イノバセル(504a)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3【事業の内容】(1)対象とする事業領域 イノバセルグループは、有望な医薬品や医療機器などのシーズを世界各国で探索・発掘、それらを自社のパイプラインに組入れて開発し、グローバル市場において商業化することを通じて、患者さまの健康とQOLの向上に貢献することを主な目的とする企業です。現在はまず、イノバセルグループの基幹技術とも言える、ヒト細胞を用いた細胞治療製品より成るパイプラインに注力して研究開発を進めております。 現在イノバセルグループが手掛けているヒト細胞を用いた細胞治療製品は、日本では「再生医療等製品」、欧州では「ATMP(Advanced Therapy Medicinal Products)(※4)」、米国では「HCT/P(Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-based Products)(※5)」として分類されております。 なお、イノバセルの事業セグメントは「細胞治療・再生医療研究開発事業」のみです。 (2)事業の概要① イノバセルグループの技術とパイプラインの概要 イノバセルグループは設立以来、ヒト骨格筋細胞の培養技術の研究に取り組んでおり、患者さまご自身の筋組織を採取し、筋肉の幹細胞である衛星細胞から筋芽細胞を調製して、損傷あるいは機能が低下した標的筋組織へ注入することで機能再生を図る臨床応用へと発展させました。また、筋芽細胞の調製においては、GMPに準拠した施設を立ち上げ、医薬品に求められる高い品質で細胞製品を供給する技術を確立しております。 現在のパイプラインは失禁領域(尿失禁・便失禁)に焦点をあて、ICEF15(ターゲット疾患:切迫性便失禁)、ICEF16(同:漏出性便失禁)及びICES13(同:腹圧性尿失禁)の3つのパイプラインの研究開発に取り組んでいます。その中で最も開発ステージが進んでいるパイプラインはICEF15であり、現在第Ⅲ相国際共同治験を実施しております。② グループ会社の役割 イノバセルグループは、イノバセル及びイノバセル子会社(Innovacell GmbH)の2社から構成されています。 イノバセルは、グループ統括会社としての機能の他、日本における研究開発機能、及びグローバル事業開発機能を兼ね備えております。また開発が最も進んでいるICEF15について、イノバセルは第Ⅲ国際共同治験への参加国の1つである日本における臨床開発業務を推進しています。 事業開発の一環としては、イノバセルグループ全体の研究開発パイプラインの構築・拡充・管理と、それぞれのパイプラインに関する事業パートナリング活動(ライセンシング、共同販売、事業提携など)を推進しています。現在、ICEF15の商業化へ向けた準備として複数の製薬企業との間で共同販売促進提携交渉を推進しています。またイノバセルは、イノバセルグループの運営に必要な資金の調達も担っております。 イノバセル子会社であるInnovacell GmbHは、現在イノバセルグループが手がけている3つのパイプラインの研究開発活動を主導しております。同社は2000年の設立以来一貫して、失禁領域を対象とした細胞治療製品の基礎研究と臨床開発を進めており、3つの研究開発パイプラインはいずれもInnovacell GmbHから誕生したものです。すなわち同社はイノバセルグループの欧州地域の開発拠点であり、現在臨床段階に入っている2つのパイプラインにおいて、欧州医薬品庁(European Medicines Agency)及び欧州各国の薬事当局への対応を担当してきました。 さらに、同社はGMP製造施設を保有しており、これまでに骨格筋細胞、結合組織細胞、樹状突起細胞、毛嚢細胞など様々な種類の細胞製品の受託製造を行なってきた経験を有しています。当該GMP製造施設は、2022年9月に日本の厚生労働省より「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第39条第1項に基づく「特定細胞加工物製造認定」をアジア以外に立地する施設として初めて取得し、日本の法規制に基づく特定細胞加工物の製造も受託できるようになりました。この他同社は、2022年6月に欧州連合(EU)の政策金融機関である欧州投資銀行(European Investment Bank)から1,500万ユーロ(調達時の為替レート換算で約21億円)のベンチャーデットを調達するなど、公的資金を活用してきた実績も有します。 現在イノバセルグループは進行中のICEF15の第Ⅲ国際共同治験に米国の臨床施設を追加する準備を進めており、また同国における商業化の準備も推進しています。米国の臨床施設が追加される事で、ICEF15の第Ⅲ国際共同治験は日本・米国・欧州の主要3極を跨ぐ体制となります。また、今後イノバセル米国子会社を設立し、米国における各種活動を担う計画です。 <イノバセルグループにおける事業機能分担> ③ ビジネスモデル・収益構造 イノバセルは、世界各国の有望な医薬品・医療機器シーズを探索・発掘し、グローバルに開発して商業化する独自の「グローバルアグリゲーションモデル」を事業モデルとしています。 「グローバルアグリゲーションモデル」とは、専門的知見・経験や人的ネットワーク等に基づいて、有望な商業化ポテンシャルを有するシーズをグローバルに発掘、自社パイプラインに組入れ、当該パイプラインの開発に必要な事業インフラをグローバルに調達し、さらに当該パイプラインに最適なビジネスモデルを構築した上で商業化していくことにより、自らの収益ポートフォリオを構築・拡充するという事業モデルです。現在イノバセルグループが手掛けている3つの失禁領域のパイプラインはこの「グローバルアグリゲーションモデル」の最初の適用事例であり、日本企業であるイノバセルがこれら3つのパイプラインの研究開発を行なっているオーストリア企業(現Innovacell GmbH)を子会社化して現在のグループ事業体制を構築しました。 イノバセル研究開発パイプラインの中で最も商業化に近いステージにあるのはICEF15であり、現在日本及び欧州において第Ⅲ相国際共同治験を実施しています。 このICEF15について、日本でイノバセルは薬事承認取得に至るまでの開発を自社で行い、薬事承認取得後に必要となる各種商業化機能(商業製造、マーケティング・販売など)の多くを経験豊富な外部提携先に委託する計画です。製薬企業と共同販売促進契約を締結した場合、イノバセルは当該契約に基づいて契約締結時一時金及びマイルストーン収入を受領することが期待されます。また、イノバセルは当該契約先企業と共同で販売促進活動を行なって製造委託先で製造した製品を医薬品卸企業に販売し、製品卸売収入を得る計画です。<日本におけるICEF15事業系統図(想定)> <欧州におけるICEF15事業系統図(想定)> ICEF15について、米国においても欧州と同じ商業化サービス提供企業への委託を想定しておりますが、商業製造についても外部に委託する点が欧州と異なります。 <米国におけるICEF15事業系統図(想定)> <ご参考:Co-Promotionモデルとライセンスアウト・モデルの比較> ICEF15以外のパイプラインについては、今後の開発の進捗を踏まえながら最適なビジネスモデルを構築する方針です。ICEF15同様、薬事承認取得に至るまでの開発を自ら行う計画であるものの、開発費負担の軽減などを目的として開発途中のパイプラインをライセンスアウトした場合、下図のようなビジネスモデルが想定されます。この場合、イノバセルは対象パイプラインの商業化権を製薬企業に譲渡し、その対価として契約締結時一時金、開発協力金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入のいずれかまたは全てを受領することになります。日本及び米国のモデルと欧州のモデルとの違いはライセンスアウト先が商業製造を受託するかどうかという点であり、商業製造を受託する欧州ではイノバセル子会社が製造受託収入を得ることが想定されます。 <ICEF15以外のパイプライン(日本または米国においてライセンスアウト・モデルを採用した場合)> <ICEF15以外のパイプライン(欧州においてライセンスアウト・モデルを採用した場合)> <イノバセルグループの主な収益> 収益種類内容A製品卸売収入製品を医薬品卸企業に対して販売した対価として得られる収入B製品販売収入製品を医療機関に対して販売した対価として得られる収入C契約締結時一時金共同販売促進提携契約やライセンスアウト契約などを締結した時に一時金として得られる収入D開発協力金パイプライン開発費用のうちライセンスアウト先負担分として受領する収入Eマイルストーン収入開発や販売の進捗に応じて設定されたマイルストーンを達成するごとに一時金として得られる収入Fロイヤリティ収入ライセンスアウト先製品売上高の一部をロイヤリティとして受け取る収入G製造受託収入製品製造を受託した対価として得られる収入 ④ 各パイプラインの進捗状況 現在イノバセルグループは、失禁領域(便失禁、尿失禁)をターゲットとする下記3つの自家細胞治療製品から成るパイプラインの研究開発に取り組んでおります。・ICEF15(ターゲット疾患:切迫性便失禁)・ICEF16(ターゲット疾患:漏出性便失禁)・ICES13(ターゲット疾患:腹圧性尿失禁) これら研究開発パイプラインのうちで最も進んだ開発ステージ(第Ⅲ相国際共同治験)にあるのは、切迫性便失禁をターゲットとするICEF15です。また、腹圧性尿失禁をターゲットとするICES13は欧州において後期第Ⅱ相臨床試験を終えた段階にあります。漏出性便失禁をターゲットとするICEF16は、現在第Ⅰ/Ⅱ相試験準備を行なっている段階です。 ICEF15について、欧州においてもイノバセルグループは薬事承認取得に至るまでの開発を自ら行いますが、薬事承認取得後に必要となるマーケティング・販売機能に関しては外部提携先に委託する計画です。現在想定している外部提携先は、これまでに終了した臨床試験をもとに薬事承認取得及び商業化に必要なサービスを一気通貫かつ統合的に提供する企業であり、商業化権を製薬企業等に譲渡する「ライセンスアウト」方式、自前で販売・マーケティングに必要な組織及びインフラを構築して商業化した製品を自ら販売する「自販」方式のいずれでもない第三の商業化選択肢を提供しています。具体的にはInnovacell GmbH(イノバセル子会社)が当該外部提携先と商業化サービス契約を締結し、当該商業化サービスを活用しながら製品を病院に販売して製品販売収入を得る想定です。また、Innovacell GmbHが既にGMP製造施設を有していることから、欧州においては薬事承認取得後も同社においてICEF15の商業製造を行う計画です。日本及び米国に関して一定期間経過後は外部提携先に製造を委託する予定です。欧州において外部提携先との契約に基づく一時金収入等の受領は想定しておりませんが、グループ内で商業製造を行うことによって外部に製造委託する場合よりも高い収益性を確保する可能性を念頭に置き、現在契約締結に向け各社と協議中です。 (3)イノバセルグループの特徴 事業モデルの基盤となっているイノバセルグループの特徴は以下のとおりです。① バリューチェーンの各段階において常にグローバル市場を対象としていること イノバセルグループの起源は、2000年にオーストリア共和国のインスブルック医科大学からスピンアウトした細胞治療・再生医療研究開発企業Innovacell Biotechnologie GmbH(現Innovacell GmbH)に遡ります。