阪急阪神ホールディングス(9042)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


阪急阪神ホールディングス(9042)の株価チャート 阪急阪神ホールディングス(9042)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

阪急阪神ホールディングスグループは、純粋持株会社である阪急阪神ホールディングス、子会社158社及び関連会社72社で構成され、その営んでいる主要な事業の内容及びセグメント情報との関連は、次のとおりです。

なお、阪急阪神ホールディングスは、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

 

(子会社)

(1) 都市交通事業

事業の内容

主要な会社名

鉄道事業

阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、能勢電鉄㈱、北大阪急行電鉄㈱、神戸高速鉄道㈱

自動車事業

阪急バス㈱、阪神バス㈱、阪急タクシー㈱、阪神タクシー㈱

流通事業

阪急電鉄㈱、㈱エキ・リテール・サービス阪急阪神、㈱阪急スタイルレーベルズ

都市交通その他事業

アルナ車両㈱、阪急設計コンサルタント㈱、㈱阪神ステーションネット

 

(2) 不動産事業

事業の内容

主要な会社名

賃貸事業

阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱

分譲事業等

阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、阪急阪神ビルマネジメント㈱、

阪急阪神ハイセキュリティサービス㈱、阪急阪神クリーンサービス㈱、

阪急阪神リート投信㈱、㈱阪急阪神ハウジングサポート

海外不動産事業

阪急阪神不動産㈱、PT CPM ASSETS INDONESIA

ホテル事業

㈱阪急阪神ホテルズ、㈱阪神ホテルシステムズ、㈱有馬ビューホテル

 

(3) エンタテインメント事業

事業の内容

主要な会社名

スポーツ事業

阪神電気鉄道㈱、㈱阪神タイガース、㈱阪神コンテンツリンク

ステージ事業

阪急電鉄㈱、㈱宝塚クリエイティブアーツ、㈱梅田芸術劇場

 

(4) 情報・通信事業

事業の内容

主要な会社名

情報・通信事業

アイテック阪急阪神㈱、ユミルリンク㈱、㈱ベイ・コミュニケーションズ

 

(5) 旅行事業

事業の内容

主要な会社名

旅行事業

㈱阪急交通社

 

(6) 国際輸送事業

事業の内容

主要な会社名

国際輸送事業

㈱阪急阪神エクスプレス、㈱阪急阪神ロジパートナーズ、

HHE(USA)INC.、HHE(DEUTSCHLAND)GMBH、HHE(HK)LTD.、HHE SOUTHEAST ASIA PTE. LTD.

(※HHE:HANKYU HANSHIN EXPRESS)

 

 

(7) その他

事業の内容

主要な会社名

建設・環境事業

㈱ハンシン建設、中央電設㈱、阪神園芸㈱

広告代理・制作事業

阪急阪神マーケティングソリューションズ㈱

人事・経理代行業

㈱阪急阪神ビジネスアソシエイト

グループカード事業

㈱阪急阪神カード

グループ金融業

㈱阪急阪神フィナンシャルサポート

(注)1 「主要な会社名」には、主要な連結子会社を記載しています。

2 当連結会計年度より、不動産セグメントにおいて、「海外不動産事業」を独立した業態(サブセグメント)としています。

 

(関連会社)

事業の内容

主要な会社名

百貨店事業

エイチ・ツー・オー リテイリング㈱

鉄道事業

西大阪高速鉄道㈱、神戸電鉄㈱

映画の興行

東宝㈱

不動産賃貸事業

㈱東京楽天地、PT Duta Cakra Pesona

民間放送業

関西テレビ放送㈱

(注)「主要な会社名」には、主要な持分法適用関連会社を記載しています。

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

阪急阪神ホールディングスグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において阪急阪神ホールディングスグループが判断したものです。

 

1.会社の経営の基本方針

阪急阪神ホールディングスグループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行及び国際輸送の6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う阪急阪神ホールディングス(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社及び㈱阪急阪神エクスプレスの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。

 

 

阪急阪神ホールディングスグループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。

 

阪急阪神ホールディングス グループ経営理念

使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか)

「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。

 

価値観(私たちは何を大切に考えるのか)

お客様原点

すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。

誠実

誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。

先見性・創造性

時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。

人の尊重

事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。

 

