西日本旅客鉄道及び西日本旅客鉄道の関係会社(子会社145社及び関連会社25社)が営んでいる主要な事業内容は、次のとおりであります。
事業内容の区分については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表][注記事項]」に掲げる「[セグメント情報]」における事業区分と同一であります。
なお、西日本旅客鉄道グループでは、同業種または関連事業を展開するグループ会社及び西日本旅客鉄道の各部門を一体
と捉えた経営管理単位として「鉄道」、「物販・飲食」、「ホテル」、「ショッピングセンター
(SC)」、「不動産」の5つのカンパニーを設置しております。各カンパニーの構成会社の概要は以
下のとおりであります。
・鉄道カンパニー:西日本旅客鉄道鉄道部門及び以下の業種の連結子会社等
鉄道事業、船舶事業、車両等設備工事業、機械等設備工事業、電気工事業、
清掃整備事業、建設事業、駅業務等運営業
・物販・飲食カンパニー:物販・飲食業の連結子会社等
・ホテルカンパニー:ホテル業の連結子会社等
・ショッピングセンター(SC)カンパニー:ショッピングセンター運営業の連結子会社等
・不動産カンパニー:不動産販売・賃貸業等の連結子会社等
(1)モビリティ業
鉄道事業のほかに、旅客自動車運送事業及び船舶事業を展開しております。
鉄道事業のうち、西日本旅客鉄道は、北陸、近畿、中国及び九州北部の2府16県の広いエリアを営業範囲として、新幹線、在来線の特急を中心とする都市間輸送及び京阪神都市圏や広島、岡山等の地方中核都市を中心とする地域での都市圏輸送等を行っております。
そのほか、各種工事業、清掃整備事業等を展開しております。
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事業の内容 |
主要な関係会社 |
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鉄道事業 |
西日本旅客鉄道、嵯峨野観光鉄道㈱、関西高速鉄道㈱※、大阪外環状鉄道㈱※ |
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旅客自動車運送事業 |
JRバス中国㈱、西日本ジェイアールバス㈱ |
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船舶事業 |
JR西日本宮島フェリー㈱ |
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貸自動車業 |
JR西日本レンタカー&リース㈱ |
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車両等設備工事業 |
㈱JR西日本テクノス、㈱JR西日本新幹線テクノス |
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機械等設備工事業 |
㈱JR西日本テクシア |
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電気工事業 |
西日本電気テック㈱、JR西日本電気システム㈱、㈱てつでん |
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清掃整備事業 |
㈱JR西日本メンテック、㈱JR西日本中国メンテック、㈱JR西日本金沢メンテック |
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建設事業 |
大鉄工業㈱、㈱レールテック、㈱ジェイアール西日本ビルト、広成建設㈱※ |
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その他 |
㈱JR西日本カスタマーリレーションズ、㈱JR西日本交通サービス、 ㈱JR西日本中国交通サービス |
(注)西日本電気テック㈱は、2025年4月1日にJR西日本電気テック㈱に商号変更しております。
(2)流通業
百貨店業のほかに、主要駅における物販・飲食業等を展開しております。
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事業の内容 |
主要な関係会社 |
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百貨店業 |
㈱ジェイアール西日本伊勢丹 |
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物販・飲食業 |
西日本旅客鉄道、㈱ジェイアール西日本デイリーサービスネット、 ㈱ジェイアール西日本フードサービスネット、 ㈱ジェイアールサービスネット広島、㈱ジェイアールサービスネット岡山、 ㈱ジェイアールサービスネット金沢、㈱ジェイアールサービスネット福岡、 ㈱ジェイアール西日本ファッショングッズ |
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各種物品等卸売業 |
ジェイアール西日本商事㈱ |
(3)不動産業
保有不動産を活用した不動産販売・賃貸業のほかに、ショッピングセンター運営業、ホテル業を展開しております。
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事業の内容 |
主要な関係会社 |
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不動産販売・賃貸業 |
