住友商事(8053)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


住友商事(8053)の株価チャート 住友商事(8053)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

 

3 【事業の内容】

住友商事グループは、長年培ってきた信用、国内外のグローバルネットワーク、あらゆる分野の取引先とのグローバルリレーション、知的資産といったビジネス基盤と、ビジネス創出力、ロジスティクス構築力、金融サービス提供力、IT活用力、リスク管理力、情報収集・分析力といった機能を統合することにより、顧客の多様なニーズに応え、多角的な事業活動をグローバル連結ベースで展開しております。

住友商事は戦略を軸とする「Strategic Business Unit」(SBU)を基本単位とし、戦略上の親和性の高いSBUを束ねる組織として9つのセグメント(グループ)に区分しております。住友商事の各グループ、及びその関係会社、各地域拠点が共同でそれぞれの事業を推進しております

住友商事グループの事業セグメント毎の取扱商品又は事業の内容、及び主要な関係会社名は以下のとおりであります。

セグメント

取扱商品又は事業の内容

主要な関係会社名

鉄鋼

鋼管・鋼材等の鉄鋼製品の国内・貿易取引、加工及び関連事業を推進。

住友商事グローバルメタルズ(子)

Eryngium(子)

Edgen Group(子)

自動車

自動車、タイヤ及びその他関連商品の製造、販売、リース並びにこれらの関連サービス・周辺事業を推進。

住友商事パワー&モビリティ(子)

住友三井オートサービス(持)

TBC Holdings(持)

輸送機・建機

リース・ファイナンス事業、航空機・船舶海洋・建設機械事業、防衛宇宙・安全保障ビジネスを推進。

住友精密工業(子)

SMS Construction And Mining
Systems(子)

三井住友ファイナンス&リース(持)

都市総合開発

不動産・工業団地・サステイナブルシティ・基幹インフラの開発・運営・アセットマネジメント事業、建設資材の製造・販売、産業機器の販売事業及び物流・保険関連事業を推進。

住友商事マシネックス(子)

住商グローバル・ロジスティクス(子)

アイジー工業(子)

メディア・デジタル

デジタルソリューション事業、情報インフラ事業、モバイル付加価値サービス事業、第5世代移動通信システム(5G)事業、ケーブルテレビ事業、テレビ通販事業、映像コンテンツ関連事業、グローバルCVC事業(スタートアップ投資)を推進。

SCSK(子)

JCOM(持)

ジュピターショップチャンネル(持)

ライフスタイル

食品スーパー・ブランド等のリテイル事業、食品・食品原料や青果等の食料事業、ドラッグストア・調剤薬局及びマネージドケア・クリニック等のヘルスケア事業を推進。

サミット(子)

トモズ(子)

Fyffes International(子)

資源

金属資源等の開発・操業・生産、製品の製造・販売及び商品デリバティブの活用等の幅広い機能を提供するトレードビジネスを推進。

Sumisho Coal Australia
Holdings(子)

SC Quebrada Blanca(子)

Oresteel Investments(持)

化学品・

エレクトロニクス・

農業

化学品のトレード・製造事業、電子材料トレード及び電子機器製造受託事業、医薬関連事業、化粧品関連事業、アニマルヘルス事業、農業資材販売事業の推進。

住友商事ケミカル(子)

スミトロニクス(子)

Sumi Agro Europe(子)

エネルギートランス
フォーメーション

国内外における発電事業、国内電力小売事業、天然ガス・LNG等のエネルギー権益開発・生産及び販売事業、海洋インフラ・船舶燃料供給事業、次世代エネルギー分野での事業開発を推進。

サミットエナジー(子)

Central Java Power(子)

Pacific Summit Energy(子)

 

(注)(子)は連結子会社、(持)は持分法適用会社であります。


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

●住友商事が目指すもの

住友商事は、住友商事グループのコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」に込めた「世界を、社会を、人々の暮らしを、より豊かにする」という想いと共に、社会課題の解決を通じて社会と共に持続的に成長する企業グループを目指しております。

 

●中期経営計画「SHIFT 2023」(対象:2021年度~2023年度)の総括

住友商事は、2021年度から2023年度までの3か年を対象とする「SHIFT 2023」において「事業ポートフォリオのシフト」、「仕組みのシフト」、「経営基盤のシフト」の3つのシフトを着実に実行し、住友商事事業ポートフォリオの強化に向けて総力をあげて取り組みました。

 

 (1) 定量計画の成果

    住友商事の利益水準は前中期経営計画期間と比べて大きく向上し、「SHIFT 2023」開始時に計画値として 

   掲げた水準を超える結果となりました。ROEは2021年度・2022年度ともに16.2%を記録しましたが、2023

   年度は一過性損失もあったことから9.4%となりました。

  3年合計キャッシュ・フローは、一株当たりの配当額の増加や自己株式取得などによって株主還元を充 

 実させつつも、株主還元後フリーキャッシュ・フローの黒字を確保し、財務健全性を維持しました。

 


 

 (2) 「SHIFT 2023」における主な取組の総括

「SHIFT 2023」においては、構造改革の遂行により、下方耐性を強化しつつ、収益力を一段レベルア 

 ップさせました。

また、気候変動や人権など社会課題に対する中期目標に基づき各Strategic Business Unit(SBU)が戦 

略的に取り組むとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けたポートフォリオシフトや人権デュ

ーデリジェンスの実施等、サステナビリティ経営を推進しました。

  新中期経営計画においては、事業ポートフォリオ変革をより一層加速させます。そのために資産入替

 を含めた新陳代謝を高め、成長を牽引する収益の柱の構築にこれまで以上に重点的に取り組みます。


 

