ソシオネクストグループは、ロジック半導体市場の中で、「ソリューションSoC」という新しくかつ独自のビジネスモデルのもとで顧客にカスタムSoCを開発・提供しているファブレスの半導体ベンダーです。SoCは、System on chipの略語で、装置やシステムの動作に必要な機能を1つのチップ(半導体)に実装したものです。ソシオネクストグループは、このSoCのうち、特定の顧客固有に設計されるカスタムSoCを中心に事業を行っています。新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とする顧客のパートナーとして、また、IP(※1)、EDA(※2)ツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最新の技術を提供するサプライヤーと協働して、顧客、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会を実現することを目指しています。
ソシオネクストグループは、従来、顧客から受領したSoCの仕様に基づき物理設計のみを担う従来型のASIC(※3)や、分野・アプリケーションを限定して機能・目的を特化させた汎用的なASSP(※4)を中心に事業を展開しておりましたが、2019年3月期以降、従来型のASIC及びASSPに加え、自社製品における差別化を求める顧客に対して、顧客とともに仕様の策定や論理設計を行い、先端テクノロジーを組み合わせて顧客にとって最適なSoCを提供するビジネスモデルへのシフトを進め、この「ソリューションSoC」ビジネスモデルによるカスタムSoCを中心に事業を展開しております。
カスタムSoCには主として3つのビジネスモデルが存在します。まず従来型ASICでは、アーキテクチャ設計、企画・仕様設計及び論理設計等SoC設計における上流設計を顧客自身が行い、それ以降の工程を外部のカスタムSoCベンダーが担当します。そのため、従来型ASICは上流設計を自ら行う能力を有する顧客に利用が限定されます。他方、ソシオネクストグループのソリューションSoCビジネスモデルでは、ソシオネクストグループが顧客とともにこれらの上流設計を行うため、上流設計を行う能力を保有していない顧客にも製品を提供することができます。また、ASSPをベースにカスタマイズされたASICを提供するモデルでは、ベンダー自身のASSPをベースとしてカスタマイズするため、カスタマイズの幅が限定されるとともに、顧客からはベンダーロックイン(※5)への警戒感が生じることとなります。これに対し、ソリューションSoCビジネスモデルでは、外部ベンダーが提供する最先端の技術も活用し、顧客に最適なSoCを提供しつつ、ベンダーロックインを回避することができます。
近年、半導体製造技術の進展やこれを使ったネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービスや製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を開発する企業は、自社のサービス/製品の差別化のために先端テクノロジーを活用した高性能かつ拡張性の高い独自のSoCを必要としています。
一方で、半導体産業においては、プロセス技術(※6)、パッケージング技術(※7)、テスト技術のほか、IP、EDAツール、ソフトウエアまでも含めてそれぞれを専業にする企業が出現し、常に最先端のイノベーティブな技術が生み出され、誰もがその最先端の技術を市場から入手することが可能なエコシステムへと進化を遂げています。その一方で、それらの様々な技術を選択し、組み合わせて顧客にとって最適なSoCを設計開発する難易度は上昇しています。
そのため、独自のSoCを必要とする多くの企業は、SoCのアーキテクチャに対する知識はもとより、SoCが搭載される最終製品やサービスに関する理解が深く、差別化のために、先端のハードウエアからソフトウエアに至るまでの技術を組み合わせて最適なソリューションを提案できるパートナーを求めています。
こうした市場の変化の中、ソシオネクストグループは、ソフトウエアまでも含めた設計開発能力を有し、顧客と共同して技術的課題を解決できるエンジニアリソース群を抱えていることに加えて、量産・品質保証・SCMまでトータルにサポートできる総合力を有しているといった強みを持っております。これにより、従来型のASIC、ASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICでは満足できない顧客に対して、顧客とともにSoCの仕様を決めていく共同開発プロセスを通じて、顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるビジネスモデルとして「ソリューションSoC」を確立しました。また、こうした新たな最先端の市場で経験を積み重ね、ノウハウを蓄積すると同時に、競争力をさらに強化するため、差別化のための先端技術や種々の技術の組み合わせとその実証にも積極的に投資するとともに、事業部ごとの壁を取り除き、開発機能ごとに集約し、その中から各プロジェクトに必要なリソースを割り当てていくフラットな研究開発体制へと移行しました。また2023年4月には、大規模先端技術分野のモデルプロジェクトを通じた開発基盤構築に取り組む組織として、グローバルリーディンググループを設けました。ソリューションSoCのビジネスモデルに相応しいコンピュータアーキテクチャベースの開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体として実現する取り組みを進めています。これらの結果、7nm以下の先端プロセスノード(半導体の製造技術(半導体プロセス)の世代を表す指標。1nmは100万分の1mmであり、nm数が小さくなるほど先端のテクノロジーを表す。)を活用する案件がNRE売上(※8)に占める割合は、2018年3月期の1%から2024年3月期には71%へと拡大しました。
また、ビジネスモデルのシフトに加え、注力する事業領域に関しても、それまでのテレビ等のコンシューマ向け中心の分野から、「オートモーティブ」「データセンター/ネットワーク」「スマートデバイス」といった先端分野へと大幅な転換を果たしました。
ソシオネクストグループは、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)や車載センシング等の「オートモーティブ」、データセンターや携帯基地局等の「データセンター/ネットワーク」、アクションカメラやネットワークカメラ等の「スマートデバイス」等の先端分野を注力分野としています。また、FA(Factory Automation)機器や計測機等の「産業機器」の分野でも先端テクノロジーの活用、ソリューションSoCへの需要が拡大する傾向にあり、今後は「産業機器」についてもソシオネクストグループの注力分野として位置付けることとします。これらの注力分野に加え、特異な技術で今後の成長が期待できる電波式測距センサー等の「IoT&レーダーセンシング」分野でも事業を展開しています。
半導体製品が顧客に採用され量産に至るまでには一般的に長い期間が掛かります。商談獲得後の設計開発及び顧客の評価完了から量産開始まで通常2年以上を必要とし、さらに量産を終了するまでには相当の期間が掛かります。このため、顧客の基幹部品を長期間にわたって開発、供給する責任を有する企業として、強固な財務基盤(2024年3月期末における自己資本比率70.1%、現預金697億円)のもと事業を行っております。
