NTTデータグループグループ(NTTデータグループ、NTTデータグループの子会社611社及び関連会社51社(2025年3月31日時点))は、日本電信電話㈱を親会社とするNTTグループに属しており、日本、海外の2つを主な事業として営んでいます。
なお、NTTデータグループは特定上場会社等に該当し、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準のうち、上場会社の規模との対比で定められる数値基準については連結ベースの計数に基づいて判断することとなります。
各事業の内容、関係会社の主な位置付け及びセグメントとの関連は次のとおりです。
(日本)
当事業においては、主に日本国内における市場特性を考慮した高付加価値なITサービスの提供を行っています。関係会社が本事業を分担しています。
(海外)
当事業においては、主に海外ビジネスにおける市場特性を考慮した高付加価値なITサービスやデータセンターサービスの提供を行っています。関係会社が本事業を分担しています。
(その他)
当事業においては、NTTデータグループグループ全体の戦略策定・推進(イノベーション、マーケティング、戦略投資含む)、経営管理、技術の研究・開発及びガバナンス確保等を行っています。本事業の一部を関係会社が分担しています。
事業の系統図は次のとおりです。
当連結会計年度の経済及び情報サービス産業における経営環境は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNTTデータグループグループが判断したものです。
国内及び海外の経済は、世界的な金融引締めや物価上昇等の影響があるものの、全体としては緩やかな回復基調にあります。
景気の先行きについては、引き続き改善方向とは思われますが、地政学的問題等による海外景気の下振れ、金融資本市場の変動等のリスクには十分に注意する必要があります。
国内の情報サービス産業においては、お客様企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが引き続き本格化しており、物価上昇等IT投資抑制の要因となり得る要素はあるものの、需要環境はより堅調に推移していくものと見られています。
海外の情報サービス産業においても、世界的な金融引締めの影響によるIT投資抑制は懸念され、一部の地域において弱さが見られるものの、お客様企業におけるDXの加速、デジタル領域シフトの需要は継続しており、需要環境は堅調に推移していくものと見られています。
[経営施策の取り組み状況]
NTTデータグループグループは、2025年のGlobal 3rd Stage達成に向けて、「Realizing a Sustainable Future」をスローガンに掲げ、未来に向けた価値をつくり、さまざまな人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現することを目指します。その実現に向け、中期経営計画で策定した5つの戦略とサステナビリティ経営を推進しました。2023年7月に、NTTデータグループグループは持株会社体制に移行し、NTTデータグループは「株式会社NTTデータグループ」に商号変更しました。
戦略1. ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出
ITとConnectivityを融合したEdgeからCloudまでを含む総合的なマネージドサービスの提供や、企業・業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスの創出に取り組んでいます。
NTTデータグループグループの従来からの強みであるシステム構築力と、2022年から新たにグループに加わったNTT Ltd.のEdge to Cloud におけるサービスオペレーション力を連携させた成果が、2023年度においても引き続き上がっています。例えば北米では、グローバルに事業展開する製造業のお客様から、倉庫内でのフォークリフトの自動制御を目的としたプラットフォーム構築案件を獲得しました。
また、社会課題への取り組みにおいては、防災情報処理伝達システム「DPIS」をインドネシアに提供することが決定しました。政府から災害情報を迅速に発信して国民の安全・安心を守るためのシステムであり、将来的にインドネシアにおいて複数の防災関係機関情報の統合化・標準化を目指します。さらに、世界各国へ日本の防災DXソリューション・防災ノウハウの展開を目指します。
戦略2.Foresight起点のコンサルティング力強化
お客様・業界の未来を構想するインダストリコンサルティング力と、テクノロジー起点で未来を構想するテクノロジーコンサルティング力を強化し、共創パートナーとしてお客様の成長を支え、ビジネス変革を実現していきます。
Foresight起点でのお客様への価値提供力を生かし、2023年度においては、運輸業界のお客様に対して、経営課題にアプローチし、変革の提言から成果創出まで遂行するなど、既存の事業領域を超えた案件を獲得しました。
戦略3.アセットベースのビジネスモデルへの進化
グローバルレベルでNTTデータグループグループ内の技術・知見・経験等をアセット化し、それらを有効活用することで、お客様への提供価値を最大化していきます。
2023年度においては、地方銀行様向け共同システム「MEJAR」(注1)に、勘定系システムをオープン化するフレームワーク「PITON」(注2)を適用し、銀行業界初となるマルチバンクオープン勘定系システムの稼働を開始しました。今後も「PITON」を活用し金融勘定系システムのオープン化を進めるとともに、将来的なバンキングシステム専用クラウドの実現に向け取り組みます。
戦略4.先進技術活用力とシステム開発技術力の強化
未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化と生産性向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進めています。
2023年度においては、Generative AI 推進室を設立し、グローバルレベルでの生成AI展開戦略を通じてお客様のバリューチェーンの変革に注力するとともに、生成AIを活用した抜本的な業務効率の向上、イノベーションの促進、企業文化の醸成等社内の大きな変革を推進しています。NTTデータグループの保有する10以上の生成AI関連アセットを活用し、お客様との共創プロジェクトを200件程度グローバル横断で展開しているほか、社内でも生成AIの活用を推進しソフトウェア開発等における生産性向上に取り組んでいます。
これらの取り組みが評価され、HFS Research社発行の「HFS Horizons:Generative Enterprise Services, 2023」レポートにおいて最高位の評価である「Horizon 3 Market Leader」の1社に選出されました。
