旭化成(3407)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3 【事業の内容】旭化成グループは、連結財務諸表提出会社(以下、旭化成という)及び関係会社346社から構成されています。その主な事業内容はセグメントの区分のとおりであり、旭化成及び主な関係会社の当該事業に係る位置付けとセグメントとの関連は次のとおりです。 セグメント主要な事業内容主要な製品・サービス主要な関係会社ヘルスケア(関係会社74社)医薬事業医療用医薬品 等旭化成ファーマ㈱Veloxis Pharmaceuticals, Inc.Calliditas Therapeutics AB※ ㈱カイノスライフサイエンス事業ウイルス除去フィルター、CRO事業、CDMO事業 等旭化成ライフサイエンス㈱Bionova Scientific, LLC.Asahi Kasei Bioprocess Europe S.A./N.V.クリティカルケア事業心肺蘇生関連(AED、医療従事者向け除細動器)、着用型自動除細動器、睡眠時無呼吸症治療・診断機器 等ZOLL Medical Corporation 住宅(関係会社97社)住宅事業建築請負(戸建・集合住宅)、不動産関連、リフォーム、その他住宅周辺事業、米国・豪州住宅事業 等旭化成ホームズ㈱旭化成不動産レジデンス㈱旭化成リフォーム㈱Focus Companies LLCODC Operations LLCAsahi Kasei Homes Australia Pty Ltd.NEX Building Group Pty LtdErickson Framing Operations LLC ※ ㈱森組建材事業軽量気泡コンクリート(ALC)、断熱材、基礎杭、構造資材 等旭化成建材㈱ セグメント主要な事業内容主要な製品・サービス主要な関係会社マテリアル(関係会社151社)エレクトロニクス事業電子材料、電子部品 等旭化成エレクトロニクス㈱カーインテリア事業自動車内装材、人工皮革 等Sage Automotive Interiors, Inc.エナジー&インフラ事業リチウムイオン電池用セパレータ、イオン交換膜、中空糸ろ過膜 等旭化成バッテリーセパレータ㈱ Asahi Kasei Battery Separator Canada CorporationAsahi Kasei Honda Battery Separator CorporationPolypore International, LLCコンフォートライフ事業繊維、消費財 等旭化成アドバンス㈱旭化成ホームプロダクツ㈱ケミカル事業(パフォーマンスケミカル事業、エッセンシャルケミカル事業)樹脂 等旭化成精細化工(南通)有限公司Asahi Kasei Plastics Singapore Pte. Ltd.Asahi Kasei Plastics (America) Inc.旭化成塑料(上海)有限公司基礎原料 等PSジャパン㈱Asahi Kasei Synthetic Rubber Singapore Pte. Ltd.Tongsuh Petrochemical Corporation※ 三菱ケミカル旭化成エチレン㈱※ PTT Asahi Chemical Co., Ltd.マテリアル共通-Asahi Kasei Europe GmbH その他(関係会社24社)エンジニアリング事業各種リサーチ・情報提供事業人材派遣・紹介事業 等-Asahi Kasei America, Inc.Asahi Kasei Holdings US, Inc.旭化成(中国)投資有限公司 ※ 旭有機材㈱ (注) 1 旭化成はマテリアルセグメント内の複数の事業を行っています。 2 一部の関係会社の事業内容は、複数のセグメントに跨っています。 3 ※は持分法適用会社です。
有価証券報告書(2026年3月決算)の情報です。
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において旭化成グループが判断したものです。 (1) 経営方針・経営戦略等① 旭化成グループミッション等旭化成グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッション(存在意義)のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆様に対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。 ② 旭化成グループ全体の経営方針・経営戦略等<経営環境・経営課題>国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に示されるように、持続可能な社会に向けてはさまざまな課題があり、世界中で取り組みが進められています。しかし、国連の2025年の報告によれば、持続可能な開発目標(SDGs)のうち、軌道に乗っている、あるいは緩やかに進捗しているとされているのは35%に過ぎません。2030年に向けた残りの5年間を最大限活用することが求められています。創業以来の1世紀にわたり、各時代のニーズに応えながら成長してきた旭化成グループにとって、これらの持続可能な社会に向けた課題は、自らの挑戦課題であると同時に、事業機会として位置づけ、積極的に取り組むものです。これらの課題は1つの企業・産業で解決できないものも多く、企業や産業を超えた共創がますます重要になってきます。例えば、住宅とエネルギー、医療と住宅等のように、これまでの産業の境界を越えて相互に関連し合うテーマ・課題が多く存在しています。このような環境は、ヘルスケア・住宅・マテリアルの各領域で多様な事業を有する旭化成にとっては大きな事業機会であると認識しています。また旭化成は100年の歴史で培った人財・コア技術・ブランド・経営ナレッジ等、多様な資産を有しています。グループの特長である多様性(Diversity)を活かし、競合との差別化を重視したアプローチによって高付加価値・高収益(Specialty)のイノベーティブな製品・サービス・ビジネスモデルを持続的に創出していくことを目指します。一方、足元の状況を見ると、経営環境は急激に変化し、不確実性が著しく高まっています。世界各地で発生している紛争、政情不安、社会的分断や、政策予見性の低下は、エネルギーや原材料などのサプライチェーンの不安定化、金融市場の変動、世界経済の下振れなどのリスク要因となっています。旭化成グループでは、そのような経営環境をしっかりと見極めた上で、グループの力を1つのチームとして結集し、お客さまや同業他社、投資家などさまざまなステークホルダーとともに道を切り拓いて、価値を提供していきます。そしてこうした「持続可能な社会への貢献」が旭化成グループの「持続的な企業価値向上」につながり、その結果さらなる「持続可能な社会への貢献」が実現可能になるという、2つの持続可能性(サステナビリティ)の好循環を追求していきます。 <経営方針・経営戦略>● 旭化成が2030年に目指す姿この「2つのサステナビリティの好循環」に向けて、旭化成グループでは、ヘルスケア、住宅、マテリアルの各領域がそれぞれのあり方に基づき、様々な課題の解決、及び実現したい姿に向けて事業を展開しています。多様な事業が社会課題に正面から対峙して、価値提供することで、“持続的にイノベーティブな製品・サービス・ビジネスモデルを創出”することを目指しています。その結果として、高い利益成長と資本効率の向上を実現し、旭化成グループとして2030年近傍には、営業利益3,800億円、ROIC8%以上、ROE12%以上を目指します。 ● 旭化成の特長 「Diversity × Specialty」旭化成の特長を表す「Diversity × Specialty」は旭化成の価値提供の源泉となっています。「Diversity」は多様な事業展開による成長機会の豊富さや安定的な収益創出力を、「Specialty」は競合との差別化を重視した事業アプローチを通じた高付加価値、高収益の実現を示しています。DiversityとSpecialtyを掛け合わせることで、「高い経営安定性」と「成長・新しい事業への挑戦」、「持続的なイノベーションの創出」の好循環が生み出されています。グループの経営基盤を各領域が共有し合い、柔軟に相互活用することで、それぞれが旭化成らしい勝ち筋で価値を提供する、という姿は旭化成独自のエコシステムとなっています。 ● 「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」の進捗状況2025年4月に発表した「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」(以下、「本中計」)は、旭化成が目指す「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環の実現に向けた、2025年度から2027年度の3年間の経営計画になります。