脱炭素、資源循環、自然再興の取組みを推進していく。
人材に関しては、鹿島建設グループの成長・変革を担う人材の確保・育成、職場環境や寮・社宅の整備など人的資本に関する投資を推進していく。サプライチェーンの維持・強化、担い手確保についても、建設技能者の処遇改善や重層下請構造改革などに継続して取り組んでいく。
また、鹿島建設グループが社会や顧客からの信頼を受け継いでいくために、サプライチェーン全体で、コンプライアンスを最優先する意識を徹底していく。
③ 投資計画
成長戦略を推進し経営目標を達成するために、R&D・デジタル投資、新たな価値創出に向けた戦略的投資、国内外の不動産開発事業における投資と回収を計画している。また、人的資本強化の一環としての業務用不動産への設備投資も進めていく。
<企業価値・市場評価のさらなる向上と財務戦略>
① 現状分析・評価
中期経営計画(2021~2023)に基づいて、持続的な成長に向けた施策や投資を推進した結果、目標を超える利益を確保し、資本収益性についても目標のROE10%を上回っている。また、情報開示の改善や投資家・市場との対話の充実等の効果もあり、市場における評価は高まりつつあると受け止めている。なお、鹿島建設グループの株主資本コストは7~8%程度と認識している。
② 今後の取組み
2025年3月期からスタートする新たな中期経営計画(2024~2026)に掲げた成長戦略を実践し、鹿島建設グループの持続的な成長や事業活動を通じた社会や顧客への貢献を目指すとともに、成長投資と株主還元のバランスを考慮した財務戦略により、企業価値・市場評価のさらなる向上を図っていく。
③ 中期経営計画(2024~2026)における財務戦略
(6) 目標とする経営指標
2025年3月期の国内建設事業は、土木事業、建築事業における堅調な建設需要に応えて、着実な施工を進めるとともに、生産性向上や原価低減に向けた取組みによる堅実な業績確保を見込んでいる。国内開発事業では、当連結会計年度に続き、複数物件の売却による売上高、利益への貢献を計画している。海外事業については、東南アジアにおける業績回復が進展する見通しである。米国や欧州においては、物価や金利が不透明な事業環境が続くと見込まれるが、市場・金利動向に応じたリスク対策と機会をとらえた事業展開を図ることにより、海外事業全体で売上高・利益の増加を目指している。なお、為替レートは1米ドル141円83銭を想定している。
このような国内外の状況を勘案し、2025年3月期の業績予想を、2024年5月14日に下記のとおり公表している。
また、中期経営計画(2024~2026)における経営目標として、国内建設事業における着実な利益成長と、成長領域である不動産開発事業、海外事業の収益拡大、バリューチェーン拡充により、ROE10%以上の継続と、2027年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益1,300億円以上、2031年3月期の1,500億円以上を目指している。
鹿島建設グループは、事業遂行上のリスクの発生を防止、低減するための活動を推進している。新規事業、開発投資などの「事業リスク」に関しては、専門委員会等が事業に係るリスクの把握と対策について審議を行っている。法令違反などの「業務リスク」に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会が鹿島建設グループにおけるリスク管理体制の運用状況の把握、評価を行うとともに、リスク管理の方針及び重大リスク事案への対応などについて審議を行い、必要に応じて取締役会に報告している。
リスク管理活動の実効性を高めるためには、あらゆるリスクを網羅・検証した上で、重要度に応じた活動を推進することが有効であることから、毎年、発生頻度及び顕在化した際の影響度の両面から分析し、企業活動上、重点的な管理が必要とされる業務リスク事項をリスク管理重点課題として選定・展開し、予防的観点からのリスク管理を実施している。顕在化したリスク事案については、早期の報告を義務付け、組織的対応によるリスクの拡大防止と再発防止に努めるなど、PDCAサイクルに基づいた実効的なリスク管理活動を展開している。
本社のリスク所管部署の担当者によって構成するリスク管理連絡会議を定期的に開催し、鹿島建設グループに関するリスク顕在化事案や法令改正、社会動向、他社における事例、さらにはリスクマネジメントやリスクコミュニケーションの手法などの情報を報告・共有し、重要な情報については適宜コンプライアンス・リスク管理委員会に報告している。
事業リスクの把握と対策を審議する専門委員会
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において鹿島建設グループが判断したものである。
鹿島建設グループにおいては、これらの事業を取り巻く様々なリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジ等を実施することにより、企業活動への影響について最大限の軽減を図っている。
景気悪化等による建設需要の大幅な減少や不動産市場の急激な縮小等、建設事業・開発事業等に係る著しい環境変化が生じた場合には、建設受注高の減少及び不動産販売・賃貸収入の減少等の影響を受ける可能性がある。
また、他の総合建設会社等との競争が激化し、鹿島建設グループが品質、コスト及びサービス内容等における競争力を維持できない場合、業績等が悪化する可能性がある。
