ヘリオス(4593)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


ヘリオス(4593)の株価チャート ヘリオス(4593)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

ヘリオスグループの企業集団は、ヘリオス、連結子会社7社により構成されており、「『生きる』を増やす。爆発的に。」というミッションの下、幹細胞技術をもって難治性疾患を罹患された方々に治癒と希望を届けるべく、体性幹細胞再生医薬品分野、及びiPS細胞に関連する技術を活用した再生医療等製品(iPSC再生医薬品)の研究・開発・製造を行うiPSC再生医薬品分野において事業を推進しております。

なお、ヘリオスグループの事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントであります。

 

以下の表は、当連結会計年度末現在のヘリオスグループの開発品並びにその適応症、市場、開発段階及び進捗状況を示しております。

なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴うため、ヘリオスグループとして各製品に関する製造販売承認の取得又はその時期を保証できるものではありません。ヘリオスグループ製品の開発リスクの概要については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」のとおりであります。

 

[体性幹細胞再生医薬品分野]

(*1)米国FDAよりFast Track及びRMAT(重篤または生命を脅かす疾病や治療法のない疾病に対する新薬の開発に向け、一定の条件を満たした医薬品(RMATは細胞加工製品)に対し迅速承認を可能とする制度)指定を受けています。

 

[iPSC再生医薬品分野]

(*2)Retinal Pigment Epithelium:網膜色素上皮細胞

(*3)住友ファーマ株式会社より再生・細胞医薬事業を承継

 カーブアウト予定のパイプラインは表記より除いています。

 

(1)体性幹細胞再生医薬品分野

① 概要

体性幹細胞再生医薬品は、生体のさまざまな組織にある幹細胞である「体性幹細胞」を利用して、現在有効な治療法のない疾患等に対する新たな治療法を開発することを目的とする製品です。

なお、体性幹細胞には、神経幹細胞、間葉系間質細胞、造血幹細胞など複数の種類があり、生体のさまざまな組織に存在します。限定された種類の細胞にのみ分化(細胞が特定の機能を持った細胞に成熟することをいいます。)するものや、複数の種類の細胞に分化するものもありますが、iPS細胞等との比較においては、分化する細胞の種類は一般に限られています。

本医薬品分野においてヘリオスグループは、2016年より米国Athersys, Inc.(以下、「アサシス社」と言います。)が特許権・特許実施許諾権を有する体性幹細胞製品MultiStem®を用いた脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(以下、「ARDS」と言います。)に対する細胞治療医薬品の開発・販売に関する国内の独占的なライセンス契約を締結しておりました。しかしながら、アサシス社が2024年1月に米国連邦破産法第11条に基づく破産手続きを申請したことを受け、ヘリオスグループは、オハイオ州北部地区連邦破産裁判所からの許可を得て、アサシス社の資産買収を完了し、グローバルでの開発権を含めたMultiStem®及びその関連資産の所有者となりました。

 

② 体性幹細胞再生医薬品分野のパイプライン(HLCM051)

(ⅰ)急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法開発

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、様々な重症患者に突然起こる呼吸不全の総称で、原因疾患は多岐にわたりますが、およそ1/3は肺炎が原因疾患で、新型コロナウイルス感染症の重症患者においても併発することが確認されています。生命予後を直接改善できる薬物療法は無く、人工呼吸管理による呼吸不全の対症療法が実施されますが、有効な治療薬はいまだ開発されていません。そのため、ARDSは非常にアンメットメディカルニーズが高く、新たな治療の選択肢が望まれている疾患と言えます。発症後の死亡率は全体の30~58%*aである極めて予後不良の疾患で、生命予後を改善できる新規の治療法が望まれています。現在国内の患者数は年間2.8万人程度*bと推定されており希少疾患に指定されていますが、米国では21.3万人から26.2万人*c、欧州では13.3万人程度*d、中国では67万人*e、全世界では110万人以上が罹患していると推定されます。

(出典)

*a ARDS診断ガイドライン2016

*b 疫学データの発症率と人口統計による日本総人口を基にヘリオス推定

*c Diamond Metal. 2023 Feb 6. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan–.PMID: 28613773 のデータと外務省アメリカ合衆国基礎データによる米国総人口を基にヘリオス推計

*d Community Research and Development Information Service (CORDIS) 2020 7-9 3

*e song-et-al-2014-acute-respiratory-distress-syndrome-emergingresearch-in-china

 

ヘリオスグループが開発を進めるARDSに対する新規の細胞治療法は、HLCM051をARDSと診断された患者に一定の時間内に静脈投与するものです。HLCM051は、炎症性T細胞を中心とした炎症免疫細胞の活性化を抑制することにより、肺での過剰炎症や毛細血管内皮の損傷を抑制し、肺水腫の状態を改善することで呼吸機能を正常化する効果があると考えられています。その結果、ARDS患者における人工呼吸器の使用期間を短縮、又は死亡率を低下させる可能性があると考えられます。

アサシス社は、欧米においてARDS患者に対するMultiStem®の安全性と有効性を探索する第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施しており、2021年11月にIntensive Care Medicineに試験結果が掲載されました。この試験は統計的に有意差を検出することを目的とはしていませんでしたが、ARDS患者20人に対してMultiStem®を、10人に対してプラセボを投与して実施した第Ⅱ相二重盲検試験において、死亡率、投与後28日間の人工呼吸器を使用しなかった日数及び集中治療室での管理を必要としなかった日数などの指標においてMultiStem®投与群では改善傾向が見られました。

ヘリオスグループは、2018年10月、日本国内における肺炎を原因疾患とするARDS患者を対象としたHLCM051の有効性及び安全性を検討する第II相試験(治験名称:ONE-BRIDGE試験)を開始しました。本治験は、非盲検下で標準治療対照、組入症例数30として、2019年4月より患者組み入れを開始しました。2020年4月には、あらたに評価対象群を追加し、新型コロナウイルス由来の肺炎を原因疾患とするARDS患者5症例を対象に、安全性の検討を実施するため試験プロトコルの変更を行いました。2021年8月と11月には、HLCM051投与後90日と180日の評価項目のデータの一部を発表し、有効性並びに安全性について良好な結果が示されました。

