東日本旅客鉄道(9020)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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事業などのリスク


東日本旅客鉄道(9020)の株価チャート 東日本旅客鉄道(9020)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3 【事業の内容】

 東日本旅客鉄道及び東日本旅客鉄道の関係会社(子会社143社及び関連会社70社(2025年3月31日現在)においては、運輸事業、流通・サービス事業、不動産・ホテル事業、その他の事業を行っています。各事業における東日本旅客鉄道及び東日本旅客鉄道の関係会社の位置づけ等は次のとおりです。

 なお、次の区分は「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメント情報の区分と同一です。

 

(1)運輸事業

 鉄道事業を中心とした旅客運送事業のほか、旅行業、清掃整備業、駅業務運営業、建設・設備工事業、鉄道車両製造事業及び鉄道車両メンテナンス事業等を展開しています。東日本旅客鉄道の鉄道事業の営業エリアは、主として関東及び東北地方の1都16県にわたり、駅数は1,630駅、営業キロは在来線が6,108.0km、新幹線が1,194.2km、総合計は7,302.2kmとなっています。東日本旅客鉄道の路線図は「第1 企業の概況 3 事業の内容」末尾に表示しています。

主な関係会社:東日本旅客鉄道(鉄道旅客運送事業等)

(自動車・鉄道旅客運輸サービス)◎ジェイアールバス関東㈱、◎東京モノレール㈱

(旅行業)           ◎㈱JR東日本びゅうツーリズム&セールス、○㈱JTB

(清掃整備業)         ◎㈱JR東日本環境アクセス

(駅業務運営業)        ◎㈱JR東日本ステーションサービス

(建設・設備工事業)      ○東鉄工業㈱、○第一建設工業㈱、○日本電設工業㈱、

○日本リーテック㈱、○鉄建建設㈱

(鉄道車両製造事業)      ◎㈱総合車両製作所

(鉄道車両メンテナンス事業)  ◎JR東日本テクノロジー㈱

 

(2)流通・サービス事業

 小売・飲食業、卸売業、貨物自動車運送事業及び広告代理業等の生活サービス事業を展開しています。

主な関係会社:東日本旅客鉄道(駅スペースの創出等)

(小売・飲食業)    ◎㈱JR東日本クロスステーション、◎JR東日本東北総合サービス㈱

(卸売業)       ◎㈱JR東日本商事

(貨物自動車運送事業) ◎㈱ジェイアール東日本物流

(広告代理業)     ◎㈱ジェイアール東日本企画

 

(3)不動産・ホテル事業

 ショッピングセンターの運営事業、オフィスビル等の貸付業、ホテル業及びこれらを展開する不動産の開発・販売事業等の生活サービス事業を展開しています。

主な関係会社:東日本旅客鉄道(ショッピングセンター・オフィスビル等の開発、ホテル業、不動産販売事業)

(ショッピングセンター運営事業) ◎㈱ルミネ、◎㈱アトレ、◎㈱ジェイアール東日本都市開発

(オフィスビル等貸付業)     ◎㈱JR東日本ビルディング

(ホテル業)           ◎日本ホテル㈱、◎仙台ターミナルビル㈱

(建設・設備工事業)       ◎JR東日本ビルテック㈱

(不動産開発事業)        ◎JR東日本不動産㈱

 

(4)その他

 クレジットカード事業等のIT・Suica事業及び情報処理業等を展開しています。

主な関係会社:東日本旅客鉄道(IT・Suica事業、その他)

(IT・Suica事業)    ◎㈱ビューカード、◎JR東日本メカトロニクス㈱

(情報処理業)      ◎㈱JR東日本情報システム

(発電事業)       ◎JR東日本エネルギー開発㈱

(建設コンサルタント業) ◎JR東日本コンサルタンツ㈱

(その他)        ○UQコミュニケーションズ㈱、○セントラル警備保障㈱

 

(注) ◎は連結子会社、○は持分法適用関連会社を示しています。なお、会社名は主たる事業において記載しています。

 

 以上に述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりです。

 

 

(注)1 ◎は連結子会社、○は持分法適用関連会社を示しています。なお、会社名は主たる事業において記載しています。

2 矢印は主な取引・サービスの提供を示しています。

 

 

路線図

 

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 東日本旅客鉄道グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において東日本旅客鉄道グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針(グループ理念)

 私たちは「究極の安全」を第一に行動し、グループ一体でお客さまの信頼に応えます。

 技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現します。

 

