現在、スマートフォンやIoTの普及により、日々生み出されるデータは加速度的に増加しております。ウイングアーク1stグループは、この様々なデータ(ビッグデータ)を「新しい資源」として捉えており、この資源を活用して企業や社会に様々な価値をもたらすソフトウェア及びサービスの提供を行っております。
ウイングアーク1stグループは、ウイングアーク1st、連結子会社8社および持分法適用会社1社で構成されており、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
[帳票・文書管理ソリューション(BDS)]
帳票・文書管理ソリューションでは、帳票に関する業務基盤として国内で最も多く利用されているソフトウェア及びそれらをベースとしたソリューションを提供しています。請求書、納品書、発送伝票、eチケットなどの業務帳票から公的機関が発行する各種証明書まで社会の様々な場所で帳票の作成や出力、管理に利用されています。主力の「SVF」は、帳票の作成や出力を担っています。現在では「SVF」での帳票出力の85%はデジタル化されています。文書管理基盤の「invoiceAgent」と合わせて企業、公的機関の多くでデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に貢献しています。
ウイングアーク1stグループは帳票ソフトウェアの先駆者として、多くの顧客にご利用頂いており、機能の豊富さやシステムの安定性等が評価されております。その結果、「SVF」の帳票市場(帳票運用製品)における市場シェアは、65.1%(注)となっております。主なソフトウェア及びサービスは以下のとおりです。
(注)デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社発刊 ミックITリポート2021年11月号「帳票設計・運用製品の市場動向 2021年度版」図表2-3.[運用]製品のベンダー別売上・シェア動向 2020年度実績
(主な連結会社) ウイングアーク1st、文雅科信息技術(大連)有限公司、文雅科信息技術(上海)有限公司、
WINGARC SINGAPORE PTE. LTD.
(a)SVF
ウイングアーク1stグループの主力製品である「SVF」は、帳票開発の効率化と多様な出力要件に応えるための帳票基盤ソリューションです。「SVF」は、日本固有の複雑な帳票フォームをノンプログラミングで直感的に設計し、PDF、Excel、紙などへ多様な形式で出力できるソフトウェア/ソリューションです。独自開発のソフトウェアにより高い汎用性を有しており、メーカーやOSの種類に依存しない帳票運用を実現しています。企業や公的機関の多くで複数のシステムを共通化した帳票基盤として活用されており、システム運用の効率化や内部統制の強化に貢献しています。
「SVF Cloud」は、従来の「SVF」の強みに加え、柔軟性とリアルタイム性を兼ね備えた帳票クラウドサービスです。クラウド上でのSFAサービスを提供している株式会社セールスフォース・ドットコムと連携した「SVF Cloud for Salesforce」やビジネスプラットフォームを提供しているサイボウズ株式会社と連携した「SVF Cloud for kintone」を提供しております。更に、Web API機能により様々なクラウドサービスと連携し、企業間のシステムの違いやシステム変更にも柔軟に対応することができます。また、外出先で、スマートフォンやタブレットからその場でPDFの見積書を出力する、といったリアルタイム性が求められる場面での利用も可能となっております。
(b)invoiceAgent
「invoiceAgent」は、企業や公的機関で流通している帳票を電子化し、保管から流通までを一元管理することで、生産性の大幅な向上を実現するソフトウェア及びクラウドサービスです。「invoiceAgent」は、電子文書の保管・管理業務を効率化するとともに、電子化された文書からデータを自動的に抽出し、他の業務システムにシームレスに連携させることができます。さらに、企業間で紙をベースにやり取りされている見積書や請求書等の書類をプラットフォーム上で電子的に送付・受領を行うことが可能で、関連する業務の大幅な効率化が可能です。また、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法及び2023年10月に導入されたインボイス制度に対応しており、企業は「invoiceAgent」を導入することによりこれらの法的要件を満たすことが可能となります。
[データエンパワーメントソリューション(DE)]
データエンパワーメントソリューションでは、エンドユーザーに対して、ソフトウェアの販売、クラウドサービス、保守サポートの提供を主に行っております。これらは様々な種類のデータを組み合わせ、分析することにより、気づきや今までにない価値を生み出すビジネスの基盤となる(一般的にビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)と呼ばれる)ソフトウェア及びそれらをベースとしたソリューションを提供しています。生産性の向上やビジネスプロセスの効率化による経営スピードの向上を実現することをコンセプトとし、データの集計、分析、可視化、意思決定支援というデータ活用の一連の流れをカバーしております。企業の業務プロセス等に組み込まれるなどして、経営者から現場の業務担当者まで多くの方々にご利用頂いております。
主なソフトウェア及びサービスは以下の通りです。
(主な連結会社) ウイングアーク1st、株式会社Everforth、株式会社traevo、ウイングアークNEX株式会社、WINGARC AUSTRALIA PTY LTD
(c)Dr.Sum
「Dr.Sum」は、企業内外のデータを収集、蓄積し、そのデータを加工・分析することによって企業の意思決定に活用することを目的としたソフトウェアです。数百億件ものビッグデータを数秒で処理できる性能と、ユーザーが使い慣れたwebベースとExcelベースのユーザーインターフェースを備えており、システム担当者でなくともビッグデータの集計や分析を容易に行うことが可能となっております。また、「Dr.Sum」上で販売や会計といった社内の様々なデータを統合管理することで、企業を支える情報分析基盤として利用されております。また、様々なクラウドサービスの普及によりクラウド上に存在するデータが加速度的に増加しているため、クラウドサービスとの連携が容易な「Dr.Sum Cloud」のニーズも拡大しております。