●マテリアリティの更新

「中期経営計画2026」で新たな成長ステージに移るにあたり、社会課題の解決に資する価値創造が住友商事グループの持続的な成長に繋がるとの観点から、マテリアリティを更新しました。気候変動や生物多様性の喪失など社会課題の一層の深刻化等の外部環境の変化や住友商事グループの強み、ステークホルダーからの期待も踏まえ、住友商事グループが取り組むべき重要な社会課題とその解決に向けた一層のコミットメントを示すものであります。

 



 

マテリアリティ毎に設定した長期・中期目標に対してアクションプランを策定・実行し進捗レビューを行うPDCAサイクルを継続することで、社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現してまいります。例えば、世界全体で取り組むべき喫緊の課題である気候変動問題に関しては、サプライチェーン全体を俯瞰した取組を通じ、社会のカーボンニュートラル化の実現に向けてより一層貢献してまいります。

 

 

●中期経営計画2026

新しい成長ステージに入る「中期経営計画2026」のテーマは「No.1事業群」であります。競争優位を磨き、社会課題解決を通じた飛躍的な成長を実現すべく、「事業ポートフォリオ変革」を加速させます。そのために、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組みます。

 


 

 (1) 事業ポートフォリオ変革

    以下の取組を通じて事業ポートフォリオの新陳代謝を加速させることで、成長を実現します。

 ・魅力ある市場で強みや競争優位性を発揮できる事業への経営資源(資金・人材)の重点配分

 ・資産入替による経営資源の回収を含む、打ち手と時間軸を定めた低成長事業の再構築

 ・4つの事業戦略分類や事業別の資本コスト対比での事業戦略管理の継続活用

 


 

 (2) 強みを核とした成長

  ① 競争優位のある事業をより強く

    ・成長事業において長年にわたり蓄積してきた事業経営ノウハウやネットワーク、強固なポジショ 

    ニング等の強みの磨き上げ

   ・新しい営業グループとして結集したSBU間での連携強化による、成長事業を起点とした産業の枠組

    を超えた新たな価値創造

 

  ② デジタルとグリーントランスフォーメーション(GX)で加速する新たな成長

   デジタルで加速する新たな成長

   ・デジタルによる、住友商事事業の強み・競争優位のさらなる強化、及び新たな強みの育成による成長  

    の加速

   ・デジタルによる、経営基盤・業務の変革、及び住友商事事業の収益拡大と事業創出・変革を実現する

    ことでの稼ぐ力の強化

 

   GXで加速する新たな成長

   ・GXによる住友商事事業の強み・競争優位のさらなる強化

   ・様々な産業分野における、脱炭素・低炭素エネルギー源への転換などに関する、市場形成を含め

    た収益化までの時間軸も考慮した取組

   ・GXの基盤となるサステナビリティ経営の更なる推進(サプライチェーン全体での温室効果ガス排出

    量の可視化、人権・自然資本への影響等も統合的に勘案した課題解決の実践)

 

 (3) 成長の原動力の強化

  ① 戦略軸の組織体制への移行・見直し

     経営会議及び営業組織の体制を以下のとおり見直し、全社最適の視点と営業グループの視点を組    

    み合わせ、強い組織力と総合力を追求していきます。

   ・意思決定の高度化とスピード化のための経営会議の構成メンバー及び決議方法の見直し

   ・戦略に応じた組織構成の最適化及び機動力向上のため、20の営業本部を戦略単位毎に44のSBUに再 

    編し、SBUを束ねる組織として営業グループを設置

   ・営業グループにコーポレート機能の一部を組み込み、より自律性を高める組織運営体制を構築

   ・住友商事グローバル拠点が一体となって行う、世界各地域におけるSBU戦略遂行や収益向上の取組

 

  ② 人・組織のエンパワーメント

    新たな組織体制で価値創造の原動力である人材の力を引き出し、戦略の実行力を強化していきま 

   す。具体的には、「事業構想力」、「リーダーシップ」、「スピード」を3つの優先事項として、以

   下のような様々な施策を実施していきます。

   ・求める人材要件の明確化を起点としたタレントマネジメント

   ・権限委譲を伴うラインマネージャーエンパワーメント

   ・リーダーが率先するオープンでフラットなコミュニケーション

 

 (4) 定量計画

   ① 経営環境

      住友商事は、2024年4月1日付で、「事業部門」・「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」及び 

     「本部」・「部」を廃止し、戦略事業単位である「Strategic Business Unit」(SBU)をベースとした 

     組織運営を行っております。SBUを束ねる組織として、新たに「鉄鋼」「自動車」「輸送機・建機」 

     「都市総合開発」「メディア・デジタル」「ライフスタイル」「資源」「化学品・エレクトロニク 

     ス・農業」「エネルギートランスフォーメーション」の9グループを設置しております。

 