戦略5.人財・組織力の最大化
「Best Place to Work」をキーワードに、多様な人財が成長し活躍する魅力的な企業へと変革していくことを目指し、先進技術が学べる育成プログラムの導入、自律的キャリア支援、多様な人財が活躍できる制度・先進的な職場環境の整備に取り組んでいます。
約2カ月の集中プログラムでデジタルスキルの習得を図るDigital Boot Camp、先端領域での業務経験を獲得するためのDigital Acceleration Programや、AWS、Microsoft、Google Cloud等のパートナー企業とのアライアンスを通じたデジタル人財育成、若手から経営トップに至るまでの多くの女性社員が活躍できる環境づくり、LGBTQ等性的マイノリティに関する取り組み、障がい者雇用の促進施策を通じたDiversity Equity & Inclusion(注3)を推進しています。
これらの結果として、トップ・エンプロイヤー・インスティチュートより、世界29カ国と4地域においてTop Employer認定を受けるとともに、「Global Top Employer 2024」として認定を受けた企業17社の一つに名を連ねることとなりました。
また、Diversity Equity & Inclusionの領域で、包括的な評価を行う「Global Equality Standard」の認証を2023年5月に取得しました。
サステナビリティ経営
サステナブルな社会の実現に向けて、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、事業活動と企業活動により、社会課題の解決や地球環境への貢献に取り組むことで、お客様とともに成長していきます。2022年7月には、「Regenerating Ecosystems(環境)」、「Clients' Growth(経済)」、「Inclusive Society(社会)」の3つの軸に加え、サステナビリティ経営を推進するために取り組むべき重要な課題として、9つのマテリアリティを策定しました。
2023年度における地球環境への貢献(Regenerating Ecosystems)については、グローバルで加速するNet-Zeroへの取り組み要請を踏まえ、2021年策定の気候変動対応ビジョンを改定し、2050年を改めて2040年までに自社並びにサプライチェーンの温室効果ガス排出量(Scope1~3)の実質ゼロ実現を目指す「NTT DATA NET-ZERO Vision 2040」を新たに策定しました。この計画に基づき、再生可能エネルギーの導入やデータセンターの低PUE化を推進し、自社のオペレーションにおけるデータセンターの直接・間接排出量(Scope1・2)について2030年までに、オフィス・その他を含めた自社全体のScope1・2について2035年までに、実質ゼロを目指します。Science Based Targets initiativeよりNet-Zero目標の認定も取得しました。
また、お客様のサステナビリティ経営に貢献するC-Turtle等のサステナビリティオファリングの創出を推進しており、C-Turtleはこれまでに累計1,000社への導入を達成しています。
これらNTTデータグループの取り組みが評価され、CDP(注4)が実施するサプライヤーエンゲージメント評価において、最高評価の「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」に2年連続で選定されたほか、米国のS&P Global社が発行した「The S&P Sustainability Yearbook 2024」において「情報技術サービスおよびインターネットソフトウェア・サービス」分野の上位1%に選定されました。
また、2024年4月から、国内外をまたぐサステナビリティ経営推進のためのガバナンス体制として、取締役副社長執行役員(提出日現在においては、代表取締役副社長執行役員)であるコーポレート総括担当役員を委員長とするサステナビリティ経営推進委員会を設置しています。
詳細については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
持株会社体制への移行と新たな海外事業運営体制
これまでNTTデータグループの日本国内の事業は継続的に拡大し、海外においても2022年10月のNTT Ltd.との事業統合により急速に事業が拡大しています。
これらの状況を踏まえて、NTTデータグループグループは今後のさらなる事業拡大に向けたグローバル経営体制にシフトし、グローバルを前提とした戦略の下で国内・海外のニーズ、商習慣、法規制を踏まえてイノベーション、マーケティング、ガバナンス、デリバリーの仕組みを構築し、事業環境の変化に迅速に対応するため、2023年7月に持株会社体制へ移行しました。
NTTデータグループがグループ経営における指揮管理を、国内事業会社である株式会社NTTデータ及び海外事業会社である株式会社NTT DATA, Inc.が自律的な事業運営を担う体制とすることで、機動的な事業運営と適切なガバナンスを推進しています。
また、2024年4月から株式会社NTT DATA, Inc.は新たなグローバル事業運営体制に移行しています。地域単位で一元的にオファリングを提供するリージョナルユニット、グローバルで共通的なサービスを提供するグローバルユニット、コーポレート機能を担うグローバル本社からなる体制とし、お客様エンゲージメントを強化するとともに、スケールメリットを生かしたグローバルでのサービスの提供能力を強化していきます。
[経営環境の見通し]
社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、地球環境への貢献を含む社会課題の解決と、新しい価値創造をはじめとする経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しています。また、テクノロジーの進化を背景にさまざまなモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しています。これらにより、お客様のニーズも多様化・高度化し、ITサービスの重要性は引き続き高まっており、需要環境については堅調に推移していくものと見られています。
一方で、世界的な金融引締めと物価上昇等の影響による投資抑制や地政学的問題等による景気の下振れが懸念されているほか、IT市場においては、コンサルティング企業との競合や新規プレイヤーの参入等により競争環境は依然として激化しています。
このような環境においてNTTデータグループグループがお客様へ貢献し続けるために、グローバルレベルでのさらなる競争力強化及び財務健全性の確保が必要と考えています。
