東洋紡および東洋紡の関係会社が営んでいる主な事業内容と、当該事業における位置づけおよびセグメントとの関連は、次のとおりです。
フ ィ ル ム :東洋紡グループは、包装用フィルム、工業用フィルム等の製造・加工および販売を行っています。東洋クロス㈱等の連結子会社5社と非連結子会社および関連会社7社は、フィルム等の化成品の製造・加工および販売を行っており、東洋紡とも原料等の売買を行っています。
ラ イ フ サ イ エ ン ス:東洋紡グループは、診断薬用酵素等のバイオ製品、医薬品、医用膜、医療機器等の製造・加工および販売を行っています。Spinreact, S.A.U.等の連結子会社3社は、診断薬の製造および販売や機器の製造・販売等を行っています。
環 境 ・ 機 能 材 :東洋紡エムシー㈱等の連結子会社13社と関連会社1社は、エンジニアリングプラスチック、工業用接着剤、光機能材料、機能フィルター、スーパー繊維、アクア膜、不織布等の製造・販売を行っており、東洋紡とも原料等の売買を行っています。
機 能 繊 維 ・ 商 事:東洋紡グループは、エアバッグ用基布等の製造・加工および販売を行っています。また、衣料テキスタイル、衣料ファイバーの製造・販売を行っています。
TOYOBO INDUSTRIAL MATERIAL (THAILAND) LTD.等の連結子会社4社および関連会社2社は、エアバッグ用基布等の製造および販売を行っており、東洋紡とも原料等の売買を行っています。
東洋紡せんい㈱等の連結子会社10社と非連結子会社および関連会社4社は紡績・織・編・染等の繊維加工および合成繊維・繊維二次製品等の製造・販売を行っており、東洋紡とも原料等の売買を行っています。
東洋紡STC㈱等の連結子会社9社は、繊維および繊維以外の各種工業品の流通等を行っています。
不 動 産 :東洋紡不動産㈱等の連結子会社2社は、不動産の販売・賃貸・管理等を行っています。
そ の 他 :東洋紡エンジニアリング㈱は、建物・機械等の設計・施工および機器の販売を行っています。また、同社は東洋紡の工場設備の設計・施工等も受託しています。
東洋紡ロジスティクス㈱等の連結子会社2社と非連結子会社および関連会社3社は、物流サービス等を行っており、東洋紡にもサービス等を提供しています。
以上述べた事項を事業系統図によって示すと、次ページのとおりです。
文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、東洋紡グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)東洋紡グループの企業理念
東洋紡グループは、創立者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する。」という会社の創業精神です。いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方を、東洋紡グループは創業当時から140年以上にわたり受け継いできました。
2019年、東洋紡グループは、あらためて渋沢栄一の創業精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて成長軌道を描き続ける会社となるために、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。
■企業理念体系「TOYOBO PVVs」
(2)サステナブル・ビジョン2030(2022年5月発表)
東洋紡グループは、企業理念体系「TOYOBO PVVs」に基づいて、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定しています。今後の事業環境の変化や社会トレンドを想定し、「人」と「地球」に関する5つの社会課題とサステナビリティ目標およびアクションプランを設定しています。東洋紡のコア技術をベースにしたイノベーションにより5つの社会課題解決へ貢献していくことで、「安心してくらせる「ゆたか」な社会の実現と企業価値向上のスパイラルアップ」という東洋紡グループのありたい姿を実現していきます。
■サステナブル・ビジョン2030の全体像
(3)マテリアリティ
東洋紡グループは、ステークホルダーの要請・期待に応え、めざす姿「人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ」を実現するため、マテリアリティ(サステナブルな会社であるための重要課題)を特定しています。ステークホルダーにとっての影響度と東洋紡グループにとっての影響度の2軸から、優先度の高い目標を明確にし、「事業を通じて社会課題解決に貢献する」「人的資本」「環境・ものづくり」「事業基盤」の4つの領域に整理しました。
■マテリアリティマップ
(4)2025中期経営計画(2022~2025年度)(2022年5月発表)
① 基本方針
「2025中期経営計画(2022~2025年度)(以下、「2025中計」といいます。)」は、2025年を「サステナブル・ビジョン2030」で掲げる目標達成に向けた通過点として、当該期間を「つくりかえる・仕込む4年」と位置づけています。「安全・防災、品質の徹底」「事業ポートフォリオの組替え」「未来への仕込み」「土台の再構築」の4つの施策の取組みを通じて、「サステナブル・グロース」への変革を図ります。
■基本方針と4つの施策
② 2025中計前半(2022~2023年度)の振り返り
イ)経営環境
2025中計の策定にあたり、東洋紡グループを取り巻く経営環境を、以下のように想定いたしました。
・ステークホルダー資本主義により企業のあり方が変わる
・脱炭素、循環型経済、EV(電気自動車)化の進展
・技術進歩・実装の加速(DX(デジタル・トランスフォーメーション)、ライフサイエンスなど)
・国内市場漸減、資源価格の高止まり、調達リスクの高まり
・人々の意識・価値観・行動の変容
しかしながら、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や中東情勢緊迫化による地政学リスクの高まり、原燃料価格の高止まり、円安の進行、中国経済の減速など、経営環境は、当初の想定を大きく上回るスピードと大きさで変化しています。
ロ)2025中計前半の業績
