東京地下鉄(9023)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


東京地下鉄(9023)の株価チャート 東京地下鉄(9023)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

 

3 【事業の内容】

東京地下鉄グループは、東京地下鉄及び東京地下鉄の関係会社(うち連結子会社14社、非連結子会社2社、持分法適用関連会社4社))で構成され、その営んでいる主要な事業内容は、次のとおりです。

なお、各区分は、セグメント情報の報告セグメントと同一です。

 

(1) 運輸業

東京都区部を中心に、9路線からなる地下鉄ネットワークを保有し、鉄道の運行及び運営並びに鉄道施設等の保守管理を行っています。

 

事業の内容

主な会社名

鉄道事業

東京地下鉄

鉄道駅の清掃及び運営管理

㈱メトロセルビス(鉄道駅の清掃等)、㈱メトロコマース(鉄道駅の運営管理)

鉄道施設等の整備及び保守管理

㈱メトロステーションファシリティーズ(駅設備関係)、メトロ車両㈱(車両関係)、㈱メトロレールファシリティーズ(土木構築物・建築物関係)、メトロ開発㈱(土木構築物関係)、㈱地下鉄メインテナンス(電気設備関係)

海外都市鉄道運営・維持の支援

ベトナム東京メトロ(VIETNAM TOKYO METRO ONE MEMBER LIMITED LIABILITY
COMPANY)

 

 

(2) 不動産事業

鉄道事業とのシナジー効果が発揮できる事業展開を基本とし、東京地下鉄路線の沿線において、渋谷マークシティ、渋谷ヒカリエ、東急プラザ原宿「ハラカド」など、オフィスビルやホテルを中心とした不動産の賃貸を行っています。

 

事業の内容

主な会社名

不動産の開発

東京地下鉄

不動産の賃貸

東京地下鉄、東京メトロ都市開発㈱

不動産の管理

東京メトロ都市開発㈱

投資法人の資産運用

東京メトロアセットマネジメント㈱

 

 

(3) 流通・広告事業

東京地下鉄資産などを活用し、東京地下鉄路線の駅においてEchikaなどの商業施設の運営を行う流通事業、主として駅構内や車両内の広告を取り扱う広告事業、携帯電話通信サービスの営業許諾などを行う情報通信事業などを行っています。

 

事業の内容

主な会社名

商業施設の開発

東京地下鉄

商業施設の運営

㈱メトロコマース(駅構内売店等の運営)、メトロ開発㈱(高架下商業施設の運営)、㈱メトロプロパティーズ(Echika等駅構内及び駅周辺における商業施設及び飲食店舗の運営)

広告事業

㈱メトロアドエージェンシー

情報通信事業

東京地下鉄

 

 

(4) その他

 

事業の内容

主な会社名

福利厚生施設の運営

㈱メトロライフサポート

人事・経理・システムサービスに関する事務

㈱メトロビジネスアソシエ

施設の清掃

㈱メトロフルール

 

(注)1 2025年4月1日付けで、㈱地下鉄メインテナンスは東京メトロ電気メインテナンス㈱に商号変更しています。

  2 流通・広告事業は、2025年4月1日付けでライフ・ビジネスサービス事業に改称しています。

  3 「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、東京地下鉄施設の管理運営事業等を含んでいます。

 

以上の企業集団の状況について、事業系統図を示すと次のとおりです。

 


(注) 1 上図は、東京地下鉄及び子会社15社の概要図です。

   2 ※は非連結子会社です。

 

 


 



事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が東京地下鉄グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについては、次のようなものがあります。

なお、東京地下鉄グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や蓋然性、リスクの性質等に応じて、分類しています。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において東京地下鉄が判断したものです。また、以下のリスクは東京地下鉄グループの全てのリスクを網羅したものではなく、予想される主なリスクを例示したものです。

 

(1) 東京地下鉄グループの経営環境に関連するリスク

① 人口動向等について

東京地下鉄グループは、東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開しています。わが国における経済的中心地である東京都区部に強固な基盤を有することは、高い営業収益力を保つ上で東京地下鉄グループの強みの一つであり、この営業基盤の特性を最大限活用していきます。

しかしながら、首都圏の人口動向については、中長期的には減少傾向となることが予想されています。また、首都圏における就業・就学人口の減少、高齢化の進展等による人口構造の変化や、テレワークやウェブ会議の進展・定着とこれに伴う通勤・移動需要の減少等の社会構造の変化が進んだ場合、さらには今後、首都圏における経済情勢の大きな変化、大企業の本社機能又は政府機関の東京都区部からの移転等が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 電力料金、原材料価格及び労務費の高騰について

東京地下鉄グループは、今後も効率的な事業運営に努めていきますが、列車の運行等に際し多大な電力を消費するほか、継続的な設備投資やトンネルをはじめとした鉄道設備の維持補修等を行っていることから、電力料金、原材料価格及び労務費の動向が、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、2022年度の電力料金の大幅な高騰を踏まえ、2023年度より調達先を変更し、従前より燃料価格や市場価格の影響を受けにくい新たな電気料金制度のもとで電力を使用しておりますが、電力料金が高騰し、それが長期にわたって継続する場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、これらのコストが上昇する要因としては、円安の進行や燃料価格等の高騰、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額、労働需給のひっ迫等が想定されます。

 

(2) 自然災害、感染症、気候変動等に関連するリスク

① 自然災害・事故等について

東京地下鉄グループは、安全の確保を常に念頭に置き、技術面からの更なる安全性向上に向けた取組を実施するとともに、安全管理規程に基づく安全マネジメント体制の運用等制度面からの取組も推進し、安全の確保を目指しています。さらに、首都直下地震や大規模浸水等に備えた鉄道事業における自然災害対策として、施設の耐震性の強化、帰宅困難者対策、洪水等による浸水対策等の諸課題への取組を強化するとともに、危機管理機能の強化を推進しています。

しかしながら、地震・洪水・台風等の自然災害、大規模停電又は電力の使用制限や、これらに伴う保守部品等のリソース供給不足、重大な犯罪行為やテロリストによる攻撃等により東京地下鉄の路線の運行に支障を来す事態となった場合や、東京地下鉄の路線において重大な事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に東京地下鉄の路線、コンピューターシステム及び本社施設等は、そのほとんどが東京都区部に位置していることから、当該地域に大地震をはじめとする重大な自然災害・事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの多くの施設等に被害が及ぶ可能性があります。また、東京地下鉄の路線、施設の大半は地下にあるため、火災、浸水等の災害が発生した場合には、その被害が大きくなる可能性があり、これにより、事業が復旧するまでに相応の時間を要する等、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 感染症について

新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が東京地下鉄沿線地域において大規模に流行し、外出自粛等により通勤・通学・業務・私事利用を問わず鉄道利用者が大幅に減少した場合、世界的な流行に伴い訪日外国人が大幅に減少した場合や、列車運行等の事業運営に支障を来す場合等には、東京地下鉄グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 気候変動について

近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因の一つであり、世界中の政府や企業において脱炭素化の動きが広がっています。東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開する東京地下鉄グループは、自然災害による事業リスクに加え、主要事業である鉄道事業が電力を消費するという特性を有することから、東京地下鉄グループのサステナビリティ戦略を推進していくことを目的に、2019年4月からサステナビリティ推進体制を新たに整備し、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)テーマに「地下鉄を安全に、そしてつよく」及び「地球にやさしいメトロに」を掲げ、気候変動問題に関する取組を強化してきました。なお、サステナビリティ推進会議については、2023年4月からサステナビリティ推進委員会と名称を改め、体制を強化しました。

東京地下鉄グループは、このような取組を引き続き推進していく予定ですが、今後、政策・法規制の見直しやエネルギーミックスの変化による電力料金の上昇等のほか豪雨の激甚化による鉄道施設の損傷・沿線地域の被災、平均気温の上昇による感染症の発生・拡大等が生じた場合、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄グループは2022年3月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、主要事業である鉄道事業への気候関連リスク/機会を開示しました。東京地下鉄グループは、開示情報を活用してステークホルダーの皆様との対話を活性化させ、気候変動問題に関する取組を今後も推進していく予定です。しかしながら、このような取組にも関わらず、ステークホルダーの皆様から気候変動に関する情報開示に十分に対応していないと判断される場合には、東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人権について

日本国内における労働力人口減少や働き方改革等といった雇用環境等の変化が生じる中で、東京地下鉄グループの事業に関わる人的資本は多様化しており、社会的、国際的に人権意識が一層高まっていることも踏まえ、人権問題に対しては、より多面的に対処する必要性が高まっていると考えています。そのため、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、人権尊重に向けた取組を強化し、2023年3月に「東京メトログループ人権方針」を制定・公表しました。

