クリングルファーマ(4884)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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クリングルファーマ(4884)の株価チャート クリングルファーマ(4884)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】(1)概要(背景) クリングルファーマは、難治性疾患、すなわち「症例数が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」に対する治療薬の研究開発を目指す大学発バイオベンチャーとして設立されました。 設立後、中村敏一氏(当時:大阪大学大学院医学系研究科教授)の発見したHGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)タンパク質を開発パイプライン*として導入し、組換えDNA技術*を応用したタンパク質(以下、「組換えタンパク質」という。)の製造法の確立、非臨床試験*の実施を経て、欧米及び日本における臨床試験*を複数実施いたしました。 その結果、組換えヒトHGFタンパク質の医薬品としての安全性を確認し、脊髄損傷急性期を対象とする臨床試験においては有効性を示唆する結果、すなわちPOC*(Proof Of Concept)を得ることができました。 従来の創薬バイオベンチャーの戦略としては、ここまでの研究成果を導出して製薬企業に開発・製造販売を委ねるのが常ですが、クリングルファーマは組換えヒトHGFタンパク質を医薬品として確実に社会に提供することを第一の使命と考え、自社で開発を続け、医薬品の製造販売承認を得る方針で事業を進めております。 <図1 クリングルファーマの企業理念> (2)事業モデル クリングルファーマが想定している事業モデルを図2に示します。クリングルファーマは対象疾患や提携先に応じてA、B、Cを組み合わせたハイブリッド型の事業モデルを志向しております。その中でも、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。クリングルファーマの臨床段階のパイプラインについては、脊髄損傷急性期と声帯瘢痕はAとBのハイブリッド(自社開発と販売提携)、ALSと急性腎障害はBによる事業化を目指しております。また、クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給はCに該当します。 <図2:クリングルファーマの事業モデル>  また、開発については一般的な新薬開発プロセスに従って実施する必要がありますが、難治性疾患に対する治療薬の開発を実現するために以下に示すようなプロセスを実施しております。 ① 基礎研究* 医薬品の候補となるシーズ*探索は長期の研究期間が必要である上に、この段階で候補が見つかっても医薬品として成功する確率は非常に低いことがわかっております。クリングルファーマでは、基礎研究として、組換えヒトHGFタンパク質の新規適応症の探索及び新規候補品の探索を行っておりますが、大学との共同研究において専門的な知識を活用することにより、成功確率を高めるよう基礎研究を進めております。 ② 非臨床試験・製造 非臨床試験や製造については、開発業務受託機関、製造受託機関等の専門技術を活用することにより、迅速に進めております。また、この開発段階では膨大な支出に対する収入が得られないため、公的資金(助成金、補助金)を活用することにより、自社負担を減らし、経済的なリスクを低減させております。 ③ 臨床試験(第Ⅰ相試験*、第Ⅱ相試験*、第Ⅲ相試験*) 患者数の少ない難治性疾患では、疾患の原因も病態も明らかでないことがあり、臨床試験の評価項目の設定や症例の選定等が難しいとされております。クリングルファーマでは、大学との連携により、難治性疾患に対する専門的な知見を集積し、小規模で成功確度が高い評価項目を策定し臨床試験を実施しております。臨床試験の一部の業務については、開発業務受託機関に委託して品質・開発速度を確保するとともに、臨床評価や解析については、専門病院及び大学病院の医師と連携して科学的な質を高めております。また、大学病院等が公的資金を確保し、臨床試験(医師主導治験)の実施を希望する場合には、治験薬及び科学的な情報・知識を提供して治験推進に協力し、成果の独占的な利用許諾を得ます。 ④ 承認申請・許可 臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。難治性疾患を対象として開発しているため、POCが得られた後には厚生労働省の「希少疾病用医薬品指定」を受け、開発費用の助成、優先審査の活用などにより申請までの業務を加速することが可能です。また、「条件付き早期承認制度」「先駆的医薬品指定制度(旧 先駆け審査指定制度)」等の制度を活用することにより申請・審査に係る時間を短縮し、早期承認を目指します。 ⑤ 販売 難治性疾患は高度医療機関において治療が行われるため、開発した医薬品の取り扱い施設の数が限定されます。したがいまして、通常の医薬品のような大規模な流通販売網の構築が不要となります。また、競合する医薬品が少ないことから営業活動に大きな費用をかける必要がありません。クリングルファーマが医薬品製造販売業の許可を取得し、医薬品卸売販売業者と提携することで、必要な場所に必要な医薬品を届けるサプライチェーンの構築が可能です。その結果、販売に係るコストが削減され、売上総利益を高い割合で継続的に得られるメリットを享受することができます。 なお、脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンについては、現時点でクリングルファーマ内に営業販売体制がないことから、下図に示すように丸石製薬株式会社と東邦ホールディングス株式会社との提携により構築されております。丸石製薬株式会社は救急領域のスペシャリティファーマ*として国内の救急病院をカバーする営業体制を有しているため、当該製品の販売及びプロモーションの提携をすることで、サプライチェーンを構築することが可能であると考えております。 <図3:脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーン> ⑥ 適応拡大 個々の難治性疾患は患者数が限られますが、複数パイプラインの開発を進めること、海外へ販売を拡大すること、他領域の疾患についても開発を進めることにより、市場の拡大が可能であると考えております(図4)。例えば、脊髄損傷急性期及びALSにおいてHGFの神経保護作用が示された場合には、脳神経領域の疾患に対しても神経保護作用を示し、治療薬として開発される可能性が考えられます。また、声帯瘢痕においてHGFの抗線維化作用が示されると、声帯以外の線維化が原因となる疾患への応用が考えられます。さらに、急性腎障害において静脈内投与でのHGFの効果が確認された場合には、腎臓以外の臓器における難治性疾患への応用の可能性が考えられます。HGFは様々な作用を持っていることから、一つの作用についての効果が確認されると、他領域への応用の可能性があると考えております。将来的には、クリングルファーマにおいて適応拡大による市場の拡大を行いながら他の製薬企業から他領域での開発を希望する提案を受けた場合には、原薬を供給することにより、継続的な収益を得ることも可能であると想定しております。 <図4:適応拡大の可能性>  なお、クリングルファーマの事業セグメントは、医薬品開発事業の単一セグメントであり、事業系統図(図5)及び収益の種類(表1)は以下のとおりであります。 (事業系統図) <図5:事業系統図> <表1:収益の種類> 収益の種類内容A契約一時金製品販売に関する卸業者との契約時に得られる一時金販売促進活動協力を目的として契約時に得られる一時金原薬供給に関する契約時に得られる一時金Bマイルストーン研究開発の進捗により受取る収益Cロイヤリティ製品販売後に販売額の一定比率を受取る収益D製品販売医薬品製造販売(製品販売)に対する売上原薬供給による売上 (3)創薬シーズ 現在、クリングルファーマの保有する創薬シーズは組換えヒトHGFタンパク質であり、組換えヒトHGFタンパク質を有効成分とした複数の製剤を用いて、各種臨床試験を実施しております。HGFは当初、肝細胞の増殖を促進する増殖因子として日本で発見されました。増殖因子は細胞の表面に存在する受容体*と結合することにより、細胞の核(遺伝子)にシグナルを伝達し、細胞の増殖開始のスイッチをオンにする物質です(図6)。もともと体の中で働く物質であることから組換えタンパク質として製造が可能になれば、高い安全性と効果を併せ持つ医薬品になる可能性があります。 <図6:増殖因子の作用機序*> HGFはその後の研究によって、細胞増殖以外にも細胞保護、形態形成等の生物活性*を併せ持つことが明らかになり、対象となる細胞も肝細胞だけでなく、腎臓、肺、皮膚等の細胞に対して効果があることが示されました(図7)。