セルシードは、日本発の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製される「細胞シート」を用いて従来の治療では治癒できなかった疾患や障害を治す再生医療アプローチである「細胞シート再生医療」の世界普及を目指して、以下の2つの事業を展開しております。
(1) 「再生医療支援事業」
細胞シート再生医療の基盤ツールである「温度応答性細胞培養器材」及びその応用製品の研究開発・製造・販売、並びに再生医療に関わる総合的なサポートを通じて、再生医療の研究開発・事業化を支援する事業
(2) 「細胞シート再生医療事業」
細胞シート再生医療等製品及びその応用製品の研究開発・製造・販売を通じて、細胞シート再生医療の普及を推進する事業
系統図は次のとおりであります。
①再生医療支援事業
「温度応答性細胞培養器材」及びその応用製品の研究開発・製造・販売
再生医療受託サービス
②細胞シート再生医療事業
細胞シート再生医療事業では患者自身(自己細胞)あるいは患者以外(同種細胞)から必要な細胞を少量採取し、それをセルシードが開発した温度応答性細胞培養器材で培養して組織を作り、患者に提供するというものです。
細胞シート再生医療事業は現在事業化準備段階にあり、セルシードは細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化を目的とした他社との協力体制等も視野に入れ、その実現を目指しております。従いまして事業系統図は、上述の状況等を踏まえた上で具体化していく内容となることから、現段階において事業系統図は記載しておりません。
セルシードの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在においてセルシードが判断したものであります。
(1)経営方針
経営理念として以下の通りミッション及びビジョンを策定し、再生医療の発展に貢献して参ります。
「ミッション」:価値ある、革新的な再生医療をリードし、世界の医療に貢献します。
「ビジョン」:細胞シートビジネスプラットフォームを確立して、最良の製品を世界に届けます。
(2)目標とする経営指標
セルシードは再生医療支援事業と細胞シート再生医療事業を展開しておりますが、いずれの事業もまだ継続的な利益を計上する前の段階にあります。ただし、細胞シート再生医療事業においては、早期売上高計上開始を目指して複数のパイプラインの研究開発を推進しております。また、再生医療支援事業においては、国内外の販売代理店を通じた各種細胞培養器材の販売を推進し、販売促進を通じた売上高増強に努めております。
セルシードは、以上のような売上高増加を目指した様々な事業活動を推進することによって、早期に継続的な黒字化を実現することを中長期的な最重要経営課題としております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
① 再生医療支援事業に関する経営環境及び対処すべき課題
再生医療支援事業の最大の課題は、対象顧客層におけるセルシード細胞培養器材の認知度向上による売上高増加であります。現在国内外の販売代理店及び自社による販促活動に注力しておりますが、特に海外においては認知度向上余地が大きいと考えられます。その施策の1つとして、新規販売代理店の開拓は喫緊の課題であると認識しております。
顧客ニーズに対応した製品ラインナップの拡充も重要な課題であります。操作性の向上を目的とした新しい器材形態の開発や培養する細胞の特性に応じた培養器材表面の調整など様々な要望が顧客から寄せられており、セルシードでも具体的な検討作業を進めております。
また、臨床応用用途の製品開発も重要な課題であると考えております。現在、セルシードが市販している製品は研究開発用途を目的とした製品が主ですが、今後は臨床研究段階や再生医療等製品の製品化の際にも利用可能な製品開発も進めております。
さらに製造コストの引き下げ及び生産能力の拡充も重要課題の1つであります。現在、市販製品については大日本印刷株式会社に製造を委託して製品の安定供給を進めつつ、製造方法の抜本的な変革を目指し製造枚数を飛躍的に増やしつつ製造コストも引き下げる検討を進めて参ります。
② 細胞シート再生医療事業に関する経営環境及び対処すべき課題
(a) 細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化
セルシードの使命である「細胞シート工学」という日本発の革新的再生医療技術を基盤として様々な「細胞シート再生医療」製品を開発し、その世界普及を推進するためには、セルシード細胞シート再生医療第1号製品を日本において早期事業化することが重要であります。セルシードは、まず国内での細胞シート再生医療等製品パイプラインの開発を自社主体で推進し、販売承認取得を目指します。また製造体制・販売体制の確立を通して事業化段階をより前進させつつ、海外展開においては他社との提携等も視野に入れ、細胞シート再生医療事業の拡大を目指して参ります。