しかしながら、こういった取組にも関わらず、東京地下鉄グループ内のみならず、取引先、事業パートナー等を含む東京地下鉄グループを取り巻く国内外のステークホルダーに関し、東京地下鉄グループの事業活動を通じ人権を侵害する行為が発生し、東京地下鉄グループの社会的信用の低下が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 東京地下鉄グループの経営に関連するリスク

① 法的規制等について

鉄道事業においては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別について許可を受ける必要があります(同法第3条)。

収益の中心となる運賃面においては、上限運賃を設定するときは国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限運賃の範囲内で運賃を改定する場合にも、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(同法第16条)。

東京地下鉄が現在取得しているこれらの国土交通大臣の許可及び認可には期間の定めは無く、東京地下鉄の現在の運賃は、2019年9月5日に変更の認可を受けたものです(2019年10月1日より改定後の運賃を適用)。

なお、運賃の改定を施行するに当たっては、所定の手続を経る必要があることから、機動的な運賃の改定を行うことができない場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年12月に軌道法施行規則(大正12年内務省・鉄道省令)及び鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の改正により創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、バリアフリー設備の整備費等に充当するための料金を定める場合には、バリアフリー整備・徴収計画を作成の上、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(鉄道事業法第16条第4項)。鉄道駅バリアフリー料金は、第二次交通政策基本計画(2021年5月8日閣議決定)に基づき、利用者に過度の負担感を与えないものとする必要があるとされており、また、その総徴収額はバリアフリー整備・徴収計画における総整備費を超えない額とすることとされています。

東京地下鉄は2023年3月18日から、運賃に加算して鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始しておりますが、法令又は運用の変更等により、バリアフリー整備・徴収計画に定めたとおりに料金の徴収ができない場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

鉄道事業を休廃止する場合には、事前に(廃止の場合は廃止日の1年前までに)国土交通大臣に届出を行うこととされています(同法第28条、第28条の2)。また、鉄道事業法、同法に基づく命令、これらに基づく処分、許可・認可に付した条件に違反した場合、正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しない場合、同法第6条に定める事業許可の欠格事由に該当することとなった場合などの際には、国土交通大臣は事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができるとされています(同法第30条)。仮に、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消しを受けた場合には、事業活動の継続に支障を来すこととなりますが、現在、同法に抵触する事実等は存在せず、事業活動の継続に支障を来す要因は発生していません。

東京地下鉄は鉄道事業法に加えて、東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)や安全、環境、バリアフリー等の規制に関する様々な法令の適用を受けており、これらの法令が改正され又はその運用が変更された場合、その内容によっては東京地下鉄の事業活動における柔軟性の減少、費用の増加等を招き、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法の概要は以下のとおりですが、この法律においては、国及び同法附則第11条の規定により営団から株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする旨規定されています(東京地下鉄株式会社法附則第2条)。

また、2021年4月2日に開催された、第3回交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会において、国土交通省が配布した資料には、「東京メトロが完全民営化(政府が株式を全て売却)した場合には、JR本州3社・JR九州の例を踏まえると、現行の東京メトロ法に基づく監督規定は廃止される一方、引き続き、鉄道事業法等の規定に基づき鉄道事業を運営することとなる。」旨記載されています。

(ⅰ) 制定趣旨・目的等

 東京地下鉄株式会社法は、東京地下鉄の設立について定めるとともに、その目的、事業に関する事項について規定しています。同法は、鉄道事業法に加えて東京地下鉄を規制するとともに、商号の使用制限等の特例措置を定めています。

 なお、東京地下鉄株式会社法に基づく政府の規制は、東京地下鉄の経営の自主性の確保を前提とするものであり、毎事業年度の開始前に事業計画を国土交通大臣に提出することは求められているものの、事業計画の認可、関連事業の実施についての認可等は不要とされています。

(ⅱ) 概要

ア 国土交通大臣による認可を必要とする事項

(ア) 発行する株式又は新株予約権を引き受ける者の募集等の認可(東京地下鉄株式会社法第4条第1項)

 会社法(平成17年法律第86号)第199条第1項に規定するその発行する株式若しくは会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換若しくは株式交付に際して株式、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

(イ) 代表取締役等の選定等の決議の認可(同法第5条)

代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査等委員である取締役若しくは監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

(ウ) 定款の変更等の認可(同法第7条)

定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割及び解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

イ その他の規制事項

国土交通大臣への事業計画及び財務諸表の提出義務(同法第6条、第8条)、国土交通大臣の監督・命令権限並びに報告指示及び検査権限(同法第9条、第10条)が規定されています。

ウ 特例措置

(ア) 商号の使用制限(同法第2条)

東京地下鉄でない者は、その商号中に東京地下鉄株式会社という文字を使用してはなりません。

(イ) 一般担保(同法第3条)

社債権者は、東京地下鉄の財産について、民法の規定による一般の先取特権に次いで優先弁済を受けることができます。

 

② 鉄道事業に関する道路占用料について

東京地下鉄の路線は、主として道路の地下を運行しているため、道路法(昭和27年法律第180号)第39条第1項の規定により、道路占用料徴収の対象となっていますが、本書提出日現在、指定国道及び指定国道以外の道路のいずれについても、出入口等の地上施設を除く地下施設については、各種法令・条例等の減免措置の適用により、道路占用料の全額を免除されています。このうち、指定国道の地下施設の道路占用料については、2022年12月に、国土交通省より、東京地下鉄株式の上場後は、他の第三セクターの地下鉄事業者と並びを取り、道路法施行令(昭和27年政令第479号)で定める金額の10%として取り扱うこととし、東京地下鉄の完全民営化後の指定国道の道路占用料の取扱いについては、現時点では取扱いを決めず、完全民営化の時期が具体化した段階で改めて協議するとの方針が示されております。かかる方針に変更があった場合や、将来において東京地下鉄の完全民営化の時期が具体化した際の指定国道の道路占用料の取扱いの具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、指定国道以外の道路については、東京地下鉄の株式上場後も継続して減免措置が適用される予定ではありますが、今後、現行の各種法令等の改正により、これらの指定国道以外の道路においてもこの減免措置が受けられなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 中期経営計画について

東京地下鉄グループは、2022年4月に、持続可能な鉄道事業の運営と成長戦略による収益拡大を実現すべく、「構造変革」・「新たな飛躍」を基本方針に掲げ、4つの重点戦略を設定した、2022年度から2024年度までの中期経営計画「東京メトロプラン2024」を公表しました。また、2023年3月には、コロナ禍における行動制限の緩和等による旅客運輸収入の回復や電力料金の高騰等、同計画策定時の前提が大きく変化したことを踏まえ、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を内容とする「東京メトロプラン2024」の変更を行いました。

中期経営計画においては、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、「構造変革」に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、「新たな飛躍」を目指した取組を推進することを基本方針としています。

しかしながら、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因により中期経営計画に掲げる取組が計画どおりに進捗しない可能性や、中期経営計画を策定するための各種の前提が変化する可能性があります。このような場合には、東京地下鉄グループは、かかる状況や変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行するよう努めますが、適時に成長戦略や事業運営を変更し、又は改善することができないなど様々な要因により、中期経営計画で掲げた経営目標について、当初計画した期間内に又は当該期間経過後においても達成できない可能性があります。

 

④ 他事業者との競合等について

東京地下鉄グループは、運輸業において一部の鉄道事業者及びタクシー、バス等の交通機関と競合関係にあるほか、自家用車等の他の交通手段の利用の多寡にも影響を受けます。したがって、他事業者による新線開業や、他事業者同士による相互乗り入れ等の新しいサービスの提供は、東京地下鉄の路線の輸送人員を減少させ、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄は他事業者との相互乗り入れ等により、東京地下鉄の利用者の利便性向上及び輸送人員の拡大を図っていますが、自然災害や事故、停電又は電力の使用制限その他の理由により相互乗り入れ等のサービスを提供できなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 長期債務について

東京地下鉄は、前身の営団時代から地下鉄ネットワークの整備拡充に努め、その建設資金の多くを財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づく財政投融資による政府からの借入金及び交通債券等の長期資金にて調達してきました。また、東京地下鉄は、これら債務の償還や鉄道事業を中心とした継続的な設備投資のために、社債の発行や借入金により長期資金を調達しています。さらに、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)、南北線延伸(品川・白金高輪間)及び豊洲駅の改良事業(以下、「有楽町線、南北線延伸事業等」といいます。)に充当するため、2023年3月30日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」といいます。)から、1,921億円の長期資金(新線建設推進長期借入金)を調達しており、2024年3月31日現在の社債及び借入金残高は1兆1,188億9千8百万円となっています。

なお、新線建設推進長期借入金による資金は、分別管理を目的として信託を設定しており、2024年3月31日現在の当該長期借入金残高は1,921億円となっています。

東京地下鉄グループは、債務残高を収益力との関係性において一定の水準に抑制するなど財務規律を堅持し、財務健全性の維持・向上を図っていますが、金利が大幅に上昇した場合や東京地下鉄の信用格付が引き下げられた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 不動産事業及び流通・広告事業等について