このような変化の激しい経営環境の中で、東洋紡グループの事業においては、原燃料価格高騰による交易条件の悪化、サプライチェーンにおける在庫調整の長期化による数量減に加えて、事業拡大や基盤整備のための固定費の増加もあり、東洋紡グループの稼ぐ力が大きく低下しました。一方で、成長事業への大型投資の先行もあり、有利子負債が増加しました。
■稼ぐ力の低下
ハ)4つの施策の進捗
i)施策1:安全・防災、品質の徹底
安全・防災については、「ゼロ災」をめざして、階層別安全ワークショップ、安全意識調査結果の活用などによる安全文化の醸成、および現場総点検、防災総点検、老朽設備更新を含む安全・防災投資、安全・防災研修の充実などによる安全基盤の整備を内容とする「安全防災ロードマップ」に沿った取組みを継続しています。2023年度は、労災件数は前年度比で改善には至りませんでしたが、前年度に引き続き重大インシデント・ゼロを達成しました。また、労働環境のリスク低減のため、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)の適合証明取得を進めています。2024年3月末時点で、敦賀事業所、岩国事業所、宇都宮工場の3拠点で取得し、引き続き、他の事業所・工場での取得を進めていく予定です。
品質については、「品質保証体制再構築ロードマップ」に沿って、PL/QAアセスメントの徹底、品質データのオンライン化、品質の中核人材育成(Qaceセミナー)(※)を含む製品安全・品質保証教育の充実化や品質不正に関する研修などのコンプライアンス教育の強化、品質保証マニュアルの多言語化(海外拠点への共有)などを進めています。組織風土改革と品質文化づくり、安全・安心を最優先にしたモノづくりを推進することで、ゆるぎない信頼の獲得をめざしています。
(※) Qace:Qa_assurance Qc_control Qe_ensuranceの頭文字をとったもの
ii)施策2:事業ポートフォリオの組替え
「収益性」と「成長性」の2軸で各事業を「重点拡大事業」「安定収益事業」「要改善事業」「新規育成事業」に層別し、それぞれの位置づけに応じた事業運営を行います。「収益性」は営業利益を使用資本で除した使用資本利益率(ROCE)、「成長性」は年平均売上高成長率(CAGR)を指標としています。「収益性」は資本コストをベースにハードルレート6.5%、「成長性」は業界の年平均売上高成長率を参考にハードルレート4.5%を目安として設定しています。なお、東洋紡グループ全体の資本効率性指標はROICとしていますが、各事業の層別においてはROCEを用いています。
フィルム事業およびライフサイエンス事業は、東洋紡グループに優位性があり、市場の拡大が見込めるものとして「重点拡大事業」に位置づけ、中長期の成長拡大をめざして積極的な投資をしています。また、環境・機能材事業は、安定収益事業に位置づけられていましたが、今後の事業環境を踏まえ、各商材のもつ成長機会および潜在力を再評価し、第三の柱とすべく、三菱商事株式会社との合弁会社である東洋紡エムシー株式会社により、成長拡大を図ります。
「要改善事業」については、当初、衣料繊維事業、エアバッグ用基布事業、医薬品製造受託事業の3事業が位置づけられ、正常化に向けた対策を講じ、グループ全体の資産効率の向上に取り組んできました。しかしながら、事業環境変化により収益性が低下している包装用フィルム事業と不織布マテリアル事業のそれぞれの位置づけを要改善事業に変更しました。
■事業ポートフォリオ(位置づけの変化)
iii)施策3:未来への仕込み
4つのコア技術「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」「分析・シミュレーション技術」を融合させ、リニューアブルポリマー100%を目標とする「新循環プラスチックソリューション」、水・空気などの環境浄化やCO2の回収・利用に貢献する「環境アクティブクリーンソリューション」、人々が健康に寿命を全うできる社会をめざす「Well-Beingソリューション」の3つの領域でイノベーションを創出していきます。
また、気候変動対応として、カーボンニュートラルに向けて策定した「GHG排出量削減ロードマップ」に沿って、Scope1,2の2050年ネットゼロ達成に向けて取り組むと同時に、バリューチェーン全体のGHG排出量の削減を進めます。加えて、浸透圧発電や風力発電に使われる材料、良質な水域・大気の維持に貢献する海水淡水化膜やVOC(揮発性有機化合物)回収装置などの拡販を通じて、事業の成長をめざします。
さらに、DXの実現に向けて、IT環境を整備し、ビジネス・イノベーションを加速・推進するための基盤づくりを進めています。東洋紡はこの取り組みについて、経済産業省の認定基準を満たしていることが評価され、2024年2月に「DX認定事業者」の認定を取得しました。
iv)施策4:土台の再構築
東洋紡グループが持続的に成長していくために必要な基盤の再構築として、「人的資本」「人権の尊重」「モノづくり現場力」「事業基盤の整備」「ガバナンス・コンプライアンス」「組織風土改革」を進めます。
「人的資本」では、「人」こそが最も重要な経営資本と位置づける「人材マネジメント方針」のもと各種施策を実行しています。具体的には、次世代経営人材の育成、ダイバーシティの推進、モノづくりを支える現場リーダーの育成、健康経営の推進などの取組みを進めていくことで、従業員の幸せと東洋紡グループの持続的成長、そして、従業員エンゲージメントの向上につながると考えています。
「人権の尊重」については、2020年10月に制定(2024年2月更新)した「東洋紡グループ人権方針」、2024年2月に制定した「東洋紡グループダイバーシティ推進方針」にのっとり、外国人技能実習生の就業状況を把握し、特に海外グループ会社において児童労働や強制労働がないことの確認を進めています。また、役員・従業員向けに「ビジネスと人権」に関する研修機会を提供し啓発に努めています。
「モノづくり現場力」においては、技術者教育体系の整備や階層別教育の強化を行い、デジタル技術の活用(スマートファクトリーなど)、全社の知恵を結集するための現場交流や3Sの取組みなどにより、生産革新活動の全社展開を進めていきます。
「事業基盤の整備」においては、全社・事業所拠点構想の検討、老朽化したインフラのリニューアル投資やレガシーシステムの更新などに取り組んでいきます。