西日本旅客鉄道、JR西日本不動産開発㈱、京都駅ビル開発㈱、 JR西日本ステーションシティ㈱、JR西日本プロパティーズ㈱、 JR西日本不動産投資顧問㈱ |
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ショッピングセンター運営業 |
JR西日本SC開発㈱、JR西日本京都SC開発㈱、富山ターミナルビル㈱、 山陽SC開発㈱、金沢ターミナル開発㈱、JR西日本アーバン開発㈱、 中国SC開発㈱、㈱和歌山ステーションビルディング、 ㈱新大阪ステーションストア、JR西日本大阪開発㈱、JR西日本山陰開発㈱ |
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ホテル業 |
㈱ジェイアール西日本ホテル開発、㈱ホテルグランヴィア広島、 ㈱ホテルグランヴィア大阪、㈱ホテルグランヴィア岡山、 和歌山ターミナルビル㈱、㈱奈良ホテル |
(4)旅行・地域ソリューション業
旅行・地域ソリューション業を展開しております。
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事業の内容 |
主要な関係会社 |
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旅行・地域ソリューション業 |
㈱日本旅行 |
(5)その他
広告業等を展開しております。
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事業の内容 |
主要な関係会社 |
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広告業 |
㈱JR西日本コミュニケーションズ |
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土木・建築等コンサルタント業 |
ジェイアール西日本コンサルタンツ㈱ |
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空間情報コンサルタント事業 |
アジア航測㈱※ |
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情報サービス業 |
㈱JR西日本ITソリューションズ、鉄道情報システム㈱※ |
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その他 |
㈱ジェイアール西日本総合ビルサービス、㈱ジェイアール西日本マルニックス、 JR西日本フィナンシャルマネジメント㈱、㈱ジェイアール西日本ウェルネット、 ㈱JR西日本イノベーションズ |
(注)※ 持分法適用関連会社であります。
以上に述べた事項の概要図は、次のとおりであります。
(注)1 ※ 持分法適用関連会社であります。
2 各事業の区分ごとの会社名は主たる事業内容により記載しております。
(1) 西日本旅客鉄道グループを取り巻く経営環境
西日本旅客鉄道グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの影響縮小に伴う需要回復、観光・インバウンドの活況等により、足元の鉄道のご利用等は想定を上回るペースで回復しています。一方、自然災害の激甚化、コロナ禍を契機とした行動変容に加え、人口減少に伴う市場の縮小や人財獲得競争の激化、賃金・物価・金利の上昇、顧客ニーズの多様化、生成AI等の革新的技術の急速な進化等、これからの変化を想像することが難しい状況になってきています。
(2) 経営の基本方針
西日本旅客鉄道グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、被害に遭われた方々への真摯な対応、安全性向上に取り組んでいきます。
2023年4月には、未来社会におけるJR西日本グループの存在意義を見つめなおし、めざす姿として「私たちの志」を策定しました。この「私たちの志」をグループ全体の羅針盤として、グループ一丸となって取り組んでいます。
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私たちの志 人、まち、社会のつながりを進化させ、 心を動かす。未来を動かす。 私たちは、 これからも安全、安心を追求し、高め続けます。 人と人、人とまち、人と社会を、リアルとデジタルの場でつなぎ、 西日本を起点に地域の課題を解決します。 そして、持続可能で活力ある未来を創り、その先の一人ひとりが思い描く暮らしを 様々なパートナーと共に実現していきます。 |
これまで、鉄道や駅を中心に人と人、人とまちをつなぎ、安全で豊かな社会づくりに貢献できるよう努力を積み重ねてきましたが、インフラを担う企業として、未来においても社会づくりに貢献する役割を果たし続けていくため、大きな転換期を迎えているこれからの社会の課題と向き合い、求められる価値を、事業活動を通じて提供していきます。
とりわけ、一人ひとりの暮らし、まち、社会全体が直面する課題に着目したとき、安全を基盤に広域で人と人、まち、社会をつなぐインフラサービスを提供し、またグループ全体で多くのお客様との接点、地域とのつながりを持つ西日本旅客鉄道グループは、これまで以上にお客様視点で「つながりを進化させる」ことで、大きな役割を果たしていくことができ、それこそが、未来の社会における私たちの存在意義と考えます。
引き続き、鉄道の安全性向上に向けた不断の取り組みを積み重ねていくことを基盤としつつ、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、「地域共生企業」として事業を通じて社会や地域の課題解決に貢献することで、社会的価値と経済的価値を合わせて創出し、よりよい未来を創り上げていきます。