[対処すべき課題]
海外事業の質を伴った成長
国内事業に比べ収益性が低い海外事業の収益性改善に引き続き取り組む必要があると認識しています。
競争力の強化
DXに代表されるITサービスの重要性の高まり、また、競争環境の激化に対応するため、さらなるデジタル関連ケイパビリティの獲得等を進める必要があると認識しています。
事業成長に向けた投資
さらなる事業成長に向けた投資と、投資収益性や財務健全性への影響を考慮した適切な投資管理の必要性を認識しています。
人財の拡充
世界的に人財獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化への変革に取り組む必要があると認識しています。
[課題への対処]
海外事業の質を伴った成長
海外事業全体の収益性・競争力を高めるため事業構造改革を進めており、海外EBITA率※は2022年度の8.0%から2023年度に8.6%まで改善しています。2024年4月から3つのリージョナルユニットと2つのグローバルユニットに再編し、シナジー創出を含む事業成長、海外事業構造改革の効果の発現により2025年度の海外EBITA率10%※の達成を目指します。
※M&A・構造改革等の一時的なコストを除く
競争力の強化
中期経営計画の5つの戦略の徹底を継続し、競争優位性強化を進め、高度化したニーズ・技術等に対応していきます。
事業成長に向けた投資
投資と成長の好循環の確立と、Global 3rd Stageに向けた事業成長のため、Strategic Investments、M&A投資、データセンター投資の枠組みで積極的な投資を継続します。
注力技術・Industry領域の強化や次世代ビジネスの創出を目的とするStrategic Investmentsは、投資枠を今中期経営計画から大幅に拡大しており、2023年度は300億円規模の支出を伴った施策を実施しました。2024年度も継続して同規模の投資を行います。 M&A投資については、デジタル関連ケイパビリティ獲得や北米等主要マーケットにおけるシェア拡大に向け、進めていきます。また、国内においても、コンサルティング力やデジタルテクノロジー及びシステム開発力の強化、アセット拡充を進め、さらに事業を拡大させていくため、積極的にM&A投資を行います。データセンター投資については、NTTデータグループグループはグローバルでプレゼンスの高いデータセンター事業者であり、また本事業は将来的にも成長の継続が予測されていることから、中長期的な事業基盤の重要領域と位置付け積極的に投資を行います。
一方で、データセンター事業において設備投資額は有利子負債で調達しているため、金融費用も増加傾向にあります。引き続きNet Debt EBITDA 倍率を財務健全性の指標として、EBITDA創出力増加に合わせて有利子負債の増加をコントロールしていきます。
人財の拡充
国内では、新卒採用の拡充に加え、経験者採用の強化に向けジョブ型雇用制度が適用されるFlexible Grade、スペシャリストのキャリアパスを実現するTechnical Grade等の新人事制度活用や対外ブランディング強化を行い、デジタル人財の獲得を増加・拡充させていきます。
海外においては、グローバル成長戦略に必要な人財の確保をM&A等の手段も含めて進めています。
また、獲得した人財の多様な力を新たな競争力につなげ、高度化したニーズ・技術等への対応力を高めていくことが必要であると考えており、人財の活躍に向けた制度の充実と、グローバル共通のトレーニングメニューの確立や人財交流等を中長期視点で進めていきます。
(注1) MEJAR(Most Efficient Joint Advanced Regional banking-system)
NTTデータグループグループが構築・銀行が主体で運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターです。次期MEJARは2030年頃開始予定です。
参加行は ㈱横浜銀行、㈱北海道銀行、㈱北陸銀行、㈱七十七銀行、㈱東日本銀行であり、㈱広島銀行が2030年度に参加予定です。
(注2) PITON
NTTデータグループグループが提供する、メインフレーム上に構築されたシステムをオープン化するためのフレームワークです。
(注3) Diversity Equity & Inclusion
持続可能な社会の実現のために取り組むべき多様性、公平性、包摂性のことです。
(注4) CDP
投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するための、グローバルな情報開示システムを運営する、英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)のことです。
[方針]
NTTデータグループグループは、事業の健全な成長を推進することを目的に、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、経営への影響を抑制・低減していくため、全社的な視点でグループのリスクマネジメントを統括・推進する役員及びリスクマネジメント部門を置くとともに、主要なグループ会社にリスクマネジメントを統括する役員を選任し、グループで連携してリスクマネジメント体制を整備しています。
また、NTTデータグループグループの事業計画の達成、存立基盤に重大な影響を与える可能性のあるリスクを「重要リスク」として取締役会において選定し、さらに「重要リスク」のうち、平時の統制に加え迅速な有事対応を必要とするリスクについては「特に重要なリスク」と定義しています。重要リスクは、NTTデータグループにとって統制すべきリスク項目を記載したグループリスクカタログに、直近の内部環境・外部環境、各リスクの発生可能性と影響度を反映させ、前連結会計年度の重要リスク項目の評価・見直しを実施したうえで、各リスクと経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して選定しています。
各重要リスクについては、グループ全体として重点的な統制活動を推進し、内部統制委員会において、その統制状況について定期的なモニタリングやその有効性の確認、改善事項の提言等を実施しています。
また、グループ全体としての重要リスクの統制に加え、海外事業会社である株式会社NTT DATA, Inc.及び国内事業会社である株式会社NTTデータにおいても、それぞれの事業特性に応じた重要リスクを選定し、その統制やモニタリングを行っています。グループ全体としてのリスク統制活動と、各事業会社でのリスク統制活動は、各社のリスクマネジメント統括役員間の連携体制の下で相互連携しながら実施しており、これらの活動全体を内部統制委員会でモニタリングすることで、グループ一体的なリスクマネジメント活動の推進を図っています。