「ガバナンス・コンプライアンス」においては、グループガバナンスの強化として、リスクマネジメント体制の整備を行っています。具体的には、グループ管理総括部は、リスク内在部門(事業)、リスク主管部門(スタッフ)と連携しながら、リスクアセスメント(重大リスクの抽出、モニタリング)、リスク最小化のための資源配置を行い、グループ会社へも展開しています。コンプライアンスについては、研修や勉強会を充実させ徹底を図るとともに、内部通報窓口のアクセシビリティ向上により違反の早期発見と是正に努めています。また、内部監査部は、監査計画および報告を取締役会に行い、内部監査機能の実効性を確保しています。
「組織風土改革」においては、カエル推進部による企業理念体系「TOYOBO PVVs」の浸透活動を軸に、組織の垣根を越えて、気づきを改善・改革につなげる働きかけや「カエ続ける」ことを文化として定着させるための取組みを行っています。また、「まじめな雑談」による対話の促進を通じて心理的安全性の向上に努めています。
③ 2025中計後半の課題(2025年度以降を見据えたアクション)
2025中計の後半2年間において、企業価値の向上のためのアクションとして、「稼ぐ力を取り戻す」「使用資本の圧縮(投資の絞り込み他)」「次の成長ステージへ(新の創出)」に取り組みます。
イ)稼ぐ力を取り戻す
i)価値に見合ったプライシングの徹底
製品価格の設定については、コストベースから価値ベースでの実施を徹底していきます。加えて、経営によるプライシングの実行フォローも進めていきます。
ii)要改善事業対策
事業ポートフォリオの組替えにおいて、要改善事業には、当初の衣料繊維事業、医薬品製造受託事業、エアバッグ用基布事業に、包装用フィルム事業、不織布マテリアル事業が加わりました。全ての事業において、2025年度までに、事業の正常化・黒字化をめざします。
a.包装用フィルム事業は、製品価格改定の徹底や生産体制の見直しに加え、東洋紡に強みがある環境配慮製品へのシフト加速や、海外展開の強化を進めます。
b.不織布マテリアル事業は、国内生産体制の見直しと外部生産委託の拡大、開発品の強化を進めます。
c.衣料繊維事業は、東洋紡せんい株式会社(2022年4月発足)によるグループ会社の統合・再編、富山事業所の3拠点の集約が、2024年3月に完了しました。さらに、不採算商材からの撤退などの事業構造改革に加え、製品価格の改定を進め、2023年度黒字化を達成しました。引き続き、資産効率改善の追求を進めていきます。
d.医薬品製造受託事業は、2023年7月にFDAからのWarning Letterが解除されたことを受け、事業の正常化に向けた取組みを進めます。
e.エアバッグ用基布事業は、2023年度よりタイのエアバッグ用原糸の新工場の商業生産が始まるなど事業正常化に向けた取組みを進めています。
iii)経費の絞り込み、コストダウン
全社プロジェクトによって、東洋紡グループ全体の業務改革を推進していきます。事業所・工場の競争力強化(共通部門費見直し、事業再配置)、間接材費のコストダウン、業務効率・生産性向上(業務品質を上げつつコストを下げる)を実行していきます。
iv)成長投資の確実な回収
フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材など成長分野に、積極的に設備投資を実施してきました。これら投資案件を計画通りに立ち上げ、確実に収益拡大につなげ、投資回収できるよう進めていきます。主な成長投資は以下のとおりです。
■主な成長投資
ロ)使用資本の圧縮
2025年度以降の持続的な成長を見据えて、使用資本の適正化のために、「投資の絞り込み」「ポートフォリオ改革(要改善事業の正常化、ハードルレートROCE6.5%に基づく層別と対策実行)」「非事業用資産の売却」の対策を講じていきます。
このうち、「投資の絞り込み」において、2025中計策定時は、2022~2025年度の4年間累計2,400億円の設備投資を計画していましたが、今般、投資案件を見直すことで、総額600億円を圧縮し、4年間累計1,800億円とします。成長投資は、事業ポートフォリオの位置づけが変わった包装用フィルム事業関連の投資案件を中心に見送ることにより1,150億円から780億円に、つくりかえる投資は、優先順位の精査により920億円から840億円に、安全・防災・環境投資は、安全・防災、品質に関する投資は優先順位を下げることなく着実に実行しながら330億円から180億円に絞り込み、資本効率を重視した経営を進めていきます。
■設備投資の見直し
ハ)次の成長ステージへ(新の創出)
i)成長戦略
a.フィルム
「人」中心のデジタル社会実現へ貢献する製品として、液晶偏光子保護フィルム、セラミックコンデンサ用離型フィルムを中心に拡販していきます。
・液晶偏光子保護フィルムは、液晶テレビに使われています。東洋紡独自の技術を駆使した超複屈折ポリエステルフィルムです。現在約60%の面積シェア(東洋紡推定)をさらに高めていく予定です。今後、フィルムの薄肉化に加え、既存生産ライン改造により更なる増産体制を確立していきます。
・セラミックコンデンサ用離型フィルムは、セラミックコンデンサの製造工程に使われています。平滑性に優れることが東洋紡の強みです。市場の成長に応じて、2024年度には、ハイエンドのセラミックコンデンサ用離型フィルムを、原反からコーティングまで1工程で製造する、東洋紡独自の設備を新設・稼働予定です。
更に、新規高機能フィルムの開発として、PENフィルムの風力発電(絶縁)用途や燃料電池セル用シール材用途への展開などを推進していきます。
b.ライフサイエンス
バイオ事業は、高機能たんぱく質を作る技術を強みに、生化学診断薬用原料酵素、遺伝子検査用原料酵素、研究用試薬、診断薬、診断システムまで幅広く展開しています。拡大計画は以下の通りです。
・生化学診断薬用原料酵素は、現在、海外売上高比率が約70%とグローバルに展開しています。2024年度の新設備稼働(生産能力約1.5倍)により、更なる海外展開の拡大を進めます。
・遺伝子検査用原料酵素は、2024年度の新設備稼働(生産能力約3倍)により、感染症ソリューションビジネスの拡大をめざします。
メディカル事業は、製膜技術に強みがあり、その強みを生かして、慢性血液浄化膜に加えて、急性血液浄化膜の市場などに拡大していきます。拡大計画は以下の通りです。