(3) 中長期的経営戦略
西日本旅客鉄道グループは2023年4月に、「私たちの志」の実現に向け、10年後にありたい姿として「長期ビジョン2032」(以下、「長期ビジョン」)を策定しました。重点的に向き合う社会課題を、「安全、安心で、人と地球にやさしい交通」、「人々が行きかう、いきいきとしたまち」、「一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし」及び「持続可能な社会」の4つに設定しました。
<安全、安心で、人と地球にやさしい交通>
交通全体がシームレスなサービスとして認識され、定着している未来
<人々が行きかう、いきいきとしたまち>
地域の魅力が高まり、定住・交流・関係人口が増加していく未来
<一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし>
リアルの良さとデジタルの組み合わせで、個客体験が大きく高まる未来
<持続可能な社会>
様々なパートナーとの連携を通じて、持続可能な社会システムが構築されている未来
この「長期ビジョン」の実現に向け、鉄道の安全性向上に向けた不断の努力に加え、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化、ライフデザイン分野の拡大に挑戦し、最適な事業ポートフォリオを構築することで、将来にわたって持続的に価値創造を実現する企業グループに成長していきます。具体的には、北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業やなにわ筋線開業、大阪・広島・三ノ宮エリアでの駅ビル開発等のプロジェクトや、大阪・関西万博等の機会を活用し、関西都市圏ブランドの確立や西日本各エリアのさらなる活性化に貢献していきます。
「JR西日本グループ中期経営計画2025」(以下、「中期経営計画2025」)では、「長期ビジョン」実現に向けた第一ステップとの位置づけのもと、早期のコロナ前水準への回復に向けて、足元の機会を最大限活かした成長を加速するため、5つの重点戦略を掲げました。
①鉄道の安全性向上
②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)
③不動産・まちづくりのさらなる展開
④デジタル戦略による多様なサービスの展開
⑤新たな事業の創出
①鉄道の安全性向上
〇福知山線列車事故を原点とし、安全を追求し続け、弛まぬ努力を継続
・被害に遭われた方々への真摯な対応
・「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2027」(以下、「安全考動計画2027」)の推進
<ホーム安全>
・ホーム柵やホーム安全スクリーンの整備を推進
<踏切安全>
・大型車が踏切に停滞していることを列車の運転士に音声で知らせる装置の整備を推進
<地震対策>
・地震発生時の安全性向上に向けて、耐震補強や逸脱防止対策を推進
<安全最優先の風土の醸成>
・「現場の判断を最優先するマネジメント」の確立
・「お客様を想い、ご期待にお応えする」考動
<組織全体で安全を確保する仕組みの充実>
・リスクアセスメントの質の向上
・「心理的に安全なチーム」づくり
・現場起点の考動による課題解決への挑戦
<一人ひとりの安全考動の実践>
・「大切にしたい5つの価値観」の共有、主体的な実践
<ハード・ソフトの機能向上>
・ハード・ソフト両面の改良・改善による安全性向上
・安全で安定的な輸送の提供(輸送の質の向上)
<社会とつながり、社外から学ぶ>
・関係機関との自然災害等の事象発生時の対応に関する対話
・他鉄道事業者等から安全対策を学び、採り入れる取り組みの推進
②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)
ア.鉄道事業
〇「お客様を想い、ご期待にお応えする」ことを強く意識し、CSを戦略の根幹とした顧客起点の経営を実現
〇新幹線を基軸とした鉄道ネットワークの充実と、交流人口・関係人口の創出に挑戦
・山陽新幹線各エリア:利便性の向上によるご利用促進等
・北陸エリア:北陸新幹線金沢・敦賀間開業、北陸デスティネーションキャンペーン(2024年秋)を契機とした、観光素材の磨き上げと周遊ルートの整備等
・山陰エリア/南紀エリア:新型車両投入による旅の魅力向上等
・デジタルの活用
・多様化するニーズに対応した営業施策
〇関西国際空港とのアクセス向上と、2025年の大阪・関西万博を契機とした取り組みを通じて、国内外の様々なお客様が行き交う魅力的な関西都市圏を実現
・近畿エリア全体の魅力向上
・関西国際空港とのアクセス整備
・大阪・関西万博を契機とした取り組み(会場アクセス整備・駅改良の推進等)
・インバウンド受け入れ体制整備
〇技術戦略に基づき日々の業務プロセスを変革し、鉄道事業の活性化を支える生産性向上と持続可能なシステム構築、価値創造を実現
・お客様サービスの変革
・運行オペレーションの変革
・保守メンテナンス手法の変革
イ.物販・飲食事業
〇お客様のデイリーニーズへのきめ細やかな対応力を磨き上げて、一人ひとりにやさしく便利で豊かな暮らしを実現
・外部提携による競争力向上
・既存店舗の磨き上げ
・ヴィアインのブランド再構築
ウ.ホテル事業
〇旅の魅力や人々のつながりを創り、最高の笑顔とチームワークでおもてなしを提供し、まちの価値向上に貢献
・「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」の新規開業
・既存ブランド価値の再構築