(d)MotionBoard
「MotionBoard」は、企業をとりまく様々なデータを価値ある情報に変え、企業にイノベーションをもたらすことをコンセプトとした情報活用ダッシュボードです。
第一の特徴は多彩な表現力です。PC画面上にグラフィカルな数多くのチャートを自由に配置可能で、業務内容の確認から事業戦略の遂行状況の確認まで、目的に合わせた使い方が可能です。また、GIS機能を備えており、位置情報を持つデータを地図上にプロットすることが可能です。これにより、競合店舗情報と人口動態情報を組み合わせた店舗戦略や走行情報を利用したトラックの運行管理等、新しい情報活用の形が生まれております。第二の特徴は、リアルタイム処理です。「MotionBoard」は、基幹システム、情報系システム、SFAや CRM、外部のクラウドサービス等様々なデータソースとリアルタイムに接続し、これらの情報を一つのチャート上で統合し、分析して可視化することができます。またノンプログラミングで利用できることが特長で、多くは企業内のシステムに組み込まれる形で利用されています。近年では、Salesforceと連携した営業の生産性向上や小売業でのビッグデータ活用に加え、IoTで発生するデータの分析、可視化や閾値の設定によるリスク検知等にも利用されています。第三の特徴は、高いメンテナンス性です。通常、情報システムの構築は、高度な知識を持ったシステム担当者が行うことが一般的ですが、「MotionBoard」は、ユーザーが自由な発想で可視化や分析を行うことを想定しているため、データの設定から表示項目やチャートの選定、配置までユーザー自身で行うことが可能です。これにより、業務フローの変更等にも迅速に対応できます。
(e)プロフェッショナルサービス
ウイングアーク1stグループのソフトウェア及びサービスは、導入が容易であることが特徴の一つですが、大規模案件では、複雑なシステム要件が発生することがあります。そのような場合には、システムに熟知したウイングアーク1stの技術スタッフが、導入支援サービスの提供を行っております。また、近年では、製造業でのIoTを用いた工場の可視化や小売業でのビッグデータ分析といった業界特有の課題解決のニーズが増加しており、このような要望に対しては、社内の専門チームが要件定義から導入まで、総合的なコンサルティングサービスを提供しております。
[用語の説明]
本書において使用しているIT業界特有の主な用語についてご説明いたします。
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用語 |
説明 |
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SIer |
システムインテグレーター(System Integrator)の略。主に企業のシステム構築、運用業務を一括して請け負う事業者。 |
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IoT |
Internet of Thingsの略。通信技術やインフラの発達により、インターネットを介して、あらゆるものがネットワークにつながること。 |
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AI |
Artificial Intelligenceの略。人間の脳が行っているような認識や判断といった作業を自律的に行うソフトウェアやシステム。 |
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SFA |
Sales Force Automationの略。案件管理や見込管理等、企業の営業活動の効率化を目的とするソフトウェアやシステム。 |
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CRM |
Customer Relationship Managementの略。顧客属性や対応履歴を管理し、顧客ごとに最適な対応を行うことで、長期的に良好な関係を築き、結果として収益の最大化を目的とするソフトウェアやシステム。 |
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API |
Application Programming Interfaceの略。外部の他のプログラムから機能やデータなどを呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めたもの。開発効率やシステム間連携が大幅に向上する。 |
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BI |
ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略。企業活動によって生じた様々なデータを集計・分析し、企業の意思決定を支援するソフトウェアやシステム。 |
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GIS |
Geographical Information Systemの略。デジタル化された地図情報と位置情報を持ったデータを統合し、情報全体の視覚的な把握を可能とするソフトウェアやシステム。 |
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KPI |
Key Performance Indicatorの略。企業における業績管理評価のための重要な指標。 |
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DX |
デジタルトランスフォーメーションの略。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。 |
事業系統図は次のとおりであります。
[事業系統図]
(注) 上記系統図の子会社はウイングアーク1stグループの事業上重要なものについて記載しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてウイングアーク1stグループが判断したものであります。