(b) 細胞培養施設の運営
再生医療における細胞の培養には、細胞培養施設というバイオクリーンルーム設備が必要となります。セルシードは2016年に当該施設(細胞培養センター)を設置いたしましたが、当該施設は2014年11月施行の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に準拠した設備運営実現のための体制作りを終え、現在はその維持、向上を目指しております。
(c) 細胞シート培養技術者の育成
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行により、企業は医療機関からの臨床用細胞の培養の受託が可能となります。セルシードにとっては、細胞培養施設を所有しない、もしくは有しながらも人的リソースの不足などから効率的な運営ができないなどの問題を抱える大学病院や医療機関などから臨床用細胞シートの製造受託が可能となり、営業収益を拡大する機会となります。しかしながら、細胞シートの培養を適正かつ安全に行うには、十分な教育をうけた技術者の育成が必要であり、また高い技能を有した細胞培養技術者の育成は品質向上につながります。セルシードではこれまで培ってきた細胞シート培養の経験やノウハウを活かし、臨床用細胞シートの培養を適正かつ安全に行うための細胞シート培養技術者の育成を進めて参ります。
③ 事業推進に必要な経営資源・インフラに関する経営環境及び対処すべき課題
(a) 事業資金の確保
セルシードでは、研究開発活動の推進に伴い、運転資金、研究開発投資及び設備投資等、資金需要の増加が予想されます。このような資金需要に対応すべくセルシードは第三者割当増資や公募増資等を実施しましたが、今後さらにエクイティ・ファイナンス、事業提携の実現による開発中品目の上市前における収益化(一時金の獲得など)、国をはじめとする公的補助金、銀行からの借入等の活用などにより資金需要に対応して参ります。また、資金調達手段の多様化により継続的にセルシードの財務基盤の強化を図っていく方針であります。
(b) 人材の採用・育成
再生医療等製品の研究開発には様々な専門スキルを有する人材が必要であります。特に細胞シート再生医療は工学・細胞生物学・化学などの学際分野に属することから多様な専門人材の採用・育成が不可欠です。また、組織規模の拡大・多様化に対応した会社組織としてのガバナンス、従業員サポート、教育の質的向上にも尽力して参ります。
(4)中長期的な経営戦略
セルシードは経営の基本方針に基づき、セルシードが果たすべき基本的使命の確実な遂行により、外部環境の変化に対応して持続的な成長を実現するために、下記概要の通り計画を推進して参ります。
●日本で早期の同種軟骨細胞シートの製造販売承認申請を目指す。
●自己軟骨再生シートは東海大学より先進医療に係る製造を受託。先進医療を見据えて治験実施。
●日本発の細胞シート工学の世界展開のために事業提携を積極的に推進し収益の拡大を目指す。
●再生医療支援製品の新製品開発及び研究用細胞の大量培養を目的とした新たな市場への製品供給並びに海外売上の拡大による需要増加に対応した生産体制・能力を充実、拡大し、更なる収益機会の拡大を目指す。
●受託製造、コンサルティング事業を推進し、更なる収益機会獲得を目指す。
以下において、セルシードの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。セルシードは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生を全て回避できる保証はありません。また、以下の記載はセルシードに関連するリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。
なお、本項中の記載内容については、将来に関する事項は本書提出日現在においてセルシードが判断したものであります。
① 再生医療支援事業・細胞シート再生医療事業の双方に共通するリスク
(a) 知的財産権に関するリスク