投資成果創出による利益成長、構造転換や生産性向上による資本効率改善に加え、経営基盤のさらなる強化・活用により、「Diversity × Specialty」を進化させ、最終年度の2027年度には営業利益2,700億円、のれん償却前営業利益3,060億円、ROIC6%、ROE9%を目指します。 ⅰ 投資成果創出による利益成長2027年度の利益目標である2,700億円に向けては、医薬、クリティカルケア、海外住宅が主な利益成長ドライバーとなります。特に医薬と海外住宅については、M&Aを中心とした先行的投資から確実に利益を創出することで利益成長を実現します。加えてAI向け半導体需要の急成長を受け、エレクトロニクスにおける高い利益成長を見込んでいます。中期視点での持続的な利益成長に向けては、リソースアロケーションをより明確にし、成長が期待できる事業へ重点的に投入します。本中計においては、事業を10の区分に分け、事業ポートフォリオの方向性や各事業の戦略をより明確にしています。「重点成長」「戦略的成長」事業への投資継続による利益成長の実現と並行して、「収益改善・事業モデル転換」事業の改革も進めます。 ⅱ 構造転換や生産性向上による資本効率改善収益性・資本効率の低い事業については、構造転換を進め、資本の最適配置を図ります。本中計においてはマテリアル領域のポートフォリオ変革をさらに加速させ、同領域の2024年度売上高の約20%に相当する事業の構造転換を目指します。2025年度においてはケミカル事業における事業撤退や設備停止に加え、ケミカル事業以外において、他社への事業譲渡や提携を進めました。2026年度第1四半期の発表分まで含めると、構造転換した事業の売上規模は概算値で2,030億円となり、中計目標の約7割に達しています。引き続き、主にケミカル事業を対象とした構造転換に取り組むことで中計目標の達成を目指します。ⅲ 「Diversity × Specialty」の進化継続的に事業ポートフォリオ進化の取り組みを推進した結果、旭化成グループの利益構成は大きく変化しています。マテリアル領域においては事業環境変化を受け構造転換に注力する一方で、住宅領域、ヘルスケア領域では成長投資が着実に利益として結実し、2025年度においては住宅領域が最も営業利益額の大きな領域となりました。2030年度に向けては各領域がほぼ同水準の利益目標を目指す形になり、それに合わせ、今後の成長投資はヘルスケア領域や住宅領域へのアロケーションを増加させます。マテリアル領域は構造転換による収益力強化に取り組みながら、エレクトロニクスなどの高い市場成長が見込める分野における利益拡大を図り、2030年度の利益目標の達成を目指します。「Diversity × Specialty」の進化により、マテリアル領域を中心とする事業構成から、多様な産業における高付加価値事業が高水準の利益貢献を果たす姿へシフトさせていきます。 ⅳ 財務・資本政策(外部環境・課題)2025年4月の中期経営計画の開始以降、インフレ対応を巡る各国の政策動向、地政学的リスクの常態化による分断型の世界経済など、先行きを見通すことが難しい状況が続いています。そのような不透明な事業環境下でも持続的成長を可能にする事業ポートフォリオが奏功し、ヘルスケアやAI・半導体関連といった分野のこれまでの投資が結実することで利益成長を力強く牽引しており、財務健全性を示すD/Eレシオは想定の水準を維持しています。引き続き、生産性向上やコスト削減などによる体質強化を図り、アセットライトを意識した事業モデルへの転換などを通じてキャッシュ創出力や資本効率を持続的に高めていきます。 (具体的な方針・戦略)■ 資金の源泉と使途の枠組み本中計の3年間においては、約1兆2,000億円のキャッシュ・インとキャッシュ・アウトを計画しています。キャッシュ・インにおいては営業キャッシュ・フローが約85%を占め、残りの約15%は有利子負債、事業売却、他社資本の活用などにより調達する予定です。キャッシュ・アウトに関しては成長に向けた投資と株主還元のバランスを重視し、約80%を事業投資、約20%を株主還元とする計画です。財務健全性指標としてD/Eレシオは0.7程度、有利子負債/EBITDA倍率は3.0程度を目安として、資本のバランスをマネジメントします。 ■ 設備投資・投融資本中計の3年間の意思決定ベースの投資額は、ヘルスケア領域や海外住宅におけるM&Aの投資額を精査した結果、当初計画の1兆円をやや下回り、約9,300億円を見込んでいます。そのうち、拡大関連投資の総額は6,000億円を予定しており、中計初年度においても中長期的な事業拡大に向けた成長投資は着実に進めています。拡大関連投資の約6割は「重点成長」事業を対象としており、医薬や海外住宅、エレクトロニクスといった成長力の高い分野へ集中的にリソースを投入します。投資の意思決定にあたっては、他社資本や補助金を戦略的に活用することを検討します。また、主要な案件ごとに事業の収益性・資本効率や事業ポートフォリオ上の位置づけ等を踏まえた上でのハードルレートを定めています。今後も財務規律を強く意識した上で投資判断を行います。 ■ 株主還元株主還元の基本的な考え方としては、累進配当を特に重視した上で、還元水準の継続的向上を図っていきます。その方針のもと、DOE3%程度を目安に中長期的な累進配当を目指しており、2025年度は1株当たり年間配当金として42円と、前期比で4円増配します。自己株式取得については、2025年度に株式の取得価額の総額で400億円(上限)の実施を決定しました。今後も自己株式取得に関する考えは従来と変わらず、資本構成最適化や投資案件、キャッシュ・フローの状況、足元の株価の推移などを総合的に勘案して検討・実施していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」と合わせてご参照ください。 ■ 資本効率の改善と企業価値の向上本中計においても、前中計に引き続き資本効率を重視しています。ROEについては、減損損失を計上した2022年度から改善しているものの、現状では株主資本コストの8%を下回っています。本中計の最終年度では9%を計画していますが、足元においてもROE改善策を進め、PBRのさらなる向上を目指します。改善に向けて次の5つの取り組みに注力しています。①事業ポートフォリオ変革加速②収益力向上③投資マネジメント強化④資本構成の最適化⑤資本コスト低減この中でも特に「事業ポートフォリオ変革加速」と「収益力向上」に重点的に取り組み、企業価値の向上を追求します。 ⅴ 経営基盤の強化経営環境の不透明さが増す中では、事業の土台となる経営基盤をより強固にすることが重要であると考えています。「人財のトランスフォーメーション」「グリーントランスフォーメーション」「リスクマネジメントの強化」「コーポレート・ガバナンスの最適化」などを通じて、旭化成のエコシステムのさらなる強化を進めています。 ■ 旭化成のエコシステムを通じた価値創造旭化成の100年を超える歴史の中で構築してきた経営基盤は、我々の経営のコアとなるものです。それを各領域が共有し、柔軟に相互活用しながら、旭化成らしい勝ち筋で価値を提供する、という姿は旭化成特有のエコシステムだと考えています。エコシステムを事業横断で活用して効果を創出している取り組みとして次のような事例があります。✔知財マネジメントノウハウの展開、という観点では、蓄積されたノウハウを医薬の分野で活用し、年間売上高で約400億円の骨粗鬆症薬「テリボン®」の独占販売期間の実質延長を実現✔住宅事業の法人営業活動において、旭化成グループが持つブランド、信用力を土台とした様々なネットワークを活用✔蓄積したM&Aノウハウを活用し、過去5年で300億円以上の規模のM&Aを7件実施このように、人財・ブランド・経営基盤といった無形資産を有機的に組み合わせて活用することで、旭化成ならではの価値を創出していきます。 ■ 人財のトランスフォーメーション旭化成グループは挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、多様性を促す「共創力」を人財戦略の柱としています。これらは旭化成が100年かけて培った、グループバリュー、多様性、自由闊達な風土などの無形資産をさらに磨き、活かしきるということでもあります。その取り組みを加速させるために、挑戦的風土の強化を狙った新しい人事制度への移行を進めています。「Fair+Open」のコンセプトのもと、社員が新たなことに挑戦したり、高い成果・貢献をあげた場合に、これまで以上に積極的に評価・報酬・昇格につなげる形にしていきます。これらの取り組みが、「従業員の活力と働きがいの向上」と「旭化成グループの持続的成長」の好循環につながると考えています。主要KPIとしては、「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」「従業員エンゲージメント(活力指標)」を掲げています。具体的な施策概要は「第4 提出会社の状況 5 従業員の状況等」に記載しているほか、旭化成統合報告書及びサステナビリティウェブサイトにも記載しています。