リニカルグループは、株式会社リニカル(リニカル)及び海外に所在する連結子会社で構成され、医薬品の開発段階で行われる臨床試験(治験)に係る業務の一部を代行、支援する医薬品開発業務受託事業(CRO事業)を主たる事業とし、その他に、医薬品製造販売後支援事業(育薬事業)を展開しております。また、CRO事業の一部として、開発戦略の立案や薬事対応、承認申請などに関するコンサルティングサービスを提供しており、創薬支援事業と名付けています。これらの事業を通じて、新薬開発における創薬支援から、臨床開発、製造販売後の臨床試験や臨床研究という承認後のライフサイクルマネジメントまでワンストップのサービスをグローバルで提供しています。
なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等)」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1) CRO事業
治験とは、新薬候補物質についてヒトに対する有効性及び安全性を確認し、厚生労働省などの各国の規制当局から医薬品としての認可を受けることを目的として実施する臨床試験であり、医薬品開発に不可欠なプロセスです。医療機関において健常成人や患者を対象者として実施されます。治験依頼者(製薬会社等)は、医療機関において「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)及びGCP(注1)等の法令に則り倫理的・科学的に治験が行われているかどうかを確認(モニタリング)することが法令で義務付けられています。
治験の業務内容は、主要業務であるモニタリング業務及びそれに付随する品質管理業務のほか、治験薬が投与された症例の有効性・安全性データを入力する症例報告書(注2)のデータベース設計や入力データのクリーニングを行うデータマネジメント業務、治験薬の有効性・安全性を統計科学的に検証する統計解析業務、治験実施計画書(注3)や監督官庁に提出する届出や申請にかかる書類などの作成を行うメディカルライティング業務、及び治験の実施状況を調査して治験データの信頼性の保証を目的とする監査業務等、多岐に亘ります。治験依頼者は自社の人材等のリソースの状況を鑑みこれらの業務の一部または全部をCROに委託することができます。
中でもモニタリング業務は、治験の主要業務であり、モニタリング担当者であるCRA(注4)が、医療機関の治験実施可能性の調査、医療機関への治験の依頼、法令に基づく治験実施に関する契約(製薬会社等の治験依頼者、医療機関及びCROとの3者契約)の締結手続き、治験責任医師等に対する治験薬概要書(注5)及び治験実施計画書の説明、医療機関への治験薬の搬入、治験実施時の法令及び治験実施計画書の遵守状況の確認、治験の進捗管理・促進、治験データの確認及び症例報告書の回収、治験薬の回収などを行う業務をいいます。
リニカルグループは、臨床試験におけるモニタリング業務を中心に、それに付随する品質管理業務、データマネジメント、統計解析、メディカルライティング、ファーマコビジランスなどの業務を受託しています。
また、近年は国内外のバイオベンチャー企業が起点となり開発品目の多くを創出する状況が進んでおり、こうした企業の創薬を支援する創薬支援事業を行っています。リニカルグループでは、国内大手製薬会社でライセンス、事業開発、臨床開発、開発薬事、マーケティングといった業務に携わり、開発品の目利きから、導入・導出交渉、臨床開発などで数々の実績と豊富な経験をしているものが中心となり、主に、開発品の市場分析・調査、開発・薬事戦略立案、薬事対応、パートナリング・ライセンス支援等のコンサルティングサービスを提供しております。
(2) 育薬事業
CRO事業が医薬品の開発業務を受託するのに対して、育薬事業では医薬品の発売(製造販売)後の支援業務を受託しております。医薬品は発売後も安全性・有効性に関するデータが収集され、適正使用情報・エビデンスとして医療現場に提供されることで、その利用が浸透していきます。2018年4月1日には、臨床研究の信頼の確保を図り実施を推進することで保健衛生の向上に寄与することを目的として、その手続き等を定めた臨床研究法が施行され、法規制に沿った適切な対応が求められることになりました。
リニカルグループの育薬事業は、CRO事業で得たノウハウを活かし、より専門性の求められる企業・医師主導臨床研究の組織体制構築業務、製造販売後の企画業務、モニタリング業務、監査業務を受託することで、同業他社との差別化を図っております。
