出光興産(5019)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


出光興産(5019)の株価チャート 出光興産(5019)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

出光興産及び出光興産の関係会社(出光興産、子会社187社及び関連会社59社)が営む主要な事業の内容と主要な関係会社の当該事業における位置付けは、次のとおりです。

連結の範囲に関する詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表等 注記事項 1.連結の範囲に関する事項 2.持分法の適用に関する事項」に記載のとおりです。

 

 

[事業系統図]

 

 

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)2050年ビジョン

出光興産は、2050年カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、2022年11月に2050年ビジョン「変革をカタチに」を策定しました。「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つの事業領域で変革を具現化していくことで、人びとの暮らしを支える責任と未来の地球環境を守る責任を果たしていきます。

 

(2)2030年ビジョン

 

2030年ビジョン「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めます。

また、カーボンニュートラルの実現に向けては、非連続的な技術革新が必要となる一方で、エネルギーと素材の供給においては、人々の暮らしや産業を支える不可欠なものとして、連続性を伴ったトランジションが必要となります。そこで2030年ビジョン「責任ある変革者」として進める打ち手を、2040年、2050年と着実に具現化・社会実装を進めることで、2050年ビジョン「変革をカタチに」の実現を目指します。

 

 

(3)中期経営計画(2023~2025年度)の取組み

出光興産は2022年11月の中期経営計画公表以降、資本市場をはじめとしたステークホルダーとの対話を重ね、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応への観点も踏まえて、取締役会等において継続的に議論を行ってまいりました。中期経営計画初年度である2023年度においては、収支および財務状況の改善が想定を上回る進捗であったことから、2025年度のROE(8%→10%以上)およびROIC(5%→7%)目標の上方修正を行い、あわせて達成に向けた道筋を明確化しました。

株主還元方針についても、3ヵ年累計の在庫影響除き当期利益に対し総還元性向50%以上の株主還元を行う方針は維持しつつ、1株当たり配当金を「24円」から「32円」へ引き上げるとともに、下限配当を「32円」に設定したことに加え、株価水準を意識した機動的な自己株式取得を実施することについて公表しました。

既存事業における資本効率の更なる向上、キャッシュアロケーションの再構築の両取り組みを通じ、2025年度目標および早期のPBR1.0倍の達成を目指します。

 

2025年度の経営目標の見直しと達成に向けた道筋

 

*1 大きな外部環境影響を除いて比較する為、燃料油セグメントのタイムラグ影響、

資源セグメントの石炭価格(実績を25年度計画前提120$/tへ)等を補正した数値

*2 2022年11月中期経営計画公表時の当初目標8%

 

①既存事業における資本効率の更なる向上

資本効率の更なる向上により、2025年度ROIC目標7%(既存事業)、及び営業利益+持分法投資損益2,300億円へ上方修正しました。各セグメントの課題に対する具体的な取り組みを強力に推進することにより、2025年度目標を達成します。

 

(燃料油+基礎化学品セグメント)

西部石油の精製機能停止などを通じた投下資本の圧縮を進める一方、成長余地の高いバイオ系燃料等の海外事業拡大、NSRPの収益改善(2025年度黒字化へ)、富士石油との資本業務提携を軸とした既存燃料油事業のシナジー創出、国内外マージンの改善等を推進します。

 

(高機能材セグメント)

機能化学品の事業見直しによる不採算事業からの撤退に加え、潤滑油事業、電子材料事業等での収益改善とM&Aを含む戦略投資を推進します。

 

(電力・再生可能エネルギーセグメント)

BOT(Build Operate and Transfer)事業、海外ガス火力事業の戦略再構築やソーラーフロンティアの収益改善(2025年度黒字化へ)等の構造改革を推進します。

 

(資源セグメント)

石炭関連の権益集約による投下資本を圧縮する一方、安定供給の継続を通じて高い資本収益性を確保しつつ、リチウム、バナジウムなどの権益の取得により、既存アセットを活かしたポートフォリオ転換を推進します。

 

(共通)

全社、組織横断でのDXの推進、調達機能集約化による生産性向上やコスト低減を通じ、各セグメントの資本収益性の改善を更に後押していきます。

*1 既存事業計にはコーポレート費用等を含む

*2 ROIC値の分子はNOPATを用いて算出

*3 投下資本のうち、土地は時価評価で算出、燃料油の備蓄借入は実質的な負担が生じない為除外

 