ソシオネクストグループは、設計開発段階において、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領し、量産段階において、ソシオネクストグループの売上全体の大半を占める製品売上を受領しております。また、ソシオネクストグループは、水平分業が進む半導体業界のメリットを最大限活かすべく、工場を持たないファブレスの事業形態を採っております。製品の製造についてはTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下「TSMC」という。)を始めとするファウンドリやOSAT(※9)等の専業メーカに委託しております。
顧客の最先端の製品やサービスには、常に新たなSoCが求められ、そのような先端SoCを求める顧客や市場も変化し続けます。ソシオネクストグループもこの変化をいち早く捉えるべく、先行開発投資や開発力の強化を進め、今後も常に持続的な成長を目指します。
※1 IPとは、Intellectual Propertyの略語であり、半導体業界においては、半導体を構成するための部分的な機能単位でまとめられている回路情報のことです。外部から購入する調達IPと自社で開発を行う自社IPとに分けられます。
2 EDAとは、Electronic Design Automationの略語であり、半導体の設計作業を自動化して行うソフトウエアやツールです。
3 ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの略語であり、特定の顧客向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。
4 ASSPとは、Application Specific Standard Productの略語であり、分野/アプリケーションを限定して、機能/目的を特化させた大規模集積回路のことです。ASSPは、特定の顧客用にカスタマイズされておらず、顧客を限定しないため、複数の顧客に提供する汎用部品です。
5 ベンダーロックインとは、特定ベンダーが提供する製品やサービスを一旦採用してしまうと、将来他のベンダーが提供するよりよい製品やサービスへの乗り換えが困難となり、顧客側の選択肢が限定されることをいいます。
6 プロセス技術とは、半導体の製造工程のうち前工程と呼ばれるシリコンウエハに回路を形成するまでの工程における技術のことです。
7 パッケージング技術とは、半導体の製造工程のうち後工程と呼ばれる半導体チップを外部から守るパーツで保護し、かつ電気的に接続するための工程における技術のことです。
8 NRE売上とは、Non-Recurring Engineering 売上の略語であり、製品の量産化前の開発段階において顧客から受け取る売上のことを指します。NRE売上は、人件費、IP、設計ツール、レチクル(半導体製造の露光工程で使用され、設計した回路をシリコンウエハに転写するためのフォトマスク)、試作品製造等といった、開発段階で発生する設計開発コストに対応し、通常、開発のマイルストーン進捗に応じて複数回にわたって計上されます。
9 OSATとは、半導体製造の後工程における請負製造サービス(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)の略語です。
事業の系統図は以下のとおりです。
ソシオネクストグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてソシオネクストグループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
①基本理念
ソシオネクストグループは、企業として果たすべき使命、重視する価値観について、以下のとおりグループ共通の考え方を定めております。
この基本理念の下、新しいサービス・製品の差別化のために独自の先端SoCを必要とするお客様のパートナーとして、また、進化する半導体のエコシステムにおいてファウンドリ・OSATをはじめIP・EDAツール・ソフトウエアに至るまで最新の技術を提供するサプライヤーのパートナーとして、お客様、さらにはその先にいる世界中の人々に新しい価値を提供し、豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。
・Mission(企業としての使命)
Together with our global partners, we bring innovation to everyone everywhere.
・Values(重視する価値観)
「Change」
非連続な変化への適応。ビジネス・技術・マインド・オペレーション等環境の変化に合わせ我々自身も変化していく。
「Technology」
最先端技術の追求により、世界のイノベーションを支える開発競争力を持つ会社を目指す。
「Growth」
私たちの成長が株主・お客様・パートナー・社員等のあらゆるステークホルダーへの貢献に繋がる。
「Speed」
ダイナミックかつ急激に変化する市場・お客様への迅速な対応。
「Sustainability」
お客様・パートナー・社会との共生により持続可能な未来を創る。
・行動指針
・各人が自身の仕事にオーナーシップを持ち、環境の変化に合わせ、お客様視点・マーケットインの視点から自立的に考え行動を起こす。
・成長市場・成長企業にアクセスし続けるために、最新の技術・知識に裏付けられた、お客様にとって価値のある課題解決に向けた提案を行う。
・各人が意欲的にあるべき姿に向かってチャレンジしプロフェッショナルを目指すことが、個人の成長・会社の成長に繋がる。
・個人単位・組織単位での迅速な判断と意思決定を行い、常に先を見て、お客様にとっての価値を生み出す。
・グローバル社会の構成員として、企業としての社会的責任を果たし、持続可能で豊かな社会の実現に向け貢献する。
・CSR基本方針
・法令・社会規範の遵守
私たちは法令・社会規範の遵守を徹底し、社会の信頼に応えます。
・人権の尊重
私たちは一人一人の人権を尊重し、差別等の人権侵害行為を許しません。
・社員の労働環境整備
私たちは社員の幸せを目指し、個性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、健康で働きやすい環境をつくります。
・環境への配慮
私たちは地球環境に配慮した企業活動を進めていきます。
・公正な商取引の推進
私たちは常に公正な商取引に則り、お客様・お取引先との信頼関係を築きます。
・情報管理の徹底
私たちは自社情報、お客様やお取引先等の第三者情報や個人情報等の管理を徹底し、機密を保持します。
・知的財産の尊重
私たちは企業価値の源である知的財産を守り、尊重します。
②経営方針
上記の基本理念実現のために、ソシオネクストグループは、独自の先端SoCを必要とするお客様に向けて、最適な技術の組み合わせにより、お客様が求める機能を実現するSoCを開発・提供する事業を、ソリューションSoCという独自のビジネスモデルにより展開しています。「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」及び「スマートデバイス」といった先端分野に加えて、「産業機器」や「IoT&レーダーセンシング」の分野で、グローバルなお客様から地域的なバランスをとりながら、より多くの商談の獲得を目指します。