統合報告書;https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/asahikasei_report/サステナビリティウェブサイト;https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/ ■ グリーントランスフォーメーション旭化成グループは持続可能な社会の実現に向けて、2050年時点でのカーボンニュートラル(GHG実質排出ゼロ)を目指しています。GHG排出量は2013年度対比で2030年には30%以上の削減、2035年には40%以上の削減を目指しています。カーボンニュートラルの実現に向け、エネルギー使用量の削減、エネルギーの脱炭素化、製造プロセスの革新、高付加価値/低炭素型事業へのシフトなど、様々な取り組みを加速させていきます。自社のGHG排出量の削減への注力に加え、製品やサービスでバリューチェーン全体のGHG排出量削減に貢献することも重要なテーマとして取り組んでいます。旭化成では第三者専門家の視点を入れて妥当性を確認した、GHG排出量削減効果を期待できる製品・サービスを「環境貢献製品」として拡大・普及することを進めています。これらの「環境貢献製品」によるGHG削減貢献量を、2030年度には2020年度の2倍以上、2035年度には2.5倍以上とすることを目標としています。 ■ 企業価値向上を支えるガバナンスの進化旭化成グループは、事業環境の変化に応じ、透明・公正かつ迅速・果断に意思決定を行うための仕組みとして、旭化成にとって最適なコーポレート・ガバナンスの在り方を継続的に追求しています。直近のコーポレート・ガバナンスの状況については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。なお、近年のコーポレート・ガバナンスの主な取り組みとしては、取締役会のアジェンダにおける中長期視点の重点テーマへの注力に加え、独立社外取締役比率の向上などを進めています。また、2025年度に行った役員報酬制度の改定では、中長期的な企業価値向上への意識をより高めるため、業務執行取締役の報酬における株式報酬、金銭業績連動報酬の割合を高めました。さらに、グループ経営を担う国内外のリーダー層に対し、企業価値向上に向けて求められる行動を体系的に整理、共有することを目的に、「Group Management Standards(GMS)」を制定しました。GMSでは、企業価値向上に資する中核的な要素と、リーダーに求められる具体的なアクションの基準を明示しています。対象となるリーダーは、GMSに基づく行動を通じてグループ経営を牽引するとともに、その実践状況は業績考課等にも反映されます。今後は、グループ経営の重要な行動基準としてGMSの浸透を一層進め、グループ一丸となって企業価値向上に取り組んでいきます。 ■ リスクマネジメントの強化詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 ⅵ 財務・非財務主要KPI本中計の実行にあたっては、財務・非財務のKPIを明確にして各施策を実行していきます。財務KPIにおいては、利益成長・資本効率の視点で、営業利益、ROE、ROICの2027年度の目標と2030年度の展望を設定しています。非財務KPIに関しては、GXの観点では旭化成GHG排出量、環境貢献製品を通じたGHG削減貢献量、無形資産の活用の観点ではライセンス契約の新規締結件数、人財の観点では従業員エンゲージメント調査の活力指標を主要なKPIとして設定しています。 中期経営計画2027で設定した財務・非財務主要KPI一覧 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等中期経営計画に定める各セグメントの目標に向けて、以下の経営方針・経営戦略を実行していきます。 Ⅰ 「ヘルスケア」セグメント●事業の方向性:2026年度に完了した医薬の大型買収案件を含め、これまでの成長投資を結実させ、グループの利益成長を牽引。中期視点での持続的高成長に向けた拡大投資を継続 ●注視する事業環境:対象疾患の患者数・ガイドライン、血漿製剤・バイオ医薬品の市場動向、米国の景気動向・政策動向・保険会社の動向 <経営環境・経営課題>医薬事業においては、2024年度に買収したCalliditasが、2019年度に買収したVeloxisと一体となってグローバルな事業展開を進めており、日米における主力医薬品の販売が伸長したことにより売上高は堅調に増加しています。2026年2月に公表したAicurisの買収は4月に完了し、今後の中長期的な販売拡大に向けた成長ドライバーとして位置づけています。ライフサイエンス事業においては、血液製剤・バイオ医薬品等の市場の継続的な成長と製薬企業における新薬の開発及び商業生産化へのニーズの高まりにより、ウイルス除去フィルターの需要が堅調に増加しています。米国の関税障壁によって一部の出荷に影響があったものの、全体としての供給体制には問題なく事業を運営しています。クリティカルケア事業においては、主力のACT*1事業で2025年10月に医療従事者向け除細動器の新製品を米国にて発売したことなどから、売上高が堅調に増加しました。中長期的には、国内では医療費削減圧力が高まることによる市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、より良い医療に対するニーズの高まりや長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続することが予想されます。そのため、本セグメントの中長期的な成長のための課題は、グローバルな事業展開を加速することであり、旭化成グループに足りない経営資源を追加・補強する手段としてM&Aやライセンス導入による事業開発を推進していきます。今後は、2021年度にクリティカルケア事業のZOLLが買収したRespicardia, Inc.やItamar Medical Ltd.、2022年度に旭化成メディカル㈱(現、旭化成ライフサイエンス㈱)が買収したBionova Scientific, LLC、2024年度に旭化成が買収したCalliditasや2026年度にVeloxisが買収を完了したAicurisなど、過去に投資を実行した案件の収益成長による投資成果の刈り取りを図るとともに、既存事業の成長とM&A等の事業開発を継続し、医薬・医療機器の双方でグローバル市場における幅広い事業機会を捉え、旭化成グループの成長を牽引することを目指します。*1 Acute Care Technology:除細動器、AED、心肺蘇生関連、体温管理、ソフトウェアソリューション等 <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ 医薬事業・旭化成ファーマ㈱とVeloxisの強みを活かしたグローバルスペシャリティファーマへの進化が着実に進んでいます。事業開発、臨床開発における両社の知見を統合し、免疫・移植の周辺疾患領域での成長の可能性を最大限に追求します。2024年度からは日米の医薬事業を統合した「One AK (Asahi Kasei) Pharma体制」への移行を進めています。そして医薬事業のグローバルな研究開発機能の最適化及びオープンイノベーションのさらなる推進を目的として、研究開発拠点を2027年1月(予定)に大仁地区(静岡県伊豆の国市)から湘南ヘルスイノベーションパーク(神奈川県藤沢市)へ移転することを決定しました。・Veloxisの腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR™」の販売が着実に伸長しています。また将来に向けたパイプライン強化のため、CD28阻害薬「VEL-101」(臓器移植における新規免疫抑制薬)の開発を進め、順調に経過しています。・Calliditasでは、IgA腎症の治療薬として初めて承認された医薬品「TARPEYO™」の販売拡大を目指します。競合製品も上市されましたが、「TARPEYO™」は競合より早く承認を得たことと、国際ガイドライン*2に推奨薬として掲載されたことを追い風に当初計画より2~3年前倒しで売上伸長を達成しています。・国内市場では整形外科領域、救急・集中治療領域、免疫疾患領域における新薬上市と販売の拡大を継続します。整形外科領域においては、骨粗鬆症治療薬「テリボン®オートインジェクター」のさらなる市場への浸透を図ります。免疫疾患領域においては、関節リウマチ治療剤「ケブザラ®」と、免疫調整剤「プラケニル®」のさらなる市場浸透を図ります。*2 KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV) ⅱ ライフサイエンス事業・生物学的製剤の市場成長に合わせたウイルス除去フィルター「プラノバ™」の市場ポジション・販売拡大を目指し、生産能力増強、生産効率化及び製品開発を引き続き進めていきます。