 

②キャッシュアロケーションの再構成

ア.「CNに資する新規事業」16PJのスクリーニング結果

中期経営計画で掲げた16の新規事業プロジェクトについて、市場の蓋然性、出光興産既存アセットの活用度、有力事業パートナーの有無、出光興産の技術優位性などの基準をもとに投資スクリーニングを行い、2050年のカーボンニュートラルに向け取り組むべき投資として以下重点4事業を設定しました。

2030年までの早期実装、2030年代以降の収益化に向け、Key Success Factorを設定して取り組みを推進します。

 

*企業名は敬称略

 

 

イ.投資配分(2023~2030年度)

投資スクリーニングや本中計期間中のキャッシュ・フロー増分を踏まえ、2023~2030年度の戦略投資を、時間軸をもとに整理しました。2030年までのキャッシュ・フローおよびROIC向上に資する投資(成長投資:既存戦略投資、及び主に多様な省資源・資源循環ソリューション、スマートよろずや関連投資)による既存事業の収益力強化を通じて、ROIC/ROE目標を達成するとともに、2050年カーボンニュートラルに向け取り組むべき投資(CN投資:主に一歩先のエネルギー関連投資)を約8,000億円計画し、GHG削減や事業ポートフォリオ転換を着実に進めます。

 

 

ウ.株主還元方針と自己資本の適正化(2023~2025年度)

中期経営計画初年度である2023年度の順調な滑り出しを踏まえて2023~2025年度の利益、及びキャッシュ・フローを見直した結果、いずれも中期経営計画を大きく上回る見込みであり、財務体質の改善が大きく進んだことなどから、株主還元方針に加えて、自己資本の適正化を目的とした1,000億円の追加的な自己株式取得を実施します。

 

 

エ.3ヵ年キャッシュ・フロー配分

(2023~2025年度)

2025年度ROE10%の達成に向けた具体策を踏まえた3ヵ年のキャッシュインは中期経営計画対比2,200億円増加する見込みであり、この増加分は、①戦略投資(CN投資、成長投資)、②株主還元、③財務構成の見直しへ、それぞれ以下の通り充当します。

 

③GHG削減目標の達成に向けて

2030年度△46%(Scope1+2、2013年度対比)の削減目標に向け、2023年度末時点で必要削減量730万tの約20%に削減の目途が立っており、引き続き目標達成に向け取り組みを加速します。

 

(主な取り組み)

製油所統廃合/稼働減:西部石油精製機能停止、エルモーデュ・アクリル酸装置停止、千葉地区クラッカー停止検討他

排出量削減     :事業所、製造設備の省エネ投資、燃料転換の検討他

吸収・除去等    :森林投資、苫小牧CCS他

 

 

 

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

①セグメント毎の課題

出光興産のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。

ア.燃料油セグメント

(ア)石油精製の最適化とCNXセンター化の取り組み

石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていくとともに、国内の需要動向に合わせた最適な製油所体制を目指します。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、製油所・事業所機能を転換していくCNXセンター化を進めています。コンビナートの広大な敷地や大型船が入れる桟橋、タンク群などの既存設備は、バイオマス燃料をはじめ、水素・アンモニアや合成燃料などの製造や貯蔵、使用済みプラスチックのリサイクルなどに活用できるポテンシャルを有しており、各製油所・事業所の特性に合わせた取り組みを検討しています。

 

(イ)燃料油事業の海外展開

アジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、海外での燃料油事業を推進していきます。ニソン製油所については、安定操業を継続し、コスト適正化により引き続き収益改善に取り組みます。また、これまで培った知見を活用し、脱炭素関連商材の調達にも取り組みます。

 

(ウ)特約販売店ネットワークの基盤強化

特約販売店のネットワークは、燃料油、ガス等の、地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約販売店の収益力強化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。出光興産の最大の「資産」である特約販売店とのネットワークは、2021年4月より展開を開始したSS新ブランドapollostationを通じて、スマートよろずやを展開し、それぞれのまちの人と豊かなくらしをサポートしていきます。具体的には、「いろんなa!を、このまちに。」の新スローガンのもと、人と「多様なエネルギー」をつなぐエネルギーよろずや、人と「これからの移動」をつなぐモビリティよろずやを柱に、地域の暮らしを支える生活支援基地へと進化していきます。