今後の人口動向やそれに伴う競争激化等の経営環境の変化を踏まえると、運輸業の拡大には一定の限度があるため、東京地下鉄グループの今後の成長及び収益基盤の強化という観点から、不動産事業及び流通・広告事業等、運輸業以外の事業分野である事業領域・規模の拡大を追求することが将来的な課題となっています。そのため、今後さらにこれら事業の積極的な展開を促進していきますが、東京地下鉄グループの経営資源の制約や経済環境の悪化等で、期待される収益が獲得できず、又は、新たな事業分野におけるリスクが顕在化した場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 都営地下鉄との一元化について

特殊会社である東京地下鉄の使命は、東京地下鉄株式会社法の趣旨を踏まえて、できる限り速やかに完全民営化を目指すことであると認識しており、そのため、財務基盤の充実・強化を図るなどにより、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都との合意に基づき、将来の完全民営化を見据えつつ、東京地下鉄株式の上場に向けて取り組んでいます。

東京地下鉄は、東京地下鉄と同じく東京都区部及びその周辺地域における地下鉄道事業を営む都営地下鉄とのサービスの一体化は、東京地下鉄の利用者の利便性向上につながるものと考えており、地下鉄利用者の利便性向上への取組の検討を進めていきます。

また、東京地下鉄は国及び東京都との間で、東京地下鉄の完全民営化並びに東京地下鉄と都営地下鉄とのサービスの一体化及び経営の一元化に関して従来から意見交換を行っています。これらの課題について具体的な解決策やサービス向上策の実現に向けて実務的な検討を行うことを目的として、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月に設置されました。また、2013年7月には都営地下鉄と東京地下鉄とのサービスの改善・一体化を推進することを目的として「東京の地下鉄の運営改革会議」が設置されました。東京地下鉄・都営地下鉄間の運賃の乗換負担軽減策を含むサービスの一体化に関するこれらの協議の結果によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

他方、都営地下鉄については、公営企業という組織形態や累積欠損を抱えていること等を考慮すると、東京地下鉄との経営の一元化を図るために解決されなければならない多くの問題が残されており、仮に経営の一元化を実施する場合においても、相当程度の時間を要することが想定されます。また、経営の一元化を実施する場合には、都営地下鉄の経営状況の改善や東京地下鉄の企業価値向上が図られることが基本と考えますが、経営の一元化の具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 新線建設について

東京地下鉄は、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)及び南北線延伸(品川・白金高輪間)(以下「両路線」といいます。)については、沿線の開発状況等を勘案した輸送需要予測の動向を踏まえ、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都の合意に基づく十分な公的支援及び東京地下鉄株式の売却が確実に実施されることを前提に、東京地下鉄ネットワークに関連する両路線の整備主体となることがさらなる企業価値向上に資するものと判断し、2022年1月に国土交通大臣に対し第一種鉄道事業許可の申請を行い、同年3月に許可を受け、2023年3月に工事施行認可の申請を行いました。

しかしながら、両路線の新線建設を進めるにあたり、輸送需要を含めた事業環境の変化、想定外の建設スケジュールの長期化や追加コストの発生、公的支援の実施状況等によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

今後も東京地下鉄は、両路線を除き新線建設を行わず、また、新線建設に対する協力を求められる場合には、都市鉄道ネットワークの一部を構成する事業者としての立場から、「東京地下鉄の経営に悪影響を及ぼさない範囲内において行う」という方針で対応していきたいと考えています。

なお、1982年1月に免許申請を行った8号線(豊洲・亀有間14.7km)については、半蔵門線(水天宮前・押上間)の開業や輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、東京地下鉄としては、整備主体となることは極めて困難と認識しています。

 

⑨ コンプライアンスについて

東京地下鉄グループは、「コンプライアンスに関する規定」、「東京メトログループコンプライアンス行動基準」などの周知、徹底に加え、コンプライアンス教育を定期的に実施するなどの啓発活動を行うとともに、コンプライアンスに反する行為等を通報できる「企業倫理向上窓口」を設置するなど、コンプライアンス体制の整備・拡充に努めています。

しかしながら、東京地下鉄グループの役職員によるコンプライアンスに反する行為が発生した場合には、法令等に基づく罰則や規制当局による処分、コンプライアンス違反に起因する損害賠償請求等を受けること等により、東京地下鉄グループの社会的信用が低下するとともに、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、2024年9月12日、国土交通省関東運輸局からの鉄道車両における輪軸の緊急点検の指示を受け、東京地下鉄の輪軸組立作業についての検査を実施したところ、全体の約2%にあたる222軸において、車輪圧入作業における圧入力値が社内基準値を超過していたこと、及び社内基準値を満たすために、関連記録を手動で修正する慣行が当該作業に従事している東京地下鉄グループ従業員の間で常態化していたことが判明しました。なお、当該社内基準値は、日本産業規格(JIS E4504)に基づく圧入力値の最大値となっています。一般的に、高い圧入力は車軸に損傷を与える可能性がありますが、社内基準値の+10%以内であった220軸については、安全性を確認した上で使用しており、社内基準値に対して+10%を超えた2軸については、直ちに使用を中止しています。東京地下鉄は、今後同様の問題が発生しないよう対策を実施していますが、上記の不正行為に関連して、規制当局による処分の対象となった場合や新たな対策を求められることとなった場合等には、コンプライアンスへの取組に関連する費用の発生等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 財務大臣及び東京都の東京地下鉄株式保有について

本書提出日現在において、東京地下鉄の発行済株式のうち、53.42%を財務大臣が、46.58%を東京都が保有しております。東京地下鉄株式の上場後においても、26.71%を財務大臣が、23.29%を東京都が保有する予定であることから、財務大臣及び東京都は引き続き東京地下鉄の経営に重要な影響を及ぼしうることになります。東京地下鉄グループの事業その他に関する政府や東京都の利益は、東京地下鉄の他の株主の利益と相反する可能性があり、東京地下鉄グループの他の株主の利益に反する影響力の行使がなされる可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法附則第2条により、「国及び東京都は、特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」旨規定されております。また、2021年7月15日に交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」(交通政策審議会答申第371号)において、東京地下鉄株式の売却に当たっては、国及び東京都が当面東京地下鉄株式の2分の1を保有することが適切であり、その後の東京地下鉄株式の売却について国と東京都は、これまでの閣議決定や法律において完全民営化の方針が規定されていることを堅持しつつ、その中で、首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえながら対応することが求められるとの考え方が示されております。さらに、2022年3月28日に財政制度等審議会が答申した「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」及び同日に東京都が公表した「東京地下鉄株式会社の株式の処分の基本的な考え方」において、新規公開後の「その後の売却においては、国と東京都の協議を踏まえて対応すること」が適当であるとの考え方が示されております。以上のとおり、今後、地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展等を踏まえつつ、国と東京都が保有する東京地下鉄株式の全部又は一部を売却することが想定されており、かかる売却が実施される場合には、短期的に東京地下鉄株式の需給バランスに影響が生じ、東京地下鉄の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム関連のリスク

① 情報システムについて

東京地下鉄グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。東京地下鉄グループでは、サイバーセキュリティ推進体制の整備や専門機関による定期的なシステム監査の実施等の施策に取り組んでいます。しかしながら、上記(2)①に記載した自然災害・事故等のほか、人為的ミス及びコンピューターウィルス等並びに第三者による妨害行為等により、列車運行や電力供給に関するシステム等に障害が発生した場合には、正常な列車運行その他の事業運営に支障を来す可能性や、これに伴う東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 個人情報保護について

東京地下鉄グループでは、各事業において顧客情報等の個人情報を保有しています。個人情報については東京地下鉄グループの「個人情報保護方針」や「情報管理規程」に基づき厳正な管理を行っていますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償等による費用を負担する必要が生じるほか、東京地下鉄グループに対する信用が損なわれる等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が東京地下鉄グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについては、次のようなものがあります。

なお、東京地下鉄グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や蓋然性、リスクの性質等に応じて、分類しています。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において東京地下鉄が判断したものです。また、以下のリスクは東京地下鉄グループの全てのリスクを網羅したものではなく、予想される主なリスクを例示したものです。

 

(1) 東京地下鉄グループの経営環境に関連するリスク

① 人口動向等について

東京地下鉄グループは、東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開しています。わが国における経済的中心地である東京都区部に強固な基盤を有することは、高い営業収益力を保つ上で東京地下鉄グループの強みの一つであり、この営業基盤の特性を最大限活用していきます。