2024年9月には米国FDA(Food and Drug Administration)との協議により、米国を中心としたARDS治療薬のグローバル第Ⅲ相試験(治験名称:REVIVE-ARDS試験)に関する治験デザインに合意し、米国における治験開始に向けた準備を進めることとなりました。さらに、日本においては、既に日本国内で完了した第Ⅱ相試験(ONE-BRIDGE試験)と米英で実施した第Ⅱ相試験(MUST-ARDS試験)の良好な結果に加え、検証試験としてREVIVE-ARDS試験を実施することを前提に、国内での条件及び期限付承認申請に向けた準備を進めています。承認に向けた臨床データパッケージの内容や承認後の製品の製造法や品質管理等に関する内容については、規制当局と概ね合意しています。2025年4月には、PMDAとREVIVE-ARDS試験において国内被検者の組み入れが可能である点について合意しました。2026年1月には、REVIVE-ARDS試験の一部として日本国内で先行して実施する治験に向けた治験計画届出書をPMDAに提出し、提出後14日のレビュー期間を経て本試験を開始する準備が整いました。

なお、ヘリオスグループの開発するHLCM051は、2019年11月に、ARDSを対象とした希少疾病用再生医療等製品として厚生労働大臣より指定されています。

 

(ⅱ)脳梗塞急性期に対する治療法開発

脳梗塞は、脳の血管が詰まることにより、その先に酸素や栄養分が届かなくなり、詰まった先の神経細胞が時間の経過とともに壊死していく病気です。日本の年間発症患者数は23万人~33万人(総務省資料及びDatamonitor等を基にヘリオス推定)、死亡者数は年間約6万2千人(厚生労働省 人口動態統計)と推定され、発症した患者さんの中には死亡を免れても機能障害が残り、寝たきりや日常生活に介護が必要となる場合があることが知られています。

 

脳梗塞急性期に対しては、脳の血管に詰まった血の塊を溶かす血栓溶解剤t-PAを用いた治療が行われていますが、血栓溶解剤の処方は発症後4時間半以内に限定されており、脳梗塞発症後に治療できる時間がより長い新薬の開発が待たれる疾患領域となっています。HLCM051は、点滴により静脈投与され、脾臓に分布して炎症免疫細胞の活性化を抑制する事により炎症や免疫反応を抑えて神経細胞の損傷を抑制し、神経保護物質を産生して治療効果を発揮すると考えられています。

本製品は、すでにアサシス社によって欧米にて第Ⅱ相試験が行われており、脳梗塞発症後36時間以内の患者さんに対する治療法となりうる可能性が示されております。ヘリオスグループは、この欧米での試験結果を参考とし、脳梗塞発症後18時間から36時間以内の患者さんを対象とした、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しました。2017年11月より患者への投与が開始され、以降40施設強の医療機関で臨床試験を進め、2021年8月に患者組み入れが完了いたしました。2022年3月末にすべての治験登録患者の投与後365日後データの収集が完了し、同年5月に試験データの一部を解析し速報値を公表しました。その結果、主要評価項目は未達となりました。一方で、脳梗塞患者の日常生活における臨床的な改善を示す複数の指標を通じて、全般的に1年後の患者の日常生活自立の向上が示唆されました。2023年10月にはアサシス社が、欧米で実施している治験(治験名称:MASTERS-2試験)の中間段階でのデータ解析を行い、統計学的有意性を満たすためには組み入れ患者数の追加が必要との結論になりました。2025年4月には「日本語版医療特化型LLMの社会実装に向けた安全性検証・実証」がNEDOに採択され、本計画にヘリオスも参画しております。この計画内で用いられる脳卒中の患者さんに関する多施設共同脳卒中データベース(Fukuoka Stroke Registry:FSR)の活用も含め、国内での対応について、規制当局との相談を進めています。ヘリオスグループは引き続き規制当局との協議を続け、治療薬の開発推進に向けた方針を検討してまいります。

なお、脳梗塞急性期を対象としたHLCM051は、2017年2月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。

 

(ⅲ)外傷に対する治療法開発

外傷は、身体外部の物理的、化学的な力によって組織や臓器に深刻な損傷を与えるもので、骨、筋肉、腱、神経、血管などに損傷を与え、内臓破裂など深刻な状況を引き起こします。外傷性傷害の症状は様々ですが、高い割合の患者が全身性炎症反応症候群(SIRS: Systemic Inflammatory Response Syndrome)を含む炎症亢進を経験し、急性腎障害(AKI: Acute Kidney Injury)、急性肺障害、ARDS、多臓器不全、二次感染、敗血症、静脈血栓塞栓症、その他の二次傷害(脳浮腫など)などの合併症を引き起こします。米国において、外傷による死亡者数は年間22万人*fを数え、45歳未満の死因の第1位となっています。

外傷に起因する全身性炎症反応症候群(SIRS)は、交通事故、銃創、薬物、感染をはじめとする外部からのストレスに対する過剰な自己防御反応であり、自律神経、内分泌、血液、免疫学的変化を引き起こします。この変化は、初めは体を防御する目的であっても、調節不可能なサイトカインストームとなり、大規模な炎症亢進、そして深刻な臓器障害を引き起こします。現在この状況に至った患者さんに対する有効な治療薬は無く、それぞれの症状に対して対症療法を行うのみです。

ヘリオスが実施したARDSなどを対象とした治験で示された通り、HLCM051の急性炎症を抑える力はサイトカインストームを抑え込み、患者さんの予後改善に寄与することが期待されます。

外傷を対象とした治療薬の開発においては、米国国防総省とメモリアル・ハーマン基金により、テキサス大学ヒューストン・ヘルスサイエンス・センター(UTH)及びメモリアル・ハーマン・メディカル・センターにおいて、156人の患者を対象に、外傷による多臓器不全/全身性炎症反応症候群へのHLCM051を用いたプラセボ対照二重盲検第2相試験(治験名称:MATRICS-1試験)を実施しています。MATRICS-1試験では、効果評価をしやすいよう主要評価項目を腎機能に設定して治験を進めています。

(出典)

*f アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)

 

