協和キリン(4151)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて
3【事業の内容】 協和キリン及び協和キリンの関係会社は、協和キリン、子会社44社、持分法適用会社14社及び親会社1社(キリンホールディングス株式会社)により構成されており、医薬に関係する事業を行っています。その主要な事業の内容及び当該事業における協和キリンと主要な関係会社の位置付け等は、次のとおりです。 <主要な事業の内容> 協和キリンは、医療用医薬品の製造及び販売を行っています。関係会社については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載のとおりです。 (注)本報告書において「協和キリングループ」という場合、特に断りのない限り、協和キリン及び連結子会社(44社)を指すものとしています。 <事業系統図>(注)Orchard Therapeutics Limitedにつきましては、2025年7月11日に解散及び清算を決定し、2026年1月20日に清算結了しました。
有価証券報告書(2025年12月決算)の情報です。
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年12月31日現在)において協和キリングループが判断したものです。(1)経営の基本方針「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」を経営理念としています。この経営理念に謳う「新しい価値」を社会と共有できる価値(CSV:Creating Shared Value)と捉え、社会課題への取組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現するCSV経営を実践しています。また、協和キリングループで働く全ての人々が、行動の拠り所となる考え方や姿勢を示す中心概念の“Commitment to Life”と3つのキーワード「Innovation(イノベーション)」「Integrity(インテグリティ)」「Teamwork/Wa(チームワーク/和・輪)」で構成される価値観を、全員で共有、実践することで、社会から信頼される企業であり続けることを目指しています。 (2)ビジョン協和キリングループは、2030年に向けたビジョン「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」を掲げています*1。*1 マテリアリティの見直しを踏まえ、「医薬品にとどまらない」という記載を、「病気と向き合う人々のニーズを基点とした新たな価値を共創することで」という包括的な表現に更新しました。 (3)Vision 2030 and Beyond:中長期構想大きな環境変化の中で、Vision 2030の達成後の継続したさらなる成長を見据え、“革新的なLife-changingな価値の創出”、“患者さんへのLife-changingな価値の提供”、“Super Teamによるオペレーショナルエクセレンスの追求”という3つの柱からなる中長期構想を策定しました。中長期構想は、2030年を超えて達成したいゴールと、そこに対する成長の道筋を示すものであり、未来の不確実性に備えるための羅針盤でもあります。患者さん中心の価値創出を基盤に、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、世界中の病気と向き合う人々に笑顔をもたらす挑戦を続けます。 革新的なLife-changingな価値の創出・先進的抗体技術と造血幹細胞遺伝子治療の強みを活かし、研究開発を加速する・戦略的投資による新たなパイプライン、収益機会の獲得を狙う 患者さんへのLife-changingな価値の提供・実績のあるグローバルにおけるコマーシャル基盤をさらに強化していく・患者さん及び患者団体との密接なエンゲージメントを継続 Super Teamによるオペレーショナルエクセレンスの追求・戦略を力強く実行するケイパビリティを備えたSupur Teamへさらなる進化・AI/DXによるオペレーションモデルの転換・プロセスのシンプル化とリソースの集中を進め、アジャイルに動き続ける (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題ビジョンを達成するためには、戦略そのものと、その戦略を実行できるTeamをつくることが重要であるというのが協和キリングループの考え方です。 戦略として“Story for Vision 2030”を、Teamづくりとして“KABEGOE Principles”を掲げ、これらを両輪としVision 2030実現を目指します。戦略を推進していく人・組織に期待する行動を具体的に示す“KABEGOE Principles”は、製薬企業で働くことに対する社員の思いを紡いでまとめた”私たちの志”と”Story for Vision 2030”をベースに、徹底的に議論して作り上げたものです。