(注1)GCP(Good Clinical Practice)とは直訳では「適正な治験の実施」を指す包括概念ですが、本邦においては、これを定めた厚生労働省令である「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」及び「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年3月27日付)並びにこれらの運用通知をいいます。
(注2)症例報告書とは、治験実施計画書に規定されているすべての情報を記録するために、被験者ごとに作成される報告書(電子記録のものも含む)をいいます。
(注3)治験実施計画書とは、プロトコルともいい、治験を実施するにあたって、治験を実施する医療機関、治験を依頼する製薬会社その他、その治験にかかわる関係者が遵守しなければならない事項を網羅的に記載した計画書を指し、治験依頼者(製薬会社)により作成されます。
(注4)CRA(Clinical Research Associate)とは、臨床開発モニターと訳されます。医薬品開発段階での治験が、薬機法、その他の関連法令及び治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視(モニタリング)する担当者のことをいいます。
(注5)治験薬概要書とは、治験実施期間中の被験者の管理に必要な知識を提供するために作成される書類で、その内容は治験薬に関する非臨床試験及び治験の結果を編集したものとなっております。
リニカルグループの事業系統図は次のとおりであります。
[事業系統図]
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2024年6月27日)においてリニカルグループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
リニカルグループは経営理念として「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を掲げています。これを実現するため、アンメット・メディカル・ニーズが高く、開発難易度の高いがん、中枢神経系、免疫疾患などの特定疾患領域に注力し、大手製薬会社と対等の立場で医薬品開発を実行・支援できる知識・技術・経験を有する、日本発のグローバルCROを目指しています。
(2)経営環境及び中期経営ビジョン
世界の医薬品市場は欧米を中心に拡大が続いており、これに伴いグローバルのCRO市場も拡大が見込まれています。リニカルグループの主要顧客である国内外の製薬会社は、新薬開発における投資効率を最大化するために、実質的な特許期間、すなわち後発品出現までの期間を最大化するため、国際共同治験を活用し、主要市場国における早期・同時発売を図っています。また、その生命線である新薬の創出のため、自社の研究所以外に大学等との共同研究による創薬研究や、グローバルでの企業統合または買収等により、開発候補品の充実を目指しています。この背景として、これまで主流であった低分子医薬品から抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療、細胞治療へと治療手段であるモダリティが多様化しており、新興バイオ医薬品企業が創薬主体として台頭しています。さらに、新薬のみならずデバイスやアプリなどによる新たな治療方法の開発を行うベンチャー企業も増加しています。
このような環境を踏まえ、リニカルグループでは、日本を含むアジア、米国及び欧州で国際共同治験を実施できる体制を整え、海外拠点を拡充することで国内同業他社との差別化を図り、CRO事業の拡大に努めています。また、医薬品が承認された後、製造販売後の臨床研究・調査の受託やマーケティング活動を支援する育薬事業と、創薬段階から薬事・開発戦略策定などのコンサルティング支援を行う創薬支援事業を立ち上げ、創薬段階から臨床開発、製造販売後まで一気通貫で医薬品のライフサイクルマネジメントを支援できる体制を整えています。医師・アカデミアが主導する臨床研究や、これから日本や海外に進出しようとする新興バイオテック企業に対しきめ細かいサービスを提供することで、すでに大口顧客を抱えリソースに制限のある大手グローバルCROとの差別化を図っています。今後さらなる成長を目指し、2022年に設定した中期経営ビジョンにおいて「日本発のグローバルCROとして、クライアントの戦略的パートナーに」なることを掲げ、以下の重点戦略領域に取り組んでいます。
① Business Focus
・臨床試験に関わる様々なサービスをグローバル・ワンストップで提供
・臨床試験計画段階と臨床試験のすべてのフェーズを対象とする
・がん・中枢神経系など開発難易度の高い疾患領域や新たな創薬モダリティを活用した新薬・治療法にも対応し高品質・スピーディーなサービスを提供