また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。

 

イ.基礎化学品セグメント

燃料油事業との連携による原料多様化・留分最適化を追求するとともに、保全費や維持更新投資をはじめとしたコスト削減や物流最適化に取り組み、国内事業の収益基盤の安定化を図ります。具体的には2023年に稼働を開始した愛知事業所パラキシレン製造装置の活用により、余剰となるガソリン基材を付加価値の高い化学品に転換するケミカルシフトを継続していくほか、オフサイトファシリティの合理化による輸送効率の向上、DXの導入などによる保安の高度化や保全工事仕様の最適化を進め、設備の信頼性向上とコスト競争力強化の両立に取り組みます。また基幹装置であるエチレン装置については、三井化学㈱との折半出資である千葉ケミカル製造有限責任事業組合における連携を一歩進め、将来的な出光装置停止、三井化学装置への集約を目的とした詳細検討を開始します。余剰能力の削減による生産最適化を進め稼働率の向上を図ることで一層の競争力強化を図ります。

2050年カーボンニュートラル実現に向けては、「バイオ化学品の供給」と「ケミカルリサイクルによる資源循環システムの確立」を推進します。バイオ化学品については、海外から調達したバイオナフサを原料とした化学品のマーケティングを強化し需要拡大を図るとともに、SAF事業との連携により、将来的なバイオナフサの自社製造化を進めていきます。ケミカルリサイクルに関しては、使用済みプラスチックを原料に原油代替となる生成油を生産する油化装置を千葉事業所に建設し、2025年度の商業生産開始を目指します。カーボンニュートラル化を推進するにあたっては製油所・事業所の既存設備を活用するだけではなく、グループ企業の㈱プライムポリマー、PSジャパン㈱を含めた化学品のバリューチェーン全体でよりサステナブルな事業へ進化させるべく変革を推進します。

 

ウ.高機能材セグメント

(ア)潤滑油事業

お客様が抱えている課題やニーズに沿った商品開発・提案を推進します。特にカーボンニュートラルの取り組み進展により、需要が拡大しているEVに適合する製品や、省エネ・省資源に資する製品の上市、拡販に取り組みます。

海外においては出光ブランドモーターオイル「IBMO(Idemitsu Brand Motor Oil※)シリーズ」の展開により、出光ブランドの強化を図り、更なる収益拡大を目指します。

※Idemitsu Brand Motor Oil:海外において展開されている出光ブランドのエンジンオイル

 

(イ)機能化学品事業

技術・商品の優位性が重要視される分野に経営資源を集約し、成長拡大を図ります。エンプラ・コンパウンド事業に注力、次世代モビリティ、高速通信分野のニーズに対応する開発を加速、また、電動・電化、ICTを成長領域とし、分子設計、配合技術を駆使、機能材料事業の用途開発を推進します。CNXセンター構想と連携、カーボンニュートラルにも取組み、現・中期経営計画で掲げた事業構造改革を着実に実行していくとともに、先進マテリアルカンパニーが目指す3つの成長事業領域での新規事業創出に積極的にも参画・推進していきます。

 

(ウ)電子材料事業

有機ELディスプレイは、スマートフォンやテレビといった既存用途に加え、今後はノートパソコン・タブレット端末・車載(産業用ディスプレイ)への適用拡大が期待されており、有機EL材料市場の成長が見込まれます。そのような需要拡大や韓国及び中国における国産化の流れに対応するため、海外顧客との接合強化による自社材料の採用拡大を目指し、現地の研究開発機能強化を推進します。更に、日本の研究開発機能では将来の技術動向を先取りした差別化技術の開発に取り組みます。また、市場環境の変化に柔軟に対応するため、日本・韓国・中国の3拠点での効率的な経営体制の構築を推進します。

 

(エ)高機能アスファルト事業

2024年度は、国土交通省が打ち出した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の4年目であり、継続して国内の道路舗装需要は堅調に推移するものと予測され、インフラ公共資材としての安定供給に努めていきます。高機能アスファルト分野においては、顧客、社会のニーズに基づき舗装の長寿命化やカーボンニュートラルの実現に向けた製品・技術開発を推進するとともに、海外事業においては、マレーシアにおける高機能アスファルトの事業会社を設立し、マレーシア高速道路運営会社等への販売開始し、同国でのインフラ整備に貢献していきます。