(2)今後の経営環境の変化

 マイナス金利政策の転換などに象徴されるようにポストコロナの経済が本格始動します。人口減少や少子高齢化、人手不足、人材の流動化などは、想定を超えるスピードで進展しています。さらには、社会の価値観や人々のライフスタイルが大きく変容しました。生成AIの登場など技術革新は日を追って加速し、脱炭素社会に向けた取組みは地球規模の課題になっています。

 加えて、東日本旅客鉄道グループは、会社発足から37年が経過し、鉄道のシステムチェンジや社員の急速な世代交代など、様々な変革課題に直面しています。

 

(3)中期的な会社の経営戦略

 グループ経営ビジョン「変革 2027」において、将来の環境変化を先取りした経営を進めてきました。世の中の大きな変容を、これまで事業全般にわたって取り組んできた構造改革をさらに加速させる好機と捉え、新たな成長戦略を描きこれを果敢に推進することで、「変革 2027」を加速していきます。

 「究極の安全」を経営のトッププライオリティとして堅持し、お客さまに安全・安心なサービスを提供していきます。

 「ヒト起点」の発想で輸送サービス、生活サービス、IT・Suicaサービスの融合と連携による新たな価値創造に取り組み、鉄道を中心としたモビリティと、お客さまと地域の皆さまとの幅広い接点を持つ生活ソリューションの二軸で経営を支えます。成長余力の大きい事業に経営資源を積極的に振り向けてビジネスポートフォリオを変革し、いかなる経営環境の変化にあっても、サステナブルに成長を続けることができる強靭な経営体質を構築してまいります。

 より良い世の中を創るための事業活動を通じて利益成長をし、創出された利益を、お客さまや地域の皆さま、株主や投資家の皆さま、そして社員や家族の幸福の実現に還元するとともに、グループの成長にも振り分け、こうした成長と創造のサイクルを回していくことによりサステナブルに発展する、「四方良し」の志の高い企業グループをめざします。

 

(4)目標とする経営数値

 グループ経営ビジョン「変革 2027」において、第39期(2025年度)をターゲットとした数値目標を設定しておりましたが、コロナ禍で急激に変化した経営環境のその後の推移等を踏まえ、2023年4月に第41期(2027年度)を新たなターゲットとした数値目標を以下のとおり設定しました。今後も目標達成に向けてグループ一体となって取り組んでまいります。

 

 

 

 

第41期(2027年度)

数値目標

第37期(2023年度)

1月計画

第37期(2023年度)

実績

第37期(2023年度)

計画対比

連結営業収益

3兆2,760億円

2兆7,120億円

2兆7,301億円

100.7%

 

モビリティ

運輸事業

2兆190億円

1兆8,490億円

1兆8,536億円

100.2%

 

生活

ソリューション

流通・

サービス事業

6,540億円

3,750億円

3,796億円

101.2%

 

不動産・

ホテル事業

5,070億円

3,970億円

4,058億円

102.2%

 

その他

960億円

910億円

910億円

100.1%

連結営業利益

4,100億円

3,100億円

3,451億円

111.3%

 

モビリティ

運輸事業

1,780億円

1,300億円

1,707億円

131.3%

 

生活

ソリューション

流通・

サービス事業

800億円

600億円

540億円

90.1%

 

不動産・

ホテル事業

1,240億円

1,000億円

1,001億円

100.2%

 

その他

300億円

220億円

219億円

99.6%

 

調整額

△20億円

△20億円

△16億円

連結営業キャッシュ・フロー

(5年間の総額 ※1)

3兆8,000億円

6,881億円

(進捗率)

18.1%

連結ROA

4.0%程度

3.6%

(※2)

ネット有利子負債/EBITDA

中期的に5倍程度

長期的に3.5倍程度

6.2倍

※1 第37期(2023年度)から第41期(2027年度)までの総額を記載

※2 ネット有利子負債=連結有利子負債残高-連結現金及び現金同等物残高

EBITDA=連結営業利益+連結減価償却費

 

(5)対処すべき課題

 「変革 2027」の実現に向けて、「安全」を経営のトッププライオリティと位置づけ、「収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)」、「経営体質の抜本的強化(構造改革)」、「成長の基盤となる戦略の推進」および「ESG経営の実践」に引き続きグループを挙げて取り組んでまいります。

 