事業活動を通して、お客様の信頼を獲得し、世界の主要/成長企業のSoC部門となりお客様の成長を支えるとともに、ソシオネクストグループの低消費電力技術等を活用して社会の課題解決に貢献します。また、お客様と協力した開発を通して、エンジニアの成長と会社の成長との好循環を実現し、会社の成長による企業価値の向上により株主への還元を図ります。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
①経営環境
近年、ネットワーク、クラウド、AI等様々な革新的技術の普及と融合により、自動運転、AR/VR等今までにない新たなサービス/製品が次々と出現しています。それらのサービス/製品を取扱う企業においては、自社のサービスや製品を差別化するために独自のSoCへのニーズが増加しており、カスタムSoCの需要は拡大しています。
他方、半導体産業のエコシステムの進展により、カスタムSoC開発のコア技術であるIP、EDAツール、ソフトウエアからプロセス、アセンブリ、テストに至るまでの最先端技術をエコシステムから入手することが拡がっていますが、差別化の要求を実現するための組み合わせが増えたことで、最適な組み合わせによる独自SoCの開発が複雑化しています。
こうした事業環境を背景に、独自のカスタムSoCを開発したい顧客と進化する半導体のエコシステムとを繋ぐソリューションSoCビジネスモデルに対する需要が高まってきています。
2023年時点で、ソリューションSoCビジネスモデルで開発するSoCを含むカスタムSoCの市場規模は250億ドル(※2)であり、このうち自社製品のみにカスタムSoCを供給している会社を除くと、市場規模は120億ドル(※2)で、ソシオネクストグループは約12%、第2位のシェア(※1)を有しております。半導体市場全体の2023年から2027年までの年間平均成長率は10.7%(※2)であり、そのうちカスタムSoC市場は、同期間において年間平均成長率2.9%(※2)で成長していくと見込まれております。また、ソシオネクストグループの注力分野(「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」、「スマートデバイス」及び「産業機器」)は、2023年時点で74億ドルの市場規模(※2)で、上記期間において8.4%(※2)と高い年間平均成長率が見込まれております。
※1.Omdiaの“Competitive Landscaping Tool CLT, Annual-4Q 2023”及びソシオネクスト内部データをもとにソシオネクストが推計したものです。ソシオネクストは当該データにおけるLogic ASICをカスタムSoCと定義して推計を行っており、実際のソシオネクストの対象市場とは異なります。また、一定の前提及び外部資料にもとづき推計しているため、実際の市場規模と異なる可能性があります。なお、自社製品のみにカスタムSoCを供給しているApple社は除いており、また、台湾の従来型ASICベンダーは、当該データに含まれておりません。
2.Omdiaの“Application Market Forecast Tool-1Q 2024”をもとにソシオネクストが推計したものです。なお、当該データの“Data Center Servers”、“Solid State Drives”、“Enterprise Ethernet Switches & Routers”、“Carrier Ethernet Switches & Routers”、“Optical Equipment”、“Broadcast & Streaming Video”、“Data Center Network Switches”、“Mobile Comm Infrastructure”、“Other Consumer Electronics”、“Connectivity & Telematics”、“Infotainment & Cluster”、“ADAS”、“Chassis & Safety”、 “Security & Video Surveillance” 、“Automation”、“Test & Measurement”、“Other Peripherals”をソシオネクストの注力分野として推計しております。
②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
2019年3月期以降取り組んできた「第一の変革」の結果、2022年3月期以降、売上とともに営業利益が拡大し、利益率も改善してきています。この先も持続的な成長を実現するためには、開発競争力の強化、事業体制の変革、組織全体のグローバル化、さらなる利益率の改善等多くの課題があります。「第一の変革」で成し遂げた「量的な変化」を土台として、競争力のある開発体制の構築やグローバル企業に相応しい組織風土を目指す「質的な変化」をソシオネクストグループの「第二の変革」と位置づけ、大胆に進めてまいります。
〔開発体制の再構築及びビジネスプロセスの改善〕
ソシオネクストグループはソリューションSoCのビジネスモデルへの転換に伴い、2021年3月期以降、開発力強化・開発効率改善のため、開発体制の再構築を進めてきました。今後もグローバルな顧客、半導体エコシステムを構成するプレーヤー、投資家等とのコミュニケーションを通じて、ソリューションSoCのビジネスモデルに相応しい開発基盤と標準的な開発プロセスの構築、開発の効率化・可視化、開発マネジメント改革を一体的に推進していきます。
また、さらにグローバルな顧客との商談が拡大していくことに伴い、生産管理グループのグローバル化及びオペレーション改善の施策を実施していきます。顧客とソシオネクストグループの生産システムを繋ぎ、デリバリーシステムにおける効率性や透明性の向上を目指していきます。それにより、精度の高い生産計画とタイムリーな調達を可能にする強固な体制を確立し、製造を委託するファウンドリやOSATとの関係を含むビジネスプロセスを改善していきます。
〔中長期的な成長を見据えた売上及び営業利益の拡大〕
ソシオネクストグループは将来の売上管理のために、商談獲得残高という経営指標を採用しており、この商談獲得残高は商談獲得金額から売上実績を差し引いた金額です。この商談獲得残高により、現時点において2026年3月期までの売上の推移をある程度見通すことができております。2027年3月期以降も持続的な成長をしていくためには、当期と同レベルの年間2,500億円(1米ドル=100円で換算)程度の商談を継続して獲得していくことが必要であると認識しております。そのために、順調に商談を獲得してきているオートモーティブ分野に加え、データセンター/ネットワーク分野をはじめとして、各注力分野においてバランスよく商談獲得への取り組みを進めてまいります。
また、営業利益拡大への施策としては、従来に引き続き製造粗利益の改善、開発収支の改善、販売管理費の適正な管理等に取り組んでいきます。
〔サステナビリティに関する取り組み〕
ソシオネクストグループでは、優先的に取り組むマテリアリティ(重要課題)を特定し、サステナビリティ活動を推進しています。
環境・気候変動への取り組みとしては、ソシオネクストグループのGHG(温室効果ガス)排出量の削減を進めるとともに、ソシオネクストグループが提供する低消費電力・省スペースな先端SoCにより、お客様のもとでのGHG排出量の低減へ貢献することで、脱炭素社会の実現を目指しています。
また、人的資本に関しては、人権、ダイバーシティ、健康推進・安全衛生に関する諸制度の充実、エンジニア人材育成に関する教育プログラムの策定等により、ソシオネクストグループの人的資本の最大化に向けた活動を進めています。