セルシードは研究開発活動等に必要な様々な知的財産権を保有しており、これらはセルシード所有の権利・ノウハウであるか、あるいは適法に実施許諾を受けた権利・ノウハウであると認識しております。現在セルシードでは事業に必要な特許を原則として全て自社で確保する方針を採用しており、例えば各再生医療パイプラインに関する基本的な特許についてはセルシードが出願人となって既に出願しております。さらに順次周辺特許の出願等を通じた特許網の拡充にも取り組んでおりますが、一方で出願中の特許については登録に至らない可能性が存在します。また重要なノウハウについては秘密保持契約を課すなどして管理しておりますが、第三者が独自に同様又は類似のノウハウの開発・知得に成功する可能性は否定できません。出願中特許が成立しない場合、事業に必要な特許が何らかの理由で確保できない場合、あるいはセルシードノウハウと同様あるいは類似のノウハウを第三者が開発又は知得した場合、セルシードの事業戦略や経営成績及び外部企業との提携関係に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このような可能性が何らかの形で現実化した場合にはセルシードの財政状態と経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、セルシードの重要な知的財産権については定期的に関連特許出願状況等をチェックしており、重大な問題が生じる前に逸早く対策を打つことができるよう体制の整備を図っております。さらに、継続的に新規特許を出願することによって、セルシード特許網の拡充に努めております。
(b) 技術革新に伴う競合リスク
セルシードは細胞シート工学を基盤技術として細胞シート再生医療等製品・再生医療支援製品の研究開発を進めております。再生医療事業に本格参入している企業はまだ比較的少ないものの、研究開発を進めながら参入を検討している潜在的競合相手は少なくないと想定しております。さらに、本業界における技術の進歩は速く、後発参入製品の機能は先発製品の機能を少なからず上回り、競争が激化することが容易に想定されます。それら競合相手の中には、技術力、マーケティング力、財務状況等においてセルシードと比較して優位にあると思われる企業もあり、製品機能だけでなく、製造能力や生産性及びマーケティング・販売力などでセルシードを上回る可能性が考えられます。このため、セルシードは早期の事業化・収益化を目指しておりますが、これら競合相手との競争においては、計画どおりの収益を上げることができない可能性があります。
(c) 製造物責任に関するリスク
医薬品・医療機器・再生医療等製品の設計、開発、製造及び販売には、製造物責任賠償のリスクが内在しております。セルシードは細胞培養器材について製造物責任保険を一部付保しておりますが、最終的にセルシードが負担すべき賠償額を全額カバーできるとは限りません。従いまして、セルシード製品の欠陥等による事故が発生した場合、セルシードが開発した細胞シート再生医療等製品が患者の健康被害を引き起こした場合、又はセルシード製品の治験、製造、人道的使用に関する説明、営業もしくは販売において不適当な点が発見された場合には、製造物責任を負う可能性があり、セルシードの事業及び財務状況に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、このような事例において結果としてセルシードの過失が否定されたとしても、セルシードに対する製造物責任に基づく損害賠償請求等がなされること自体によるネガティブ・イメージにより、セルシード製品に対する信頼に悪影響が生じ、セルシードの事業に影響を与える可能性があります。
(d) 研究開発活動に由来するリスク
セルシードは研究開発型企業として、産学連携のもと、大学との共同研究や治験を進めております。またセルシードが手掛けている細胞シート再生医療事業及び再生医療支援事業そのものが新しいため、社内のほぼすべての部署が直接的又は間接的に研究開発に深く関与しており事業予算に占める研究開発費は多額なものとなっております。
しかしながら、研究開発活動が計画どおりに進む保証はなく、当該研究開発の成果がセルシードの予想どおりに上がらず、セルシードの事業戦略、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
セルシードが進めている細胞シート再生医療事業及び再生医療支援事業は、製品開発に長期間を要し、かつ、細胞シート再生医療事業での治験承認や製造販売承認等の薬事承認プロセスにも不確定要素が多いため、事業計画における研究開発期間が想定以上に延びた場合等に、研究開発費の負担増がセルシード業績を圧迫するなど経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(e) ビジネスモデルに由来するリスク
ⅰ)大学及び研究機関等との関係に由来するリスク
セルシードは、東京女子医科大学・東海大学を始めとする大学や他の研究機関との連携を通じて、研究開発活動や事業基盤の強化を行っております。具体的には、セルシードの事業に関し、大学教員と顧問契約を締結して技術指導を受ける、または大学・研究機関等と共同研究を行うなどしております。しかしながら、大学教員と企業との関係は法令や各大学の規程等に影響を受ける可能性があり、また国立大学の独立行政法人化により大学の知的財産権に対する意識も変化しつつあります。従いまして、セルシードの希望どおりに共同研究や権利の譲受を行うことができない可能性があり、かかる場合にはセルシードの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ)提携に関するリスク