特に、線維成分の蓄積により細胞の機能が低下する「線維化」や「硬化」を解除する作用(以下、「抗線維化」という。)及び神経細胞・グリア細胞*等の神経系細胞に対する生物活性が明らかになると、複数の難治性疾患に対する治療薬の候補として様々な研究成果が報告されました。 <図7:HGFの生物活性>  実験動物を用いて疾患モデルを作製すると、体内のHGFタンパク質量が上昇し、疾患が治癒することが示され、HGFと組織修復の関係が明らかになってきました。そこで、組換えヒトHGFタンパク質を疾患モデルに補充的に投与すると症状の軽減や治療効果が示されました。組換えヒトHGFタンパク質を用いた研究は現在でも多くの疾患領域について行われておりますが、臨床応用の可能性がある代表的な疾患は下表のようになります。 <表2:組換えヒトHGFタンパク質の臨床応用の可能性がある疾患>疾患臓器疾患名生物活性腎臓急性腎障害・慢性腎不全・腎移植・糖尿病性腎症腎上皮細胞の保護・増殖、尿細管細胞の保護・増殖、形態形成誘導筋線維芽細胞の増殖抑制、線維化成分の抑制肝臓急性肝炎・劇症肝炎・肝硬変・胆道閉鎖症・脂肪肝・肝移植肝細胞、肝芽細胞の保護・増殖心臓・血管血管障害(閉塞性動脈硬化症・血管再狭窄防止等)・心筋梗塞・拡張型心筋症心筋細胞の増殖血管内皮細胞の保護・増殖、形態形成誘導神経系ALS・脊髄損傷急性期・脳梗塞・パーキンソン病・ハンチントン病・認知症神経細胞の保護、軸索*形成誘導グリア細胞の保護肺・気管支慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺線維症・気管支喘息肺上皮細胞の保護・増殖気管支上皮細胞の保護・増殖その他皮膚潰瘍・声帯瘢痕・炎症性腸疾患・角膜損傷・特発性大腿骨頭壊死症・ペロニー病各種細胞の保護・増殖、形態形成誘導筋線維芽細胞の増殖抑制、線維化成分の抑制※太字はクリングルファーマが現在医薬品の開発をしている疾患  クリングルファーマは、HGFの発見者である中村敏一氏(当時:大阪大学大学院医学系研究科教授)より2005年に組換えヒトHGFタンパク質の開発実施権の許諾を受け、難治性疾患を対象としたパイプラインとして開発を開始いたしました。 (4)製造体制 組換えヒトHGFタンパク質を医薬品として製造するためには、①原薬製造及び②製剤製造の大きく2種類に分けられる製造を行うことが必要です。この2種類の製造についてはいずれもクリングルファーマが実施権を保有しており、製造受託機関に委託して原薬及び製剤の製造を行っております。医薬品の製造については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」という。)及び「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(GMP*省令)に基づき、厳格な品質管理の下で製造を行う必要があります。 また、組換えタンパク質を医薬品として製造する場合には細胞を用いた製造法になるため、複雑で特別な技術が多数必要となります(図8)。クリングルファーマは、組換えヒトHGFタンパク質の製造方法(原薬製造及び製剤製造)のノウハウを有しており、2社の製造受託機関に原薬製造及び製剤製造を各々委託することにより、原薬及び製剤の供給を行っております。 <図8 製造工程の概略>  開発段階では、製品販売による収入が得られず、定期的な製造計画も決められないため、自社で製造設備を有して人材を確保・管理するよりも外部の受託機関を活用する方が経済的なリスクが低く、効率的と考えております。また、難治性疾患を対象としているため、必要となる製品量も少ないことが想定されます。したがいまして、開発から販売初期までは現在の製造体制を持続いたしますが、適応症の追加や拡大等、開発状況に応じてスケールアップ検討を進める予定です。さらに、現在米国においてドラッグマスターファイル*の登録を完了しており、提携会社が米国において組換えヒトHGFタンパク質の開発を行う場合には、クリングルファーマの製造法を提携会社に開示することなくクリングルファーマが提携会社に原薬販売することが可能となる体制を構築しております。 (5)製剤開発 HGFは発見から長い年月が経過しているため、物質特許はすでに失効しておりますが、クリングルファーマは医薬品の製剤として設計・開発する過程で2種類の製剤組成について特許を取得しております。1つは長期的な安定性を目的とした凍結乾燥製剤(特許1)、もう1つは長期的な安定性に加え、神経疾患の治療に適用できるよう組成を改良した凍結乾燥製剤(特許2)です。なお、凍結乾燥製剤(特許2)に関しては、神経疾患に限らずクリングルファーマの声帯瘢痕パイプラインでも使用しております。 <表3:製剤組成に関する特許>(2025年9月30日現在) 特許の名称出願人最新状況特許1HGF製剤クリングルファーマ日本、米国、欧州、カナダ、韓国にて特許取得済特許2神経疾患の治療に適したHGF製剤クリングルファーマ日本、米国、欧州、カナダ、韓国にて特許取得済 (6)開発の状況 開発の状況を図9に示します。臨床試験までステージが進んでいるパイプラインは4件(脊髄損傷急性期、ALS、声帯瘢痕、急性腎障害)、動物疾患モデルにおいて有効性が認められ、提携パートナーにより臨床試験が進められているパイプラインが1件(クラリス・バイオセラピューティクス社による眼科疾患)、基礎研究のステージにあるパイプラインが複数あります。現在は最も開発ステージの進んでいる脊髄損傷急性期を対象とした医薬品開発に注力し、製造販売承認を得ることにリソースを集約しております。一方、基礎研究については大学等との共同研究を継続し、新規適応症の開拓、新規シーズの探索を行っております。 <図9:パイプラインの開発状況>(2025年9月30日現在) ① 脊髄損傷急性期を対象とした開発 脊髄とは脳と体をつなぐ神経が集積している組織であり、脊椎と呼ばれる骨の中に保護されております。脊髄損傷とは、事故や転倒により脊髄に強い外力が加わり、組織が損傷を受けた結果、運動神経や感覚神経の機能が失われ、運動障害や感覚障害を発症する疾患です。国内では年間約6千人の新規患者が発生すると報告されております(Miyakoshi N et al. Spinal Cord 2021 Jun;59(6):626-634.)。しかしながらこれまでのところ、損傷した脊髄に対する有効な治療法はなく、脊髄を囲む脊椎の骨折や脱臼を治療するための手術や、リハビリテーションによる残存神経機能の有効利用と日常生活動作の獲得など、対症療法のみとなっております。 <図10:脊髄損傷の発症メカニズムとHGFによる治療効果>  HGFは神経細胞に対し保護作用を示すこと、軸索伸展*の促進作用があることから、脊髄損傷の治療薬として開発される可能性があると考えられます。脊髄損傷は外力によって引き起こされる組織の損傷(一次損傷という。)に続いて周辺組織に損傷が広がる二次損傷が起こります(図10)。脊髄損傷の急性期においては、この二次損傷を抑えることが治療につながると考えられております。クリングルファーマでは慶應義塾大学医学部整形外科との共同研究により、脊髄損傷モデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能評価において有効性が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(安全性試験、薬物動態*試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要を表4に示します。 <表4:脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要>デザイン多施設、無作為化、二重盲検*、並行群間*、プラセボ*対照比較試験*患者母集団18歳以上、75歳以下の頚髄損傷患者受傷後66-78時間の時点で改良Frankel分類*A/B1/B2に該当する患者用法用量0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与(HGF群:28例、プラセボ群:17例)主要評価項目評価基準安全性、抗体産生の確認ASIA motor score*の24週時におけるベースライン*からの変化量結果安全性及び忍容性*はいずれも良好であった。ASIA motor scoreの24週時におけるベースラインからの変化量について有意な差がみられなかった。副次評価項目評価基準神経学的評価項目の推移結果ASIA motor scoreの20週時におけるベースラインからの変化量について有意差を認めた。  主要評価項目のうち、安全性に関する項目については問題ないことが確認できましたが、有効性の指標としたASIA motor scoreの24週時(168日目)におけるベースラインからの変化量では有意な差が得られませんでした(図11)。しかしながら、経時的な推移ではプラセボ群に比較してHGF投与群において機能回復の傾向が一貫しており、副次評価項目であるASIA motor scoreの20週時(140日目)におけるベースラインからの変化量について有意差が認められたことから、HGFが神経細胞を保護して、運動機能を回復させる効果についてPOCが得られたと考えております。