(経営方針)
ウイングアーク1stグループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。現在、スマートフォンやIoTの普及により、日々生み出されるデータは加速度的に増加して、働き方改革等による業務の効率化のニーズも高まっております。ウイングアーク1stグループは、この様々なデータ(ビッグデータ)を「新しい資源」として捉えており、この資源を活用して企業や社会に様々な価値をもたらすソフトウェア及びサービスの提供を行っております。
(ウイングアーク1stグループの強みと経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
・独自のテクノロジー
ウイングアーク1stグループは、創業以来、企業の情報活用に特化した独自の技術開発に取り組んできました。超高速集計、データの仮想統合、IoTデータのリアルタイム処理は代表的な特長的技術であり、ウイングアーク1stグループの競争力の源泉となっています。それぞれ技術は高度で難解なものですが、「誰でも簡単」に利用することができ、素早く効果をあげられるようにシンプルで直観的に使用できるユーザーインターフェイス(UI)を備えたソフトウェア及びサービスとして提供しております。なお、研究開発活動及びソフトウェア開発のコア部分は、すべて自社グループ内で行っております。
・強力なビジネスチャネル
ウイングアーク1stグループの販売モデルは、パートナーを介した間接販売が主となっております。大都市圏で大企業や官公庁の大型案件を得意とするSIerや地方を拠点とするSIer、特定領域に特化したコンサルティングファームやクラウドシステムの構築を専業とするクラウドSIer等多くのパートナー企業と契約しており、日本全国のシステム開発案件をカバーするソリューション/サービス提供体制を構築しております。これにより、継続的な案件創出と営業コストの抑制が可能となり、効率的な販売活動が可能となっております。なお、2021年2月期に、ウイングアーク1stグループのソフトウェア及びサービスの販売だけではなく、パートナーとともに新たな市場を開拓していくという考えのもとパートナー制度を改定しました。今後もパートナーとより良い関係を築き、双方のビジネスの発展に努めてまいります。
-契約パートナー数推移(注) (社)
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決算年月 |
2020年2月 |
2021年2月 |
2022年2月 |
2023年2月 |
2024年2月 |
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契約パートナー数(累計) |
507 |
486 |
535 |
547 |
587 |
(注)ウイングアーク1stパートナー向けプログラム「WingArc1st Relationship Platform(WARP)」において、各契約カテゴリーでの期末時点における解約パートナーを除いた契約パートナー数の合計。
・厚いリカーリングレベニュー
ウイングアーク1stグループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、ウイングアーク1stグループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。
-リカーリングレベニュー (単位:百万円)
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決算年月 |
2020年2月 |
2021年2月 |
2022年2月 |
2023年2月 |
2024年2月 |
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ライセンス/サービス(注)1 |
8,224 |
6,966 |
7,657 |
8,884 |
9,844 |
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リカーリング(注)2 |
10,453 |
11,318 |
12,175 |
13,464 |
15,908 |
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売上収益合計 |
18,677 |
18,285 |
19,833 |
22,349 |
25,752 |
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リカーリング比率 |
56.0% |
61.9% |
61.4% |
60.2% |
61.8% |
(注)1.ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引に係る売上の合計。
2.保守、サブスクリプション(ソフトウェアの購入ではなく、利用期間に応じて料金を収受する契約形態)、クラウド等、継続契約を前提とした取引に係る売上の合計。
また、ウイングアーク1stグループは契約継続率をリカーリングビジネスの最も重要なKPIの一つとしております。高い契約継続率を維持することによって、既存の契約は最大限維持しつつ、新規契約を積み上げ、持続的な成長を実現してまいります。
-契約継続率(注)1
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決算年月 |
2020年2月 |
2021年2月 |
2022年2月 |
2023年2月 |
2024年2月 |
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契約継続率 |
93.0% |
93.8% |
93.2% |
95.6% |
94.0% |
(注)1.「SVF」「invoiceAgent」「Dr.Sum」「MotionBoard」の保守契約において、当該期間の更新対象契約の総数に対して実際に契約が更新された金額ベースでの割合。
上記の他、EBITDAを重要な指標としており、2024年2月期の目標数値及び実績は以下となります。
(単位:百万円)
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目標数値 |
実績 |
増減 |
増減率 |