・人工腎臓用中空糸膜は、海外展開を見据えた、中空糸膜製造からダイアライザへの加工・製品化までの一貫生産工場(ニプロ株式会社と共同)が2024年度から稼働します。
・急性血液浄化膜やプロセス膜への用途拡大として、CART膜(腹水濾過濃縮)、ウイルス除去膜、培地濾過膜の展開を進めていきます。
・バイオマテリアルの拡大として、合成系コーティング材料(抗血栓)などの展開を進めていきます。
c.環境・機能材
東洋紡は、三菱商事株式会社と機能素材の企画、開発、製造および販売を行う合弁会社として東洋紡エムシー株式会社を東洋紡51%、三菱商事㈱49%の出資比率で設立し、2023年4月に事業を開始しました。東洋紡エムシー㈱は、東洋紡の技術力と、三菱商事㈱の総合力を融合し、グローバル市場でさらなる成長をめざします。特に、自動車の軽量化に資するエンジニアリングプラスチック、5G・6G通信の普及に貢献する接着剤・塗料原料などの「モビリティ・電子材料」分野、海水淡水化膜、VOC回収装置、浮体式洋上風力発電の係留ロープに使用可能な超高強力繊維などの「環境ソリューション」分野での成長をめざします。拡大計画は以下の通りです。
・「モビリティ・電子材料」分野においては、エンジニアリングプラスチックは、EV化対応、および三菱商事㈱の海外ネットワークを活用した外資系OEM(完成車メーカー)への展開、低圧成形用ポリエステル樹脂は、プリント基板、および電子部品保護用途での拡大、ポリオレフィン用接着付与材は、低誘電率性能を強みに、5G・6Gでの高速・大容量通信用途への拡大を進めます。加えて、溶剤フリー、常温流通可能な高耐熱接着素材”Vitrimer”(※)の実用化として、電子材料接着シートとしての展開をめざします。
(※)“Vitrimer”はFONDS ESPCI PARISの登録商標です。
・「環境ソリューション」分野においては、EV化に伴うリチウムイオンバッテリーセパレータ工場向けのVOC回収装置・エレメントの拡大、アクア膜は、海水淡水化用RO(逆浸透)膜に加え、省電力海水淡水化や浸透圧発電に使用されるFO(正浸透)膜、排水処理、製塩、有価物回収などに使用されるBC(ブラインコンセントレーション)膜の拡大、超高強力ポリエチレン繊維は、洋上風力発電(浮体式)用係留策への展開を進めます。
また、東洋紡エムシー㈱は、2024年4月、OEMへ直接アプローチして共同開発を進める新組織「モビリティ事業推進ユニット」を立ち上げました。モビリティ業界では、急速な技術革新が起こり、異業種の新興メーカーも台頭するなど、その事業環境は劇的に変化しています。新組織ではOEMの先行開発段階からそのニーズをつかみ、一体となって開発に取り組むことで、より付加価値の高い製品をグローバル市場へ投入していきます。
ii)イノベーションの創出
2025中計の施策の1つ「未来への仕込み」において、4つのコア技術「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」「分析・シミュレーション技術」を融合させ、リニューアブルポリマー100%を目標とする「新循環プラスチックソリューション」、水・空気などの環境浄化やCO2の回収・利用に貢献する「環境アクティブクリーンソリューション」、人々が健康に寿命を全うできる社会をめざす「Well-Beingソリューション」の3つの領域におけるイノベーション創出に挑戦しています。
イノベーションの創出を加速させるために、コーポレート研究と事業部開発の連携、R&Dのオープンイノベーション(例:米国バイオベンチャーへの出資、国立大学法人神戸大学との包括連携協定)、マーケティングイノベーション(例:東洋紡エムシー㈱モビリティ事業推進ユニット)を推進し、新の創出をめざします。また、年間研究開発投資額(知的財産関係費用を含む)は、売上高比率3.6~3.8%を目安としています。
3つの領域における主な「新の創出」テーマは以下のとおりです。
■3領域での新の創出
④ 財務目標
2025中計において、「売上高」「営業利益」「営業利益率」「EBITDA」「当期純利益」「自己資本利益率(ROE)」「投下資本利益率(ROIC)」「D/Eレシオ」「Net Debt/EBITDA倍率」を重要財務指標としています。持続的な成長に向けて、積極的な投資マインドを社内に形成するため、営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA」を指標に加えるとともに、資本効率を重視した経営を推進する目的で、投下資本利益率(ROIC)を指標に加え、成長性と効率性の両側面から経営資源の最適な配分に努めます。
また、社債の発行体格付の維持向上等を通じて資金調達の安定性を確保する観点から、有利子負債と自己資本の比率(D/Eレシオ)を重視しています。2018~2021年度の中期経営計画では、D/Eレシオ1.0倍未満を目標とし、その目標を達成しました。2025中計では、将来の成長に向けた先行投資を、時機を逸することなく実施していくため、D/Eレシオの目標を1.2倍未満とし、キャッシュ・フローの創出力と有利子負債とのバランスを失することなくコントロールするため、Net Debt/EBITDA倍率の指標を加え、4倍台を目安にコントロールし、財務状態を安定的に管理していく方針です。
しかしながら、経営環境が当初想定から大きく変化し、営業キャッシュ・フローの減少に加え、フィルムやライフサイエンスなどの成長事業への大型投資による投資キャッシュ・フローの増加や、事業ポートフォリオ組替えの遅れによる使用資本の増加によって有利子負債が増加し、2024年3月末において、D/Eレシオは1.26倍、Net Debt/EBITDA倍率は7.5倍となり、財務状態が悪化しました。これらを踏まえ、2025年度の財務指標見通しを以下の通りとし、あわせて、上記「使用資本の圧縮(投資の絞り込み他)」の通り、総額600億円の設備投資額圧縮を踏まえ、キャッシュフロー・アロケーションを見直しました。
2025中計後半のアクション(「稼ぐ力を取り戻す」「使用資本の圧縮(投資の絞り込み等)」「次の成長ステージへ(新の創出)」)を確実に実行し、企業価値の向上に努めます。
■財務指標(2025年度見通し)
■キャッシュフロー・アロケーション(2022年度~2025年度)
⑤ 資本コストと株価を意識した経営