② Client Focus
・大手製薬企業から欧米の有望なバイオテックカンパニーまで幅広いクライアントと長期的かつ戦略的なパートナー関係を構築
・医療機関との良好な関係をベースに、臨床データの品質にコミットするとともに、スピード感・柔軟性をもって提案型のサービスを提供し、クライアント満足を追求する
③ Global Coverage
・医薬品の主要マーケット(日本、米国、欧州)を中心に、迅速な臨床データ収集のために幅広い国と地域をカバー
・あらゆる疾患の臨床データを、季節や地域性を問わず迅速に収集するために、南半球を含め戦略的にサービス提供エリアを拡大し、グローバルでのプレゼンスを高めていく
(3)経営指標
リニカルグループは、中長期的な事業成長と安定的な利益還元のバランスを図り、持続的に企業価値を向上させることを目指し、1株当たり当期純利益(注)を経営指標にしております。
(注)1株当たり当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益を発行済株式数(期中平均)で除した数値であり、株主価値を形成する重要な指標です。株式の評価指標の一つであるPER(株価収益率)の計算根拠の一つでもあり、PERが一定水準に収束すると、1株当たり当期純利益の向上は株価水準の向上に結び付き、結果として株主価値の向上に寄与するものとなります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
リニカルグループにおきましては、2025年3月期までをさらなるグローバルでの成長への基礎固めのフェーズと位置づけ、収益力の強化を最優先課題として取り組み、それを支えるコーポ―レートガバナンスの強化を進めてまいります。収益力の強化については、継続的な増収と利益率向上を目指し、以下を重点施策として取り組んでまいります。
① ターゲットとする顧客層の拡大
近年、バイオテクノロジーの進化は目覚ましく、新たな技術を有する欧米のバイオスタートアップ企業に端を発した開発品が増加しており、伝統的な製薬企業を規模において上回る新興バイオ医薬品企業が続々と誕生しています。
リニカルグループでは従来、日系大手製薬会社からリピート受注を獲得し事業を拡大してまいりましたが、各地域の拠点が連携してグローバルでの情報収集・営業活動を強化することで欧米の製薬企業からの受託も増えつつあります。さらに、有望な開発パイプラインを持つ、欧米のバイオスタートアップ企業にフォーカスし、ニーズにマッチしたきめ細かい提案を行うことで、大手グローバルCROとの差別化を図り、顧客基盤の拡大を進めます。
② ターゲットとする疾患領域の拡大
未実現の治療ニーズを持つ疾患に対する新薬を開発するために、多くの新薬が誕生している抗体医薬品以外にも、再生医療、細胞医薬、核酸医薬、治療アプリ、タンパク質分解誘導薬などの新しい創薬モダリティが誕生しています。また、様々な新薬の誕生により治療できない疾患が減少する一方、高齢化社会において健康寿命を延ばすために新たな新薬が必要とされる疾患はまだ多数存在しています。こうした中、製薬会社の注力領域は、リニカルがすでに多数の実績を有するがん、中枢神経、免疫などの領域以外にも、眼科、皮膚科、希少疾患などへ拡大しています。
リニカルグループでは、こうした新たなモダリティや疾患領域でも顧客ニーズにマッチした提案を行い短期間で高品質な臨床開発を遂行すべく、難易度の高い領域で蓄積してきた臨床開発のノウハウに加え、外部専門家や医療機関との連携強化と積極的な情報収集に努めてまいります。
③ サービス領域の拡充
新薬開発のグローバル化と顧客層の多様化に伴い、臨床開発における各種業務をワンストップで委託するニーズが高まっています。バイオスタートアップ企業や中小規模の製薬企業は、グローバルでの医薬品開発・販売に必要な機能を自社で保有していないことも多く、CROに対し高い専門性とコンサルティング能力が求められます。
リニカルグループでは、日系大手製薬企業を中心に提供してきた治験モニタリング業務とデータマネジメント・解析業務に加え、日本への進出を検討している国内外のバイオスタートアップ企業に対し、創薬支援業務として医薬品市場分析と開発戦略立案、規制当局に対する届出・相談、治験実施計画書や申請関連書類の作成、規制当局への承認申請、共同開発や導出などパートナリング支援等を行っております。また、医薬品発売後において、競合品との差別化や医薬品の適正使用に資する臨床医療データを収集する臨床研究等の企画から論文作成までを行い、新薬臨床開発の上流・下流工程においてもサービス提供を拡大しております。