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EBITDA |
8,470 |
8,597 |
127 |
1.5% |
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(参考)売上収益 |
25,400 |
25,752 |
352 |
1.4% |
ウイングアーク1stグループは、日本国外に拠点を置く多くの外資系ソフトウェアベンダーと異なり、自社内に営業、開発、サポートすべての機能を有しております。これにより、営業部門やサポート部門が収集した様々な顧客ニーズを開発部門が素早く製品化するといったことが可能となり、ウイングアーク1stグループの強みの一つとなっております。
(経営環境)
ウイングアーク1stグループの主要な市場である国内ソフトウェア市場は、企業業務のデジタル化を推進し、DXを実現するための投資が拡大しており、加えてデジタル庁の発足や改正電子帳簿保存法、インボイス制度導入等法制度面での後押しもあり、2022年度から年平均7.7%成長し、2027年度(予測)には2兆8,699億円となることが見込まれております(注1)。また、DXの進展に伴い、企業規模の大小を問わずにクラウドサービスの利用が当然のものとなっており、最新技術を容易に利用できることや導入期間の短縮、運用コストの低減等様々なメリットがあることから、クラウド市場は大きく拡大すると予想されており、2022年度から年平均11.7%成長し、2027年度(予測)には2兆989億円に達することが見込まれております(注1)。
(注)1.株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2023年版(提供形態別動向)」
(成長戦略)
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、企業は働き方改革や新しい環境での競争力強化のため、DXに積極的に取り組んでおります。また、2022年1月にリモートワークやペーパーレスを後押しする改正電子帳簿保存法が施行(2024年1月本格施行)、2023年10月にはインボイス制度が導入され、企業間取引に関する文書の電子化が急激に進展しております。ウイングアーク1stは、このような市場の大きな変化をチャンスと捉え、2022年1月に5か年の「中期経営方針」を発表しました。「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に据え、主にクラウドビジネスでの大きな成長を計画しております。このプラットフォームをベースに、BDSは企業間取引の変革を実現する「企業間DX」、DEはデータの価値を最大限に高め、生産性の向上や新しいビジネスの創出に資する「企業内DX」に取り組んでまいります。当該期間中にウイングアーク1stが達成を目指す目標は以下となります。
<中期経営目標>
・クラウド成長率 40%(2022年2月期~2027年2月期平均)
・リカーリング比率 75%(2027年2月期)
クラウド比率 40%(2027年2月期)
・EBITDA 120億円(2027年2月期)
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
(1)クラウドビジネスの拡大
現在のウイングアーク1stグループの売上収益の大半は、ソフトウェアから生み出されておりますが、企業のDXへの取組みが広がる中、迅速な導入が可能で初期コストが低く、他のシステムとの連携が容易なクラウドサービスの市場は拡大しております。このような環境の中、ウイングアーク1stは2022年1月に発表した「中期経営方針」でクラウドをベースとした「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を掲げ、2022年2月期から2027年2月期のクラウド売上の年平均成長率40%及び2027年2月期の全社売上に占めるクラウド売上比率40%を目標としております。
・開発体制の強化
ウイングアーク1stグループでは、クラウドサービスに関する継続的な新機能の開発や性能向上のため、開発体制の強化を進めておりますが、優秀なエンジニアの獲得はますます難しい状況になっております。最先端技術への積極的な取組みや働き方改革を進め、エンジニアにとって魅力的な環境を提供するとともに、外部リソースも活用し、柔軟な開発体制を構築してまいります。
・アライアンスの推進
ウイングアーク1stグループが提供するクラウドサービスは、ウイングアーク1stグループのみがサービスを提供するのではなく、様々な特徴を持つ企業と密に連携することで、スピーディに包括的なサービスを提供することを目指しております。今後もサービスレベル向上のため、様々な企業との連携を行ってまいります。
(2)リカーリングビジネスの拡大
ウイングアーク1stグループは、製品、サービスの一度限りの提供ではなく、継続的に顧客にサービス提供を行い、その対価をサービスの提供期間に応じて受け取る「リカーリングビジネス」を推進しております。「リカーリングビジネス」の利点は、業績の安定化、業績の予見性の向上、顧客とのリレーションシップの維持等ですが、一方で、顧客の維持管理コストの増加等のデメリットもあります。そのため、ウイングアーク1stは「リカーリングビジネス」に特化した部署を組織し、上述したシステムによる効率的な顧客管理と専任チームによる離脱防止対策を行うとともに、顧客への追加商材の提案による売上の向上を目指しております。また、2024年2月期における「リカーリングビジネス」に係る売上である「リカーリングレベニュー」の売上全体に占める比率(リカーリング比率)は61.8%であり、売上の拡大と共に当該比率の向上に努めてまいります。なお、2022年1月に発表した「中期経営方針」では、2027年2月期にリカーリング比率75%を目標としております。
・契約継続率の維持向上
「リカーリングビジネス」は一度契約して頂いた顧客に如何に継続的にご利用いただくかが最も重要となるため、ウイングアーク1stグループでは、「契約継続率」をKPIとしております。専門部署にて顧客の利用状況や課題をヒアリングし、きめ細かな対応を行うことにより、当該数値の維持向上に努めております。2024年2月期における「契約継続率」は94.0%となり、引き続き高い水準を維持しております。
(3)グループ経営基盤の強化