行動規範(「価値観」を守り、「使命」を果たしていくために、私たちはどのように行動するのか)

1. 私たちは、出会いを大切にし、お客様の立場に立って最善を尽くします。

2. 私たちは、法令遵守はもとより、社会的責任を自覚して行動します。

3. 私たちは、仕事に責任と誇りを持ち、迅速にやり遂げます。

4. 私たちは、目先のことのみにとらわれず、中長期的な視点で考えます。

5. 私たちは、現状に満足することなく、時代の先を見据えて取り組みます。

6. 私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを認め合います。

7. 私たちは、活発にコミュニケーションを行い、風通しのよい職場をつくります。

8. 私たちは、グループ全体の発展のために力を合わせます。

 

2.サステナビリティ宣言

阪急阪神ホールディングスグループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めています。

このサステナビリティ宣言では、阪急阪神ホールディングスグループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。

なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しています。

※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。

※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。

 

<サステナビリティ宣言の概要>

基本方針

~暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を、未来へ~

私たちは、100年以上積み重ねてきた「まちづくり」・「ひとづくり」を未来へつなぎ、

地球環境をはじめとする社会課題の解決に主体的に関わりながら、

すべての人々が豊かさと喜びを実感でき、

次世代が夢を持って成長できる社会の実現に貢献します。

 

6つの重要テーマ

取組方針

① 安全・安心の追求

鉄道をはじめ、安全で災害に強いインフラの構築を目指すとともに、誰もが安心して利用できる施設・サービスを日々追求していきます。

② 豊かなまちづくり

自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなるまちづくりを進めます。

③ 未来へつながる暮らしの提案

未来志向のライフスタイルを提案し、日々の暮らしに快適さと感動を創出します。

④ 一人ひとりの活躍

多様な個性や能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成するとともに、広く社会の次世代の育成にも取り組みます。

⑤ 環境保全の推進

脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。

⑥ ガバナンスの充実

すべてのステークホルダーの期待に応え、誠実で公正なガバナンスを徹底します。

 

<サステナビリティ宣言の位置づけ>

3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(1) 長期ビジョンについて

阪急阪神ホールディングスグループでは、コロナ禍をきっかけとした急速な社会変化や、SDGs・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まり等、社会経済環境や事業環境の変化に対応し、持続的な企業価値の向上を実現していくために、2022年5月に「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン-2040年に向けて-」を策定しました。

この長期ビジョンでは、今後推進していく「芝田1丁目計画(大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修等)」や「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線計画」等の大規模プロジェクトの利益貢献が期待できる2035~2040年頃を見据えながら、その実現に向けた戦略や財務方針等を下記のとおり定めています。

 

 

今後の経営目標については、2035~2040年頃の成長イメージに加え、その通過点として2030年度の経営目標(財務指標・非財務指標)を下記のとおり掲げています。

 

2030年度における経営目標(財務指標・非財務指標)

<財務指標>

収益性

事業利益

(注) 事業利益…営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う

持分法投資損益

1,300億円+α(※2)

財務健全性

有利子負債/EBITDA倍率

(注) EBITDA…事業利益+減価償却費+のれん償却額

5倍台

資本効率

ROE

(注) ROE…親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本

中長期的に7%水準

 

<非財務指標>

・ CO2排出量の削減率

(2013年度比)△46%

・ 鉄道事業における有責事故ゼロ

・ 従業員満足度の継続的向上

・ 女性管理職比率    10%程度

・ 女性新規採用者比率 30%以上を継続

 

2035~2040年頃の成長イメージ

大規模プロジェクトの竣工・開業による利益貢献に加え、阪急阪神DXプロジェクトの一層の

推進等により、2030年度の事業利益(1,300億円+α)からさらなる利益伸長を目指す

 

阪急阪神ホールディングスグループでは、現在、この長期ビジョンで掲げた戦略に沿って、海外不動産事業の規模拡大をはじめ、様々な取組を推し進めていますが、阪急阪神ホールディングスグループを取り巻く事業環境は、同ビジョン策定時に想定していた以上のスピードで変化しています。そうした中でも、阪急阪神ホールディングスグループが持続的に成長していくためには、既存事業の伸長に注力することはもとより、成長する市場にも新たに積極果敢に進出していくことによって、利益の拡大を図り、安定的な資金創出力を確保・維持していくことが必要となります。加えて、昨今の資本市場からの要請等に鑑みますと、中長期的に企業価値の向上を目指していくうえでは、経営目標の中でも、ROE8%水準を意識した資本効率の向上がとりわけ重要と考えられます。