私たちの価値観に紐づけて全11のPrinciplesを掲げています。 1.Story for Vision 20302021年より、Vision 2030の実現に向けて活動を推進してきましたが、世界中での医療費抑制圧力の強まり、新薬開発難度の高まりといった製薬業界にとって厳しい大きな環境変化がある中、Vision 2030の実現をより確かにするための戦略として打ち出したのが“Story for Vision 2030”です。これは、協和キリングループがVision 2030に掲げているLife-changingな価値を継続して創出・提供するための戦略です。自社で注力する疾患領域とモダリティ*1をより明確に設定しました。これに加え、オープンイノベーションやパートナー連携、ベンチャーキャピタル/コーポレートベンチャーキャピタルファンド活動などの強化も推し進めます。これらの活動により生み出される“Life-changingな価値”の最大化、という観点では、ビジネスモデルを適切に選択する必要があります。自社で注力する疾患領域のアセットでは協和キリングループが開発から販売までをグローバルで行い、生み出された価値を患者さんに届けつつ、患者さんの声を研究開発に反映することでその領域での自分たちの強みを増幅していくことも重要となります。戦略的パートナリングアセットでは、価値最大化に社外の力を活用します。適切なパートナーとの最善のビジネスモデルを築くことにより、患者さんに最速でお届けすることも含めてその価値最大化が実現できると期待しています。このように、適切なビジネスモデルを選択することで、協和キリングループは、創出した価値を一日でも早く多くの病気と向き合う人々に届けていくことに注力しています。*1 モダリティ:構想した治療コンセプトを実現するための創薬技術(方法・手段)の分類 自社で注力する疾患領域のアセット:協和キリングループは、下記に定めた3つの疾患領域を自社で注力する疾患領域として価値の創出と提供に取組んでいきます。各疾患領域では、上市国・地域の拡大、疾患啓発活動や患者支援プログラムの実施などを通し市場浸透に継続して取組んでいきます。 骨・ミネラルCrysvita(日本製品名:クリースビータ)では、在宅自己注射をより簡便で安全に行うことができる剤型として、患者さん及び医療関係者から期待されていた皮下注シリンジの日本・欧州での販売を開始しました。イタリアではCrysvitaが腫瘍性骨軟化症に対して保険償還の対象となりました。KK8123*2、KK8398*2の開発も着実に進行中です。 血液がん・難治性血液疾患Ziftomenib(米国製品名:KOMZIFTI)は、NPM1変異を有する再発・難治性の成人急性骨髄性白血病(AML)に対する1日1回経口投与可能なメニン阻害薬として世界で初めて米国で承認されました。今後もKura Oncology社との連携を推進し、急性白血病に対する新たな治療選択肢(併用療法や早期の治療ライン)の提供を目指していきます。Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、機械学習・AI技術を活用し、患者さんの治療アクセス向上を推進しています。加えて自社初の抗体薬物複合体(ADC)であるKK2845等*2の開発も着実に進めていきます。 希少疾患(造血幹細胞遺伝子治療)OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)は、米国・欧州における異染性白質ジストロフィーを対象とした新生児スクリーニングの拡大を患者団体等のコミュニティーと共同し推進しています。この活動の結果、スペインでは保険償還の対象となりました。米国保険福祉省長官から米国連邦政府として新生児スクリーニングの対象とすることが推奨されたため、今後各州に展開されるように活動を続けます。日本では早期発症型異染性白質ジストロフィーに対して希少疾病用再生医療等製品指定を取得、サウジアラビアにおいても希少疾病用医薬品指定と優先審査指定を受けました。さらにOTL-203*2及びOTL-201*2についても着実に開発を進めていきます。 〔戦略的パートナリングアセット〕協和キリングループは、適切なパートナーとの最善のビジネスモデルを築くことにより、患者さんに最速でお届けすることも含めてその価値最大化の実現を目指しています。 低分子であるKHK4951*2(一般名:tivozanib)、協和キリン独自のバイスペシフィック抗体技術REGULGENTを搭載したKK2260*2及びKK2269*2、並びにPOTELLIGENT抗体であるKK4277*2、本態性高血圧症を対象疾患として2025年第Ⅰ相試験を開始したKK3910*2については、今後パートナーとの連携も含め、価値の最大化を図っていきます。