・同様にバイオ医薬品の製造工程の上流プロセスで細胞分離に利用される中空糸型マイクロフィルター「BioOptimal」も着実に売り上げを伸ばしています。旭化成のろ過技術と品質の高さに加えて、「プラノバ™」の販売で培った顧客とのコネクションを通じて更なる事業拡大に努めます。・ウイルス等安全性試験受託サービス等を手掛けるVirusure Forschung und Entwicklung GmbH、Bionique Testing Laboratories, LLC、及び次世代抗体医薬品CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)のBionova Scientific, LLCを通じた多様な事業展開により、製剤の安全性と生産性向上に貢献する、製薬企業にとってのプレミアムパートナーとなることで製薬市場の成長を取り込みます。 ⅲ クリティカルケア事業・心肺蘇生、心疾患、睡眠時無呼吸症などの重篤な心肺関連疾患領域をターゲットとし、既存事業の持続的成長、及び企業買収を通じた既存事業強化と周辺領域への拡大により成長を追求します。・医療従事者向け除細動器や公共施設向けAEDなどの救命救急医療の市場リーダーとして、引き続き技術革新や製品・サービス開発に投資して新製品を投入し、製品ポートフォリオを多様化するとともに、米国外も含めたグローバルでの市場成長を着実に捉えていきます。・着用型自動除細動器「LifeVest®」は米国にて次世代モデルの販売を2025年度に開始しました。臨床的価値の訴求により市場浸透率をさらに高め、標準的な治療法として確立させることを目指します。また、浸透率の低かった欧州においてはガイドライン*3の推奨を獲得し、拡大への弾みをつけています。・中枢性睡眠時無呼吸症の治療用機器を手掛けるRespicardia, Inc.、及び睡眠時無呼吸症の在宅検査・診断ソリューションを手掛けるItamar Medical Ltd.の2社で、心疾患患者が併発することの多い睡眠時無呼吸症の診断や治療のためのデバイスの販売を拡大しています。米国においては閉塞性睡眠時無呼吸症の治療薬の承認により、疾患の認知度が向上しItamarの診断機器に追い風となりました。また米国睡眠医学会の中枢性睡眠時無呼吸症の治療ガイドライン*4にRespicardiaの製品が推奨治療として掲載され、エビデンスの確立が順調に進んでいます。当該2社の事業拡大と既存の心疾患関連事業とのシナジー創出により、確実な成果の結実を目指します。*3 2022 ESC Guidelines for the management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death*4 Treatment of central sleep apnea in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline Ⅱ 「住宅」セグメント●事業の方向性:国内住宅事業は継続的な収益力強化に加え、中期的な成長機会を探索。海外住宅事業は独自のビジネスモデルによる展開を通じた持続的成長を追求 ●注視する事業環境:国内の戸建住宅、不動産関連の市場動向、米国・豪州における景気や金利政策の住宅需要への影響 <経営環境・経営課題>国内の住宅市場では、住宅ローン金利が上昇傾向にあることに加え、資材価格高騰や労務費の増加による建設コストの上昇や、物価上昇による消費マインドの低下が懸念されており、住宅需要について注視が必要な状況が続いています。このような状況の中、引き続き社会課題の解決と、お客様満足のさらなる向上に取り組んでいます。DXを活用したオンライン集客・紹介活動の拡大等による集客におけるビジネスモデルの転換や、都心・都市・近郊それぞれのエリア特性・お客様のニーズに合わせたサービスの展開、高付加価値化へのさらなるシフトを通じ、引き続き高品質な住まいの提案に努めていきます。また、気候変動に伴う自然災害の多発化、脱炭素化の加速、環境への配慮による省エネルギー性能の高い住宅の需要の高まり等、住宅を取り巻くニーズは変化し続けており、環境関連においても積極的に取り組みを行っています。2025年9月より自社製品由来の再生可能エネルギー電力及び環境価値を活用し、住宅の生涯CO2収支ゼロを目指す戸建新商品「earth-tect(アーステクト)」の販売を開始しました。2025年度には、高断熱化、省エネルギー、太陽光発電等の創エネルギーによりエネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ以下となる住宅であるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の比率が93%に、ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の比率が83%に達しており、ZEH基準を満たす住宅の建築を推進しています。海外の住宅市場では、経済政策の動向や為替変動、住宅価格の高騰、住宅ローン金利高止まりの影響等について注視が必要な状況が続いていますが、供給不足を背景とする潜在的な需要は高く、今後も事業展開の拡大を行っていく必要があると考えています。 <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上ⅱ サステナビリティ活動の推進・国際的イニシアチブ「RE100」が主催する「RE100 Leadership Awards 2025」において、旭化成ホームズ㈱が「RE100 changemaker」を受賞。2024年「RE100 Enterprising Leader」受賞に続き、2年連続の受賞・「産業の発展と地球環境との共生」を目指した企業、行政、市民が一体となった顕彰制度である、フジサンケイグループ主催の地球環境大賞において、旭化成ホームズ㈱が「第34回地球環境大賞 国土交通大臣賞」を受賞・環境貢献度の高い断熱材「ネオマフォーム™」の拡販ⅲ レジリエンスの強化・耐震性、耐火性の高い住宅の提供や防災科学技術研究所とのリアルタイム地震被害推定システム研究など、安心できる住まいを実現させる取り組みの推進・一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会主催の「第12回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2026」において、旭化成ホームズ㈱が品川区と連名で応募した『都心高層マンションにおける“真の防災力”への挑戦』の取り組みが「最優秀賞」を受賞・同アワードにおいて、旭化成ホームズ㈱の、“重鉄の邸宅「earth-tect~Resilience&Green~」 トータルレジリエンスと脱炭素化への取り組み”が「優秀賞」を受賞ⅳ 海外事業の展開加速・豪州事業大手戸建住宅会社であるNEX Building Group Pty Ltdを中心に、同社の創業の地であるニューサウスウェールズ州以外にも新たなビルダーの買収を通じてエリアを広げ、現在は計5州で事業を展開しています。引き続き生産性・収益性向上に向けた業務プロセスの高度化や、請負事業のさらなる拡大、建売事業・土地開発事業の成長の加速を通じ、拡販による各エリアのシェアアップでの利益拡大を目指します。またビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない多様な価値提供による競争優位性の高いビジネスモデルを確立させることで、豪州における注文住宅の建築請負及び分譲住宅の販売においてトップブランドを目指します。・北米事業北米のホールディングカンパニーであるSynergos Companies LLCは、建築部材を手掛けるErickson Framing Operations LLCやFocus Companies LLC、基礎・電気・空調設備工事を行うAustin Companies LLC、配管工事を行うBrewer Operations LLCなどのサブコンストラクターを中心に、建築工程の中核となる業種を統合し、一元管理を通じて工期短縮・品質管理向上のソリューションを提供する「Synergosモデル」を推進することで、米国の建築業界に施工の効率化という新たな価値を生み出し、高品質な住まいの提供に貢献しています。また住宅需要の高いアリゾナ州、ネバダ州、フロリダ州に厳選して地域展開を図り事業規模を拡大しています。今後さらなる成長を追求すべく、M&Aなどによる「Synergosモデル」強化・エリア拡大を推進していきます。 