ウイングアーク1stグループは2013年9月の非上場化以来、経営基盤の強化に取り組み、グループの再編(子会社の統合、非コア事業の売却)、社内基幹システムの再構築、経営管理システムの高度化、各種顧客管理業務のシステム化等を推し進めてまいりました。今後、中期経営方針の目標達成のため、様々なクラウドサービスの立ち上げや強化を行っていく計画となっており、精緻な業績管理が求められます。また、業容拡大を目的としてM&Aで獲得した海外を含む子会社についても、ウイングアーク1stグループの経営方針のもと、一体となった管理体制が求められます。これに対応すべく、社内のDXを推し進め、グループ各社と密に連携し、タイムリーに経営状況を把握でき、適切な対策を早期に打てる体制の強化に取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資家の皆様に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。また、以下の記載はウイングアーク1st株式の投資に関連するリスクのすべてを網羅するものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてウイングアーク1stグループが判断したものであります。
(1)情報通信業における技術革新等への対応について
ウイングアーク1stグループの属する情報通信業は、技術革新が絶え間なく起こり、これにより新しいソフトウェアやサービスが次々に生み出される、変化の激しい業界となっております。近年においても、AI、IoTなどの新しい技術が注目されておりますが、それらの新技術に対応したソフトウェアやサービスの提供ができるよう、ウイングアーク1stグループとしても研究開発を続けております。しかしながら、これら新技術が普及せず、また、今後新しい技術への対応が遅れた場合には、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、ウイングアーク1stグループの帳票・文書管理ソリューションの主力製品である「SVF」は、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類の設計・運用を行うソフトウェア及びサービスであり、企業における帳票類の使用頻度が減少した場合には、これらの製品の需要が減少する可能性があります。
(2)競合について
各種調査レポートによると、帳票市場及び電子帳票市場に位置づけられる「SVF」「invoiceAgent」及びビジネスインテリジェンス市場に位置づけられる「Dr.Sum」「MotionBoard」は、類似製品と競合する状態にあります。ウイングアーク1stグループは、機能の強化や品質の向上を目的としてバージョンアップ製品の市場投入を継続的に行っていくことを予定しておりますが、ウイングアーク1stグループの開発方針の策定に当たり市場動向を的確に捉えることができなかった場合には、競合製品に対しウイングアーク1stグループ製品の優位性が相対的に低下する、あるいは競合各社の価格戦略によりシェアが縮小する等、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)製品の不具合(バグ等)の発生可能性について
ウイングアーク1stグループは、新製品開発及び既存製品の性能向上、機能追加等の研究開発に当たり、品質管理の向上を念頭に置いて活動しており、品質管理部門の設置等により品質管理の徹底を図り、不具合等の発生防止に努めております。一般的にソフトウェアは高度化、複雑化すると不具合を完全に解消することは不可能と言われており、ウイングアーク1stグループのソフトウェアにおいても、各種不具合が発生する可能性は否定できません。また、ウイングアーク1stグループにて提供するクラウドサービスにおいても、同様に各種不具合が発生する可能性は否定できません。現時点までウイングアーク1stグループの責任による不具合の発生により、業績に多大な影響を与えたことはありませんが、ウイングアーク1stグループの製品やサービスに致命的な不具合が発生することにより、コストが発生するとともに、その不具合を適切に解決できない場合、ウイングアーク1stグループの信用力が低下し、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)製品開発について
ウイングアーク1stグループにおいては、技術部門を中心に開発計画を立案し、当該計画に基づき製品開発を進めております。しかしながら、「(3)製品の不具合(バグ等)の発生可能性について」に記載のとおり、ソフトウェア及びクラウドサービスには何らかの不具合が発生する可能性があり、顧客に販売するのに十分な品質が確保されていないと判断した場合、追加の開発・検証作業等を要することとなり、ソフトウェア及びクラウドサービスの販売開始時期が遅延し、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。上記以外にも、市場のニーズに合致していない等の理由によりウイングアーク1stグループの新製品が市場で受け入れられない場合には、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、開発期間は長期間に及ぶこともあるため、その間の顧客の需要動向又はウイングアーク1stグループの販売戦略の変化、若しくは当初想定していた機能の実装が技術的に困難であることが明らかとなった場合等、当該製品の販売開始前に開発を中止することもあります。その場合には、開発に要したコストを回収することができなくなるため、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)販売方法等について