   全般

    世界経済は、緩やかな景気回復基調が継続する見通しであります。しかし、これまでの物価上昇や 

   金融引き締めが個人消費や設備投資の重しとなっております。

   先進国経済のうち、米国は緩やかな景気回復基調が続くと見込まれます。ユーロ圏経済は足踏みが 

  続いてきましたが、今後は緩やかな持ち直しの動きに転じると見込まれます。日本は、一部で足踏み 

  となっておりますが、総じて見れば緩やかな景気回復基調が続いております。新興国経済のうち、中   

  国では不動産部門の不振が景気の重しとなり、成長ペースの鈍化が継続する一方で、他の多くの新 

  興・途上国では緩やかな景気回復が続くと見込まれます。

   今後のリスクとしては、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢の更なる緊迫化、 

  物価上昇の再加速やそれに伴う金融引き締め政策の強化、新興国の債務問題、北東アジア、中東・北 

  アフリカなどの地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。

 

   鉄鋼グループ

   当グループは、鋼管・鋼材などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っております。

  鋼管分野では、米国では鋼管価格が足元低調に推移しているものの、鋼管需要の回復に伴い、鋼管価 

  格も緩やかに上昇する見通しであります。非米向けは、引き続き需要好調の見通しであります。ま

  た、世界各国でエネルギー安定供給の重要性から石油・ガス開発は維持され、加えて脱炭素に向けた

  エナジートランジションの動きも継続するものとみられます。

   鋼材分野では、物価上昇の影響を受けた買い控えにより、自動車、家電、建築土木において需要が

  弱含みとなりました。とりわけ中国では不動産部門の不振により内需が振るわない状況が継続する

  中、中国国外への輸出量を含め、今後のグローバル市場全体における鉄鋼の需給動向を注視していき

  ます。

   このような環境を踏まえ、当グループとしては既存事業を堅持しつつ、当グループが強みを有する

  事業・地域に経営資本を傾注し、収益力を強化してまいります。また、DXを通じた新たな価値提供、 

  再生可能エネルギー・CCSなどカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による産

  業のGX実現への貢献にも取り組んでいきます。

 

   自動車グループ

    当グループは、自動車業界のバリューチェーンを俯瞰し、自動車、タイヤ、及びその他関連商品の

   製造、販売、リースならびにこれらの関連サービス・周辺事業を行っております。

    当グループを取り巻く環境では、各国の経済発展、人・モノの移動の増加を支える自動車ニーズの 

   伸長、所有から利活用(リース・レンタル・サブスクリプション等)へのシフト、カーボンニュートラ

   ル実現へ向けた環境車の普及、循環型経済の構築へ向けた再利用・リサイクル促進へのニーズが高ま 

   っております。一方で、地政学リスクがもたらすサプライチェーンに与える影響、原材料コスト・人

   件費・金利等の上昇による経済の成長鈍化懸念があり、動向を注視しております。

    このような環境を踏まえ、自動車流通販売事業における商品や販売・サービス網の拡充による成長 

   促進、部品製造事業・販売金融事業・タイヤ販売事業のバリューアップによる収益規模拡大、自動車

   リース事業を軸とするモビリティサービス領域におけるサービス拡大と新たな事業機会の取り込み、 

   Beyond Mobility(移動から発生する、移動を越えた領域)の新規事業の創出・育成に取り組んでいき

   ます。

 

   輸送機・建機グループ

   当グループは、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーンを展開する航空機・船 

  舶海洋・建設機械事業、高い専門性を持つ防衛宇宙・安全保障ビジネスを中心に、各種取引及び事業

  投資を行っております。

   当グループを取り巻く事業環境は、金融政策の影響や金利高止まりによる景気減速懸念はあります

  が、足元では航空需要は2019年の水準まで回復し、海上貨物輸送やインフラ建設・更新の需要は堅調

  で、いずれも引き続き成長が見込まれます。同時に、脱炭素社会や循環経済の実現に向けた社会的な

  要請が一層高まっております。

   こうした環境を踏まえ、当グループは強みを持つ事業の収益性向上と基盤拡大に注力します。リー

  ス・ファイナンス事業では優良資産の積み上げと資産効率の向上を図り、建設機械事業では事業基盤 

  の拡大と商品・サービスの多様化を進めます。

   また、航空機事業における退役機の部品販売を始めとするアフターマーケット事業、船舶海洋事業

  における洋上風力で使用される構造物の製造など、社会的な課題やニーズに応える事業を積極的に進

  め、成長を加速していきます。

 

   都市総合開発グループ

   当グループは、不動産・工業団地・サステナブルシティ・基幹インフラの開発・運営・アセットマ 

  ネジメント事業、建設資材の製造・販売及び産業機器の販売事業、物流・保険関連事業を展開してお

  ります。

   不動産分野では米国のオフィスビル賃貸市況の低迷等により海外不動産事業は低調に推移しました

  が、国内不動産事業は堅調に推移しました。また国内の建設資機材及び機械設備のトレード事業もコ 

  ロナ後の国内設備投資の回復により堅調を維持しました。マクロ環境としては引き続き、自然環境や

  次世代生活環境への危機意識の高まり、地政学リスクへ対応するための市場ニーズやビジネスモデル

  の変化が挙げられますが、日米を中心とした政策金利動向やコスト上昇に伴う不動産等の市況の変化

  には注視が必要であります。

   このような環境を踏まえ、自然環境に配慮した安心安全で災害に強いインフラ開発や街づくりの需 

  要や、地政学リスクや環境問題に対応するためのグローバルな製造・流通網の変革ニーズを商機と捉 

  え、機構改正により融合した当グループの不動産とインフラのビジネス推進力でグローバルに都市総 

  合開発事業を展開していきます。

 