[重要リスク]
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、NTTデータグループグループの事業計画の達成、存立基盤に重大な影響を与える可能性のあるリスクには以下の(1)から(16)のリスクがあります。このうち、(1)から(8)を平時の統制に加え、迅速な有事対応を必要とするリスクである「特に重要なリスク」として定め、 有事発生時の対応を含め、特に重点的に統制活動を行っています。
前連結会計年度の有価証券報告書に記載していた重要リスクからの主な変更点は、以下の二点です。
・お客様や市場からのNTTデータグループグループへのニーズ・期待の変化を背景に、NTTデータグループグループのビジネスモデルや事業ポートフォリオを常に最適化し、市場ニーズ等の変化に適応していく必要性が高まっていることから、「競争激化に関するリスク」に、競争環境の変化のみならず市場ニーズ等の変化にも適応する観点を加え、「(9)市場・競争環境の変化への適応に関するリスク」に変更しています。
・生成AIの社会的影響の高まりを背景に、先進技術の積極的な利活用はNTTデータグループグループの事業成長に向けた大きな機会である一方、その利活用における適切な管理統制は不可避であることから、「技術革新に関するリスク」の内容を拡張し、AIをはじめとした技術の利活用に関わるリスクを含めて、「(10)AIの利活用・先進技術への対応に関するリスク」に変更しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断によるものです。
(1)システム開発リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループの主力事業であるシステムインテグレーション事業では、一般に請負契約の形態で受注を受けてから納期までにシステムを完成し、お客様に提供するという完成責任を負っています。
そのため、契約内容の曖昧性等による当初想定していた見積りからの乖離や、開発段階に当初想定し得ない技術的な問題、プロジェクト管理等の問題が発生し、原価増となることがあります。
不採算案件が発生した場合、想定を超える原価の発生や納期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
システムの完成責任を全うするため、お客様・業務・技術のいずれかに新規性のある大規模案件を対象にNTTデータグループ内の第三者組織による提案準備段階における提案内容の実現性確認・契約内容の明確化等のリスクへの早期対応、受注時計画や原価見積の妥当性審査と納品までのプロジェクト実査を行っています。さらに、お客様・業務のいずれかに新規性のある一定以上の規模の案件はグループ会社の案件も含めて「高リスク案件」として選定し、進捗や課題の状況、リスクとその軽減策を定期的に把握・管理するなど、不採算案件の抑制に努めています。
(2)システム・サービス運用リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものが多くあります。また、海外事業統合によって、データセンターやネットワークサービスの割合も増えています。これらにおいて運用中に障害が発生し、システムやサービスが停止すると、お客様業務や一般利用者の生活に多大な影響を及ぼすことがあります。また、顧客データの喪失等の問題が発生した場合にはさらに影響は大きくなり、場合によっては発生した損害に対する賠償金の支払い等により、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。加えて、システムやサービスの運用が滞ることは、NTTデータグループグループの社会的信用やブランドイメージの低下にもつながります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループでは、システムを安定運用し、継続してサービスを提供できるように、障害発生の未然防止と障害発生時の影響極小化の両面から、市販製品や他社提供クラウドの不具合情報や対処策情報の積極的な収集と周知、過去発生した障害の原因分析結果及び再発防止策の社内共有、チェックリストを用いた定期点検、故障発生時の連絡体制の構築や障害発生対応訓練等のさまざまな活動を実施しています。
当連結会計年度においては全国銀行データ通信システムにおいて社会的に大きな影響を及ぼす障害が発生したことを踏まえ、システム総点検タスクフォースを立ち上げ、会社として障害の再発防止に向けて取り組みました。具体的な活動としては、障害の原因分析結果に基づき、未然防止・迅速復旧の観点からシステム開発・運用プロセスを俯瞰的に捉えたうえで点検項目を作成し、グループ会社を含めた200以上のシステムで各々チェックを行いました。その結果の社内の第三者組織による確認まで含めて、予定通り2024年3月に全ての点検作業を完了しました。
点検結果としては、総じて点検項目が充足されており、同様の障害を発生させないよう対処されていることを確認しました。特に、2024年年初にリリース予定であったシステムには優先的に点検を実施し、無事にサービスを開始しました。さらに、今回の総点検を踏まえて、今後の大規模サービス開始案件に対しても同様に社内の第三者組織によるチェックを継続して実施します。NTTデータグループグループが提供するシステム・サービスを安心してご利用いただけるよう、引き続き取り組んでまいります。
(3)情報セキュリティに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループは業務遂行の一環として、個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。これらの情報について、サイバー攻撃や内部不正等による情報セキュリティ事故のリスクがあります。
サイバー攻撃に関しては、国内外問わず、ランサムウェアをはじめとする標的型メール、フィッシングによる攻撃や、テレワークやオンライン会議の脆弱性を狙った攻撃の発生に加え、国家紛争やテロと連動した武力とサイバー攻撃を組み合わせたハイブリッド型攻撃や、海外政府等のスパイや転職等に伴う人的な機密情報の持出しリスク、生成AIを活用したサイバー攻撃リスクが顕在化しています。NTTデータグループグループは自ら社会インフラを提供する企業であるとともに、取引先でもあり、NTTデータグループグループにとってサイバー攻撃のリスク顕在化の可能性は日常的にあると認識しています。また、社員等の内部不正による個人情報や機密情報の漏えいは潜在的なリスクと認識しています。