「SVF」、「invoiceAgent」、「Dr.Sum」、及び「MotionBoard」といったソフトウェアの販売先はSIerが中心となっており、システム開発の過程においてウイングアーク1stグループのソフトウェアを組み込む、若しくはウイングアーク1stグループのソフトウェアを利用してシステムを構築する形で使用されております。売上の大半を占めるSIerの法令違反や情報漏洩等により正常に事業活動を行うことが難しい場合や緊急事態宣言等経済活動の停止を伴う措置が講じられる場合等、SIerが十分に活動することが難しい場合、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ウイングアーク1stグループは、機能強化や品質向上を目的として当該製品のバージョンアップを継続的に行っていくことを予定しておりますが、このためにはSIerだけではなくエンドユーザーのニーズも適時・適切に把握することが必要になります。しかしながら、ウイングアーク1stグループの販売先はSIerが中心となっていることから、直接エンドユーザーに販売する場合と比較してエンドユーザーのニーズを適時・適切に把握できない可能性があり、その場合には、市場動向を適切に把握できず、ウイングアーク1stグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このような状況に対処すべくウイングアーク1stグループでは、営業、開発及びサポートのすべての部署でエンドユーザーと直接対話する機会を増やし、エンドユーザーとのニーズギャップ解消に努めております。
また、ウイングアーク1stグループの製品を販売するSIerとウイングアーク1stグループとの間では、原則として販売に係るパートナー契約を締結することとしております。パートナーにとっても販売メリットの高い製品、サービスを提供できるよう努めるとともに、パートナーとの相互協力により販売推進することを前提としてパートナーとの関係強化に努めておりますが、ウイングアーク1stグループにとって重要なパートナーとの契約が解除された場合や、販売条件の大幅な変更を余儀なくされた場合には、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)クラウドサービスの提供について
ウイングアーク1stグループは、インターネット環境への接続が可能なユーザーを対象としたクラウドサービスの開発、運営を行っております。このため、クラウドサービスの前提となる利用契約が継続されない等により想定したリカーリングレベニューが得られない場合やサポートコスト等クラウドビジネスの運営に関する費用が事前の想定を上回って増加した場合、自然災害、戦争、テロ、事故等による通信インフラの破壊や故障、Amazon Web Services Inc.や株式会社セールスフォース・ドットコムといったクラウドサービスの運営に欠くことのできないアライアンスパートナー及びウイングアーク1stグループにおけるシステムダウンや障害、コンピュータウイルスやハッカーからの攻撃等により、ウイングアーク1stグループが運営するクラウドサービスが正常に稼働しない状態となった場合、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)経済情勢に関するリスクについて
ウイングアーク1stグループの収益の大部分は、現時点では、日本国内のエンドユーザーへの販売に依存していることから、ウイングアーク1stグループのビジネスは、日本の経済状況により影響を受ける可能性があります。地政学的要因による国際的なサプライチェーンの混乱や資源価格の上昇、また米国及び中国を始めとした海外経済のリセッションの影響による日本経済の停滞、日本企業によるIT投資の大幅な減少、又はその他の市場環境の悪化は、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)人材の確保及び育成について
ウイングアーク1stグループの事業運営は、経験豊富な経営陣や営業、開発等の専門人材に依存しており、人材の確保と育成が重要な課題であると考えております。また、業種や業務に特化したクラウドサービスの提供を進めるため、各業界に精通した人材の確保や顧客により直接的にアプローチするチームの組成、サービスごとのサポート体制の構築等有能な人材へのニーズは、さらに増加しております。
ウイングアーク1stグループは、今後も継続的に人材の確保・育成に努めていく方針でありますが、人材市場の需給逼迫等の事情によりウイングアーク1stグループの必要とする人材をタイムリーに確保できない場合は、ウイングアーク1stグループの事業及び将来戦略に制約を受けることとなり、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)知的財産権及びその他第三者の権利侵害について
ウイングアーク1stグループのビジネス上、ウイングアーク1stグループの開発した独自の方法や技術及びウイングアーク1stグループが開発し又はライセンスを受けている特許その他知的財産権は重要であり、ウイングアーク1stグループの知的財産権が十分に保護されない場合には、ウイングアーク1stグループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
また、ウイングアーク1stグループでは、自社製品の企画、開発、販売及び他社製品の利用など、事業活動によって第三者の知的財産権、その他の権利を侵害しないようにあらかじめ調査を行い、必要に応じて実施許諾を受ける等の措置を講じております。しかしながら、第三者から知的財産権、その他権利を侵害したとして訴訟を提起される等、第三者との間に紛争が生ずることがないという保証はなく、第三者の権利を侵害したとして、多額の損害賠償金や和解金の支払又は代替的な技術の開発を余儀なくされた場合、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)個人情報等の取扱いについて
ウイングアーク1stグループでは、事業において知り得た個人情報につき、個人情報保護規程を制定し、適切な管理・保護の徹底を図っております。この他、ウイングアーク1stでは、2007年5月に情報セキュリティマネジメントシステムの公的認証であるISO27001を取得し、ICカードによる執務室の入退室管理、社外に持ち出す可能性のあるノートパソコンのハードディスク暗号化等の対応策を実施する等、情報資産全般について、適切な管理・保護を行うように努めております。また、現在ウイングアーク1stでは全社員在宅勤務を原則としており、新たなセキュリティリスクとなっていることから、社内システムを強化するとともに、リモートワークに関するガイドラインを定め、社員に周知徹底し、情報の流出を防ぐ体制を整えております。
しかしながら、万一個人情報が漏洩した場合、顧客から損害賠償を請求される、又は個人情報保護法に基づく罰金等が科される可能性があるほか、顧客からの信用や社会的信用が低下することにより、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)M&A、資本業務提携について