③ 培養上清

培養上清は、細胞を培養した際に、それらが培養液の中で成長した後に得られる液体部分を指します。細胞を培養する際、通常は栄養分を含んだ培養液を使用し、細胞はこの液体環境の中で増殖したり、代謝産物を分泌したりします。培養上清は、培養が終わった後に、細胞や微生物を遠心分離やろ過などの方法で除去し、その液体部分だけを集めたものです。培養上清には、細胞が分泌したタンパク質や代謝産物などが含まれ、これらは研究や診断、治療に利用される可能性があります。

ヘリオスは、ヘリオスの再生医療等製品の生産に伴い今後大量に産出される培養上清の活用に向けた取り組みを進めています。2026年1月に、培養上清の本格生産に対応するため、神戸バイオメディカル創造センター(BMA)内に細胞加工製造用施設を本格稼働させました。一般社団法人AND medical groupとの間で、2024年4月に共同研究契約を締結し、2025年1月には原材料をヘリオスからAND medical社に供給するための供給契約を締結しました。また、2026年1月には、アルフレッサ株式会社との間で、培養上清の継続的な売買に向けた取引基本合意書を締結しました。このほか、複数の有力な取引先との販売に向けた交渉を進めています。

 

(2)iPSC再生医薬品分野

① 概要

iPSC再生医薬品は、iPS細胞を分化誘導(細胞を特定の機能を持った細胞、例えば神経細胞・皮膚細胞などに人為的に変化させることをいいます。)して作製した人体と近似の機能を持つ細胞を移植することによって、機能を回復することを目的とする製品であります。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、2006年に国立大学法人京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功し、2012年にその功績からノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになった、皮膚などの体細胞にいくつかの遺伝子(山中因子)を導入することによって作り出される、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多能性)と、ほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持った細胞であります。

ヒトの体は約60兆個の細胞からなりますが、それらの細胞は全て元々一つの細胞であった受精卵が細胞分裂を繰り返し、それぞれ臓器・器官等を構成する細胞へと分化したものであります。受精卵が特定の細胞に分化していく流れは一方通行であり、従来の技術では一度分化した細胞を分化する前の細胞に戻すことはできませんでした。ところが、皮膚細胞などの成熟した細胞にいくつかの遺伝子を導入することにより、新たに様々な細胞に分化する能力(多能性)とほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持たせることに成功したものがiPS細胞であります。iPS細胞のような多能性幹細胞は、いずれも自然に特定の細胞に分化していく訳ではないため、特定の細胞に分化を誘導するためにはiPS細胞の作製とは別の技術が必要となります。

加えて、近年、細胞医薬品分野においては、罹患者自身から採取した細胞(自家細胞)由来の幹細胞を用いたもののみならず、安全性が確認された他人の細胞(他家細胞)由来の幹細胞を活用した医薬品などの研究開発が進んでおります。

 

② iPSC再生医薬品分野のパイプライン(HLCN061、HLCR011、HLCL041)

(ⅰ)がん免疫(HLCN061)

ヘリオスグループは、遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞*1(eNK®細胞)を用いて、固形がんを対象にしたがん免疫細胞療法の研究を進めております。

これまでヘリオスグループが培ってきたiPS細胞を取り扱う技術と遺伝子編集技術を用いることで、殺傷能力を高めたeNK®細胞の作製に成功しており、更に大量かつ安定的に作製する製造工程を開発するなど、次世代がん免疫療法を創出すべく自社研究を進めています。神戸医療イノベーションセンター内に、2022年7月、ヘリオスグループの自社管理による細胞加工製造用施設が本稼働し、eNK®細胞の治験製品の製造に向けた試作製造に着手いたしました。なお、上記施設にて使用する培養装置の供給元である佐竹マルチミクス株式会社と、2022年10月、培養装置の継続的改良と支援業務に関する資本業務提携契約を締結しました。

昨今、遺伝子改変したT細胞やNK細胞を用いたがん免疫細胞療法の可能性が報告されています。血液がんに関しては、患者自身のT細胞を取り出し遺伝子改変により標的となるがん細胞への攻撃力を高め、再び体内に戻すCAR-T細胞療法が、国内で承認されています。一方、固形がんについては、がん免疫細胞療法として承認されている製品はなく、その実現が今後の課題となっています。特に、がん疾患の多くを固形がんが占めていることから、固形がんに対する有効な治療法が望まれております。

自社研究の成果として、eNK®細胞が中皮腫皮下移植モデルマウス、肺がん同所生着モデルマウス、肝がん皮下移植モデルマウス、及び胃がん腹膜播種モデルマウスに対して抗腫瘍効果を有すること、生体におけるがんと同様の環境を有している肺がん患者由来のがんオルガノイド*2においても、同様に抗腫瘍効果があることを確認しております。また、国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、「国立がん研究センター」と言います。)と現在共同研究にて、国立がん研究センターが保有する複数種類のがん種に由来するPDX*3(Patient-Derived Xenograft:患者腫瘍組織移植片)移植マウスを用いてヒト肺がん組織に対するeNK®細胞の抗腫瘍効果を確認しております。さらに、兵庫医科大学とeNK®細胞を用いた中皮腫に対するがん免疫細胞療法に関する共同研究を、国立大学法人広島大学とeNK®細胞を用いた肝細胞がんに対するがん免疫細胞療法に関する共同研究を進めております。2025年10月には、国立大学法人九州大学と、CAR-eNK細胞を用いた脳腫瘍に対するがん免疫細胞療法に関する共同研究契約を締結しました。ヘリオスグループは、治験の開始に向けて、eNK®細胞が抗腫瘍効果をより発揮しやすい固形がんの種類の探索・評価を行うとともに、PMDAとの相談を進めています。2024年12月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が公募した支援研究課題に採択され、eNK®細胞を用いて薬事規制に沿った各種非臨床試験の実施、臨床医と共同で投与方法の検討等に関する補助金交付が決定しました。