当該リスクが顕在化した場合、NTTデータグループグループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い、法的罰則等により、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当該リスクを低減するため、NTTデータグループグループでは、「情報セキュリティ委員会」のもと、情報セキュリティポリシーや個人情報保護方針を制定し、情報技術の進歩や社会情勢の変化外部の脅威動向等を把握し、技術、管理の両面から関連施策の見直しや改善を実施しています。
特に、サイバー攻撃への備えとしては、防止・検知・対応・復旧のための各種ソリューションの導入、24時間体制の監視運用を行うとともに、インシデント発生時の緊急対応のためのCSIRT組織として「NTTDATA-CERT」を設置し、万一に備えての初動対応訓練等を実施しています。
(4)コンプライアンスに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループはグローバルに企業活動を展開しており、海外事業の拡大に伴い、国内だけでなく、海外の法令を遵守する必要が生じています。各国の法令の中には、当該国内における企業活動について適用されるだけではなく、EUのGDPR(注1)や米国のFCPA(注2)等、当該国の域外においても適用される法令があり、NTTデータグループグループはこれら域外適用法令も遵守する必要があります。これらの法令に違反した場合は多額の制裁金や当局対応に要する費用の支払いが必要となる可能性があります。この他にも、会計基準や税法、取引関連等のさまざまな法令の適用を受けています。不正な会計処理やサプライチェーン上における不正や横領等といった法令違反が発生した場合は、当該不正等による損害はもとより、課徴金の支払い等が必要となる可能性があります。
さらに、このような法令違反が発生した場合は、費用の支出といった経済的損失のみならず、社会的信用やブランドイメージが大きく低下し、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループでは、法令違反等のコンプライアンスリスクの低減・未然防止のため、リスクを抑止し、探知し、対応するためのコンプライアンスプログラムをグローバルで構築し、同プログラムを継続的に評価・改善することにより、コンプライアンス強化に努めています。具体的には、リスク抑止の仕組みとしてグループの役員及び社員が遵守すべき「NTTデータグループ行動規範」を制定して日々の活動における規範を明確化し、行動規範に沿って、必要な規程類を整備し、研修等の教育啓発を行っています。また、リスク探知の仕組みとして内部通報制度を導入して社員からの通報を促す仕組み等をグローバルで整備しています。リスクが顕在化した際には、影響最小化に向けた対応、再発防止に向けたプログラムの改善等の対応を行っています。
(5)出資・M&A・設備投資に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループは、新技術やソリューション、開発リソースの獲得及び戦略的パートナーシップの構築等を目的とし、国内外の企業・組織への出資を実施しています。また、Global 3rd Stageの達成に向けてはM&Aを重要な手段の一つと捉え、デジタル関連ケイパビリティの獲得及び海外売上・シェア拡大によるプレゼンス向上を目的とした海外M&Aを推進・実行しています。M&Aの実施にあたっては、NTTデータグループグループと共通の価値観・親和性を持っていることを最重要視し、注力技術・Industryの観点を中心に、NTTデータグループグループとのシナジー効果の実現性の見極めを実施しています。
M&Aにおいては、特に海外の出資先において法的規制、税制、商習慣の相違、労使関係、各国の政治・経済動向等の要因により、NTTデータグループグループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となった場合や出資先に対しNTTデータグループグループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られなかった場合、のれん等の減損処理を行うなど、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、NTTデータグループグループは生成AIによる需要の急増を好機ととらえ、データセンター事業へ積極的な設備投資を実施しています。データセンター事業への設備投資においては、投資回収期間が長いため、需要が予期しない事態により想定よりも大きく減少し、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
M&Aやデータセンター事業投資の意思決定時には、資本効率性を意識した正味現在価値(NPV)等の指標を用いた投資対効果の評価や、第三者評価による財務健全性の評価等を判断要素としています。
M&Aにおける重要なリスクと認識している、NTTデータグループグループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となるリスクについては、出資時の意思決定において、事業部門及びファイナンシャルアドバイザ・会計士・弁護士等外部有識者によるビジネス面に着目したデューデリジェンスと、出資先のカントリーリスクを踏まえたコンプライアンスに着目したデューデリジェンスの実施を必須とし、発見された各リスクの検証、対応策を踏まえた意思決定を実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
また、NTTデータグループグループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、NTTデータグループグループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。加えて、意思決定時にM&A実施後の統合プロセス(PMI)計画の作成を必須とし、M&A効果の最大化に向けた統合プロセスを早期から実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
NTTデータグループは連結会計年度末における予期せぬリスクの顕在化を抑制するために、四半期ごとに買収先会社の経営状況、PMIの取り組み状況等のモニタリング及び必要な是正を行っています。
データセンター事業への設備投資におけるリスクとして認識している需要の減少に対しては、支出済の設備投資による経営影響を最小限にとどめるため、保有資産を別用途へ転用可能としておくなど、リスクの低減に努めています。
上記のような対応策により、当該リスクがNTTデータグループグループの経営成績及び財務状況に大きな影響を与えることのないよう、入念な検証及び適切なガバナンス体制の構築を行うことで、リスクの顕在化防止に努めています。
