三井海洋開発グループは、三井海洋開発、子会社24社及び関連会社21社で構成され、海洋石油・ガス生産の中流領域で利用されるFPSO、FSO及びTLPといった浮体式生産・貯蔵・積出設備のEPCI(※) サービス(設計・調達・建造・据付)、チャーターサービス(リース及びオペレーションサービス)の提供を主な事業としております。主な取引先は海外各国の政府系又は民間石油・ガス開発会社であり、三井海洋開発グループは以下のようなトータルソリューションを提供しております。
(※)EPCI:Engineering、Procurement、Construction and Installationの略
石油開発事業は、油田の探鉱から始まって開発・生産、精製・販売といった過程に大きく分けられます。石油開発事業においてリスクが高いと考えられる分野は探鉱までであり、三井海洋開発グループが対象とする開発・生産フェーズは、比較的安定した事業であります。
オイルメジャーに代表される石油開発事業者は、かつてはこうした事業に用いる設備等を自らが建造して所有し、かつ一連のプロセスを直轄しておりましたが、近年では建造とオペレーションを専業会社にアウトソーシングし、所有のみ行う流れにあります。三井海洋開発グループは石油開発業界におけるこのような趨勢のもと、海外各国の政府系又は民間石油・ガス開発事業者の開発計画に応じて以下のようなサービスを提供しております。
海洋石油・ガス生産設備は、生産設備を搭載するプラットフォームの形態によって固定式と浮体式に大別されます。固定式プラットフォームは、海底にプラットフォームを固定する方式であり、生産設備本体の他に海底パイプライン、陸上の貯蔵タンク及び港湾積出施設等、インフラを建設する必要があります。これに対しFPSOをはじめとする浮体式プラットフォームは、こうしたインフラを必要とせず洋上での工事も少ないため、出油までの工期が短期間で済み、一般的に固定式に比べて経済的であるという利点があります。また、高度な係留技術を利用することによって、固定式では対応できない大水深の海域での石油生産に対応することができます。
各種の浮体式海洋石油・ガス生産設備のうち、三井海洋開発グループはFPSO、FSO及びTLPといわれる設備に関連する分野を主としておりますが、これらの概要は以下のとおりであります。
FPSOは「浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備」といわれる設備であります。石油・ガスの生産、貯蔵及び積出の機能を有し、洋上で石油・ガスを生産し、生産した石油・ガスは設備内のタンクに貯蔵して、港湾設備や陸上タンクを介さずに洋上で輸送タンカーへの積出を行います。構造的にはタンカー船体を基礎とし、原油に含まれる不純物を分離して石油・ガスを生産し、船外に排出する不純物を各国の定める環境基準に適合した状態にするためのプロセスシステム、洋上で船体を一定位置に保持する係留システムを搭載しております。なお、船体は新規に建造する場合のほか、中古タンカーを改造して建造する場合があります。
FSOは「浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備」といわれる設備であります。構造的にはFPSOと同様に船体を基礎として係留システムを搭載しておりますが、石油・ガスの生産を行うプロセスシステムは有しておりません。石油・ガスの生産機能をもたない、洋上での貯蔵、積出専用の浮体式設備であります。
FPSO及びFSOと同様に、TLPも浮体式海洋石油・ガス生産設備の一種で「緊張係留式プラットフォーム」といわれる設備であります。強制的に半潜水させた浮体構造物と海底に打設した基礎杭とをテンドン(Tendon)と呼ばれる鋼管で接続し、強制浮力によって生じる緊張力(Tension)を利用して係留される洋上プラットフォームであります。浅海から大水深海域(水深1,000m超)の開発に適した海洋石油・ガス生産設備として、1980年代から使用されております。
三井海洋開発は、洋上で安全に石油・ガスを生産し続けるために主にEPCIとオペレーション、チャーター(リース+オペレーション)からなるトータルソリューションをグローバルに提供しております。
EPCI事業において、三井海洋開発は自社の工場や造船所を所有していないファブレス企業として、客先調整から設計、調達、建造、据付、試運転に至るプロジェクトマネジメント業務に特化しております。世界中から適した業者や造船所を選定し、船体の建造や搭載設備の製造、完工した設備の据付は、海外の造船所や専門業者に外注しております。完工・据付後の浮体式生産設備は、客先または三井海洋開発関係会社に引渡します。