こうしたことを踏まえ、阪急阪神ホールディングスグループでは現在、市場の将来性や資本効率等の観点から、事業ポートフォリオや経営資源の配分のあり方等について継続的に検討を深めています。これにより、変化する事業環境の中でも、様々なステークホルダーの期待に応え、持続的に成長できる企業グループとなることを目指していきます。

※1 阪急阪神ホールディングスグループがDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関して新たに取り組む施策(デジタル領域での新サービスの提供やグループ共通IDの導入等)の総称

※2 事業利益1,300億円を目指すとともに、阪急阪神DXプロジェクト等での上積み(+α)に挑戦します。

 

(2) 中期経営計画の進捗等について

阪急阪神ホールディングスグループでは、長期ビジョンの実現に向け、中期的な取組を反映した具体的な実行計画として、2022年度から2025年度までの4か年の中期経営計画を策定し、それに則った施策を推し進めています。

2023年度については、都市交通事業において旅客数に一定の回復がみられたことや、不動産事業においてホテルの宿泊需要の回復に加え、分譲、賃貸及び海外不動産等の各事業も伸長したこと、またエンタテインメント事業において阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝及び38年ぶりの日本シリーズ制覇を果たすなど、スポーツ事業が好調に推移したこと等により、着実に利益を伸ばすことができました。

2024年度については、不動産事業においてマンション分譲戸数が増加するものの、スポーツ事業での減益を見込むこと等により、事業利益は1,070億円、親会社株主に帰属する当期純利益は700億円と予想しています。そして、現行の中期経営計画の最終年度となる2025年度については、ここ数年間で新たに着手・推進した取組の成果を発現させていくことで、事業利益は1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、「有利子負債/EBITDA倍率」は6.9倍、ROEは7%水準となる見通しです。

また、株主還元については、経営基盤の一層の強化に努めながら、総還元性向(※3)を30%とすることで、安定的な配当の実施と自己株式の取得に取り組むことを基本方針としています。このうち、配当については、近時の業績の推移等を踏まえて、2024年度の利益配分から、1株当たりの年間配当金を55円から60円(中間配当金30円、期末配当金30円)に引き上げることを予定しています。

※3 総還元性向…親会社株主に帰属する当期純利益に対する年間配当金総額と自己株式取得額の合計額の割合

 

 

 

 

(注)事業利益=営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う持分法投資損益

(2022年度以前は、海外事業に係る持分法適用会社が存在していなかったため、営業利益=事業利益)

 

(3) 宝塚歌劇団の事案について

阪急阪神ホールディングスグループは、2023年9月に宝塚歌劇団宙組劇団員が逝去された件について、宝塚歌劇団における組織運営の不備により、亡くなられた劇団員に対し、長時間の活動を余儀なくさせ過重な負担を生じさせたこと、及び、宝塚歌劇団内において、厚生労働省指針(令和2年厚労省告示第5号)が示す「職場におけるパワーハラスメント」に該当する様々な行為を行ったことによって、当該劇団員に多大な心理的負荷を与える事態を引き起こしたことを認めました。持株会社である阪急阪神ホールディングスとしても、このような事態を引き起こしたことを厳粛に受け止め、以下の再発防止に向けた取組を着実に実行していくとともに、さらなる改善策を検討していきます。

① 「一人ひとりの活躍」に向けた取組のさらなる推進

各事業の特性に応じた形で、相談・救済の窓口の再周知やハラスメント調査・研修等の施策をより強化するとともに、外部の専門家の助言を得ながら「ビジネスと人権」を意識した施策のPDCAサイクルをさらに推進することなどにより、阪急阪神ホールディングスグループの事業活動に関係する人権リスクを防止・軽減していきます。

