オカムラ食品工業(2938)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3 【事業の内容】 オカムラ食品工業グループは、オカムラ食品工業及び連結子会社の9社で主に構成され「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」ことをMissionとし、養殖事業、国内加工事業、海外加工事業、海外卸売事業の4つの事業を柱としてビジネスを展開しています。サーモンを中心とした川上から川下までの垂直統合型のビジネスモデルで、グローバルに事業を展開し、その結果として、自己資本利益率や売上高営業利益率などの指標において上場会社平均を上回る実績を達成しています。 各事業における事業会社名及びその系統図は、次のとおりであります。以下に示す区分は、セグメントと同一の区分であります。 各事業の概要は、次のとおりであります。 (1)養殖事業生食用のサーモントラウトを養殖し、国内外に向け販売する事業であります。Musholm A/Sにおいては、毎年約3,500トン超のサーモントラウトを生産しております。更にサーモン養殖の世界的なリーダーであるノルウェーの養殖との差別化を図るため、卵を持たせる養殖を行っています。その一部はオカムラ食品工業向けに輸出され、以下で説明する国内加工事業に使われます。オカムラ食品工業グループ以外へは、魚の身の部分はヨーロッパ諸国へスモークサーモンの加工用原料として、卵はいくらを生産しヨーロッパ各地へ、あるいはいくら加工用原料としてヨーロッパ各地へ販売しております。 日本国内におきましては、2017年6月に青森県西津軽郡深浦町に日本サーモンファーム株式会社を設立し、サーモントラウトを生産しております。サーモン養殖先進国であるデンマーク子会社Musholm A/Sの大規模生産のノウハウを活用し、孵化から養殖まで一気通貫した生産体制を構築しております。 日本サーモンファーム株式会社の海面養殖イメージ サーモン養殖は自然と地域のバックアップを受けて行う事業です。サーモン養殖に適した青森の地で地元企業としての強みを生かし、地域と一体となって事業を進めています。例えば国内では、河川を利用した中間養殖を行うにあたっては水利権が、海面養殖を行うにあたっては区画漁業権の行使が必要です。オカムラ食品工業グループは、地元漁協の組合員として区画漁業権を行使し、サーモン養殖を行っています。 なお、オカムラ食品工業グループでは、養殖事業の一部においてASC認証を取得しております。 ASC認証とは、水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が管理運営する養殖に関する国際認証制度で、養殖場が自然環境の汚染や資源の過剰利用を行っておらず、その養殖事業に持続可能性が認められることを認証するものです。近年はASC認証のある原料を使った製品を取扱いの中心に据える国内の大手スーパーマーケットなども増えて来ています。 (2)国内加工事業国内加工事業及び後述の海外加工事業は、魚卵・成魚を原料として顧客の要望にそって加工し、販売を行う事業です。 国内加工事業における加工拠点は青森県青森市に所在するオカムラ食品工業青森本社併設の第一工場と第二工場です。第一工場では数の子及びたらこと、オカムラ食品工業グループ日本サーモンファーム株式会社の養殖サーモンを主に加工しております。第二工場ではイクラと筋子の加工をしております。国内のスーパーマーケットや外食向けの販売が主ですが、最近ではアジア圏の大手回転寿司チェーンへの輸出も増えております。 青森第一工場で製造した数の子製品 Musholm A/S魚卵原料から製造したイクラ製品 青森第一工場内たらこ製品製造ライン (3)海外加工事業 海外加工事業は、海外の加工拠点において水産加工品を製造する事業です。国内加工事業と同様に、オカムラ食品工業養殖事業からの原料仕入れに加え、自社仕入れチームが自身で良質な原料を世界中から調達し加工販売まで行います。 海外加工事業における拠点は以下の3つです。①オカムラ食品工業東京事業本部 オカムラ食品工業の東京事業本部では、貿易実務、海外加工場の生産管理、国内外への販売活動を行っております。 ②ミャンマーの自社グループ工場(Okamura Trading Myanmar Co., Ltd.) 2017年9月、ミャンマーのティラワ経済特区内に子会社Okamura Trading Myanmar Co.,Ltd.を設立しました。同経済特区内は日本企業の進出が進んでおり、日本水準のインフラが整っております。主にサーモン原料の寿司ネタ加工を行っております。 外部仕入原料のサーモンハラス寿司スライス製品 Okamura Trading Myanmar Co., Ltd. 外観 ③ベトナムのパートナー工場オカムラ食品工業とは20年来の関係があるベトナムの大手水産加工工場とパートナー契約を結んでおります。契約の内容は「第2 事業の状況 5 重要な契約等」をご参照ください。