Ⅲ 「マテリアル」セグメント●事業の方向性:「カスタマーオリエンテッド型」「ソリューション型」事業の拡大による持続的成長と他社との連携や外部リソースを活用した事業価値の最大化 ●注視する事業環境:DX・AI技術を支える半導体の市場成長、グローバルEV市場動向、米国の政策動向等の地政学的リスク、水素など低炭素社会実現に向けた各国のエネルギー動向 <経営環境・経営課題>本セグメントにおいては、事業ポートフォリオの転換を最も重要な経営課題と認識し、次の成長分野への重点的な投資を行う一方で、既存アセットを最大活用することでのキャッシュ創出や事業の構造改革を推進しています。なお2025年4月より、本セグメント内の事業をエレクトロニクス、カーインテリア、エナジー&インフラ、コンフォートライフ、パフォーマンスケミカル、エッセンシャルケミカルという6つの事業分野に分類し、運営しています。これらの事業において、ビジネスモデルや市場の状況、競争優位性等の事業環境は、製品群によって大きく異なるため、各事業が置かれている環境認識に基づいた経営課題に対して取り組んでいます。本セグメントにおける経営環境は以下のとおりと認識しています。ⅰ エレクトロニクス事業・生成AIの普及やデータセンター拡大に伴う、先端半導体技術のニーズの高まり・通信技術の高度化等、新たなライフスタイルによる様々なセンシングニーズの高まり ⅱ カーインテリア事業・自動運転の普及に伴う、車室空間の「居心地」に対するニーズの多様化・デザイン性と機能性を両立し、かつ環境負荷の低い素材へのニーズの高まり ⅲ エナジー&インフラ事業・主要国における電気自動車を含む環境対応車の需要動向、旺盛なエネルギー需要等に伴うESS(エネルギー貯蔵システム)の需要拡大、それらに向けたリチウムイオン電池需要の高まり・米国の規制強化による食塩電解プラントのアスベスト隔膜法からイオン交換膜法への転換の動きや、インドや東南アジアでの電解プラントの新増設等に伴う、イオン交換膜需要の高まり・低炭素社会に向けたクリーン水素製造ニーズの立ち上がり ⅳ コンフォートライフ事業・欧米向けジェネリック医薬品製造拠点としてのインドや、高齢化が進展する中国など、グローバルな医薬品市場の成長に伴う医薬品添加剤需要の安定成長 ⅴ パフォーマンスケミカル事業・「CASE」と呼ばれる自動車業界の変革、次世代モビリティの進展と、それに伴う部材の技術革新や新たなニーズの高まり・低炭素社会の実現に向けた電気自動車等の環境対応車の需要拡大や資源の有効活用など、自動車業界における環境負荷低減の動き ⅵ エッセンシャルケミカル事業・中国の設備増強と内製化進展による石油化学製品のアジア輸出需要の変化、またこれに伴う日本国内の石油化学コンビナート再編の動き・カーボンニュートラルの動きを受けた、石油化学関連製品の中長期視点でのサステナビリティ対応の加速、脱炭素に貢献する技術やソリューションに対するニーズの高まり <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ エレクトロニクス事業■ 価値提供の方向性:カスタマーオリエンテッド型による高付加価値素材の提供・最先端、次世代半導体市場のマーケットリーダーをキーカスタマーとして的確に捉え、市場ニーズを見越した製品設計と開発で、業界でのデファクトスタンダードとなる製品を創出・ニッチな技術をさらに磨き、最先端技術を支える高機能材料、部品を展開■ 主な取り組み・電子材料、基板材料事業:AI需要拡大による、最先端半導体パッケージ及びAI向けサーバー等の基板の市場拡大を支える高機能材料の展開・電子部品:スマートフォンや車載市場において競争力のあるセンシングデバイス・ソリューションの展開、ミリ波レーダー等を活用した新規分野開拓・半導体周辺における他社との戦略的アライアンス、M&Aによる非連続成長の検討 ⅱ カーインテリア事業■ 価値提供の方向性:カスタマーオリエンテッド型の商品ラインアップ、対応力による提案力強化・キーカスタマーへの横断的なマーケティング強化■ 主な取り組み・Sage Automotive Interiors, Inc.の事業を軸にして、ファブリック、合成皮革、さらに環境特性に優れたスエード調人工皮革「Dinamica®」を加えた幅広い素材ラインアップと高いデザイン力を融合させた内装材プラットフォームの構築・地域、素材ごとの最適な生産供給体制構築による、コスト競争力の強化・環境に配慮した製法による高級感ある新素材、新製品の開発 ⅲ エナジー&インフラ事業■ 価値提供の方向性:独自の技術・知見を活かしたソリューション提供・これまでに培った技術や知見などの事業基盤を活かした、旭化成グループが目指す2つのサステナビリティ(「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」)の好循環の実現への貢献■ 主な取り組み・グリーンな素材とソリューションの提供(水素関連の事業化推進、CO2ケミストリーの多面的展開)・蓄エネルギー分野の深耕(セパレータ事業の成長追求、知見を活かした新しい事業展開)・イオン交換膜法食塩電解事業を起点とした製造型リカーリングビジネスの拡充と高度化 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題① 事業上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」に記載の項目に加えて、以下の事業上の課題があります。 Ⅰ 「ヘルスケア」セグメント医薬品や医療機器等の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。また新薬の研究開発については、期間が長期にわたることに加え、承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難であり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、旭化成グループでは医薬品と医療機器の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、ライセンス導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。加えて、大規模自然災害・パンデミック・地政学的問題などによる原材料・部品の不足、調達リードタイムの長期化、調達コストの増加の影響を受ける可能性があります。近年では欧州を中心とした法規制の強化が進み、規制に準拠した品質管理を徹底する必要があります。旭化成の医薬品、医療機器を必要とする患者や医療従事者へ安定的に製品を供給するため、原材料や製品在庫の管理、サプライヤーとの関係強化などサプライチェーン強化を進めていきます。 Ⅱ 「住宅」セグメント国内の住宅市場では、税制の動向や地政学的問題等の発生によりサプライヤーからの部材調達に影響を受ける場合があります。旭化成は、発注情報の早期確定やスペックの見直し、内製化、複数社からの購買等リスク軽減を検討し対応していきます。北米の住宅市場では、高水準で推移する住宅ローン金利や、関税政策、インフレの懸念などが住宅着工に影響を与えていますが、供給不足を背景とする潜在的な需要は高いため、厳しい市場環境下においても、中長期的な成長を見据え、新規顧客の開拓に注力するとともに、施工の効率化といった新たな価値を創出し、高品質な住まいの提供に貢献します。豪州の住宅市場では、住宅価格の上昇や住宅ローン金利の高止まりはあるものの、事業環境は改善傾向にあり、また持続的な人口増加により中長期にわたり住宅需要が期待されます。このような状況の中、豪州事業ではビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない多様な価値提供による競争優位性の高い事業モデルの確立に引き続き注力していきます。また、カーボンニュートラルに向けた対応や脱炭素等の環境意識が高まる中、対応が遅れた場合は競争優位性や企業ブランド・製品ブランドへの影響が考えられます。旭化成ホームズ㈱は、事業特性に合わせたマテリアリティを特定し、4つのテーマにまとめています。テーマの1つである「With Environment 豊かな自然環境の保全とより良い環境の創造」を目指し、サステナビリティへの取り組みを推進しながらビジネスを成長させることで、持続可能な社会貢献に取り組んでいきます。 Ⅲ 「マテリアル」セグメントⅰ エレクトロニクス事業情報通信機器に用いられる電子材料や電子部品のニーズは、AI需要の高まり、デジタルトランスフォーメーションの進展や次世代通信の普及に伴う情報通信高度化の需要が益々拡大することに伴い、年々増加しています。特に自動車の電動化がもたらす変化として、車両の高機能化だけでなく、充電設備の整備も急速に進められており、様々なセンシングデバイスの高度化・高信頼性化が求められています。半導体のニーズが益々拡大する一方で、中東情勢の悪化や米中関係の動向によるサプライチェーンの混乱、分断がもたらす影響を的確に捉えて、対応を進めていきます。特に世界各国の半導体ファウンドリやOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)を活用する分業体制が業界全体として展開されているため、半導体製造に関わるサプライチェーンの動向に影響を受ける可能性があります。