変化する状況や市場動向を踏まえ策定した「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」に掲げる諸施策を推進することにより、経営目標の達成と企業価値の向上を目指している。
建設工事においては、工事期間が長期に亘る中で資機材及び労務の調達を行う必要があることから、建設コストの変動の影響を受ける。主要資材価格や労務単価の急激な上昇等による想定外の建設コスト増加を請負契約工事金額に反映させることができない場合には、工事採算が悪化する可能性がある。
建設コストの変動による影響を抑えるため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに、発注者との契約に物価スライド条項を含める等の対策を実施している。
鹿島建設グループは、中期経営計画に定めた投資計画に基づき不動産開発投資、R&D・デジタル投資、戦略的投資及び業務用不動産等への設備投資を推進することとしている。販売用不動産(当連結会計年度末の連結貸借対照表残高2,218億円)の収益性が低下した場合、賃貸等不動産(同3,028億円)及び投資有価証券(同4,424億円)等の保有資産の時価が著しく下落した場合には、評価損や減損損失等が発生する可能性がある。
開発事業資産については、案件毎に価値下落リスク等を把握し、その総量を連結自己資本と対比し一定の水準に収める管理を実施している。連結自己資本は、中期経営計画期間中の国内外開発事業資産の増加を考慮しても十分耐性を持つ財務基盤を維持できる水準を確保している。また、個別案件の投資に当たっては、本社の専門委員会(開発運営委員会、海外開発プロジェクト運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
投資有価証券のうち政策的に保有する株式は、毎年度、全銘柄について、中長期的な視野に立った保有意義や資産効率等を検証した上で、取締役会にて審議し、保有意義の低下した銘柄は原則として売却している。中期経営計画では、政策的に保有する株式の残高を『2026年度末までに連結純資産の20%未満』とすることを目標に3年間で500億円以上売却し、目標到達後も継続的に縮減を進める方針としている。
鹿島建設グループは、北米・欧州・アジア・大洋州等海外における建設事業及び開発事業を展開しており、中期経営計画に基づき、事業規模拡大に伴う経営基盤の整備、ガバナンスの強化等を推進していく方針である。進出国の政治・経済情勢、法制度、為替相場等に著しい変化が生じた場合には、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
海外におけるM&Aや新市場への進出等に当たっては、本社の専門委員会(海外事業運営委員会)等においてリスクの把握と対策を審議した上で、基準に則り取締役会や経営会議において審議している。
また、テロ、暴動等が発生した場合に、社員・家族の安否確保を図り、現地支援を行うため、国際危機対策委員会を設置している。
建設業界においては、建設技能労働者が減少傾向にあり、十分な対策を取らなければ、施工体制の維持が困難になり、売上高の減少や労務調達コストの上昇による工事利益率の低下等の影響を受ける可能性がある。
鹿島建設グループは、将来の施工体制を維持するため、中期経営計画に基づき、建設技能者の処遇改善、原則二次下請までに限定した施工体制の実現を目指した重層下請構造改革、人材育成や連携強化をはじめとした協力会社支援の充実など各種施策を継続して実施する方針である。
鹿島建設グループは、建設業法、建築基準法をはじめ、労働安全衛生関係法令、環境関係法令、独占禁止法等、様々な法的規制の中で事業活動を行っている。そのため、法令等の改正や新たな法的規制の制定、適用基準の変更等があった場合、その内容次第では受注環境やコストへの影響等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。また、鹿島建設グループにおいて法令等に違反する行為があった場合には、刑事・行政処分等による損失発生や事業上の制約、信用の毀損等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクへの対応として、関係法令等の制定・改正については、担当部署を通じてその内容を周知し必要な対応を実施している。例えば、2024年4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制については、働き方改革、デジタル化による業務効率化や質の向上、業務内容に応じた集約化、アウトソーシングなどを進めるとともに、人員配置など施工体制の十分な検討と必要な工期を考慮した見積の提出に努めている。
また、コンプライアンス・マニュアルである「鹿島グループ 企業行動規範 実践の手引き」を策定、法令等の改正や社会情勢の変化も踏まえ適宜改訂し、全役員・従業員に周知している。加えて、コンプライアンス意識の更なる向上と定着を図るため、鹿島建設グループの役員及び従業員を対象としたコンプライアンスに係るeラーニング研修を継続的に実施しているほか、各分野の担当部署が、規則・ガイドラインの策定、研修、監査等を実施し、適正な事業活動のより一層の推進を図っている。
鹿島建設グループが提供する設計、施工をはじめとする各種サービスにおいて、重大な人身事故、環境事故、品質事故等が発生した場合には、信用の毀損、損害賠償や施工遅延・再施工費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