しかしながら、首都圏の人口動向については、中長期的には減少傾向となることが予想されています。また、首都圏における就業・就学人口の減少、高齢化の進展等による人口構造の変化や、テレワークやウェブ会議の進展・定着とこれに伴う通勤・移動需要の減少等の社会構造の変化が進んだ場合、さらには今後、首都圏における経済情勢の大きな変化、大企業の本社機能又は政府機関の東京都区部からの移転等が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 電力料金、原材料価格及び労務費の高騰について

東京地下鉄グループは、今後も効率的な事業運営に努めていきますが、列車の運行等に際し多大な電力を消費するほか、継続的な設備投資やトンネルをはじめとした鉄道設備の維持補修等を行っていることから、電力料金、原材料価格及び労務費の動向が、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、2022年度の電力料金の大幅な高騰を踏まえ、2023年度より調達先を変更し、従前より燃料価格や市場価格の影響を受けにくい新たな電気料金制度のもとで電力を使用しておりますが、電力料金が高騰し、それが長期にわたって継続する場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、これらのコストが上昇する要因としては、円安の進行や燃料価格等の高騰、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額、労働需給のひっ迫等が想定されます。

 

(2) 自然災害、感染症、気候変動等に関連するリスク

① 自然災害・事故等について

東京地下鉄グループは、安全の確保を常に念頭に置き、技術面からの更なる安全性向上に向けた取組を実施するとともに、安全管理規程に基づく安全マネジメント体制の運用等制度面からの取組も推進し、安全の確保を目指しています。さらに、首都直下地震や大規模浸水等に備えた鉄道事業における自然災害対策として、施設の耐震性の強化、帰宅困難者対策、洪水等による浸水対策等の諸課題への取組を強化するとともに、危機管理機能の強化を推進しています。

しかしながら、地震・洪水・台風等の自然災害、大規模停電又は電力の使用制限や、これらに伴う保守部品等のリソース供給不足、重大な犯罪行為やテロリストによる攻撃等により東京地下鉄の路線の運行に支障を来す事態となった場合や、東京地下鉄の路線において重大な事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に東京地下鉄の路線、コンピューターシステム及び本社施設等は、そのほとんどが東京都区部に位置していることから、当該地域に大地震をはじめとする重大な自然災害・事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの多くの施設等に被害が及ぶ可能性があります。また、東京地下鉄の路線、施設の大半は地下にあるため、火災、浸水等の災害が発生した場合には、その被害が大きくなる可能性があり、これにより、事業が復旧するまでに相応の時間を要する等、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 感染症について

新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が東京地下鉄沿線地域において大規模に流行し、外出自粛等により通勤・通学・業務・私事利用を問わず鉄道利用者が大幅に減少した場合、世界的な流行に伴い訪日外国人が大幅に減少した場合や、列車運行等の事業運営に支障を来す場合等には、東京地下鉄グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 気候変動について

近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因の一つであり、世界中の政府や企業において脱炭素化の動きが広がっています。東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開する東京地下鉄グループは、自然災害による事業リスクに加え、主要事業である鉄道事業が電力を消費するという特性を有することから、東京地下鉄グループのサステナビリティ戦略を推進していくことを目的に、2019年4月からサステナビリティ推進体制を新たに整備し、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)テーマに「地下鉄を安全に、そしてつよく」及び「地球にやさしいメトロに」を掲げ、気候変動問題に関する取組を強化してきました。なお、サステナビリティ推進会議については、2023年4月からサステナビリティ推進委員会と名称を改め、体制を強化しました。

東京地下鉄グループは、このような取組を引き続き推進していく予定ですが、今後、政策・法規制の見直しやエネルギーミックスの変化による電力料金の上昇等のほか豪雨の激甚化による鉄道施設の損傷・沿線地域の被災、平均気温の上昇による感染症の発生・拡大等が生じた場合、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄グループは2022年3月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、主要事業である鉄道事業への気候関連リスク/機会を開示しました。東京地下鉄グループは、開示情報を活用してステークホルダーの皆様との対話を活性化させ、気候変動問題に関する取組を今後も推進していく予定です。しかしながら、このような取組にも関わらず、ステークホルダーの皆様から気候変動に関する情報開示に十分に対応していないと判断される場合には、東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人権について

日本国内における労働力人口減少や働き方改革等といった雇用環境等の変化が生じる中で、東京地下鉄グループの事業に関わる人的資本は多様化しており、社会的、国際的に人権意識が一層高まっていることも踏まえ、人権問題に対しては、より多面的に対処する必要性が高まっていると考えています。そのため、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、人権尊重に向けた取組を強化し、2023年3月に「東京メトログループ人権方針」を制定・公表しました。

しかしながら、こういった取組にも関わらず、東京地下鉄グループ内のみならず、取引先、事業パートナー等を含む東京地下鉄グループを取り巻く国内外のステークホルダーに関し、東京地下鉄グループの事業活動を通じ人権を侵害する行為が発生し、東京地下鉄グループの社会的信用の低下が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 東京地下鉄グループの経営に関連するリスク

① 法的規制等について

鉄道事業においては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別について許可を受ける必要があります(同法第3条)。

収益の中心となる運賃面においては、上限運賃を設定するときは国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限運賃の範囲内で運賃を改定する場合にも、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(同法第16条)。

東京地下鉄が現在取得しているこれらの国土交通大臣の許可及び認可には期間の定めは無く、東京地下鉄の現在の運賃は、2019年9月5日に変更の認可を受けたものです(2019年10月1日より改定後の運賃を適用)。

なお、運賃の改定を施行するに当たっては、所定の手続を経る必要があることから、機動的な運賃の改定を行うことができない場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年12月に軌道法施行規則(大正12年内務省・鉄道省令)及び鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の改正により創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、バリアフリー設備の整備費等に充当するための料金を定める場合には、バリアフリー整備・徴収計画を作成の上、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(鉄道事業法第16条第4項)。鉄道駅バリアフリー料金は、第二次交通政策基本計画(2021年5月8日閣議決定)に基づき、利用者に過度の負担感を与えないものとする必要があるとされており、また、その総徴収額はバリアフリー整備・徴収計画における総整備費を超えない額とすることとされています。

東京地下鉄は2023年3月18日から、運賃に加算して鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始しておりますが、法令又は運用の変更等により、バリアフリー整備・徴収計画に定めたとおりに料金の徴収ができない場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

鉄道事業を休廃止する場合には、事前に(廃止の場合は廃止日の1年前までに)国土交通大臣に届出を行うこととされています(同法第28条、第28条の2)。また、鉄道事業法、同法に基づく命令、これらに基づく処分、許可・認可に付した条件に違反した場合、正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しない場合、同法第6条に定める事業許可の欠格事由に該当することとなった場合などの際には、国土交通大臣は事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができるとされています(同法第30条)。仮に、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消しを受けた場合には、事業活動の継続に支障を来すこととなりますが、現在、同法に抵触する事実等は存在せず、事業活動の継続に支障を来す要因は発生していません。

東京地下鉄は鉄道事業法に加えて、東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)や安全、環境、バリアフリー等の規制に関する様々な法令の適用を受けており、これらの法令が改正され又はその運用が変更された場合、その内容によっては東京地下鉄の事業活動における柔軟性の減少、費用の増加等を招き、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法の概要は以下のとおりですが、この法律においては、国及び同法附則第11条の規定により営団から株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする旨規定されています(東京地下鉄株式会社法附則第2条)。

また、2021年4月2日に開催された、第3回交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会において、国土交通省が配布した資料には、「東京メトロが完全民営化(政府が株式を全て売却)した場合には、JR本州3社・JR九州の例を踏まえると、現行の東京メトロ法に基づく監督規定は廃止される一方、引き続き、鉄道事業法等の規定に基づき鉄道事業を運営することとなる。」旨記載されています。

(ⅰ) 制定趣旨・目的等

 東京地下鉄株式会社法は、東京地下鉄の設立について定めるとともに、その目的、事業に関する事項について規定しています。同法は、鉄道事業法に加えて東京地下鉄を規制するとともに、商号の使用制限等の特例措置を定めています。

 なお、東京地下鉄株式会社法に基づく政府の規制は、東京地下鉄の経営の自主性の確保を前提とするものであり、毎事業年度の開始前に事業計画を国土交通大臣に提出することは求められているものの、事業計画の認可、関連事業の実施についての認可等は不要とされています。

(ⅱ) 概要

ア 国土交通大臣による認可を必要とする事項

(ア) 発行する株式又は新株予約権を引き受ける者の募集等の認可(東京地下鉄株式会社法第4条第1項)

 会社法(平成17年法律第86号)第199条第1項に規定するその発行する株式若しくは会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換若しくは株式交付に際して株式、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

(イ) 代表取締役等の選定等の決議の認可(同法第5条)

代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査等委員である取締役若しくは監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

(ウ) 定款の変更等の認可(同法第7条)

定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割及び解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