さらに2025年1月には、ヘリオスはAkatsuki Therapeutics株式会社(以下、「Akatsuki社」と言います。)と、eNK細胞®を用いた次世代がん免疫細胞療法の研究・開発を推進するための共同事業契約及びライセンスオプション契約を締結しました。共同事業契約に基づき、これまでヘリオスが単独で実施してきたeNK®細胞の研究開発業務は、ヘリオスグループ全体の資源の効率的活用及び資金の機動的調達並びに研究の独立性の確保の観点より、今後Akatsuki社が主導し、ヘリオスはAkatsuki社より研究開発業務を受託します。また、ライセンスオプション契約に基づき、ヘリオスはAkatsuki社に対して、がん領域を中心とするあらゆる領域におけるeNK®細胞についての研究・開発・製造・販売に関するライセンス契約を締結するオプション権を付与することとなりました。

ヘリオスグループは、eNK®細胞を用いた治療薬開発に向けた早期の治験開始を目指すとともに、次世代eNK®細胞としてCAR-eNK細胞の研究を進めております。CAR(キメラ免疫受容体:Chimeric Antigen Receptor)とは、遺伝子編集技術を用いて工学的に作成される人工の受容体で、細胞表面に抗原を発現しているがん細胞と結合することで自らを活性化し、結合したがん細胞を攻撃し、死滅させることができます。ヘリオスグループでは、本特徴を有したCAR-eNK細胞は、次世代eNK細胞として新たな治療薬になりうる重要な技術と期待しております。

 

*1 ナチュラルキラー細胞(NK細胞):人間の体に生まれながらに備わっている防衛機構で、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する白血球の一種です。さらに白血球の分類においてはリンパ球に分類されます。NK細胞を用いた治療の有効性としては延命効果、症状の緩和や生活の質の改善、治癒が期待されています。

*2 生体内の組織・器官に極めて似た特徴を有している3次元的な構造を持つ組織・細胞。

*3 PDXモデル:PDX(Patient-Derived Xenograft:患者腫瘍組織移植片)モデルは、患者由来のがん組織片を免疫不全マウスに移植し腫瘍を再現したモデルです。臨床に近い状態が再現されており前臨床創薬研究において活用されています。従来の実験に用いられてきたがん細胞株は、元のがん組織の特性が失われているため、抗がん剤の正確な治療効果を予測できない可能性がありました。PDXモデルは、がん組織の特徴が保持されており、抗がん剤の治療効果の予測に高い精度をもたらすことができます。

 

(ⅱ)細胞置換

(a)iPSCプラットフォーム

ヘリオスグループは、遺伝子編集技術を用いて、HLA型*1に関わりなく免疫拒絶*2のリスクを低減する次世代iPS細胞、ユニバーサルドナーセル(Universal Donor Cell:以下、「UDC」と言います。)の作製を進めてまいりました。

UDCは、免疫拒絶反応を抑えた他家iPS細胞です。次世代がん免疫療法、眼科領域、臓器原基等への活用を目指しています。通常、移植細胞は患者とのHLA型を一致させない場合には、免疫拒絶反応を起こします。そのため、移植時には免疫抑制剤の投与が必要となりますが、患者の負担も大きくなります。免疫抑制剤の投与を回避するためには、自らの細胞から作製する自家iPS細胞の使用が望ましいのですが、この作製には多くの時間と多額の費用が必要となります。UDCは、遺伝子編集技術を用い、免疫拒絶反応の抑制を可能にするiPS細胞です。ヘリオスグループのUDCは、他家iPS細胞から拒絶反応を引き起こすHLA遺伝子を除去し、その細胞に免疫抑制関連遺伝子、及び安全装置としての自殺遺伝子を導入した、安全な細胞医薬品の原材料となる細胞です。iPS細胞本来の特長である無限の自己複製能力や、様々な細胞に分化する多能性を維持しながら、免疫拒絶を抑え安全性を高めた再生医療等製品創出のための次世代技術プラットフォームです。

2020年には、日米欧を含む国内外でのヒトへの臨床応用も可能なレベルの細胞株(臨床株)の作製に成功し、2021年には、UDCのマスターセルバンクを完成させました。2021年9月には、国立研究開発法人国立国際医療研究センターとの共同研究においてUDCから膵臓β細胞*3への分化誘導を確認しました。2023年4月には、米国ノースウェスタン大学の研究チームが、UDCから分化させた聴神経前駆細胞が、遺伝子編集前の親株細胞から分化させた聴神経前駆細胞に比べて蝸牛への移植後生着率向上を示すことを確認しました。新たな治療薬の研究や細胞置換を必要とする疾患に対するさらなる治療法の研究を目的に、国内外の企業・研究機関10社以上にUDCやiPS細胞を提供し様々な疾患への適応可能性について評価を実施しています。さらに、2023年10月には、カリフォルニア州再生医療機構(CIRM:California Institute for Regenerative Medicine)が公募する臨床研究支援プログラムにおいて、ヘリオスグループの米国子会社であるHealios NA, Inc.に対して、次世代UDCの実現に向けた研究開発に関する補助金交付が決定し、現在その資金を活用し研究開発を進めております。2025年8月には、UDCに関する日本での特許が成立し、移植細胞の原材料となる再生医療等製品創出のための次世代技術プラットフォームとして、その技術的独自性が正式に認められました。

 

*1 HLA型:HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球型抗原)は、すべてのヒト細胞に発現しており、免疫にかかわる重要な分子です。体内では、自分のHLA型と異なるものはすべて異物と認識され、免疫反応により拒絶・攻撃されます。よって、臓器移植においてはHLA型の一致が非常に重要になります。

*2 免疫拒絶反応:他人の細胞や臓器を移植した場合、移植された細胞・臓器(移植片)が異物として認識され、免疫細胞に攻撃・排除される反応です。

*3 膵臓にあるランゲルハンス島を構成している細胞の1種で、血糖値に応じてインスリンを生産・分泌し、血液中の糖を調整しています。

 

(b)眼科領域(HLCR011)

ヘリオスグループは、他家iPS細胞を正常な網膜色素上皮細胞(以下、「RPE細胞」と言います。)に分化誘導し、純化した上で、iPS細胞由来RPE細胞懸濁液という形で罹患者に移植し、加齢黄斑変性の治療を行うiPSC再生医薬品の開発を進めております。