(6)大規模災害や重大な感染症等に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものもあることから、行政のガイドラインに準拠した事業継続のための体制整備や防災訓練のほか、従業員の安否状況確認等を適宜実施しています。
しかしながら、巨大地震や気候変動、その他の大規模な自然災害等が発生した場合、システムや従業員等の多くが被害を受けることでサービスの提供が困難になり、お客様業務や一般利用者の生活に多大なる影響を及ぼすことがあります。その結果、NTTデータグループグループの社会的信用やブランドイメージが低下するおそれがあるほか、多額の復旧費用等により、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症等の発生によって、従業員等の感染や、感染拡大防止のために従業員が出社できなくなること等によってシステムやサービスの提供が困難になる可能性があります。
これらリスクの発生によりNTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
被災時における事業継続については、従業員等の安全の確保と事業の継続を目的として、一定の基準を超える災害発生時には事業継続計画を発動し、代表取締役社長を執行責任者とする体制により、臨機応変な対応を行います。また、事業継続性を確保するために、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オンライン環境の増強を進め、オンラインで可能な業務はオンラインで実施することで、社員や協業者の安全確保を行いながら、確実に事業を遂行します。
また、一方では従来以上に、お客様の働き方改革やそれに伴うIT投資、デジタル化のニーズが顕在化する可能性もあり、社会的なインフラを担うシステムやサービスを提供するNTTデータグループグループは取り組みを通じて得た、デジタル等先進技術に関するノウハウやインダストリーの知見を最大限活用し、お客様・社会全体のデジタル化への貢献を通じて事業拡大に取り組んでいます。
(7)人権対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
お客様にとって最適なサービス・ソリューションの提供をグローバルに展開するNTTデータグループグループは、各国・各地域における法令遵守はもとより、国際基準に適合した適切な企業行動が必要とされています。とりわけ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(注3)」に対しては、サプライチェーンを含めて、企業が適切な責任を果たすことが社会から求められています。
サプライチェーン上の人権課題に対し、適切な対応が取られていない場合、経済的損失、社会的信用の低下によるNTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループは、「NTTデータグループ行動規範」を制定し、社会課題への取り組み姿勢や、社員が事業活動において参照すべき行動を明確に示すとともに、サステナブルな社会を目指し、各国・各地域に存在するさまざまな人権テーマ、サプライチェーンにおける人権課題への姿勢を示した「NTTグループ人権方針」に沿ってDiversity & Inclusionの推進、高い倫理観に基づくテクノロジーの推進、Work in Life(健康経営)の推進、適切な表現・言論・表示の推進をし、企業活動を展開しています。
また、NTTグループとして、「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、人権デューデリジェンスプロセスを用いて、人権課題の特定、防止、軽減、是正をグローバル規模で進め、人権意識の向上、人権マネジメントの向上に努めています。
(8)地政学に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループの事業は、日本国内だけではなく、さまざまな国・地域において広く事業展開を行っています。そのため、世界各国の政治・経済・社会情勢等の変化や、テロや戦争といった国際紛争の発生等により、お客様に対するシステムやサービスの提供停止、事業継続困難等の事象が生じることにより、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループは、特定のリージョンに依存しない事業ポートフォリオとすることで、各国における政治・経済動向等の変化がもたらすリスクを分散し、事業全体が大きな影響を受けない構造にしています。
また、NTTデータグループグループは、関連する組織によるグループ横断的な体制において、本リスクについて継続的に必要な情報収集、影響分析を行いつつ、対応方針を整備し、本リスクが発現した場合は派生的に発生する各種リスクへの対応も含め、迅速かつ的確に対処することを可能とする体制を構築しています。
(9)市場・競争環境の変化への適応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、社会課題解決と経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しています。また、テクノロジーの進化を背景にさまざまなモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しています。そのため、ITサービスの重要性はますます高まり、お客様のニーズも多様化・高度化しています。
また、今後もITサービスの需要環境は堅調に推移していくものとみられていますが、コンサルティング企業との競合や新規プレイヤーの参入等により競争環境は依然として激化しており、この状況は継続していくものとみられます。
そのため、市場ニーズ等の変化に迅速・柔軟に対応するとともに、さらなるグローバルレベルでの事業競争力強化に努めない限り、中長期的にはNTTデータグループグループの持続的成長は損なわれ、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
グローバルを前提とした戦略の下で事業環境の変化に迅速に対応するため、2023年7月から持株会社体制に移行し、機動的な事業運営を行っています。また、2022年10月にITとConnectivityを融合したサービスをトータルで提供する企業へ進化するべく、NTT Ltd.と海外事業を統合しました。コンサルティングやアプリケーション開発からConnectivity領域までを含む、デジタルトランスフォーメーションに必要なサービス・ラインナップを一元的に整備し、複雑化・多様化するお客様のニーズにグローバルレベルで対応していきます。 また、2024年4月から、新たなグローバル事業運営体制に移行し、お客様エンゲージメントを強化するとともに、スケールメリットを生かしたサービス提供能力を強化します。
