1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
三井住友建設グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において三井住友建設グループが判断したものです。
(1) 経営方針
三井住友建設は、経営理念として「顧客満足の追求」「株主価値の増大」「社員活力の尊重」「社会性の重視」「地球環境への貢献」を掲げ、安全で快適な社会の実現に取り組んでいます。
<理念と経営計画の体系>
(2) 経営環境
わが国経済の先行きにつきましては、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
建設業界につきましては、防災・減災、国土強靭化への計画的な投資により公共投資は底堅く推移する見通しです。また、民間企業の設備投資も企業収益の改善等を背景として堅調に推移する見通しです。一方、資源価格や建設資材価格の高止まりや労務需給の逼迫の影響、加えて2024年4月からの建設業への時間外労働の上限規制適用による影響等に注視していく必要があります。
(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標
三井住友建設グループを取り巻く中長期的な事業環境は、国内建設需要の縮小が懸念されるものの、海外では特に新興国(東南アジア、南アジア、アフリカ等)において、急速な経済成長によるインフラ需要が見込まれています。また、建設産業全体の課題である担い手不足問題の深刻化が見込まれる一方、IoT、AIなど先進的なICTをはじめとした技術革新が急速に進み、建設生産プロセスにおけるデジタル化の進展が予想されています。
こうした事業環境の変化に対し、三井住友建設グループの強みを活かして、社員一人ひとりが未来志向を持って行動し、持続可能な社会の実現と三井住友建設グループの持続的な成長を遂げるため、目指すべき「2030年の将来像」を設定しています。
「2030年の将来像」に向けたセカンドステージと位置付けている「中期経営計画2022-2024」では、テーマを「新たな成長へ~サステナブル社会の実現に向けて~」と掲げ、「収益力の向上」「成長分野への挑戦」「人材(=人財)基盤の強化」に取り組んでいます。しかしながら、建設資材の価格上昇や労務需給の逼迫等の影響が当初の想定を上回っていることから、中期経営計画最終年度である2024年度の業績予想は、計画の数値目標を下回る見通しとなっています。
2024年度は、中期経営計画未達の要因分析を行い、2025年度から始まる次期中期経営計画の策定を進めてまいります。
①受注力の強化
・デジタル技術の積極活用や協力会社組織との連携強化などにより競争優位性を創出し、優位技術、得意分野を軸に需要拡大が見込まれる分野に注力。
②現場力の強化
・現場管理体制の強化
現場が「コア業務(安全・品質・工程・原価管理)」に集中できる体制を構築し、工事リスクへの対応力を向上すべく、現場業務のバックアップ体制を強化。
受注前の検討体制の強化を目的としたフロントローディング体制を構築し、早期に工事リスクを把握することで、対策を施工計画に反映。
・技術者教育の強化
リスク検知能力や課題解決力の向上、若手技術者の早期育成。
・デジタル化の推進
③国内建築事業の業績改善
・施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築
施工体制逼迫の改善に向けた受注量の管理、事前検討・支援体制の強化。
・受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築
取組みの初期段階における取組判断の厳格化と受注プロセスにおけるガバナンス強化。顧客、工事規模、用途、地域特性等を鑑みた受注方針の再設定と運用の徹底。
・利益を重視した目標管理の徹底
受注時における利益の確保を最重要指標と位置づけ、これ以降の各段階において利益を最優先とした目標管理を徹底。
①サステナブル社会に向けた取り組みの強化
・新たに生まれる社会ニーズに対し、技術とサービスで応え続けることで成長を実現。
②海外事業の拡大~拠点の自立とネットワーク強化~
・事業を通じて持続可能な地域社会の発展に貢献し、地域とともに成長を実現。
③建設生産システムの深化
・デジタル化の推進を中心とした取り組みにより、建設現場の工業化や自動化を推進し、三井住友建設グループの競争力を強化。
①ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実現
・D&Iの実現を通じて、社員の幸福度の向上を企業の成長につなげる。
②エンゲージメントの向上
・「社員の幸福」「企業の成長」と社員のエンゲージメントがお互い高め合う関係性を構築。
③人材の育成
・「新たな成長」の実現を牽引するデジタル人材、グローバル人材など多様な人材育成、確保に注力。
■ 経営数値計画
・業績目標、財務目標
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中期経営計画 2022-2024
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2023年度 実績
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2024年度 業績予想
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2024年度 目標
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連結売上高
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4,795億円
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4,550億円
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4,670億円
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連結営業利益
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85億円
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125億円
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160億円
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ROE
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6.0%
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-
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9.0%以上
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総還元性向
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54.7%
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-
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50%程度