加齢黄斑変性(AMD:Age-related Macular Degeneration)は、網膜変性疾患の一種であり、網膜の中でも視力を保つために極めて重要な役割を果たす「黄斑部」に障害が生じる病気で、発症すると次第に視力が低下し、見え方に異常が生じるなどの症状が現われます。その原因は、黄斑部を支えるRPE細胞が老化等の原因により感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解ができなくなってしまうことにあるものとされております。加齢黄斑変性は、日本人に多く見られる滲出型(ウェット型)と欧米人に多く見られる萎縮型(ドライ型)に大別されます。

ヘリオスグループは、罹患者自身ではない第三者の細胞から作製され、安全性等に関する基準を満たしたiPS細胞から作製したRPE細胞を含む懸濁液(懸濁液とは、液体中に個体粒子が分散しているものを言います。)を移植し、患部に定着させることにより感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解機能を回復させ、視機能を改善させることを目指す、新しい治療法開発を進めております。

この治療法の開発のため、ヘリオスは、2013年2月にiPSアカデミアジャパン株式会社との間でRPE細胞を有効成分として含有する細胞製品を対象とする全世界を許諾領域としたiPS細胞樹立基本技術に関する特許実施権許諾契約を締結して非独占的ライセンスを受けるとともに、理化学研究所との間で同年3月にiPS細胞を含む多能性幹細胞由来RPE細胞を有効成分として含有する再生医療製品を対象とする全世界を許諾領域とした特許実施許諾契約を締結して独占的ライセンスを受けております。2013年12月には、大日本住友製薬株式会社(現、住友ファーマ株式会社。以下、「住友ファーマ」と言います。)との間で、日本におけるRPE細胞製品の開発を共同して行うことを合意しました。その後、iPS細胞を用いた治療法の実現にはヘリオスグループと住友ファーマのみならず様々なステークホルダーも交えた長期的な開発体制が必要となることから、資源配分の有効性を考慮したうえで共同開発体制の変更が適切であると判断するに至りました。その結果、2019年6月、今後は住友ファーマ(現、株式会社RACTHERA。住友ファーマ株式会社より再生・細胞医薬事業を承継。以下、「RACTHERA社」と言います。)が主体となって治験を進めることとなり、2023年6月に網膜色素上皮裂孔の患者を対象とする第Ⅰ/Ⅱ相試験を開始しました。2024年には最初の被験者組み入れが行われ、引き続き治験が進められています。

 

(c)肝疾患領域(HLCL041)

ヘリオスは2014年10月、公立大学法人横浜市立大学(以下、「横浜市立大学」と言います。)と臓器のもとになる臓器原基を人為的に作製する新規の細胞培養操作技術を用いた機能的なヒト臓器の作製技術に関し、独占的な特許実施許諾契約を締結いたしました。同技術は、胎内で細胞同士が協調し合って臓器が形成される過程を模倣するという発想から開発されたもので、3種類の細胞(内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)を一緒に培養することで臓器のもとになる立体的な臓器原基(臓器の芽)を人為的に創出する新規の細胞培養操作技術です。

この実用化に向け、ヘリオスは、機能的なヒト臓器をつくり出す3次元臓器を用いた治療法開発に向けて、横浜市立大学と肝疾患を対象とした肝臓原基*4の製造に関する共同研究を進め、2022年4月からは、国立大学法人東京大学医科学研究所再生医学分野と、本治療法の実用化に向け、UDCを用いた肝臓原基の製造法確立を目的とした共同研究を実施しました。肝臓は、たんぱく質など身体に必要なさまざまな物質を合成し、不要有害な物質を解毒、排泄するなど約500種類もの機能を、約2,000種類以上の酵素を用いて果たしている体内の化学工場といえる臓器です。HLCL041は、肝臓へ肝臓原基を注入し機能的な肝臓に育てることで、生産できない酵素を生産できるように肝臓機能を改善させることを目的とした再生医療等製品を目指しており、ヒトへの移植が可能なヒト肝臓原基の大量製造方法の構築、さらに作製されたヒト肝臓原基の評価方法や移植方法を検討しました。

現在、臓器が適切に機能しない疾患に対しては、機能を損なった臓器を健常な臓器へ置換する臓器移植が有効な治療法として実施されています。しかしながら、年々増大する臓器移植のニーズに対し、ドナー臓器の供給は絶対的に不足しており、iPS細胞等を用いて作製した臓器原基をヒトの体内に移植することによって機能的なヒト臓器を創り出すという新たな再生医療等製品(3次元臓器)は、臓器移植の代替治療としての新たな治療概念を提唱できるプラットフォーム技術として幅広い展開が期待されています。

なお、本研究につきましては、2023年2月、開発のさらなる加速のため、ヘリオスグループからカーブアウトした上でベンチャーキャピタル等の外部パートナーと共同で研究開発を推進する方針を決定いたしました。

 

*4 肝臓の基となる立体的な肝臓の原基。肝細胞に分化する前の肝前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系細胞と、血管をつくり出す血管内皮細胞に混合して培養することで形成されます。

 


有価証券報告書(2023年12月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてヘリオスグループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

ヘリオスグループは「『生きる』を増やす。爆発的に。」というミッションを掲げ、「iPSC再生医薬品を活用し、世界中の患者さんに治癒と希望を届ける。世界中に承認販売まで自社で行う体制を構築し、全ての人からRespectを受けるバイオ企業を確立する。」というビジョンに沿って、iPS細胞等の優れた幹細胞技術をもって、世界中の難治性疾患の罹患者に対して新たな治療法を届けるべく、研究開発から製造販売承認の取得、製造・販売までを自社、関係会社及び提携会社において実現する体制の確立を目指し、事業を進めております。

 

(2)目標とする経営指標

ヘリオスグループの体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野の研究開発推進には、多額の開発資金が必要となるため、当該製品が上市されるまでは研究開発費を中心に先行投資が続くものと想定しております。ヘリオスは、新たな提携・多面的な資金源の確保による財務の安定化を目指しており、早期の製品の上市に向け開発計画の着実な進捗に目標を置き事業を推進してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