・「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」の新規開業
エ.ショッピングセンター事業
〇強みであるリアルを軸に、デジタルでもお客様とテナントをつなぎ、「地域一番のエリアプラットフォーマー」を実現
・変化する消費に応えるリアルコンテンツの充実
・リアル・デジタルによるお客様接点の拡大・強化
・地域特性を捉えた館づくり
③不動産・まちづくりのさらなる展開
〇地域の皆様と連携して安心して暮らし・過ごせるコミュニティを形成し、地域・社会の課題解決に貢献
・駅からはじまるまちづくりの推進
・展開領域のさらなる拡大
・マネジメント分野の強化と資産効率向上
〇拠点駅の大規模開発と周辺まちづくりの促進、エリアマネジメントの推進により、人々が訪れたくなる、いきいきとしたまちを創出
・拠点駅開発(大阪、広島、三ノ宮)
・まちなかの体験価値向上
④デジタル戦略による多様なサービスの展開
〇データやデジタル技術を駆使し、お客様一人ひとりとグループの多様なサービスをつなぐことで心を動かし、いつまでも住み続けたい・また来たいと感じる「WESTER体験」を提供
・「WESTER体験」における3つの進化を推進(お客様とのつながりの進化、「たまりやすい、つかいたい」ポイントへの進化、グループマーケティング力の進化)
⑤新たな事業の創出
〇西日本を舞台に「つながり」を生み出し、新決済とポイント、データが「つなぐ」未来型のまちづくりに挑戦
・「WESTER体験」を支える新たな決済サービスの導入
・「よこてん」(内部向けに開発したデータソリューションの他鉄道会社等への横展開)で広がるデータソリューション事業
〇地域・社会とともに持続可能性を高める事業を進めることで、人、まち、社会の未来を動かす
・持続可能な暮らしを実現する「総合インフラマネジメント事業」
・地域課題ソリューションビジネスの推進
・未来を動かすビジネスチャレンジ
また、サステナビリティ経営の実現に向けて、地域共生、地球環境、人的資本経営、ガバナンス・リスクマネジメント・人権に重点的に取り組みます。
①地域共生
〇ウェルビーイングな暮らしの実現、地域の課題解決と持続可能で豊かな地域づくりに貢献
・持続可能で豊かな地域づくりの推進
・ご利用しやすい持続可能な交通体系を地域とともに推進
②地球環境
〇社会インフラを担う企業グループとして、地球環境保護の取り組みを通じて社会全体の持続可能性を向上
・地球温暖化防止・気候変動対策
・循環型社会構築への貢献
・自然との共生
③人的資本経営
〇自ら変革し成長する人財こそが「長期ビジョン」実現の原動力と認識し、成長を支援し、多様性と働きがいを高め、変化対応・創出力のある人財を創出
・人財育成
・ダイバーシティ&インクルージョン
・ワークエンゲージメント
④ガバナンス・リスクマネジメント・人権
〇「長期ビジョン」実現に向けて、適切なリスクテイクによる企業価値向上を図るガバナンスを一層充実
・コーポレート・ガバナンスのさらなる強化
・リスクマネジメントの充実
・企業倫理・人権尊重の取り組み
(4) 対処すべき課題
「中期経営計画2025」の初年度である2023年度は、機会を捉えた需要獲得策や事業構造改革等が実を結び、計画を超える業績回復を実現できた一方、鉄道事業等の持続的運営を脅かす労働力不足の顕在化、ライフデザイン分野等の新たな価値創造を牽引する人財確保に向けた競争激化、インフレ社会の到来等、急速な経営環境の変化に直面しました。これらの変化は中長期的に経営へ影響を与え続ける構造的なものと認識しています。
以上の急速かつ構造的な経営環境変化に対して、「中期経営計画2025」に掲げた重点戦略に基づく施策の具体化に加え、将来に向けて持続的に価値を創出し続けるために、鉄道事業の安全性向上・持続的進化、グループ一体となった価値創造、及びそれらを実現するための原動力となる変化対応・創出力の向上等、先手を打った対応を図っていくことが重要な経営課題です。
これらの経営課題に対応するため、2024年4月に「中期経営計画2025」のアップデートを行いました。アップデートを行った「中期経営計画2025」を基に、鉄道事業の安全性向上を基盤としながら、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、鉄道事業を中心としたモビリティサービス分野の活性化と構造改革を図るとともに、ライフデザイン分野における新たな事業の創出等の事業活動を通じ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速し、社会的価値と経済的価値を創出していきます。
なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において西日本旅客鉄道グループが判断したものであります。
西日本旅客鉄道グループでは、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」のもと、新たな価値創造へ積極的に挑戦していく観点から、「全社的リスクマネジメント体制」を構築し、西日本旅客鉄道グループにおける経営上の重要リスクとその管理状況をモニタリングしております。具体的には、西日本旅客鉄道内(コーポレート)の各部門及びグループ各社(カンパニー・その他グループ会社)が抽出・選定したリスクのうち、経営上対処すべき重要リスクについて、代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」において集約・一覧化し、モニタリングしていく取り組みを行っております。