ソシオネクストグループは、パートナー企業も含めたサプライチェーン全体でサステナビリティ活動に取り組み、事業のさらなる成長を通じて社会課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
ソシオネクストグループは、グローバル企業としての社会的責任を全うし、全てのステークホルダーから信頼と共感を得られる存在であり続けたいと考えています。ソシオネクストグループの最先端SoC技術で新しい価値を世界中に提供し、今後も中長期的な企業価値の向上を追求していきます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
カスタムSoCは、一般的に商談獲得から設計開発及び顧客による評価期間を経て製品を出荷し売上計上するまで2年以上を要するため、ソシオネクストグループは、より早い段階から将来売上見通しを見える化し、必要な対策をタイムリーに実行していくために、将来の売上見通しのベースとなる「商談獲得金額」、「商談獲得残高」を会社の重要経営指標としております。日々の商談獲得活動によるこれら指標の積上げ、見直しによる、中期的な売上高成長率の向上、並びに製品売上拡大による売上総利益の増加及び開発効率化等を通じた営業利益率の改善を目指しております。
ソシオネクストグループの商談獲得金額は2018年3月期及び2019年3月期は1,000億円の水準でしたが、2023年3月期においては2,500億円の水準に増加しており、2024年3月期も同じレベルを維持しております。特に高成長が期待される車載を中心とした注力分野において大型の商談を多数獲得しております。その結果、商談獲得残高は2022年6月末時点の約8,800億円から2024年3月末時点で約1兆円と増加しております。
ソシオネクストグループは、商談獲得後、SoCの設計開発を行いますが、一般的に顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領します。その後、顧客の評価を経て製品の量産段階に入り、製品売上を計上します。2024年3月期において、ソシオネクストグループの連結売上高に占めるNRE売上高の比率は17%でした。商談獲得から設計開発及び顧客の評価完了を経て製品売上が計上されるまでには、一般的に2年以上を要し、その間に案件の中止や仕様変更等に基づく製品単価の変化が発生しうるため、商品獲得金額が将来の売上を確実に保証するわけではありません。
「商談獲得金額」は、ある会計期間に獲得された商談について、顧客との間で設計開発に係る契約を締結した時点(商談獲得時点)における、将来の設計開発及び量産に至る販売全期間における顧客需要としてソシオネクストグループが予測した金額を、1米ドル100円により示したものです。商談獲得金額は、顧客需要の予測であるため、製造キャパシティの制約は考慮しておらず、また、商談獲得後の案件の中止、実際に計上された売上といった事後的な事象に基づき更新することはしていません。なお、商談獲得時において、製品単価は合意されます(但し、設計開発を経て製品の仕様が変更される場合には製品単価も変更されることがあります。)が、販売数量は合意されません。
ソシオネクストグループは、商談獲得後、SoCの設計開発を行いますが、顧客から設計開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領します。その後、顧客の評価を経て製品の量産段階に入り、製品売上を計上します。商談獲得から製品売上の計上までに通常2年以上の期間が掛かり、製品の量産化、さらには量産を終了するまでには相当の期間にわたるビジネスとなります。このため、単価や数量の変動等個々の商談の状況変化を適時反映した「商談獲得残高」も重要な経営指標としております。
「商談獲得残高」は、その時点において存続している案件に関する商談獲得金額の累積値をソシオネクストグループが予測した金額で、同じく1米ドル100円で計算しています。商談獲得残高は、商談獲得金額についての、商談を獲得した時点以降の案件の進捗又は変化を反映又は更新したものであるため、商談獲得残高の算定時点により大きく変動する可能性があります。これらの進捗又は変化には、①商談獲得後の案件の中止(2020年3月期から2022年3月期における商談獲得金額のおよそ20%に相当する注力分野(オートモーティブ、データセンター/ネットワーク、スマートデバイス分野)の商談が事後的に中止となっています。現時点において、2020年3月期から2024年3月期までの商談獲得金額に対する商談獲得後の案件中止による影響額は、その他の商談の商談獲得後の単価上昇、数量増等の影響額により相殺され、当初の獲得額と概ね同水準となっております。これまでに獲得した商談について将来的なキャンセルが発生する可能性は否定できないものの、2023年3月期及び2024年3月期に獲得した商談に関する重大なキャンセルは発生していません。)、②実際に計上された売上の控除及び③仕様変更等に基づく製品単価の変化や製品の販売数量の見込みの変化が含まれます。
上記のほか、「商談獲得金額」及び「商談獲得残高」の留意事項については、下記「3 事業等のリスク (4)ソシオネクストグループの経営指標について」もご参照ください。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在においてソシオネクストグループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
・リスクマネジメントに関する基本的な考え方及び体制について
ソシオネクストグループがグローバルに事業活動を展開していく上で、複雑かつ多様なビジネス環境の変化によって生じるあらゆるリスクを早期に把握し、適切な対策を講じることが、ソシオネクストグループの経営戦略・事業戦略の実現に必要不可欠であると考えております。
ソシオネクストグループでは、組織的かつ継続的にリスクの抽出・評価を行い、抽出されたリスク項目ごとに主管役員を選任し、対応案の策定と実行を進めております。
また、これらの取り組みに関して、定期的に取締役会への報告を行い、想定しているリスクの網羅性、各種対策の有効性及び進捗状況等について確認する体制を構築し、リスクの発生可能性・損失規模の低減に向けてリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。
・経営・事業を取り巻くリスク
(1)製造委託先について
ソシオネクストグループは、経営資源を設計・開発業務に集中し、製品の生産を外部に委託するファブレスという事業形態を採用し、多くの資金が必要となる生産設備投資に制約されることなく事業を推進しております。生産は国内外のファウンドリ及びOSATといった製造委託先に分散して委託しておりますが、かかる事業形態に関して以下のようなリスクがあります。
①製造委託先が限定的であることについて
ソシオネクストグループは台湾、日本、中国、シンガポール及び韓国等の製造委託先に半導体の製造を委託しております。特にソシオネクストグループの取扱う最先端テクノロジー品や、車載品等の高い品質・信頼性を要求される製品については、製造委託先が限定される場合があり、特に半導体製造の前工程においてはTSMCに多くの製造を委託しています。そのため、ソシオネクストグループの顧客への製品の供給は、製造委託先の方針、技術力や製造キャパシティの制約による影響を受けています。急速に技術革新が進む半導体業界において製造委託先が技術革新に乗り遅れた場合や、原材料・燃料価格の高騰が生じた場合には、ソシオネクストグループによる当該製造委託先への委託が困難となる可能性がありますが、契約条件、事業上の関係性又は顧客の意向といった制約により、そのような場合にソシオネクストグループにおいて適時に合理的な条件で新たな製造委託先を確保できる保証はありません。さらに、製造委託先において、半導体製造のために必要な水、エネルギー又は廃水処理能力の不足による制約が生じる場合、ソシオネクストグループの製品の供給に遅延が生じる可能性があります。