なお、Amgen社と連携し、複数の臨床試験を継続して推進してきましたKHK4083*2(一般名:ロカチンリマブ)は、2026年1月にはAmgen社の戦略的ポートフォリオ見直しを背景として、同社との開発・商業化に関する提携契約を終了し、協和キリンは規制当局対応及び将来の商業化を含む、ロカチンリマブのグローバルプログラムの全権利を再取得しましたが、2026年3月3日に、最新の安全性情報及び総合的なリスク・ベネフィット評価を踏まえ、ロカチンリマブに関する現在実施中の全ての臨床試験を中止することを決定しました。また、自己免疫疾患に対する、ファースト・イン・クラス低分子治療薬候補の開発を目的とした、前臨床開発プログラムに関するライセンスをBoehringer Ingelheim社に提供しました。*2 開発パイプラインの詳細は、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」をご参照ください。 2.KABEGOE PrinciplesVision 2030ビジョンの実現に向けての戦略を実行するために必要なTeamのあり方について策定したのが、“KABEGOE Principles”です。協和キリングループが立ち返ったのは、私たちの志でした。私たちの志は、2008年に協和キリンが誕生した直後に、約1,000人もの社員が製薬企業で働くことに対する思いを言葉に表したものです。この私たちの志とStory for Vision 2030をベースに、CxOを中心に徹底的に議論し、作り上げたのがこのPrinciplesです。その筆頭にあるのが患者さん中心、Patient Centricという考え方です。協和キリングループ従業員がLife-changingな価値を創出し、提供するために、いつも大切にしていく考え方です。さらに、協和キリングループの価値観に紐付けて、全11のPrinciplesを掲げています。このPrinciplesの浸透に関しては、CxOはもちろん、人事総務部、経営企画部、及びコーポレートコミュニケーション部が核となり、各部署から自発的に参加したグローバルのメンバーによる取組みなどを含め、全社で進めています。協和キリングループにおいて、日々の業務を進めることで、KABEGOE Principlesに沿った行動になるような様々な施策を開始しています。
事業等のリスク
3【事業等のリスク】1.リスクマネジメント(RM)体制と重要リスク特定のプロセス協和キリングループにおけるリスクとは、経営目標及び戦略目標の達成に影響を与える不確実性を指し、事業活動の遂行において企業価値の毀損につながる脅威(ネガティブな影響)に加え、適切に対応することで企業価値の創出や成長につながる機会(ポジティブな影響)の双方を含むものと定義しています。協和キリングループは、Enterprise Risk Management(ERM)の枠組みのもと、リスクを単なる回避対象としてではなく、機会の最大化及び企業価値の創出・保全につなげるべき経営上の重要事項として位置付けています。 協和キリングループは、日本を含むJAPAC、北米、EMEAを中心とした地域(リージョン)軸、地域を跨いだ機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組み合わせたグローバルマネジメント体制「One Kyowa Kirin」で事業活動を推進しています。3つの地域にそれぞれリージョナルリスクマネジメント委員会を設置し、各地域の重要リスクを議論しています。また、CxOが中心として参加するグローバルな位置付けのグループリスクマネジメント委員会を年2回開催し、グループ全体のリスクマネジメントに関する戦略や活動方針を審議していきます。重要リスク特定のプロセスについては、四半期に1回、業務執行部門が実務担当者会議において社内外の環境変化を踏まえてリスクを洗い出し、経営に与える影響度と発生頻度(発生する可能性)を分析します。グループリスクマネジメント委員会事務局は社内外の環境変化やリスクトレンドについて業務執行部門と対話しながら分析結果を調整した後、リスクをカテゴリー毎に整理し、重要リスクを特定します。グループリスクマネジメント委員会では重要リスクの特定が適切かを確認するとともに、その低減策について全社的な観点で議論しています。重要リスクの低減に向けた進捗確認は、アクションプランのモニタリングと合わせて行い、グローバル経営戦略会議にて進捗確認と環境変化を踏まえたリスクの重要度の変化をモニタリングしていきます。グループリスクマネジメント委員会では、その評価結果を基にリスクマップを策定しており、これらの委員会で議論された重要リスクの低減策やモニタリングの結果は取締役会に報告されています。 協和キリングループのリスクマネジメント(RM)体制(2025年10月より) 2.デジタル活用によるリスクマネジメントのグローバル一元管理協和キリングループでは、グループ全体のリスクをデータベースで一元管理するためのシステムを導入し、デジタル化を進めています。