ヘリオスグループは上記(1)記載のミッション・ビジョンを実現するため

①短期戦略:日本国内において承認の目途が立つ開発パイプライン、またはヘリオスグループの経営基盤強化(収益体制、製造研究開発販売体制)に資する開発品

②長期戦略:世界でデファクトスタンダードの地位を築く革新的基盤技術

という事業拡大戦略に基づき、①で得られたノウハウ・収益を②へ戦略的に投資し、持続的な成長を果たすという、ハイブリッド戦略を推し進めております。

まずは、短期戦略に基づき2016年に導入した体性幹細胞再生医薬品分野におけるパイプラインHLCM051の承認を目指し、現在脳梗塞急性期及びARDSを対象疾患とした治験を実施し、その結果をもって規制当局と協議を進めながら、事業化を目指し開発を進めております。

一方、長期戦略の柱であるiPSC再生医薬品の実用化にむけては、第一に遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞の作製にむけた研究活動など、再生医療の産業化に向けて必要な次世代の技術プラットフォームの確立を目指してまいります。また、遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のNK細胞(eNK®細胞)を用いて、固形がんを対象にした次世代がん免疫療法の研究を進めております。

また、ヘリオスはバイオ領域の投資に特化した米国Saisei Ventures LLCを設立し、国内外のバイオ領域への成長資金の提供と投資回収によるリターンのみならず、情報収集を通じてヘリオスパイプラインに貢献する技術や他ベンチャーとの連携を期待しています。

ヘリオスグループは、患者さんのアンメットメディカルニーズの高い適応疾患領域における複数かつ多層的な開発戦略により、リスク低減を行い、企業価値の向上を目指します。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 既存パイプラインの開発推進

ヘリオスグループは、法改正で新設された、再生医療等製品に対する早期承認制度を活用し、日本国内においていち早く再生医薬品の承認を獲得すべく、体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野にて開発を進めております。共同開発パートナーや提携先、治験実施施設等とのスムーズな連携により、着実に開発を進めることが課題と考えております。

 

② 開発におけるアライアンス体制の強化について

再生医療業界においては、常に新しい発見が重ねられており、目覚ましい技術の進展が見られます。またグローバル規模の製薬企業も再生・細胞医療に新たな可能性を見出し、企業買収等によって参入を図っています。このような競争環境のなか、ヘリオスグループは、世界でデファクトスタンダードの地位を築く可能性のある革新的なプラットフォーム技術の取得が重要と考えております。国際的な情報ネットワークを一層強化し、国内外の公的研究機関や企業等から新規技術・ノウハウを積極的に取り入れ、強固な提携関係を築くことが課題と考えております。

 

③ 資金調達・管理

ヘリオスグループのようなバイオテクノロジー企業は、研究開発費用の負担により開発期間において継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。そのため研究開発資金の確保は重要課題の1つであると考えております。

体性幹細胞再生医薬品分野において当初見込んでいた申請スケジュールに遅延が発生したことにより、今後の研究開発の継続に向けた事業体制の最適化に向け、経営資源の配分、固定費削減を中心とした合理化施策の継続的な実施を講じております。体性幹細胞再生医薬品分野、iPSC再生医薬品分野における固形がんを対象としたeNK®細胞、CAR-eNK®細胞のパイプラインにおいて特に経営資源を集中して研究開発を進めます。さらにいずれのパイプラインにおいても、自社開発のみならず、国内外の有力製薬企業との連携等を目指し、社外のパートナーとの共同開発や提携の実現が重要と考えております。

以上に加え、iPS細胞株、UDCの提供等による収入、既存パイプラインの開発進捗による共同開発先からのマイルストン収入や、承認取得による早期の売上計上を目指すほか、リスクの分散や資金調達の多様性確保のため、新規提携先からの契約一時金やマイルストン収入、金融機関等からの借入、株式市場からの資金獲得、補助金等多面的な資金源の検討も必要と考えております。

 

④ 人材の獲得

再生医療という新しい産業を創生し、グローバルリーディング企業を目指し成長を続けるためには、人材が最も重要であると考えます。新しい産業を牽引できるポテンシャルの高い人材を世界中から確保し、活躍できる場を提供することが課題と考えております。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ヘリオスグループではこれらのリスクの発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。またヘリオスグループに関連するリスクをすべて網羅するものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてヘリオスグループが判断したものであります。

 

(1)体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野のリスク

① 開発期間が長期にわたることに伴う損失の計上と追加の資金調達の可能性について

 ヘリオスは、iPSC再生医薬品分野に加えて、2016年1月より体性幹細胞再生医薬品分野においても研究開発を進めており、ヘリオスの両分野の今後の研究開発の進展及び事業展開の成否に依拠しています。

 体性幹細胞再生医薬品分野のパイプラインHLCM051は、アサシス社の開発する幹細胞製品MultiStem®を用いて脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象疾患とするもので、法改正で新設された早期承認制度に基づいた承認の取得も想定し、治験を実施いたしました。

 またiPSC再生医薬品は、前臨床試験段階であり、製品の上市までにはさらなる段階が必要となります。

 このため、体性幹細胞/iPSC再生医薬品分野において、実際に上市されるまでは収益が上がらず、損失を計上し続ける見込みとなっております。また、ヘリオスの体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野の研究開発には多額の資金が必要となることから、ヘリオスは追加の資金調達を行う可能性があります。このように、ヘリオスが想定しない追加の費用が発生したり、資金調達が想定通り行えない場合には、ヘリオスグループ(ヘリオス及びヘリオスの関係会社)の経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、HLCM051を先行して上市させることにより、その販売からの収益を、iPSC再生医薬品分野の開発に充てるハイブリッド戦略を展開しております。脳梗塞急性期及びARDSを対象とした医薬品の開発について規制当局と協議を進めております。

 

② ライセンス契約元等との関係について

 ヘリオスは、HLCM051に関しては、アサシス社細胞治療医薬品の開発・製造・販売に関し国内及び一部海外も含めた独占的なライセンス契約を締結しております。HLCM051の商用製造に関しては、医薬品製造受託機関(CMO)に対してヘリオスから製造委託を行う予定です。アサシス社は、2024年1月、米国連邦破産法第11条に基づく破産手続きを申請しました。ヘリオスは、米国連邦破産法第363条に基づく取引に関する契約をアサシス社と締結し、アサシス社のほぼ全ての資産の取得を目指しています。なお、アサシス社との契約下におけるヘリオスの既存の権利は、連邦破産法下の保護を受けることが合意されており、今後、本手続きの中で、ヘリオス事業へ影響が及ばないよう適切に管理される予定です。アサシス社の上記資産獲得に何等かの障害が発生した場合やCMOの製造・供給体制になんらかの支障が生じた場合等、HLCM051の開発又は販売計画に変更が発生する可能性があります。