こうした各工程のサービス提供には高度な知識・経験が求められるため、リニカルグループでは専門人材を育成するための教育研修に注力していますが、さらに日本をはじめ海外拠点において優秀な人材を育成するとともに、協業関係の強化による外部リソースの活用なども行い、多様化する顧客ニーズに柔軟に対応してまいります。
④ 海外事業のさらなる成長
世界最大の医薬品市場である米国とそれに次ぐ欧州において、リニカルグループは、大手製薬会社に加えバイオスタートアップ企業との信頼関係を構築し順調に事業を拡大しています。さらに欧州ではスカンジナビア半島での開発体制構築を進めているほか、今後欧米子会社の営業機能を強化し受注獲得能力の拡充を図ってまいります。また、リニカルが拠点を有する中国、韓国、台湾などの製薬・バイオスタートアップ企業も、自国内での開発に加え、欧米、日本への進出を検討しており、リニカルのグループネットワークを活用することでこうしたニーズにも対応してまいります。
加えて、季節性・地域性のある疾患に対するワクチン・治療薬等の開発ニーズにも対応するために、現在多数の拠点を有する北半球だけでなく、南半球においても開発を遂行できる体制を構築してまいります。すでに米国子会社が南米・豪州のCROと提携して試験を受託していますが、バイオスタートアップ企業への優遇税制を整え治験誘致に積極的な豪州については顧客企業からの引き合いも増加しており自社拠点確立を目指します。
⑤ 分散型臨床試験などデジタル技術を活用した開発効率化ニーズへの対応
近年、新薬開発の難易度上昇や競争激化に伴い、開発プロセスの効率化による迅速化やコスト抑制ニーズが高まっており、分散型臨床試験(DCT)など、デジタル技術を活用し、効率的に臨床試験を実施するニーズが高まっています。こうした状況下において、リニカルグループでは、自社で保有しない機能はグローバルでパートナリングを拡大し、ニーズに応じて内製化することにより、多様化する治験効率化ニーズにも対応してまいります。
⑥ 財務基盤の強化
海外拠点拡充などの中期的成長戦略を迅速・柔軟に実現するためには、当座比率、自己資本比率を高め、調達コストを意識した機動的な資金調達を可能にする必要があります。
リニカルグループは、前出の戦略による増収と、高稼働率の維持、コスト管理の徹底により、1株当たり当期純利益の持続的な成長を目指すとともに、株主還元と成長資金の確保の両立に努めてまいります。
(5)次期の見通し
① 概要
リニカルグループの展開地域における下記の状況に基づき、次期の連結業績見通しにつきましては、売上高12,669百万円(前期比2.9%増)、営業利益1,009百万円(前期比39.0%増)、経常利益1,047百万円(前期比32.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益697百万円(前期比106.1%増)を見込んでおります。
地域別の状況は下記のとおりです。
日本・アジア地域におきましては、その主要地域である日本において、日系大手製薬企業による大型開発案件が減少するなどドラッグロスが拡大しており厳しい事業環境が続くことが見込まれますが、国内企業の新規開拓と、海外製薬企業や新興バイオ医薬品企業からの日本を含む試験の受注獲得に向けて営業活動を継続してまいります。日本市場への参入を支援する創薬支援事業と治験業務をあわせたワンストップサービスの提案と、営業面で欧米事業との連携を強化することで、日本・アジアを含む欧米発のグローバル試験獲得を狙います。日本を除くアジアにおきましては、韓国は順調に業績が推移するものと見込んでおり、中国・台湾でも新規案件獲得により業績回復を見込んでいます。以上の状況から日本・アジア地域において、売上と利益の確保を見込んでおります。
米国におきましては、米国市場の新薬開発は旺盛で、大型案件を含む新規案件の引き合いも増加しており、積極的な営業活動により新規受注を積み上げてまいります。米国市場は、リニカルビジネスの最重要地域であり、引き続き受注獲得力の強化に加え、欧州事業との連携による営業面でのグローバル・シナジーを一層強化することにより米国市場の深耕を加速し、持続的な成長を図ります。このような状況から、米国においては次期において順調に業績が推移するものと見込んでおります。
欧州におきましては、欧州経済においては減速感がみられ、バイオベンチャーの資金調達が難しい環境が継続しておりますが、米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあります。営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大してまいります。このような状況を反映し、欧州においては次期において業績の回復を見込んでおります。