この企業は、ヒト骨格筋細胞の培養における先進的な研究成果を基盤に設立され、以来、臨床応用を目指した細胞治療製品の開発に取り組んでまいりました。 イノバセルは、このオーストリア企業の親会社として、日本における資金調達及びグローバルな事業展開を加速させるべく、2021年1月に日本で設立されました。設立以来、日米欧の医療・バイオテクノロジー市場を対象とした戦略的な事業運営を行なっております。 また、イノバセルの取締役はオーストリア、米国、日本といった複数の国籍を持つメンバーが名を連ねており、それぞれが日米欧いずれかの地域で細胞治療・再生医療関連企業の経営に携わった経験を有しております。これにより、各地域の医療制度、規制環境、商習慣に精通した多角的な視点から、事業戦略の立案と実行が可能となっております。 このような背景から、イノバセルの事業運営は創業当初からグローバル志向であり、シーズの探索・発掘、パイプラインの研究や臨床開発、商業化といった各ステージにおいて、常にグローバル市場を視野に入れて活動しております。② 専門的知見・経験に裏打ちされた独自の調査・分析に基づくシーズの特定とパイプラインポートフォリオの構築 イノバセルグループは、細胞治療・再生医療分野における豊富な知見と実績を社内に蓄積しており、これらがイノバセルグループ事業戦略の基盤を形成しています。 まず、イノバセル代表取締役Co-CEO2名は、約10年にわたる細胞治療・再生医療薬事コンサルタントとしての経験を通じて、主に日本、米国、欧州の細胞治療・再生医療の研究開発シーズに関する包括的且つ実践的な知識を有しており、さらに国内外の細胞治療・再生医療関連企業の経営陣との間に強固な人的ネットワークを構築しております。これらはいずれもイノバセルグループの事業展開における重要なアセットとなっています。 加えて、イノバセル子会社のInnovacell GmbHは、20年以上にわたり細胞治療製品の研究開発に従事してきた企業であり、同分野における技術的・臨床的な知見を豊富に有しています。同社は、自社のGMPに準拠した製造施設と技術基盤を活用し、他社への製造技術の供与や研究開発用細胞治療製品の受託製造など、多様な形態での事業展開を行なってきた実績があります。 イノバセルは、これらの知見・経験を活かし、独自の調査・分析に基づいて、アンメット・メディカル・ニーズ(※6)が存在する疾患領域において、有望な商業化ポテンシャルを有するシーズを発掘し、研究開発パイプラインを構築・拡充しながら同時に全体としてのリスクヘッジも図るというポートフォリオの構築に取り組んでおります。 さらに、これらの知見・経験に基づいて世界各国の法規制の特徴や製品・製剤開発に必要な各種事業インフラの整備状況等を把握した上で、パイプラインそれぞれの開発を効率よく推進し、グローバル市場で商業化することを目指しております。 現在は、ターゲット疾患として失禁領域(切迫性便失禁、漏出性便失禁、腹圧性尿失禁)に焦点を当て、イノバセル子会社のInnovacell GmbHが研究開発を進めてきた3つのパイプラインの開発及び商業化に注力しております。③ 「個別のパイプラインに最適なビジネスモデルの構築」が付加価値となること 2000年代以降、世界各国で細胞治療・再生医療製品の商業化が進むと同時に、製造設備、品質管理、物流、薬事規制対応などの事業インフラが各国で整備されてきました。将来有望な市場であるが故に新規参入が相次ぎ、業界全体としては前向きなトレンドが続いています。一方で、なお成長過程にある産業であるため、各国における企業や規制当局の成熟度にはばらつきが生じており、国・機関・ベンダーごとに品質や運用、スピードが大きく異なるのが実情です。 その結果、「どのようにしてこれらの外部インフラの中から最適なものを選定・調達し、いかに低コストで早期に自社のパイプラインを商業化するか」が各国の細胞治療・再生医療関連企業に共通する重要課題の1つとなっています。即ち、何を内製し何を外製するか、どこと組むか、どの順序で拡張するか等の戦略立案と実行が、細胞治療・再生医療関連企業の競争力を左右します。 このような認識の下、イノバセルは、イノバセルグループ内に蓄積されている知見・経験・ネットワークを活用し、常にグローバルな視野で自社の各パイプラインの開発・商業化に必要な各種資源(スキル・人材、開発支援サービス、事業パートナー、資金)の組み合わせの最適化を目指しています。換言すると、イノバセルの付加価値は「個々のパイプラインに最適なビジネスモデルを構築して当該パイプラインを商業化すること」であるということができます。 (4)事業の内容① イノバセルグループ研究開発領域 現在イノバセルグループは、失禁領域(便失禁、尿失禁)をターゲットとするいずれも自家骨格筋由来の3種類の細胞治療製品から成るパイプラインの開発・商業化に取り組んでいます。 これらの研究開発パイプラインがターゲットとする失禁領域には、以下のような共通する特徴があります。A)アンメット・メディカル・ニーズが存在すること 失禁に対する既存の治療法は複数存在しますが,生活の質(QOL)を大きく低下させる病気ではあるものの、良性の病態である(生命を脅かす病気ではない)ことからできるだけ侵襲性(※7)の低い治療法から順に選択すべきとされています。 日本の便失禁診療ガイドラインによると、比較的軽度の失禁症状には保存的療法(食事・生活・排便習慣指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法など)が用いられますが、保存的療法で充分な改善が得られない場合には外科的治療が適用されます。 しかしながら、既存の外科的治療(肛門括約筋形成術、仙骨神経刺激療法など、下記参照)はいずれも侵襲性があり、また効果も限定的であるという報告もあり、必ずしも全ての患者さまには好まれないことが知られています。●肛門括約筋形成術:断裂した肛門括約筋(肛門を閉める筋肉)を縫い合わせる外科手術●仙骨神経刺激療法:心臓ペースメーカに似た刺激装置を体内に埋め込み、仙骨神経(排尿や排便に関わる感覚や運動を制御)を継続的に電気刺激する療法 したがって、保存的療法で充分な効果を得られない患者さまに対して治療効果が高くかつ侵襲性が低い新たな治療法が待ち望まれており、現在もアンメット・メディカル・ニーズが存在すると考えられます。 B)多くの潜在患者が存在すると推測されること 失禁とは、便または尿が漏れることをコントロールできない状態(無意識あるいは不随意な便または尿の漏れであり、それが社会的にも衛生的にも問題となる状態)と一般的に定義されています。 失禁は、日常生活に多大な影響を及ぼす症状でありながら患者さま自身が検査や治療を求めて医療機関を訪れることは比較的少なく、「Silent Affliction(言葉にされないままの悩み)」と呼ばれることがあります。その原因として、良性の疾患であること、患者さまが羞恥心などから他人に話すことに抵抗を感じること、治療によって症状が改善する可能性があることが患者さまのみならず医療関係者の間ですらあまり知られていないこと、などが挙げられます。 日本国内には約500万人の便失禁の患者さまが存在すると言われており(出所:日本大腸肛門病学会誌)、また日本人女性の約1,580万人が腹圧性尿失禁症状を有しているとされています(出所:Mitsui et al “Prevalence and impact on daily life of lower urinary tract symptoms in Japan: Results of the 2023 Japan Community Health Survey (JaCS 2023)”, International Journal of Urology (2024) 31,747-754 及び総務省統計局人口推計(2024年10月1日現在)よりイノバセル算出)が、上述の理由からこれら失禁に悩む方々の多くが適切な治療を受けていない状態にあると推測されます。つまり、失禁領域には多くの潜在患者が存在すると考えられます。 C)類似する競合品が少ないニッチセグメントであること イノバセルが開発している3つの研究開発パイプラインはいずれも患部である筋肉組織に細胞を注入(筋注)することによる治療法です。投与は単回投与を想定しています。したがって、薬事承認が取得できれば既存の外科的治療の中では最も侵襲性が低いものになると考えられます。また、現時点において日米欧いずれかで承認済みとなった競合品は存在しません。市場においては現在複数の細胞治療製品の研究開発が行われていることが知られておりますが、いずれもイノバセルパイプラインよりも遅れた開発ステージにあります。従いまして、イノバセルパイプラインは他の開発品よりも早く上市される可能性が高い点で先行優位性を有していると考えています。 ② 現在のイノバセルグループ研究開発パイプラインの全体像 現在イノバセルグループは、失禁領域(便失禁、尿失禁)をターゲットとする以下、3つの自家骨格筋由来の細胞治療パイプラインの研究開発に取り組んでいます。・ICEF15(ターゲット疾患:切迫性便失禁、用いる細胞の種類:自家骨格筋由来細胞(aSMDC))・ICEF16(ターゲット疾患:漏出性便失禁、用いる細胞の種類:自家骨格筋由来平滑筋細胞(skSMC))・ICES13(ターゲット疾患:腹圧性尿失禁、用いる細胞の種類:自家骨格筋由来細胞(aSMDC)) これら3つの研究開発パイプラインは、いずれも失禁症状の根本原因の1つである筋肉の機能を回復して根治を目指す治療法である点で共通しております。 これら研究開発パイプラインのうち、2つは臨床段階にあります。切迫性便失禁をターゲットとするICEF15は最も進んだ開発ステージである第Ⅲ相国際共同治験を2022年5月に開始しました。また、腹圧性尿失禁をターゲットとするICES13は欧州において2011年6月に後期第Ⅱ相臨床試験を終えた段階にあります。漏出性便失禁をターゲットとするICEF16は、現在第Ⅰ/Ⅱ相試験の準備を行なっている段階です。<イノバセルの研究開発パイプライン> ③ ICEF15の開発状況A)ターゲット疾患 ICEF15のターゲット疾患は切迫性便失禁です。 便失禁とは無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状と定義され、日本国内には約500万人の便失禁に悩む患者さまが存在すると言われています(出所:一般社団法人日本大腸肛門病学会ウェブサイト)。 便失禁症状は切迫性便失禁と漏出性便失禁及び両者が併存する混合性便失禁に分類されます。このうち切迫性便失禁は、便意を感じるもののトイレに行くまでの短い時間を我慢できずに便が漏れてしまう状態を主な症状とし、外肛門括約筋の機能低下が原因となって生じやすいとされています。専門学会誌に発表された論文(味村俊樹ほか「本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―」日本大腸肛門病会誌 65:101-108,2012)によると、便失禁患者さまのうち半数強(約51%)が切迫性の症状を有しています。 現在切迫性便失禁の診療においては、まず食事・生活・排便習慣の改善や薬物療法(便を固くする薬剤)などの初期保存的療法、及び骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法などの専門的保存的療法を行い、それらの効果が不十分な場合には、肛門括約筋形成術や仙骨神経刺激療法などの外科的治療が適用されます。