「(1)情報通信業における技術革新等への対応について」に記載のとおり情報通信分野の変化は激しく、同業他社に対するM&Aや資本業務提携を実施することによりウイングアーク1stグループの事業領域を補完・強化していくことも、事業規模拡大のための有効な手段の一つであると位置づけております。M&A等の実行に際しては、対象企業に対して財務・税務・法務・ビジネス等に関する詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスク低減に努める方針であります。但し、これらの調査で確認・想定されなかった事象が実行後に判明あるいは発生した場合や、買収後の事業環境の急変や想定外の事態の発生等により、当初期待していた投資効果が得られない場合は、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。また、M&A等の結果、事業領域が変化することによって、ウイングアーク1stグループの収益構造が変化する可能性があります。
(12)海外展開について
ウイングアーク1stグループはグローバルな事業展開を進めておりますが、海外市場への事業進出には、各国政府の法律又は規制への対応、保護貿易諸規則の発動、為替制限や為替変動、輸送・電力・通信等のインフラ障害、各種法律又は税制の不利な変更、移転価格税制による課税、社会・政治及び経済情勢の変化や我が国との関係の悪化、異なる商慣習による取引先の信用リスク、労働環境の変化や現地での人材を確保できないリスク等、海外事業展開に共通で不可避のリスクがあります。この他、投資の回収が当初の事業計画案どおりに進まないリスクや、撤退等のリスクがあります。これらリスクが発現し、ウイングアーク1stグループの対応が遅れた場合には、ウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)財務報告に係る内部統制に関するリスクについて
ウイングアーク1stグループは、財務報告の信頼性に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置づけ、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおりますが、内部統制報告制度のもとでウイングアーク1stグループの財務報告に係る内部統制に重要な不備が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を整備及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制には本質的に内在する固有の限界があるため、今後、ウイングアーク1stグループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生した場合には、ウイングアーク1stグループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(14)のれん及びその他の無形資産の減損について
2016年4月14日に旧ウイングアーク1st株式会社の全株式を取得した際に発生したのれん及びその他の無形資産は、その後の企業買収により発生したものを含め、当連結会計年度末現在それぞれ27,348百万円及び15,674百万円であり、合わせてウイングアーク1stグループの資産の65.2%を占めております。当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産(商標権)については、償却を行わず、毎期又は減損の兆候が存在する場合には、その都度減損テストを実施し、ウイングアーク1stグループの事業の収益性が低下したと認められる場合には減損損失を計上する必要が生じ、ウイングアーク1stグループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、IFRSでは、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産の償却を行いません。そのため、当該のれん及びその他の無形資産について減損損失を計上した場合は、日本基準に比べてウイングアーク1stグループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、ウイングアーク1stグループにて実施しているのれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記13.のれん及びその他の無形資産(4)のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テスト」をご参照下さい。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の回収可能価額は、使用価値により算定しており、過去の経験と外部からの情報を基に、製品・売上形態ごとの新規案件売上及び将来の売上高成長率に関する経営者の主要な仮定を反映させて作成され、経営陣により承認された翌連結会計年度の予算及びその後2年の業績予測を基礎とする割引キャッシュフロー法(以下「DCF法」とする)に基づき算定しております。業績予測期間終了以降の継続価値は、予測期間終了後も永続的に発生することが期待される利益を割引計算する手法(永続法)を用いており、日本の長期的なインフレ率予想を勘案し成長率を1%に設定しております。
当連結会計年度末における回収可能価額は、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産が含まれる資金生成単位の資産の帳簿価額を75,672百万円上回っておりますが、割引率が11.8%上昇した場合、又は将来キャッシュ・フローの見積りが62.6%減少した場合、回収可能価額と帳簿価額が等しくなる可能性があります。
また、ウイングアーク1stグループでは、のれんの減損に係るリスクを低減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取組みを実施しております。
・リカーリングビジネスの拡大