 

(オ)農薬・機能性飼料事業

近年、農作物の生産量低下に繋がる、薬剤耐性を獲得した病害虫・雑草の発生が問題となっています。農薬事業では本課題に対し、国内では耐性菌発生事例の無い殺菌剤「ダコニール」の普及推進、海外では難防除雑草に対して優れた除草効果を示す水稲除草剤「ベンゾビシクロン」の普及拡大等に継続的に取り組みます。

機能性飼料事業では近年の世界的な気候変動の流れを受け、家畜が排出する温室効果ガスの1種であるメタンガスが問題視されています。本課題に対し、牛の生産性維持及びメタンガスの排出削減効果が期待されるカシューナッツ殻液を含む機能性飼料の国内外での販売推進に継続的に取り組みます。

 

(カ)全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)向け固体電解質

全固体電池は、主にEVの航続距離拡大、充電時間の短縮、安全性向上といった性能ニーズに応える技術として実用化と普及拡大が期待される次世代電池です。出光興産はそのキーマテリアルである固体電解質を開発しています。

量産に向けては、現在稼働中の2つの小型実証設備での実証を足掛かりに、次のステージとなる大型パイロット装置での量産技術の確立※とその先の事業化を目指します。また、材料メーカー、自動車メーカーなどとの協力も進めており、お互いのニーズを把握しながら、それぞれの知見や技術力を活かした迅速な開発を推進します。固体電解質の性能向上及び量産技術開発を加速させ、世の中に広く使っていただける固体電解質と全固体電池の量産実現を目指します。

※NEDO「グリーンイノベーション基金事業 次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトに採択

 

エ.電力・再生可能エネルギーセグメント

国内においては、競争力ある火力電源を始め、風力、太陽光、バイオマスといった多様な再生可能エネルギー電源など、多様なポートフォリオで構成された発電所を活用し、安定的で低炭素社会の実現に貢献する電力供給を行っています。また、太陽光発電事業では、EPC事業を始めとする太陽光発電所の開発、長期安定利用の取り組みに加え、将来的に大量廃棄が見込まれるパネルのリサイクル・リパワリングなど循環型社会への対応も進めており、ライフサイクル全体を通じたソリューションを提供していきます。更に、今後進展する分散型社会に向けて、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた需給調整ビジネスにも取り組みます。海外においても脱炭素の潮流は国内と同様であり、北米や東南アジアにおける太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。加えて、北米におけるガス火力発電事業にも取り組んでいます。

 

オ.資源セグメント

ロシア・ウクライナ問題によりエネルギーセキュリティの強化が求められる中で、継続して安定供給を行うために、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については、環境負荷低減を図る中で、石炭を代替するためのバイオマス燃料生産に向けて取り組むとともに、オーストラリアでの事業基盤を活用して、レアメタル鉱山事業への参入や鉱山資産を活用した再生可能エネルギー事業に取り組みます。また、地熱開発については、大分県での地熱事業の維持・継続と秋田県での新規発電所建設を着実に行うとともに、新規事業の調査・実証を進めます。

 

②財務上の課題

2030年に向けた事業構造転換を着実に推進するための適切なキャッシュ・フロー配分を実施するとともに、財務基盤強化と資本効率性のバランスを考慮した財務戦略を進めていきます。

なお、今中期経営計画の期間中には、財務構成の見直しとして1,000億円の自己株取得を決定しています。


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

出光興産グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、出光興産グループの財政状態・経営成績及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。出光興産の業績に特に大きな影響を与える商品分野につきましては、セグメント別に記載しています。文中の将来に関する部分は、出光興産が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)国際情勢や経済環境等の変化によるリスク

 

出光興産グループは日本及び世界各地にビジネスを展開しており、各々の地域の政治動向、景気動向及び経済情勢による影響を受ける可能性があります。特に足元のウクライナ情勢のほか、海外諸国の政治的要因又は経済的要因に起因する世界景気の減速及び日本国内における人口構成の変化等がもたらすエネルギー資源及び製品需要の変動や価格の乱高下は、出光興産の業績へ影響を与える可能性があります。