特に経営環境に関する重要リスクの抽出・選定にあたっては、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」に関するPDCAサイクルの一環として、未来の社会像に関する洞察を行い、バックキャストの視点から採るべき戦略の方向性の確認・検証を行っております。
また、同委員会を通じて確認したリスク管理状況や議論等を踏まえ、必要な改善措置に繋げるための総括として、「リスクマネジメントレビュー」を発信し、次年度のリスク管理の取り組みに反映するとともに、委員会の議論状況を取締役会へ報告することとしております。
なお、鉄道安全、気候変動、人権等のリスクは、専門的な個別の委員会等を設置し、より具体的かつ実効性向上を目的とした議論をしております。
これらの委員会等での議論のもと、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」の実現に大きな影響を及ぼすリスクを以下に記載します。
なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において西日本旅客鉄道グループが判断したものであります。
(1) 安全の確保
鉄道事業においては、事故が発生した場合、お客様の生命・財産に大きな被害をもたらすことがあり、これに伴うお客様への補償及び事故後の事業中断等により経営に対しても甚大な影響を及ぼすことがあります。鉄道を基幹事業とする西日本旅客鉄道グループにおいては、安全で安心され信頼される質の高い輸送サービスを提供していくことが最重要課題であると考えております。
西日本旅客鉄道グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、福知山線列車事故の教訓である「安全の実現に欠かせない視点」に照らしてこれまでの取り組みについて確認した上で、「安全考動計画2027」を2023年3月に策定し、より一層の安全性向上をめざし、重大な事故や労働災害の未然防止に向けて取り組んでおります。
具体的には、ホームの安全対策として、バリアフリー料金制度対象駅のうち、乗降10万人以上の駅にはホーム柵を整備し、乗降10万人未満の駅にはホーム柵又はホーム安全スクリーンを整備する方針としており、10年以内の完了をめざします。なお、このうち2027年度までの5年間で約400億円の整備費を見込んでおります。
踏切の安全対策として、関係行政機関と協議・連携の上、立体交差事業等による踏切の解消を実施しているほか、大型車の通行が多い踏切を対象に重点的にハード整備を実施します。踏切内に自動車が停滞している場合、運転士に音声で知らせる装置を新たに追加し、10年以内の完了をめざします。また、第4種踏切においては、恒久対策(廃止や格上げ)に加えて、踏切ゲートの設置を進めております。
こうしたハード対策に加えて、ソフト対策として「組織全体で安全を確保する仕組み」を充実させ、その仕組みのもとで「一人ひとりの安全考動」を積み重ねていきます。これらの営みを通じて「安全最優先の風土」を育み、さらなる「仕組み」の構築・改善や「一人ひとりの安全考動」につながり、このサイクルを回し続けることで、継続的な安全性の向上を実現します。
(2) 自然災害等の発生
地震、台風、地すべり、洪水等の自然災害によって、西日本旅客鉄道グループの事業及び輸送網インフラは大きな被害を受ける可能性があります。
これに対し西日本旅客鉄道グループは、将来においても事業にもたらす影響の大きな自然災害等による被害を最小限のものとするよう、防災や減災に努めております。
具体的には、地震対策として、阪神・淡路大震災以降、地震発生確率や活断層の観点から優先順位をつけて構造物の耐震補強対策や逸脱防止ガードの整備等の地震対策を進めてきたところですが、近年、大規模地震が複数発生していることを踏まえ、地震対策を山陽新幹線全線に拡大し、30年以内の対策完了をめざします。なお、30年間で約3,000億円の整備費を見込んでおり、在来線についても、計画に基づき着実に整備を進めております。
津波対策としては、避難誘導標等を整備し、「津波避難誘導心得」を制定するなど、速やかな避難・誘導等に向けた取り組みを進めるとともに、実践的訓練を行っております。
また、近年、短期間に集中化する豪雨等の激甚化する災害に対して、防護設備等を整備するなど、重大な被害の発生を可能な限り回避するための取り組みを推進していきます。
なお、西日本旅客鉄道ではこれらの自然災害等に備えるため、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントラインを金融機関から導入するとともに、主な鉄道施設を対象とする地震保険を含めた損害保険に加入しております。
(3) 経営環境の激変
西日本旅客鉄道グループは、日本経済の情勢の中でも、主な営業エリアである西日本地域における景気動向の影響を特に受けており、人口減少・少子高齢化や新型コロナウイルス感染症がもたらした社会行動変容、円安・物価高騰等が、西日本旅客鉄道グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
とりわけ人口減少・少子高齢化の進展は最大の経営上のリスクと考えており、中長期的なお客様のご利用の減少に加え、西日本旅客鉄道グループの事業の運営、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財の確保が一層困難となることで、西日本旅客鉄道グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。なお、人財確保に関するリスク認識の詳細については、後述の「(4)人財の確保」に記載のとおりであります。