しかしながら、これらの既存の外科的治療は侵襲性があること、また効果も限定的であるという報告があることなどを背景として必ずしも全ての患者さまには好まれないことが知られており、したがって、保存的療法で充分な効果を得られない患者さまに対する治療効果が高く、かつ侵襲性が低い新たな治療法が待ち望まれています。 B)開発製品の特徴イ)作用機序 ICEF15で使用する細胞は、患者さまご自身から採取して製造した自家骨格筋由来細胞(aSMDC)です。骨格筋由来細胞は筋組織の幹細胞である衛星細胞から分化、増殖させた筋芽細胞であり、注入された筋芽細胞は患部に残っている筋管(注:筋線維の単位)と融合して骨格筋の再生を促します。この細胞は、一旦筋管に取り込まれると、筋繊維の一部として長期にわたり外肛門括約筋の機能維持に寄与すると考えられています。*: 画像の出所-J Clin Invest.2010;120(1):11-19. https://doi.org/10.1172/JCI40373ロ)投与方法 ICEF15による治療は、麻酔を行い超音波ガイドに基づいて外肛門括約筋層に自家骨格筋由来細胞を12か所に分けて注入します。 現在進行中の臨床試験においては、ICEF15の投与前と投与後に、骨盤底筋電気刺激装置を使用し、1日2回(朝晩20分ずつ)それぞれ4週間の電気刺激を実施します。この電気刺激に用いる装置は欧州では既に承認されているものですが、日本においてはICEF15の承認と併せて当該装置の承認を得る計画です。 C)治験の状況 ICEF15ではこれまでに3つの臨床試験が完了しており、いずれも欧州で実施されました。 最初の試験は2007年から2008年にかけて第Ⅰ/Ⅱ相試験(医師主導試験;非盲検単群試験)として、移植手技の実行可能性と安全性の確認を目的に実施されました。本試験には分娩時損傷によって便失禁となった女性被験者10例が組み入れられました。その結果、試験は安全に実行可能であることが確認されたことに加えて、便失禁の重症度を評価するスケール及び便失禁頻度が細胞移植1か月後より明確に低下し、1年、5年後も再発することなく維持されることが示されました。 次に2011年から2012年にかけて、より幅広い対象として、外肛門括約筋の損傷や萎縮が原因で便失禁となった被験者を対象に、男性5例を含む計39例で第Ⅰ/Ⅱ相試験(企業治験;非盲検単群試験)が実施されました。その結果、先の試験と同様に細胞移植の安全性に懸念はなく、便失禁の重症度を評価するスケール、便失禁頻度、生活の質が細胞移植1か月後から改善し、1年間維持されることが示されました。 その後2013年から2016年にかけて、用量設定試験として多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(STEFFI試験;後期第Ⅱ相試験)が肛門管検査により外肛門括約筋に損傷あるいは機能低下が認められた便失禁患者を対象に男性19例を含む計237例で実施されました。その結果、本試験は対照群を含む高低2用量の計3群より構成されましたが、高用量群でプラセボ対照群と比較し、統計学的に有意なベースライン(投与前)からの便失禁頻度の低下が認められました。また、特に懸念すべき重大な副作用は報告されませんでした。試験終了後の層別解析において、より効果が期待できる患者集団を見い出すことができ、それは現在進行中の第Ⅲ相国際共同治験の選択・除外基準に反映されています。なお、上記3試験結果はいずれも以下の査読付き学術誌に掲載されています。 第Ⅰ相試験・Frudinger A, Kölle D, Schwaiger W, et al. Muscle-derived cell injection to treat anal incontinence due to obstetric trauma: pilot study with 1 year follow-up. Gut. 2010; 59(1): 55-61.・Frudinger A, Pfeifer J, Paede J, et al. Autologous skeletal-muscle-derived cell injection for anal incontinence due to obstetric trauma: a 5-year follow-up of an initial study of 10 patients. Colorectal Dis. 2015; 17(9): 794-801.・Frudinger A, Marksteiner R, Pfeifer J, et al. Skeletal muscle-derived cell implantation for the treatment of sphincter-related faecal incontinence. Stem Cell Res Ther. 2018; 9(1): 233. 第Ⅱ相試験・Frudinger A, Gauruder-Burmester A, Graf W, et al. Skeletal Muscle–Derived Cell Implantation for the Treatment of Fecal Incontinence: A Randomized, Placebo-Controlled Study. Clin Gastroenterol Hepatol. 2023; 21(2): 476-486. また、便失禁診療ガイドラインにおいて、「その他の外科治療」の1つに「肛門括約筋再生療法」が記載され、上記4つの論文が以下の書籍に引用されています。・便失禁診療ガイドライン 2024年版(改訂第2版),日本大腸肛門病学会 編集,南江堂 : p116-117 欧州での資金調達が長期化したこともあり、コーポレート・インバージョンによるイノバセルグループ再編後の日本での資金調達を行った上で、2022年5月より第Ⅲ相国際共同治験(Fidelia試験)が実施されています。本試験はプラセボ群と実薬群(STEFFI試験の高用量)からなり、参加国は欧州11ヶ国及び日本、目標症例数を290例(無作為割り付け)としています。2025年12月31日現在204例(前連結会計年度末は108例)が組入れられております。今後さらに米国を試験実施国に追加する準備を進めています。 なお治験製品は全てイノバセル子会社Innovacell GmbHの製造施設で製造されています。 コーポレート・インバージョンについての詳細は、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 (参考情報)コーポレート・インバージョンによるイノバセルグループ再編」をご参照ください。 D)商業化へ向けた取り組み状況イ)ターゲット疾患の治療におけるICEF15のポジショニング 日本の便失禁診療ガイドライン2024年版改訂第2版には「便失禁に対する外科治療のアルゴリズムは時代と共に変化しているが、良性の病態であるため、低侵襲な術式から順に選択すべきである」との記述があります。ICEF15を用いた治療法は患部に細胞を注入するものであり、侵襲性が低く、括約筋の再生という作用機序からも既存の外科的治療とは一線を画します。薬事承認が得られ治療実績が積まれた場合には、承認国の便失禁における外科的治療アルゴリズム(※8)において、ICEF15には外肛門括約筋の欠損や機能不全による便失禁に対する外科的手術の第一選択肢として位置づけられる可能性があると考えられます。ロ)商業化への取り組み 現在、日本及び欧州のそれぞれにおいて、商業化へ向けて、複数の企業と守秘義務契約及び基本合意書を締結し事業提携交渉を行なっております。 ④ ICEF16の開発状況A)ターゲット疾患 ICEF16のターゲット疾患は漏出性便失禁です。 漏出性便失禁は、便意を伴わず、気づかないうちに便を漏らす症状であり、内肛門平滑筋の機能低下により生じやすいと考えられています。専門学会誌に発表された論文(味村俊樹ほか「本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―」日本大腸肛門病会誌 65:101-108,2012)によると、便失禁患者のうち8割超(約84%)が漏出性の症状を有しています。切迫性便失禁と同様に、食事・生活・排便習慣の改善や薬物療法(便を固くする薬剤)などの初期保存的療法、及び骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法などの専門的保存的療法を行い、それら保存的療法の効果が不十分な場合には肛門括約筋形成術などの外科的治療が適用されます。ICEF16を用いた治療法は、ICEF15を用いた治療法と同様に、既存の外科的治療よりも侵襲性が低いものです。 B)開発中製品の特徴イ)作用機序 ICEF16で使用する細胞は、患者さまご自身から採取して製造した自家骨格筋由来平滑筋細胞(skSMC)です。平滑筋細胞を採取して十分な量を調製することは困難であるため、最初のステップとしてICEF15と同じ筋芽細胞を調製したのち、平滑筋細胞へ分化させます。この平滑筋へ分化した細胞の特性はin vitro(試験管内)及びin vivo(動物個体内)双方の試験で検証済みです。注入された平滑筋細胞は患部に残っている平滑筋と融合して再生を促します。ロ)投与方法 ICEF16については、内肛門平滑筋層に平滑筋細胞を注入する計画です。また、ICEF15と同様に、投与前後に電気刺激装置による電気刺激を実施し、投与した細胞の生着を促す計画です。 C)開発の状況 現在、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験開始を目指し非臨床試験を実施している段階です。 既に小動物(マウス)を使用した試験において、投与した骨格筋由来平滑筋細胞が投与部位の平滑筋に生着し、平滑筋としての機能を示すタンパク質を分泌することを確認しており、現在大動物(ミニブタ)を用いて同様の試験を実施しています。 ⑤ ICES13の開発状況A)ターゲット疾患 ICES13のターゲット疾患は腹圧性尿失禁です。 尿失禁で最も多いのは腹圧性尿失禁で、咳、くしゃみ、あるいは運動すること等によって腹腔の圧力が高まった時に自分の意志とは関係なく排尿してしまうことが主な症状です。日本人女性の腹圧性尿失禁の推定有病者数は約1,580万人です(出所:Mitsui et al “Prevalence and impact on daily life of lower urinary tract symptoms in Japan: Results of the 2023 Japan Community Health Survey (JaCS 2023)”, International Journal of Urology (2024) 31,747-754 及び総務省統計局人口推計(2024年10月1日現在)よりイノバセル算出)。こうした症状は、主に加齢や出産などで尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉(骨盤底筋群)が弱ったり、傷ついたりすることが原因で起こるとされています。 現行の治療法としては、保存的療法(骨盤底筋訓練、バイオフィードバック、ボールトレーニング等)や様々な薬物療法、外科的療法(外科手術や医療機器の埋め込み等)が挙げられます。 