ソシオネクストグループは、複数の製造委託先を確保する等、不測の事態に備えてはいるものの、半導体業界に固有の急速な業界環境の変化、地政学的な要因や技術革新等により将来の需要予測には限界があり、製造キャパシティの制約に起因して製品の供給に遅延や中断が生じた場合には、ソシオネクストグループの評判が悪化し、顧客から損害賠償請求を受ける可能性もあります。この結果、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
②製造委託における価格について
ソシオネクストグループの製造委託先は限定されており、また、製造委託先との間で長期的な製造委託契約を締結しているわけではないことから、製造キャパシティの制約、原材料・燃料価格の高騰、人件費、為替変動その他の理由による製造委託費の値上げの影響を大きく受けることとなります。ソシオネクストグループと顧客との間の契約において製造委託先による値上げに応じた価格調整に関する規定を設けないことが通常であるため、製造委託先による値上げを顧客への製品価格に適切に転嫁できない場合には、ソシオネクストグループの利益率が大きく低下することとなります。このような製造委託先における事情により、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
③製品の品質について
ソシオネクストグループの製品については、製造委託先の責任による歩留の低下や製品の欠陥が生じる可能性があります。これらの問題は製造過程の初期段階では発見することが困難であり、その改善に多くの時間や費用を要する可能性があります。また、このような場合に、他の製造委託先や製造拠点への移管を行おうとしても、対応可能な製造委託先等が存在しない等移管が困難である可能性や、移管に多くの時間や費用を要する可能性があります。
ソシオネクストグループの製品に歩留の低下や製品の欠陥その他の製造に関する問題が生じた場合には、顧客への製品の供給に遅延が生じ又は供給ができないことやプロジェクトが中止となること等により、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。仮にかかる請求が認められない場合でも、その対応には多くの時間や費用が必要となります。また、製造委託先の責任に起因する場合でも、製造委託先に対して費用償還を求めることが困難な可能性もあります。これらにより、ソシオネクストグループの事業、経営成績、財政状態、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。
(2)ソシオネクストグループの製品の設計開発について
ソシオネクストグループの製品については、商談を獲得したのち、製造に向けた設計・開発を行うこととなりますが、設計・開発から顧客の評価完了までは2年以上という長期間にわたる可能性があるため、その間に生じる半導体や最終製品の市場環境及び顧客の戦略・需要の変化、新規技術の発明・市場への導入、製造委託先の製造キャパシティや繁忙状況の変化といった事象の影響を受け、顧客による仕様変更やプロジェクトが中止となる可能性があるほか、顧客の要求水準を満たす製品の開発や顧客が受入可能な価格及び数量での製造に成功しない可能性もあります。設計・開発段階でプロジェクトが中止となった場合、製品売上は一切受領できないこととなります。
また、ソシオネクストグループは設計・開発段階において、一般的に顧客から設計・開発に要する費用の大半をNRE売上として段階的に受領しておりますが、上記のように設計・開発段階でプロジェクトが中止された場合には、残りの期間のNRE売上を収受できない可能性があるうえ、NRE売上は設計・開発段階で生じる費用の全てをカバーしない場合があるため、プロジェクトによっては損失が生じる可能性もあります。また、製品売上がソシオネクストグループの売上の大半を占め、ソシオネクストグループの注力分野ではプロジェクトごとの規模が大きくなる傾向にあり、特定のプロジェクトにおける製品の価格もしくは数量の変更又はプロジェクトの延期や中止によるソシオネクストグループの将来の経営成績への影響が大きくなります。従って、重要なプロジェクト又は複数のプロジェクトが設計・開発段階で中止となった場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。
(3)ソシオネクストグループの製品の量産化について
設計・開発が完了した場合、製品の量産段階に進むこととなりますが、商談獲得段階では製品単価については顧客との間で合意している(但し、仕様変更により変更される場合があります)ものの、製造数量については合意しておらず、量産段階における顧客からの個別の発注により確定することとなります。そのため、ソシオネクストグループが商談獲得時に予測した数量の製品を顧客が量産時点において購入する保証はありません。従って、ソシオネクストグループが当初想定していた数量について製品の量産化が行われない場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(4)ソシオネクストグループの経営指標について
上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、ソシオネクストグループは「商談獲得金額」及び「商談獲得残高」を重要な経営指標としております。商談獲得金額及び商談獲得残高の算出には、製品の販売可能期間及び受注が中止される可能性に関する見込みのほか、開発計画、開発コスト、NRE売上、製品単価及び将来の製品の販売数量(なお、価格については、仕様変更による変更はありうるものの、商談獲得段階で合意されます。)に関する仮定及び見込みを含むソシオネクストグループによる将来の予測や主観的判断が相当程度考慮されています。製品の販売数量は、顧客から提示された初期的な数量見込みのほか、顧客との過去の取引履歴や第三者による市場データその他の情報に基づくソシオネクストグループ独自の予測、第三者による市場データその他の情報を基礎として判断したものですが、製造委託先の受注制限等、製造キャパシティによる制約は考慮していません。このように商談獲得金額及び商談獲得残高の算出はソシオネクストグループ独自の方法により行われているため、他社が用いる同種の指標との比較は適切でない可能性があり、ソシオネクストグループと他社の現在及び将来の業績の比較において当該指標に依拠することもできません。ソシオネクストグループは、商談獲得金額及び商談獲得残高が過大な見積りとならないよう、モニタリング部門によるレビュー及び経営陣による承認に関する社内手続を定めていますが、かかる手続が有効である保証はありません。また、ある期間に獲得された商談獲得金額は、かかる期間の末時点におけるソシオネクストグループの仮定及び見込みを反映したものに過ぎず、その後の案件の中止、かかる案件に関連して実際に計上された売上、又は開発プロセス、ソシオネクストグループによる将来の製品販売数量の見込み、製品単価、製造キャパシティ、その他事後的に発生する要因の変更に基づき更新することはしておらず、年度ごとの比較が適切でない可能性があります。商談獲得残高は月次でこれらの情報を考慮し更新していますが、更新時点における見積もりであることに変わりはなく、かかる見積もりが正確である保証はありません。ソシオネクストグループは商談獲得金額及び商談獲得残高の算出方法を将来変更する可能性があり、また、過去にも変更しています。