<図11:ベースラインからの変化量(公表論文より)> 本試験の結果を踏まえて、HGF(脊髄腔内投与用製剤:KP-100IT)は2019年9月に厚生労働省により脊髄損傷急性期を対象とした希少疾病用医薬品指定を受けました。また、本試験の結果は、国際医学雑誌Journal of Neurotraumaにも論文発表されております(オンライン公開:2020年5月22日、DOI: 10.1089/neu.2019.6854)。この試験で得られたPOCを検証する目的で次の第Ⅲ相試験の計画を策定し、下表に示す概要で2020年7月より第Ⅲ相試験を開始しました。 <表5:脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅲ相試験計画の概要(終了)>デザイン非ランダム化、単群*、多施設共同試験患者母集団18歳以上、89歳以下の頚髄損傷患者受傷後66-78時間の時点でAIS* Aに該当する患者目標症例数:25症例用法用量0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与主要評価項目評価基準投与後6ヶ月のAISがC以上に改善した症例割合副次評価項目評価基準神経学的評価項目の推移有害事象の発生  第Ⅲ相試験は2023年4月に症例組入れを完了し、2023年10月に最終症例の最終観察日を終了しました。2024年2月に第Ⅲ相試験の速報結果を得ており、国内での医薬品製造販売の承認申請に向けて本試験の結果をもとに、PMDA*と協議を進めてまいりましたが、2025年7月に追加臨床試験の実施を行うこととなりました。これまでに実施した第Ⅰ/Ⅱ相試験及び第Ⅲ相試験から得られた知見を基に成功確度の高い臨床試験を立案し、有効性の追加データを取得した上で、医薬品としての製造販売承認申請を目指してまいります。 ② 声帯瘢痕 声帯瘢痕とは、声帯の物性が固く変化(線維化、瘢痕化)して動きが悪くなるため、声が出しにくくなる音声障害を生じる疾患です。発症原因は明らかになっていませんが、声帯の外傷や炎症、声帯の手術後などに起こりやすいことが知られております。患者数については、小規模の疫学調査結果(平成21年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「声帯溝症の診断治療の確立と、標準化に向けたガイドラインの作成に関する研究」)から、国内に3,000~12,000人の患者がいると推定されております。これまでのところ、声帯瘢痕に対する有効な治療法はなく、音声訓練等のリハビリテーション及び声帯の位置を移動する手術といった対症療法が中心となっております。 HGFの生物活性として線維化を抑制する抗線維化作用があるため、声帯瘢痕の治療にも活用できる可能性があると考えられます。クリングルファーマでは、京都大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科及び公益財団法人先端医療振興財団(現 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構)との共同研究により、声帯瘢痕モデル動物の声帯内に組換えヒトHGFタンパク質を投与したところ、声帯機能の改善を認めました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(声帯内投与における試験)を追加で実施し、臨床試験に開発ステージを進めました。声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要を下表に示します。 <表6:声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要>デザインオープンラベル、用量漸増試験(医師主導)患者母集団20歳以上65歳以下の声帯瘢痕患者用法用量1、3、10µg/片側声帯/回(各群6例)1回/週、計4回、両側声帯粘膜内局所投与主要評価項目評価基準安全性の確認結果声帯の充血が認められたが、軽度で回復しており、安全性上大きな問題は生じないと考えられた。副次評価項目評価基準有効性評価指標及び評価時期の探索結果有効性評価指標として測定した5種類の評価項目のうち、3種類の評価項目について改善の傾向がみられた。  当該試験の主要評価項目である安全性の確認について、重篤な副作用は認められず、忍容性も良好であることが示されました。また、副次評価項目において、改善傾向の見られる評価項目、評価時期についての知見が得られました。 この試験で得られたPOCを検証する目的で次の第Ⅲ相試験の計画を策定し、下表に示す概要で2022年11月より京都府立医科大学附属病院において第Ⅲ相試験を開始しました。2023年5月には、久留米大学医学部附属病院、東北大学病院、川崎医科大学附属病院、日本大学病院を治験実施医療機関として加え、2024年5月には、新たに山王メディカルセンターを追加し、2025年1月には、更に藤田医科大学病院、福岡山王病院を追加し、現在合計8施設で症例登録を推進しております。 声帯瘢痕においてHGFのPOCが確認された場合には、HGFの抗線維化作用に基づく創薬コンセプトそのものが示されることになり、声帯瘢痕のみならず他の線維化が原因となる慢性疾患(慢性腎不全、肝硬変、肺線維症等)への適応拡大の可能性が示されると考えております。 <表7:声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅲ相試験の概要>デザイン多施設共同ランダム化試験患者母集団18歳以上75歳以下の声帯瘢痕又は声帯溝症患者用法用量二重盲検期:20㎍のHGF又はプラセボの声帯粘膜内投与(週1回×4回)、観察24週間継続期:希望者にHGF20㎍を投与(週1回×4回)、継続観察24週間主要評価項目評価基準二重盲検期の観察期間24週目におけるVHI-10スコア*改善副次評価項目評価基準期間経過におけるVHI-10*スコアの改善率や変化量等  なお、本試験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE、研究開発課題:組換えHGFタンパク質を用いた難治性線維症治療薬の開発)の支援を受け実施しております。 ③ ALS ALSは「難病の患者に対する医療等に関する法律」において難病指定を受けている難治性神経疾患の1つで、運動神経細胞が選択的に障害を受けるため、筋力の低下、筋肉の萎縮が引き起こされる疾患です。その結果、歩行困難、言語障害、嚥下障害及び呼吸障害等の症状が進行的に現れ、発症後3~5年で約80%の患者が死亡すると言われております。国内患者数は約1万人(令和3年度特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、難病情報センター)と報告されております。国内ではすでに承認された医薬品が2剤ありますが、いずれも効果は限定的であり、より効果の高い新規治療薬の開発が強く望まれています。実際の医療現場では、リハビリテーションによる生活動作の維持・獲得、鎮痛剤を用いた痛みの抑制などの対症療法が既存治療法となっております。 <図12:ALSの発症メカニズムとHGFの治療効果>  ALSの発症要因は遺伝によるもの、グルタミン酸毒性によるもの、原因不明のものと様々ですが、運動神経細胞が障害を受け脱落することにより筋肉の萎縮が起こることが共通する現象であるため、運動神経細胞を保護することが治療効果につながると考えられます。従って、前項の脊髄損傷同様に、HGFの神経細胞に対する保護作用、軸索伸展の促進作用はALSの治療につながる可能性があると考えられます(図12)。クリングルファーマでは、東北大学医学部脳神経内科との共同研究により、ALSモデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能の回復、発症の遅延、生存期間の延長といった効果が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(安全性試験及び薬物動態試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要を下表に示します。 <表8:ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要>デザインオープンラベル*、用量漸増試験*、単回投与3群、反復投与2群(各群3例)患者母集団20歳以上、65歳未満のALS患者発症後3年以内のALS患者であってALS重症度分類*が1若しくは2の患者用法用量脊髄腔内に治験機器を埋込、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与した。単回投与は0.2mg、0.6mg、2.0mgで実施した。反復投与(1週ごとに5回投与)は、0.6mg、2.0㎎の2用量で実施した。