FPSO等のリース、チャーター及びオペレーション事業においては、プロジェクトごとに関係会社を設立して運営いたします。これは各プロジェクトの採算管理を明確にする目的のほか、主にこれら事業に係る長期の資金負担を軽減するために、海運会社及び総合商社を中心とするパートナーと合弁で事業を展開するという方針に基づくものであります。従って、チャーター事業を行う場合は、建造したFPSO等は三井海洋開発グループの関係会社が引渡しを受けて保有し、オペレーションサービスの提供とこれに伴う技術者・操業要員の雇用、安全・環境保全、資機材の調達・輸送及びメンテナンス等のマネジメントも各関係会社において行っております。
三井海洋開発グループは、海外各国の政府系又は民間の石油開発事業者を販売先としているほか、建造工事等における外注先や資材・機器等の仕入先の多くも海外の企業であります。このため、事業上の取引及び資金収支の大半は米ドルを主とした外貨にて行っております。
事業の系統図は、以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度における主な建造工事、チャーター及びオペレーションプロジェクトは、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において三井海洋開発グループが判断したものであります。
三井海洋開発グループは、2024年度からの中期経営計画に先立ち、三井海洋開発を取り巻く事業環境の変化や世界的な脱炭素社会実現への流れを汲み、10年後、20年後、更にその先の将来、どのような企業でありたいかを見据え、ビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新いたしました。フロンティア精神を忘れることなく、可能性に満ち溢れた海洋と人との持続可能な未来を切り拓いてまいります。
■ビジョン
海洋と人が調和しながら共生共栄できる世界を切り拓きます
■ミッション
持続可能な未来の実現に向けて、独創的なフローティング・ソリューションを通じ、海洋が持つその可能性を解き放ちます
■コア・バリュー
~我々は“OCEAN”にコミットします~
当連結会計年度におけるわが国経済は経済社会活動の正常化が続き、回復基調を維持しましたが、世界経済については地政学上のリスクもあり不透明感が高い状態が続いております。原油価格については、サウジアラビアによる自主的な追加減産が延長されたことなどを受け一時高騰したものの、中国経済の減速などにより、2023年末には前年と同等の価格に落ち着きました。
安定したエネルギー供給を維持することは依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続して進められています。三井海洋開発グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業、特に三井海洋開発グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトに対する需要も堅調に推移しております。
しかしながら、三井海洋開発グループを取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しております。こうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、環境に配慮したFPSOの開発、デジタル・ソリューション事業など、将来の新たな収益源の開拓を着実に進めてまいります。
2021-2023 前中期経営計画の総括
2021年にスタートした3カ年の中期経営計画においては、重要テーマとして①アセット・インテグリティの改善、②デジタライゼーション戦略推進、③研究開発:FPSOに次ぐ将来の収益源の育成、④環境・社会的要請への取組み、の4項目を掲げて、必要なリソースを確保し推進してまいりました。前中期経営計画期間中は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、建造工事の費用負担増加や、ブラジルで操業するFPSO等に対する追加の修繕費等が発生したことにより、当初設定した数値目標を下回る結果となりましたが、2022年以降は、三井海洋開発の取組み並びに好調な市況を背景に、安定成長軌道に回復いたしました。
中期経営計画 2024-2026