以上のような制約により、商談獲得金額及び商談獲得残高はソシオネクストグループの将来予測される業績を示すものではなく、実際の売上と大きく異なる可能性があります。
(5)事業計画等の前提となる事項について
ソシオネクストグループは、日々変化していく市況に対応し、持続的な成長を遂げていくため、事業計画の策定と実行、組織強化を目的とした各種施策を遂行しております。これら事業計画及び各種施策の策定においては、半導体及び最終製品の市場動向その他の経営環境について一定の前提を置いており、かかる前提には、例えば、ソシオネクストグループが成長性のある注力分野において引き続き商談を獲得していくこと、商談獲得金額及び商談獲得残高がその需要予測に従いNRE売上及び製品売上として実現されること、製造委託先における製造キャパシティの確保がソシオネクストグループの想定どおりに実現されること、並びに為替変動が一定の範囲に収まること等が含まれます。しかしながら、これらの前提が現実と異なる場合には、ソシオネクストグループの事業計画における各種施策の遂行及び経営指標の達成が困難となり、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(6)主要顧客について
ソシオネクストグループは、「オートモーティブ」、「データセンター/ネットワーク」、「スマートデバイス」及び「産業機器」等の分野において商談を獲得しており、今後当該分野の主要顧客への売上の割合が高くなることが予想されますが、主要顧客への売上は、商談の獲得時期及び規模並びに当該商談から得られた製品売上、ソシオネクストグループの顧客基盤の多様化、消費者の嗜好の変化、業界の動向、法規制の変更、自然災害その他の要因により、大きく変動する可能性があります。ソシオネクストグループにおける顧客との取引は、個別の発注に基づいており、顧客は長期的な購入義務を負わず、顧客がソシオネクストグループの期待する数量の製品を購入する保証はありません。主要顧客が最終製品の市場への投入を延期又は中止し、また、ソシオネクストグループの製品の機能・性能、又は開発スケジュールが主要顧客の要求水準を満たさない場合には、ソシオネクストグループの製品の採用を中止する可能性があります。主要顧客は、ソシオネクストグループの製品を組み込んだ最終製品の売れ行きが芳しくない場合、ソシオネクストグループの製品の発注数量を減少させ、又は納入期日を延期することがあります。さらに、ソシオネクストグループの主要顧客が、競争力の低下又はM&Aや提携を契機として、ソシオネクストグループの製品の購入量を減少し、また、ソシオネクストグループとの契約条件が主要顧客に有利なように改定される可能性があります。これらにより、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(7)海外での事業活動について
ソシオネクストグループは、顧客が世界の様々な地域に所在していることから、米国、欧州及びアジアの主要エリアに営業拠点を有しており、各地域の特色に合わせた営業活動を行っております。海外で事業活動を行うにあたっては、地政学上のバランス、各国の政治・経済情勢、海外輸送・生産の遅延やコストの上昇、為替の変動、外資規制・知的財産権等に関する法規制の新設又は変更、税制の変更等のリスクが存在すると考えております。これらのリスクが顕在化することにより、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(8)経済情勢について
ソシオネクストグループは、グローバルな景気動向、最終製品の需要変動、技術革新、製品の陳腐化や価格の下落、半導体市場の市況変動の影響を受けております。足元では、各国の金融引締め政策による金利の上昇やインフレーションの進行が経済情勢の先行きを不透明にしています。また、近年は半導体需要が高まりを見せていますが、かかる需要が今後も同水準で成長又は継続する保証はありません。経済情勢の停滞・減退局面においては、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(9)為替レートの変動について
ソシオネクストグループは、設計開発・製造・販売活動をグローバルに展開しており、多くの収益を海外から得ているため、米ドルを中心とする為替レートの変動に伴う影響を受けます。ソシオネクストグループは為替レートの変動の影響を軽減するよう対応に努めていますが、かかる影響を完全に排除することはできないため、為替レートの変動状況によっては、外貨建取引の売上高、外貨建の設計開発や製造販売コスト等への影響により、ソシオネクストグループの経営成績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(10)競合について
ソシオネクストグループによるカスタムSoCの開発・供給は独自のビジネスモデルであり、直接的な競合先は少ないと認識しているものの、個別の商談獲得においては、従来型のASIC、汎用的なASSP及びASSPをベースにカスタマイズされたASICが競合しており、それらのベンダーとは競合関係にあります。
ソシオネクストグループの半導体製品・サービスは主に先端テクノロジーを必要とする各種エレクトロニクス製品に採用されておりますが、当該分野は技術革新の速度が速く、激しい市場競争に晒されております。競合他社の設計・開発能力の向上、異業種からの新規参入、巨大テック企業によるSoCの自社開発の拡大、従来型のASICや汎用的なASSPのベンダーによる開発の動向、顧客の嗜好・需要、各国政府による自国企業の優遇措置、競合他社間の統合・提携により、競争がさらに激化する可能性があります。また、ソシオネクストグループの注力分野のうち、「オートモーティブ」においては、現状ソシオネクストグループは優位な地位にあると認識しておりますが、技術革新・他社の積極的な攻勢等によりその地位を維持できない可能性があります。他方、データセンターやネットワーク等の既存市場ではより厳しい競争状況にあるところ、ソシオネクストグループは顧客との共同開発を通じて顧客にとってより最適なカスタムSoCを提供することができるという強み、先端分野への研究開発投資及び多様な製品の提供を通じてより多くの商談を獲得することを目指しておりますが、そのような施策が奏功する保証はありません。
(11)地政学リスクについて
ソシオネクストグループが製造する半導体は、近年経済安全保障上重要な製品と認識されておりますが、米中貿易摩擦、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクの顕在化や台湾有事の懸念の高まりにより、各国が輸出管理規制、関税や制裁措置等を発動・強化した場合、ソシオネクストグループの主要な販売地域におけるソシオネクストグループの製品に対する需要の減退、競争力の低下、又はサプライチェーンの寸断や遅延が生じ、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。ソシオネクストグループにおける中国での売上高が一定規模を占めていることやソシオネクストグループがTSMCに多くの製造を委託していることから、これらの地域における地政学リスクが顕在化した場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響が生じる可能性があります。