○ 「安全」がトッププライオリティ

 東日本旅客鉄道グループを挙げて安全のレベルアップに取り組み、すべての基盤であるお客さまや地域の皆さまからの「信頼」を引き続き高めます。これまで、東日本旅客鉄道グループが一丸となり、安全レベルを高めるための取組みを推進し、社員一人ひとりが「安全について考え、議論し、行動していく」安全文化を醸成してきました。昨今、東日本旅客鉄道グループを取り巻く環境は、人口減少、自然災害の激甚化・頻発化など、激しく変化しています。これらの変化に対応するために、「これまでは想定外であったリスク」を本質の理解により想像し、安全を先取る取組みを進めていく、「グループ安全計画2028」を2023年11月に策定しました。これにより、「お客さまの死傷事故ゼロ、社員の死亡事故ゼロ」の実現をめざします。また、異常時におけるお客さまへの影響拡大防止など、サービス品質の改革に向けた取組みも推進していきます。

 

○ 収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)

 世の中の大きな変容を、「変革 2027」で進めてきた構造改革をさらに加速させる好機と捉え、グループの持つポテンシャルを最大限に引き出します。「ヒト起点」の発想で商品やサービスをバリューアップし、さらなる飛躍をめざすことで、連結キャッシュ・フローの最大化に努めていきます。

 旅行気運の高まりや移動需要の増加を捉え、ライフスタイルの変化に対応した新しい商品・サービスを展開します。東日本旅客鉄道グループの強みである重層的でリアルなネットワークを活用し、お客さまの移動の目的地づくりや、DXによるお客さまとの接点強化などに取り組むことにより、新たな収益の柱を作ります。

 中央快速線グリーン車の導入に向けた工事や車両の新造を進めるとともに、2031年度の開業をめざして羽田空港アクセス線(仮称)の本格的な工事に着手しました。また、「はこビュン」の増売、海外プロモーションによるインバウンドの誘客、様々なエリアでのMaaS展開、「JRE MALL」の東日本旅客鉄道グループならではの品揃えの強化、「STATION WORK」ネットワークのさらなる拡大、「JRE BANK」によるデジタル金融サービスの展開など、「モビリティ」と「生活ソリューション」を融合したサービスの創造をさらに進めます。さらに、いよいよ2025年3月にまちびらきを迎える「TAKANAWA GATEWAY CITY」をはじめとした多様な魅力あるまちづくり、不動産事業における回転型ビジネスなど、攻めの戦略を加速していきます。

 

○ 経営体質の抜本的強化(構造改革)

 鉄道事業の将来にわたるサステナブルな運営に向けて、固定的なオペレーションコストの見直しを図り、柔軟なコスト構造をめざします。そのために、自動運転・スマートメンテナンスなど新技術の活用、現場第一線社員のアイディアを活かした技術開発などによる仕事の仕組みの見直しや、設備のスリム化を進めます。

 2023年3月に導入した「オフピーク定期券」サービスでは、さらに多くのお客さまにご利用いただくため、購入時のJRE POINT還元に加え、よりお求めやすい価格に改定を行います。

 また、2024年4月改正の収入原価算定要領に基づき収入・原価を精査しており、条件を満たせば、速やかに運賃改定の認可申請を行うとともに、認可対象の運賃・料金の見直しや、シンプルかつ柔軟な制度の実現に向けて、引き続き国に要望してまいります。さらに、地方ローカル線については、沿線自治体などと持続可能な交通体系の構築に向けた協議を進めます。

 急速なスピードで変化する経営環境に柔軟に対応し、一人ひとりの社員の働きがいの向上と生産性向上による経営体質の強化を図るため、組織改正を進めます。権限移譲および系統間や現業機関と企画部門の融合を進め、お客さまに近い場所でスピーディーに価値創造・課題解決に取り組むとともに、社員の活躍のフィールドを拡大していきます。

 

○ 成長の基盤となる戦略の推進

 これらの実現に向け、その基盤となる人材、DX・知的財産、財務・投資などの戦略を明確にし、グループ一体で取り組みます。

 人材戦略については、「多様性」「柔軟性」「成長」の観点から、人材・価値観の多様性を育むとともに、人物本位の柔軟な人事運用や重点・成長分野への人材の集中配置等を進め、働きがいと生産性のさらなる向上をめざすことで、経営戦略を加速する人的資本経営を推進します。