2024年よりスタートした「中期経営計画 2024-2026」の策定に先立ち、まずは重要なサステナビリティ課題として6つのマテリアリティを特定いたしました。更にはビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新し、これを礎とした長期戦略『ビジョン2034』では、10年後のあり姿を「海洋と人をつなぐグローバル・リーディング・プレイヤー」と定めました。
当該新中期経営計画においては、スローガンとして「イノベーションで持続可能な未来を拓く」を掲げ、重点項目として、①収益力の強化、②戦略的な経営資源配分と獲得、事業推進のための③FPSO脱炭素化の推進及び④新事業具現化への布石、また事業基盤となる⑤グループコラボレーションとシナジーの深化及び⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上、を設定いたしました。
①収益力の強化:
大規模深海油田を中心とした新規プロジェクトも見込まれる中、受注済みのEPCI(設計、調達、建造、据付)、長期の操業並びにチャーター案件をベースに、FPSOのトッププレイヤーとしての卓越した事業運営により、安定した利益と資金を創出してまいります。
②戦略的な経営資源配分と獲得:
FPSO事業の脱炭素化推進や安全性の向上などの「FPSO事業の価値向上」、浮体式洋上風力発電や代替エネルギー生産システムを含む「新事業」、そして次世代リーダーの育成やDE&I(多様性、公平性、包括性)の促進などにより「人的資本」を強化すべく、上記の①で得た収益を、将来のために積極的に投じてまいります。
③FPSO脱炭素化の推進:
継続的なFPSOの炭素排出原単位削減の取組みに加えて、発電機排ガスからの二酸化炭素の回収・貯蔵技術や省エネのための機器運転の最適化を可能にするデジタルツール等の開発により、温室効果ガスの排出量を最小化した“Target Zero” FPSOの実現を目指し、温室効果ガスの抜本的な削減に向けた取組みを加速してまいります。
④新事業具現化への布石:
これまでFPSOを中心とする事業で培ってきた技術や知見を土台とし、「浮体式洋上風力」、「デジタル」そして「代替エネルギー」の分野での事業化に向けた取組みを推進してまいります。また、イノベーションの文化を浸透させ、浮体技術及びデジタル・ソリューションを活用した新事業の開拓・育成にもより一層注力いたします。
⑤グループコラボレーションとシナジーの深化:
ビジネスプロセスの標準化やデジタルを活用したマネジメントシステムの導入促進と、企業の礎となる人財の強化を図る人的資本経営の推進を軸に、グローバルに展開するグループでの相乗効果を拡大してまいります。
⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上:
新設したサステナビリティ委員会を通じてグループ横断でサステナビリティ課題に取り組むとともに、従前より企業責任として特に力を入れて組織的に取り組んできた「安全と人権」への更なる取組みを強化してまいります。
これらの活動の成果として、「2026年に達成すべき数値目標」は親会社の所有者に帰属する当期利益175百万米ドル等を掲げております。
(注) 一過性損益調整前
①操業中のFPSOに関し、新型コロナ感染症流行の期間中は十分な保守・修繕作業が行うことができなかったため、2000年代前半に受注した初期のFPSOの経年劣化が急速に進み安全性の確保を最優先で対応した結果、想定外の稼働率の低下やアセット・インテグリティの維持・強化費用の負担を余儀なくされておりました。その後これらの初期のFPSOの状況も改善し、また、順次チャーター期間の終了を迎えていくことから、こうした課題は徐々に解決しつつあります。しかしながら石油・ガスの安定かつ安全な生産とその操業は、引き続き三井海洋開発グループの最重要課題の一つであり、一層のアセット・マネジメントの強化に努めてまいります。
②近年FPSOの大型化・複雑化が進んでおり、このような状況に対応するため、三井海洋開発グループはプロジェクト・マネジメント力及びエンジニアリング力の強化、人材育成に注力してまいりました。一昨年設立した東洋エンジニアリング株式会社との合弁会社も順調に稼働を開始し、建造工事の遂行能力は着実に強化されてきております。建造、操業、リースというFPSO事業全体の管理体制を一層強化するとともに、より強固な内部統制を確立し、適切に対応してまいります。