B)開発中製品の特徴イ)作用機序 ICES13で使用する細胞は、患者さまご自身から採取して製造した自家骨格筋由来細胞(aSMDC)です。注入された筋芽細胞は患部に残っている筋管と融合して括約筋の再生を促します。ロ)投与方法 ICES13を用いた治療法では、尿道括約筋層に自家骨格筋細胞を経尿道的に注入します。また、ICEF15と同様に、細胞の投与を併せて電気刺激装置による電気刺激を実施し、投与した細胞の生着を促します。 C)臨床試験の状況イ)これまでに終了した臨床試験・治験 現在までにICES13を用いた計4本の臨床試験において計669例の患者組入実績があり、このうちSUITE試験を後期第Ⅱ相臨床試験として、INNOVATION試験を第Ⅲ相国際臨床試験として、それぞれ実施いたしました。しかしながら、INNOVATION試験では、臨床試験管理を委託したCRO(臨床試験支援企業)が試験実施中に倒産したため、有効性に関する充分な結論を得ることができませんでした。ロ)後期第Ⅱ相臨床試験(SUITE試験)の結果 主要エンドポイント(※9)を達成し、臨床的且つ統計的に有意なレベルで腹圧性尿失禁の症状を抑制することが示されました。 ⑥ 知的財産権 イノバセルグループが出願した特許のうち、注入機器及び肛門失禁の治療法に関するものが既に成立しております。また、「筋由来の細胞を得る」方法や「骨格筋由来平滑筋細胞」に関する特許も出願しており、いずれも米国及び欧州において特許が成立しています。 なお、現在イノバセルグループが開発しているパイプラインを事業化した際に使用する予定の特許は全てInnovacell GmbH(旧社名名義での権利を含む)が所有あるいは適法に使用許諾を受けた権利です(※)。同社はこれまで実施した他社知財侵害調査(Freedom-to-operate調査)を通じて、当該パイプラインの事業化時期に鑑みたうえで、同社の知的財産権が他社の知的財産権を侵害したり、あるいは他社の知的財産権が同社の知的財産権を侵害したりしておらず、イノバセルグループの3つの研究開発パイプラインを事業化する上で必要な知的財産権が有効であることを確認しています。知的財産権のうち商標権については商号についての商標権を計3件をグループで保有しており、特許権についてはイノバセル子会社が保有しており、主な特許権の詳細は以下のとおりであります。 ・肛門失禁の治療方法(INC-001)(WO 2008/104883)(筋芽細胞を外肛門括約筋に注入することを内容とするもの)(欧州のみで成立)・筋由来細胞を得る方法(INC-012)(WO 2019/115790)(自家骨格筋由来細胞の製造工程に関するもの)(日米欧で成立)・誘導平滑筋細胞を得るための方法(INC-014)(WO 2020/193460)(自家骨格筋由来細胞の製造工程に関するもの)(日米欧で成立) 存続期間満了の時期を考慮すると、上記特許の内筋由来細胞を得る方法及び誘導平滑筋細胞を得るための方法が事業運営上より重要性が高いものと考えております。(※)特許を含む知的財産権の保有状況等については、第2 事業の状況 3事業等のリスク (10)知的財産権及び職務発明も併せてご参照ください。 <用語解説>番号用語意味・内容※1GMPGMPとは、Good Manufacturing Practice(適正製造規範)の略で、原材料の受け入れから製造、出荷まで全ての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるようにするための製造工程管理基準のことです。※2細胞治療細胞治療とは、患者さま自身の細胞(自家)または他人の細胞を(他家/同種)用いて疾患を治療する治療法です。投与された細胞の働きで疾患を治療するもの、投与された細胞が別の細胞に形を変え疾患を治療するものなど、様々な種類の細胞治療があります。※3再生医療再生医療とは、わたしたちの細胞が持つ再生力を活用して、傷ついた組織や失われた機能を元通りに戻すことを目的とした医療技術です。また、これまで治療が難しかったケガや病気の治療法へと応用できるよう現在も研究や開発がすすめられています。※4ATMP(Advanced Therapy Medicinal Products)ATMPとは、遺伝子、ヒト組織、または細胞を基盤とするヒト治療用製品のことであり、欧州医薬品庁の先進医療委員会によって指定されたものを指します。※5HCT/P(Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-based Products)HCT/Pとは、ヒト細胞またはヒト組織を含む、またはヒト細胞または組織から成る製品であり、ヒト患者に対して埋植、移植、注入または導入することを目的としたものです。※6アンメット・メディカル・ニーズアンメット・メディカル・ニーズとは、有効な治療法が存在しない、または既存の治療法が不十分である疾患に対する医療ニーズのことで、主に重篤な疾患や治療法が見つかっていない希少疾患が代表例ですが、それ以外でも、現在の治療法では患者さまの負担が大きいケース(用量・用法や副作用など)も含まれます。※7侵襲性侵襲性とは、医学用語で「身体にとって害のあること」であり、特に身体への害について指すことが多く、手術であれば身体にメスを入れること、薬であれば副作用の可能性も含めた治療法を指します。※8治療アルゴリズム治療アルゴリズムとは、特定の疾患に対し、どのような治療法が選ばれるかを様々な因子を考慮しながら決定していく判断基準です。通常は学会ごとに定める治療ガイドラインの中で示されます。※9エンドポイントエンドポイントとは、治験薬/治験製品の有効性や安全性を評価するための「ものさし」となる指標や評価項目のことです。客観性のある項目であることが求められます。特に重要な評価項目を主要評価項目(プライマリーエンドポイント)、それ以外を副次評価項目(セカンダリーエンドポイント)と呼びます。
有価証券報告書(2025年12月決算)の情報です。
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 イノバセルグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてイノバセルグループが判断したものであります。(1)経営方針 イノバセルは、ヒト細胞を用いた新たな治療製品・治療方法(細胞治療製品)を軸に幅広く医薬品・医療機器シーズを世界各国で探索・発掘し、それらのシーズを開発してグローバル市場において商業化することを通じて、患者さまの健康とQOLの向上に貢献することを目的としております。 細胞治療製品の研究開発を行う企業に多く見られるビジネスモデルとして、特定の技術やシーズ・パイプラインにフォーカスするモデルが挙げられます。これに対してイノバセルは、必ずしも特定の技術やシーズ・パイプラインにこだわることなく、専門的知見・経験・人的ネットワークに基づいて有望な商業化ポテンシャルを有する細胞治療・再生医療シーズをグローバルに発掘し、当該シーズに必要な事業インフラをグローバルに調達して自社パイプラインに組入れて開発を進めながら各パイプラインに最適なビジネスモデルを構築した上で商業化していくことで自らの収益ポートフォリオを構築・拡充する「細胞治療・再生医療グローバルアグリゲーションモデル」を採用しております。 (2)経営環境 世界には、目覚ましい進歩を遂げてきた医薬品・医療技術を以てしてもなお充分な治療を施すことができない「アンメット・メディカル・ニーズ(未充足の治療ニーズ)」が存在します。このようなアンメット・メディカル・ニーズを解消するため、従来の低分子化合物だけでなく様々な新規モダリティ(創薬基盤技術)の研究開発が進められてきました。ヒト細胞を治療に用いる細胞治療・再生医療もそういった新規モダリティの1つです。 原料となる細胞や細胞加工技術に関する研究開発の進歩を背景として、21世紀に入って細胞治療・再生医療製品の商業化が世界各国で本格化しました。またこのような商業化の流れとともに、細胞治療・再生医療の商業化に必要な事業インフラ(薬事法規制、受託製造施設、各種専門人材など)の整備が進み、細胞治療・再生医療の研究開発を手掛ける企業は、必ずしも全ての事業インフラを自社で賄う必要がなく、外部から提供される事業インフラを活用することによって自らのパイプラインを商業化することが可能な環境が整ってきました。ただし、これらの事業インフラの多くはそれぞれの領域に特化した専門プレーヤーによって提供されており、さらに間断ない技術の進歩によって常に新しい事業インフラが登場する状況です。一方で、事業インフラを提供する事業会社においては、各社の重点領域への特化がトレンドになっております。従って、細胞治療・再生医療製品を患者さまに届けるために必要となる事業インフラの確保にあたっては、個々のシーズに最適なインフラ提供者を見極めることが重要となっております。換言すると、世界各国の細胞治療・再生医療研究開発企業に共通する課題は「どのようにしてこれらの外部事業インフラの中から最適なものを選定・調達して自社のパイプラインを商業化するか」であると言うことができます。 イノバセル特有の事業環境を見ると、現在イノバセルグループは失禁領域(尿失禁、便失禁)をターゲットとする3つの自家細胞治療パイプラインの開発・商業化に取り組んでおりますが、この失禁領域には多くの潜在患者さまの存在が想定され、かつアンメット・メディカル・ニーズが存在します。一方で、失禁領域にはイノバセルパイプラインと類似する承認済み競合品が現在見当たらない状況となっております。 なお、イノバセルではICEF15の対象市場規模(患者数)について以下のとおり考えております。 便失禁とは無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状と定義され、日本国内には約500万人の便失禁に悩む患者さまが存在すると言われています(出所:一般社団法人日本大腸肛門病学会ウェブサイト)。 便失禁症状は切迫性便失禁と漏出性便失禁及び両者が併存する混合性便失禁に分類されます。このうち切迫性便失禁は、便意を感じるもののトイレに行くまでの短い時間を我慢できずに便が漏れてしまう状態を主な症状とし、外肛門括約筋の機能低下が原因となって生じやすいとされています。専門学会誌に発表された論文(味村俊樹ほか「本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―」日本大腸肛門病会誌 65:101-108,2012)によると、便失禁患者さまのうち半数強(約51%)が切迫性の症状を有しています。 イノバセルは、日本における便失禁市場の実態を把握するために、イノバセルの依頼により有償で実施された外部調査機関(株式会社マクロミル)によるインターネット調査を2022年9月に行いました。同アンケート結果に基づき、2ヶ月に1回以上(下着にシミ程度のみの場合を除く)便失禁がある方の人数をウェイトバック集計し、受診状況ごとに試算を行ないました。また、高頻度で便意を感じる方のうち、保存的治療の効果が不十分と回答した方の割合を受診状況ごとに算出し、それぞれの割合を乗じて合計することでICEF15の対象市場規模(患者数)を予測しました。 その結果、日本におけるICEF15の対象市場規模(患者数)を約12万人と推定しております。