同工場では、サーモン原料の寿司ネタ加工の他、サバ原料を始めとした焼成済みの焼き魚・煮魚製品の加工も行っております。当工場内にはオカムラ食品工業子会社Okamura Trading Vietnam Co., Ltd.の事務所を設置し、現地ワーカーの教育や生産管理を行っております。生産された製品は日本国内消費向けに輸出される他、後述のシンガポールやマレーシアの現地販売拠点に向けても出荷されます。 (4) 海外卸売事業 シンガポール(Okamura Trading Singapore Pte., Ltd.)、マレーシア(Xenka Trading (M) Sdn. Bhd.)、台湾(Okamura Trading Taiwan Co.,Ltd.)及びタイ(Okamura Trading (Thailand) Co., Ltd.)に拠点を有しており、現地の日系スーパーマーケットや日本食レストランに、日本から輸入した日本食材を販売しております。顧客のニーズに応じて他社から幅広く商材を調達しておりますが、自社グループ内で養殖・加工した商材も当事業を通じて海外市場に販売されております。顧客のニーズに合わせた製品をタイムリーに、そして日本基準のきめ細やかなサービスを持って提供しております。 Okamura Trading Singapore Pte., Ltd. 自社倉庫 Xenka Trading (M) Sdn. Bhd.の事務所及び配送トラック
有価証券報告書(2025年6月決算)の情報です。
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 (1)経営方針 オカムラ食品工業グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」ことをMissionとし、サーモン養殖事業、国内加工事業、海外加工事業、海外卸売事業の4つの事業を柱としてビジネスを展開しています。 日本において水産業は衰退産業といわれています。しかし海外において水産業は成長産業であります。私たちは日本の水産業において成長を阻害しているのは二つの要因、すなわち「供給の不安定性」と「消費の減少」であると考えております。養殖を推し進めることで「供給の不安定性」を解消し、また水産物の消費拡大が期待されるアジア圏での販売を促進することで「消費の減少」を解消していきたいと考えております。そして、これらの活動を通じて新しい水産業を切り開き、衰退産業とされた日本の水産業の成長産業化を実現することを経営方針としております。 (2)経営環境オカムラ食品工業グループを取り巻く環境は以下のとおりと認識しております。 ①水産資源の需要はグローバルでは増加傾向 世界的にみると、一人当たりの食用魚介類の消費量は過去50年で約2倍に増加し、近年でもそのペースは衰えていません。とりわけ元来魚食習慣のあるアジアやオセアニア地域では、生活水準の向上に伴って顕著な増加を示しています(※1)。 ②養殖への需要の高まり 世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は増加し続けています。その一方で、持続可能な(適正レベルよりも資源量が多く、生産量拡大の余地がある)レベルで漁獲されている状態の水産資源の割合は低下傾向です。1974年には90%の水産資源が適正水準以内で利用されていましたが、2021年にはその割合は62.3%まで低下したとも言われています(※2)。この状況を背景に養殖の重要性はますます高まっており、漁業・養殖業生産量のうち漁業の漁獲量は1980年代後半以降横ばい傾向となっている一方で養殖業の収獲量は急激に伸びています(※3)。 ③サーモン需要の増加と養殖量拡大ペースの鈍化 世界中でサーモンの人気は高く、世界のサケ・マス類養殖生産量は1990年の57万tから2021年の421万tと、約30年で7倍程度に増加しています(※4)。日本国内においてもサーモンの人気は高く、各種調査でも人気の魚種として常に上位にあげられています。養殖効率に優れていて比較的低価格で購入しやすいサーモンの需要は、今後も伸びていくものと期待されています。 一方でノルウェーやチリといったサーモン養殖大国における養殖適地の開発は既に概ね行われていることから、今後の養殖量拡大のペースは、これまでとは異なってくると予想されています。 (※1)令和4年度 水産白書(水産庁) P.149(※2)令和6年度 水産白書(水産庁) P.164(※3)令和6年度 水産白書(水産庁) P.162(※4)FAO Fishstat (3)経営戦略 このような環境を踏まえ、オカムラ食品工業では養殖事業と海外卸売事業の成長を牽引する二つの事業として位置づけており、中長期の主な戦略として以下を計画しております。 ①国内養殖規模の拡大 オカムラ食品工業の成長のエンジンの一つはサーモン養殖事業であります。そして生産量を拡大していくことがオカムラ食品工業の成長の基礎になると考えています。サーモン養殖事業はデンマーク及び日本国内において展開しております。 