また、円安・物価高騰、金利上昇等が長期化し、インフレーションが進展すれば、事業に係る費用の増加が見込まれますが、後述の「(10)特有の法的規制」の影響等も相俟って、適正な価格転嫁が行えない場合、西日本旅客鉄道グループの収益に影響を与える可能性があります。
さらに、海外の景気動向や政治情勢等が訪日外国人の動向、サプライチェーン等に影響を及ぼす可能性があるほか、感染症等さまざまな要因により鉄道のご利用に影響を及ぼす事象が発生した場合、これに連動してグループ全体の経営成績に影響を与える可能性があります。
一方で、西日本旅客鉄道グループは、鉄道事業においては対抗輸送機関と、鉄道以外の事業においても各業種業態の事業者と競合関係にありますが、近年ますます競争が激化しており、西日本旅客鉄道グループの収益に影響を与える可能性があります。
さらに、デジタル化の加速等に伴う革新的な技術の発達や、新たなビジネス・価値提供の仕組みの普及が、西日本旅客鉄道グループの収益に極めて大きな影響を与える可能性があります。
加えて、地球環境保護や気候変動問題対応への社会的な要請の高まりや、気候変動による災害激甚化が、西日本旅客鉄道グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
今後の社会構造等を中長期的に見据えると、過疎化の進展や都市構造の変容により都市や地域間の格差が拡大していくこと、個人の価値観や消費行動の多様化に加え、格差の拡大により消費活動の二極化が進展していくことが想定されます。これらが顕在化した場合、大量輸送を特長とする鉄道事業が中心となる西日本旅客鉄道グループの収益に大きな影響を与える可能性があります。
以上のような経営環境に関するリスクも踏まえ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速させるべく、「中期経営計画2025」をアップデートし、重点戦略の施策の具体化・追加を行いました。引き続き安全性の向上を最優先としつつ、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化と、ライフデザイン分野の拡大を通じて事業ポートフォリオを最適化し、未来社会においても価値を創造し続ける企業グループとなるよう、取り組みを推進しております。
・「中期経営計画2025」
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025.pdf)
・「中期経営計画2025アップデート」
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025_update.pdf)
(4) 人財の確保
西日本旅客鉄道グループの営業エリアである西日本地域においても、今後生産年齢人口の減少が進展することが予測されており、西日本旅客鉄道グループの事業運営を支える人財の確保が困難になる可能性があります。
「長期ビジョン」をはじめとした経営戦略を実現していく上で、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財を確保、育成することが不可欠であり、こうした取り組みが停滞することがあれば、西日本旅客鉄道グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。
これに対し西日本旅客鉄道グループでは、人財確保のチャネル拡大と人財戦略の推進により、人財の確保及びリテンションに努めております。
人財確保のチャネル拡大については、新卒採用以外にも、社会人採用やカムバック採用の拡充、65歳以上の再雇用制度の新設等に取り組んでおります。また、グループ全体の人財を確保する観点から、グループ合同での応募窓口の設定等、効率的かつ効果的な採用活動を進めるほか、特に変化対応・創出力を備えた人財については、「株式会社TRAILBLAZER」を設立し、JR西日本グループのデジタル変革を推進する専門人財の確保等に努めております。
人財戦略の推進については、多様性の確保やさまざまな挑戦の機会を用意することが重要との認識のもと、「人財育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」及び「ワークエンゲージメント」の取り組みを中心に進めております。詳細は「2[サステナビリティに関する考え方及び取組](4)人的資本」に記載のとおりであります。
(5) サプライチェーンの確保
西日本旅客鉄道グループは、鉄道の持続的な運行に必要な工事・保守関係業務を委託する協力会社をはじめ、多種多様な部品・材料等を製造・調達する取引先等、さまざまなパートナー企業に支えられてサプライチェーンを構築し、事業を推進しております。西日本旅客鉄道グループのサプライチェーンを支えるパートナー企業の操業停止や少子化に伴う労働力の減少、部品・材料等の調達ルートの寸断、需要急増等による資材調達の停滞等があった場合、鉄道運行に必要な技術力や部品・材料の提供が円滑に得られず、事業の継続に支障をきたす可能性があります。
西日本旅客鉄道グループでは、工事・保守関係業務に係る施工の平準化や労働環境の更なる向上を通じてパートナー企業への安定的な業務委託に努めるとともに、中長期的な老朽取替計画に基づく前広な予備品の発注や代替品への置換等を進めております。
また、ビジネスにおける人権、環境問題への関心が世界的に高まっており、西日本旅客鉄道グループは、取引先の皆様とともに相互に遵守していきたい基本的な考え方と行動原則をまとめた「JR西日本グループサプライチェーン方針」を制定し、取引先の皆様に周知しております。
(6) 情報セキュリティ、情報管理