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(注) 2024年度業績予想(2024年5月10日公表)につきましては、公表日現在において入手可能な情報から得られた判断に基づいています。
・非財務情報
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中期経営計画 2022-2024 2024年度 目標
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安全
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死亡・重大災害「ゼロ」 度数率:0.6以下(施工部門)、0.5以下(全社)
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品質
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品質不具合ゼロ
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カーボン ニュートラル
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CDP評価
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A
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Scope1+2
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△20% (基準:2020年)
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Scope3
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△10% (基準:2020年)
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人権
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人権DD
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人権DDの定着(人権リスクへの対応)
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救済メカニズム構築
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2023年度から運用
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生産性
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社員総労働時間あたりの完成工事高 5%向上
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エンゲージメント
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4.0以上(5点満点の平均)※
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※「組織診断サーベイ」におけるワークエンゲージメントに関する指標
■ 事業戦略
1.国内土木事業戦略
(1)収益力強化 (2)新たな価値の創出
2.国内建築事業戦略
(1)受注力の向上 (2)現場力の向上 (3)社員教育・人材活用の強化
3.海外事業戦略
(1)海外建設事業の成長 (2)成長を支える事業基盤の強化 (3)社会変化に対応した取り組み推進
4.周辺領域事業戦略
(1)既存周辺領域事業(再エネ発電、エンジニアリングサービス等)の拡大による収益貢献
(2)新規周辺領域事業創出への取り組み
(3)周辺領域事業の裾野拡大のための「新規事業創出プロセス」の構築
(4)M&A・アライアンスを活用した戦略的なポートフォリオ変革の実現
■ 基盤戦略
1.安全・品質
2.人材(=人財)戦略
3.技術開発戦略
4.グループ経営戦略
5.ガバナンス及び内部統制
■ 環境、社会面における取り組むべき事項
1.環境面
(1)気候変動、カーボンニュートラル (2)資源循環 (3)生物多様性
2.社会面
(1)人権 (2)ダイバーシティ&インクルージョン
(4) 対処すべき課題
① 三井住友建設施工の横浜市所在マンションの事案につきましては、2017年11月28日付にて、本件マンションの発注者の1社である三井不動産レジデンシャル株式会社(以下、「レジデンシャル社」といいます。)が、本件マンション全棟の建替え費用等の合計約459億円(その後2018年7月11日付にて約510億円に増額、2022年9月30日付にて約510億円から約506億円に減額)を三井住友建設並びに杭施工会社2社に対し求償する訴訟を提起していますが、レジデンシャル社の請求は、根拠、理由を欠くものであると考えており、引き続き裁判において、三井住友建設の主張を適切に展開してまいります。
② 現在施工中の国内大型建築工事における度重なる損失発生につきましては、施工・品質管理体制の強化、本支店による施工全般に対する支援や技術的な指導、外部の有識者に参画いただいた調査委員会の提言を踏まえて策定した再発防止策の徹底により、更なる追加損失の発生を防止してまいります。この再発防止策については、建築事業におけるリスクの高いと判断される他の工事にも適用し、同様の損失発生のないように努めてまいります。加えて、建築事業全般の業績改善につきましては、施工体制逼迫の改善と現場支援体制の再構築、受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築、利益を重視した目標管理の徹底の3点を確実に実施するとともに、リスク対策を実施した工事への入れ替えを進め、建築事業の業績改善に取り組んでまいります。
≪具体的な再発防止策≫
・受注プロセスにおける審査の充実化
・大規模工事における継続的なモニタリングの徹底
・外部専門家による不具合検証と再発防止策の提案・実施
・図面管理に関する対策(チェック能力の平準化、図面管理システムの構築)
・体制の増強(特別対応チームの編成 等)
・リスク情報の早期共有
・規則に基づく管理・運営の徹底
・品質管理の重要性に関する教育実施
・業務担当者のフォロー体制の構築等
・受注プロセスにおけるリスク対応の徹底
・体制、工程の事前検討の徹底
・他社設計案件(急速施工工法)の取扱い(原則「不可」とする)
・工場間における不具合情報共有の徹底
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、三井住友建設グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。
(1) 三井住友建設グループのリスク管理体制と管理プロセス
三井住友建設グループは、リスクを最終的に損益悪化によって組織目標の達成を阻害する要因と捉え、「リスク管理規則」に基づくリスク管理体制の構築・運用とその改善を継続することによりリスク管理の実効性を高め、三井住友建設グループの事業運営に影響を及ぼす恐れのあるリスクの低減を徹底しています。また、全社的な視点でリスク管理を統括・推進し、各部門各部署において主体的なリスク対応を促進するための体制及び仕組みづくりに努めています。リスク管理の基本体制として「3ラインモデル」を採用し、内部統制を実行しています。リスクに直接対応する部門(第1ライン)において、部門リスク管理責任者がリスク管理の運用・有効性の評価を実施し、リスク評価報告書をリスク管理統括責任者に提出し、全社におけるリスク管理状況を把握します。リスク管理統括責任者は、部門リスク管理責任者によるリスク管理体制の有効性評価及び全社における統制環境に関するリスクアセスメント結果に基づき、三井住友建設グループにおけるリスク管理体制の問題点を把握し、今後の対応策を策定しています。