半導体生産に必要なレアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの原材料不足や、大規模災害・パンデミック・地政学的問題などの影響を受けての需要変化による製造リードタイムの長期化など、電子部品事業において環境変化を見通しにくい状況となっています。そのような中で、半導体製造関連の主要サプライチェーンの状況(特に米国、中国、台湾)の動向をモニタリングし、リスクの発生状況を常時評価し、迅速に対応していきます。今後も市場動向を注視しながらデジタル社会で求められる最先端のニーズを捉えて、電子材料と電子部品の双方を有するユニークさを活かし、特徴ある材料・部品、ソリューションを提供していきます。 ⅱ カーインテリア事業車室空間には、これまでにない快適性やデザイン性に加えて、リサイクル原料の使用、車体軽量化による自動車燃費の向上、電動化等、環境負荷低減に繋がる製品が求められています。環境特性に優れたスエード調人工皮革「Dinamica®」は、需要増加に対応するため供給能力を増強するとともに、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化し、米国Adient plcのファブリック事業や、中国の合弁会社のパートナーであるOmnova社の塩化ビニル樹脂系合成皮革事業との統合効果を発現させていきます。今後も顧客要求に迅速に対応するべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへのアプローチやデジタルマーケティングを継続するとともに、価値提供領域をカーシートに加えて天井やドア等の車室空間全体に拡大することで、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。本事業は世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。事業運営は、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の影響によるサプライチェーンの混乱、及び米国関税政策や中国景気の減速に伴う世界経済の成長鈍化等、年間を通じて見通しづらい環境下にあります。そのような中で各国の自動車関連市場を注視するとともに、サプライチェーンと在庫管理を強化し、変化する需要に柔軟に対応していきます。 ⅲ エナジー&インフラ事業リチウムイオン電池用セパレータは、脱炭素化に伴う電気自動車普及を背景に中長期的な需要拡大が見込まれる一方、同市場の成長速度鈍化に伴う自動車メーカーや電池メーカーの投資計画見直しにより、需要が想定を下回る可能性があります。一方で、旺盛なAI需要に伴う電力需要の急拡大、再生可能エネルギーの広がりからESSといった新たに急成長する用途があらわれています。旭化成は、北米を中心としたサプライチェーンの現地化要請に対応するため、北米に生産拠点を先行して構え、顧客と強いパートナーシップを結びつつ、安定的かつ高水準の品質を強みに、様々な顧客ニーズに対応していきます。また、中国・韓国メーカー等との価格競争・技術競争の激化、原材料・エネルギー価格の変動、地政学的リスクや各国政策動向の影響を受ける可能性を考慮し、米国、日本での塗工能力増強を図りつつ、生産技術の大幅な改良を図り、コスト競争力の高い製品を追求していきます。イオン交換膜法食塩電解は、米国の規制強化によるアスベスト隔膜法プラントからのプロセス転換や、インド・東南アジアでの電解プラントの新増設等で需要が高まるなか、競合他社の能力増強による競争激化が見込まれます。さらなる事業価値向上に向けて、Recherche 2000 Inc.の食塩電解用モニタリング装置・システムから、「モノ売り」とサービスを融合させたソリューションの提供を加速させていきます。本事業は、各国の規制・環境問題や関税政策、供給制約の顕在化等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます。 ② 財務上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 旭化成グループ全体の経営方針・経営戦略等」 <経営方針・経営戦略> ⅳ 財務・資本政策の項目をご参照ください。
事業等のリスク
3 【事業等のリスク】旭化成グループはヘルスケア、住宅、マテリアルの3つの領域にわたる多様な事業を有し、幅広い分野でグローバルに事業活動を展開しています。このような事業特性のもと、旭化成グループの経営や事業活動に影響を与える不確実性への対応力を高め機会の創出につなげるため、領域や事業ごとの特性を踏まえた活動とグループ横断的な活動を連携させ、グループ一体となったリスクマネジメント活動を展開しています。なお、本項における将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、旭化成グループが合理的であると判断したものです。 (1) リスクマネジメント体制旭化成グループでは、リスクマネジメントの国際標準であるISO31000の考え方やプロセスに基づき、全社的リスクマネジメント体制を整備しています。取締役会の監督のもと、リスクマネジメント全体の責任者を社長が担い、リスク・コンプライアンス担当役員がこれを補佐しています。リスク・コンプライアンス担当役員は、社長の指示のもとリスクマネジメント活動を推進するとともに、個別のリスク対策について各部門長(スタッフ部門担当役員・事業部門長等)に対して指示・支援を行っています。社長が委員長を務めるリスク・コンプライアンス委員会を設置し、グループ横断的なリスクマネジメント活動の協議及び情報共有等を行っています。同委員会における議論や諮問結果は、社長によるリスクマネジメントに関する判断や意思決定を支えています。また、リスク・コンプライアンス担当役員のもとにリスクマネジメントチームを設置しています。同チームは、各部門によるリスク対策の推進活動の支援とモニタリング、スタッフ部門と事業部門の組織間連携強化を推進しています。これらのリスクマネジメントの体制や活動の状況について、定期的に取締役会に報告を行い、取締役会はグループ全体のリスクマネジメントの有効性を評価したうえで、必要な指示・監督を行っています。 <リスクマネジメント体制> (2) リスクマネジメントの活動・サイクル旭化成グループでは、スタッフ部門によるグループ横断的な活動と各事業部門における活動を組み合わせたリスクマネジメントを実践しています。各事業部門では、自らの事業特性や事業環境を踏まえ、リスクの洗い出し及び分析・評価を行うリスクアセスメントを実施しています。これらの取り組みを通じて、各事業の特性から生じ、事業経営や事業計画の達成に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクを「事業重要リスク」として特定しています。また、特定した事業重要リスクについて、事業計画の中でリスク対策の推進計画を策定、対応状況を管理し自律的なリスクマネジメントを実施しています。スタッフ部門は、事業部門における活動を踏まえつつ、グループ経営に重大な影響を及ぼす可能性があり、グループ全体または複数事業に関わるリスクを「グループ重大リスク」として整理しています。グループ重大リスクは取締役会の決議をもって決定され、スタッフ部門が主導して全社横断的にリスク対策を推進しています。事業重要リスク及びグループ重大リスクの双方について、各リスクを取り巻く環境の変化や活動の進捗状況等を踏まえたマネジメントレビューが定期的に行われ、指示や改善がなされることで、継続的なリスクマネジメントのPDCAサイクルを運用しています。これらの活動を通じて、スタッフ部門と事業部門の役割分担を明確にしつつ、相互の情報共有や連携を図りながら、グループ全体のリスクマネジメントの実効性向上と高度化に取り組んでいます。 リスクマネジメントのPDCAサイクル(グループ重大リスクと事業重要リスク) (3) 旭化成グループ全体に係るリスクグループ重大リスクとして設定したリスクについて① 国内外の生産拠点における事故発生リスク・環境安全に関わる法規制に関するリスク旭化成グループは、国内外に広く生産拠点を展開しており、環境事故、保安事故、労働災害等の事故の発生や、環境安全に関わる法規制等の違反が発生した場合、事業活動の停止や社会的信頼の低下など、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。旭化成グループでは、安全な操業の継続及び法規制遵守を、社会からの信頼、従業員及び地域社会の安全、環境への配慮といった価値を守るための最重要事項と位置付けています。