オカムラ食品工業グループはサーモン養殖には以下のような限りない可能性があると考えており、それがこのような戦略を採る背景となっています。・ サーモンは4大動物性タンパク質の供給源として、牛肉、豚肉、鶏肉と並ぶ存在になりうる。・ 肉類と同等の高タンパクでありながら、低いカロリーが健康志向にも合致する。・ 完全養殖が実現されていて、海から天然の稚魚の捕獲が不要。生態系に影響を与えない。・ 生産効率が高い。具体的には、増肉係数(FCR)が低く、かつ可食部分が多く、捨てる部位がほぼない。・ 低魚粉飼料で養殖が可能。植物性タンパク原料から、海由来タンパクを生産できる。・ サーモンの市場は世界中に存在しており、市場規模が大きい。回転寿司でも定番の人気ネタとなっている。 なおデンマークでは、主に魚卵の採取を目的としてサーモンを養殖しております。デンマークでは近年養殖の拡大による環境負荷が懸念されていることや、適地が限られていることを理由に、新たなライセンスが発行されておりません。そのため、急激な規模拡大は容易ではない状況ですが、引き続きライセンス取得のための活動は継続してまいります。 一方、日本国内においては特に北日本では養殖適地が多数存在していることや、国の方針として養殖を増やすことが決定されていることから、オカムラ食品工業グループにおける養殖規模拡大は国内養殖が主となります。国内養殖量は継続的な設備投資を背景に、2025年4-7月の3,476トンから、順次拡大していく計画としています。引き続き、この国内養殖における水揚げ量増に対応するため、養殖設備の増強を継続してまいります。 ②国内養殖事業の効率性向上 養殖については、量の拡大とともに効率性の向上も重要な課題です。特に国内養殖においては改善の余地が大きく、オカムラ食品工業グループでも屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムや給餌用バージ船(※)などを導入し効率化に取り組んでいるところであります。引き続き最新の養殖技術を持つデンマーク子会社Musholm A/Sの技術を取り入れながら、日本国内においてもサーモン養殖先進国並みの養殖技術を確立すべく、取組みを継続してまいります。 (※)バージ船とは、船底が平らになっている船舶のことであり、オカムラ食品工業の連結子会社である日本サーモンファーム株式会社ではこのバージ船タンクに養殖用の餌を保管し、船外から自動で給餌できるシステムを構築しております。 ③海外卸売事業の強化 養殖事業と並ぶオカムラ食品工業の成長エンジンは海外卸売事業であります。日本食ブーム、あるいは人口増を背景に海外、特にアジアにおいて日本食マーケットが大きく成長を続けております。このマーケットの成長の波をしっかりキャッチし、オカムラ食品工業の成長にも繋げてまいります。すでにシンガポール、マレーシア、台湾及びタイに子会社を有し、着実に成長してきておりますが、日本食需要の大きい地域を中心に今後も進出先を増やし、さらなる成長に繋げていく計画です。また、シンガポールでは自社保有の超低温倉庫(-60℃)による徹底した温度管理や迅速できめ細やかな配送を行っており、オカムラ食品工業独自のコールドチェーンを築いておりますが、さらに超低温倉庫や配送能力への投資を進めていく計画としております。マレーシアにおいては、ハラール食品(※)のニーズが高いことから、ハラール食品の強化を重点課題とし、ハラール対応を目的とした新倉庫を2024年1月より稼働しています。その他、水産専門会社であることや、養殖や加工部門を有していることの強みをより活かせるよう、カバーエリアの拡大、ヒトやモノへの先行投資を進めてまいります。(※)ハラール食品とは、イスラム教で食べることが許されている調理法等に従い生産した食品のことを指します。 (4)対処すべき課題 経営戦略を進めていくうえでオカムラ食品工業グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。 養殖事業① 国内養殖規模の拡大 オカムラ食品工業の成長エンジンの一つはサーモン養殖事業であり、その養殖量を拡大していくことがオカムラ食品工業の成長の基礎になると考えています。養殖規模拡大のためには生産能力を上げていくことが必要で、特に不足しがちな中間養殖場の確保が課題です。中間養殖場の新設にあたっては、適地の選定、地元との調整、設備投資資金の確保、養殖施設の建設と、一朝一夕に進むものではないため、中長期的な視点に立って着実に設備投資計画を進めてまいります。 ② 養殖の効率性向上 養殖については、量の拡大とともに効率性の向上も重要な課題です。特に国内養殖においては改善の余地が大きく、オカムラ食品工業グループでも屋外循環式の大規模中間育成魚高密度生産システムや給餌用バージ船などを導入し効率化に取り組んでいるところであります。引き続き最新の養殖技術を持つデンマーク子会社Musholm A/Sの技術を取り入れながら、日本国内においてもサーモン養殖先進国並みの養殖技術を確立すべく、取組みを継続してまいります。 