東洋紡グループでは、資本コストを意識した経営を推進しており、2025中計の重要財務指標にROE、ROIC等を採用しています。現状、PBRが1.0倍を下回る状態にあることを重く受け止め、ROE、ROICをいかに高めるかが重要課題と認識しています。2025中計の施策の1つである「事業ポートフォリオの組替え」を推進することにより、グループ全体の資産効率、収益性の改善を通じてROEを向上させるとともに、「未来への仕込み」において、成長の具体策と成果を示し成長期待を高めていくことに加えて、「安全・防災、品質の徹底」や「土台の再構築」によりリスクの低減を進めていくことで、PBRの向上を図ってまいります。
■資本コストと株価を意識した経営|各施策によるROE、PBRの改善
⑥ 2024年度経営方針
2025中計後半の課題を受け、2024年度の経営方針を「未来をつくるために稼ぐ力を取り戻す」とし、以下の5つのアクションを進めてまいります。
・安全・防災、品質、コンプライアンスの徹底(大前提)
・価値に見合ったプライシングの徹底
・要改善事業(低収益・赤字セグメント)対策
・成長投資の確実な回収と新の創出
・投資、経費の絞り込み、コストダウン
⑦ 株主還元方針
「第4提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりです。
東洋紡グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは東洋紡グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において東洋紡グループが判断したものです。
東洋紡グループは、グループ全体のリスクを一元的に管理する「リスクマネジメント委員会」を2021年に設置しました。本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括する他、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、PDCAサイクルを回すことにより、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用及び、リスク管理体制の強化に努めています。
サステナビリティ推進体制
東洋紡グループでは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、従業員が誇りとやりがいをもって働き続けられる会社、持続的に成長できるサステナブルな会社をめざし、2025中期経営計画を策定しています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2025中期経営計画では2025年度を最終年度とし、東洋紡グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に東洋紡グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学リスクの影響については不確定要素が多く、原燃料価格の高止まり、急激な為替相場の変動など事業環境の不透明な状況が続くことが見込まれます。
加えて、以下の(1)から(16)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているものの、それらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2025中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、東洋紡グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>
(1)災害・事故・感染症の発生
東洋紡グループは、国内外の各地で生産活動等の企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場や事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限り災害・事故の発生や感染症の拡大を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および感染症の世界的な流行、原子力発電所の事故等が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害等が発生した場合など、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2018年9月発生の敦賀事業所第2火災事故、2020年9月発生の犬山工場火災事故を踏まえ、東洋紡グループは、「安全衛生の確保は企業活動の大前提」である事を再徹底し、大きな火災事故を二度と起こさないという強い決意のもと、全社をあげて安全・防災に取り組んでいます。
2022年4月より「私たちは『安全最優先』を徹底します。―労働安全、環境安全、製品安全、設備安全―」を東洋紡グループの安全宣言とし、スローガンは「自分を守る、仲間を守る、気付きを声に出す」としました。経営上最重要課題である安全と保安防災に関する各種の取組みを着実に進めるため、社長直轄の組織として「安全防災本部」を設置しています。同組織は、各分野の専門家を委員とする安全防災会議を主催し、安全・防災活動の有効性を評価するとともに全社の方針案を策定し、サステナビリティ委員会で方針決定をします。進捗については、適宜取締役会に報告します。
また、同組織が中心となって、東洋紡の各事業所・工場およびグループ会社に赴いて安全環境アセスメントを実施し、現地の活動を点検しています。特に火災・爆発リスクについては、第三者の専門家により現地の管理状況を定期的に点検しています。
東洋紡は、労働環境のリスク低減のため、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)の適合証明取得を進めています。2024年3月末時点で、敦賀事業所、岩国事業所、宇都宮工場の3拠点が取得しています。
(2)政治・経済情勢の悪化