(2) リスクの選定方法
まず、個別リスクの所管部署(第2ライン)は、所管するリスク項目に関して、リスク対応主体(第1ライン)におけるリスクを発生頻度、経営への影響度、脆弱度の3つの基準で点数化します。そして、点数化した結果、リスク値が高い項目をリスク対応主体(第1ライン)が重点的に対応すべきリスクとして選定しています。その後、個別リスクの所管部署(第2ライン)は、選定されたリスクに対して具体的なリスクシナリオを策定し、基本対策案を立案しています。加えて、独立した客観的な立場から、監査部(第3ライン)がこれらのリスクシナリオをチェックし、必要に応じて、修正・追加を実施しています。
また、リスク管理統括責任者は、各部門の業務プロセスに関するリスクアセスメント結果・各部門のリスクマップ、リスクシナリオ、リスク顕在化事案を参考に、全社ベースのリスクマップを作成し、全社における重要リスクと対策案の把握、リスクへの対応状況をモニタリングするという仕組みを構築・運用しています。
(3) 対応が必要となるリスク
当期におけるリスクアセスメント結果を踏まえ、三井住友建設グループが「2030年の将来像」を目指すにあたり設定している事業戦略と基盤戦略を実行する上で、対応が必要となるリスクとして18項目を挙げています。
以下の表では、それらのリスク項目を事業環境と事業基盤のカテゴリーに分け、かつ、各リスク項目に、最重要リスク、重要リスクを記し、各リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与えるリスク内容、リスクへの対応策、戦略との関係性を記載しています。
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リスク項目
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リスク内容
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対応策
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対応策と戦略との関係性
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事業環境 (外的要因)
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自然環境 リスク (大災害) 最重要
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地震、台風、津波、火山噴火等が発生した場合には、直接的な被害のほか、間接的な被害を受ける可能性があり、業績や財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
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災害発生時の初期対応、報告方法、各対策本部の設置と役割を「危機管理規則」等に定め、災害が発生した際に迅速な対応が取れる体制を構築しています。地域や事業に応じたBCP(事業継続計画)を作成しており、国内外の拠点における防災訓練や定期的な設備点検等を実施するなど、事業継続力の向上に取り組んでいます。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3 基盤戦略-4 基盤戦略-5 環境社会-1 環境社会-2
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気候変動 リスク 最重要
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脱炭素社会への移行に向けて、温室効果ガス排出量の上限規制や炭素税が導入された場合、施工量の制限やコスト増等により業績に影響を及ぼす可能性があります。 気候変動により自然災害が激甚化傾向にあり、台風や洪水等による施工中工事への被害や施工遅延等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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土木、建築、海外、新規・周辺領域の各事業に影響を及ぼす気候変動ドライバーを認識するとともに、シナリオ分析に基づいて気候変動に関するリスクと機会を特定し、気候変動に対するレジリエンスの向上を目指した取り組みを強化しています。 2021年11月に策定したカーボンニュートラルロードマップに基づき、2030年にScope1+2のCO2排出量50%削減、さらに再生可能エネルギー事業等への取り組みによる削減貢献により、2030年実質的カーボンニュートラルの達成に向けた、各施策を推進しています。また、2023年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への開示を更新し、12月にはSBT認定(1.5℃目標)を取得しました。
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社会情勢 リスク 最重要
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戦争、暴動、テロ、その他の要因による社会的混乱が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 新型の感染症等が拡大し、長期的に事業活動の停滞状況が続いた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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適時的確な社会情勢の把握に努めるとともに、テロ発生時や危機管理に関するマニュアルを作成し、関係者が安全を確保するための初動対応などの基本的事項を定めています。有事を想定した訓練を定期的に実施するほか、外部コンサルタント等の助言、指導を踏まえた安全対策を講じています。 また、感染症の影響に関しては、社会情勢の推移を慎重に見極め、適時的確な判断により、事業計画の確実な遂行に取り組んでいます。
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リスク項目
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リスク内容
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対応策
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対応策と戦略との関係性
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事業環境 (外的要因)
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経済リスク (景気・ 相場変動) 最重要