主要評価項目評価基準安全性及び忍容性結果安全性及び忍容性はいずれも良好であった。副次評価項目評価基準・薬物動態の解析・抗体の産生の有無結果・薬物動態学的特性を検討した結果、半減期は1.2-1.4日であり、反復投与による蓄積性はないものと考えられた。単回投与、反復投与時ともに血中への移行はほとんどなかった。・抗体の産生は認められなかった。  当該試験の主要評価項目である安全性及び忍容性の確認について、重篤な副作用は認められず、良好であることが示されました。また、副次評価項目として、適切な投与量を策定するために薬物動態を検討した結果、有効性を検討するために必要な投与量についての知見が得られました。この試験で得られた結果を基に、POCの確認を目的とした第Ⅱ相試験を実施しております。ALS患者を対象とした第Ⅱ相試験の概要は下表のとおりです。 <表9:ALS第Ⅱ相試験計画の概要>デザインプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(非盲検*非対照継続投与期を含む)(医師主導)患者母集団20歳以上、70歳以下のALS患者12週間の前観察期のALSFRS-Rスコア*の変化量が-1~-3の範囲にある患者目標症例数48例(HGF群32例、プラセボ群16例)用法用量脊髄腔内にカテーテルを挿入し、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与する。2.0㎎/回、1回/2週、24週(二重盲検期)希望者へのHGF投与24週(継続投与期)主要評価項目評価基準二重盲検期24週のALSFRS-Rスコア変化量の群間差副次評価項目評価基準長期投与における有効性及び安全性を確認する。  当該試験は、東北大学による医師主導治験として行われ、投与観察期24週時点でのALSFRS-Rスコアの変化量を主要評価項目として評価しましたが、HGF投与群とプラセボ群の間で統計的な有意差は認められませんでした。また、事前に定めた副次評価項目においても両群間で統計的な有意差は認められませんでした。一方、HGF投与群において進行の遅い症例もあり、本試験結果の解釈には、さらに詳細な解析が必要となります。なお、安全性に関しては、HGF投与群とプラセボ群で有害事象の発現率は同程度であり、忍容性が確認されました。2024年4月には、東北大学と、本第Ⅱ相臨床試験の追加解析として、検体試料のバイオマーカー解析に関する共同研究契約を締結しました。本共同研究によって、効果の検出しやすい患者集団の特定など、次相試験のデザイン策定に重要な情報が得られることが期待されます。 ④ 急性腎障害 急性腎障害とは、腎臓の損傷、腎臓への血液供給不足、尿路の閉塞等により、数時間~数日という短い期間に急激に腎機能が低下する状態で、その結果、尿を介した老廃物の排泄ができなくなり、体内の水分や塩分量などを調節することができなくなる疾患です。重篤な場合には救急医療が必要になり、死亡に至る場合もあります。発症要因が多数あるため、原因を特定できない場合が多く、有効な治療法は確立されていません。HGFは腎臓の細胞に対して保護効果や増殖作用を示すことから、急性腎障害の治療薬となる可能性があると考えられます。クリングルファーマは、米国の腎臓専門クリニック(Rogosin Institute)の協力を得て米国において臨床試験を行いました。ただし、第Ⅰ相試験においては、組換えヒトHGFタンパク質の安全性を確認することが目的であるため、容態の不安定な急性腎障害患者を対象とすることは不適切であると判断し、比較的容態が安定している慢性腎不全患者を対象として試験を実施いたしました。当該試験は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:以下「FDA*」という。)により、必要性の高い新薬の審査を優先的に行う制度であるFast Track*の認定を受けて実施しております。試験結果の概要を下表に示します。 <表10:慢性腎不全患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要>デザイン第Ⅰa相:オープンラベル、用量漸増試験(全9例)第Ⅰb相:プラセボ対照二重盲検試験(全15例)患者母集団18歳以上85歳以下の慢性腎不全患者用法用量第Ia相:3用量、静脈内単回投与第Ib相:2用量、1回/日、5回、静脈内反復投与主要評価項目評価基準安全性及び忍容性結果重篤な副作用及び死亡例はなかった。副次評価項目評価基準薬物動態の解析結果単回投与で投与後速やかに消失し、反復投与で蓄積性はみられなかった。  当該試験において得られた情報を基に、次相試験として急性腎障害患者を対象とした臨床試験の計画を策定しております。また、国内での臨床試験実施を想定した第I相試験の追加試験(日本人での最大耐用量を確認する小規模試験)についても同時に策定しております。具体的には、急性腎障害を対象とした治験実施計画書の作成のため、医学専門家へのヒアリング、他社治験例の検討、バイオマーカー*調査等の検討を継続しております。しかしながら、次相試験は比較的大規模なプラセボ対照二重盲検比較試験になることが想定されており、現状ではクリングルファーマ単独で神経系の治験と並行しての開発継続は難しいと判断し、製薬企業等と提携し、開発資金を確保した上で開発を進める方針としております。また現在、欧米において急性腎障害を対象とする競合品が第Ⅲ相試験の開発段階にあることから、その動向を注視しつつ、HGFの優位性を示すための開発を進めてまいります。 なお、静脈内投与は最も全身性に被験薬が到達するため、安全性の問題も発生しやすい投与経路になります。当該試験において安全性が確認されたことで、他の投与経路の開発を進める上で重要な知見が得られたと考えております。静脈内投与は様々な疾患に適応拡大しやすい投与経路であることから、急性腎障害に限らず、安全性及び有効性が効果的に確認できる疾患を策定しながら開発を進める方針です。 ⑤ その他のパイプライン クリングルファーマは、国内外の大学や企業との共同研究において基礎研究を行い、新規パイプラインの強化を進めております。クリングルファーマからは原薬あるいは治験薬の提供を行い、共同研究先にて有望なデータが得られた場合には成果を共有し、開発ステージを進める予定です。 <用語解説>用語意味・内容開発パイプライン医薬品になる可能性のある候補物質。組換えDNA技術複数種のDNAを結合する技術。POC(Proof Of Concept)新薬候補物質の有用性・効果が、患者を対象とする臨床試験によって確認され、治療薬になり得るという仮説(コンセプト)が実証されること。シーズ開発パイプラインの基となる物質。スペシャリティファーマ得意分野において一定の評価を得る開発力を有する製薬企業。上市新しい製品として市場に出すこと。ライセンスイン他社が持つ開発権や販売権などの権利を自社に導入すること。ライセンスアウト自社の開発権や販売権などの権利を他社に使用許諾すること。生物活性生体の特定の機能に作用する性質。遊走細胞などが別の場所に移動する作用。受容体特定の生物活性を有する物質と結合し、情報を伝える分子。作用機序薬がその効果を発揮するための生化学的な反応の流れ。軸索神経細胞から伸びた突起状の構造。グリア細胞神経細胞を取り囲む神経細胞ではない細胞。基礎研究新規物質の創製と候補物質の絞り込みをするための研究。非臨床試験被験薬の有効性や安全性を確認するため臨床試験以外の動物などを用いた試験。ヒトを対象としない生物学的試験研究。臨床試験ヒト(患者又は健常者)を対象として行う試験で、被験薬の効果・安全性・動態を確認することを目的とする。第Ⅰ相試験少数の健常者を対象に、安全性(人体に副作用は無いか)・薬物動態(被験薬が体にどのように吸収・分布・代謝・排泄されていくか)を確認する試験。希少疾病においては、患者を対象に第Ⅰ相試験と第Ⅱ相試験をあわせて第Ⅰ/Ⅱ相試験として行うこともある。第Ⅱ相試験比較的少数の患者に対して第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で被験薬が投与され、安全性、有効性、用法、用量を探索する試験。第Ⅲ相試験多数の患者に対して被験薬を投与し、第Ⅱ相試験の結果で得られた有効性、用法、用量を確認する試験。GMPGood Manufacturing Practiceの略で、適正製造規範と訳される。原料の入庫から製造、出荷にいたる全ての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるように定められた規則とシステムであり、医薬品の製造に関しては、義務として課せられている。 用語意味・内容巻締容器であるガラスバイアルをゴム栓及びアルミキャップで閉塞する工程。ドラッグマスターファイル医薬品の原料、材料、あるいは原薬の製造関連情報をあらかじめ審査当局に登録しておく制度。最終製品を製造するメーカーに原料・材料の詳細情報を開示することなく治験申請や新薬承認申請を行うことができる。