この認識のもと、重篤な労働災害や保安事故の防止に向け、発生した事故の教訓を生かし、不安全行動による重篤災害撲滅を目指したLSA(ライフセービングアクション)活動の推進や、工場等の機械のリスクアセスメント実施における専門技術者の育成及び工場設備等の点検強化、各生産拠点におけるプロセス安全技術の維持を目的とした保安防災伝承活動の展開、防消火技術の向上等を進めています。また、環境安全に関わる法規制等の遵守を徹底するため、関連法規制の動向を定期的に把握・更新するとともに、専門家等の第三者による確認を経た上で社内へ周知し、チェックシート等を活用して現場における遵守状況を確認できる仕組みを整備しています。これらに加え、人財育成を通じた安全文化の醸成を図り、今後も事故の防止及び法規制遵守の徹底に向けた取り組みの全社的な定着と高度化を進めていきます。 ② 国内外の品質不正リスク(含 法規制・認証等に関するリスク)製品の設計・検査の不備、不適切な顧客対応や報告が行われた場合や、品質保証に関わる法規制・規格等の遵守不備があった場合、リコール、旭化成ブランドに対する社会的信頼の喪失、及び製品の生産・流通の停止等により、旭化成グループの業績に影響が生じる可能性があります。旭化成グループでは、領域ごとに様々な製品を提供しており、それぞれの製品の品質を確保することは、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの方々の信頼をいただくために最重要と認識しています。品質不正の発生を防ぐため、各拠点の品質保証活動の健全性を確認する点検、経営層向け品質経営セミナー、現場従業員の品質意識向上を目的として品質担当役員が現場を訪問し双方向でコミュニケーションをするタウンホールミーティング、及び製品やサービスに関わる従業員全員が品質リスクを理解し日々の業務を行うための品質教育を、国内外の各拠点で実施しています。また、法規制等の遵守を徹底するために、関連法規等の内容を定期的に更新するとともに、適宜、専門家等の第三者による確認も経たうえで社内へ周知し、チェックシート等を活用し、現場従業員がその遵守状況を確認できる仕組みを構築・運用しています。旭化成グループにおいて様々な製品に使用している化学品の法規制等の管理を徹底するためのシステムの運用も実施しています。 ③ 経済安全保障・グローバルサプライチェーンに関するリスク旭化成グループは、事業ごとに原材料や部品、施工業者、物流経路、倉庫、販売先に至るまで、国内外で多様なサプライチェーンを構成しています。そのため、経済安全保障に関する世界各国の政策動向が事業運営やサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があり、また、世界中で発生する自然災害、保安事故、人権問題、地政学的問題、経営破綻等による、取引先との取引回避や取引先の機能不全に起因してサプライチェーンが途絶する可能性があり、主なリスクとして以下のものを認識しています。 ・ 経済制裁・輸出管理規制の強化等の経済安全保障リスクや地政学的問題による企業活動に関するリスク旭化成グループは、製品の輸出や海外における現地生産等、幅広く海外で事業展開をしており、安定的な国際通商のメリットを享受しています。そのため、何らかの理由により二国間あるいは多国間の通商環境や地政学的情勢が変化することにより、海外の会社との取引や出資、その他事業活動に影響を受けるリスクがあります。特に、米中関係、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、イラン情勢等、近年国際関係の緊張が高まっており、これに伴って日本や諸外国において、経済安全保障の観点から経済制裁、輸出管理規制、外国直接投資規制を強化する動きが続いています。これらの規制に対応することにより、取引先との取引の停滞・中断、資金の移動の遅延・停止、事業遂行の遅延・不能等により、業績に影響を及ぼすなどのリスクがあります。地政学的問題や法規制の動向には常に注意を払っており、経営層及び事業部門・スタッフ部門の責任者や担当者への情報共有を通じてグループ全体の感度向上を図るとともに、対応部署の明確化を通じて社内体制強化の検討も進めています。また、適時に規制内容を理解することや関係当局に事前に相談することに加えて、経済制裁については外部の顧客スクリーニングシステム等を利用して慎重な取引審査を行うなどにより、適切な対応に努めています。 ・ バリューチェーン上の人権課題に関するリスク近年、紛争やマイノリティの弾圧、移民や外国人労働者の不当な扱い、様々なハラスメント(パワーハラスメント、セクシャルハラスメント他)など、国内外において人権を脅かす事象が多発しています。旭化成グループの事業活動においても、バリューチェーン上における人権課題の発生、特に人権課題への不適切な対応に起因する取引停止、法令違反、旭化成グループに対する社会的信頼の喪失等は、企業価値に大きな影響を及ぼすリスクとなり得ます。そこで、旭化成グループは、人権に関する様々な負の影響を適切に防止・是正するため、「人権リスク発現の予防」と「発現したリスクへの対処」の両面に取り組んでいます。予防の観点では、外部のスクリーニングシステム等を活用した取引先のリスク把握や、人権リスクの分析による負の影響の防止・軽減に向けた取り組みを進めています。また、ハラスメントのない職場づくりに向けた施策の強化に加え、法制化されたカスタマーハラスメント防止のために講ずべき措置についても整備を進めています。リスク発生時の対応として、人権侵害やその可能性を従業員が認識した時に、迅速に経営層に情報が伝達されるよう報告ルートを制定し運用をしています。今後も関係する部門が連携し、実効性のある人権尊重の取り組みを継続していきます。 ・ 原料・資材の調達リスクサプライチェーンが各国・地域の法規制の動向や突発事象などにより影響を受ける場合に、旭化成グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。旭化成グループではサプライヤーの選定におけるリスク評価や監査の実施、サプライヤー及び販売先のモニタリングなどを通じてリスクを低減させることに取り組んでいるほか、外部調達を取り巻くリスク環境の変化についても継続的に把握・分析しています。これらを踏まえ、主要製品・事業における原材料の調達ルートの多様化や適正な水準の在庫の確保を通じて、安定操業に向けて取り組んでいます。また、強靭で持続可能なサプライチェーンを維持するための体系的かつ継続的なサプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)の強化に向けて、グループを横断したリスクの洗い出し、分析・評価及び対策の推進に取り組んでいます。サプライチェーンに関連する各部門(製造、経営企画、営業、技術開発などの各部署)と連携しながら、実効性のあるリスク対策の実施に取り組んでおり、進捗状況を定期的にモニタリングし、継続的に見直しを行うことでSCRMを推進しています。 ④ サイバーセキュリティ・技術情報管理に関するリスク・ サイバーセキュリティ、通信インフラに関するリスク昨今、サイバー攻撃の増加・巧妙化が進む中で、サイバーセキュリティ対策が不十分であった場合は、システム停止により事業継続が困難になる可能性があります。安心・安全・安定したIT基盤の運用は経営の大前提であり、旭化成グループは情報セキュリティ対策を重大な経営課題と認識し、サイバー攻撃の検知・対応ツールの強化、インシデント発生時の迅速で漏れのない情報フローの構築、事業継続・復旧体制の整備を推進するほか、eラーニングやメール訓練等による従業員のセキュリティ意識の向上施策を実施しています。引き続き、経営陣の関与のもとサイバーセキュリティ対策に関する継続的な議論を行い、グループ全体におけるグローバルでのセキュリティ対策の高度化及び従業員のセキュリティ意識向上に向けた施策を推進していきます。 ・ 技術情報流出リスク旭化成グループは、独自の技術情報やノウハウを競争力の源泉として事業を展開しており、サイバー攻撃や不正アクセス、従業員や取引先関係者による不適切な取扱い等により、技術情報が第三者に流出するリスクがあります。当該リスクが顕在化した場合には、競争優位性の低下や事業戦略の遂行への支障、顧客や取引先からの信頼低下、ブランド価値の毀損等を通じて、業績及び企業価値に影響を及ぼす可能性があります。このため、技術情報の区分・管理ルールの整備やアクセス制御の厳格化等の流出防止対策を講じるとともに、対応状況をグループ全体で把握・評価する一元的なモニタリング体制を構築しています。あわせて、従業員への教育・啓発活動を継続的に実施するとともに、システムを活用した機密情報へのアクセスや持ち出しの監視の高度化及び対象範囲の拡大を進め、管理体制の強化に取り組んでいます。 ⑤ 自然災害やパンデミック、テロ、紛争に関するリスク地震や風水害等の大規模な自然災害が発生した場合、従業員の負傷、製造拠点の建物や設備の被害、原材料や製品の物流途絶等により、事業活動が中断する可能性があります。各製造拠点では、リスク想定を踏まえた減災計画及び緊急時対応計画を策定し、継続的に訓練を実施しています。