なお、同じ調査の結果に基づいてイノバセルでは年間新規発生率を人口の1.56%(新規発症患者数/対象市場規模(患者数)、2020年)と推定しており、アンメットメディカルニーズがある現状では新規発生者の多くが毎年市場に追加されており、市場規模は拡大基調にあるものと見ております。 欧州及び米国については、上述のようなインターネット調査を実施しておりませんが、日本との人口比(それぞれ約3.6倍(欧州連合(EU)、2025年)、約2.7倍(米国、2025年))を乗じて以下のとおり市場規模(対象患者)を推定しております。なお、欧州及び米国においても、アンメットメディカルニーズがある現状では新規発生者の多くが毎年市場に追加されており、市場規模は拡大基調にあるものと考えております。●日本:約12万人●欧州:約43万人●米国:約32万人 (3)経営戦略等 イノバセルは「細胞治療・再生医療グローバルアグリゲーションモデル」を基本的な事業モデルとして採用し、このモデルに基づいて個別のパイプラインの研究開発を推進し、さらにそれらパイプラインについて個々の開発に最適なモデルを選択してそれらの商業化を推進していく方針です。 現在イノバセルグループが取り組む3つの自家細胞治療パイプラインにおいては、最優先課題として、まずは欧州及び日本で第Ⅲ相国際共同治験を実施しているICEF15の日欧薬事承認取得に注力いたします。また、世界最大の市場規模を有する米国においてもICEF15の第Ⅲ相国際共同治験の参加国として組み入れる準備を並行して進めており、ICEF15のグローバルな商業化による早期の事業収益獲得を目指します。 またICEF15に続くパイプラインの開発として、ICEF16の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験開始準備、既に後期第Ⅱ相臨床試験を実施したICES13の臨床開発推進に戦略的に取り組みます。ICEF15を上回る市場規模が期待される漏出性便失禁をターゲット疾患とするICEF16は、販売時に同じ便失禁の一種である切迫性便失禁をターゲット疾患とするICEF15とのクロスセリングが期待できるパイプラインです。腹圧性尿失禁をターゲットとするICES13は、ICEF15と同じ細胞ソース(自家骨格筋由来細胞)を用いて同じ種類の筋肉組織(骨格筋組織)に作用することを想定しており、開発が先行しているICEF15が先に薬事承認を取得した場合にはICES13の開発成功確率も高まると考えられます。 さらにこれらの活動と並行して、イノバセルは研究開発パイプラインを拡充すべく新たなシーズ探索をグローバルレベルで継続しています。その第一弾として、2023年より開始された杉山庸一郎教授(現、佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)との共同研究である「筋芽細胞移植による嚥下機能改善効果の検証についての基礎研究」があります。この共同研究はICEF15の適応拡大可能性を模索する活動の一環です。近年の人口高齢化に伴って、日本では加齢に伴う嚥下機能低下を有する高齢者が増加しており、高齢者が罹患する肺炎の約7割が誤嚥性肺炎であるとされています。またがんに対する化学療法や放射線療法の発達によってがん生存率が上昇傾向にある一方で、摂食嚥下障害を有するがんサバイバーの増加が予想されています。このような嚥下障害者の増加は、日本に限らず高齢化が進む世界各国の共通課題であると考えられます。 このような新しい研究開発パイプラインの拡充は「細胞治療・再生医療グローバルアグリゲーションモデル」における研究開発シーズの「仕入れ」にあたります。パイプラインの拡充については、将来期待収益の拡大、特定パイプラインへの依存の回避を通じたリスクヘッジ、細胞治療・再生医療製品に関する広範かつ深い知見・ノウハウの獲得など、多くの戦略的メリットが期待されます。 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 上述の経営戦略の推進にあたり、イノバセルグループが優先的に対処すべき課題として以下のものが挙げられます。① 日本におけるICEF15薬事承認取得及び承認取得後商業化体制の構築 日本におけるICEF15第Ⅲ相国際共同治験については、20~30例を目途とした患者さま組入れを現在進めているところであり、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページにおける主たる治験情報リスト(加工細胞等)に記載されております。 日本におけるICEF15の商業化については、事業価値最大化と実行難易度の両面から最適なモデルを検討しております。現在複数の医薬品関連企業と法的拘束力を有しない基本合意書を締結して具体的な販売・マーケティング提携交渉を進めており、また複数の製造受託企業と守秘義務契約を締結して製造委託へ向けた交渉を行っているところです。 また、イノバセルは、2024年11月19日付けでアルフレッサ株式会社と業務提携基本契約を締結し、ICEF15の日本国内における独占的卸売販売権等を同社に対して付与いたしました。これにより、開発が最終段階に入っているICEF15の日本における販売に向けた流通体制の整備を着実に進める方針です。さらに、アルフレッサ株式会社とは、当該提携を通じて、日本国内におけるICEF15の商業化及びICEF15以外のパイプライン製品の製造・卸売販売等に関する協業に向けた検討を進めていく方針です。② 欧州におけるICEF15薬事承認取得及び承認取得後商業化体制の構築 欧州においては、日本に先行して、2022年5月よりICEF15第Ⅲ相国際共同治験への患者組み入れを進めております。 また、欧州におけるICEF15の商業化準備も推進しており、欧米において医薬品・再生医療等製品の商業化サービスを包括的に提供している企業との間でタームシートを締結した上で、現在本契約締結へ向けた交渉を行なっているところです。③ 米国におけるICEF15第Ⅲ相国際共同治験の開始 世界最大の国別市場である米国におけるICEF15第Ⅲ相国際共同治験の実施については、2025年7月から米国FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)とのType B Meeting(臨床試験開始前段階の協議)及びType C Meeting(製造に関する協議)を開始しました。また、並行して米国におけるICEF15の商業化準備も推進しており、上述の欧州における交渉先企業との間でタームシートを締結した上で、現在本契約締結へ向けた交渉を行なっているところです。④ ICEF16・ICES13の臨床開発の推進 漏出性便失禁をターゲット疾患とするICEF16については、2026年における第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の開始へ向けた準備作業が推進中です。 腹圧性尿失禁をターゲットとするICES13は、これまでに後期第Ⅱ相臨床試験まで完了しています。今後ピボタル試験(主たる試験)の実施へ向けた準備を進める予定です。⑤ 研究開発パイプラインポートフォリオの拡充 イノバセルグループの主要メンバーが日米欧の細胞治療・再生医療関連パートナリングイベント・学術会議等に積極的に参加し、最新情報の収集とパイプライン拡充機会の探索に努めております。 その第一弾として、2023年より開始された杉山庸一郎教授(現、佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座)との共同研究である「筋芽細胞移植による嚥下機能改善効果の検証についての基礎研究」があります。さらに、現在複数の研究開発シーズに関する導入交渉を行なっております。⑥ 資金調達及び自己資本の充実 上述のICEF15商業化準備、自家細胞治療パイプラインの開発推進・加速、及び更なる研究開発パイプラインの拡充などを行うために、イノバセルグループは適切なタイミングで着実に資金調達を行なっていく必要があります。また、債務超過状態を避けるために、イノバセルグループはこういった研究開発投資及び商業化準備投資に応じて適切なタイミングで着実に自己資本の充実を図っていく必要があります。 イノバセルグループはシリーズD資金調達活動の完了及び株式会社東京証券取引所グロース市場への上場により当面の所要資金を確保しましたが、引き続き必要資金の調達、資金調達手段の拡充、及び自己資本の充実を図っていく方針です。なお、上述のICEF15の事業提携交渉は、契約一時金やマイルストーン収入を通じた資金調達活動及び自己資本充実活動としての側面も有します。⑦ 組織体制の強化、人材の獲得 イノバセルは、作業のデジタル化や外部リソースの活用に積極的に取り組むことで小規模な組織体制による効率的運営を実現しておりますが、今後上述のような事業活動をおこなっていくためには組織体制の強化と適切な人材の獲得を行なっていく必要があります。イノバセルでは継続的に必要な人材の採用を行ない、小規模組織の長所を維持しつつ組織体制の拡充に努めております。 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 現在イノバセルグループが取り組んでいる研究開発パイプラインはいずれも商業化以前の段階にあり、最も開発ステージが進んでいるICEF15については現在日本と欧州で第Ⅲ相国際共同治験を行なっているところです。 この状況を踏まえて、イノバセルは、財務指標ではなく、研究開発パイプラインの進捗状況(特にICEF15第Ⅲ相国際共同治験をはじめとする開発ステージの進捗状況)によって、経営目標の達成状況を把握することとしております。 研究開発パイプラインの進捗状況につきましては、「3 事業の内容 (4)事業の内容 ②現在のイノバセルグループ研究開発パイプラインの全体像」をご参照ください。
事業等のリスク