 

③ 技術革新と競合について

 ヘリオスが実施しているiPSC再生医薬品に係る研究開発の領域は、国内のみならず、世界的にも注目を集めている研究分野であるため、新しい知識や技術が発見されイノベーションが生まれやすい分野であります。ES細胞由来の細胞医薬品を含め、様々な治療法の開発が進展しているところであります。

 体性幹細胞再生医薬品分野においては、すでに様々な研究開発が進んでおり、より実現性の高い技術革新が行われる可能性があります。

 これらの周辺領域を含め当事業に参入している企業や潜在的な競争相手が、ヘリオスの保有している知的財産権等を上回る新技術を開発し、関連特許を取得する場合や先行して上市した場合、また、ヘリオスグループで実施している再生医療分野に関する最新業界動向の収集・分析が不十分で環境変化への迅速な対応ができない場合などには、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、大学や公的研究機関と連携し、常に最先端の技術開発に取り組んでおります。

 

④ 再生医療等製品に関する法規制について

 2014年11月に施行された医薬品医療機器等法(以下、薬機法と言います。)は、医薬品、医療機器等の安全かつ迅速な提供を図るものであり、体性幹細胞/iPSC再生医薬品を含む再生医療等製品について早期承認制度に基づいた条件及び期限付承認制度を新設しております。この制度下での承認実績は既にあるものの、他家iPS細胞を由来とする製品はいまだ実績がないことから、他の細胞由来の製品とは異なる検証が必要となる可能性も考えられます。また、かかる薬機法を含む再生医療等製品に関する法規制については、技術の革新の状況や予期し得ない事態の発生等に対応して、継続的に見直しがなされる可能性があります。法規制の追加や法改正の内容如何によっては、これまで認められてきた品質管理基準を上回る品質管理が求められる等の理由によって、多額の設備投資や追加の開発費用が必要となり、またヘリオスの想定よりも多数の試験が求められた場合、開発スケジュールが大幅に遅れるなどの事態が生じる可能性があります。このような場合においては、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、そうした見直しにいち早く対応すべく情報収集、関係規制当局との相談、社内体制の整備等に努めております。

 

⑤ 体性幹細胞/iPSC再生医薬品の製品特性について

 体性幹細胞/iPSC再生医薬品は、ヒト細胞・組織を原材料とした細胞を人体へ移植・投与するという特性上、原材料の安全性に関するリスクや、様々な予期せぬ副作用・医療事故の発生などの可能性があり、そのために法制度上も厳しい規制がなされております。今後予期せぬ事態が発生する可能性を完全に防ぐことは難しく、そうした事態が発生した場合にはヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、そうした規制に対応し、事故を防止するためにも、再生医療分野における知見を有する人材や薬事制度に精通した専門家に関与いただくなど様々な施策を講じております。

 

⑥ 製造・販売体制の構築に関する不確実性について

 ヘリオスの体性幹細胞/iPSC再生医薬品事業は、研究開発活動において成果をあげることにとどまらず、その後の製造及び販売についても事業として展開していくことを視野に入れております。しかしながら、医薬品の開発には、多種多様な技術が必要となり、今後、何らかの理由で製造方法の確立、製造体制の構築等が困難になった場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、提携先企業等とともに細胞の大量培養技術の開発など製造方法の確立に向けて注力しております。

 販売体制については、ヘリオス単独で販売体制を構築するのか、あるいは製薬企業等との提携により販売体制を構築するのか、その方針はいまだ決定しておりません。今後、体制構築に何らかの障害が生じ、ヘリオスの計画より遅れた場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、開発中の製品の上市に先立ち、営業・マーケティング組織の立ち上げ、国内医療用医薬品等卸売大手との契約締結など、販売開始に向けた準備を始めています。

 

⑦ 海外での事業展開について

 ヘリオスグループは、ヘリオスの開発するiPSC再生医薬品が、国内のみならず、世界各国の難治性疾患の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、海外子会社の設立等といった形で海外展開に向けた取組みを進めております。

 しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、ヘリオスグループの事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、その場合、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 治験の実施について

 ヘリオスは、将来的に、iPSC再生医薬品分野において治験の実施を検討しております。一般的に治験の実施において、いまだ再生医療等製品の治験実施例は多くはないことから、治験に必要とされる患者を適切に確保できないこと、治験実施施設における各種手続きが計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、安全性に関する許容できない問題が生じた場合や、期待した有効性を確認できない場合には、開発を中止するリスクがあります。

 このような場合、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)やアメリカ食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)とも事前に相談し、綿密な計画を立て、治験を実施してまいります。

 

⑨ 治験データの解析・評価結果、承認申請の不確実性について

 ヘリオスは、現在、体性幹細胞再生医薬品分野において治験を実施しております。一般的に治験データの解析・評価結果において、その結果の確たる予測は困難であり、ヘリオスの予期せぬ結果となることも想定されます。また、承認申請において、PMDAとの相談の経過によっては、ヘリオスの想定どおりに進捗せず、同様にヘリオスが想定するスケジュールどおりに行うことができない可能性があります。このような場合、ヘリオスグループの今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、継続的にPMDAと相談を続けながら、製造・販売承認申請に向けた準備を進めております。

 

⑩ 投資に関するリスク

 ヘリオスグループでは、常に最先端の技術開発に取り組み、周辺領域を含め当事業に参入している企業や潜在的な競争相手に先んじるため、関連する技術や特許を保有する企業に対して投資やM&A等(買収、合併、事業譲渡・譲受)という形で提携を進める可能性があります。また、これらとは別に、ヘリオスはSaisei Ventures LLCを通じて、国内外のバイオ領域に成長資金となる投資を行っております。

 提携先または投資先において予期せぬ問題が生じた場合や、予想通りに研究開発が進まない場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 ヘリオスグループは、提携先の選定やその投資価額の妥当性等において、第三者機関の評価を得たうえで慎重に進めております。

 