海外卸売事業③ 海外市場での営業基盤の強化 アジアにおける日本食マーケットの成長の波を確実にキャッチすることが、オカムラ食品工業の成長には重要です。そのための配送・保管設備の増強は計画しておりますが、それに加えて、新しい顧客の開拓に努めるとともに、既存の顧客のご不満を聞き、顧客にご満足していただける製品開発やサービス提供を行うことで、営業基盤の強化を図っていくことが課題であると認識しております。 国内加工事業、海外加工事業④ 安定的な加工体制の確保 安定的な加工体制の確保は、オカムラ食品工業の基盤となります。これが確保されてこそ、加工事業の拡大だけでなく、養殖した青森サーモンの加工品マーケットへの展開や、海外卸売事業における顧客ニーズへのきめ細やかな対応といったことが可能になります。加工拠点の分散によるリスクヘッジ、工場従業員の教育による品質や効率性の向上といった点を推し進めてまいります。 その他⑤ 品質管理に関する継続的な向上 消費者の安全・安心へのニーズはますます高まっており、食料品を取り扱うオカムラ食品工業グループにおきましても、食品表示も含め、食の安全性を確保してお客様に安心してご利用いただけることが最重要事項であると認識しております。品質管理体制の強化、業務フローの標準化、食品表示や食品関連法規に関する情報の社内共有等を進め、品質管理に関する継続的な向上に取り組んでまいります。 ⑥ 環境への配慮 製造の原料となる水産物や養殖事業は大自然からの恩恵です。我々の事業は自然環境、特に海に大きく依存しています。自然への感謝の気持ちを忘れずに、自然を大切にすることこそ、オカムラ食品工業の持続・発展にとって不可欠のことと考えています。 (原料について) 我々が製造に使用する原料は資源として持続的に調達出来るものでなければなりません。絶滅が危惧される原料、資源管理が徹底されていない原料を使用した製品加工は控えるべきです。資源管理が十分に行われていると認定されたASC・MSC(※)認証原料の使用を推進いたします。(※)MSC認証とは、水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業に対する認証制度を指し、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が管理運営しています。(養殖事業について) 養殖事業を拡大すれば、周辺海域に影響を与えてしまう可能性が生じます。もし我々の事業が水質汚染や生態系破壊の原因となってしまえば、事業を継続することは出来なくなってしまいます。魚を育てるためには大量の飼料が必要となりますが、その主成分である魚粉や魚油は天然水産物由来のものです。飼料の成分やその原材料について注意を払う必要があります。 ⑦ 地域との共生の推進 自然環境に加え、我々の事業は地域社会の理解と協力の基に成り立っています。事業の継続とその拡大には地域との共生の実現が不可欠です。そのためには地域の方々と十分に話し合い、それを通じて地域との信頼関係を築くことが重要です。我々企業と地域社会とのコミュニケーション推進を通じて地域社会に理解されるとともに、青森やミャンマーなどでの雇用創出という形でその地域に貢献する企業となることを目指してまいります。 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 オカムラ食品工業では養殖量、特に拡大余地の大きい国内養殖量を重要な経営指標と考えております。水産物については漁獲や商品相場の変動が大きなリスクとなっていますが、養殖量の拡大によってこれらのリスクを低下させることができ、安定的に水産原料を確保することに繋がります。また、養殖事業の利益率は相対的に高いため、養殖規模の拡大によってオカムラ食品工業グループ全体の利益率をさらに向上させることに繋がります。 現在、国内養殖量拡大のためのネックとなっているのは、中間養殖場を主とした養殖設備の不足にあります。オカムラ食品工業グループでは、養殖量拡大に向けて積極的に養殖設備への投資を行っていきたいと考えております。
事業等のリスク
3 【事業等のリスク】 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在においてオカムラ食品工業グループが判断したものであります。 1.気候変動(温暖化)によるリスク (1)資源アクセス確保に与える影響(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:大) 地球温暖化による海洋環境の変化により、下記のようなリスクが生じることが考えられ、オカムラ食品工業グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、オカムラ食品工業グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。② 海洋環境が変化した場合には、オカムラ食品工業グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、オカムラ食品工業にとっての原料仕入価格が高騰するおそれがあります。 (2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、赤潮、津波、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。特に、オカムラ食品工業の主力工場のある青森県青森市、オカムラ食品工業グループの養殖場が集中する青森県西津軽郡深浦町及び青森県東津軽郡今別町、デンマークMusholm島周辺に想定外の災害が生じた場合には、オカムラ食品工業グループの経営成績に下記のような大きな悪影響を及ぼす可能性があります。 ① オカムラ食品工業グループの養殖魚、食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場、漁船への直接被害 ② 台風等の悪天候による時化の増加により、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足 ③ 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響 ④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加 以上のリスクに対処するため、事業セグメントの分散、養殖拠点や製造拠点の分散を進めております。これにより、特定の事業や拠点に大きな損失が生じた場合でも、他の事業や拠点でその損失を吸収しうる体制を構築してまいります。 2.海外事業の拡大に関連するリスク(カントリーリスク)(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:中) オカムラ食品工業グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」をMissionとして掲げているとおり、海外での事業展開を積極的に行っております。海外への展開においては、以下を含む様々なリスクにさらされております。 ・政情や治安の不安・外国為替相場の変動・将来起こりうる不利益な税制・法令や規制の予期せぬ変更・顧客ニーズ、市場環境及び現地の規制に関する理解不足・人財の採用・雇用及び国際的事業管理の難しさ・新たな多国籍企業との競争 海外事業の拡大に取り組む中で、上記のような事業展開に関連する様々なリスクが顕在化し、想定した事業展開を行うことができない可能性があります。また、海外企業への投資に関連して減損が生じる可能性や、オカムラ食品工業グループの目標を達成できない市場から撤退する可能性があります。これらの結果、オカムラ食品工業グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 なお海外加工事業においてはベトナムとミャンマーに加工拠点を有しており、このうちミャンマーにおいては本書提出日現在においても不安定な情勢が継続しております。現在もミャンマー工場は稼働を抑えた形で継続稼働しておりますが、情勢が悪化した場合は、海外加工事業における加工能力に影響を及ぼす可能性があります。今後も従業員の安全確保を最優先しつつ、引き続き情勢を注視してまいります。 3.養殖事業に関するリスク(1)国内養殖において区画漁業権や水利権の維持や新規取得ができなくなるリスク(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:大) 国内養殖において河川を利用した中間養殖を行うにあたっては水利権が、海面養殖を行うにあたっては区画漁業権の行使が必要になります。何らかの理由によりこれらの権利の使用や拡大に制約が生じた場合、オカムラ食品工業グループの養殖事業の維持や拡大に支障を及ぼす可能性があります。 当該リスクに対応するため、オカムラ食品工業グループでは法令遵守や環境配慮、行政、地域住民、地元漁協などとの対話を通じて、これらの権利の維持・拡大に努めております。 (2)養殖事業による海洋汚染に関するリスク(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 海面養殖では、残餌や糞尿等の海底堆積や逃亡魚等による海の汚染リスクが大きな課題です。オカムラ食品工業がこの課題に適切に対処できない場合、ASC認証取消によるオカムラ食品工業養殖魚の付加価値の低下、地元漁協との関係悪化等により、養殖事業に悪影響を与える可能性があります。 当該リスクに対応するため、オカムラ食品工業ではASC認証の維持を通じて環境に配慮した養殖を継続するとともに、潜水調査を含む継続的な環境影響調査や適正給餌などに努めております。 (3)養殖事業における環境規制の強化に関するリスク(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 環境保護の観点から、養殖事業に関する規制は強化される傾向にあります。新たな国内外の法規制等が制定された場合、オカムラ食品工業グループにおいて、これら法規制等への対応のために新たな環境保全コストの負担等が生じることが予想されます。