 DX・知的財産戦略については、各事業において戦略的な知的財産の取得・活用などを進めるとともに、オープンイノベーションをはじめとした社内外の技術・知見などを活用した技術開発、デジタルを使った業務改善や価値創造などDXの推進により、ビジネス創出と仕事の仕組みの変革を進めていきます。

 財務・投資戦略については、ビジネスごとに戦略やKPIを再定義し、中長期視点に基づく連結キャッシュ・フロー経営を追求するとともに、社員の発意・創意工夫を自ら実現できる仕組みのさらなる浸透を図ります。

 

○ 「ESG経営」の実践

 環境、社会、企業統治の観点から「ESG経営」を実践し、事業を通じて社会的な課題を解決することで、地域社会の持続的な発展に貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みを推進します。

 環境については、2020年度に公表した環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」において掲げる2050年度のCO₂排出量「実質ゼロ」の達成に向けた挑戦を続け、持続可能な社会の実現に向けた新たな価値を提供していきます。パリ協定に基づく温室効果ガスの排出削減目標であるSBTの認定取得をめざし、2025年8月までに削減目標を策定するとともに、グループ事業全体のサプライチェーンにおいて排出される温室効果ガス削減にも貢献していきます。また、2030年度の営業運転開始をめざし「HYBARI」で実証実験中の水素ハイブリッド電車の開発を進めます。

 地方創生については、地方中核駅を中心としたまちづくり、6次産業化による地域経済の活性化などに取り組みます。

 さらに、企業統治については、意思決定や業務執行のさらなる迅速化および取締役会の監督機能の強化などを目的に、2023年6月に監査等委員会設置会社へと移行しました。急速なスピードで変化する経営環境に柔軟に対応するとともに、コーポレート・ガバナンスを一層充実させ、さらなる企業価値の向上をめざします。

 

 これらの戦略を着実に推進することで経済価値を創造するとともに、事業を通じて社会が抱える様々な課題の解決に取り組みます。また、地域社会の発展に貢献することにより、お客さまや地域の皆さまからの「信頼」を高めていきます。その「信頼」を基盤に社員一人ひとりの力とネットワークの力を結びつけ、すべての人の笑顔あふれる心豊かな生活を実現し、世の中に価値を提供し続けるサステナブルなグループをめざします。

 


事業等のリスク

3 【事業等のリスク】

 東日本旅客鉄道グループでは、各事業に共通・特有のリスクの回避・低減に取り組んでおります。具体的には、毎年事業全体のリスクを外部の知見や社内の意見等をもとに洗い出し、発生頻度および影響度を踏まえた分析・評価を行ったうえでその年度の重要リスクを定め、回避・低減策を検討・実施しております。このように、PDCAサイクルを回してリスクの見直し等を図り、取締役会でリスク回避・低減に向けた取組みの達成度・進捗をモニタリングするとともに今後の方針について検討を行い、リスクマネジメントの実効性を確保しております。

 今後、グループが変革のスピードアップをめざして収益力の向上や経営体質の抜本的強化に取り組むためには、リスクを損失回避等のマイナス要素を減らす観点から捉えるだけでなく、リスクテイクも含め、グループの価値を積極的に向上させる観点を含めた「幅広いリスクマネジメント」が重要です。

 これにより、安定的で適正な業務の運営の確保に加えて、グループ社員の成長に向けた果敢なチャレンジを支援・促進してまいります。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響をおよぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において東日本旅客鉄道グループが判断したものであります。

 

(1) 鉄道事業における事故等の発生

 鉄道事業において事故等が発生した場合、東日本旅客鉄道グループに対するお客さまの信頼や社会的評価が失墜するだけでなく、お客さまへの補償や事故等の影響による事業の中断等により経営に重大な影響を与える可能性があります。

 東日本旅客鉄道グループは、安全を経営のトッププライオリティと位置づけ、ハード、ソフトの両面から安全性の高い鉄道システムづくりに取り組み、会社発足時から7回目となる安全5ヵ年計画「グループ安全計画2023」に基づき施策を着実に実施しました。

 具体的には、東日本旅客鉄道グループに起因する鉄道運転事故を防止するため、自動列車停止装置(ATS-P)整備などの列車脱線事故等の対策や、駅や車両基地等の屋根の落下対策などの基幹設備の強靭化を進めました。

 踏切事故対策については、踏切の整理統廃合を進めるとともに、踏切支障報知装置の増設や障害物検知装置の高機能化等を行いました。ホームドアについては、2023年度末までに線区単位の117駅233番線に整備が完了しました。鉄道駅バリアフリー料金の活用等により、2031年度末頃までに東京圏在来線の主要路線330駅758番線の整備をめざしていきます。