業務執行部門がリスク台帳やインシデント情報をデータベースに登録した後、ワークフローを通してリスクを専門的かつ全社的な立場で支援・助言・モニタリングする部門に情報を共有したり、リスクマップにて重要リスクの見える化を実施したりするなど、リスクの状況を効果的かつ効率的にモニタリングする体制の整備を進めています。3.クライシスマネジメント体制とBCP演習の強化について協和キリングループでは、クライシス発生時に、平時業務の延長から早期にクライシス対応を開始できるFunction対策本部と、クライシスの地理的影響範囲に応じて設置されるGlobal・Regional・Local対策本部が連携し、2025年11月11日改訂版グループクライシスマネジメント規程に基づき、迅速かつ組織的なクライシスマネジメントを遂行しています。今回の改訂では、各階層(Global・Regional・Local・Function)の役割と権限、設置基準、指揮命令系統、エスカレーション原則(Bad News Fast)が明確化され、平時・有事双方における情報報告・共有方法、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の発動・解除手順、対策本部の設置判断基準が具体的に定められました。これにより、クライシスの予防、発生への準備、予兆の早期発見、緊急時対応までを一貫して運用するレジリエントな体制が整備されました。また、重要リスクを中心にクロスリージョン・クロスファンクションにクライシス・BCP演習の実施を通じて、最悪の事態を想定したクライシス対応や事業継続体制の強化を図っています。改訂規程では、各対策本部単位で原則年1回の教育訓練実施が義務付けられ、演習後には振り返りと再発防止策の策定、改善アクションプラン化、平時における継続的改善が求められています。演習を通じて対応力向上を図るとともに、リスク評価や低減策を見直し、リスクの予兆発見のためのモニタリングにつなげるなど、急激な環境変化の中、全社的な課題に対して、平時のリスクマネジメントと有事のクライシスマネジメントを一貫して取組むことで、困難な状況にもしなやかに適応するレジリエントな組織を目指しています。 協和キリングループのクライシスマネジメント体制(2025年11月より) 4.事業等のリスク当連結会計年度末(2025年12月31日現在)において協和キリングループが特定した重要リスクを以下に記載していますが、社内外の環境変化により想定していないリスクが発生する可能性や、ここで記載していないリスクが協和キリングループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。 サイバーセキュリティ(Cybersecurity)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリングループは、研究開発、製造、販売等に関わる重要情報システムやネットワークを、グローバルに多拠点で運用しています。これらは患者さん情報、研究開発データ、製造ノウハウ、契約や経営情報など、極めて機密性の高いデータを含みます。近年、ランサムウェアや標的型攻撃などのサイバー攻撃は高度化・巧妙化し、ライフサイエンス分野は高い攻撃対象となっています。セキュリティ対策(アクセス制御、暗号化、脆弱性管理、監視、バックアップ等)が不十分な場合、システム停止や障害発生、情報漏えいなどが起き、事業継続が不可能になる事態が生じ得ます。これにより、法令違反や制裁金、訴訟、重大な経済的損失、社会的信用の低下、競争力の喪失などの影響を受けます。また、地域ごとのセキュリティ標準や対応方針の差異、統一的なガバナンス不在、保険補償の限界なども被害拡大の要因となります。主な対策現在、全地域で常勤スタッフによる監視体制を整えており、サポートを提供しています。北米・EMEA・日本ではランサムウェア防御技術を導入し、また内部脆弱性管理を継続的に実施に加え、年1回の外部ペネトレーションテストも実施しています。さらに、各地域でMSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダー)による監視を行い、資産管理ツールを用いた資産発見・管理、TPRM(サードパーティリスクマネジメント)評価、年次のグローバル・地域別サイバー演習、フィッシング対策訓練も実施しています。今後はMSSPサービスの統合化と単一テナント運用による迅速な対応、グローバルセキュリティオペレーションモデルの構築、TPRM標準化、製造部門のオペレーションテクノロジー(OT)セキュリティ強化を予定しています。また、ERMプログラムを導入し、全地域のリスクをモニタリングしていきます。 安定供給及び品質(Supply & Quality)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリングループは、バイオ医薬品を含む多様なモダリティの製品・治験薬を製造し、国内外に供給しています。製造・品質に関するトラブルや原材料調達不安、急激な需要変動、委託先の不具合、自然災害、地政学リスク、システム障害などは、供給に重大な影響を及ぼす恐れがあります。