オカムラ食品工業が現在又は将来の環境規制を遵守できなかった場合、オカムラ食品工業に対する損害賠償請求や罰金の賦課、一定地域における生産・操業停止、オカムラ食品工業の評判・信用の低下を招き、オカムラ食品工業グループの事業展開、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 なお、オカムラ食品工業グループに重大な影響を及ぼす可能性のある法規制等の改正は、本書提出日現在においてはありません。 (4)養殖用卵の調達に関するリスク(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 本書提出日現在において養殖事業における養殖量の約3割程度を占める日本国内においては、サーモンの養殖用卵の仕入は国家間の魚病防疫の契約上、米国もしくはカナダからの仕入れに規制されています。オカムラ食品工業グループの国内養殖では米国の業者から仕入れた発眼卵を使って養殖を行っていますが、何らかの理由で当該仕入先からの発眼卵仕入が滞った場合、オカムラ食品工業グループの国内養殖事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。 (5)MSC認証およびASC認証について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) オカムラ食品工業グループが認証取得している持続可能な漁業認証(MSC)および養殖認証(ASC)においては、規格の要求事項を満たしたマニュアルを作成・運用し、定期的に認証審査機関による継続審査及び更新審査を受けることが求められます。オカムラ食品工業グループでは、最新の規格要求事項に合わせてマニュアルをアップデートすることで、MSC・ASCを適切に運用しておりますが、当該審査で認証継続不可となる重大な不適合あるいは不適合品発生時の不適切な対応により、認証継続が一時停止又は取消された場合、オカムラ食品工業グループが継続的に取り組んでいる事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。 (6)疾病による大量斃死(へいし)(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) サーモン養殖においてはIHNやIPNといった抗生物質の効かないウイルス性の病気が発生することがあります。これらの病気が蔓延すると大量斃死が発生し、オカムラ食品工業の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります オカムラ食品工業では病気が持ち込まれるリスクに対処するため、他社で養殖した種苗は一切扱わず、発眼卵から自社で養殖するのみとしています。また、野生動物(特に鳥)による水平感染予防のための鳥よけ網、人的な水平感染予防のために場内入場時の全ての人、車に関する殺菌を実施しております。また、ワクチン開発を支援するため、ワクチン開発会社の行う治験へは積極的な協力を行っていく方針です。 (7)日本国内における養殖ライセンスの導入(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) デンマークをはじめ養殖先進国においては、淡水養殖を行う際は、取水量のライセンス、排水基準の規制などが存在し、海面養殖を行うためには、飼育生物量(バイオマス)ライセンスや使用給餌量ライセンスの取得が必要とされています。多くの国でこのライセンスの取得要件がネックとなり、それ以上の規模拡大が困難になるという状況が発生しています。 日本国内においてはこのような規制は現在はありませんし、規制が導入されることも現時点では予定されていません。しかしながら、長期的に見れば諸外国と同様にこのような規制が導入される可能性は排除できず、その場合は国内の養殖事業の大きな制約要件になる可能性があります。 当該リスクも見据え、オカムラ食品工業では長期的な成長を想定して行使可能な水利権や区画漁業権の拡大を先行して進めております。また、ASC認証の取得率向上を通じて高い環境基準に対応できる体制の構築に努めてまいります。 4.製品の安全性について(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 食品の安全性に対する消費者の関心や要求は年々高まっております。 オカムラ食品工業グループでは安全で、顧客に安心していただける商品をお届けするよう、経営責任者直轄の品質管理室を設置し、製造現場の衛生管理を推進しております。自社工場ではHACCPの管理手法を導入し、より高いレベルの食品安全マネジメントシステムの認証取得に取り組み、継続的な改善活動と、徹底した衛生管理を実践しております。また、検査室を設置して、食品の安全性を保証する微生物検査をはじめ各種検査を実施しております。さらに商品だけでなく製造環境の衛生状態も検査し、適切に管理しております。