セルシードの事業計画には、外部企業との提携関係を前提にした部分が存在します。前提となっている提携関係には既に契約済みのものと今後契約することを想定したものの両方がありますが、既に契約済みの提携については提携先の都合による契約終了や契約条件変更のリスクがあり、今後契約することを想定した提携については想定どおりの時期・条件で契約できないリスクが存在します。いずれの場合が現実化した場合でも、セルシードの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② 再生医療支援事業に関するリスク
現在セルシードは、販売代理店を通じて日本国内・海外双方でUpCellを始めとする各種細胞培養器材を販売しております。セルシードの再生医療支援事業の製品は多くはこれまでに例をみない全く新しい種類の製品であり、付加価値が大きい分、価格も高く設定されております。従いまして、今後必ずしもセルシード計画どおり販売数量が伸びるとは限らず、また販売促進などの理由から価格を下げる戦略を採用した結果収益性が低下する可能性も否定できません。またセルシードでは、温度応答性細胞培養器材の生産能力の大幅増強や生産コストの引き下げ、さらには新しい温度応答性細胞培養器材の研究開発に取り組んでおりますが、これらの取り組みが実際にセルシードの事業計画や経営成績に与えるインパクトについては現時点では定かではありません。
③ 細胞シート再生医療事業に関するリスク
(a) 先端医療に関する事業であることに由来するリスク
まず一般論として、再生医療は世界的に見てまだ本格的な普及段階に至っておらず、特に日本では最近まで主に特定の医師・医療機関が用いる高度な医療技術として比較的限定された範囲での臨床応用を中心として行われてきた経緯があります。
こういった現状の背景には、最先端の医療・医薬品に特有の課題やリスクが存在します。まず再生医療の基盤となる学問や技術が急速な進歩を遂げている中で再生医療等製品そのものに関する研究開発も非常に速いスピードで進んでおり、日々新しい研究開発成果や安全性・有効性に関する知見が生まれて来ています。セルシードの基盤技術である細胞シート工学は現時点では新規性の高い再生医療技術であり、また学術的に見ても安全性・有効性・応用可能性ともに他の再生医療等製品よりも優れていると自負しておりますが、一方で常に急激な技術革新の波に追い越されるリスクや想定していない副作用が出るリスクが存在し、またそのためにセルシードの事業戦略や経営成績に重大な影響が出る可能性があります。
(b) 法規制改正・政府推進政策等の変化に由来するリスク
再生医療等製品に関連する法規制についても、最新の技術革新の状況に対応すべく常時変更や見直しがなされる可能性があります。例えば、法律・ガイドライン等の追加・改正により、これまで使用が認められてきた原材料が突然全く使用できなくなるといったリスクやセルシードの想定通りの内容で薬事承認が下りない又は薬事承認の取得に想定以上の時間を要するといったリスクも否定できません。また世界的な医療費抑制の流れの中で、セルシードが想定している製品価値よりも低い薬価・保険償還価格となる可能性もあります。当然このような場合には、セルシードの事業戦略や経営成績に重大な影響が出る可能性があります。
(c) 事業基盤の整備・確立に係るリスク
細胞シート再生医療事業には、まだ確立された事業基盤が存在しないことに起因するリスクが存在します。細胞シート再生医療事業を長期的に持続可能な事業構造にするためには様々な事業基盤の整備・確保が必要で、その一部にはセルシードのみならず関連する官庁・企業・業界も一緒になって整備・拡充に取り組む必要がある社会的基盤もあります。また、セルシードは再生医療等製品の製造企業としての製品供給体制の確立へ向けた取り組みを推進しております。こういった取り組みの中には、先行投資を回収し得る利益率を達成できるだけの製造原価低減、医師に適切な内容・量の製品情報を届けることができるマーケティング・販売体制の構築、製造販売開始後のフォローアップ体制の確立など多くの課題が存在し、その解決のためには時間と多額の費用が必要となります。さらに言えば、セルシードの想定どおりに市場を開拓することができる保証はございません。セルシードでは大手製薬企業などで豊富な実務経験を積んだスタッフを採用して事業基盤の確立に取り組んでおりますが、細胞シート再生医療事業の基盤の整備・構築にあたっては上述の通りセルシードの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす不測の事態が発生するリスクが存在します。
(d) ヒト又は動物由来の原材料の使用に関するリスク