② 受注残高の推移
リニカルグループのCRO事業において受託する治験業務では、1年から3年程度の治験実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定します。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生します。育薬事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生します。
受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高であります。これは、今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、リニカルグループの今後の業績予想の根拠となる指標であります。
各地域の受注状況につきましては、以下のとおりです。
日本・アジア地域においては、新型コロナウィルス感染症が5類に分類され治験環境が改善して順調に受注残高を消化し売上高への計上が進みました。加えて、複数の大型試験の中止や早期終了等による契約変更が発生した結果、新規の受注の獲得や工数増加の契約変更等があったものの、2023年3月期末から受注残高が減少しました。海外企業から日本を含む新規試験の受注獲得に向けて営業活動を継続しております。
米国においては、高い進捗率で契約業務を進め順調に売上高を計上したことで、新規案件の契約や工数増加の契約変更による受注残高の積み上げを上回って受注残高が消化され、2023年3月期末から受注残高が減少しました。引き続きバイオテックからの引き合いは多く、上記受注残高には含まれない契約締結作業中の新規案件があるほか、グローバル案件等の複数案件の打診を受けており、受注残高を積み上げるべく、営業活動を継続しております。
欧州地域においては、新規案件の受注獲得や工数を増加する契約変更等もありましたが、既存の受注案件を消化し売上高を計上した結果、2023年3月期末から受注残高が減少しました。欧州経済においては減速感がみられ、バイオベンチャーの資金調達が難しい環境が継続しておりますが、米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあり、上記の受注残高には含まれない契約締結前の案件が複数あります。営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大してまいります。
以上の受注環境のもと、2024年3月期末時点の受注残高は2023年3月期末と比較して41.8%減の121億円となりました。
表.受注残高の推移
(単位:百万円)
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2022年 3月期末
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2023年 3月期末 (A) |
2024年 3月期末 (B) |
増減率 (%) (B-A)/A |
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受注残高 |
22,514 |
20,933 |
12,188 |
△41.8 |
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地域別 |
日本 |
9,791 |
8,195 |
3,877 |
△52.7 |
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アメリカ |
3,731 |
5,798 |
3,221 |
△44.5 |
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ヨーロッパ |
6,837 |
5,252 |
3,655 |
△30.4 |
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アジア |
2,156 |
1,686 |
1,434 |
△15.0 |
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(1)リスクマネジメント体制
リニカルは、企業活動に影響を及ぼす恐れのあるリスクを想定し、問題発生の未然防止に努めると同時にこれに適切に対処するため、リスクマネジメント委員会を設置しております。これにより、災害、不正、情報漏洩などの事業遂行リスクについて年に一度、評価を行い、回避策・対応策の検討と実行を行っています。また、持続的な事業成長を阻害するような環境変化や機会損失などの事業機会リスクについては、代表取締役の指示のもと、各事業部・部門にて評価と対策を行っています。また、これらのリスク管理状況は経営会議及び取締役会に定期的に報告しております。