 

(2)事業を取り巻く外部環境の変化によるリスク

 

商品市況リスク

(燃料油セグメント)

出光興産グループは、石油製品の生産に必要な原油の殆どを輸入していますが、原油価格は過去においても大きく変動しており、一昨年から続くウクライナ情勢のほか、米国を始めとした世界各国の金融政策の動向、アジアにおける原油需要の変動、中東やアフリカの産油国の政情不安、米国を始め石油消費国における環境規制・税制の動向、投機的な石油取引等により、今後も大きく変動することが懸念されます。

出光興産グループは、石油製品価格を国内の市場価格に連動させることによりマージンを確保することに努めていますが、原油価格の変動が大きい場合や国内石油市場の激しい競争等により国内の市場価格が低迷した場合、財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

また、出光興産グループは、棚卸資産を総平均法により評価しています。一般的に総平均法は、原油価格が上昇する局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産による売上原価押し下げ影響により損益の改善要因となります。一方、原油価格が下落する局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産による売上原価の押し上げ影響により損益の悪化要因となります。

なお、1バレル当たりのドバイ原油価格が1米ドル変動すると、出光興産の営業利益は年間70億円増減する可能性があります。

 

(基礎化学品セグメント)

①原料コストの変動について

出光興産グループは、基礎化学品の原料であるナフサを自社製油所で生産するとともに市場から調達しています。ナフサ価格は、原油価格や、ガソリンの需要・価格動向、中国等において進められている石油化学設備の新設による需要増加の影響を受けることがあります。市場における激しい競争等の要因により、ナフサ価格の変動を製品価格に適切に転嫁できない場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

②製品市況の変動について

日本を含むアジアの基礎化学品市場は激しい競争状況にあり、需要の変動や供給の増加の影響を受けます。アジアでは経済成長に伴う需要の増加が見込まれますが、近年で中国を中心とした基礎化学品を製造する大型の新設プラントが急増しており、アジア市場における供給過多や、新興国の経済成長鈍化に伴う需要低迷の可能性があります。このような市場における競争の激化や需要の低迷により、出光興産グループの財政状態及び営業利益は影響を受ける可能性があります。

 

(電力・再生可能エネルギーセグメント)

出光興産グループでは、卸電力取引市場を介した電力の卸売及び調達を行っていますが、この取引価格は燃料価格や電力需要、原子力・火力・再生可能エネルギー等の電源の稼働状況等の影響を受けて変動します。これらの要因によって取引価格が大きく変動した場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(資源セグメント)

石油開発事業においては、油・ガスを生産し販売していますが、原油価格は過去においても変動しており、政治経済情勢あるいはその他の要因により将来的に原油価格が下落した場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

石炭事業においては、オーストラリアの自社鉱山で石炭を生産し、主に日本向けに販売していますが、政治経済情勢あるいはその他の要因により石炭価格が下落した場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

調達リスク

出光興産グループは、原油輸入の大宗を中東地域に依存していますが、原油の安定調達を目的として主要な中東産油国と長期の原油輸入契約を締結し、同地域内におけるリスクの分散を図っています。しかしながら、これらの地域における政情不安、原油の生産調整、石油関連施設の事故並びにシーレーンにおける海上輸送リスクの上昇等により、長期にわたって原油の輸入に制約が生じた場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績は重大な影響を受ける可能性があります。

 

カントリーリスク

(基礎化学品・高機能材セグメント)

出光興産グループは、主にアジア市場を中心とした基礎化学品の販売及び、潤滑油分野においてはグローバルで事業展開をしていますが、経済の低迷や政治リスク等の要因により市場成長が鈍化する可能性があります。

このような経済環境の変動により、出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(資源セグメント)

出光興産グループは、商業生産につながる資源の権益の取得、発見に努めています。現在、出光興産グループが保有する確認済みの資源や探鉱活動については、ベトナム等のアジア地域とノルウェーが中心となっており、これらの地域における政治経済情勢等により出光興産グループの探鉱開発が中断され、確認済みの資源の開発や追加的な資源の発見ができない可能性があります。

また、出光興産グループは、オーストラリアの自社鉱山で石炭を生産し、主に日本向けに販売しています。石炭鉱山事業につきましても、政治経済情勢、税制、規制方針やその他の不確定要因の影響を受けることがあります。