西日本旅客鉄道グループでは、列車運行や乗車券販売等の鉄道に関わるシステムに始まり、流通、不動産、旅行・地域ソリューション等の各事業分野全般にわたってコンピュータシステムを用いております。また、西日本旅客鉄道グループと密接な取引関係にある他の会社ともコンピュータシステムを連携しており、それぞれ重要な役割を果たしております。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組んでおり、これによりコンピュータシステムが西日本旅客鉄道グループの事業運営において益々重要な役割を果たすようになっております。
このようなコンピュータシステムにおいて、西日本旅客鉄道及び相互に連携するシステムへのサイバー攻撃や自然災害、停電・通信障害、人的ミス等の要因によりシステム障害が生じた場合、事業の遂行に支障をきたす可能性があります。
また、情報管理不備等により個人情報、営業秘密等の機密情報が流出し、第三者や競合事業者に利用又は悪用された場合、お客様や取引先への被害はもとより、競争優位性の喪失や西日本旅客鉄道グループの社会的な信用低下等、収益に影響を与える可能性があります。
これらのリスクに備えるため、西日本旅客鉄道グループでは、情報セキュリティ対策状況を定期的に点検し、自社システムへの継続的な対策の見直しを行うとともに、研修の実施等による役員・従業員のITリテラシー向上を進めております。また、システム障害や情報漏えい事故及びサイバー攻撃被害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、初動体制の整備と平時における訓練に努めております。
加えて、個人情報の取得・利活用や機密情報管理に関するデータガバナンス体制等を整備し、適正な業務執行と法令遵守に努めております。
(7) 重大な犯罪行為・テロ等の発生
重大な犯罪行為やテロ活動、武力攻撃等により西日本旅客鉄道グループの施設・設備等が被害を受けた場合、事業の継続に支障をきたす可能性があります。
西日本旅客鉄道では、これらに備え、不審者及び不審物への警戒警備の強化や防犯対策訓練の実施、防護装備品の配備等の各種対策を行っております。特に大規模イベント時においては、西日本旅客鉄道グループ全体で警戒警備体制の強化を図り、駅・列車・重要施設における巡回強化や、最新技術を取り入れたセキュリティ対策等を実施しております。
また、国民保護法に基づく、武力攻撃事態等における対処については、的確かつ迅速な体制の確立等、具体的な取り扱いを定めているほか、自治体からの要請に基づき、緊急避難を目的とした利用に西日本旅客鉄道グループ施設の一部を供することとしております。
(8) 感染症の発生・流行
感染症が発生・流行した場合において、お客様の外出自粛や社員の感染等により、鉄道運行をはじめとした西日本旅客鉄道グループの事業継続が脅かされ、経営成績に甚大な影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症が発生・流行したコロナ禍において西日本旅客鉄道グループは、過去の感染症拡大に伴い整備したマスク等医療物資の備蓄や鉄道運行に関するBCPダイヤを活用し、事業継続の面においては、最小限の影響に止めることができました。
今後も重大な感染症の発生等のリスクに対しては、これまでの知見を活かしつつ、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく指定公共機関として、西日本旅客鉄道が定める「西日本旅客鉄道株式会社新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」に基づき、政府関係機関や各自治体等と緊密に連携しながら、社会インフラとしての鉄道輸送サービスの継続に万全を期していきます。
(9) コンプライアンス
コンプライアンスは、単に法令等を遵守するだけでなく、世の中の基準に照らして、その期待に誠実に応え、西日本旅客鉄道グループの事業に対して信頼をいただく取り組みであると認識しております。
西日本旅客鉄道グループは、事業活動を営む上で、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、下請法、景品表示法、個人情報保護法、不正競争防止法等、一般に適用される法令に加え、鉄道事業法等の業態ごとに適用される法令の規制を受けるほか、事業種別に応じた規制当局の監督を受けております。これらの法的規制等に違反があった場合、行政処分を受け西日本旅客鉄道グループの社会的な信用低下を招く可能性があるほか、関連諸法令の改正やガイドラインの制定等により、既存の規制が強化された場合、西日本旅客鉄道グループの事業運営や経営成績に影響を与える可能性があります。
また、法令等違反以外にも社会規範や企業倫理にもとる事象や人権を侵害する問題が発生した場合、西日本旅客鉄道グループの社会的な信用低下を招き、お客様のご利用や人財の確保に影響を与える可能性があります。
これに対し西日本旅客鉄道グループでは、グループ全体で法令遵守・コンプライアンスに関する教育・啓発を行うとともに、代表取締役社長を委員長とする「企業倫理・人権委員会」を開催し、法令等の遵守や人権に関する経営上重大な事項等について審議を行い、その議論状況を取締役会に報告することとしております。
また、内部通報窓口として設置している「JR西日本グループ倫理・人権ホットライン(倫理相談室)」や社外相談窓口の対応充実・信頼性向上を図り、グループ全体のコンプライアンス向上に取り組んでおります。
(10) 特有の法的規制
鉄道事業は公益的な性格を持つことから、公的サービスにおける官民の役割分担に対する政府の考え方によって、さまざまな影響を受ける可能性があります。
① 鉄道事業に対する法的規制