 2023年11月には、8回目となる安全5ヵ年計画「グループ安全計画2028~本質をふまえ、想定外も想像して安全を先取る~」を策定しました。東日本旅客鉄道グループを取り巻く環境は、人口減少、自然災害の激甚化・頻発化など、激しく変化しています。これらの変化に対応するために、築いてきた「安全文化」や安全の「しくみ」「設備」など、安全の基盤を強固にし「これまでは想定外であったリスク」を本質の理解により想像し、安全を先取る取組みを進め「究極の安全」をめざしてまいります。

 

(2) 気候変動および自然災害等

 近年、集中豪雨や大型化した台風などの異常気象リスクが高まっております。これらの集中豪雨や台風だけでなく、大規模地震・津波、洪水、火山といった自然災害等によって、東日本旅客鉄道グループの鉄道および関連施設等が損壊し、大きな被害を受ける可能性があります。また、自然災害等に起因する大規模停電により、鉄道の運行を継続できない可能性があります。さらに、大規模災害時においてサプライヤーの被災や配送網の寸断により事業継続に必要な物品の安定的な供給を受けることができなくなることも考えられます。

 自然災害に対するリスクの低減として、東日本旅客鉄道グループは次の取組みを進めています。大規模地震対策として、新幹線高架橋柱や新幹線電柱の耐震補強を進めています。さらに新幹線の線路からの逸脱防止対策の改良にも取組んでまいります。局地的大雨に対しては、詳細に雨を把握し運転規制を行う「レーダ雨量規制」を従来の運転規制に追加して在来線全線区に導入し、浸水対策としては「車両疎開判断支援システム」を浸水の可能性のある車両留置箇所に導入しています。また、津波・火山噴火については、発生時の対応力を向上するための訓練を実施しています。今後も「グループ安全計画2028」に基づき、自然災害に対するリスク低減の取組みを進めてまいります。

 一方、自然災害等による大規模停電に備えて、主要なターミナル駅などにおける非常用発電機の運転時間の長時間化を進めております。さらに、安定した調達を継続するため、複数のサプライヤーから調達できるように取組みを進めております。

 

(3) 感染症の発生等

 重大な感染症が国内外において流行した場合、経済活動の制限やお客さまの外出自粛、社員の罹患等により、東日本旅客鉄道グループの事業が継続できなくなるおそれがあり、東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績に多大な影響を与える可能性があります。

 新型コロナウイルス感染症が国内外で拡大した際には、政府から緊急事態宣言が発令され、経済活動の制限や外出の自粛等が要請されました。これに伴い、鉄道の輸送量の大幅な減少、東日本旅客鉄道グループの商業施設の休業や利用者の減少等が発生したほか、海外からの入国制限等によりインバウンド需要が減少し、東日本旅客鉄道グループの業績は大きな影響を受けました。東日本旅客鉄道グループでは、政府のガイドラインに基づき、駅への消毒液の設置や機器設備の消毒・清掃、列車内の換気、駅や列車内における混雑情報の提供を行うとともに、社員等のマスク着用等による感染拡大防止を再徹底してきました。今後も社会に影響を与えるような感染症の発生・拡大に際しては、政府・自治体等と連携しながら、お客さまの安全・安心の確保を最優先に、適切な輸送を確保するため必要な措置を講じてまいります。

 

(4) 他事業者等との競合および外部環境の変化

 東日本旅客鉄道グループは、鉄道事業において他の鉄道および航空機、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合関係にあるほか、生活サービス事業においても、既存および新規の事業者と競合しております。これらに加え、外部環境の変化の加速や、東日本旅客鉄道グループではコントロールできない要因などにより、東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 鉄道事業においては、格安航空会社(LCC)の路線拡大、高速道路の拡充、自動運転技術の実用化などによる交通市場の競争激化や人口減少、少子高齢化の進行、在宅勤務などの働き方改革の浸透等により、輸送量が減少し、同事業の収益等に影響を与える可能性があります。また、採用難による人材不足や資材の供給不安などにより、事業の正常な運営に影響を与える可能性があります。