プラセボ色、重さ、味及び匂いなど物理的特性を可能な限り被験薬(治験実施の目的となる、開発中の未承認有効成分を含む製剤)に似せ、かつ薬効成分を含まない「偽薬」のこと。プラセボ群とは、それらを投与される試験群のこと。軸索伸展神経細胞の軸索が伸びる作用。二重盲検(比較試験)医師及び患者の両者がプラセボか被験薬かがわからない状態で行う試験。試験終了後に開鍵(盲検化されていた情報を開示)し、被験薬投与群とプラセボ群の間で有効性や安全性を比較する。並行群間(比較試験)複数の試験群が設定され、試験参加者がいずれかひとつの群に参加する試験。プラセボ対照比較試験効果を調べたい被験薬の対照としてプラセボを使用し、薬効成分の有無により効果の違いを比較する試験。改良Frankel分類四肢麻痺の機能障害を5段階に分類したFrankel分類を、さらに予後の違いから細分化したもの。完全麻痺のAから正常のEまで11段階に分類される。ASIA motor score米国脊髄障害学会による運動機能を評価する指標で、上肢(50点)と下肢(50点)の運動機能スコアの合計(100点)で構成される。脊髄の各部位に関連した主要筋肉が動くかどうかを点数化したもの。実施が容易で再現性が高いこと等を理由に広く普及している脊髄損傷急性期の評価項目。ベースライン評価の際、基準となるもの。脊髄損傷急性期を対象とした治験では、治験薬投与前のスコアがベースライン。忍容性薬を被験者に投与した際に現れる副作用の程度。副作用が発生したとしても被験者が十分に耐えられる程度であれば「忍容性が高い薬」とされる。単群(試験)単一の試験群を設定して実施する試験。AISASIA impairment scale、米国脊髄障害学会が定めた脊髄損傷の機能障害尺度。最も重度のA(完全麻痺)から正常のEまで5段階に分類される。オープンラベル医師及び患者の両方がどのような治療を受けているかがわかっている状態で行う試験。用量漸増試験被験薬の用量を段階的に増やして投与する試験。ALS重症度分類厚生労働省「特定疾患調査研究」において定められたALSの重症度。軽度の1から重度の5まで5段階に分類される。薬物動態薬物が体内に投与されてから排泄されるまでの過程。非盲検投与された被験薬が盲検化されない試験。ALSFRS-RスコアALS患者の日常生活活動を見るもので、12項目の動作について各々0~4の5段階で点数化するもの。VHI-10スコア10項目の質問から、自分の声をハンディキャップと感じている程度を患者本人がスコア化する。各質問は、0(障害なし)から4(最大障害)までの回答が設定されており、症状が悪化するほど高値となる。FDA米国食品医薬品局。食品や医薬品などについて、その許可や違反品の取締りなどの行政機関。Fast Track重篤な疾患あるいは生命にかかわる疾患における治療開発の必要性がある疾患に対して、高い治療効果が期待できそうな新薬をFDAが優先的に審査する制度。PMDA独立行政法人医薬品医療機器総合機構のこと。健康被害救済、医薬品や医療機器などの承認審査、市販後における安全対策を業務としている。バイオマーカー病気の進行や薬の効果などを体内の分子によって定量的に評価するための指標。

有価証券報告書(2025年9月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在においてクリングルファーマが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針 クリングルファーマは、「難治性疾患治療薬の研究開発を行い、難病に苦しむ患者さんに対して画期的な治療手段を提供し社会に貢献すること」を企業理念とし、組換えヒトHGFタンパク質の研究開発によって創薬イノベーションを起こすことが事業機会の創出・獲得につながると考え、組換えヒトHGFタンパク質プロジェクトに経営資源を集中し、事業展開をしております。希少疾患を主な対象疾患とし、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社開発により自社で医薬品製造販売承認を取得することを基本方針としております。 (2)会社を取り巻く経営環境 製薬業界におきましては、高齢化に伴う医療費の増大に対応してジェネリック医薬品による代替が進むとともに、薬価改定期間が短縮され、高額医薬品の薬価が著しく低下しております。また、臨床試験の大規模化等に起因する新薬開発のためのコスト増大により、国内外での製薬企業の合従連衡が進みM&Aによる企業規模が拡大するとともに、自社創薬開発において重点領域の絞込みが行われており、社外から開発品目を導入する動きも活発化しております。 一方、新薬開発については、対象患者が多く、将来安定した多額の収益が得られるいわゆるブロックバスター医薬品から、特定の患者群に効果的な治療が行える医薬品の開発に移行しており、経営資源が特定分野に集中し、短期に意思決定が行われる創薬ベンチャーがその中心的役割を担うと言われております。これに対応すべく、政府は、厚生労働省や経済産業省の中央省庁を中心に、日本発の創薬を積極的に支援するため、特に、創薬ベンチャー支援の取り組みとして、医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDISO)の開始や「伊藤レポート2.0 バイオメディカル産業版」の作成がなされております。また、日本国内での創薬を促進するため、医薬品の条件付き早期承認制度や先駆的医薬品指定制度が法制化されました。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 クリングルファーマは創薬バイオベンチャーとしてクリングルファーマ開発品の実用化に向けて、研究開発を促進しておりますが、継続的な売上を計上する段階には至っておりません。従って経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の設定はしておりません。 しかしながら、開発の進捗を経営目標とし、その達成状況を今後の利益計上に至るまでの会社経営の指標と考えております。 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 クリングルファーマは、創薬バイオベンチャーとして、難治性疾患を対象とした組換えヒトHGFタンパク質の研究開発を行い、医薬品として実用化すべく事業を推進しております。 一方で医薬品としての事業化は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、クリングルファーマは継続的な営業損失を計上している状況にあり、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。 このような事業環境下、クリングルファーマは、以下の点を対処すべき課題として取り組んでおります。① 進行パイプラインの開発の促進 クリングルファーマは、国内臨床パイプラインとして難治性神経疾患である脊髄損傷(SCI)急性期、線維化疾患である声帯瘢痕(VFS)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬の開発を行っております。 脊髄損傷急性期については、第Ⅲ相試験の患者組入れは2023年4月に完了し、最終症例の経過観察は2023年10月に終了しました。その後、データ固定・解析を経て2024年2月に速報結果を得ており、承認申請に向けて医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を進めてまいりましたが、追加臨床試験の実施を行うこととなりました。これまでに実施した第Ⅰ/Ⅱ相試験及び第Ⅲ相試験から得られた知見を基に成功確度の高い臨床試験を立案し、有効性の追加データを取得した上で、医薬品としての製造販売承認申請を目指してまいります。当該追加臨床試験を行うための治験費用に一部充当することを目的に、2025年8月に第16回新株予約権の発行を行いました。なお、脊髄損傷急性期を対象とする米国での臨床開発及び製造開発(組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化)を資金調達の主たる目的とし、2023年9月に第13回新株予約権の発行を行い、2024年5月に全ての行使が完了しました。 声帯瘢痕については、第Ⅲ相試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)の治験計画届書をPMDAに提出し受理され、2022年11月に京都府立医科大学附属病院において治験を開始しました。2023年5月には、久留米大学医学部附属病院、東北大学病院、川崎医科大学附属病院、日本大学病院を治験実施医療機関として加え、2024年5月には、山王メディカルセンターを追加し、2025年1月には、更に藤田医科大学病院、福岡山王病院を追加し、現在合計8施設で症例登録を推進しております。なお、治験の実施費用並びに治験薬の製造及び商用製剤の開発費用の調達を目的として、第10回新株予約権の発行を行い、2022年7月に全ての行使が完了しました。