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公共投資、企業の設備投資、民間住宅投資等の建設投資動向に左右され、受注工事高が増減し、業績に影響を及ぼす可能性があります。 建設物の着工から完成までは長期間に及ぶものが多く、工事施工期間中の原材料等コスト変動により業績に影響を及ぼす可能性があります。 金利水準の急激な上昇及び為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 取引先の信用不安や資産価値の著しい下落等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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中長期的な戦略のもと、新たな技術や工夫による省力化・効率化等を実現し、収益力、競争力の向上に取り組んでいます。また、事業領域の拡大に向けて、グローバル化や得意分野における更なる成長戦略を推進しています。 原材料等コスト変動に対しては、資材価格や労務単価の動向等を常に把握し、適時発注することで影響を最小限に抑えられるよう努めています。また、工事請負契約の締結にあたりコスト変動に関する事項を明確化するよう、発注者との協議に努めています。 金利・為替変動による業績影響を回避するため、必要に応じて金利スワップ取引・為替予約等により、金利変動リスク・為替変動リスクの低減に努めています。 信用リスクに対しては、工事受注にあたり、「受注審査規則」に基づく厳格な審査を実施するなど、与信管理の徹底に努めています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3 基盤戦略-4
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レピュテーションリスク 最重要
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レピュテーションリスクは、各種リスクとの連鎖性を有しており、顕在化した場合には、信用の失墜、株価の下落、取引先の減少、ブランドの毀損等、三井住友建設グループの経営成績や社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
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事業遂行に当たっては、適時適切な情報開示等によりステークホルダーからの信頼の維持・向上に努めています。 リスク顕在化の未然防止を図るため、新聞・テレビ・雑誌などの各種媒体の確認を通じてリスク顕在化事象の早期把握、リスクの極小化に努めています。また、当グループ各社並びに役職員のソーシャルメディア利用によるレピュテーションリスクを未然防止するため、社内教育を実施しています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3 基盤戦略-4 基盤戦略-5 環境社会-1 環境社会-2
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カントリー リスク 重要
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海外ではアジア地域を中心に建設工事を行っていますが、その国の政情の変化、経済情勢の変動、現地法規制の不測の変更等によって、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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海外工事や事業投資にかかるリスクを適切に評価・管理するため、各国毎の事情や信用度を考慮したカントリーリスクを適切に把握・管理する制度を導入しています。 また、施工能力の高い海外協力会社の確保の他、信用悪化や一社集中等のリスクへの対応を強化しています。
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事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-2
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リスク項目
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リスク内容
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対応策
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対応策と戦略との関係性
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事業環境 (外的要因)
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リーガル リスク 重要
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事業推進にあたり、建設業法、建築基準法、環境関連法規等、多数の法規制を受けています。また、海外においても、各国における事業許可等をはじめとして、国内同様に法規制の適用を受けています。特に、建設工事を行うにあたっては、各種法規制に基づく許認可等の取得が多岐にわたり、これらの法規制が変更され、三井住友建設グループの営業活動に大きな制約が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 事業推進にあたり、契約不適合、製造物責任、特許、独占禁止法等に関する訴訟を提起される可能性があり、訴訟の動向によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
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事業推進に密接な関わりを持つ法令や規則等を遵守するため、コンプライアンス教育を含む年度教育計画を策定し、全社員への教育を実施しています。 また、工事受注にあたっては「取組検討会」や「施工審査会」、新規事業の取組については「事業投資審査委員会」等の各会議体において、関連する法規制や許認可等に係る対応について、必要に応じて個別に検討しています。 万一、訴訟が提起された場合には、リスクを最小限にすべく、専門家と協働して対応します。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-5
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事業基盤 (内的要因)
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現場事故 リスク 最重要
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建設事業は、作業環境や作業方法の特性から危険を伴うことが多く、他の産業に比べ事故発生率が高くなっています。安全管理を徹底していますが、労働災害事故が発生した場合には、建設業法の監督処分や自治体等各発注機関の指名停止措置の対象となるとともに、損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
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「安全衛生管理計画」に基づき、全社的施策の推進や労働災害事例の水平展開を実施しています。さらに、本支店による監査やパトロールにより重大労働災害に繋がるリスクについて、複数の視点で管理することにより、重大労働災害の未然防止に努めています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3