特に重要品目で供給不足や出荷制限が発生すると、患者さんへの治療継続が困難となり、社会的信用失墜、受注減、売上減少、罰則、訴訟など経済的損失が生じます。さらに、新しいモダリティやデバイスへの対応力不足、生産拠点の一極集中や老朽化、設備投資の戦略整合性欠如も中長期的な供給安定性を損なう恐れがあります。主な対策適正在庫の確保、自社生産体制の整備・拡充(高崎工場HB7棟・サンフォード工場)、重要製品のデュアルソーシング体制構築、CDMO管理強化、災害時における影響の早期把握、原材料・資材の安定確保やサプライヤーマネジメント改善、逸脱・変更管理プロセス改善、新技術の開発・活用促進などに取組んでいます。今後はサプライチェーン全体のリスク特定と対応シナリオ策定、長期的な戦略に基づく供給体制構築、製造・品質リスクの早期把握のためのモニタリング強化、DX活用によるオペレーション改革などを計画しています。今後、インシデント数、査察時の重大指摘数、計画達成度などをモニタリングしていきます。 ビジネスパートナー(Business partner)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリングループは原材料・委託製造・流通等、重要な事業プロセスを多数のビジネスパートナーに依存しています。これらのビジネスパートナーに起因する人権・環境問題(強制労働・児童労働、温室効果ガス排出等)、贈収賄や腐敗行為、情報セキュリティ侵害、規制違反などのリスクは、管理体制が不十分であると顕在化しやすくなります。特に責任部署やモニタリングプロセスが曖昧な場合、デュー・デリジェンス(DD)の実施漏れや契約・監査未整備が生じ、高リスクパートナーに対して適切な評価・対応ができないまま取引を継続する事態が発生します。インシデントが発生すれば、事業の継続困難、罰金・制裁金の賦課、社会的信用の失墜、金銭的損失等の影響に加え、膨大な人的・物的リソースを突発対応に投入せざるを得なくなります。主な対策既存の各リージョンでのDD、人権DDにおけるインタビューとテーマ検討等の活動に加え、現状では、グループ全体のビジネスパートナーに係る基本方針・規程の策定による管理概要の明文化、安定供給に関わるパートナーの優先的なDD対象選定、グローバルでの運用プロセスの明文化に向けた各リージョンの管理体制現状確認を行っています。また、PSCI(Pharmaceutical Supply Chain Initiative)への加盟等を通じ、他社のDD状況・業界トレンドを踏まえた組織改善も進めています。今後はDD対象選定基準や優先リスク評価基準の策定、SAQ(自己評価質問表)実施、リスク評価指針・対応手引き作成、高リスクパートナーへのモニタリング徹底、外部開示にも対応可能な監査体制の設計・実施を進めます。契約時・契約後のモニタリング網羅性向上、サプライヤー情報のグローバル一元管理も計画し、優先パートナーに対するアセスメント完了率や低減対策実施率などをモニタリングしていきます。 プロダクトポートフォリオ(Product Portfolio)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響研究開発から上市までの開発品・製品ポートフォリオは協和キリンの持続的成長の基盤です。疾患領域別の投資方針(自社単独での価値創造・提供と他社との戦略的パートナリングによる価値最大化)を設定していますが、後期開発品への投資拡大、初期パイプライン偏在、パートナリング交渉難航等により、将来の売上・利益の均衡が崩れる恐れがあります。短・中・長期視点での不十分な議論や財務観点との整合性欠如は、投資判断誤りや開発停滞を招き、株価下落、中長期的収益性悪化、機会損失につながります。主な対策現状、グローバル経営戦略会議等においてポートフォリオ分析(売上・利益予測、感度分析、シナリオ別成長予測、重大な影響要因=スイングファクター分析)を定期的に実施し、CxOレベルで現状と将来シナリオを共有しています。今後は四半期ごとのプロダクトポートフォリオマネジメント会議を設置し、財務視点を含むシナリオ分析に基づく戦略方向性の認識一致を図ります。また、議論内容を開発実務に迅速反映し、スイングファクターに関連したワーストケースシナリオへの事前対応策などをモニタリングしていきます。 企業文化及び人材ポートフォリオ(Corporate Culture and Talent Portfolio)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリングループは、急速に環境変化する製薬業界において、持続的な成長と競争優位性を実現するため、高度な専門性、多様性、機動性を備えた組織と人材の確保が必須です。しかし、必要なケイパビリティが現状と乖離しているにもかかわらず、そのギャップを正しく認識し、計画的に是正する取組みが遅れると、イノベーションの創出が停滞し競争力が低下する恐れがあります。