3【事業等のリスク】 イノバセルグループの事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。 これらの事項の中にはイノバセルグループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくはイノバセルグループの事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。 イノバセルグループはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、イノバセル株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、更にこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意頂く必要があると考えます。なお、文中の将来に関する記載は、本書提出日現在においてイノバセルグループが判断したものであります。なお、社内の情報共有体制やリスク管理体制の整備状況については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの概要」を参照ください。(1) 継続企業の前提に関する重要事象等(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:大) イノバセルグループは、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、長期に亘って先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては継続的な営業損失の発生や営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる傾向があり、2025年12月期の連結営業損失は2,231,686千円、同連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは△1,995,296千円となっています。そのため、安定的な収益が見込まれるまでは外部からの資金調達に依存せざるを得ない状況であり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると外形的に判断されると考えております。当該状況を改善するための対応策として、資本の増強、必要に応じた支出のコントロール及び開発が最も進んでいるパイプラインであるICEF15の第Ⅲ相国際共同治験の推進を行ない、財務状況の安定化と開発の進捗に取り組んで参りました。例えば、2024年12月期においては株式及び新株予約権の発行により2,215,825千円の資金調達を行ない、2025年12月期においても株式及び新株予約権の発行により4,280,328千円の資金調達を行なうことで、2025年12月31日時点の連結貸借対照表上の現金及び預金の残高は4,101,476千円となっており、当面(一年超)の必要資金は十分に確保できていると考えております。また、イノバセルは2026年2月24日に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場し、追加の資金調達を行いました。これらを踏まえて、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断し、連結財務諸表等への注記は記載しておりません。 (2) 新製品開発の不確実性(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:中~大) 細胞治療製品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要しますが、治験で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を行うことは稀ではありません。また、国内への展開においては薬事関連法規等の法規制の適用を、また国外への展開においては国内薬事関連法規等と同様の法規制の適用を受けており、新製品の製造及び販売には当局の厳格な審査に基づく承認を取得しなければならないため、有効性、安全性、及び品質等に関する十分なデータが得られず、予定していた時期に上市ができず延期になる、または上市を断念する可能性があります。 これはイノバセルグループの研究開発パイプラインを他社にライセンスアウトした場合も同様であり、イノバセルグループが研究開発を行った細胞治療製品候補及び他社にライセンスアウトした細胞治療製品候補の上市が延期または中止された場合、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、現在のイノバセルグループの研究開発パイプラインのうちICEF15とICES13は同じ種類の細胞(自家骨格筋由来細胞)を原料としており、ICEF16の原料細胞(骨格筋由来平滑筋細胞)の培養工程の一部はICEF15とICES13の原料細胞(自家骨格筋由来細胞)の培養工程と共通です。また作用機序も括約筋の再生において共通です。このようにイノバセルグループのパイプラインの開発を進めることは、製造技術、品質管理及び安全性情報の蓄積が図られ、これらは後発のプロジェクトへ活かされることから効果的なリスク回避策であると言えます。また、1つのパイプラインで有効性が確認されなかった場合でも各パイプラインにおける対象疾患の病態は異なることから、他のパイプラインの有効性に大きな懸念を生じさせるものではありません。 (3) 原材料由来ウイルス感染、副作用発現、製造物責任(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン治験開始以降、想定影響度:小) イノバセルグループが開発している細胞治療製品は、原材料や製造工程で使用する培地に動物由来原料を使用しており、この動物由来原料の使用によって未知のウイルスによる被害等が発生する可能性を否定できません。また、このリスクがイノバセルグループの事業及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性は否定できません。 細胞治療製品には、治験段階から更には上市以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。イノバセルグループは、自社で治験を実施する場合には、こうした事態に備えて賠償責任に対応するための適切な保険に加入しておりますが、最終的にイノバセルグループが負担する賠償額の全てに相当する保険金が支払われる保証はありません。また、イノバセルグループに対する損害賠償の請求が認められなかったとしても、製造物責任請求等がなされたこと自体によるネガティブ・イメージにより、イノバセルグループ及びイノバセルグループの研究開発活動及び製品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。この結果、イノバセルグループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (4) 重要な契約等(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小~中) イノバセルの経営上重要と考えられる契約の概要は、「5 重要な契約等」に記載しておりますが、当該契約が解除やその他の理由に基づき終了した場合や、イノバセルにとって不利な改定が行われた場合、又は契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が大きく変更されたりした場合には、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を与える可能性があります。なお、「5 重要な契約等」に記載しているEIBローンの契約内容及び会計処理の概要については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。 (5) 製造・販売体制に関する不確実性(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小~中) イノバセルは、研究開発活動において成果をあげることにとどまらず、その後の商業化までを視野に入れて事業を推進していくことを計画しております。 細胞治療・再生医療製品の開発においてはCMC(製品規格設定、製造、品質管理)が重要とされておりますが、イノバセルグループではイノバセル子会社Innovacell GmbHが自社でGMP製造施設を保有・運営して製品開発等に活用し、またICEF15第Ⅲ相国際共同治験用製品の製造を行なっております。また、イノバセルは日本におけるICEF15の商業化を見据えた商業生産体制及び上市後物流体制の構築に向けた具体的な準備を行なっております。 しかしながら、細胞治療製品の製造や物流には、多種多様な技術が必要となり、今後、何らかの理由で製造・物流方法の確立、製造・物流体制の構築等が困難となった場合には、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、イノバセルはICEF15の販売・マーケティング体制の構築に着手しており、日本、欧州、米国の各地域に関する販売・マーケティング提携交渉を進めております。また、日本において複数の製造受託企業と守秘義務契約を締結して製造委託へ向けた交渉を行っているところです(現在の契約交渉状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」を参照ください。)。なお、上市から数年間は自社での製造を想定しております。しかしながら、こうした取り組みがイノバセルの想定どおりに進まず相手先が決まらなかった場合、相手先との契約条件がイノバセルの想定通りにならなかった場合、相手先が契約条件を変更した場合、製造委託後に相手先に品質管理・安全管理上の問題が生じた場合、あるいは相手先に何らかの問題が発生して販売・マーケティング・製造がイノバセルの想定通りに進まない場合などには、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (6) マイナスの繰越利益剰余金の計上及び債務超過(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルグループは、細胞治療・再生医療製品の研究開発を主軸とする企業グループです。細胞治療・再生医療製品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、研究開発段階の企業が当該事業に取り組む場合は一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあります。イノバセルグループも創業以来継続的に営業損失及び当期純損失を計上しており、2025年12月期の連結営業損失額は2,231,686千円、同連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは△1,995,296千円です。 イノバセルグループは、細胞治療・再生医療製品を中心とする研究開発パイプラインの開発を推し進めることにより、将来の利益拡大を目指しています。しかしながら、イノバセルは設立以来当期純損失を計上しており、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、イノバセルグループ事業が計画通りに進展せず当期純利益を獲得できない場合には、利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性や債務超過になる可能性があります。なお、2025年12月31日時点の連結貸借対照表上の純資産合計は△630,254千円となっておりますが、2026年2月24日の東京証券取引所グロース市場への株式上場による資金調達により債務超過は解消しております。 (7) 資金繰り(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:大) イノバセルグループは、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、また研究開発費用の負担により長期に亘って先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては継続的に営業損失を計上して営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があり、2025年12月期の連結営業損失額は2,231,686千円、同連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは△1,995,296千円です。イノバセルグループにおいても営業キャッシュ・フローのマイナスが続いており、かつ現状では安定的な収益源を十分には有しておりません。 このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、毎月の必要資金を勘案、資金繰り管理に取り組みながら最も研究開発が進んでいるICEF15に注力し、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、イノバセルグループ事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。なお、2025年12月31日時点の連結貸借対照表上の現金及び預金の残高は4,101,476千円となっており、2026年2月24日の東京証券取引所グロース市場への上場により、追加の資金調達を行いました。 (8) 調達資金使途(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小) 上場時の公募増資により調達した資金は、細胞治療・再生医療製品の研究開発を中心とした事業費用(研究開発資金、ローン返済資金及び運転資金等)に充当する計画です。但し、新薬開発に関わる研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はありません。また、イノバセルグループは、今後新規の研究開発パイプラインを獲得する場合にもその研究開発費用に上場時調達資金を充当していく方針です。ただし、急激な外部環境の変化などに対応するために現時点において想定している資金使途以外の使途に上場時調達資金を充当する可能性があります。公募増資による調達資金使途が変更になった場合には、適時適切に開示を行います。 これらの事象の結果として、調達した資金が期待される利益に結びつかない可能性があります。 (9) 収益が大きく変動する傾向(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:中~大) イノバセルグループの事業収益は、事業会社との新規提携契約の契約一時金、研究開発、製品販売の進捗に伴うマイルストーン収入や製品販売の売上推移等への依存度が高いため、当面の業績は不安定に推移することが見込まれます。この傾向は、イノバセルグループの開発品が上市され安定的な収益基盤が確立するまで続く見込みです。 また、所定の成果達成に基づくマイルストーン収入などの発生時期は開発や製品販売の進捗などに依存した不確定なものであり、開発や製品販売に遅延が生じた場合には、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 さらに、イノバセルグループが手掛けている研究開発パイプラインの販売・マーケティングをライセンシングや販売提携等を通じて医薬品企業等に委ねる場合、ライセンシング先企業・提携先企業の販売・マーケティング実績がイノバセル計画と乖離し、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 なお、イノバセルグループでは今後、複数の研究開発パイプラインの商業化・収益化に努め、最も開発が進捗しているICEF15への収益依存度を低減していく方針ですが、この方針もICEF15以外のパイプラインの開発の進捗に依存した不確実なものであり、これらの開発に遅延が生じた場合には、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (10) 知的財産権及び職務発明(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルグループでは研究開発を始めとする事業展開において様々な知的財産権を使用しており、これらはイノバセルグループ所有の権利(旧社名名義での権利を含む)であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であります。 イノバセルグループ会社が主導して研究開発を行なってきたICEF15などのパイプラインを日本国内で展開するにあたっては、当該パイプラインの事業化に必要な知的財産権を有するイノバセルグループ会社(完全子会社)とイノバセルとの間でライセンス契約を締結する必要があります。ただし、これらのパイプラインは現時点でいずれも事業化以前の段階にあり、グループ内での適切な知的財産の管理方法等について検討を行なっているところであるため、イノバセルグループ会社とイノバセルとの間で知的財産権に関するライセンス契約をまだ締結しておりません。各パイプライン事業化までの適切なタイミングで必要に応じて当該ライセンス契約を締結する予定です。事業化までの適切なタイミングで当該ライセンス契約に係る議論を終結できなかった場合には、イノバセルグループの事業運営、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、一旦締結したライセンス契約や使用許諾契約が解除された場合には、イノバセルグループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。(ただし、契約が解除されるのは、イノバセルグループの債務不履行が発生し、その状態が改善されない場合などに原則として限定されると考えられます。) 一方、イノバセルグループが保有している現在出願中の全ての特許が成立する保証はなく、また、特許権が成立した場合でも、イノバセルグループの研究開発を超える優れた研究開発により、イノバセルグループの特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しております。イノバセルグループの特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、イノバセルグループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、イノバセルグループでは他社の特許権の侵害を未然に防止するための特許調査について第三者(特許事務所)を起用して実施しており、現時点でイノバセルグループの開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で侵害訴訟は発生しておりません。しかし、イノバセルグループのような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、イノバセルグループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 イノバセルグループにおける職務発明の取扱いに関しては、関連法規制を遵守し社内規程を適宜制定・運用して、当該規程に従い発明者に対して相当の対価を支払うこととしております。しかしながら、職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、イノバセルグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を与える可能性があります。 (11) 小規模組織及び少数の事業推進者への依存(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:中) イノバセルは、2025年12月末現在、取締役5名、監査役3名及び従業員13名の小規模組織(グループ全体では取締役5名、監査役3名、従業員48名)であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっています。今後、業容拡大に応じて人員の増強や内部管理体制の拡充を図る方針ですが、想定どおりに人材の確保ができない場合や人材の流出が生じた場合、又は社内管理体制に不備が生じた場合には、研究開発の推進や社外との提携関係の構築に支障が生じるなど、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、イノバセルグループの事業活動は、イノバセル代表取締役Co-CEOであるノビック・コーリン及びシーガー・ジェイソンをはじめとする現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に大きく依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、イノバセルグループの事業活動に支障が生じ、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (12) 世界的な事業展開(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小~中) イノバセルは、イノバセルが手掛けている各研究開発パイプラインが、それぞれアンメット・メディカル・ニーズを充足して、日本及び世界各国の患者さまの治療に貢献するものであると考えております。 また、イノバセルグループはもともと国際的な出自を有しており、当初より世界的な事業展開を視野に入れております。既にICEF15の第Ⅲ相国際共同治験を欧州11ヶ国及び日本を対象とする国際共同治験として実施していることは、その端的な表れです。 しかしながら、このような世界的な事業展開や海外子会社管理に際しては、一般的に、海外子会社の所在国を含め、事業展開する各国特有の法的規制や外資規制、取引慣行等によって必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、イノバセルグループの事業展開が何らかの制約を受ける可能性も考えられ、その場合、イノバセルグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、為替の変動に応じて、海外における開発費用や収益等が増減する可能性も考えられ、その場合には、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 なお、現時点において、イノバセルグループが取り組んでいる研究開発パイプラインはいずれも商業化以前の段階にあり、臨床試験に関しては各地域の規制当局の指示に従って手続を行なっております。また、適宜法律の専門家を活用することで現地法規制に関する情報収集を行なっており、現時点において特段の問題は認識しておりません。 (13) 研究開発パイプライン導入の不確実性(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルは、イノバセルグループの強みを活かして、有望な商業化ポテンシャルを有する細胞治療・再生医療研究開発シーズや医療機器を全世界から探索・発掘し、その商業化に必要な経営資源(スキル・人材、外部インフラ、事業パートナー、資金など)を見極めて全世界からそれらを調達して提供し、商業化への「出口」を確保することを自らのミッションとしております。 イノバセルは、イノバセル代表取締役Co-CEOを始めとするイノバセルグループ役員・社員が構築している国内外細胞治療・再生医療関連企業とのネットワークを活用して、新しい研究開発パイプラインの導入に積極的に取り組む方針です。 ただし、新しい研究開発パイプラインの導入にあたっては相手先との交渉が必要であり、導入にあたっての各種条件(時期、対象地域、対価、費用分担など)も相手方との交渉に依存します。