② 宝塚歌劇団に対するガバナンス機能の強化

宝塚歌劇団について、阪急阪神ホールディングスグループのコンプライアンス体制やリスク管理体制の中で、組織としての特性に合った形で適切なマネジメントを行い、阪急阪神ホールディングスの宝塚歌劇団に対するガバナンス機能を強化していきます。また、阪急阪神ホールディングス監査部門等による監査を強化することで牽制機能の実効性を確保するとともに、阪急阪神ホールディングスとして、継続的にモニタリングを実施していきます。

そして、宝塚歌劇団では、興行計画や稽古スケジュールの見直しと併せて、活動時間管理の強化や、劇団員の心身の健康管理体制の強化など、現場のサポートやケアを行う体制・仕組みを強化し、劇団員が良好なコンディションのもと活動に打ち込める環境の整備を進めています。また、現場の問題を把握し、意見を吸い上げる仕組みを強化するため、各種相談窓口の利用促進を図るとともに、職場環境(心理的安全性等)を把握するための調査を実施しています。これらの取組をより実効性の高いものとするために、阪急阪神ホールディングスグループで歌劇事業を運営する阪急電鉄㈱に外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを設置し、専門的知見から助言を受けて、今後の取組に生かしていきます。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

阪急阪神ホールディングスグループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。文中における将来に関する事項は、阪急阪神ホールディングスグループが当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、これらのリスクは阪急阪神ホールディングスグループのすべてのリスクを網羅したものではありません。

なお、阪急阪神ホールディングスグループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」「② コーポレート・ガバナンス体制」「2.内部統制体制」に記載のとおりです。

 

(1) 自然災害、事故

① 自然災害等について

阪急阪神ホールディングスグループは、都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント事業、情報・通信事業、旅行事業及び国際輸送事業など多種多様な事業を営んでおり、地震や台風等の自然災害、大規模な事故、テロ行為等が発生した場合には、顧客や営業施設への被害及び事業活動の制限等により、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。特に近年、気温や海水温の上昇などの気候変動により、集中豪雨や強力な台風等が増加する可能性が指摘されており、こうした自然災害により上記の影響を受けるリスクが高まってきています。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、既存設備の維持更新投資や耐震補強工事を実施するとともに、激甚化する自然災害による影響の分析や対応を進めるほか、特に鉄道等の公共輸送に携わるグループ会社については、安全性を最優先にした体制の整備に努めるなど、ハード・ソフトの両面から、自然災害や事故等による影響の最小化に向けた取組を行っています。

 

② 感染症の流行について

感染症が広く流行し、往来の制限をはじめ人々の生活が様々な制約を受けることとなった場合、阪急阪神ホールディングスグループでは、都市交通事業における鉄道等の旅客人員の減少、不動産事業における賃貸施設の休館・来館者数の減少やホテルのインバウンド・国内需要の減少、エンタテインメント事業におけるプロ野球の試合や宝塚歌劇の公演の中止・入場人員の制限、旅行事業における海外・国内ツアーの催行中止等、各事業において大きな影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、こうした状況下であっても、感染状況に応じた予防・拡大防止措置を講じながら、鉄道等の社会インフラを運営する企業グループとして事業継続に努めるとともに、これらによる影響を受けても持続的な企業価値の向上を実現すべく、収益力の向上と安定した財務体質の確保を図ってまいります。

 

(2) 情報管理

阪急阪神ホールディングスグループは、各事業において情報システムを利用しており、事故や災害、社内や取引先における不正やミス、サイバー攻撃等によりその機能に重大な影響を受けた場合、当該情報システムの停止、誤作動等のほか、情報の漏えい等が生じることで、阪急阪神ホールディングスグループの事業運営に支障を来すとともに、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。特に、個人情報については、各事業において顧客データ等の個人情報を管理しており、不測の事故等により情報が流出した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、大きな影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、電子情報セキュリティ基本方針等の社内規程に従い、情報の漏えい、改ざん、不正利用等の防止や情報システムの安定稼働に必要な対策を講じています。特に、阪急阪神ホールディングスグループは、重要インフラである鉄道を運営していることも踏まえ、サイバーセキュリティの確保をリスク管理の重要な要素と位置付けており、行政等の関係機関とも積極的に連携して情報収集に努めるなど、継続的に対策を講じているほか、「グループCSIRT」を整備し、問題発生時に速やかに連絡・対処して被害の局所化を図るとともに、適切な再発防止策を講じる体制を構築しています。また、個人情報については、上記に加え、国内外の個人情報保護に関する法令を遵守するよう、個人情報管理基本方針等の規程を制定し、個人情報の適切な利用と保護を図る体制を整備するとともに、役職員に対する教育等に取り組んでいます。