(12)研究開発活動について
ソシオネクストグループが属する半導体業界は技術革新の速度が速く、既存技術の陳腐化、それに伴う新たな市場の創出及び既存市場の縮小が起こる可能性があります。このような業界で、日々高まる顧客の要求水準を満たす新製品を開発し顧客が受入可能な価格及び数量で製造するためには、多額の研究開発費用を要し、かかる費用が商談獲得や将来の製品売上に繋がらない場合には損失を被る可能性があります。ソシオネクストグループは今後も積極的な研究開発活動を行う予定ですが、このような技術革新にソシオネクストグループが対応できず、ソシオネクストグループの市場シェアや製品価格が低下する場合や、研究開発を効率化できず研究開発費用が増加する場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(13)感染症の世界的な拡大に係る影響について
ソシオネクストグループ、ソシオネクストグループの製造委託先及びサプライチェーンにかかわる取引先が事業を行っている台湾等の地域において、新型コロナウイルス感染症その他の感染症の感染拡大により事業活動等が禁止・制限されるような事態に陥った場合、製造委託先の工場閉鎖や生産停止及びそれらに伴う製造・輸送の遅延、部材調達の制限等の予期できない事象により、ソシオネクストグループの製品に対する需要の減少や供給能力に対する制約を受ける可能性があります。また、それらに伴うソシオネクストグループの取引先の経営状態の悪化、通信・金融・サプライチェーンを含む公共及び民間のビジネスインフラの混乱等が生じる可能性もあります。
(14)災害等による影響について
ソシオネクストグループは日本のみならず、世界各地で設計開発・製造・販売活動を行っており、ソシオネクストグループが事業を展開する各地域において大規模な地震、津波、干ばつ、暴風雨、洪水、大雨、噴火その他の自然災害や火災、停電、感染症の流行、戦争・紛争、テロ行為や政治・社会騒動、セキュリティ侵害又はコンピュータ関連システムの障害その他の事故・事件等が発生した場合、ソシオネクストグループの事業拠点、ソシオネクストグループの製造委託先、取引先、顧客及びサプライチェーンに関係する当事者に対して大きな被害が発生する可能性があります。特に、ソシオネクストグループは、台湾に本拠を置くTSMCに多くの製造を委託しているため、これらの災害等が台湾において発生した場合、ソシオネクストグループの製品の製造及び供給に悪影響が生じる可能性があります。
ソシオネクストグループにおいては、リスクの予防・回避及び発災時の人命の安全、並びに被害の抑制・軽減、二次災害の防止、早期の業務再開を図ることを目的に事業継続に関する規範・規程類を定めており、リスクの軽減に向けた施策を実施しておりますが、かかる施策が奏功しない可能性があり、その場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(15)資金調達について
ソシオネクストグループにおいては、新技術や新製品のための研究開発への継続的な投資が必要となります。ソシオネクストグループは、これまで必要な資金を主に営業活動から得られるキャッシュ・フローにより賄ってきましたが、業績、資金需要や市場環境並びにこれらの見込みにより資金調達を検討することがあります。しかしながら、ソシオネクストグループの将来的な資金需要に必要な資金を、適時かつ受入可能な条件で調達できる保証はありません。また、金融市場の混乱、日本銀行を含む各国中央銀行の金融政策の変更、半導体業界の低迷、金融機関の貸付方針の変更、ソシオネクストグループの信用力の低下等により、ソシオネクストグループに有利な条件で資金調達をできない可能性もあります。これらの結果、資金調達コストが増加する可能性や、研究開発や必要となる各種投資を適時かつ適切な範囲で実施できない可能性があります。
(16)M&A・提携協業等について
半導体業界では、M&Aや提携が頻繁に行われており、ソシオネクストグループにおいても、技術や大口顧客の獲得、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を図るため、M&Aや提携を実行する可能性があります。しかしながら、ソシオネクストグループが適切な対象会社や提携先を発見できる保証はなく、また、デュー・デリジェンスで重大な問題点を検出できない可能性や、競争法その他の法規制による事業活動への制約等により当初期待した効果が得られない可能性があります。このような場合には、保有株式やのれんの減損が生じ、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(17)知的財産について
ソシオネクストグループは他社製品と差別化を図るための様々な技術やノウハウを開発・保持しております。ソシオネクストグループでは、これらの技術やノウハウを知的財産として保護しており、知的財産が流出・不正利用されることのないよう、専門部門で管理するとともに、従業員との秘密保持契約の締結や、第三者によるオフィス・施設へのアクセスの管理等の施策を講じております。しかしながら、知的財産に対する十分な保護が得られない地域もあり、かかる施策にかかわらず、ソシオネクストグループの知的財産が競合他社により不正に取得又は利用される可能性があります。
また、ソシオネクストグループの製品には第三者からライセンスを受けて製造・販売しているものがありますが、今後第三者から必要なライセンスを受けられなくなる可能性や、引き続きライセンスを受けられるとしても従前より不利な条件でしかライセンスを受けられない可能性があります。さらに、半導体業界では、多数の特許が存在し、また新たな特許の出願が急速に進んでおります。ソシオネクストグループ又はその顧客が事前の調査にかかわらず第三者の権利を侵害する場合、第三者よりソシオネクストグループ又はその顧客に対して知的財産権に関する訴訟を提起され、ソシオネクストグループが重要な技術を利用できなくなる可能性や、ソシオネクストグループに帰責事由がある場合にはソシオネクストグループが多額の損害賠償責任を負う可能性があり、また、ソシオネクストグループに帰責事由がない場合でも、訴訟対応のため、時間、費用その他ソシオネクストグループの経営資源が費やされる可能性があります。
(18)製造物責任について
ソシオネクストグループでは、様々な施策を通じて最適な品質を確保できるよう品質管理に取り組んでおりますが、ソシオネクストグループの製品に用いられる技術の高度化、製造委託先に起因する欠陥等により、出荷時に発見できない不具合や異常が製品に存在する可能性があり、顧客への出荷後にそれらが発見される場合があります。この場合、製品の回収及び交換、製品の採用中止等により多額の費用が発生する可能性、当該顧客から損害賠償請求を受ける可能性、当該顧客又は他の顧客からの将来の受注を失う可能性があります。