さらに、本プロジェクトは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」課題として採択され、公的資金の活用も進めております。また、声帯瘢痕を対象とする市販用製剤開発費用の一部を資金調達することを目的に、2025年8月に第16回新株予約権の発行を行いました。 ALSについては第Ⅱ相試験(医師主導治験)の患者組入れを終了し、2021年12月に最終症例の最終観察日が終了しております。その後、データ解析が進められた結果、主要及び副次評価項目に関して実薬群とプラセボ群の間で統計的な有意差は認められませんでした。一方、実薬群において進行が遅い症例もあり、本試験結果の解釈には、さらに詳細な解析が必要と考えております。2024年4月には、東北大学と、本第Ⅱ相臨床試験の追加解析として、検体試料のバイオマーカー解析に関する共同研究契約を締結しました。本共同研究によって、効果の検出しやすい患者集団の特定など、次相試験のデザイン策定に重要な情報が得られることが期待されます。 ② 新たなパイプラインの開発 クリングルファーマは前述の3件のパイプラインのほか、米国において急性腎障害の第Ⅰa、Ⅰb相の臨床試験を終了しております。現在、資金的観点から当該疾患に対する開発を一旦中止しておりますが、資金的余裕が出た段階で再開する計画であります。また、多様な生物活性を持つHGFではその他多くの治療の論文が公表されており、今後の企業価値最大化の観点から、これらに対する医薬品を開発するパイプラインを新たに立ち上げる必要があります。 また、組換えヒトHGFタンパク質の臨床試験を複数実施したクリングルファーマのこれまでの知見をもとに、新たなバイオ医薬品の開発等、難治性疾患のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上のためのパイプライン開発を行ってまいります。 ③ 原薬の量産・供給体制の確立 クリングルファーマは現在、前述の4件の臨床パイプラインを開発中でありますが、これらのすべてが治療薬として実用化された場合、HGF原薬の量産体制を強化する必要があります。また、クリングルファーマの提携先(クラリス・バイオセラピューティクス社)において組換えヒトHGFタンパク質を用いた眼科領域での治療薬の開発が行われており、同社にHGF原薬を供給する契約を締結しております。クリングルファーマは2023年9月に同社と業務提携し、組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化に着手いたしました。今後のグローバルでの必要量増大に対応し、全世界での安定供給を目指すことを目的としております。 ④ 財務体質の強化 クリングルファーマは創薬バイオベンチャーであるため、研究開発費を補うための十分な収益を得るまでに長期の時間を要します。そのため、資金的余裕を生じさせることが困難であります。 しかしながら、研究開発の促進を図るためには十分な資金を研究開発に投入する必要があることから、今後も引き続き、増資はもとより、HGF原薬供給や事業提携(共同開発等)による収益計上により、財務体質の強化を図ってまいります。

事業等のリスク

3【事業等のリスク】 クリングルファーマの事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中にはクリングルファーマとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、若しくはクリングルファーマの事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。 クリングルファーマはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、クリングルファーマ株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、さらにこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意いただく必要があると考えます。 また、クリングルファーマは、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資家の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、クリングルファーマへの投資はこれに該当します。 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在においてクリングルファーマが判断したものであります。 (1)医薬品開発に係るリスク① 開発中パイプラインの不確実性について クリングルファーマは主要なパイプラインとして難治性神経疾患である脊髄損傷急性期、ALS及び声帯瘢痕の治療薬の開発を行っております。脊髄損傷急性期については、第Ⅲ相試験の患者組入れは2023年4月に完了し、最終症例の経過観察は2023年10月に完了しております。2024年2月に第Ⅲ相試験の速報結果を得ており、国内での医薬品製造販売の承認申請に向けて本試験の結果をもとに、PMDAと協議を進めてまいりましたが、2025年7月に追加臨床試験の実施を行うこととなりました。これまでに実施した第Ⅰ/Ⅱ相試験及び第Ⅲ相試験から得られた知見を基に成功確度の高い臨床試験を立案し、有効性の追加データを取得した上で、医薬品としての製造販売承認申請を目指してまいります。声帯瘢痕については、第Ⅲ相試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)の治験計画届書をPMDAに提出し受理され、2022年11月に治験を開始し、現在合計8施設で症例登録を推進しております。ALSについては、第Ⅱ相試験を終了しておりますが、追加解析として検体試料のバイオマーカー解析を東北大学と共同で進めております。 しかしながら、臨床試験で期待どおりの結果を得ることは不確実であり、PMDAとの協議において当該開発品が有効性を示していないと判断される可能性があります。また、臨床試験中に重篤な副作用が発生した場合、安全性に疑義が生じ臨床試験を中断する可能性があります。 このような場合は、パイプラインの開発が遅延又は中止となり、その結果収益自体が計上できる状況に至らない可能性があります。 ② 開発の遅延について ①に示したように、クリングルファーマは複数パイプラインで研究開発を行っておりますが、それぞれの開発段階で予想できない結果等(有効性や安全性の評価項目の未達、重篤な副作用発生、新型コロナウイルス感染症等の流行による症例組入れ停止等)が発生し、その後の開発について遅延が生じる可能性があります。当該開発の遅延により、当初の予算を上回る資金需要やスケジュールの遅延が生じる可能性があります。 ③ 将来収益の不確実性について クリングルファーマは、多く有用な情報から最も確度の高い価格、市場規模、市場占有率等を考慮して将来の収益の計画を策定しております。しかしながら、クリングルファーマは、難治性疾患の治療薬を開発しており、類似製品の選定が困難な場合、及び類似製品からの価格の推定が困難な場合があり、将来の収益の計画が大きく変更する可能性があります。また、製品の販売を開始するまでの時期については、収益が発生する場合の主な内容が契約一時金収入やマイルストーン収入であることから、収益の発生時期及び金額は開発の進捗により大きく変動する可能性があります。 ④ 潜在競合品について クリングルファーマが開発しているパイプラインについては、競合品の開発状況を注視しております。クリングルファーマ開発製品の将来収益予想に影響を及ぼす可能性のある競合品は少ないと判断しておりますが、今後の競合品の開発状況の変化により、将来の収益性に大きな影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 知的財産侵害について クリングルファーマは事業展開において種々の知的財産権を使用しており、これらはクリングルファーマ所有若しくは適正に使用許諾を受けた権利であると認識しており、今後も第三者の知的財産権を使用することもあります。クリングルファーマでは、第三者の知的財産権に抵触することを回避するため、調査、検討及び評価等を随時実施しておりますが、第三者の知的財産権に関連して係争が生じる可能性もあります。 今後、事業の進捗により、このようなリスクは増大するものと思われます。 また、クリングルファーマは他社による特許権等知的財産権の侵害を未然に防止するため、クリングルファーマとして必要と考える調査を実施しております。これまでに、クリングルファーマの知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありませんが、研究開発型企業であるクリングルファーマは、知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合は、クリングルファーマの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 クリングルファーマは株式会社ニューロゲン(代表取締役:米田喜子氏)より、組換えヒトHGFタンパク質を製造するためのマスターセルバンクの使用許諾を受けております(「第2 事業の状況 5 重要な契約等 (1)技術受入契約」をご参照ください)。