西日本旅客鉄道は、「鉄道事業法(1986年法律第92号)」の定めにより、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、運賃及び一定の料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。これらの手続きや許認可の基準が変更された場合、西日本旅客鉄道グループの収益に影響を与える可能性があります。2024年4月には、鉄道運賃水準の算定の根拠となる「総括原価」の算定方法を定める「収入原価算定要領」について、持続可能な鉄道輸送サービスに資する設備投資の促進、人財確保、自然災害の激甚化等への対応を念頭に、鉄道事業の安定的・持続的な運営等を確保していく観点から見直しが行われました。
事業運営にあたっては、株主に対する配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする適正な利潤を確保することが必要であると考えており、収益の確保と経費削減を進め効率的な経営に努めていますが、「(3)経営環境の激変」で前述したように、人口減少による収益の減少、インフレによる費用の増加等により適正な利潤を確保できない場合は、「収入原価算定要領」の見直し内容も踏まえ、将来を見据えた安全やサービス向上の設備投資を行うなど、持続的な進化を図っていくために、適切な時期に運賃改定を実施する必要があるものと考えております。
なお、西日本旅客鉄道をJR会社法の適用対象から除外するJR会社法改正法が2001年12月1日に施行されました。すなわち、西日本旅客鉄道においては、JR会社法に定められる発行する株式等の募集及び長期借入金の認可(第5条)、重要な財産の譲渡等の認可(第8条)等の全ての規定の適用から除外されております。
一方で、本法附則により、国土交通大臣が指定するものがその事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針として以下の3点について定めることとされております。この指針は2001年11月7日に告示され、2001年12月1日から適用となっております。
〈指針に定められる事項〉
・会社間における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項
・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項
・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項
② 整備新幹線
ア.整備新幹線の建設計画
1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法に基づき整備計画が決定された路線のうち、西日本旅客鉄道は北陸新幹線(上越市-大阪市)の営業主体となっており、建設主体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・保有する新幹線施設の貸付けを受けて営業することとなっております。
2015年3月:北陸新幹線(長野-金沢間)開業
2024年3月:北陸新幹線(金沢-敦賀間)開業
イ.整備新幹線建設の費用負担
整備新幹線の建設費は、全国新幹線鉄道整備法及び関連法令に基づいて「国、地方公共団体及び旅客会社が負担すること」、「旅客会社の負担は、整備新幹線の営業主体となる旅客会社が支払う受益の範囲を限度とした貸付料等をあてること」と定められております。
なお、整備新幹線の営業主体である旅客会社が支払う貸付料の額については、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令」第6条において、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額(定額部分)に、貸付けを受けた鉄道施設に関して同機構が支払う租税及び同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。
北陸新幹線上越妙高-金沢間の貸付料につきましては、同機構により算定された定額部分の年額80億円が当該新幹線開業に伴う西日本旅客鉄道の受益の範囲内にあると判断し、2015年3月に同機構との合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同機構は2015年3月に国土交通大臣の認可を受けております。北陸新幹線金沢-敦賀間の貸付料につきましては、同様の手続きにて年額93億円とし同機構は2024年3月に国土交通大臣の認可を受けております。
ウ.北陸新幹線に対する西日本旅客鉄道の考え方
敦賀以西区間については、新幹線整備により大幅な時間短縮効果が見込まれることから、早期の大阪までの全線開業が望ましいと考えております。現在、2017年3月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームより出された結論に基づき、「小浜京都ルート」(敦賀駅-小浜市(東小浜)附近-京都駅-京田辺市(松井山手)附近-新大阪駅)の環境影響評価の手続きが進められております。
なお、全線開業に向けた着工区間の延伸に際しても「西日本旅客鉄道の負担は受益の範囲内であること」や「並行在来線の経営分離」という従前からの基本原則が守られる必要があると考えております。
西日本旅客鉄道としては、引き続き今後の動向を注視していきます。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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