   メディア・デジタルグループ

   当グループは、デジタルソリューション事業、情報通信インフラ事業、モバイル付加価値サービス  

  事業、第5世代移動通信システム(5G)事業、ケーブルテレビ事業、テレビ通販事業、グローバルCVC

  事業(ベンチャー投資)を行っております。

   取り巻く環境として、デジタル関連事業ではデジタル技術による社会課題解決やビジネス変革の機

  会が拡大し、DXソリューションのニーズが高まっております。情報通信インフラ事業ではミャンマー 

  及びエチオピアの地域の発展に伴うニーズ拡大が見込まれます。5G関連では高速・大容量通信の需要

  拡大により、携帯キャリアの基地局整備が進んでおります。メディア関連事業では、視聴形態の多様

  化や新たなサービスのニーズが見込まれます。

   このような環境を踏まえ、デジタル関連事業では提案力と事業基盤を強化・拡大し、コンサル・DX 

  事業に取り組みます。情報通信インフラ事業では長年の通信事業経験を活かした通信キャリア向けサ

  ービスの開発・展開に取り組みます。5G関連では基地局シェアリング事業拡大に取り組みます。メデ

  ィア関連事業ではJCOM社の企業価値最大化と従来のテレビ通販事業からテレビとECを融合したビジネ

  スモデルへの変革に取り組みます。

 

 

   ライフスタイルグループ

   当グループは、食品スーパー・ブランドなどのリテイル事業、食品・食品原料や青果などの食料事 

  業、ドラッグストア・調剤薬局及びマネージドケア・クリニックなどのヘルスケア事業を展開してお

  ります。

   リテイル及び食料分野では、消費者の価値観やライフスタイルの多様化・ニーズの細分化、食と健

  康に関する消費者意識の高まりが見込まれます。ヘルスケア分野においては、高齢化加速に伴う医療 

  費適正化ニーズが加速する見通しであります。また、全般的に気候変動や地政学リスクの継続や人件

  費・燃料費の高止まりの懸念があり、動向を注視していきますが、生活を支える事業としての社会的 

  重要性は引き続き高いものになっていくものと見ております。

   このような環境を踏まえ、リテイル事業を中心に圧倒的な顧客へのアクセスを持つ強みを生かし、

  データ活用によるマーケティング及びDX推進によるオペレーションの高度化や新規事業拡大に取り組

  みます。また、国内外の医療費高騰の解決に向け、プライマリケア・地域包括ケア関連事業の拡大に 

  努めます。食料分野では、食料・食品の調達・加工・販売のノウハウとネットワークを生かした収益

  基盤の拡大と成長が見込まれる分野への事業展開を図ります。

 

   資源グループ

   当グループは、金属資源等の開発・操業・生産、製品の製造・販売を展開し、トレード分野でも当 

  社事業とのシナジー発揮や、商品デリバティブの活用等、多様な機能を提供しております。

   資源価格は、2022年度から全般的に落ち着きを見せ、足元は軟化傾向にありますが、中長期の市況 

  変動サイクル、業界におけるプレイヤー・地域の偏在性、経済安全保障・技術革新を含むバリューチ

  ェーンや需給バランスの環境変化、資源案件開発の高難度化等の諸環境を踏まえ、住友商事ならではの経 

  験・強みを発揮し、競争優位を磨き、社会課題解決を通じた成長を図る事業ポートフォリオ、基盤の 

  改善・強化を進めております。

   下振れ耐性の強化と収益基盤の拡充の観点から、足元では、マダガスカルのニッケル事業の再構

  築、既存権益の安定操業の維持・拡大、将来的に需要増が見込まれる金属資源等の優良資産の積み増 

  しに向けた取り組みの他、環境負荷の低減に資する投資や機能提供の促進、気候変動緩和に寄与する

  バリューチェーンの構築を推進しております。当グループは、これらの取り組みを通じて、日本及び

  世界の産業発展と持続可能な社会の実現に貢献し、人々の豊かな未来を創造することを目指します。

 

   化学品・エレクトロニクス・農業グループ

   当グループは、基礎化学品、農業資材、医薬、化粧品、動物薬、エレクトロニクス材料・製品の開

  発、製造、販売事業を展開しております。

   2023年度は、農業資材分野においては市況悪化及び天候要因により、エレクトロニクス材料・製品 

  分野においては半導体需要低迷により、低調な推移となりましたが、2024年度は、農業資材分野にお

  ける事業環境の改善や半導体の需要回復、基礎化学品分野の堅調な推移などを見込んでおります。

   このような環境を踏まえ、農業資材分野では、販売事業の地理的拡大及び機能の拡充に注力し、イ

  ノベーション分野のビジネスを推進します。2023年度に米国硫酸事業を買収した基礎化学品分野で

  は、強みである顧客・仕入先、製造事業、物流アセット等の事業基盤を活かした機能の拡充により、

  収益力及び下振れ耐性を更に強化します。グリーンケミカル分野では、カーボンニュートラル及び循

  環経済に資する取り組みや、経済安全保障のニーズの高まりを踏まえた新規事業の開発に注力してい

  きます。また、ライフサイエンス分野やエレクトロニクス分野においても、変化を先取りし、新たな

  ビジネスを創出していきます。

 

 