一般的に、再生医療等製品はヒト細胞・組織を利用したものであり、利用するヒト細胞・組織に由来する感染の危険性を完全に排除し得ないことなどから安全性に関するリスクが存在するとされています。
また、やはり一般的に再生医療等製品は、原材料や製造工程で使用する培地に動物由来原料を使用することがあり、この動物由来原料の使用によって未知のウイルスによる被害等が発生する可能性を否定できません。
以上のように、一般的に再生医療等製品には原材料として使用するヒト又は動物由来材料に起因する感染リスクなどヒト又は動物由来材料(又はその一部)が患者の体内に移植されることに伴うリスクが存在し、そのリスクがセルシードの事業及び財務状況に重大な悪影響を及ぼす可能性は否定できません。
また、このような事例についてセルシードの過失が否定されたとしても、ネガティブ・イメージによる業界全体及びセルシード製品に対する信頼に悪影響が生じ、セルシードの事業に影響を与える可能性があります。
④ 財務状況に由来するリスク
(a) マイナスの利益剰余金を計上していることに由来するリスク
現時点ではセルシードは研究開発活動を中心とした企業であり、細胞シート再生医療等製品が販売されるようになるまでは多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、当事業年度末において△1,606,214千円の利益剰余金を計上しております。
セルシードは、将来の利益拡大を目指しております。しかしながら、セルシードは将来において想定どおりに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、セルシードの事業が計画どおりに進展せず当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。
(b) 税務上の繰越欠損金に関するリスク
セルシードには現在のところ税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、事業計画の進展から順調にセルシード業績が推移するなどして繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純利益又は当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(c) 資金繰り及び資金調達に関するリスク
セルシードでは、研究開発活動の推進に伴い営業キャッシュ・フローのマイナスが生じており、今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要が想定されます。このような資金需要に対応すべくセルシードはこれまでに第三者割当増資や公募増資等を実施しましたが、今後さらにエクイティ・ファイナンス、事業提携の実現による開発中品目の上市前における収益化(一時金の獲得など)、国をはじめとする公的補助金等の活用などにより資金需要に対応していく方針です。また、資金調達手段の多様化により継続的にセルシードの財務基盤の強化を図ってまいりますが、エクイティ・ファイナンスや売上収入・提携一時金及び公的助成金・補助金等の獲得を含めた資金調達が想定どおり進まない場合等、資金繰りの状況によってはセルシードの事業活動等に重大な影響を与える可能性があります。
また、将来増資などのエクイティ・ファイナンスを実施した場合には、セルシードの発行済株式数が増加することにより1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(d) 配当政策に関するリスク
セルシードは設立以来配当を実施しておりません。また、セルシードは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は内部留保の充実に努め研究開発資金の確保を優先することを基本方針としております。また、株主への利益還元も重要な経営課題の1つであると認識しており、経営成績と財政状態を勘案して利益配当も検討してまいります。しかしながら、事業等の進捗によっては利益配当までに時間を要する可能性があります。
⑤ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク
セルシードは、ストック・オプション制度を採用しております。2015年8月13日開催、2017年8月10日開催及び2020年7月21日開催の取締役会において会社法第236条、第238条及び第240条の規定に基づく新株予約権付与に関する決議を行いました。当該新株予約権の行使が行われた場合には、セルシードの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材確保のために、同様なインセンティブプランを継続して実施していくことを検討しております。従いまして、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合には、セルシードの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