さらに、2025年3月期には、当期に新たに導入された執行役員CXOが、担当職務ごとに海外グループ会社横断でのリスク抽出・評価、回避策・対応策の検討を行い、リスクマネジメント委員会においてその確認と、重要リスクの評価及びモニタリングを行う体制とします。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2024年6月27日)においてリニカルグループが判断したものです。
(2)重要リスク
上記体制に基づき、各リスクを発生の頻度とダメージ(損害金額)の大きさによりそれぞれ5段階で評価し、重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるリスクを重要リスクとしてその対応策の強化に注力しています。中でも特に重大な影響があると判断したリスクは以下の通りです。
① 特定の顧客への売上割合の高さに関するリスク
リニカルグループは、医薬品開発を行う企業から業務を受託しサービスを提供しています。特定の顧客への売上が全体に占める割合が高くなりすぎた場合には、その顧客がリニカルグループに委託中のプロジェクトを中止・キャンセルした場合に、CRAの稼働率が低下すること等により、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。これまでリニカルは日本国内の有望な開発品目を多く有する大手製薬会社を中心に取引を行っており、その業務品質が顧客に認められた結果として特定の国内製薬会社の売上割合が相対的に高くなっていましたが、海外での事業を拡大し顧客数が増加した結果、この状態は改善しております。
引き続きこうしたリスクへの対応として、グローバルビジネスの拡大及び創薬支援事業など業容の拡大により、国内外のバイオテック企業の需要の取り込みを図るなど新規顧客を開拓し、顧客基盤の拡大に努めます。
② CRO業界内の競争激化に関するリスク
欧米グローバルCROの日本事業拡大や他社CROが行う低価格戦略に伴う価格競争の激化等により、受託件数の減少や受託契約価格の下落が起こった場合、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクへの対応として、リニカルグループでは、国内外の製薬会社やバイオテック企業の新規性の高い開発品や難易度の高い疾患領域へ注力し、優秀な人材の確保・育成を通じて、迅速かつ高品質にグローバルワンストップで受託業務を遂行することにより、同業他社との差別化を図ってまいります。
③ 国内における治験の海外シフトに関するリスク
医薬品開発の国際競争は益々過熱しており、主要市場国で迅速に承認を取得し収益を最大化するために、グローバル開発は製薬会社の基本的な戦略となっております。リニカルグループの想定を大きく超えるスピードで治験環境のグローバル化と海外シフトが起こり、日本国内で行われる治験の規模・数が急速に減少するような場合には、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクへの対応として、リニカルグループでは日本以外にも米国、欧州、アジアに自社拠点を展開しています。また、自社拠点を有しない国においては、短期的には他社CROと協業体制を構築するとともに、自社拠点設立による内製化を検討し、グローバル受託体制の拡充による国際共同治験への対応力の向上や、海外子会社の受注獲得力向上を通じた海外売上比率の拡大を進めています。
④ 治験の委託件数減少・規模縮小のリスク
リニカルグループの主要顧客である製薬会社の医薬品開発戦略の変更(重点領域・開発品目の大幅な見直し、他社との共同開発・ライセンス契約締結促進、及びこれらに伴う内製化や外注方針の見直しなど)により、リニカルグループへの委託件数が減少する可能性があります。また、新薬開発の難易度上昇や競争激化に伴い、開発プロセスの効率化による迅速化やコスト抑制ニーズが高まっており、リアルワールドデータの利活用やDXの進展等による開発効率化が想定以上の速さで進展する場合には、リニカルグループへ委託する治験の規模が縮小し、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクへの対応として、リニカルグループでは、国内外の製薬会社・バイオテック企業などの新規顧客開拓による顧客基盤の拡大に加え、分散型臨床試験(DCT)などに必要な自社で保有しない機能については、グローバルでパートナリングを拡大しております。今後、ニーズ・市場動向に応じて内製化を検討することにより、多様化する治験効率化ニーズにも対応してまいります。