また、ソシオネクストグループの製品は、顧客がエンドユーザーに販売する最終製品に組み込まれますが、その方法次第で、ソシオネクストグループがエンドユーザーから損害賠償責任を追及される可能性もあります。顧客におけるソシオネクストグループの製品の使用方法は多様化しており、ソシオネクストグループが当初想定していなかった方法で使用されることがあるところ、ソシオネクストグループの製品が顧客の製品に組み込まれた後になって問題が発見される可能性もあります。このような場合には、ソシオネクストグループもエンドユーザーによる損害賠償請求の対象となる可能性があります。かかる事態に備えて、ソシオネクストグループは、製造物責任保険やリコール保険に加入していますが、これらの保険によりソシオネクストグループの負う多額の費用や損害賠償の全額が補填される保証はありません。
(19)人材確保について
ソシオネクストグループが厳しい事業環境下において競争優位性を確保するためには、経営陣、経営管理、設計・開発、製造技術支援、営業等の各分野において優秀な人材を確保することが重要です。しかしながら、専門性の高い優秀な人材の数は限られており、人材の採用及び確保の競争は激化しています。特にソシオネクストグループのカスタムSoCの設計開発において、エンジニアは重要な役割を担っていますが、ソシオネクストグループがエンジニアを含む優秀な人材を十分に採用及び確保できない場合は、設計・開発に支障をきたす可能性があります。また、ソシオネクストグループから、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合、その者が有するソシオネクストグループの知識やノウハウの流出により、ソシオネクストグループの競争優位性が損なわれる可能性があります。これらにより、ソシオネクストグループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。
(20)情報セキュリティについて
ソシオネクストグループは、事業活動全般において、様々な情報システムを利用しており、災害、戦争、テロ行為、コンピュータウイルスの感染やサイバー攻撃等により、システム障害が発生する可能性があります。また、在宅勤務者の増加等の働き方の変化により、新たなサイバー攻撃等のリスクが生じています。これらにより、ソシオネクストグループの業務活動や製品の製造委託及び供給の停止、重要なデータの喪失、多額の対応費用の発生等が生じた場合には、ソシオネクストグループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。
また、ソシオネクストグループは、事業活動の遂行に関連して、自己又は顧客その他の第三者の秘密情報や個人情報を多数有しております。これらの情報については、セキュリティシステムを整備し、法令や社内規則等に基づき管理しておりますが、不正行為や妨害行為の手法は多様化しており、かつ発見が困難であることや、関係者による意図的な漏洩の可能性もあるため、予防策が奏功せず、予期せぬ事態により情報が流出するおそれがあります。そのような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や、顧客の信用や社会的信用の低下を招く可能性があるほか、システム改修等の対応に要する費用の発生や顧客からの損害賠償請求により、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(21)環境について
ソシオネクストグループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー管理等に関し、世界各国において様々な環境関連法令の適用を受けています。ソシオネクストグループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、過失の有無にかかわらず、過去分を含む環境問題に対して法的又は社会的責任を負う可能性があり、そのような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用負担が発生する可能性、ソシオネクストグループの事業が停止する可能性やソシオネクストグループの社会的信用の低下を招く可能性があります。また、将来、環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなりソシオネクストグループ及び製造委託先の事業活動に制約が生じ、かかる規制に対応するためのコストが増加する可能性や、環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことによりソシオネクストグループに対する社会的評価・信用が低下する可能性があるほか、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(22)法規制等について
ソシオネクストグループはグローバルに事業活動を展開しており、ソシオネクストグループが事業活動を行っている国及び地域における安全保障、外国貿易管理、労働、競争政策、税制、腐敗防止及び環境保護等に関連する様々な法律及び規制の対象となっています。ソシオネクストグループは、かかる法律及び規制のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化のために必要な社内体制を構築しておりますが、かかる体制が適切に機能する保証はなく、また、これらの法律及び規制の新設又は改正により法規制等の遵守が困難になる可能性もあります。これらの法律又は規制に違反した場合、ソシオネクストグループに民事上の損害賠償請求や、刑事上又は規制上の罰則等が科せられ、ソシオネクストグループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。
(23)訴訟等について
ソシオネクストグループは、グローバルに事業を展開しているため、様々な国又は地域において、取引先、従業員、競合他社等から契約違反、労働問題、知的財産権の侵害等に関して訴訟の提起を受け、又は規制当局による措置、処分等に服するリスクを有しています。訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、ソシオネクストグループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によってはソシオネクストグループの事業、財政状態、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に悪影響が生じる可能性があります。
(24)内部統制の整備について
ソシオネクストグループは、財務報告に係る内部統制の整備・運用及び評価のための体制を整備しております。しかしながら、内部統制が有効に機能しなかった場合、又は財務報告に係る内部統制の不備もしくは開示すべき重要な不備が発生した場合、ソシオネクストグループの内部統制への信頼性が失われる結果、株価に重大な悪影響が生じ、又は法令違反、行政処分及び損害賠償請求を受けることにより、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
(25)販売特約店について
ソシオネクストグループは、販売特約店を通じて販売を行ったり、商談を獲得する場合があります。特に、ソシオネクストグループの継続的な販売特約店である加賀FEI株式会社及びその子会社を通じて相当の取引を行っております。そのため、販売特約店の事業活動が中止する又は販売特約店との取引が中止される等の場合、ソシオネクストグループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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