またセルシードは2023年5月15日開催の取締役会において第三者割当による新株予約権の発行による資金調達を決議いたしました。当該新株予約権の行使が行われた場合には、セルシードの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑥ 人材及び組織に関するリスク
(a) 特定の人材への依存に由来するリスク
セルシードでは、過度に特定の人材に依存しない組織的な経営体制の構築を進めておりますが、現時点で何らかの事由で特定の人材がセルシードの業務を継続することが困難になった場合、セルシードの事業展開や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(b) 人材の確保及び育成に関するリスク
セルシードの事業活動は、現在の経営陣、各部門の責任者と構成員等に大きく依存しております。そのため、優秀な人材の確保と育成に努めておりますが、人材確保又は育成が計画どおりに行えない場合、セルシードの事業展開や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(c) 小規模組織であることに由来するリスク
セルシードの組織は小規模であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大に伴い、内部管理体制の一層の充実を図る方針ではありますが、セルシードが事業拡大に応じて適切かつ十分な組織対応ができない場合には、組織効率が低下したり十分な事業活動が行えない可能性があります。また、人員の増加とそれに連動する人件費の増加によって、経営効率が低下する可能性があります。
⑦ 訴訟について
セルシードは国内外で事業を遂行する上で、訴訟やその他の法的手段の当事者となる可能性があり、重要な訴訟等が提起された場合又は事業遂行の制限が加えられた場合、セルシードの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、セルシードは2024年2月6日付で三顧股份有限公司(MetaTech(AP)Inc.)から契約上の地位確認等請求の訴訟を提起されております(訴状送達日、2024年3月7日)。セルシードは、2023年12月18日付で三顧股份有限公司(MetaTech(AP)Inc.)に対し、独占的事業提携契約の条項に則り、締結済みの全ての契約関係を解消することとしておりましたが、三顧股份有限公司(MetaTech(AP)Inc.)は、訴状において当該契約関係の解消の無効を主張し、当該契約上の当事者の地位にあることの確認を求めております。セルシードは、三顧股份有限公司(MetaTech(AP)Inc.)の訴えとは法的見解を異にしており、今後、訴訟において適切に対応してまいります。現時点ではセルシードの財政状態、経営成績に与える影響はないと判断しておりますが、今後、裁判の結果によっては、セルシードの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 継続企業の前提に関する重要事象等
セルシードは、セルシード新株予約権の行使による資金調達の実施により、当事業年度末の手元資金(現金及び預金)残高は2,163,292千円となり、財務基盤については安定的に推移しております。一方で事業面におきましては細胞シート再生医療事業の重要課題であるセルシード細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の道程を示すまでには至っておらず、セルシードは当事業年度末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると判断しております。
セルシードは当該状況の解消を図るべく、以下の施策に取り組んで参ります。
セルシード細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の実現と事業提携の推進による収益機会の獲得
セルシードは、今後、同種軟骨細胞シートの開発を推進し、セルシード細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化を実現すること、また事業提携先の開拓を通じて、更なる収益機会を獲得していくことで当該状況の解消を図って参ります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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