   エネルギートランスフォーメーショングループ

   当グループは、国内外における発電事業、国内電力小売事業、天然ガス・LNGなどのエネルギー権 

  益開発・生産及び販売事業、海洋インフラ・船舶燃料供給事業、カーボンニュートラル社会実現に資

  する次世代エネルギー分野での事業開発を行っております。

   電力EPCプロジェクトでは複数案件で完工を達成し、発電事業も堅調に推移しております。国内電

  力小売事業においては、顧客との契約更改を含む市況リスクマネジメント強化の結果及び電力調達価

  格が年度を通じて安定的に推移したことにより収益改善を果たしております。

   エネルギー分野においては、一部トレード事業において前年度好調の反動があったものの、市況の

  高止まりや価格変動を上手く収益化したことにより、エネルギートレードビジネスは好業績で推移し

  ました。このような環境を踏まえ、当グループでは世界的な地政学リスクの高まりに備えるためにも

  市況変動リスク管理を一層強化いたします。

   また2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、住友商事発電ポートフォリオの低炭素化を促進する 

  新たな電力・エネルギーサービスの事業化を進め、次世代エネルギー関連事業の開発にも引き続き取

  り組んでいきます。

   不可逆的なGX潮流を事業機会と捉え、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築やサステナブルな

  カーボンサイクル実現を通じて、住友商事グループ全体のエネルギートランスフォーメーション事業

  を牽引していきます。

 

   ② 定量計画

   ・利益計画

     「中期経営計画2026」の期間においては、ROE12%以上を維持しつつ、競争優位を発揮する成

   長事業を伸ばすことで、2024年度は5,300億円、2026年度は6,500億円の当期利益の実現を目指し

   ます。

 


 

    2024年度業績見通しの内訳は以下のとおりです。

    資源ビジネスは、前期好調だったガストレード事業の反動、及び石炭価格下落の影響により減 

   益となりますが、非資源ビジネスは、鋼管事業、建設機械事業、不動産事業、アグリ事業などを 

   中心に着実な利益成長を見込んでいます。

 


 


 

   ・キャッシュ・フロー計画

    資産入替とキャッシュ・フロー収益力向上により2.8兆円のキャッシュを創出し、財務健全性を 

   維持しながら、創出したキャッシュを成長投資と株主還元に適切に配分してROEの向上を図りま

   す。

 


 

 (5) 株主還元方針

  「中期経営計画2026」以降の株主還元方針については、「SHIFT 2023」を通じて実現した基礎的な収

  益力の向上、継続的な財務基盤の強化、持続的成長のための投資資金の確保などの要素を総合的に勘案

  し、以下のとおりとしました。

  ・総還元性向を40%以上として、配当及び柔軟かつ機動的な自己株式取得を実施

  ・累進配当(注)により、配当の更なる安定性向上及び利益成長に応じた増配を目指す

 

 (注)1株当たり年間配当金の前期実績に対して、配当維持又は増配を行うことを指します。

 

  詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。

 

 


事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

住友商事の事業その他に関するリスクとして投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末日(2024年3月31日)現在における住友商事の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予測等であり、多くの要因によって実現しない可能性があり、また、予測等に基づき策定した中期経営計画を修正する可能性や達成できない可能性もあります。

 

(1) 住友商事グループにおけるリスクマネジメントの基本方針・体制

住友商事においては、「リスク」を「あらかじめ予測し若しくは予測していない事態の発生により損失を被る可能性」及び「事業活動から得られるリターンが予想から外れる可能性」と定義し、以下3点をリスクマネジメントの目的としております。

 

① 「業績安定」
② 「体質強化」
③ 「信用維持」

 

住友商事は、営業活動を投資と商取引に大別の上、それぞれに固有のリスクファクター及び双方に共通するリスクファクターを特定し、その発生する蓋然性及び発生した時の影響を分析・評価しております。

 


 

 

(2) 事業投資に係るリスク

① 全般

当連結会計年度末現在、住友商事は633社の連結子会社及び251社の持分法適用会社を有しています。住友商事では連結子会社及び持分法適用会社への投資に関しては、技術革新等を含む事業環境の変化や、主要顧客の喪失、原料価格の上昇等により、計画した利益が獲得できず、投下資金の回収不能や撤退時における追加の資金負担といったリスクが考えられます。住友商事ではこれらリスクを管理するため、新規投資実行時及び実行後のモニタリングに大別して様々な制度を導入しています。

(a) 新規投資実行時

取り組みの初期段階から「投資テーマ」を明確にし、デューデリジェンスによって重点的に検証しています。加えて、当該事業リスクに応じた割引率を適用することにより、投資対象の「適正な価格」を算定するとともに、2021年には、過去の大型投資案件の計画未達・損失発生等の要因を網羅的に分析し、新たに投資規範を設定、新規投資検討の際には常にこの規範に照らして議論するなど、定性・定量の両面から評価を実施しています。また、投資案件の意思決定に際しては、案件の規模や重要性に応じて、検討・実行の各段階において、各事業部門の投融資委員会乃至全社投融資委員会を開催し、個別案件の戦略上の位置付け、案件選定の背景・理由、並びに投資後のバリューアップ施策の前提とその確からしさなど、投資の成否を左右する諸条件について早い段階から課題の特定、議論の深掘りを行うとともに、その対応策も踏まえた案件実行可否につき審議しています。

 