(2)医薬品の研究開発一般に関するリスク

① 薬価に係る法規制の改正等について

 世界的な医療費抑制の流れの中で、薬価に係る法規制の改正によりヘリオスが想定している製品価値よりも低い薬価・保険償還価格となった場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 製造物責任について

 ヘリオスが開発した医薬品が健康被害等を引き起こした場合、治験、製造、販売において不適当な点が発見された場合には、製造物責任を負う可能性があり、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)人材及び組織に関するリスク

① 特定の個人への依存について

 ヘリオスグループは、小規模な組織であります。また、代表執行役社長CEOである鍵本忠尚は、研究開発や経営方針、戦略の決定、提携先との関係構築等、ヘリオスグループの事業活動において重要な役割を果たしております。ヘリオスグループでは、過度に特定の人物に依存しない組織的な経営体制の強化を進めておりますが、何らかの理由により、鍵本忠尚がヘリオスグループの業務を継続することが困難になった場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 社内管理体制について

 ヘリオスグループの行う事業の性質上、他の役員及び従業員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分も大きく、今後、ヘリオスグループの業務の拡大に応じて人員の増強や社内管理体制の充実を図っていく方針でありますが、想定どおりに人材の確保ができない場合や人材の流出が生じた場合、又は社内管理体制に不備が生じた場合には、研究開発の推進や社外との連携関係の構築に支障が生じ、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他の事業リスク

① 大学等公的研究機関との関係について

 ヘリオスでは、これまで、公的研究機関との連携や特許実施許諾契約の締結等を通じて、積極的な研究開発活動を実施して参りました。しかしながら、国立大学の法人化により大学の知的財産権に関する意識も変化しつつあるため、特許実施許諾契約の新規締結や更新が困難となる等の事態が生じた場合には、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権について

 ヘリオスグループの事業を遂行していく中で、第三者が有する知的財産権を使用することがあります。ヘリオスグループでは適法な手続きのもとに知的財産権を使用することとしておりますが、第三者の知的財産権に関連して係争が生じる可能性もあります。ヘリオスグループでは、第三者の知的財産権に抵触することを回避するため、調査、検討及び評価等を随時実施し、必要に応じて遅滞なく実施許諾契約(ライセンス契約)を締結しておりますが、今後、事業の拡大とともにこのようなリスクは増大するものと思われます。

 ヘリオスグループは、知的財産権に関する管理体制をより強化していく方針でありますが、訴訟等が提起された場合、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、ヘリオスグループが有する知的財産権が第三者により侵害される可能性もあります。ヘリオスグループとしては、このような場合にはヘリオスグループの知的財産権保護のために必要な法的措置を検討していく方針ですが、費用対効果や第三者から特許無効審判等を提起される可能性なども勘案し、あえて法的措置に踏み切らない可能性も否定できず、その場合、当該第三者がヘリオスグループと競合する事業を行う可能性も否定できないことから、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 風評上の問題の発生について

 ヘリオスグループは、開発における安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、ヘリオスグループに関してマスコミ報道などにおいて事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 災害等の発生に関する不確実性について

 ヘリオスグループが事業活動を行っている地域において、自然災害や火災等の事故災害等が発生した場合、ヘリオスグループの設備等に大きな被害を受け、その一部又は全部の稼働が中断し、研究開発が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 資金繰りについて

 ヘリオスグループのようなバイオテクノロジー企業においては、研究開発費用の負担により開発期間において継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。ヘリオスグループとしましては、新規に模索している提携先からの契約一時金及びマイルストン収入や補助金の活用、金融機関等からの借入を実施することで資金確保に努め、必要に応じて増資による資金調達を実施する方針でありますが、何らかの理由によりこうした資金の確保が進まなかった場合においては、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 配当政策について

 ヘリオスグループは創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存でありますが、現時点においては繰越利益剰余金がマイナスであるため、当分の間は研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針であります。

 

⑦ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 ヘリオスは、役員及び従業員等に対し、モチベーションの向上を目的に新株予約権を付与しております。また、パイプライン開発や新技術開発等の資金需要に対応するため、新株予約権及び新株予約権付社債を発行しております。

 これらの新株予約権が権利行使された場合、ヘリオス株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、2023年12月31日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は、15,644,223株であり、発行済株式総数及び潜在株式数の合計の21.0%に相当しております。

 

⑧ 為替変動のリスク

 ヘリオスは、海外に子会社を設立しており、今後、海外企業とのライセンス契約の締結、海外での研究開発活動等において外貨建取引が増加する可能性があります。急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合は、ヘリオスグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 継続企業の前提に関する重要事象等について

 ヘリオスグループは、当連結会計年度末において、現金及び現金同等物を6,722百万円保有しておりますが、第2回無担保転換社債型新株予約権付社債4,000百万円(額面金額)の償還期日が1年以内となっています。また、当連結会計年度における営業損失は3,379百万円、営業活動によるキャッシュ・フローは△2,822百万円となりました。これらの財務指標の状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しています。

 ヘリオスは、当該事象を解消すべく、2024年1月25日開催の執行役会において第三者割当の方法による新株式及び第22回新株予約権の発行について決議し、2024年2月9日に払込が完了しております。また、これに加えて、以下の対応策を図ってまいります。

a.継続的な収益源の確保

UDCやiPS細胞株の提供による売上収益に加え、ヘリオスの保有するその他医療材料を用いた研究の受託に伴う収益の獲得に取り組みます。

b.既存パイプラインにおける提携先の開拓

体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野におけるパイプラインについて製薬会社とのパートナリング、また一部地域における独占的開発・販売権の製薬会社へのライセンスアウトを進めることにより、開発リスク、財務リスクの低減を図ります。

c.コスト削減

従来からの固定費削減を継続し、ヘリオスグループの資金状況を見ながら研究開発を進めてまいります。

d.資金調達

ARDSを対象とする治療薬の臨床試験を推進するための株式会社プロセルキュア及びeNK®細胞を用いたがん免疫療法の研究・開発を推進するための株式会社 eNK Therapeuticsにおいて、ベンチャー・キャピタルからの出資及び補助金等を活用した資金調達を実行すること、またヘリオスにおいても他の対応策の状況に応じて必要な資金調達を行っていきます。

 

これらの対応策のもと、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないものと判断しています。

 

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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