東洋紡グループは、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。インフレ圧力の後退に対する各国金融政策の見直しや、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学的情勢の変動によって、東洋紡グループおよび仕入先の生産拠点や主要市場等において深刻な政治的混乱や景気後退などが生じた場合には、東洋紡グループの生産や販売が縮小する可能性があります。また、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
販売及び委託加工に際しては、東洋紡グループは与信取引を行っており、取引先の信用悪化や経営破綻などによる与信リスクを負っています。東洋紡グループでは、売上債権等の貸倒れによる損失に備えるため、与信管理規程のもと、取引先別の信用度に見合う取引限度額を設定し管理を行うとともに、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握することに努めております。また、過去の貸倒実績率等に基づき貸倒引当金を計上することにより、与信リスクの低減を図っています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)第三者認証登録内容における不適切行為等
東洋紡は、米国の第三者安全科学機関であるUL Solutions(以下「UL」といいます)によって認証を受けているエンジニアリングプラスチック製品の一部の品番について、認証に関する確認試験時に、顧客に販売している製品と異なる組成のサンプルを提出していたことや、UL認証を取得している製品を製造する登録を受けていない工場で製造を行っていること等(以下「本件不適切行為」といいます)を確認しました。本件不適切行為についてULに報告等を行った結果、2020年10月28日付でUL認証を取り消された1製品に加えて、3製品について2021年2月3日付にてUL認証登録を取り消され、他の3製品の一部品番(以下、本件不適切行為のあった製品を「本件不適合製品」と総称します)について東洋紡よりUL認証登録の取消しを申し入れた結果、2021年3月26日付にて認証を取り消されました。これまで本件不適合製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けていません。現在、UL認証はお客さまと相談させて頂きながら順次再取得を進めています。
また、本件に関連し、ISO(国際標準化機構)の登録認証機関であるLRQAリミテッドによる特別審査を受けた結果、2021年1月28日付で、東洋紡が取得しているISO9001認証のうち、本件不適合製品を担当する部門に関わる認証範囲について認証を取り消されましたが、2024年5月3日にISO9001の認証を再度取得しました。
東洋紡は、度重なる不適切な事案を重く受け止め、既に実施した第三者による調査等も踏まえて、実効性のある再発防止策を策定し、確実に実施してきました。再発防止策の一つとして、2022年3月17日付「品質に関する不適切な事案の類似案件調査に関するご報告」にて公表したとおり、2021年2月から同年3月にかけて無記名式で、2021年7月から2022年1月にかけては記名式で品質に関する不適切な事案の有無を調査する目的のアンケートを国内外の東洋紡グループ役員、社員(契約社員や派遣社員を含む)を対象に実施し、品質に関する重大な不適切事案は確認されませんでした。さらに、2023年11月から2024年2月にかけて、再度、記名式で国内の東洋紡グループ役員、社員(契約社員や派遣社員を含む)を対象に、品質に関する調査票を配布し、100%回収しました。当連結会計年度末において、品質に関する重大な不適切事案は確認されていません。引き続き、適切な品質管理体制の再構築やガバナンスの向上に取り組むことにより、信頼の回復に全力で努めます。
(4)訴訟等
当連結会計年度末において、東洋紡グループの業績に重要な影響を及ぼすことが明らかな訴訟等の事案はありません。一部の製品において特許権の抵触の疑いがあるとして通知を受け、ライセンスの協議を進めていましたが、東洋紡特許権とのクロスライセンスについて合意しています。
その他にも、東洋紡グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、東洋紡グループに対し訴訟を提起される可能性があります。訴訟等において、東洋紡グループの主張が最終的に認められない場合には、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<中長期的なリスク>
(5)原材料の購入
東洋紡グループの、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品は、石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などが主要な原材料です。「(1)災害・事故・感染症の発生」および「(2)政治・経済情勢の悪化」にて記載した、自然災害、事故、感染症や、経営破綻、事業撤退、縮小および深刻なサプライチェーンの混乱などが取引先において発生した場合、必要量の原材料が確保できなくなる可能性があります。また、原油価格や為替の変動、当該原材料等の急激な需給バランスの変動などにより、購入価格が高騰し、東洋紡グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、東洋紡グループでは、販売価格への転嫁や製造コストの低減に努めているほか、適正な取引方針を確立し、仕入先の分散による複数社購買等による原材料調達手段の多様化や、植物由来原料やリサイクル原料の使用を進めるグリーン化の取組みなど、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。また、法令順守、公正な取引、環境配慮、人権尊重などに対応する「CSR調達ガイドライン」および環境配慮のための「グリーン調達ガイドライン」を制定しています。
(6)製品の欠陥等