競争力強化に向けては、業界・技術のForesightを起点としたコンサルティング力強化と、高いアジリティを実現するアセットベースの価値提供により、経営変革・事業変革の構想策定から実現まで、一気通貫の対応力を強化し、お客様への提供価値を最大化していきます。また、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力強化と、生産性向上に向けたシステム開発技術力強化を両輪で進めています。生成AIの活用に関しては、Generative AI推進室を設立しグローバル横断でソフトウェア開発生産性向上に取り組んでいます。人財育成については、AWS、Microsoft、Google Cloud等のパートナー企業とのアライアンスを通じた育成によるデジタル対応力強化等を実施しています。さらに、戦略投資として、Strategic Investments、M&A投資、データセンター投資の枠組みで積極的な投資を継続し、将来に渡っての事業競争力を強化していきます。
(10)AIの利活用・先進技術への対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループが属する情報サービス産業では先進技術の進展が目覚ましく、先進技術の積極的な利活用はNTTデータグループグループの事業成長に向けた大きな機会である一方、それらへの対応が遅れた場合、ビジネス機会の逸失により市場での競争力やブランド価値が低下し、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、先進技術の中でも特にAI(機械学習・人工知能)は、その性能の進展に伴い、社会実装の範囲も予測・分類といった用途から、対話や生成といった人的業務の代行まで拡大を続けている一方、その利活用にあたっては、安全性・正確性の確保や、倫理的配慮等の対応が求められており、適切な対応ができない場合には、社会的信用やブランドイメージが低下する可能性があります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループでは、技術の成熟度に応じた3つの領域(Emerging、Growth、Mainstream)における取り組みにより、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化を推進しています。具体的には、Growth/Emerging領域では、Foresightで将来活用される先進技術の目利きを行い、グローバルレベルで先進的な取り組みを行うお客様とのPoC(注4)等を実現してまいります。Mainstream領域では、NTTデータグループグループが強みとしている技術の活用力をさらに磨いてまいります。また、先進技術への感度が高い海外に専門拠点を設置し、新興技術の情報を早期に収集し、グローバルなメンバーで構成されたステアリングコミッティにて経営トレンドや技術トレンド等も考慮しながら革新技術を見極める取り組みを推進しています。そして、特に力を入れて投資すべき注力技術を、グローバルで技術戦略を議論するCTO級会議にて決定し、取り組みを推進しています。また、NTT研究所の研究開発成果を取り入れています。
AIに関しては、AIの適正活用を推進するための組織として、AIガバナンス室を2023年4月に設置しました。AIガバナンス室では、人間とAIが共生する「より豊かで調和のとれた社会」の実現に向けて、グローバル共通の「AI指針」や「AIリスクマネジメントポリシー」を整備しています。また、これらの指針やポリシーにもとづいたマネジメントを実現するために,AIリスクに関するマネジメントルールやAI利用のためのガイドラインを整備し、AIシステムの開発・運用・利活用を中心としたAIガバナンスの取り組みを拡大・継続しています。さらに、政府が主導するAIガバナンス関連の取り組みにも参画し、AIを扱う企業として、AI活用の恩恵を最大限に享受できるサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
(11)知的財産に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループが事業を遂行する上で必要となる知的財産にかかる権利につき、当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品またはサービスを提供できなくなる可能性があります。また、NTTデータグループグループは、従来からの個別受注型システムインテグレーションビジネスに加え、最近では「アセットベースビジネスへの進化」として、業務を通じて生み出された業界・業務のフォーサイト、ベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツール等を活用したコンサルティングからデリバリー・マネージドサービスをグローバル全体で推進しています。これにより、他者の知的財産を侵害したとして損害賠償請求を受ける可能性や、知的財産への戦略的な投資・活用等が不十分なこと等により競争優位性が低下する可能性があります。いずれの場合もNTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループでは知的財産活動を推進する担当組織を設置し、知的財産の活用、適正な権利化や侵害予防調査(クリアランス)、事業部門からの知的財産に関する各種相談対応やNTTデータグループグループ内での教育・啓発活動を実施し、NTTデータグループグループの知的財産の保護・活用、第三者の知的財産権侵害防止に努めています。
(12)人財確保に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]及び[リスクへの対応策]
NTTデータグループグループの成長と利益は、デジタル技術等の専門性に基づいて顧客に価値を提供する優秀な人財の確保・育成に大きく影響されます。こうした優秀な人財の確保・育成が想定どおりに進まない場合、事業計画の達成が困難になることや、システムやサービスの提供が困難になることがあります。この対策として、人財獲得や人財育成、人財の定着の取り組みを行っています。
詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本 ③リスク管理」をご参照ください。
(13)気候変動に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響] 及び [リスクへの対応策]