 

(3) コンプライアンス

阪急阪神ホールディングスグループは、全てのステークホルダーの期待にお応えし、信頼され、称賛される企業集団となることを目指しており、その前提の一つとなるのがコンプライアンスを重視した経営姿勢であります。万一、コンプライアンスに反する行為が発生した場合は、損害賠償や社会的信用の失墜等により、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、各事業において、会社法、金融商品取引法、労働法、税法、経済法、各種業法その他関係法令の遵守はもちろんのこと、人権の尊重、腐敗行為(贈収賄等)の防止、税務ポリシー等の各種の基本方針や、企業倫理規程等の社内規程を整備し、これらに従った事業運営を徹底するとともに、阪急阪神ホールディングスによるモニタリングを継続的に行い、グループ全体に対するガバナンス機能を強化するなど、コンプライアンス経営を推進しています。中でも、人権の尊重については、阪急阪神ホールディングスグループの使命を果たし続けるための基盤であると考えており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等を踏まえて、「人権の尊重に関する基本理念」及び「人権の尊重に関する基本方針」を策定(2023年4月に改定)するとともに、人権デュー・ディリジェンスにも取り組むなど、「ビジネスと人権」の枠組みに沿った取組をさらに推進することで、負の影響の回避・低減に努めていきます。また、こうした取組の実効性をより高めるため、役職員等への啓発や教育を行い、その知識や意識を向上させることで、コンプライアンスに反する行為の未然防止を図っているほか、内部通報制度を設け、コンプライアンス経営の確保を脅かす事象を速やかに認識し、対処できる体制を構築しています。

 

(4) 財務(有利子負債について)

阪急阪神ホールディングスグループでは、各事業において継続的に設備投資を行っていますが、これに必要な資金の多くは、金融機関からの借入れや社債等によって調達しています。そのため、今後、金利の上昇・金融市場の変化等が生じた場合や、阪急阪神ホールディングスグループの財務状況の変動等に伴って阪急阪神ホールディングスの格付が引き下げられた場合には、支払利息の増加のほか、返済期限を迎える有利子負債の借換えに必要な資金を含む追加的な資金を望ましい条件で調達することが困難になる可能性があります。

なお、当連結会計年度末における連結有利子負債残高は1兆1,741億60百万円となっていますが、今後、施設等の安全性の維持・向上に係る投資に加えて、大規模プロジェクトをはじめ将来を見据えた成長投資を予定しており、連結有利子負債が一定程度増加する見込みです。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、引き続き資金調達の多様化を進め流動性を確保し、金利の固定化を行うことで金利変動リスクの回避に努めるとともに、コストや維持更新投資の削減などを通じて有利子負債の抑制を図りながら、財務体質の健全性の維持に努めていきます。

 

(5) 政治・経済・社会環境の変動

① 法的規制について

阪急阪神ホールディングスグループのうち、鉄道事業者においては、鉄道事業法の定めにより経営しようとする路線及び鉄道事業の種別毎に国土交通大臣の許可を受けなければならず(第3条)、さらに旅客の運賃及び料金の設定・変更は、国土交通大臣の認可を受けなければならない(第16条)こととされています。よって、これらの規制により、阪急阪神ホールディングスグループの鉄道事業の活動が制限される可能性があります。なお、これらの国土交通大臣の許可及び認可については、期間の定めはありません。

また、鉄道事業以外でも、阪急阪神ホールディングスグループが展開する各事業については、様々な法令、規則等の適用を受けており、これらの法的規制が強化された場合には、規制遵守のための費用が増加する可能性があり、規制に対応できなかった場合は、阪急阪神ホールディングスグループの活動が制限される等、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、規制の変更、新設に関する情報やその影響等を事前に調査・把握し、阪急阪神ホールディングスグループへの影響を最小限にとどめるよう努めています。

 