イ その他の規制事項

国土交通大臣への事業計画及び財務諸表の提出義務(同法第6条、第8条)、国土交通大臣の監督・命令権限並びに報告指示及び検査権限(同法第9条、第10条)が規定されています。

ウ 特例措置

(ア) 商号の使用制限(同法第2条)

東京地下鉄でない者は、その商号中に東京地下鉄株式会社という文字を使用してはなりません。

(イ) 一般担保(同法第3条)

社債権者は、東京地下鉄の財産について、民法の規定による一般の先取特権に次いで優先弁済を受けることができます。

 

② 鉄道事業に関する道路占用料について

東京地下鉄の路線は、主として道路の地下を運行しているため、道路法(昭和27年法律第180号)第39条第1項の規定により、道路占用料徴収の対象となっていますが、本書提出日現在、指定国道及び指定国道以外の道路のいずれについても、出入口等の地上施設を除く地下施設については、各種法令・条例等の減免措置の適用により、道路占用料の全額を免除されています。このうち、指定国道の地下施設の道路占用料については、2022年12月に、国土交通省より、東京地下鉄株式の上場後は、他の第三セクターの地下鉄事業者と並びを取り、道路法施行令(昭和27年政令第479号)で定める金額の10%として取り扱うこととし、東京地下鉄の完全民営化後の指定国道の道路占用料の取扱いについては、現時点では取扱いを決めず、完全民営化の時期が具体化した段階で改めて協議するとの方針が示されております。かかる方針に変更があった場合や、将来において東京地下鉄の完全民営化の時期が具体化した際の指定国道の道路占用料の取扱いの具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、指定国道以外の道路については、東京地下鉄の株式上場後も継続して減免措置が適用される予定ではありますが、今後、現行の各種法令等の改正により、これらの指定国道以外の道路においてもこの減免措置が受けられなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 中期経営計画について

東京地下鉄グループは、2022年4月に、持続可能な鉄道事業の運営と成長戦略による収益拡大を実現すべく、「構造変革」・「新たな飛躍」を基本方針に掲げ、4つの重点戦略を設定した、2022年度から2024年度までの中期経営計画「東京メトロプラン2024」を公表しました。また、2023年3月には、コロナ禍における行動制限の緩和等による旅客運輸収入の回復や電力料金の高騰等、同計画策定時の前提が大きく変化したことを踏まえ、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を内容とする「東京メトロプラン2024」の変更を行いました。

中期経営計画においては、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、「構造変革」に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、「新たな飛躍」を目指した取組を推進することを基本方針としています。

しかしながら、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因により中期経営計画に掲げる取組が計画どおりに進捗しない可能性や、中期経営計画を策定するための各種の前提が変化する可能性があります。このような場合には、東京地下鉄グループは、かかる状況や変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行するよう努めますが、適時に成長戦略や事業運営を変更し、又は改善することができないなど様々な要因により、中期経営計画で掲げた経営目標について、当初計画した期間内に又は当該期間経過後においても達成できない可能性があります。

 

④ 他事業者との競合等について

東京地下鉄グループは、運輸業において一部の鉄道事業者及びタクシー、バス等の交通機関と競合関係にあるほか、自家用車等の他の交通手段の利用の多寡にも影響を受けます。したがって、他事業者による新線開業や、他事業者同士による相互乗り入れ等の新しいサービスの提供は、東京地下鉄の路線の輸送人員を減少させ、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄は他事業者との相互乗り入れ等により、東京地下鉄の利用者の利便性向上及び輸送人員の拡大を図っていますが、自然災害や事故、停電又は電力の使用制限その他の理由により相互乗り入れ等のサービスを提供できなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 長期債務について

東京地下鉄は、前身の営団時代から地下鉄ネットワークの整備拡充に努め、その建設資金の多くを財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づく財政投融資による政府からの借入金及び交通債券等の長期資金にて調達してきました。また、東京地下鉄は、これら債務の償還や鉄道事業を中心とした継続的な設備投資のために、社債の発行や借入金により長期資金を調達しています。さらに、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)、南北線延伸(品川・白金高輪間)及び豊洲駅の改良事業(以下、「有楽町線、南北線延伸事業等」といいます。)に充当するため、2023年3月30日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」といいます。)から、1,921億円の長期資金(新線建設推進長期借入金)を調達しており、2024年3月31日現在の社債及び借入金残高は1兆1,188億9千8百万円となっています。

なお、新線建設推進長期借入金による資金は、分別管理を目的として信託を設定しており、2024年3月31日現在の当該長期借入金残高は1,921億円となっています。

東京地下鉄グループは、債務残高を収益力との関係性において一定の水準に抑制するなど財務規律を堅持し、財務健全性の維持・向上を図っていますが、金利が大幅に上昇した場合や東京地下鉄の信用格付が引き下げられた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 不動産事業及び流通・広告事業等について

今後の人口動向やそれに伴う競争激化等の経営環境の変化を踏まえると、運輸業の拡大には一定の限度があるため、東京地下鉄グループの今後の成長及び収益基盤の強化という観点から、不動産事業及び流通・広告事業等、運輸業以外の事業分野である事業領域・規模の拡大を追求することが将来的な課題となっています。そのため、今後さらにこれら事業の積極的な展開を促進していきますが、東京地下鉄グループの経営資源の制約や経済環境の悪化等で、期待される収益が獲得できず、又は、新たな事業分野におけるリスクが顕在化した場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 都営地下鉄との一元化について

特殊会社である東京地下鉄の使命は、東京地下鉄株式会社法の趣旨を踏まえて、できる限り速やかに完全民営化を目指すことであると認識しており、そのため、財務基盤の充実・強化を図るなどにより、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都との合意に基づき、将来の完全民営化を見据えつつ、東京地下鉄株式の上場に向けて取り組んでいます。

東京地下鉄は、東京地下鉄と同じく東京都区部及びその周辺地域における地下鉄道事業を営む都営地下鉄とのサービスの一体化は、東京地下鉄の利用者の利便性向上につながるものと考えており、地下鉄利用者の利便性向上への取組の検討を進めていきます。

また、東京地下鉄は国及び東京都との間で、東京地下鉄の完全民営化並びに東京地下鉄と都営地下鉄とのサービスの一体化及び経営の一元化に関して従来から意見交換を行っています。これらの課題について具体的な解決策やサービス向上策の実現に向けて実務的な検討を行うことを目的として、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月に設置されました。また、2013年7月には都営地下鉄と東京地下鉄とのサービスの改善・一体化を推進することを目的として「東京の地下鉄の運営改革会議」が設置されました。東京地下鉄・都営地下鉄間の運賃の乗換負担軽減策を含むサービスの一体化に関するこれらの協議の結果によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

他方、都営地下鉄については、公営企業という組織形態や累積欠損を抱えていること等を考慮すると、東京地下鉄との経営の一元化を図るために解決されなければならない多くの問題が残されており、仮に経営の一元化を実施する場合においても、相当程度の時間を要することが想定されます。また、経営の一元化を実施する場合には、都営地下鉄の経営状況の改善や東京地下鉄の企業価値向上が図られることが基本と考えますが、経営の一元化の具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 新線建設について

東京地下鉄は、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)及び南北線延伸(品川・白金高輪間)(以下「両路線」といいます。)については、沿線の開発状況等を勘案した輸送需要予測の動向を踏まえ、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都の合意に基づく十分な公的支援及び東京地下鉄株式の売却が確実に実施されることを前提に、東京地下鉄ネットワークに関連する両路線の整備主体となることがさらなる企業価値向上に資するものと判断し、2022年1月に国土交通大臣に対し第一種鉄道事業許可の申請を行い、同年3月に許可を受け、2023年3月に工事施行認可の申請を行いました。

しかしながら、両路線の新線建設を進めるにあたり、輸送需要を含めた事業環境の変化、想定外の建設スケジュールの長期化や追加コストの発生、公的支援の実施状況等によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

今後も東京地下鉄は、両路線を除き新線建設を行わず、また、新線建設に対する協力を求められる場合には、都市鉄道ネットワークの一部を構成する事業者としての立場から、「東京地下鉄の経営に悪影響を及ぼさない範囲内において行う」という方針で対応していきたいと考えています。

なお、1982年1月に免許申請を行った8号線(豊洲・亀有間14.7km)については、半蔵門線(水天宮前・押上間)の開業や輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、東京地下鉄としては、整備主体となることは極めて困難と認識しています。

 

⑨ コンプライアンスについて

東京地下鉄グループは、「コンプライアンスに関する規定」、「東京メトログループコンプライアンス行動基準」などの周知、徹底に加え、コンプライアンス教育を定期的に実施するなどの啓発活動を行うとともに、コンプライアンスに反する行為等を通報できる「企業倫理向上窓口」を設置するなど、コンプライアンス体制の整備・拡充に努めています。