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品質リスク 最重要
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設計と異なる施工、要求品質に満たない施工、外注する協力会社の施工品質不良、作業所内各種検査や検査書類等の不適切な管理により、品質不具合を発生させることによって、社会的信頼の失墜、工期遅延に伴う追加コストの発生などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
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「生産管理計画」に基づき、過去の品質不具合や瑕疵事例の要因分析、各作業所に対する実効性のある事例周知や安全品質監査・各種パトロールにおける指摘事項等、社内及び協力会社に水平展開しています。また、作業所における「施工品質計画書」に基づく施工プロセス管理の確実な実施と三井住友建設独自のQSA(安全品質監査員)による施工プロセスの監査により、施工中及び将来にわたる品質不具合防止に努めています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3
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瑕疵リスク 最重要
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建設物の施工にあたっては、品質管理を徹底していますが、万一、三井住友建設が施工した建設物に大規模な瑕疵が存在した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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リスク項目
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リスク内容
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対応策
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対応策と戦略との関係性
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事業基盤 (内的要因)
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不採算工事の発生 リスク 最重要
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受注時における想定の誤りや、施工条件の変化・変更等により、受注工事が不採算となった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。 施工時において予算外の原価負担により利益率が低下した場合には、工事利益の大幅な下振れが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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工事受注にあたっては「受注審査規則」に則り、支店及び本部における事前審査を実施し、工事の難易度、施工計画、調達計画、工事原価の妥当性等を確認・審査する仕組みを導入しており、厳格な審査の徹底に努めています。大規模及び施工難易度が高いと認められる工事などは「特別工事審査規則」に則り、より厳格な審査を実施しています。加えて、手持ち工事量及び施工体制を考慮した受注量の管理、受注プロセスにおけるガバナンス強化と最適な受注ポートフォリオの構築、利益を重視した目標管理の徹底に努めています。 施工時の本支店による作業所支援体制の強化とともに、フロントローディング体制の構築による工事リスクの早期把握と施工計画への対策反映等により、リスク低減を図っています。また、適切な工事進捗・原価管理の徹底に努めています。工事リスク顕在化の兆候を捉えた際は、本店からの技術的指導・支援により損益に与える影響の最小化に努めています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 基盤戦略-2 基盤戦略-3
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情報セキュリティリスク 重要
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サイバー攻撃等やコンピューターウイルス感染等の外部脅威や従業者の情報資産(パソコン、スマートデバイス等)の紛失・盗難や誤操作、不正使用等の内部脅威により、事業上の機密情報や事業の過程で入手した顧客情報を漏洩した場合や長期間にわたるシステムダウンが発生した場合は、顧客や社会からの信用を失うとともに、取引の停止や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
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「情報セキュリティ基本方針(個人情報の取り扱い含む)」に基づき、事業活動における情報の適切な取り扱いに向け、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)による継続的な改善を実施しています。個人情報を含む情報資産を情報漏洩等のリスクから保護するため、教育や訓練、内部不正等への監視とともに、重要度に応じた安全管理措置を講じています。一方でワークスタイル等の環境変化や巧妙化するサイバー攻撃など新たなリスクに応じた技術的な対策と監視・検知の強化、さらに外部専門会社の診断に基づく情報セキュリティの強化を図っています。また、情報セキュリティインシデント対応として、組織内に専門チームとして設置したCSIRT(Computer Security Incident Response Team:シーサート)を起点に被害の最小化と迅速な復旧に努めています。
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基盤戦略-5
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資金管理・ 調達リスク 重要
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受注増加及び工事規模の大型化に伴い工事立替資金が増加した場合、多額の資金調達が必要となり、財務状態に影響を及ぼす可能性があります。自己資本の毀損により、金融機関との借入契約に付されている財務制限条項に抵触し、期限の利益喪失することとなった場合には、業績と財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
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工事受注にあたり、「受注審査規則」に基づく資金審査を厳格に行い、資金収支影響の正確な把握、契約時の工事代金支払条件の改善及び施工中の工事出来高払の回収促進等の資金管理を徹底し、資金調達額の抑制に努めています。また、安定的な資金繰りを支えるため、資金調達手段の多様化を図っています。 三井住友建設グループでは、強固な経営基盤を再構築するため、国内建築事業の立て直しを優先的に取り組んでいます。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3