ソフトウェアライセンスの保守、サブスクリプションやクラウドサービスの利用料等のリカーリングレベニューは、契約が継続される限りは毎年継続的に売上が計上され、契約数が増加すればその分売上も増加します。ウイングアーク1stグループは、事業の安定と収益力の強化のため、このリカーリングビジネスの拡大を図っております。
・業種・業務に特化したソリューションの推進
ウイングアーク1stグループは、単なるソフトウェアやクラウドサービスの提供ではなく、業種ごとのノウハウを組み合わせた顧客の業務に即したソリューションを提供しております。特にデータエンパワーメントソリューションは、製造業向けのIoT可視化ソリューションや金融業向けの営業生産性向上ソリューション等の提供により成長してまいりました。新ソリューションによるさらなる売上拡大のため、継続的な技術開発と業種ノウハウの蓄積に努めております。
(15)有利子負債への依存と資金調達について
ウイングアーク1stグループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結しており、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。そのため、金融市場の急激な変化等により、ウイングアーク1stグループの資金調達能力、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該借入金につきましては、2016年4月に実施した当初借入額31,500百万円から返済が進んでおり、当連結会計年度末における連結有利子負債(一年内返済長期借入金及び長期借入金の合計)の残高は9,942百万円、資産合計に対する有利子負債残高の比率は15.1%となっております。
また、当該借入金については複数の金融機関とシンジケートローン契約を締結しております。当該契約には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、貸付人の請求があれば同契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の返済をするための資金の確保が必要となり、ウイングアーク1stグループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
ウイングアーク1stグループでは、上記の金融機関からの借入に関係した、金利上昇に係るリスクと財務制限条項への抵触による一括返済リスクに対応するため、主に以下の取組みを実施しております。
・収益性を重視した経営管理
ウイングアーク1stグループは、事業の持続的成長のためリカーリングビジネスを推進するとともに、EBITDA及び親会社の所有者に帰属する当期利益を重要な経営指標としており、利益率の維持向上を図っております。
・財務バランスを意識した資金計画
ウイングアーク1stグループの資金計画は、リカーリングビジネスにより安定している営業キャッシュ・フローをベースにしており、借入金の返済及び配当金の支払いを見込んだ上で、投資の計画を策定しております。投資及び財務キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローの範囲内となるよう管理し、手元資金の増加に努めます。
・金利条件及び財務制限条項に係る金融機関との交渉
金融機関と随時交渉を行っており、経済環境やウイングアーク1stグループの事業の進捗状況を共有した上で、金利条件及び財務制限条項の削除及び縮小につき、協議しております。なお、2024年2月にはリファイナンスを実行し、金利条件を改善しております。
(16)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
ウイングアーク1stは、ウイングアーク1stグループ役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし新株予約権を付与しております。2024年2月期末現在、新株予約権による潜在株式総数は394,800株であり、発行済株式総数34,823,070株の1.1%に相当します。これらの新株予約権が権利行使された場合、ウイングアーク1st株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
(17)伊藤忠商事株式会社及び東芝デジタルソリューションズ株式会社との関係について
伊藤忠商事株式会社が親会社であるIW.DXパートナーズ株式会社は、2024年2月期末現在、ウイングアーク1stの議決権の22.09%を保有しているため、伊藤忠商事株式会社はウイングアーク1stのその他の関係会社に該当いたします。同社とは2019年11月5日付で資本・業務提携契約を締結しております。ウイングアーク1stは同社に対してウイングアーク1stソフトウェア等の販売を行っておりますが、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等は確保しております。
また、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、2024年2月期末現在、ウイングアーク1stの議決権の13.31%を保有しているため、ウイングアーク1stのその他の関係会社に該当いたします。同社とは2020年11月17日付で資本・業務提携契約を締結しており、同社から社外取締役1名を受け入れております。同社はウイングアーク1stの販売パートナーとして、ウイングアーク1stソフトウェア等の販売を行っておりますが、他のパートナー企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等は確保しております。
なお、ウイングアーク1stグループと伊藤忠商事株式会社及び東芝デジタルソリューションズ株式会社との事業領域は相違しており、ウイングアーク1stの意思決定において両社による事前承認を必要とする事項等もないことから、ウイングアーク1stの独立性及び自律性は保たれていると認識しております。
しかしながら、将来において、何らかの要因により両社が経営方針や事業戦略(ウイングアーク1st株式の保有方針も含む。)を変更した場合、ウイングアーク1st株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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