安全衛生・環境・品質の確保は生産活動を支える前提条件であり企業存続の根幹であることから、基本方針並びに安全衛生方針、環境方針、品質方針を定め、関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムにより生産活動を行っている。安全を実現するため「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)」に準拠した安全衛生管理を行うとともに、環境については、ISO 14001に準拠した環境マネジメントシステムを運用している。また、品質については、土木部門・建築部門それぞれでISO 9001の認証を受けており、海外関係会社は個々に必要な認証を受けている。
鹿島建設グループは設計、施工をはじめとする各種サービスを提供するにあたり、建造物や顧客に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報その他様々な情報を取り扱っている。このような情報が外部からの攻撃や従業員の過失等によって漏洩又は消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
これらのリスクに対応するため、鹿島建設グループでは情報セキュリティポリシーを定め、重点的なリスク管理を実施している。サイバー攻撃を想定した訓練を実施し組織的な対応力向上に取り組んでいるほか、鹿島建設グループの役員及び従業員を対象としたeラーニングを用いた教育、点検及び監査並びに協力会社に対する啓発活動を行っている。
発注者、協力会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や施工遅延等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。特に、一契約の金額の大きい工事における工事代金が回収不能になった場合、その影響は大きい。
新規の営業案件に取り組むに当たっては、企業者の与信、資金計画並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り対応している。新たな契約形態や工事代金の回収が竣工引き渡し後まで残る不利な支払条件を提示された場合等には、本社が関与しリスクの把握と対策を講じるとともに、基準に則り経営会議において審議している。
協力会社と新たに取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで工事下請負基本契約を締結している。また、重要な協力会社に対しては、定期的に訪問し財務状況を含めた経営状況の確認を実施している。
大規模地震、風水害等の大規模自然災害が発生した場合には、施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害などにより、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定しており、首都直下地震や豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に取り組んでいる。
パンデミック(感染症の大流行等)が発生した場合には、景気悪化による建設受注高の減少や工事中断による売上高の減少等、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
例えば、感染症の大流行に対しては、感染予防と感染拡大防止を最優先としつつ、事業継続と被害最小化を図るため、情報収集とリスク想定を行い、国内外従業員や協力会社に対して必要な対策を指導する。
2024年度リスク管理重点課題(業務リスク)
気候変動に伴う物理的リスクとしては、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延、自社所有建物への被害等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
災害時の事業継続計画(BCP)を策定し豪雨災害等を想定した実践的なBCP訓練の実施等により企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組むことに加え、防災・減災及びBCP分野におけるR&Dを推進することにより、社会・顧客に対し関連サービスを提供するとともに、災害発生時には復旧・復興等に貢献することを目指している。
脱炭素社会への移行リスクとしては、温室効果ガス排出量の上限規制による施工量の制限や炭素税の導入によるコスト増等により、業績等に影響を及ぼす可能性がある。
中期経営計画及び「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、建設現場等におけるCO2排出量削減と再生可能エネルギー電源への投資に計画的に取り組むことに加え、低炭素コンクリートや省エネルギー関連分野等における保有技術の活用や新たな技術の開発等により、脱炭素社会への移行に対し事業を通じて貢献することを目指している。(気候変動リスクの詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)個別テーマ ②気候変動関連(TCFD提言に沿った開示)」に記載している。)
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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