 

為替リスク

出光興産グループは、多額の外貨建取引を行い、また外貨建の資産及び負債を有しています。このため、為替相場の変動は外貨建取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。

また、原油輸入を米ドル建てで行っているため、原油の調達コストは円の米ドルに対する為替相場の影響を受けるほか、燃料油セグメントにおける在庫評価も影響を受けます。なお、1米ドル当たり1円変動すると、出光興産の営業利益は年間40億円増減する可能性があります。

 

(3)気候変動に関するリスク

 

上記の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」に記載のとおりです。

 

(4)環境規制に関するリスク

 

出光興産グループは、事業展開する日本やその他の国における広範な環境保全やその他の法的規制の下にあります。例えば、出光興産グループは、製油所や工場からの汚染物質の排出、廃棄物の処理等について規制を受け、基準を超える環境汚染発生に伴う罰則を受ける可能性もあります。また、日本や他の国の当局が新たな規制を行うこと、あるいは現在や将来の環境規制を遵守することにより多額の支出を伴う可能性があります。

 

(5)事業投資に関するリスク

 

出光興産グループは、事業資産の規模が大きく、既存の製油所・工場や販売設備等の維持更新、油田の権益取得や探鉱開発等の国内外の事業活動に多額の投資を必要とします。今後も石油、石油化学、資源事業など、既存事業の競争力維持には一定の投資を継続する予定です。一方で、カーボンニュートラル実現に向けて、製油所・工場の機能を低炭素で循環型の事業にシフトするための投資や、潤滑油、機能化学品、電子材料、固体電解質などの高付加価値製品の開発投資、更には水素・アンモニア・SAF・合成燃料といった新たなエネルギーの事業開発投資など、化石燃料以外の新しい事業拡大へ向けた戦略投資を行っていく計画です。このような成長分野への投資においては、必要なキャッシュ・フローを生み出すまでに一定の時間を要するため、期待された収益機会を失う可能性があります。更に国内外における経済情勢や政治動向、市場拡大の遅れ、新素材を含む他社との開発競争等によりこれらの投資が計画どおりの収益をあげられない場合は固定資産の減損損失を計上する可能性もあります。なお、投資の意思決定プロセスにおいて、投資金額をはじめとする様々なリスクの多寡に応じた投資審議を設計することで、投資リスク低減と意思決定の迅速化の両立に努めています。

また、出光興産グループは、アジア市場における石油及び石油化学事業の海外展開の一環として、クウェート国際石油、ペトロベトナム及び三井化学㈱(以下出光興産を含め、「スポンサー」という。)と共同でニソンリファイナリー・ペトロケミカルリミテッド(以下「NSRP」という。)を設立し、ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区に20万バレル/日の石油精製設備とパラキシレンをはじめとする石油化学品製造設備を有するニソン製油所・石油化学コンプレックスを操業しています。プロジェクトの総事業費は約90億米ドルであり、このうち50億米ドルは国際協力銀行をはじめとする銀行団によるプロジェクトファイナンスにより調達し、約40億米ドルはスポンサーによる出資及び貸付で調達しています。プロジェクトファイナンスによる調達額について銀行団に対し行っている債務保証及びスポンサーによる出資・貸付のうち、NSRPへの出光興産グループ出資比率相当の35.1%については、ベトナムにおける政治経済情勢、法律や規制及び雇用環境の変化等からプロジェクトが計画どおりに進展しない場合、出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

(6)その他経営全般に係るリスク

 

人権に関するリスク

出光興産グループは、人権の尊重は欠くことのできない経営の根幹であり、全ての判断や行動において最優先させるべきことと考え、世界人権宣言やILO宣言で国際的に認められた人権を尊重することを基本方針として定めています。出光興産グループは、グローバルに事業拠点を持ち、取引するサプライヤーも多国にわたることから、「ビジネスと人権」に関する意識を国際基準で高く持ち、人権デューデリジェンスを通じたリスクの軽減を進めるとともに、ビジネスパートナーにも方針の理解と遵守を要請しています。

しかしながら、事業活動の領域で人権の侵害等が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、出光興産グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