東洋紡グループは、製品の欠陥等の発生リスクを未然に防止するため、所定の品質管理規程に基づいて、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などの各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不具合が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などにおいて何らかの原因により製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながるリスクがあります。東洋紡グループは、製造物責任賠償保険に加入しているものの、最終的に負担する損害額は保険によって十分カバーされないリスクがあります。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや東洋紡グループの信用失墜が生じるなど、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
東洋紡グループでは、PL(Product Liability:製造物責任)およびQA(Quality Assurance:品質保証)を統括する品質保証本部会を設けています。品質保証本部会は品質を統括する役員、各事業本部を担当する品質保証総括部長と品質保証統括部員で構成され、毎月開催しています。また、各事業本部の部長クラスを推進委員としたPL/QA推進委員会を年6回計画しており、2023年度も計6回開催しました。
また、事業推進から独立した品質保証本部および他部門の品質保証担当者によるPL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社のPS(Product Safety:製品安全)活動を客観的に確認し、改善の機会としています。さらに、PSとPLのリスク度合いを判定する基準を設け、この基準に基づき、製品開発から販売までの各段階で審査を行い、リスクに事前に対応することで、お客さま等に掛かるリスクの低減に努めています。
(7)人材の確保
東洋紡グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。
東洋紡グループでは、成長戦略実現への寄与を目指し、次世代経営人材の育成や主体的に学び成長できる環境づくりに力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動、障がい者雇用、LGBTQ+に向けた施策にも積極的に取り組んでいます。
なお、東洋紡グループの人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
(8)気候変動
地球温暖化に伴う気候変動の影響が、台風や集中豪雨といった自然災害の増加や亜熱帯化による自然生態系の変化といった形で顕在化し、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります(物理リスク)。一方、移行リスクとして、脱炭素社会への移行に伴う社会変化が、温室効果ガス排出に対する規制強化や炭素税導入などにより、原材料価格の上昇や化石燃料の使用が難しくなることなどが想定されます。東洋紡グループは2020年1月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)提言に賛同し、同提言にのっとった取組みと開示を進めています。また、TCFD提言に沿い、パリ協定に基づく気候変動シナリオを前提とした将来リスクと事業機会を分析・整理しました。それらリスクと機会の影響と財務インパクトを特定した上で、対応策とそれに基づく指標・目標を設定し、経営戦略の強靭性(レジリエンス)向上を図ります。なお、当該リスクについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
(9)環境負荷
東洋紡グループは、水質汚濁、大気汚染、土壌汚染や化学物質管理に関する法令や規制の適用を受けており、これらの法令や規制がさらに強化されることで、対応コストの上昇や、収益機会の減退による東洋紡グループの売上減少など、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
東洋紡グループでは、持続可能な形で資源を利用する循環型社会の実現に向け、環境負荷を低減する製品・技術を積極的に展開しています。プラスチック製品においては、バイオマス(植物由来)原料やリサイクル原料の使用促進と減容化を進めるとともに、高い機能性を保持するバイオマスプラスチックの実用化に取り組んでいます。
また、水資源保全の取組みとして、水資源の確保を事業継続上の重要課題と認識し、製造工程で使用する冷却水などは、一度使用した水を再利用するなどの使用量削減と循環利用を推進しています。
生物多様性保全の取組みとして、事業所や工場からの排水や排ガス中の有害物質を適切に処理した上で排出しています。そして、これらが誤って流出することのないよう、監視装置を設置するとともに、当該化学物質の使用量・排出量を極小化できるよう製造工程の改善にも努めています。また、東洋紡グループの販売するVOC回収装置などにより、お客さまの環境負荷低減にも貢献しています。
化学物質管理の取組みとして、調達から使用、廃棄に至るまでをカバーする化学物質管理を行い、法規制対象物質の使用状況等の調査に活用しています。また、「東洋紡化学物質管理区分」を定め、取り扱う化学物質を3段階に分類した上で、ランクごとに管理内容を定め、効率的な使用や代替化を進めています。
(10)情報セキュリティ
東洋紡グループは、DXとデータの利活用によるビジネスイノベーション加速・推進に取り組み、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。また、世界各国で個人情報・データ保護のための法規制の強化が行われています。東洋紡グループはこれらの情報資産について様々なセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスや想定を超えるサイバー攻撃を受けた場合、従業員の過誤など、システムの障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などにより、社会的信用の低下や多額の費用負担が発生し、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
東洋紡グループは、「情報セキュリティポリシー」を定め、情報セキュリティに関する各種規程を整備し、全情報資産の適切な運用・管理・活用に努めています。