株式会社ニューロゲンは、HGFのインデューサー(中国の生薬等に含まれ、摂取することにより体内のHGF産生を上昇させる活性を持つ物質)の研究開発を行うとともに、HGF関連資産を保有しております。マスターセルバンクは組換えヒトHGFタンパク質の製造における起点となる細胞株であるため、当該使用許諾は主要な事業活動の前提となる事項でありますが、株式会社ニューロゲンとは長年にわたり良好な関係を維持しており、現時点でマスターセルバンクの継続的な使用に支障をきたす要因は発生しておりません。マスターセルバンクは、当該使用許諾契約に基づき、クリングルファーマがGMP準拠により適切に保管しております。今後、クリングルファーマがマスターセルバンクを使用できなくなる可能性は極めて低いと考えておりますが、何らかの理由により当該使用許諾契約が解除された場合には、クリングルファーマの医薬品開発事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。 なお、以下に主要なパイプラインに関するクリングルファーマ所有の特許を記載しております。 対象表題出願国(地域)登録(出願)の状況脊髄損傷急性期脊髄損傷治療薬剤日本権利化 欧州14カ国(英国、フランス、ドイツ、スイスほか)で権利化 米国権利化 カナダ権利化 中国権利化 韓国権利化 香港権利化脊髄損傷急性期ALS声帯瘢痕神経疾患の治療に適したHGF製剤日本権利化欧州権利化 米国権利化 カナダ権利化 韓国権利化 ⑥ 医薬品に関する規制等について クリングルファーマは、医薬品を販売するにあたり「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」という)に基づき第1種医薬品製造販売業の許可を得た後に、組換えヒトHGFタンパク質による製品の製造販売承認を取得できるよう、薬機法に準拠した体制整備と医薬品開発の推進に努めております。また、製造販売承認を得るため、申請書類に必要なデータ(品質、有効性、安全性)の取得、及び信頼性保証体制の整備に努めております。 しかしながら、製造販売業の許可については、薬機法に違反した事実が認められたり、薬機法の改正に対応することができない場合は、取り消される可能性があります。また、組換えヒトHGFタンパク質による製品の品質、有効性及び安全性が認められない場合は、当該製品の製造販売承認が得られない可能性があります。 医薬品については前述の薬機法以外にもいくつかの法令によって規制されており、これらの規制に抵触することにより、販売の規制などの行政処分が執行される可能性があります。 ⑦ 医療制度改革について 我が国の医療制度は国民皆保険制度を基盤として、すべての国民が十分な医療行為を受けられる体制が敷かれております。しかしながら、高齢化社会による昨今の医療費の増大を踏まえ、当該制度を維持すべく薬価改定を中心とした医療制度改革が実施されており、クリングルファーマが予定している製品の販売価格に大きく影響する可能性があります。 ⑧ 損害賠償責任について 医薬品の臨床試験の実施に際しては、治験薬による重篤な副作用が発生する可能性があります。クリングルファーマは、当該リスクに対して損害賠償保険に加入しておりますが、当該保険の範囲外での賠償義務が生じる可能性があります。また、医薬品として販売の承認を受けた後も、同様の重篤な副作用の発生の可能性を否定することは困難であり、これに対しても損害賠償保険に加入する予定にしておりますが、当該保険の範囲外での賠償義務が生じる可能性があります。 (2)製造に関するリスク① 原材料等の不足 クリングルファーマは、製造受託機関に委託して、臨床試験の治験薬製造を行っており、また、今後の医薬品の製造を行う予定であります。今後の医薬品製造に当たっては、汎用的ではない特殊な原材料等があるため、原材料等の不足が生じないように一定の原材料等の確保及び事前の原材料の確認、発注等一定の手当を行っておりますが、当該原材料が不足した場合、医薬品の安定的な供給に問題が生じる可能性があり、クリングルファーマの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ② 少数サプライヤーへの依存 クリングルファーマは前述のように特殊な原材料、消耗品等を使用しているため、少数のサプライヤーに依存して製造を行っております。このため、サプライヤーサイドの事情により原材料等の供給が滞る可能性があります。クリングルファーマはセカンドサプライヤーの検討や一定程度の在庫量の確保等を進めておりますが、前述のとおり、原材料や消耗品等の供給に不足が生じた場合、将来製品の製造に遅延が生じ、クリングルファーマの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 ③ 製造の外部委託について クリングルファーマは原薬及び製剤の製造を外部委託することにより、製造に係る人件費や固定資産の減価償却費等、固定費を削減するとともに現預金残高を増加させ財務基盤を安定化させております。また、製造を外部委託することにより、機動的な製造も可能となると考えております。製造委託先との緊密な連絡体制や契約によりクリングルファーマ製品の製造に支障が生じないようリスク管理を十分に行っておりますが、何らかの事情により委託先がクリングルファーマが製造委託した原薬又は製剤を製造できなくなる可能性があります。また、クリングルファーマ及び委託先それぞれにおいて品質管理体制を構築して、一定の品質を確保した原薬及び製剤の製造を実行しておりますが、管理の不備により品質上問題のある原薬又は製剤が使用された場合には、クリングルファーマの信頼性が担保されず、事業推進に支障が生じる可能性があります。 ④ 技術・ノウハウの流出 組換えヒトHGFタンパク質を有効成分とする医薬品の製造に関しては、原薬の製造と凍結乾燥製剤の製造に分けることができますが、いずれも製造方法を特許として出願せず、ノウハウとして公表しない戦略をとっております。 クリングルファーマ役職員や製造委託先については、秘密保持契約等の締結によりこれらの製造に関する技術・ノウハウが流出しないような措置はとられているものの、何らかの理由により製造に関する技術・ノウハウが流出した場合、製造に関する優位性が失われ、他社により製造される可能性があります。 (3)事業開発に係るリスク① 提携先企業についてア 製薬企業との提携について 丸石製薬株式会社とは、クリングルファーマが開発中である脊髄損傷急性期を対象とした製品が製造販売承認を得た際に独占的販売権を許諾する契約を締結しております。この提携により同製品の販売網が構築されておりますが、何らかの事象(相手先企業の経営環境の悪化や経営方針の変更等)により、同社への販売が実現されない場合、同製品の売上が計画を下回る可能性があります。クリングルファーマは、販売数の低下を回避するためのバックアップ体制の構築を想定しておりますが、一時的な売上低下を回避することは難しいと考えております。 イ 医薬品卸企業との提携について 東邦ホールディングス株式会社とは、クリングルファーマが開発中である脊髄損傷急性期を対象とした製品が製造販売承認を得た際に独占的卸売販売を行う契約を締結しております。この提携により同製品を市場に供給するためのサプライチェーンが構築されております。しかしながら、何らかの事象(相手先企業の経営環境の悪化や経営方針の変更等)により、提携先である同社による市場供給が困難になった場合、一時的に同製品の市場供給が難しくなる可能性があります。クリングルファーマは、市場供給の停止を回避するためのバックアップ体制を構築しておりますが、一時的な供給停止を回避することは難しいと考えております。 ウ クラリス・バイオセラピューティクス社との提携について クリングルファーマは米国のクラリス・バイオセラピューティクス社とHGF原薬の供給契約を締結しております。しかしながら、何らかの事象(相手先企業の経営環境の悪化や経営方針の変更等)により同社が行っている医薬品開発が進捗しなかった場合、クリングルファーマ製品であるHGF原薬の供給がなくなり、売上が減少する可能性があります。 ② 国内外への事業展開についてア 国内での事業展開について 前述のとおり、開発が成功した場合の脊髄損傷急性期治療薬についての国内における独占的販売に関する契約については丸石製薬株式会社と、独占的卸売販売に関する契約については東邦ホールディングス株式会社と締結しており、今後の製品供給に関するサプライチェーンが構築されております。しかしながら、現時点においては開発が成功した場合のVFS治験薬及びALS治療薬についての販売に関する提携がなされておらず、今後の事業開発の状況によっては、有効なサプライチェーンの構築が困難になることも考えられます。 