海外協力工場においても、自社工場と同等の管理手法を要求しており、緊密に連絡を取りながらオカムラ食品工業主導で衛生管理の徹底と向上に取り組んでおります。食品表示につきましては、小さな誤りでもお客様の健康危害に直結することを踏まえ、製品開発時や原材料購買時における食品表示の確認、不当表示とならないようなチェック体制の構築等、継続的に体制の充実を図っております。 以上のように、食品の安全性に対しては万全を期しておりますが、それでもなお品質に関する問題が生じた場合は、消費者の健康を脅かし、企業の信用を失墜させるおそれがあります。 5.特定の外注先への依存に伴うリスク(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 海外加工事業では、サーモンやサバ製品の外注加工に関して、ベトナムのTrung Sonグループに加工業務の過半を依存しています。そのため、災害等の要因によって同社の稼働に影響が生じた場合、あるいは同社との取引条件が大きく変動した場合などは、オカムラ食品工業グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。 このようなリスクに対応するために、オカムラ食品工業グループでは自社工場の拡大及び加工先の分散に努めております。 6.相場変動リスクについて(発生可能性:高/発生時期:特定時期無し/影響度:小) オカムラ食品工業グループが取り扱う水産物は漁獲量や市況により相場が大きく変動するものがあります。オカムラ食品工業ではこの相場変動が仕入と販売の両局面で影響を及ぼしますが、両者の相場変動の波にはタイムラグがあり、それによって利益率も大きく変動するため、オカムラ食品工業の業績もその影響で大きく変動するリスクを抱えています。特に近年は不安定な世界情勢などを背景に、オカムラ食品工業グループの取扱うサーモンや魚卵原料の相場が大幅に上昇をしてきました。今後はその反動減も想定されうる状況にありますので、この相場変動リスクは顕在化しやすい環境下にあると考えられます。 これらのリスクに対処するため、オカムラ食品工業グループでは、漁獲量や市況のタイムリーな状況把握とその状況に応じた調達・販売に努めております。 7.原料調達リスク(仕入先への依存リスク)(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) 国内加工事業では、他の仕入先への代替が難しく、原料の総仕入高の約半分程度が特定の仕入先に集中しております。特定の仕入先とは取引開始以来、良好な関係を継続しており、今後も仕入取引を継続していく方針であり、また継続的かつ安定的に仕入ができるよう連携を強化しております。また、自社養殖原料を増やすことによってもリスクヘッジを図るよう努めております。 しかしながら、今後、自然災害、品質問題及び仕入先の経営悪化等何らかの要因により継続的かつ安定的に仕入れることが困難な状況となった場合、オカムラ食品工業グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 8.有利子負債への依存について(発生可能性:中/発生時期:特定時期無し/影響度:小) オカムラ食品工業グループの事業の性質上、在庫残高は多くなる傾向にあり、2025年6月末時点における在庫残高(貯蔵品を除く)は17,378百万円(総資産の42.1%)となっております。これは、養殖在庫については販売までに一定の養殖期間を要すること、仕入在庫のなかには仕入時期に季節性があり買付が一時に集中するものがあること、長期保存が可能な凍結原料があること、などに起因しています。オカムラ食品工業ではこれらの在庫資金の多くを借入金で賄っているため、事業規模の拡大に伴って有利子負債残高も多くなっており、2025年6月末時点の有利子負債残高は17,288百万円、総資産に占める負債の割合は41.9%と大きくなっています。そのため、今後の金利情勢の変動によっては経営成績が影響を受ける可能性があります。 なおオカムラ食品工業では、財務体質強化のために負債比率の削減が課題であると認識しており、それに向けて自己資本の充実に努めて参る所存です。 9.法的規制等について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) オカムラ食品工業グループの事業に適用される「食品安全基本法」「食品衛生法」「食品表示法」「製造物責任法」「廃棄物処理法」等の様々な規制・規則が存在しております。今後各省庁等における現行の法解釈に何らかの変更が生じた場合、もしくは新たにオカムラ食品工業グループの事業を規制する法律等が制定・施行された場合、その内容によってはオカムラ食品工業グループの事業が制約を受けたり、オカムラ食品工業が新たな対応を余儀なくされたりする可能性があります。このような場合には、オカムラ食品工業グループの経営成績又は今後の事業展開が影響を受ける可能性があります。 