コンプライアンスに関するリスク

出光興産グループでは、コンプライアンス規程等に基づき、国内外の法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンス推進体制及び内部統制の強化に努めています。しかしながら、出光興産グループにおいて法令その他諸規則等を遵守できなかった場合、又は内部統制システムが有効に機能せずコンプライアンス上の問題が完全に回避できない事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を失い、出光興産グループのレピュテーションを損ね、出光興産グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

また、出光興産グループは確実性の高い品質マネジメントシステムに則り製品を製造していますが、予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合に備え保険を手当てしています。しかしながら、それに伴い法的責任が発生する可能性や、直接的な責任を負わずともバリューチェーンの一部を担う者としてブランドイメージやレピュテーションの低下を回避できない場合もあり、ひいては出光興産グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性もあります。

 

知的財産に関するリスク

出光興産グループは、事業の遂行のために知的財産権を活用しており、特に石油精製技術や、リチウム電池向け固体電解質、潤滑油、機能化学品、電子材料等の付加価値の高い製品・サービスにおいて特許や企業秘密の位置づけは重要です。また、出光興産グループは、ブランドを商標登録しています。しかしながら、出光興産グループの知的財産権は、これらに関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、出光興産グループが保有する特許、企業秘密、商標が出光興産の知的財産を保護するために十分であるとは限りません。

また、出光興産グループの企業秘密が、従業員や取引先、その他の関係者によって不適切に取り扱われる可能性があります。更に、出光興産グループの製品やサービスが第三者から知的財産権を侵害しているという主張がなされ、あるいは出光興産グループが第三者から供与されている技術ライセンスが更新されない可能性があります。出光興産グループが、事業遂行に必要な知的財産権を保護できない、あるいは全面的に活用できない場合、出光興産グループの事業や経営成績は影響を受ける可能性があります。

 

自然災害・事故等によるリスク

出光興産グループの事業は、地震、津波、台風、豪雨豪雪、火山爆発等の自然災害やこれらに起因する製油所・工場における火災、爆発、油の大規模流出等の事故といったリスクを有しています。また保有する大型タンカーを含む原油や石油製品の輸送は、海賊や悪天候による転覆、衝突、非友好国による拿捕、撃沈等の危険にさらされています。更に出光興産グループは、労働争議やサイバー攻撃等によるシステムダウンや情報漏洩、感染症の大規模蔓延による事業中断のリスクにも晒されています。

これらのリスクを会社としていち早く認識し、全社を挙げて被害の拡大防止を図るため、「危機発生時の対応規程」を策定し、予兆を含めたトラブルの早期共有のための連絡系統、対応時の優先順位、危機レベルの設定とそれに応じた対策本部の体制等についてまとめています。事業継続計画(BCP : Business Continuity Plan)については、2006年度に首都直下地震版、2009年度には新型インフルエンザ版、2010年度には南海トラフ巨大地震版(2021年度に「南海トラフ含む地域的地震津波版」に拡充)を制定しました。更に2015年度に内閣府より「指定公共機関」に指定されたことを受け、「防災業務計画」を作成しました。BCPに基づく総合防災訓練を毎年実施し、各拠点との連携やリモートを含む本部運用等についての課題を抽出し、実効力の強化に努めるとともにBCPの改定に反映しています。製油所・事業所・工場等においては、各々の危機対応規程類に基づき、拠点ごとに又は相互連携の上、防災訓練を定期的に実施しています。

出光興産グループは、事故や災害で想定される多額の損失に対し、自家再保険子会社を活用し適正な損害保険や損害保険サービスをグローバルに調達しています。

 

個人情報管理に関するリスク

出光興産グループは、石油製品販売、電力小売り、クレジットカード事業等で顧客の個人情報を多数取り扱っています。出光興産グループは、これらの情報の管理不徹底や外部からの不正な搾取、それによってもたらされる問題への対処のために、多額の費用を負担する可能性があります。また、昨今の日本国や欧州を始めとする個人情報保護関連法令の適用拡大・厳格化に対する必要な対応の不備・不足により、多額の制裁金、賠償金の発生、出光興産グループの信用低下、クレームや訴訟等に繋がった場合、出光興産グループの事業や経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(7)事業等のリスク管理

 

上記の「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ(ESG)共通 ③リスク管理」に記載のとおりです。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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