② 保有資産の時価下落について

阪急阪神ホールディングスグループが保有する棚卸資産、有形・無形固定資産及び投資有価証券等の時価が、今後著しく下落した場合には、減損損失又は評価損等を計上することにより、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。

 

③ 少子化等について

阪急阪神ホールディングスグループが基盤とする京阪神エリアにおいて、少子化等に伴う将来的な人口動態の変化から、鉄道、バス、タクシー等に対する旅客輸送需要やその他の各事業における需要が減退することに加え、労働市場の逼迫に伴い働き手の確保が困難になることが想定され、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループとしては、沿線における定住人口の増加や、インバウンド需要の取込等による交流人口の増加のための取組に加えて、DXの活用等を通じた生産性の向上に向けた取組をグループ全体で推し進めていきます。

 

④ 社会変化(ライフスタイルやビジネススタイルの変化)等について

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、人々の行動・生活拠点の変化や、QOL(Quality of Life)の意識拡大等の社会変化のほか、SDGs・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識が高まるなど、社会経済環境や事業環境が急速に変化しています。今後、これらの変化に伴って人々の生活が大きく変容した場合には、人々の生活に密接に関わる事業を多く営んでいる阪急阪神ホールディングスグループの既存のビジネスモデルが影響を受ける可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループでは、こうした状況を踏まえ、2022年5月に策定した「長期ビジョン-2040年に向けて-」の戦略に則った施策等を推し進めるとともに、既存事業の伸長に注力することはもとより、成長する市場にも進出することで、利益の拡大と安定的な資金創出力の確保・維持を図っていきます。また、資本市場からの要請等に鑑み、市場の将来性や資本効率等の観点から、事業ポートフォリオや経営資源の配分のあり方等について継続的に検討を深め、変化する事業環境の中でも、様々なステークホルダーの期待に応え、持続的に成長できる企業グループとなることを目指していきます。

 

⑤ 気候変動問題への対応について

気候変動に伴い、温室効果ガスの排出抑制に向けた取組が世界全体で進んでいます。阪急阪神ホールディングスグループの主力事業である鉄道は、他の輸送機関と比べて環境負荷が少ないものの、今後、鉄道や不動産をはじめとする各事業において、脱炭素社会や循環型社会に対応するための投資・費用の発生が見込まれるほか、温室効果ガス排出に係る税制の導入や(再生可能エネルギーの促進等に向けた)電力小売単価の上昇に伴って費用が増加する可能性があります。また、こうした社会への移行に対応できなかった場合には、信用の毀損等に伴う収益の減少や、円滑な資金調達が困難となる可能性があります。

阪急阪神ホールディングスグループでは、温室効果ガス削減への対策は持続可能な社会の実現に向けて必要な取組であると認識しており、「サステナビリティ宣言」において重要テーマの一つに「環境保全の推進」を掲げ、脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進しています。その一環として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、その開示フレームワークに沿って、「ガバナンス」「リスク管理」「指標と目標」を明示するとともに、「戦略」については、阪急阪神ホールディングスグループの事業のうち、特に気候変動の影響が大きいと想定される鉄道事業と不動産事業における「リスクと機会」を特定し、シナリオ分析を進めて財務的な影響の試算等を行い公表するなど、同提言に沿った対応を進めています。また、こうした気候変動に関するリスクと機会を評価・管理するため、グループ共通のKPIとしてCO2排出量の削減目標(2030年度目標:2013年度比△46%。2050年度目標:実質ゼロ)を設定するとともに、各事業における個別のKPIを定めるほか、温室効果ガス排出量についてスコープ3の算定・開示や、ICP(内部炭素価格)の設定により各事業における取組を推進するなど、気候変動に対する事業の強靭性の向上を図っています。

 

⑥ 国際情勢について

阪急阪神ホールディングスグループのうち、不動産事業、旅行事業、国際輸送事業等については、海外においても事業活動を行っており、各国の政治・経済情勢の大幅な変動や法規制、紛争又はテロ行為、感染症の流行など様々なリスク要因があります。これらのリスクについて、弁護士やコンサルタント等、専門家の助言を踏まえたリスク分析を行った上で対応に努めていますが、予期せぬ情勢変化が生じた場合には、阪急阪神ホールディングスグループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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