オカムラ食品工業グループでは、専門家の活用や行政とのコミュニケーション等を通じて、タイムリーな情報収集や適切な対応策の策定など、当該リスクの低減に努めております。 10.個人情報の管理について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) オカムラ食品工業グループは、通信販売等を通じて顧客の個人情報を入手する機会があります。何らかの理由でこれらの個人情報が漏洩した場合には、損害賠償請求の発生や社会的信用の低下等により、オカムラ食品工業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 オカムラ食品工業グループでは、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報セキュリティの強化に努めております。 11.訴訟・係争等について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:中) オカムラ食品工業グループでは、現在係争中の案件はありません。オカムラ食品工業グループでは法令遵守をはじめコンプライアンスを常に考慮した経営に努めておりますが、意図せざる理由により製品回収、法令違反又は訴訟提起等が生じた場合、その結果によっては、オカムラ食品工業グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 12.人財の確保、育成について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小) オカムラ食品工業グループは、世界の多くの国と地域で事業活動を推進しております。そのため、継続的に事業を発展させるためには、専門性のある多様な人財及び経営戦略やグローバルな組織運営といったマネジメント能力に優れた人財の獲得、育成を継続的に推進していくことが重要となります。 しかしながら、必要な人財を継続的に獲得し定着させるための競争は厳しく、特に日本国内においては、少子高齢化や労働人口の減少等を背景に雇用環境の変化が急速に進んでおり、人財獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、事業展開、業績及び成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。オカムラ食品工業グループでは人財獲得のために新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開しております。また、期待水準の明確化に基づいた公平な評価・処遇制度の充実などの仕組みの構築により、従業員のエンゲージメントを高め、人財の定着を図っております。さらには、自律型人財やグローバル人財を育成し、オカムラ食品工業グループの価値観を伝える教育プログラムの充実を図っております。 13.知的財産権に関するリスク(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小) 国内外において、オカムラ食品工業グループの商標権が侵害されるなどした場合、オカムラ食品工業グループ又はそのブランドのイメージを侵害し、オカムラ食品工業グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。 また、オカムラ食品工業グループが意図せず第三者等の知的財産権を侵害してしまった場合には、当該第三者から訴訟等を提起される可能性があり、損害賠償や補償等、又は訴訟等に対応するための多大な時間、労力、費用を要する可能性があることに加え、オカムラ食品工業グループ又はそのブランドのイメージ、評価、社会的信用を害する可能性があり、その結果、オカムラ食品工業グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 オカムラ食品工業グループは、保有する知的財産権を適切に管理し、第三者の知的財産権を侵害しないよう必要な調査を行う等、当該リスクの低減に努めております。 14.大株主について(発生可能性:低/発生時期:特定時期無し/影響度:小) オカムラ食品工業の代表取締役社長である岡村恒一は、オカムラ食品工業の大株主であり、自身の資産管理会社である株式会社オカムラ、配偶者、二親等内の血族の所有株式数を含めると本書提出日現在で発行済株式総数の64.6%を所有しております。同人は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。オカムラ食品工業といたしましても、同人は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、大株主である同人の株式の多くが減少した場合には、オカムラ食品工業株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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