気候変動が世界的に深刻化し、NTTデータグループグループの気候変動取り組みが遅れることによる評判低下、異常気象による災害リスクの増加、及びカーボンプライシングによるコスト増加等のリスクがあります。この対策として、全社横断のサステナビリティ経営推進委員会による活動推進、レジリエンスの高いデータセンターやオフィス環境の実現、省エネ施策や再生可能エネルギー導入による温室効果ガス排出量の削減を進めています。
詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動 ③リスク管理 表1(気候関連のリスク)」をご参照ください。
(14)為替・金利の変動やインフレーションの進行に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループは、グローバルに企業活動を行っており、NTTデータグループグループが拠点とする機能通貨以外での売買取引、ファイナンス、M&Aや設備投資等に伴う為替変動リスク、有利子負債による資金調達に伴う金利変動リスク、及び、NTTデータグループグループが事業を行う国・地域でのインフレーションの進行に伴う調達コスト、人件費等の高騰リスクに晒されています。
外部・内部環境変化による予測の範囲を超える急激な為替変動、金利変動及びインフレーションの進行がある場合、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、現中期経営においては、中長期的な成長に向けたデータセンター事業等への戦略的な先行投資を実行しており、投資に必要な資金を外部から調達することにより有利子負債が増加し、金利変動リスクが高まる可能性があります。
[リスクへの対応策]
為替変動リスクに対しては、NTTデータグループグループは非機能通貨のキャッシュ・フローの経済価値を保全するべく為替予約等の契約を利用することにより、為替変動リスクを管理しています。これらの取引が為替変動による影響を有効に相殺していると判断しています。
金利変動リスクに対しては、NTTデータグループグループは長期固定的な条件での調達を実施することを基本としつつ、資金使途や金融市場の状況に応じて複数の調達手段及び調達条件を組み合わせることで、安定的かつ低利な資金の確保を行い、当該リスクがNTTデータグループ経営成績へ与える影響の抑制に努めています。
調達コストの高騰リスクについて、NTTグループ内の調達専門会社(NTT Global Sourcing, Inc.)の活用や、広く国内外の調達先から提案を頂く等により、より良い製品をより安く調達する努力を行うことで影響の抑制に努めています。
また、NTTデータグループグループは単純な価格転嫁ではなく、より高い付加価値を生み出し、お客様にサービス提供することで、価格上昇についてご理解いただくよう努めています。
(15)規制対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループグループは、グローバルに企業活動を行っており、活動を行っている地域・国の規制、法令適用や政府の政策等、さまざまな要因の影響下にあります。また、これらの要因はNTTデータグループグループが関与し得ない理由によって大きく変化する場合があり、このような変化が生じた際には、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、国際情勢の変化等により、本邦及び各国で定める経済安全保障関連の法令及びガイドラインが厳格化される傾向があります。NTTデータグループグループがその対応に遅れた場合、当局による処分だけでなく、重要な社会基盤を支えるNTTデータグループグループの事業に対する社会的信用が低下することで、事業戦略やビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。
[リスクへの対応策]
各種法令や政策動向によるリスク要素の重要性が高まっていることを踏まえ、各国の規制環境に関する情報把握・分析や政府検討状況を注視しつつ、安定的なサービス提供の確保に向け適切な対応を行っていきます。
(16)親会社の影響力
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
NTTデータグループの親会社である日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、当連結会計年度末現在、NTTデータグループの議決権の57.7%を保有している大株主であります。NTTデータグループはNTTから独立して業務を営んでいますが、重要な問題については、NTTとの協議、もしくはNTTに対する報告を行っています。このような影響力を背景に、NTTは、自らの利益にとって最善であるが、他の株主の利益とはならないかもしれない行動をとり、NTTデータグループグループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
グローバルを展望した事業環境の変化を踏まえ、引き続きお客様事業の成長に貢献し、長きにわたり社会インフラを支えていくためには、NTTグループとの連携を強化し、NTTグループトータルで新たな価値を創造していく必要があると考えています。また、NTTグループ全体の調達集約等によるコスト削減等のスケールメリットを生かした連携も進めています。
このような連携を進めつつ、NTTから独立した意思決定を確保するため、NTTデータグループは、NTTとの間で締結する重要な契約については、法務部門による法務審査や必要に応じた社外弁護士の見解取得を実施した上で、意思決定を行っています。また、特に重要な契約については独立社外取締役が過半数を占める取締役会での承認を必須としています。
今後も引き続き、NTTとの間で、相互の自主性・自律性を十分尊重し、NTTとの取引等について法令に従い適切に行うことで、リスクの顕在化防止に努めます。
(注1)GDPR
EU域内の個人情報を取り扱う際に適用されるEU一般データ保護規則のことです。
(注2)FCPA
贈収賄にかかる米国の海外腐敗行為防止法のことです。
(注3)ビジネスと人権に関する指導原則
2011年6月に国連の人権理事会において全会一致で支持された文書であり、「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」、「救済へのアクセス」の3つの柱で構成されています。
(注4)PoC(Proof of Concept)
「概念実証」のことで、新たな概念やアイディアの実現可能性を示すための簡易な試行のことです。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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