加えて、企業文化(KABEGOE Culture)の醸成が不十分である場合、優秀な人材の採用・定着が困難になり、エンゲージメントや生産性低下を招き、グローバル戦略遂行やビジョン達成の障害となります。具体的には、グローバル×ローカルの一貫した人材戦略の欠如、People Leader(管理者層)の役割定義・期待値の不明確さ、Total Reward(報酬政策)やキャリア機会の競争力不足などが長期的な人材流出につながるほか、人材育成が場当たり的になり戦略人材のパイプライン構築が進まないという影響も顕著です。主な対策協和キリンは、こうしたケイパビリティギャップの是正に向けて、人材マネジメント基盤の強化に着手しています。人事組織内にVirtual Global Sub-functionを設け、機能横断・地域横断の戦略推進体制を整備するとともに、グローバルな後継者計画(Global Succession Planning)を導入し、各ファンクションにおける次世代リーダー候補とその育成方針を明確化しています。さらに、研究開発領域には、価値創造型人材像の定義と人材育成施策を導入しました。企業文化面では、Vision 2030の達成に向けてKABEGOE Principlesを継続的に社内へ浸透させ、Global HR Operation Model等の整備を通じた、国や部門を越えたタレントマネジメントの基盤構築を進めています。今後は、People Leaderへの期待役割を明確化し、その実現を支援する育成施策や、Total Reward Policyの明確化・報酬制度の再設計、加えて認証プログラムの強化に注力していきます。また、オペレーティングモデル変革を支えるため、社内表彰制度の刷新や部門横断の価値創出活動を拡充し、社員一人ひとりが変化を実感できる企業文化の発展を図っていきます。 バリューベース・ヘルスケアの進化と市場アクセス(The Advancement of Value-Based Healthcare and Market Access)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響医療費の高騰、薬価抑制圧力、費用対効果評価(HTA)の重視などにより、医薬品の保険償還や価格設定は厳格化しています。患者、Payer(保険者)、当局のニーズを十分に反映しない開発戦略や、経済的価値の検証プロセス不足により、製品へのアクセスが遅延・制限されるリスクがあります。開発初期から市場アクセスや経済価値戦略を組み込む仕組み、具体的には、欧州HTA基準を満たす試験設計、費用対効果評価に対応しうる体制・人材、国ごとの価格ルール・交渉文化の違いへの柔軟対応力が必要です。これらが不足すると、上市後の価格・アクセス条件が不利となり、収益性や成長性が著しく低下します。主な対策協和キリンは、開発初期段階からアクセス及び価値最大化戦略を製品戦略書やTarget Product Profile(TPP)に組み込み、研究開発委員会で戦略の整合性を確認しています。先行開発品や類似領域で得た知見を疾患領域チームのCross-functionalレビューにより共有し、欧州HTA基準を満たすPhaseⅢ試験設計の推進、費用対効果評価に対応可能な価格設定システムの改訂を行っています。さらに、主要製品では欧州共同臨床評価(JCA)への計画的対応を進め、米国及び欧州市場での交渉力強化に取組んでいます。併せて、国内の費用対効果評価への継続対応を可能とする体制・人材育成を行い、政府渉外部門、医療経済、Pharmacy Benefit Management(PBM)、ペイヤー対応部門等と連携しながら、各国事情に適合した価値最大化施策の標準化を目指しています。 日本市場における持続的成長(Sustainable growth of Japan Market)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響日本事業の中核を担う長期収載品に関する製品ライフサイクル戦略の実効が遅延した場合、ポートフォリオの改善が困難となり、高コスト構造が固定化する可能性があります。さらに、新製品の自社開発や国内導入が計画どおり進まない場合、日本市場における競争力が低下し、グループ全体の収益に影響を及ぼす恐れがあります。また、新薬の上市計画が遅延した場合、目標利益を大きく下回る可能性があり、持続的成長モデルへの転換が急務となります。主な対策協和キリンは、製品ライフサイクル戦略の実行に向け、早期段階からパートナー企業やCDMOとの情報共有を進め、承継活動における透明性の向上と意思決定の迅速化を図っています。承継契約に関しては、法務デュー・デリジェンス及び関連契約の精査を実施し、組織間の連携を強化することで、円滑なプロジェクト遂行を支援しています。新薬の上市準備においては、日本市場向けのプレローンチチーム(JP Pre-launch Team)を設置し、これを支援する機能横断型タスクフォースを編成することで、各機能間の連携を強化し、円滑な上市準備を推進しています。