(b) 投資実行後

投資後の支援にあたっては、投資の意思決定時点において課題を明確にし、投資後もスムーズに課題解決に取り組める体制を整えています。特に重要な案件については、統合支援機能として「100日プラン(注)実行支援制度」があるほか、全社投融資委員会のもとで業績改善策の立案や実行をフォローする「重点フォローアップ制度」を設けています。更には、投資ポートフォリオの質の向上を目的としたモニタリング制度「フルポテンシャルプラン」を2018年度に導入しました。資本コスト(WACC)を上回るリターン(ROIC)を達成しているかどうかを測る、ROIC/WACCなど複数の定量指標に基づくスコアリングによって、投資先を「健全先」、「健全化ロードマップ策定先」、「撤退候補先」の三つに分類、「健全化ロードマップ策定先」、「撤退候補先」を対象として、四半期ごとに業績やロードマップの進捗状況乃至撤退の取り組み状況をモニタリングしています。また、ロードマップの実現確度が十分ではないと判断される場合は、ロードマップの見直し、それでも健全化が困難と判断される場合は、撤退方針先に変更するなど、明確な時間軸に基づく投資ポートフォリオのバリューアップ施策を通じ、高い収益性と強い下方耐性を有する事業ポートフォリオの構築に取り組んでいます。

また、ガバナンスの高度化を目的とし、投資先の事業に則したKAI、KPI設定を通じた経営の可視化、最適なマネジメントチームの組成、及び事業価値向上を促進するマネジメントの報酬設計等を通じ、事業会社における業務品質の向上を図っています。

さらに、価値向上実現へのコミットメントを高めるべく、投資パフォーマンスに連動した報酬制度を導入しました。

(注) 投資実行直後の早い段階で、投資先のマネジメントと目標とすべき経営指標や財務指標を含めた事業価値最大化を図る中期計画の策定に向けた経営インフラ構築・整備活動。

 


 

② 鉱物資源、ガス開発・生産事業に係るリスク

住友商事は、鉱物資源、ガス等の開発事業を各国で展開しており、以下に例示するようなリスクを負っています。これらが顕在化することにより、住友商事の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があることから、住友商事では、マーケット情報の収集や分析に取り組み、当該事業のプロジェクトマネジメントの強化に努めています。

(a) 開発事業において、計画を超えた開発費用の増加や工期の遅延が起こること

(b) 事業参画前には専門家を起用して十分な地質調査を実施しますが、それにもかかわらず事業開始後に埋蔵量が変動すること

(c) 操業にかかわる技術的問題等に起因して、生産量が計画を下回り、あるいは生産コストが上昇すること

(d) 許認可の取得・更新の遅延、税制の変更、事業資産の接収や権利の侵害等、事業所在国の政府にかかわる事由に起因して計画が実現しないこと

 

 

(3) タイプ別リスク

① 信用リスク

住友商事は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用供与を行っており、信用リスクを負っています。また、住友商事は、主としてヘッジを目的とするデリバティブ取引を活用しており、当該取引にも契約相手先の信用リスクが存在します。

住友商事では、内部格付制度に基づく取引先等の信用力チェックや担保・保証等の取得、取引先の分散等により、かかるリスクの管理に努めており、また、上記の信用リスクが顕在化した場合に備えるため、取引先の信用力、担保価値その他一定の前提、見積り及び評価に基づいて貸倒引当金を設定していますが、予期せぬ要因等によりこれら取引先、契約相手先が、支払不能、契約不履行等に陥る場合、住友商事の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 

② 商品市況の変動に係るリスク

住友商事グループは金属・エネルギーを始めとする各種商品の売買を行っており、当該商品の価格変動リスクを負っています。

住友商事は、商品ごとの枠設定による管理体制の構築や、ヘッジ取引等によりリスクの軽減に努めており、主要な商品については、ポジション枠及び損失限度枠の設定、ミドル・バックオフィスの設置により職務分離を確保しています。

また、住友商事グループは直接・間接的に鉱物・原油及びガス資源権益を保有しており、生産物の価格変動リスクを負っています。これら事業については、ヘッジポリシーを定め、ヘッジが必要と判断される場合は、デリバティブ取引等を用いてヘッジを実施することにより業績の下振れリスクを抑制しています。

 

③ カントリーリスク

住友商事は、日本を含む60ヶ国以上において商取引及び事業活動を行っており、関係各国の政治・経済・社会情勢等の事業環境の変化に起因して生じる事業遅延・停止等が住友商事の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

住友商事は、案件ごとに保険を付保するなどのリスク回避策を講じるとともに、社内国格付に応じたエクスポージャーの上限目安額を設定し、国ごとのエクスポージャー管理を実施することにより事業ポートフォリオが適切な分散を保つよう管理しています。

ロシア及びウクライナ関連ビジネスにおいては、住友商事グループの役職員とその家族、取引先をはじめとする、すべてのステークホルダーの安心と安全を最優先事項として掲げています。また、取引先を含む事業パートナーやステークホルダーとの協議を踏まえ、社長を議長とする経営会議の管理の下で、住友商事の危機対応方針に即し対処しています。

 

④ 金利・為替の変動に係るリスク

住友商事は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。また、住友商事は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用を供与する場合があります。これらの取引により生ずる収益・費用及び資産・負債の公正価値は、金利変動の影響を受ける場合があります。

また、住友商事が行う外貨建投資並びに外貨建取引により生ずる収益・費用及び外貨建債権・債務の円貨換算額、並びに外貨建で作成されている海外連結対象会社の財務諸表の円貨換算額は、外国為替レートの変動の影響を受ける場合があります。

住友商事ではこれら金利変動、外国為替レートの変動によるリスクを回避するため、デリバティブ等を活用していますが、これらによりリスクが十分に回避できる保証はありません。