従って、パイプライン導入交渉がイノバセルの想定どおりに進まず導入が実現しない場合、相手先との契約条件がイノバセルの想定通りにならなかった場合、あるいは相手先に何らかの問題が発生して導入交渉がイノバセルの想定通りに進捗しない場合などには、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (14) 風評上の問題の発生(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルグループは、研究開発における安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、イノバセルに関してマスコミ報道などにおいて事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (15) 競合(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小~中) 最先端の医療の一種である細胞治療・再生医療については、盛んにイノベーションが生まれており、日々新しい知識や技術が発見されております。また、細胞治療・再生医療製品の研究開発は、国内外の製薬会社やバイオベンチャー企業との激しい競争の下で行われております。現在イノバセルが手掛けている3種類の研究開発パイプラインについては現時点で有力な承認済み競合製品が見当たらないと認識しておりますが、今後競合製品が開発されたり上市されるリスクが存在いたします。またそういった競合品の上市後の販売価格や販売シェアによっては、イノバセルが得る収入が減少するリスクや事業性の観点から提携先企業がイノバセルグループとの契約を終了するリスクが存在いたします。このようなリスクが顕在化した場合、イノバセルグループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (16) 為替変動(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小~中) イノバセルグループの主たる研究開発は、現在オーストリア子会社を拠点として行なっております。オーストリア子会社の取引通貨はユーロであり財務諸表も当該通貨で作成されます。従いまして、連結財務諸表を作成する過程において、当該財務諸表は、外貨建取引等会計処理基準に沿って日本円に換算されるため、大幅な為替相場の変動があった場合には、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (17) 国際税務(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小~中) イノバセルグループは、2021年2月にコーポレート・インバージョンを実施し、現在は日本法人であるイノバセルとオーストリア法人であるInnovacell GmbHの2社で構成されております。このため、親子間の資本関係や取引関係から生ずる課税上の取扱いについては、国際税務、具体的には日本・オーストリア両国の税法及び日本・オーストリア間の租税条約の適用を受けることとなります。 イノバセルグループは、日本・オーストリア双方の税務につき、税理士等の専門家と顧問契約を締結し、税務情報の収集や税務リスクの排除に努めておりますが、現状イノバセルグループが想定していない国際税務リスクが潜在的に存在している可能性、及び将来的にイノバセルグループに不利となる国際税務関連の税制改正が行われる可能性を否定できません。仮にこれらの可能性が顕在化した場合には、追徴税額を含めた将来の税負担額が増加し、イノバセルグループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、イノバセルグループの状況に照らして、現時点においては特段の問題がないことを税理士等の専門家に確認しております。 (18) 医薬品に関する法規制への改正等(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) 細胞治療製品を含む医薬品に関する薬事法規制については、技術の革新の状況や予期し得ない事態の発生等に対応して、継続的に見直しがなされる可能性があります。イノバセルグループは、そうした見直しにいち早く対応すべく体制の整備に努めておりますが、法規制の追加や法改正の内容如何によっては、これまで認められてきた品質管理基準を上回る品質管理が求められるなどの理由によって、研究開発計画の変更を余儀なくされたり、研究開発スケジュールが当初の計画から大幅に遅れたり、多額の設備投資が必要となるなどの事態が生じる可能性があります。このような場合においては、イノバセルグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (19) 市場規模(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小~中) 現在イノバセルが手掛けている主要研究開発パイプラインのターゲット疾患である便失禁・尿失禁には、「Silent Affliction(言葉にされないままの悩み)」と呼ばれるような特性から、潜在患者数が多いと推測されます。従って、大きな市場ポテンシャルが期待される一方で、市場規模について正確な見通しを立てることには困難が伴います。イノバセルの見通しと将来顕在化する市場規模との間に乖離が生じた場合、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (20) 国家による医療費抑制策(発生可能性:小~中、顕在化する可能性のある時期:各パイプライン市販後、想定影響度:小~中) 世界の細胞治療・再生医療製品市場の主要国においては、医療費抑制策が強化されております。また、日本国内においても、政府は増加の続く医療費を抑制するため、定期的に薬価引き下げを実施するほか、後発品の使用促進策の導入を進めております。世界的な医療費抑制の流れの中で、薬価に係る法規制の改正によりイノバセルが想定している製品価格よりも低い薬価・保険償還価格となった場合には、イノバセルの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (21) 感染症、災害等、エネルギー供給制約の発生に関する不確実性(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルグループが事業活動を行なっている地域において、感染症、自然災害や火災等の事故災害、電気・ガス・石油等のエネルギーに関する供給制約、急激な物価上昇等が発生した場合、イノバセルグループの組織体制・設備・事業活動等に大きな被害・制限を受け、その一部又は全部の稼働が中断し、研究開発や治験推進を含めた事業活動が遅延する可能性があります。また、損害を被った組織体制や設備等の修復、エネルギー確保、価格が上昇した資材・サービス等購入などのために多額の費用が発生し、イノバセルグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (22) 情報管理(発生可能性:小、顕在化する可能性のある時期:随時、想定影響度:小) イノバセルグループの事業において、研究又は開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な情報です。イノバセルグループは、その流出リスクを軽減するため、必要に応じて取引先等との間で営業秘密、個人情報等につき目的外利用及び第三者提供の禁止等を定めた守秘義務契約を締結するとともに、個別の事情に応じた情報開示を行うなど、厳重な情報管理に努めております。 しかしながら、取引先等によりこれが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には、イノバセルグループの経営成績及び今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。 (23) 株式価値の希薄化(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:上場後、想定影響度:小~中) イノバセルグループは細胞治療・再生医療製品の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、イノバセルの発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 また、イノバセルグループは、イノバセル取締役、監査役、従業員、イノバセル子会社従業員の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用しています。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、イノバセル取締役、監査役、従業員、イノバセル子会社取締役、従業員に対して新株予約権の発行と付与を行なっています。このほかにも、ストック・オプションとは別に、イノバセルグループでは資金調達の一環でラチェット型新株予約権を発行しておりましたが、当該新株予約権は、2026年2月24日のイノバセルの東京証券取引所グロース市場への上場に伴いイノバセル普通株式に転換しております。その結果、イノバセル普通株式が2,352,942株発行され、5.64%の希薄化が生じました。 加えて、イノバセルは、取締役にイノバセルの企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えるとともに、株主の皆様との一層の価値共有を進めることを目的として、2026年3月26日開催の定時株主総会で株式関連報酬の導入を決議しており、当該決議に基づく株式の発行が予定されていること、及び、今後も優秀な人材の確保のため、従業員に対してストック・オプションを発行する可能性があります。従って、これらのインセンティブ・プランを通じて、イノバセル株式が付与されたり、付与した新株予約権が行使された場合にも、イノバセルの1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。 (24) 配当政策(発生可能性:大、顕在化する可能性のある時期:上場後、想定影響度:小) 細胞治療・再生医療製品の研究開発には多額の初期投資を要し、その投資回収も長期に及ぶ傾向にあり、イノバセルグループも創業以来継続的に営業損失及び当期純損失を計上しています。このような状況下においては、積極的な開発推進によって企業価値を高めることこそが、株主利益の最大化に繋がると考えています。 2025年12月期末においては、会社法の規定上、配当可能な財政状態にはありません。また、2026年12月期についても配当は実施しない予定となっております。 株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、現時点では製品開発のための先行投資に備えた内部留保の充実を優先し、将来、現在開発中のパイプラインが上市されてその販売によって当期純利益が計上される時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、配当による利益還元の実施を検討したいと考えております。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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