 このような中、東日本旅客鉄道グループは、グループ経営ビジョン「変革 2027」および2020年9月に発表した「変革のスピードアップ」において、MaaSや「えきねっと」をはじめ、移動のシームレス化と多様なサービスのワンストップ化を推進し、お客さまのあらゆる生活シーンで最適な手段を組み合わせて移動・購入・決済等のサービスを提供するほか、テレワークやワーケーションに適した施設や商品の拡充、オフピーク定期券やオフピークポイント・リピートポイントサービス等で多様化する生活スタイルへの対応を加速させていくなど、経営環境の変化を先取りした新たな価値を社会に提供していくことをめざし取り組んでおります。また、ワンマン運転の拡大、将来の自動運転やドライバレス運転の実現、設備のスリム化の推進、メンテナンス業務の仕組みの見直しといった、技術革新・生産性向上に取り組むことにより、鉄道事業を質的に変革してまいります。そのほか、安定した人材確保に向けたグループ全体での採用活動や、安定調達を継続するための新たなサプライヤーの開拓などにも取り組んでおります。

 

(5) 犯罪・テロ行為および情報システム障害等の発生

 犯罪・テロ行為の発生により、東日本旅客鉄道の鉄道事業等における安全性が脅かされる可能性があります。

 東日本旅客鉄道グループでは、鉄道のセキュリティ強化に向け、車両の防犯カメラの増設や、鉄道施設におけるカメラの増設・ネットワーク化による集中監視を実施しているほか、新幹線車両や主要駅等に防犯・護身用具を配備する等の対策を実施しております。

 また、東日本旅客鉄道グループは、モビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる様々な業務分野で、多くの情報システムを用いております。東日本旅客鉄道グループと密接な取引関係にある他の会社や鉄道情報システム株式会社等においても、情報システムが重要な役割を果たしております。サイバー攻撃や人為的ミス等によってこれらの情報システムの機能に重大な障害が発生した場合、東日本旅客鉄道グループの業務運営に影響を与える可能性があります。さらに、コンピュータウイルスの感染や人為的不正操作等により情報システム上の個人情報等が外部に流出した場合やデータが改ざんされた場合、社会的信用の失墜等により、東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 東日本旅客鉄道グループでは、日常より情報システムの機能向上やセキュリティの常時監視、関係する社員の教育など、障害対策およびセキュリティ対策を講じるとともに、万一問題が発生した場合においても速やかに初動体制を構築し、各部署が連携して対策をとることで、影響を最小限のものとするよう努めております。また、社内規程を整備し、個人情報の厳正な取扱いについて定め、個人情報を取り扱う者の限定、アクセス権限の管理を行うほか、社内のチェック体制を構築するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めております。

 

(6) 企業不祥事

 東日本旅客鉄道グループは、モビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業などの様々な業務分野において、鉄道事業法をはじめとする関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜などにより、東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 東日本旅客鉄道グループでは、「法令遵守及び企業倫理に関する指針」を策定しているほか、法令遵守に関する社員教育の強化、業務全般に関わる法令の遵守状況の点検を進めております。さらに、全社員に対して内部通報窓口の周知等を行うなど、コンプライアンスの確保に努めるとともに、他企業で発生した事象に類似する不祥事の防止に取り組んでおります。

 

(7) 国内外の経済情勢等の変化

 国内外の経済情勢の変化や、金利・為替・物価等の動向などにより、東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績が影響を受ける可能性がある他、サプライチェーン上の問題により社会的評価が失墜する可能性があります。

 日本経済および世界経済の情勢は、経済的要因だけではなく、戦争やテロ行為等の地政学的リスク、世界的な感染症の流行および大規模な自然災害等により影響を受ける可能性があります。このような事象が発生した場合、経済の低迷が長期化し、東日本旅客鉄道グループのモビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業などの様々な業務分野において、需要が減少する可能性があります。また、国内外の経済情勢の変化や金利・為替・物価等の動向などにより、物品調達コストや資金調達コストが上昇し、東日本旅客鉄道グループの収益に影響を与える可能性があります。さらに、グローバル化したサプライチェーンは様々な要因により寸断される可能性がある他、人権課題の多様化・複雑化により調達活動に影響が生じる可能性があります。