 

⑤ 株式市場の変動に係るリスク

住友商事が保有する市場性のある有価証券は、日本企業が発行する株式への投資が大きな割合を占めており、日本の株式市場が今後低迷した場合には、有価証券の公正価値の変動によって、住友商事の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、住友商事の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産を目減りさせるリスクがあります。

 

⑥ 不動産等、固定資産の価値下落に係るリスク

住友商事は、日本及び海外において、オフィスビルや商業用施設、居住用不動産の開発、賃貸、保守・管理事業等の不動産事業を行っており、不動産市況が悪化した場合には、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

また、地価及び賃貸価格の下落が生じた場合には、住友商事が保有する賃貸用の土地及び建物、並びに開発用の土地及びその他の不動産の評価額について、減損処理を行う必要が生ずる可能性があります。

不動産のほか、住友商事が所有する他の固定資産についても減損のリスクに晒されており、住友商事の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 情報セキュリティに係るリスク

住友商事は、情報セキュリティの重要性を認識しており、関連規程の整備や役職員への啓発、情報セキュリティを確保するための技術的な対策等を施し、情報資産を管理することに努めています。また、テレワーク環境等、情報システム利用環境の多様化に応じた情報セキュリティの強化も図っています。さらに、住友商事は事業活動の多くを情報システムの機能に依存していることから、情報システム運営の上でも安全性の確保に努めています。しかしながら、サイバー攻撃が年々巧妙化する中、予期せぬ外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウィルスやマルウェアの侵入、情報システムの機能不全等により、情報の漏洩・滅失・毀損、事業活動の一時的停止等、住友商事の事業活動が重大な悪影響を受ける可能性があります。

これらのリスクに適切に対応するため、チーフ・インフォメーション・オフィサーを委員長とするIT戦略委員会を中心に、2017年10月制定の「情報セキュリティ基本方針」に沿って、情報資産の適切な管理に努めています。また、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等に対してはシステム上の対策に加え、外部専門機関とも連携の上、最新情報を入手し、適切かつ迅速に対応できるように努めています。

 

⑧ リーガル・コンプライアンスリスク

住友商事は、日本及び海外において、多種多様な事業活動を手掛けているため、広範な法律及び規制に服しています。これらの法律及び規制は、事業及び投資認可、輸出入活動(国家安全保障上の規制を含む)、競争法制、汚職・腐敗行為防止、為替管理、金融商品取引、個人情報・データ保護、人権保護、環境保護、消費者保護、関税及びその他の租税等の分野にわたることに加え、国によっては追加的または将来制定され得る関係の法律及び規制に新たに服する可能性があります。また、新興国においては、法令の欠如、法令の予期し得ない変更、並びに司法機関及び行政機関等による規制実務の変更によって、法令遵守のための住友商事における負担がより増加する可能性があります。

これらの法律及び規制の遵守を徹底するため、住友商事は、コンプライアンスに関する最高責任者としてチーフ・コンプライアンス・オフィサーを置いており、チーフ・コンプライアンス・オフィサーは、コンプライアンス施策の企画、立案及びその実施につきコンプライアンス委員会から助言を受け、コンプライアンスに関する適切な施策を策定・実行しています。また、コンプライアンスの基本方針を住友商事グループ全体に明確に示すために、住友商事は、「住友商事グループ・コンプライアンスポリシー」を制定し、セミナー等の継続的な啓発活動を通じて、グループ全体への「コンプライアンス最優先」及び、万一、コンプライアンス上の問題が発生したときは直ちに上司あるいは関係部署に対して事態を報告し、最善の措置をとること、すなわち「即一報」の意識の浸透・徹底を図っており、コンプライアンス問題の発生防止に努めています。

しかしながら、このような取り組みをもってしても、住友商事または住友商事グループに属する役職員が、現在または将来の法律及び規制を遵守できなかった場合には、罰金等のペナルティの対象になるとともに、事業が制約され、信用の低下を被る可能性があるため、住友商事の事業展開、業績、財政状態及び社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑨ 訴訟等に関するリスク

住友商事は、日本及び海外において訴訟等の係争案件に関わっています。また、事業遂行上、偶発的に発生する訴訟等やそれに至らない請求等を受ける可能性があります。

訴訟等に固有の不確実性を考慮すると、現時点において、住友商事の関わる訴訟等の結果を予測することはできません。また、これらの訴訟等で住友商事が勝訴するという保証や、将来において住友商事の社会的信用や住友商事の業績及び財務状況がそれらの訴訟等による悪影響を受けないという保証はありません。

 

⑩ 社会・環境リスク

住友商事グループは、世界中の異なる国・地域で、複数の分野に跨り事業を展開しており、その事業活動は、地球環境や地域社会、顧客、役職員等のステークホルダーにさまざまな影響をもたらします。そのため、住友商事グループの事業活動が、人々の人権や地球環境に負の影響を与えた場合には、その影響の解消・緩和や損害の賠償等による追加的費用の発生や事業の停止等によって、財政状態の悪化、信用の毀損等の影響を受ける可能性があります。

住友商事は、社会・環境に配慮し、社会とともに持続的に成長することを目指し、「環境方針」「人権方針」「サプライチェーンCSR行動指針」を制定して、社会・環境問題に関する考え方を明確にしています。持続可能な調達を要する主要な天然資源についても、個別の方針を制定して取り組んでいます。事業活動が与える社会・環境面への影響を適切に管理するために、新規投資の際には、各事業の社会・環境への関わりや影響、それらの管理の状況を確認し、投資実行後も、定期的なモニタリングを行うなど、社会・環境リスク管理の全社的なフレームワークを整えています。