しかしながら、東京地下鉄グループの役職員によるコンプライアンスに反する行為が発生した場合には、法令等に基づく罰則や規制当局による処分、コンプライアンス違反に起因する損害賠償請求等を受けること等により、東京地下鉄グループの社会的信用が低下するとともに、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、2024年9月12日、国土交通省関東運輸局からの鉄道車両における輪軸の緊急点検の指示を受け、東京地下鉄の輪軸組立作業についての検査を実施したところ、全体の約2%にあたる222軸において、車輪圧入作業における圧入力値が社内基準値を超過していたこと、及び社内基準値を満たすために、関連記録を手動で修正する慣行が当該作業に従事している東京地下鉄グループ従業員の間で常態化していたことが判明しました。なお、当該社内基準値は、日本産業規格(JIS E4504)に基づく圧入力値の最大値となっています。一般的に、高い圧入力は車軸に損傷を与える可能性がありますが、社内基準値の+10%以内であった220軸については、安全性を確認した上で使用しており、社内基準値に対して+10%を超えた2軸については、直ちに使用を中止しています。東京地下鉄は、今後同様の問題が発生しないよう対策を実施していますが、上記の不正行為に関連して、規制当局による処分の対象となった場合や新たな対策を求められることとなった場合等には、コンプライアンスへの取組に関連する費用の発生等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 財務大臣及び東京都の東京地下鉄株式保有について

本書提出日現在において、東京地下鉄の発行済株式のうち、53.42%を財務大臣が、46.58%を東京都が保有しております。東京地下鉄株式の上場後においても、26.71%を財務大臣が、23.29%を東京都が保有する予定であることから、財務大臣及び東京都は引き続き東京地下鉄の経営に重要な影響を及ぼしうることになります。東京地下鉄グループの事業その他に関する政府や東京都の利益は、東京地下鉄の他の株主の利益と相反する可能性があり、東京地下鉄グループの他の株主の利益に反する影響力の行使がなされる可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法附則第2条により、「国及び東京都は、特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」旨規定されております。また、2021年7月15日に交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」(交通政策審議会答申第371号)において、東京地下鉄株式の売却に当たっては、国及び東京都が当面東京地下鉄株式の2分の1を保有することが適切であり、その後の東京地下鉄株式の売却について国と東京都は、これまでの閣議決定や法律において完全民営化の方針が規定されていることを堅持しつつ、その中で、首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえながら対応することが求められるとの考え方が示されております。さらに、2022年3月28日に財政制度等審議会が答申した「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」及び同日に東京都が公表した「東京地下鉄株式会社の株式の処分の基本的な考え方」において、新規公開後の「その後の売却においては、国と東京都の協議を踏まえて対応すること」が適当であるとの考え方が示されております。以上のとおり、今後、地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展等を踏まえつつ、国と東京都が保有する東京地下鉄株式の全部又は一部を売却することが想定されており、かかる売却が実施される場合には、短期的に東京地下鉄株式の需給バランスに影響が生じ、東京地下鉄の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム関連のリスク

① 情報システムについて

東京地下鉄グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。東京地下鉄グループでは、サイバーセキュリティ推進体制の整備や専門機関による定期的なシステム監査の実施等の施策に取り組んでいます。しかしながら、上記(2)①に記載した自然災害・事故等のほか、人為的ミス及びコンピューターウィルス等並びに第三者による妨害行為等により、列車運行や電力供給に関するシステム等に障害が発生した場合には、正常な列車運行その他の事業運営に支障を来す可能性や、これに伴う東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 個人情報保護について

東京地下鉄グループでは、各事業において顧客情報等の個人情報を保有しています。個人情報については東京地下鉄グループの「個人情報保護方針」や「情報管理規程」に基づき厳正な管理を行っていますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償等による費用を負担する必要が生じるほか、東京地下鉄グループに対する信用が損なわれる等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

事業等のリスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が東京地下鉄グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについては、次のようなものがあります。

なお、東京地下鉄グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や蓋然性、リスクの性質等に応じて、分類しています。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において東京地下鉄が判断したものです。また、以下のリスクは東京地下鉄グループの全てのリスクを網羅したものではなく、予想される主なリスクを例示したものです。

 

(1) 東京地下鉄グループの経営環境に関連するリスク

① 人口動向等について

東京地下鉄グループは、東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開しています。わが国における経済的中心地である東京都区部に強固な基盤を有することは、高い営業収益力を保つ上で東京地下鉄グループの強みの一つであり、この営業基盤の特性を最大限活用していきます。

しかしながら、首都圏の人口動向については、中長期的には減少傾向となることが予想されています。また、首都圏における就業・就学人口の減少、高齢化の進展等による人口構造の変化や、テレワークやウェブ会議の進展・定着とこれに伴う通勤・移動需要の減少等の社会構造の変化が進んだ場合、さらには今後、首都圏における経済情勢の大きな変化、大企業の本社機能又は政府機関の東京都区部からの移転等が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 電力料金、原材料価格及び労務費の高騰について

東京地下鉄グループは、今後も効率的な事業運営に努めていきますが、列車の運行等に際し多大な電力を消費するほか、継続的な設備投資やトンネルをはじめとした鉄道設備の維持補修等を行っていることから、電力料金、原材料価格及び労務費の動向が、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、2022年度の電力料金の大幅な高騰を踏まえ、2023年度より調達先を変更し、従前より燃料価格や市場価格の影響を受けにくい新たな電気料金制度のもとで電力を使用しておりますが、電力料金が高騰し、それが長期にわたって継続する場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、これらのコストが上昇する要因としては、円安の進行や燃料価格等の高騰、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額、労働需給のひっ迫等が想定されます。

 

(2) 自然災害、感染症、気候変動等に関連するリスク

① 自然災害・事故等について

東京地下鉄グループは、安全の確保を常に念頭に置き、技術面からの更なる安全性向上に向けた取組を実施するとともに、安全管理規程に基づく安全マネジメント体制の運用等制度面からの取組も推進し、安全の確保を目指しています。さらに、首都直下地震や大規模浸水等に備えた鉄道事業における自然災害対策として、施設の耐震性の強化、帰宅困難者対策、洪水等による浸水対策等の諸課題への取組を強化するとともに、危機管理機能の強化を推進しています。

しかしながら、地震・洪水・台風等の自然災害、大規模停電又は電力の使用制限や、これらに伴う保守部品等のリソース供給不足、重大な犯罪行為やテロリストによる攻撃等により東京地下鉄の路線の運行に支障を来す事態となった場合や、東京地下鉄の路線において重大な事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に東京地下鉄の路線、コンピューターシステム及び本社施設等は、そのほとんどが東京都区部に位置していることから、当該地域に大地震をはじめとする重大な自然災害・事故等が発生した場合には、東京地下鉄グループの多くの施設等に被害が及ぶ可能性があります。また、東京地下鉄の路線、施設の大半は地下にあるため、火災、浸水等の災害が発生した場合には、その被害が大きくなる可能性があり、これにより、事業が復旧するまでに相応の時間を要する等、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 感染症について

新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が東京地下鉄沿線地域において大規模に流行し、外出自粛等により通勤・通学・業務・私事利用を問わず鉄道利用者が大幅に減少した場合、世界的な流行に伴い訪日外国人が大幅に減少した場合や、列車運行等の事業運営に支障を来す場合等には、東京地下鉄グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 気候変動について

近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因の一つであり、世界中の政府や企業において脱炭素化の動きが広がっています。東京都区部及びその周辺地域で鉄道事業を中心に事業を展開する東京地下鉄グループは、自然災害による事業リスクに加え、主要事業である鉄道事業が電力を消費するという特性を有することから、東京地下鉄グループのサステナビリティ戦略を推進していくことを目的に、2019年4月からサステナビリティ推進体制を新たに整備し、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)テーマに「地下鉄を安全に、そしてつよく」及び「地球にやさしいメトロに」を掲げ、気候変動問題に関する取組を強化してきました。なお、サステナビリティ推進会議については、2023年4月からサステナビリティ推進委員会と名称を改め、体制を強化しました。

東京地下鉄グループは、このような取組を引き続き推進していく予定ですが、今後、政策・法規制の見直しやエネルギーミックスの変化による電力料金の上昇等のほか豪雨の激甚化による鉄道施設の損傷・沿線地域の被災、平均気温の上昇による感染症の発生・拡大等が生じた場合、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄グループは2022年3月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、主要事業である鉄道事業への気候関連リスク/機会を開示しました。東京地下鉄グループは、開示情報を活用してステークホルダーの皆様との対話を活性化させ、気候変動問題に関する取組を今後も推進していく予定です。しかしながら、このような取組にも関わらず、ステークホルダーの皆様から気候変動に関する情報開示に十分に対応していないと判断される場合には、東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人権について