また、本社地区においては、大規模地震への備えとして対策本部体制を整備し具体的な活動を明確にするとともに、定期的な訓練を通じて実効性の確保に努めています。感染症の世界的流行が再び発生した場合、従業員の健康被害や出社・移動制限等による人的リソースの不足、サプライチェーンの混乱等により、事業の継続に影響を与える可能性があります。この備えとして、新型コロナウイルス(COVID‑19)対応の教訓を踏まえた対応方針を整備するとともに、各拠点で防疫資材を備蓄しています。海外における武力衝突やテロ等の有事が発生した場合、現地従業員や出張者の安全に加え、拠点の操業に影響を与える可能性があります。有事発生後の従業員の安全確保及び事業継続のために、有事の切迫度に応じた対応方針を定めるとともに、組織的な初動対応のための体制や役割分担を明確にしています。これらのリスクに共通する対策として、災害や有事の発生時においても迅速な状況把握や意思決定が行えるよう、情報連絡体制の強化に取り組んでいます。具体的には、対策本部を中心とした情報収集・共有体制を整備するとともに、通常の通信手段が制約を受けた場合にも対応できるよう、衛星電話の整備等による通信手段の複線化を進めています。 下記の「M&Aに関するリスク」と「気候変動に関するリスク」については、旭化成の経営に重大な影響を及ぼすリスクとして取締役会でモニタリングしています。 ① M&Aに関するリスク旭化成グループは、事業ポートフォリオの進化にあたっては、成長投資と構造転換の両輪を回すことが重要と考え、事業投資、新規事業の創出や事業ポートフォリオの転換の手段として、国内外におけるM&Aを通じた事業展開を行っています。ZOLL Medical Corporation(2012年度)、Polypore International, Inc.(2015年度)、Sage Automotive Interiors, Inc.(2018年度)、Veloxis Pharmaceuticals A/S(2019年度)、Calliditas Therapeutics AB(2024年度)、Aicuris Anti-infective Cures AG(2026年度)などの大型買収や近年の「住宅」セグメントや「ヘルスケア」セグメントを中心とした買収などにより、のれん及び無形固定資産残高は増加傾向にあります。M&Aの結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどによって合理的に算定された価額を基礎として算定しており、事業計画等の不確実性を伴う仮定が反映されています。そのため、事業計画等において初期に期待した投資効果が発現しなかった場合や関係会社の経営が悪化した場合、被買収企業との事業統合が遅延した場合など、のれんや無形固定資産の減損等により旭化成グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。旭化成グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンス(詳細調査)を慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することで、リスクの低減に努めています。しかし、過去の大型買収が海外での新規市場や成長市場に関する案件であり、想定外の事業環境の変化への対応を誤ると、投資額の回収が困難となるリスクを抱えています。業界動向を見通すことが難しい事業については、より一層の精査をすることやリスクをより慎重に見積もることで対処していきます。 ② 気候変動に関するリスク旭化成グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識し、気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行っています。詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 [個別重要課題] (1)気候変動」の記載をご参照ください。 上記以外のリスクについて上記に記載したリスク以外にも、旭化成グループの事業運営全体に係るリスクに対して日々の事業活動の中でリスク低減に努めており、主なリスク項目は以下のとおりです。 ① 通商に関するリスク旭化成グループは、原材料の購入や製品の輸出、海外における現地生産等、幅広く海外で事業を展開し、国際貿易や資金決済に関する二国間あるいは多国間の協定や枠組みのメリットを享受しています。これらの協定や各種枠組み等の変更や新規規制の導入などにより、関税の増加、通関の遅延・不能、資金決済の遅延・不能が生じ、代金回収や事業遂行の遅延・不能、業績悪化等が発生するリスクを負っています。旭化成グループでは、適時に規制内容を把握することや、関係当局に事前に相談し、対策を講じることによって、これらのリスクの低減に努めています。米国の関税政策については、引き続き動向が流動的であるものの、米国に所在する旭化成グループの現地法人の原材料調達コストの上昇に繋がる懸念があります。コスト上昇分については、顧客との対話により売値への転嫁に努めるほか、必要に応じてサプライチェーンの変更などの検討を進めます。また、日本やその他の国に所在する旭化成グループから米国への輸出については、米国の顧客の関税負担増加により需要が減少するリスクがあります。そのため、グローバルに事業戦略を適宜見直していくほか、価格競争の影響を受けにくい高付加価値品の研究、開発を進めます。また、グループ会社間の国際的な取引価格については、旭化成グループ税務方針に基づき、日本国政府及び相手国政府の移転価格税制を遵守していますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や、協議が不調となった場合に二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。そのため、重要性の高いグループ会社間取引については、事前確認制度の活用、あるいは、外部専門家の意見も参考にしながら、各国の移転価格税制を踏まえた独立企業間価格を設定しています。 ② 事業競争力に関するリスク旭化成グループは、「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の3つのセグメントにおいて、付加価値の高い製品・サービスを提供していますが、類似の製品や技術による競合企業のキャッチアップ、新たな競合企業の参入等によって競争環境が激化することや、デジタル技術や脱炭素化に貢献する技術等急速な技術革新による産業構造の変化、急激な需要構造・市場構造の変化などにより、旭化成グループの各事業の競争力を損なう可能性があります。旭化成グループでは、競合製品の競争力や産業構造の変化をタイムリーかつ的確に見通すことに努めるとともに、製品やサービスの絶え間ない差別化や模倣困難なビジネスモデルの構築、知的財産等による高い参入障壁を設けることにより、これらのリスクの低減に努めています。 ③ 市況変動によるリスク・ 原油・ナフサ価格変動リスク旭化成グループは、原油やナフサを原料とした石油化学製品の製造・販売事業を展開しています。また、各原料市況並びに需給バランスから固有の市況を形成しており、その変動は当該事業や誘導品からなる旭化成グループの各事業に影響を及ぼします。特に、事業規模が大きいアクリロニトリル事業は市況の変動の影響が大きいため、販売価格のフォーミュラの見直し等、収益の安定化に努めています。 ・ 為替変動リスク旭化成グループは、輸出入及び外国間等の貿易取引において、外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動による影響を受けます。そのため、取引においては、先物為替予約等によるヘッジ策やCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の活用による、安定的かつ効率的な資金活用を目指しています。旭化成グループは、収益の多くが外貨建てであることに加え、旭化成の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、旭化成グループの業績にマイナスのインパクトを与えます。旭化成の試算では、米ドル・円レートが1円変動すると連結営業利益に年間15億円の変動をもたらします。 (4) 各セグメントに係るリスク「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の各セグメントでは、事業上の課題やリスクへの対策検討を実施するなかで事業重要リスクのPDCA管理も実施しています。各事業の課題やリスクに関する詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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