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リスク項目
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リスク内容
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対応策
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対応策と戦略との関係性
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事業基盤 (内的要因)
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労働環境・ 過重労働 リスク 重要
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過重労働(長時間労働)や不適切な労務管理によって三井住友建設の信用に著しい低下がみられた場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
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働き方改革の実現に向けて、意識改革と業務改革を推進し長時間労働の削減に努めるとともに、「時短プログラム」に基づく実効性ある諸施策(適切な労働時間管理、36協定遵守、労務管理教育等)を展開して適切な労務管理の徹底に努めています。
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基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3 基盤戦略-4 基盤戦略-5
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人材確保 リスク 重要
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採用や外部への人材流出抑制が人員計画通り進められなかった場合、長期的視点から三井住友建設グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
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多様な人材が活躍できる組織を目指し、性別・国籍を問わず採用を実施しています。また「D&Iポリシー」に基づき社員一人ひとりのライフステージや価値観などに応じた働き方ができ、社員間に思いやりと信頼感、協力関係が生まれ、心理的安全性の確保された職場づくりに取り組んでいます。人材流出抑制に向けた諸制度(メンター制度、在宅勤務制度、勤務地変更支援制度等)の導入、諸施策(適材適所人事、産業保健体制の充実、エンゲージメントサーベイ)の展開を図っています。
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事業戦略-1 事業戦略-2 事業戦略-3 事業戦略-4 基盤戦略-1 基盤戦略-2 基盤戦略-3 基盤戦略-4 基盤戦略-5
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人権リスク 最重要
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三井住友建設グループ及びサプライチェーンにおいて、人権を侵害する行為が発生した場合、社会的信頼を喪失する可能性があります。 職場におけるハラスメントや労働衛生環境の悪化が生じた場合、従業員の健康やメンタルヘルスの悪化、離職率の増加に伴う社員活力の低下により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
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2024年2月に改訂した「三井住友建設グループ人権方針」に基づき、事業活動における人権侵害リスクの特定、管理、対策実施に向けた人権デュー・デリジェンスを、国内外拠点、関係会社を対象として実施し、三井住友建設グループにおいて高リスクとなる人権課題を特定しました。更に、人権に関する相談や苦情を受け付ける窓口を三井住友建設ホームページ内に設置しています。また、2022年8月には国連グローバルコンパクトに賛同を表明する署名を行いました。 ※国連グローバルコンパクト:企業に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関する10原則を順守するよう要請しているイニシアチブ
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基盤戦略-2 基盤戦略-5 社会環境-2
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コンプライアンスリスク 重要
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法令及び社内規定の遵守のための様々な取り組みをもってしても、従業員の不正行為等、その内容次第で三井住友建設グループの経営成績や社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
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内部通報制度の信頼性・実効性の更なる向上に向けて、コンプライアンス違反やハラスメント事案の抑制・撲滅に向けた諸制度(内部通報者保護規則(共通規則)、ハラスメント防止規定)の運用徹底、三井住友建設通報・相談事例や他社事例等をもとに教育等の諸施策(年度教育計画に基づくコンプライアンス教育、ハラスメント教育の実施)を展開しています。また、種々の不正リスクの未然防止を図るため、具体的事例により再発防止のための教育を実施しています。
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基盤戦略-2 基盤戦略-5 社会環境-2
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関係会社 リスク 重要
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関係会社におけるリスク管理体制上の不備により様々なリスク事象が発生し、三井住友建設グループの経営成績や社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
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各関係会社において、「リスク管理規則」に基づき体制の整備・強化を図るとともに、「関係会社管理規則」、「国内関係会社決裁基準」及び「海外関係会社決裁基準」を定め、三井住友建設への報告・申請手続きを義務付け、必要に応じて関係会社に適宜、指導・支援を実施することにより、三井住友建設との緊密な連携のもと、三井住友建設グループベースでリスク管理の高度化を図っています。
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基盤戦略-4
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