日本国内における労働力人口減少や働き方改革等といった雇用環境等の変化が生じる中で、東京地下鉄グループの事業に関わる人的資本は多様化しており、社会的、国際的に人権意識が一層高まっていることも踏まえ、人権問題に対しては、より多面的に対処する必要性が高まっていると考えています。そのため、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に「人権の尊重」を掲げ、人権尊重に向けた取組を強化し、2023年3月に「東京メトログループ人権方針」を制定・公表しました。

しかしながら、こういった取組にも関わらず、東京地下鉄グループ内のみならず、取引先、事業パートナー等を含む東京地下鉄グループを取り巻く国内外のステークホルダーに関し、東京地下鉄グループの事業活動を通じ人権を侵害する行為が発生し、東京地下鉄グループの社会的信用の低下が生じた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 東京地下鉄グループの経営に関連するリスク

① 法的規制等について

鉄道事業においては、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)の定めにより、経営しようとする路線及び鉄道事業の種別について許可を受ける必要があります(同法第3条)。

収益の中心となる運賃面においては、上限運賃を設定するときは国土交通大臣の認可を受けなければならず、上限運賃の範囲内で運賃を改定する場合にも、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(同法第16条)。

東京地下鉄が現在取得しているこれらの国土交通大臣の許可及び認可には期間の定めは無く、東京地下鉄の現在の運賃は、2019年9月5日に変更の認可を受けたものです(2019年10月1日より改定後の運賃を適用)。

なお、運賃の改定を施行するに当たっては、所定の手続を経る必要があることから、機動的な運賃の改定を行うことができない場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年12月に軌道法施行規則(大正12年内務省・鉄道省令)及び鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)の改正により創設された「鉄道駅バリアフリー料金制度」に基づき、バリアフリー設備の整備費等に充当するための料金を定める場合には、バリアフリー整備・徴収計画を作成の上、事前に国土交通大臣に届け出ることとされています(鉄道事業法第16条第4項)。鉄道駅バリアフリー料金は、第二次交通政策基本計画(2021年5月8日閣議決定)に基づき、利用者に過度の負担感を与えないものとする必要があるとされており、また、その総徴収額はバリアフリー整備・徴収計画における総整備費を超えない額とすることとされています。

東京地下鉄は2023年3月18日から、運賃に加算して鉄道駅バリアフリー料金の収受を開始しておりますが、法令又は運用の変更等により、バリアフリー整備・徴収計画に定めたとおりに料金の徴収ができない場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

鉄道事業を休廃止する場合には、事前に(廃止の場合は廃止日の1年前までに)国土交通大臣に届出を行うこととされています(同法第28条、第28条の2)。また、鉄道事業法、同法に基づく命令、これらに基づく処分、許可・認可に付した条件に違反した場合、正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しない場合、同法第6条に定める事業許可の欠格事由に該当することとなった場合などの際には、国土交通大臣は事業の停止を命じ又は許可を取り消すことができるとされています(同法第30条)。仮に、国土交通大臣より事業の停止や許可の取消しを受けた場合には、事業活動の継続に支障を来すこととなりますが、現在、同法に抵触する事実等は存在せず、事業活動の継続に支障を来す要因は発生していません。

東京地下鉄は鉄道事業法に加えて、東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)や安全、環境、バリアフリー等の規制に関する様々な法令の適用を受けており、これらの法令が改正され又はその運用が変更された場合、その内容によっては東京地下鉄の事業活動における柔軟性の減少、費用の増加等を招き、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法の概要は以下のとおりですが、この法律においては、国及び同法附則第11条の規定により営団から株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする旨規定されています(東京地下鉄株式会社法附則第2条)。

また、2021年4月2日に開催された、第3回交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会において、国土交通省が配布した資料には、「東京メトロが完全民営化(政府が株式を全て売却)した場合には、JR本州3社・JR九州の例を踏まえると、現行の東京メトロ法に基づく監督規定は廃止される一方、引き続き、鉄道事業法等の規定に基づき鉄道事業を運営することとなる。」旨記載されています。

(ⅰ) 制定趣旨・目的等

 東京地下鉄株式会社法は、東京地下鉄の設立について定めるとともに、その目的、事業に関する事項について規定しています。同法は、鉄道事業法に加えて東京地下鉄を規制するとともに、商号の使用制限等の特例措置を定めています。

 なお、東京地下鉄株式会社法に基づく政府の規制は、東京地下鉄の経営の自主性の確保を前提とするものであり、毎事業年度の開始前に事業計画を国土交通大臣に提出することは求められているものの、事業計画の認可、関連事業の実施についての認可等は不要とされています。

(ⅱ) 概要

ア 国土交通大臣による認可を必要とする事項

(ア) 発行する株式又は新株予約権を引き受ける者の募集等の認可(東京地下鉄株式会社法第4条第1項)

 会社法(平成17年法律第86号)第199条第1項に規定するその発行する株式若しくは会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集をし、又は株式交換若しくは株式交付に際して株式、新株予約権若しくは新株予約権付社債を発行しようとするときは、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。

(イ) 代表取締役等の選定等の決議の認可(同法第5条)

代表取締役又は代表執行役の選定及び解職並びに監査等委員である取締役若しくは監査役の選任及び解任又は監査委員の選定及び解職の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

(ウ) 定款の変更等の認可(同法第7条)

定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く)、合併、分割及び解散の決議は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じません。

イ その他の規制事項

国土交通大臣への事業計画及び財務諸表の提出義務(同法第6条、第8条)、国土交通大臣の監督・命令権限並びに報告指示及び検査権限(同法第9条、第10条)が規定されています。

ウ 特例措置

(ア) 商号の使用制限(同法第2条)

東京地下鉄でない者は、その商号中に東京地下鉄株式会社という文字を使用してはなりません。

(イ) 一般担保(同法第3条)

社債権者は、東京地下鉄の財産について、民法の規定による一般の先取特権に次いで優先弁済を受けることができます。

 

② 鉄道事業に関する道路占用料について

東京地下鉄の路線は、主として道路の地下を運行しているため、道路法(昭和27年法律第180号)第39条第1項の規定により、道路占用料徴収の対象となっていますが、本書提出日現在、指定国道及び指定国道以外の道路のいずれについても、出入口等の地上施設を除く地下施設については、各種法令・条例等の減免措置の適用により、道路占用料の全額を免除されています。このうち、指定国道の地下施設の道路占用料については、2022年12月に、国土交通省より、東京地下鉄株式の上場後は、他の第三セクターの地下鉄事業者と並びを取り、道路法施行令(昭和27年政令第479号)で定める金額の10%として取り扱うこととし、東京地下鉄の完全民営化後の指定国道の道路占用料の取扱いについては、現時点では取扱いを決めず、完全民営化の時期が具体化した段階で改めて協議するとの方針が示されております。かかる方針に変更があった場合や、将来において東京地下鉄の完全民営化の時期が具体化した際の指定国道の道路占用料の取扱いの具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、指定国道以外の道路については、東京地下鉄の株式上場後も継続して減免措置が適用される予定ではありますが、今後、現行の各種法令等の改正により、これらの指定国道以外の道路においてもこの減免措置が受けられなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 中期経営計画について

東京地下鉄グループは、2022年4月に、持続可能な鉄道事業の運営と成長戦略による収益拡大を実現すべく、「構造変革」・「新たな飛躍」を基本方針に掲げ、4つの重点戦略を設定した、2022年度から2024年度までの中期経営計画「東京メトロプラン2024」を公表しました。また、2023年3月には、コロナ禍における行動制限の緩和等による旅客運輸収入の回復や電力料金の高騰等、同計画策定時の前提が大きく変化したことを踏まえ、設備投資計画の見直しやポストコロナを見据えた経営目標値の上方修正等を内容とする「東京メトロプラン2024」の変更を行いました。

中期経営計画においては、鉄道事業の持続可能性の向上を図るべく、安全の確保を前提に、次世代に向けたコスト構造や業務の抜本的な見直し等、「構造変革」に取り組むとともに、新線建設、お出かけ機会の創出、都市・生活創造事業の強化等、「新たな飛躍」を目指した取組を推進することを基本方針としています。

しかしながら、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因により中期経営計画に掲げる取組が計画どおりに進捗しない可能性や、中期経営計画を策定するための各種の前提が変化する可能性があります。このような場合には、東京地下鉄グループは、かかる状況や変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行するよう努めますが、適時に成長戦略や事業運営を変更し、又は改善することができないなど様々な要因により、中期経営計画で掲げた経営目標について、当初計画した期間内に又は当該期間経過後においても達成できない可能性があります。

 