イ 海外での事業展開について 前述のとおり、国内市場において、脊髄損傷急性期治療薬についてのサプライチェーンの構築を含め、製造販売承認がなされた後の市場供給過程が設定されておりますが、海外においては、製薬会社等との提携により、臨床試験の設定から構築する必要が生じます。しかしながら、海外製薬会社等との提携が適時適切に行われない場合は、海外での事業展開が遅延する可能性が生じます。 (4)会社組織に係るリスク① 小規模組織について クリングルファーマ組織は、取締役7名(非常勤取締役3名を含む。)、監査役3名(非常勤監査役2名を含む。)及び従業員17名から構成されております。これは、クリングルファーマが社外組織や個人を活用することにより固定費を低減し、収益を獲得するまでの期間における費用を低く抑える経営戦略に沿った組織体制を構築したことによるものであります。 クリングルファーマの研究開発を行う医薬開発部及び信頼性保証部は取締役2名と従業員13名で構成されております。今後の積極的な事業展開を踏まえて、人員の拡充を計画しておりますが、計画どおりの人材採用が行われない場合は、研究開発活動が遅延する可能性があります。 また、管理及び経営戦略業務を行う経営管理部及び経営戦略室は取締役1名と従業員4名で構成されております。今後は、事業拡大に応じた内部管理体制の充実を考慮し、人員の拡充を計画しておりますが、計画どおりの人材採用が行われない場合は、内部管理体制が十分に構築できない可能性があります。 ② 資本構成について 新株予約権による希薄化 クリングルファーマは、ストック・オプション制度を採用しており、取締役、従業員等に対して新株予約権を付与しており、今後も優秀な人材確保及び取締役、従業員等の企業価値向上への貢献意識を高めることを目的として、新株予約権を発行する可能性があります。 ストック・オプションを含めた新株予約権による潜在株式数は当事業年度末現在で340,000株となり、発行済株式総数と潜在株式数を合計した株式数に対して4.6%を占めております。 新株予約権の行使が進んだ場合、発行済株式総数が増加し、クリングルファーマ株式の市場価格が低下する可能性があります。 ③ 特定人物への依存 代表取締役社長の安達喜一は経営方針の決定及びクリングルファーマの事業活動全般に重要な役割を果たしております。また、研究開発については専門的な知識が必要となるため特定の従業員に強く依存するところがあります。クリングルファーマでは特定人物への依存が強くなり過ぎないよう業務内容を複数で共有するとともに人材の確保及び育成に努めておりますが、人材の拡充が進まない、人材が流出する等の事態が生じた場合には、クリングルファーマの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (5)業績に係るリスク① 経営成績について クリングルファーマは研究開発型の創薬バイオベンチャー企業であり、多額の研究開発費を先行投資するビジネスモデルであるため、継続して当期純損失を計上しております。計画どおりに開発を進め、クリングルファーマ製品が医薬品として承認されることにより早期に利益を計上することを目指しておりますが、研究開発の遅延により利益の計上が遅れる可能性があります。 ② 配当政策について クリングルファーマは、当事業年度末現在において、会社法上の配当可能利益がなく、創業以来、配当を実施しておりません。早期に利益を計上したのち、財務体質の強化及び研究開発への投資とともに株主への利益還元を行うべく利益配当を考えております。 しかしながら、研究開発の遅延や収益見込が下回る等により利益配当が十分になされない可能性があります。 ③ 資金繰り及び資金調達について クリングルファーマのような創薬バイオベンチャー企業は、研究開発が先行して行われるため、研究開発期間中においては継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローは通常マイナスとなります。現在、開発中であるKP-100ITが実用化され販売が本格的に開始されるまでの間、研究開発資金を含む事業資金は過去における増資資金、株式公開における調達資金で賄う予定でありますが、研究開発等、本格的な販売開始の遅延により資金がひっ迫する可能性があります。 この場合、新たな増資等によって追加の資金調達を行う必要が生じますが、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、クリングルファーマの事業継続に重要な懸念が生じる可能性があります。また、新たな増資を行った場合、発行済株式総数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ④ 多額の研究開発費の発生について クリングルファーマの第23期事業年度における研究開発費の総額は、643,266千円(販売費及び一般管理費の71.6%)、第24期事業年度においては、681,359千円(販売費及び一般管理費の69.4%)であります。 一般に、新薬の開発には、長期に渡る年月と多額の費用が必要になります。クリングルファーマでは現在、難治性神経疾患である脊髄損傷急性期及び声帯瘢痕を対象疾患とした臨床試験を実施中ですが、これら研究開発が当初計画よりも遅延する場合、又は当初期待していた結果が得られない場合、研究開発費が当初計画よりも増大し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等について クリングルファーマは、創薬バイオベンチャーであり、医薬品として製品化し、収益を得るまでに多額の研究開発費と長い時間を要する等の特性があります。HGF医薬品の実用化を目指して、複数パイプラインの開発を進めておりますが、現在、収益を得るまでには至っておりません。 主要パイプラインである脊髄損傷(SCI)急性期に関しましては、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験及び第Ⅲ相臨床試験を終了し、承認申請に向けてPMDAとの協議を進めてまいりました。しかし、2025年7月に追加臨床試験を実施したうえで承認申請することを決定いたしました。  この結果、継続的な営業損失の発生及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスを計上していることに加え、当初の計画より承認申請時期が延期となった影響等により、資金繰りの余裕度が低下してきました。この状況によりクリングルファーマには、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると判断しております。  このような状況を解消するため、クリングルファーマは2025年7月16日開催の取締役会において第三者割当の方法による第16回新株予約権の発行を決議し、2025年8月1日に第三者への割当を行いました。当該新株予約権の行使による資金調達を進めるとともに、必要に応じてパイプラインの見直しによる研究開発費や一般経費等のコスト削減を行うことにより、事業を継続していくための資金を確保できるため、現時点において、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないものと判断しております。  また、これに加えて、以下の医薬開発活動や事業開発活動等を継続することにより、事業基盤及び財務基盤の強化を図り、当該状況の解消、改善に努めてまいります。ア.継続的な収益源の確保原薬供給や技術アクセスフィーによるクラリス・バイオセラピューティクス社からの売上収益に加え、HGF医薬品に関する共同研究や共同開発を推進し、その成果としての原薬販売による収益の獲得にも取り組んでおります。イ.既存パイプラインにおける提携先の開拓クリングルファーマのパイプラインである国内における脊髄損傷(SCI)急性期については、製薬会社との独占的販売権及び独占的卸売販売の契約がすでに締結されておりますが、声帯瘢痕(VFS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び国外における脊髄損傷(SCI)急性期については、現時点で製薬企業等との提携は確定しておりません。国内における声帯瘢痕(VFS)については、脊髄損傷(SCI)急性期の国内と同様に自社開発により薬事承認を取得し販売提携先を得るモデル、国外における脊髄損傷(SCI)急性期及び声帯瘢痕(VFS)、グローバルにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)については、導出・共同開発モデルでの事業化を目指しております。各パイプラインについて速やかに製薬会社等との提携交渉を進めることにより、開発リスク、財務リスクの低減に取り組んでおります。ウ.資金調達補助金等の活用による資金調達に取り組んでおります。



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