 東日本旅客鉄道グループは、経費全般にわたるコストダウンに努めていくとともに、生活ソリューション関連の事業に経営資源を重点的に振り向け、新たな「成長エンジン」にしていくなど、経営体質を抜本的に強化してまいります。また、物品調達コストの上昇については、国内外を問わない幅広い調達やスケールメリットを活用した価格交渉等を通じて、調達コスト上昇を抑制しております。資金調達コストの上昇については、債務償還額の平準化および債務の長期化、債務の円建払いや支払金利の長期固定化を行うことにより、将来の金利変動リスク・為替変動リスクを抑制しております。サプライチェーンを維持し、寸断を回避するため取引先とのコミュニケーションを強化するとともに、複数のサプライヤーから調達ができるように取組みを進めています。人権問題等については、東日本旅客鉄道グループ調達方針に基づき浸透を図る取組みに努めてまいります。

 

(8) 海外での事業展開

 東日本旅客鉄道グループは、社員が活躍・成長する場を海外においても提供しており、国際事業に従事することを通じてグローバル人材の育成に努めています。東日本旅客鉄道グループがこれまで培ってきた技術・ノウハウ等を生かした製品・サービス等を海外で展開して、新たな事業の柱を確立することをめざしています。

 国際事業においては、政治体制や社会的要因の変動、投資規制・税制や環境規制等に関する現地の法令変更、商慣習の相違、契約の履行やルールの遵守に関する意識の違いおよびそれらに起因する工期等の遅延、経済動向、為替レートの変動等様々なリスク要因があります。海外で政治リスクや遅延リスク等が顕在化すると債権回収に影響をおよぼすことがあるため、プロジェクトごとにきめ細やかな収支管理を行っています。現に、政変や紛争等によるリスクが顕在化していますが、予期せぬ情勢変化等が生じた場合に東日本旅客鉄道グループの財政状態および経営成績、またグループ社員の身の安全に影響を与えることのないよう、これら様々なリスクについて、弁護士やコンサルタント等、専門家の助言を踏まえたリスク分析を行ったうえで、場合によっては日本政府の協力を得ながら対応に努めております。

 

(9) 特有の法的規制

① 鉄道事業に対する法的規制

 東日本旅客鉄道は、「鉄道事業法(昭和61年法律第92号)」の定めに基づき事業運営を行っており、鉄道事業者は営業する路線および鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とされております。また、旅客の運賃および新幹線特急料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。さらに、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止の場合は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。

 これらの手続きが変更される場合、または何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、東日本旅客鉄道の収益に影響を与える可能性があります。東日本旅客鉄道では、運賃値上げに依存しない強固な経営基盤を確立すべく、収入の確保と経費削減による効率的な事業運営に努めておりますが、経営環境の変化等により適正な利潤を確保できない場合は、運賃改定を適時実施する必要があると考えております。

 なお、東日本旅客鉄道は、「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和61年法律第88号)」の平成13年改正により、同法の適用対象からは除外されているものの、同法の改正附則に基づき「当分の間配慮すべき事項に関する指針」等が定められております。指針に定められた事項は以下の3点です。

・会社間における旅客の運賃および料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携および協力の確保に関する事項

・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持および駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害またはその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

 指針に定められているこれらの事項については、東日本旅客鉄道は、従来から十分留意した事業運営を行っております。しかしながら、鉄道を取り巻く環境は当時から大きく変化していることから、これらが経営に及ぼす影響を踏まえ、必要により柔軟な運用について関係者のご理解を求めていく考えです。

 

② 整備新幹線

 日本国有鉄道の分割民営化後、東日本旅客鉄道は、北陸新幹線(高崎市~上越市)および東北新幹線(盛岡市~青森市)の2路線の整備新幹線の営業主体とされ、1997年10月1日に北陸新幹線高崎~長野間が、2002年12月1日に東北新幹線盛岡~八戸間が、2010年12月4日に東北新幹線八戸~新青森間が、2015年3月14日に北陸新幹線長野~上越妙高間がそれぞれ開業しました。

 「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令」第6条において、整備新幹線の貸付料の額は、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額に、貸付けを受けた鉄道施設に関して独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が支払う租税および同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。このうち受益については、開業後30年間の需要予測および収支予測に基づいて算定されることとなり、この受益に基づいて算定される額については、開業後30年間は原則定額とされております。

 貸付けから30年経過後の取扱いについては、協議により新たに定めることになっております。なお、貸付けを受けている整備新幹線区間と貸付終了年度は、次のとおりです。

a 北陸新幹線(高崎~長野間) 2027年度

b 北陸新幹線(長野~上越妙高間) 2044年度

c 東北新幹線(盛岡~八戸間) 2032年度

d 東北新幹線(八戸~新青森間) 2040年度

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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