④ 他事業者との競合等について

東京地下鉄グループは、運輸業において一部の鉄道事業者及びタクシー、バス等の交通機関と競合関係にあるほか、自家用車等の他の交通手段の利用の多寡にも影響を受けます。したがって、他事業者による新線開業や、他事業者同士による相互乗り入れ等の新しいサービスの提供は、東京地下鉄の路線の輸送人員を減少させ、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、東京地下鉄は他事業者との相互乗り入れ等により、東京地下鉄の利用者の利便性向上及び輸送人員の拡大を図っていますが、自然災害や事故、停電又は電力の使用制限その他の理由により相互乗り入れ等のサービスを提供できなくなった場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 長期債務について

東京地下鉄は、前身の営団時代から地下鉄ネットワークの整備拡充に努め、その建設資金の多くを財政融資資金法(昭和26年法律第100号)に基づく財政投融資による政府からの借入金及び交通債券等の長期資金にて調達してきました。また、東京地下鉄は、これら債務の償還や鉄道事業を中心とした継続的な設備投資のために、社債の発行や借入金により長期資金を調達しています。さらに、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)、南北線延伸(品川・白金高輪間)及び豊洲駅の改良事業(以下、「有楽町線、南北線延伸事業等」といいます。)に充当するため、2023年3月30日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、「鉄道・運輸機構」といいます。)から、1,921億円の長期資金(新線建設推進長期借入金)を調達しており、2024年3月31日現在の社債及び借入金残高は1兆1,188億9千8百万円となっています。

なお、新線建設推進長期借入金による資金は、分別管理を目的として信託を設定しており、2024年3月31日現在の当該長期借入金残高は1,921億円となっています。

東京地下鉄グループは、債務残高を収益力との関係性において一定の水準に抑制するなど財務規律を堅持し、財務健全性の維持・向上を図っていますが、金利が大幅に上昇した場合や東京地下鉄の信用格付が引き下げられた場合には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 不動産事業及び流通・広告事業等について

今後の人口動向やそれに伴う競争激化等の経営環境の変化を踏まえると、運輸業の拡大には一定の限度があるため、東京地下鉄グループの今後の成長及び収益基盤の強化という観点から、不動産事業及び流通・広告事業等、運輸業以外の事業分野である事業領域・規模の拡大を追求することが将来的な課題となっています。そのため、今後さらにこれら事業の積極的な展開を促進していきますが、東京地下鉄グループの経営資源の制約や経済環境の悪化等で、期待される収益が獲得できず、又は、新たな事業分野におけるリスクが顕在化した場合等には、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 都営地下鉄との一元化について

特殊会社である東京地下鉄の使命は、東京地下鉄株式会社法の趣旨を踏まえて、できる限り速やかに完全民営化を目指すことであると認識しており、そのため、財務基盤の充実・強化を図るなどにより、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都との合意に基づき、将来の完全民営化を見据えつつ、東京地下鉄株式の上場に向けて取り組んでいます。

東京地下鉄は、東京地下鉄と同じく東京都区部及びその周辺地域における地下鉄道事業を営む都営地下鉄とのサービスの一体化は、東京地下鉄の利用者の利便性向上につながるものと考えており、地下鉄利用者の利便性向上への取組の検討を進めていきます。

また、東京地下鉄は国及び東京都との間で、東京地下鉄の完全民営化並びに東京地下鉄と都営地下鉄とのサービスの一体化及び経営の一元化に関して従来から意見交換を行っています。これらの課題について具体的な解決策やサービス向上策の実現に向けて実務的な検討を行うことを目的として、「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」が2010年8月に設置されました。また、2013年7月には都営地下鉄と東京地下鉄とのサービスの改善・一体化を推進することを目的として「東京の地下鉄の運営改革会議」が設置されました。東京地下鉄・都営地下鉄間の運賃の乗換負担軽減策を含むサービスの一体化に関するこれらの協議の結果によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

他方、都営地下鉄については、公営企業という組織形態や累積欠損を抱えていること等を考慮すると、東京地下鉄との経営の一元化を図るために解決されなければならない多くの問題が残されており、仮に経営の一元化を実施する場合においても、相当程度の時間を要することが想定されます。また、経営の一元化を実施する場合には、都営地下鉄の経営状況の改善や東京地下鉄の企業価値向上が図られることが基本と考えますが、経営の一元化の具体的な内容によっては、東京地下鉄グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 新線建設について

東京地下鉄は、有楽町線延伸(豊洲・住吉間)及び南北線延伸(品川・白金高輪間)(以下「両路線」といいます。)については、沿線の開発状況等を勘案した輸送需要予測の動向を踏まえ、交通政策審議会答申第371号及び国と東京都の合意に基づく十分な公的支援及び東京地下鉄株式の売却が確実に実施されることを前提に、東京地下鉄ネットワークに関連する両路線の整備主体となることがさらなる企業価値向上に資するものと判断し、2022年1月に国土交通大臣に対し第一種鉄道事業許可の申請を行い、同年3月に許可を受け、2023年3月に工事施行認可の申請を行いました。

しかしながら、両路線の新線建設を進めるにあたり、輸送需要を含めた事業環境の変化、想定外の建設スケジュールの長期化や追加コストの発生、公的支援の実施状況等によっては、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

今後も東京地下鉄は、両路線を除き新線建設を行わず、また、新線建設に対する協力を求められる場合には、都市鉄道ネットワークの一部を構成する事業者としての立場から、「東京地下鉄の経営に悪影響を及ぼさない範囲内において行う」という方針で対応していきたいと考えています。

なお、1982年1月に免許申請を行った8号線(豊洲・亀有間14.7km)については、半蔵門線(水天宮前・押上間)の開業や輸送需要予測の減少等、免許申請時とは事業環境が異なってきたことから、東京地下鉄としては、整備主体となることは極めて困難と認識しています。

 

⑨ コンプライアンスについて

東京地下鉄グループは、「コンプライアンスに関する規定」、「東京メトログループコンプライアンス行動基準」などの周知、徹底に加え、コンプライアンス教育を定期的に実施するなどの啓発活動を行うとともに、コンプライアンスに反する行為等を通報できる「企業倫理向上窓口」を設置するなど、コンプライアンス体制の整備・拡充に努めています。

しかしながら、東京地下鉄グループの役職員によるコンプライアンスに反する行為が発生した場合には、法令等に基づく罰則や規制当局による処分、コンプライアンス違反に起因する損害賠償請求等を受けること等により、東京地下鉄グループの社会的信用が低下するとともに、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 財務大臣及び東京都の東京地下鉄株式保有について

本書提出日現在において、東京地下鉄の発行済株式のうち、53.42%を財務大臣が、46.58%を東京都が保有しております。東京地下鉄株式の上場後においても、26.71%を財務大臣が、23.29%を東京都が保有する予定であることから、財務大臣及び東京都は引き続き東京地下鉄の経営に重要な影響を及ぼしうることになります。東京地下鉄グループの事業その他に関する政府や東京都の利益は、東京地下鉄の他の株主の利益と相反する可能性があり、東京地下鉄グループの他の株主の利益に反する影響力の行使がなされる可能性があります。

なお、東京地下鉄株式会社法附則第2条により、「国及び東京都は、特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」旨規定されております。また、2021年7月15日に交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」(交通政策審議会答申第371号)において、東京地下鉄株式の売却に当たっては、国及び東京都が当面東京地下鉄株式の2分の1を保有することが適切であり、その後の東京地下鉄株式の売却について国と東京都は、これまでの閣議決定や法律において完全民営化の方針が規定されていることを堅持しつつ、その中で、首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえながら対応することが求められるとの考え方が示されております。さらに、2022年3月28日に財政制度等審議会が答申した「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」及び同日に東京都が公表した「東京地下鉄株式会社の株式の処分の基本的な考え方」において、新規公開後の「その後の売却においては、国と東京都の協議を踏まえて対応すること」が適当であるとの考え方が示されております。以上のとおり、今後、地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展等を踏まえつつ、国と東京都が保有する東京地下鉄株式の全部又は一部を売却することが想定されており、かかる売却が実施される場合には、短期的に東京地下鉄株式の需給バランスに影響が生じ、東京地下鉄の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム関連のリスク

① 情報システムについて

東京地下鉄グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。東京地下鉄グループでは、サイバーセキュリティ推進体制の整備や専門機関による定期的なシステム監査の実施等の施策に取り組んでいます。しかしながら、上記(2)①に記載した自然災害・事故等のほか、人為的ミス及びコンピューターウィルス等並びに第三者による妨害行為等により、列車運行や電力供給に関するシステム等に障害が発生した場合には、正常な列車運行その他の事業運営に支障を来す可能性や、これに伴う東京地下鉄グループの社会的信用の低下等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 個人情報保護について

東京地下鉄グループでは、各事業において顧客情報等の個人情報を保有しています。個人情報については東京地下鉄グループの「個人情報保護方針」や「情報管理規程」に基づき厳正な管理を行っていますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、損害賠償等による費用を負担する必要が生じるほか、東京地下鉄グループに対する信用が損なわれる等により、東京地下鉄グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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