今後は、プロジェクト管理機能のさらなる強化、デュー・デリジェンス情報の事前整理、タスクフォースによる支援体制の明確化、並びにマイルストン進捗のモニタリング精度向上を図ります。さらに、経営レベルでの議論を継続し、医療制度や市場環境の変化に対応した持続的成長モデルへの転換を目指します。 デジタル戦略の推進及びオペレーショナルエクセレンスの実現(The Advancement of Digital Strategy and Operational Excellence)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリングループでは2021年に「デジタルビジョン2030」を作成しDXを推進しています。各部門・リージョンで様々な取組みを行ってきていますが、全体最適化の視点ではさらなる強化の余地があり、本来期待されている全社レベルでのOperational Transformation効果(生産性向上、迅速意思決定、パイプライン加速等)、Life-changingな価値創出に向けた取組みが十分に発揮されない恐れがあります。主な対策協和キリンは2025年4月にChief Digital Transformation Officer(CDXO)を設置するとともに、全社軸でのDXを推進するODX(Operational and Digital Transformation)を新設し、DXを軸とした業務改革を加速するとともに、DXやAI等に関する専門人材や変革型リーダーの強化・育成、併せてIT/デジタル投資のガバナンス体制の整備を進めています。今後も会社戦略に沿った投資優先順位の設定や戦略テーマの定期見直しを通じて、全社的なDX効果の最大化を目指します。 遺伝子細胞治療ビジネスの持続的成長(Sustainable Growth of Gene & Cell Therapy Business)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響協和キリンは、2024年に造血幹細胞遺伝子治療プラットフォームを有するOrchard Therapeutics社を買収し、本プラットフォームを活用した有望な治療法の開発、並びに協和キリンが培ってきた創薬技術との融合による新規治療法の研究開発を、“Vision 2030 and Beyond:中長期構想”の中核に位置付けています。しかし、事業統合後の事業戦略の策定や組織ガバナンス体制の構築が計画どおりに進まない場合、期待していたグループシナジーを十分に発揮できない可能性があります。また、遺伝子細胞治療(Gene & Cell Therapy)領域において、事業環境の変化や各国の規制変更等への対応が不十分となる場合、上市済み製品の販売促進による成長や革新的開発品の創出が停滞し、“Vision 2030 and Beyond:中長期構想”の達成に影響を及ぼすおそれがあります。主な対策協和キリンは、Orchard Therapeutics社の造血幹細胞遺伝子治療プラットフォームを活用し、OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の地域拡大、及びOTL-203、OTL-201などの開発推進に取組んでいます。これにより、Gene & Cell Therapy領域における事業基盤を強化し、収益の安定化を図ります。さらに、両社共同による研究開発戦略策定、投資判断等を行うガバナンス会議を整備し、Gene & Cell Therapy領域固有の課題や事業環境の変化に対して、迅速かつ的確な意思決定を可能とする体制を構築します。加えて、グループ全拠点の特性やケイパビリティを最大限活用した研究開発体制の整備、並びに専門人材の育成を推進します。 米国政策(US Politics)リスクの内容、リスクが顕在化した場合の主な影響米国政権の政策変更(関税、薬価規制等)は協和キリングループに直接的影響を及ぼします。薬価最恵国待遇(MFN Drug Pricing)政策が法制化されれば、米国での価格引下げや戦略変更が避けられず、他国薬価設定にも波及します。医薬品への高関税導入は、米国向け製造戦略に大きな損害を与えるほか、価格転嫁は政治的リスクを伴います。主な対策協和キリンは、関税影響に備えて米国関税タスクフォースを設置し、生産・SCM、財務経理、法務、渉外、市場アクセス、薬事等の機能横断連携を強化し、また製造拠点移転を含む供給体制再構築を計画しています。さらに、米国及び日本での活動を通じて政策関与を強化するとともに、米国の子会社がPhRMAに加盟し、政治的影響力の向上を図っています。今後も米国議会の動向監視を継続し、供給キャパシティの確保と契約再構築を進めることで政治的リスクの低減を目指します。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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