⑤ 関連法規制の不遵守によるリスク
リニカルグループが受託する業務の実施等において、関連する諸法令に対して重大な違反の事実があった場合に、その委託者である製薬会社に損害を与え、リニカルグループが損害賠償の責めを負うとき、または、委託者以外の製薬会社からも信用を失ったときは、訴訟の提起や受託件数の減少により、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクへの対応として、業務手順の定期的な見直しとリスクに基づく品質管理プロセスの確立や、従業員に対する継続的な事例研修を行うことで業務品質の確保に努めています。
⑥ 情報セキュリティに関わるリスク
医薬品の開発業務において情報のデジタル化が進展する中、リニカルグループにおいてもこれまでITセキュリティの強化を随時実施しておりますが、その想定を超えたサイバー攻撃などにより、リニカルグループのITを利用したサービスの障害や情報漏洩が起こった場合に、リニカルの事業運営並びに、顧客や治験実施施設の業務に重大な影響を与えるリスクがあります。
こうしたリスクへの対応として、以下の通り、外部専門家から指導・助言を得て、情報セキュリティをより一層強化しております。
<基本的な考え方とガバナンス体制>
リニカルグループは、医薬品開発を担う企業として情報セキュリティの重要性を深く認識しており、「情報セキュリティ基本方針」を定め、海外子会社を含む全グループで情報セキュリティの維持に取り組んでいます。
リニカルグループは、執行役員CIO(Chief Information Officer)がITに関するグループ全体のリスク管理と戦略の策定・実行を担い、代表取締役へ直接報告を行っています。情報セキュリティに関しては、執行役員CIOの配下にあるCISO(Chief Information Security Officer)を最高責任者とし、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)推進体制をグループ全社で構築し運用しています。監督機能としては、経営全般に関するガバナンスの一環として取締役会が最終的な監督責任を担っており、特に情報セキュリティについては重要リスクとしてその対応状況がリスクマネジメント委員会を通じて定期的に報告されています。
<対策>
上記の基本的な考え方とガバナンス体制の下、ISMSにおいて定期的に情報セキュリティリスクの特定と分析を行うとともに、顧客等ステークホルダーからの要求や法令等の規制を考慮して情報セキュリティに関する手順と組織的、人的、物理的、技術的セキュリティ対策を整備し運用することでリスク低減を行っています。また災害やインシデント発生時に迅速に復旧や報告・対応できる手順を整備しています。こうした手順の周知とサイバー攻撃を含む情報セキュリティリスクに関する従業員一人ひとりの対応レベルを高めるため、定期的に全社員を対象とした様々な研修を実施しています。なお、2024年3月期には、グループ全社を適用範囲としたISMSについて、独立した第三者機関であるNSF-ISRを通じて国際的な認証制度であるISO/IEC27001認証を取得しました。
今後も継続的にISMSの運用とその有効性評価により情報セキュリティの維持・強化に取り組んでまいります。
⑦ 個人情報の不適切な取扱いに関するリスク
リニカルグループが受託・実施した臨床試験等において、個人情報の流出や漏洩、不正利用などが発生した場合において、リニカルグループが委託者である製薬会社から損害賠償の責めを負うとき、または、その情報の流出により委託者以外の製薬会社からも信用を失ったときには、訴訟の提起、もしくは受託件数の減少により、リニカルグループの業績に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクへの対応策として、ISO/IEC27001に適合した情報マネジメントシステム(ISMS)の運用に加えて個人情報保護法ほか各国関連法令に基づき個人情報保護に関する手順を整備し、個人情報保護に関する全社員への研修及びマネジメントクラスやグループ会社を対象とした階層別の研修等を定期的に実施し、発生リスクの低減に努めています。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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