世界的な重要課題である気候変動に関しては、事業を通じて、社会の持続可能な発展に必要な気候変動問題の解決、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する方針を掲げ、発電事業における再生可能エネルギーへのシフトなど、より環境負荷の低い事業ポートフォリオへの継続的なシフト等の取り組みを進めています。

また、人権の尊重に関しては、住友商事グループの全事業とサプライチェーンにおいて人権が尊重されるよう努めることを目標に掲げ、住友商事の全事業・サプライチェーンを対象にした人権デューデリジェンスの取り組みを継続しています。この取り組みを通じて人権リスクを特定した上で、その低減・防止に努めます。

 

⑪ 自然災害等に関するリスク

住友商事が事業活動を展開する国や地域において地震、津波、大雨、洪水等の自然災害、または新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合に、住友商事の事業に悪影響を与える可能性があります。住友商事では地震災害等に備え、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の作成、社員の安否確認システムの構築、災害用物資の備蓄、防災訓練、建物・システムの耐震化及びデータのバック・アップ等の対策を講じていますが、これによって災害による被害を十分に回避できる保証はありません。

 

⑫ オペレーショナルリスク

住友商事は、事業部門、国内外の地域組織及び全世界のグループ会社を通じて、幅広い分野でビジネスを展開しており、それぞれの組織において内部統制を適切に構築する必要があります。しかしながら、住友商事が内部統制を適切に構築したとしても、役職員の事務処理ミスや不正行為等のオペレーショナルリスクを、完全に防止することができる保証はありません。事務処理ミスや不正行為が発生した場合、住友商事は財政状態の悪化、信用の毀損等の悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクをできる限り抑えるために、内部統制に関する基本規程を定め、適正な内部統制の構築・運用・評価・改善を通じて、グループガバナンスの向上及びグループ全体の業務品質向上に取り組んでいます。

 

 

⑬ 資金の流動性に関するリスク

住友商事は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。金融市場の混乱や、金融機関が貸出を圧縮した場合、また、格付会社による住友商事の信用格付の大幅な引下げ等の事態が生じた場合、住友商事は、必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、調達コストが増加する可能性があり、住友商事の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

そのため、現預金、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、調達先の分散や調達手段の多様化に努めており、これにより、財務健全性の維持・向上を図ります。

 

⑭ 繰延税金資産に関するリスク

住友商事及び連結子会社は繰延税金資産の回収可能性の評価を、有税償却に関する無税化の実現可能性やその時期、住友商事及び連結子会社の課税所得の予想など、現状入手可能なすべての将来情報を用いて判断しています。住友商事及び連結子会社は、回収可能性を見込めると判断した部分について繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積もりの変更や法定税率の変更を含む税制改正等により回収可能額が変動する可能性があります。

また、経営環境悪化に伴う事業計画の目標未達等により、将来の課税所得の見込みが、現在のタックス・プランニング上の見込みよりも低下した場合、繰延税金資産の回収可能額が減少し、繰延税金資産を減額することになり、住友商事及び連結子会社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮ 人的資本に関するリスク

住友商事グループが事業を展開する地域・分野及びビジネスモデルは劇的に多様化しており、環境は非連続かつ相当なスピードで変化しています。ビジネスを展開するにあたって、特定分野に高度な専門性及び経験を持った人材が必要となる可能性は常にあります。住友商事では、社内外のTop Tierプロフェッショナル人材を確保するために、通年採用、健康経営・働き方改革の推進、「Diversity, Equity & Inclusion」すなわち多様な価値観やアイデアを受け容れ、活かす文化・意識の醸成等、より魅力的な職場環境の整備に取り組んでいます。

しかしながら、ビジネスモデルの急激な変化により特定の専門人材に対する需要が急増する、あるいは当該専門人材に対する労働市場が成熟しておらず、加えて住友商事の人材確保・育成の取り組みをもっても十分な対応が想定通りに進まない場合、住友商事の事業が悪影響を受ける可能性があります。

 

(4) 集中リスク

住友商事グループの商取引及び投資活動において、特定の国、分野、または取引先に対するエクスポージャーが集中するリスクがあります。事業環境の悪化等により住友商事が期待するリターンが得られない、もしくは損失を被る場合は、住友商事の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

住友商事は、特定の国・地域に対するリスクエクスポージャーの過度な集中を防ぐために、カントリーリスク管理制度を設けています。また、特定分野への過度な集中を避け、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築するために、戦略会議や大型・重要案件の審議機関である投融資委員会において、事業部門やビジネスラインへ配分する投下資本額について十分なディスカッションを行っています。また、住友商事グループとして成約残及び債権残が高額になる取引先については定期的に状況をモニターしています。具体的な取り組みは以下のとおりです。

・住友商事が抱えるエクスポージャーが大きい特定の国については、前述のカントリーリスク管理制度に則りきめ細かく管理しています。

・資源・エネルギー上流案件については、定期的なプロジェクト価値のモニタリングを実施しています。

・定期的に大口債権残・成約残のある先との取引状況や当該取引先の経営状況等の情報を把握し、管理しています。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

Copyright (c) 2014 かぶれん. All Rights Reserved. プライバシーポリシー