また、代表取締役社長が任命した最高情報セキュリティ責任者(CISO)をリーダーとした情報セキュリティ部会(TOYOBO-CSIRT)を設置し、海外法規制対策、技術的対策の継続的な改善のほか、従業員教育による意識レベル向上、セキュリティ人材の育成を進めるとともに、事故対応体制の強化に取り組んでいます。
(11)法規制およびコンプライアンス
東洋紡グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を順守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、東洋紡グループの売上減少が生じるなど、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの規制に対し、東洋紡グループおよび取引先において、不順守や違法行為が発生した場合には、東洋紡グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。
また、東洋紡グループでは、コンプライアンス活動の核として企業理念である「順理則裕」を掲げ、コンプライアンスを重視した経営を推進していますが、製品・サービスや労働・安全、サプライチェーン全体におけるコンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、東洋紡グループの信用低下や行政処分、損害賠償責任が課されることなどにより、多額の損害が生じるおそれがあります。
このようなリスクを踏まえ、東洋紡グループでは、社内通報制度やコンプライアンスアンケートを通じた不適正事案の早期発見、是正や未然防止に加え、コンプライアンスを推進するため、具体的に様々な取組みを実施しています。例えば、「東洋紡グループ企業行動憲章」および行動規範である「東洋紡グループ社員行動基準」の解説や違反事例等をまとめたコンプライアンスマニュアルを、東洋紡を含むグループ従業員に配付するとともに、職場にて読合わせを実施しルールの徹底に努めています。また、国内外グループ会社の管理者層を対象としたコンプライアンス勉強会を実施するとともに、コンプライアンス違反等のケーススタディを掲載した「コンプライアンスミニスタディ」を毎月発行するなどコンプライアンス意識の向上を図っています。
(12)海外での事業活動
東洋紡グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。そのため、世界経済全体の動向に加え、各国の法令・規制や政策等の予期しない改定変更、またはテロ、戦争、政変、疫病やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、東洋紡グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
東洋紡グループでは、これらリスクに対し、グループ各社での情報収集や、公的機関だけにとどまらず外部コンサルタントからの情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切に対処できるよう、国ごとに「危機管理マニュアル」を策定し、海外有事に対する退避マニュアルを充実させるなど、海外リスクマネジメント体制の整備強化に努めています。
また、東洋紡グループは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行い、各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても適切に対処しています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
<財務リスク>
(13)為替レートの大幅変動
東洋紡は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的に著しい変動があった場合は、製造リードタイムが比較的長い製品などは業績に対して影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、東洋紡グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(14)金利の大幅上昇
東洋紡グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、東洋紡グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」および「純有利子負債のEBITDA(営業利益と減価償却費の和)に対する倍率(Net Debt/EBITDA倍率)」を重視しています。当連結会計年度末ではD/Eレシオは1.26倍、Net Debt/EBITDA倍率は7.5倍となりました。
(15)株価の大幅下落
東洋紡グループは、市場性のある株式を保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、東洋紡の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。東洋紡は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、東洋紡の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。当連結会計年度において、東洋紡および東洋紡の子会社は、保有する投資有価証券の一部を売却し、33億円の売却益を計上しました。
(16)固定資産の減損
東洋紡グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、東洋紡グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度において、東洋紡および一部の子会社が保有する固定資産のうち、休止予定資産や事業用資産について合計8億円の減損損失を計上しました。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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