③原油・天然ガスの安定的な確保に向けてFPSO等の浮体生産設備への潜在需要は底堅く、新規案件の開発も温室効果ガス排出量の削減等環境に配慮しながら着実に進むものと予想しております。一方で、脱炭素化に向けた世界的な取組みも地域・業界ごとに温度差があるものの加速していくものと考えております。三井海洋開発としては、主力事業であるFPSOのコスト競争力強化だけではなく、浮体式洋上風力事業などの新規事業開拓にも注力し、脱炭素化の流れにも真摯に取り組み、社会からの要求に応えられる企業となることを目指します。
三井海洋開発グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において三井海洋開発グループが判断したものであります。
<特に重要なリスク>
(1) 新たな進出地域におけるプロジェクト遂行に伴うリスク
そのため、特に新たな進出地域におけるプロジェクトの遂行にあたっては、現地の法律や会計コンサルタント等からの情報収集及び顧客や取引先との間で最適な責任分担を図ることにより、これらリスクの低減に努めております。
海洋油田の発見が探査の行われていなかった大水深海域に拡大していることを背景として、浮体式海洋石油・ガス生産設備の稼働数は増加してきました。また、三井海洋開発グループがFPSO等の建造を行う場合の受注額は1件につき少なくとも2千億円を超える大規模なものとなっております。
しかしながら、原油価格が下落すると、石油開発会社は投資を縮小します。石油開発会社はまず探鉱活動に対する投資から縮小するものの、原油価格の低迷が長期化すると新規プロジェクトが遅延するため、三井海洋開発グループもプロジェクトの受注が一時的に減少するといった影響を受ける可能性があります。
また、三井海洋開発グループが石油開発会社に提供しているFPSO等のリース、チャーター及びオペレーションに関わるサービスは、契約期間が長期にわたり、安定した収入を期待できる事業ですが、操業を行っている海域における台風等の自然災害の発生や、鉱区を保有する国の政情などによってサービス提供が中断するリスクがあります。これらについては、客先である石油開発会社との契約において三井海洋開発グループの免責を明文化することや保険付保といった手段によってリスク回避に努めておりますが、事前に予期することが困難な事態の発生によりプロジェクトが中断した場合には、三井海洋開発グループの業績に一時的な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 化石燃料需要の減少
気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが進み、化石燃料需要の減少により長期的には石油開発企業の化石燃料関連への投資抑制や事業内容の変更が予測されております。三井海洋開発グループにおいても中期経営計画の中で、事業モデルの進化によりサステナブルな社会の実現に貢献することを長期ビジョンとして描き、FPSO等の低炭素化や独自の浮体式構造及び係留技術(TLP)を活用した浮体式洋上風力発電設備の事業化へむけた取り組みを推進しております。しかしながら、事業環境の変化に対し三井海洋開発グループの対応が遅れた場合には、三井海洋開発グループの事業及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<その他の重要なリスク>
FPSO等の浮体式海洋石油・ガス生産設備の建造にあたっては多額の資金を要するほか、これを三井海洋開発グループが保有して石油開発事業者にリース、チャーターを行う場合は、そのリース、チャーター期間が10年を超えるなど建造資金の回収に長期間を要することになります。
三井海洋開発グループはこうした事業資金を主に社債及び借入金により調達しており、当連結会計年度末における社債及び借入金残高は570,754千米ドルとなり、負債及び資本合計に占める割合は14.7%となっております。
三井海洋開発グループでは金利スワップを用いるなど借入に係る金利変動リスクの低減に努めておりますが、金利の変動によっては三井海洋開発グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、今後もFPSO等に係る新規プロジェクトを開始する場合には、新たに資金調達を行う必要があります。三井海洋開発グループは、プロジェクトの推進にあたり総合商社をはじめとする事業パートナーとの連携によって資金負担の低減を図るほか、プロジェクトファイナンスの利用によるリスクの遮断も行う方針であります。
しかしながら、入札にあたって所要資金を十分に調達することが困難な場合や、金利等の資金調達条件が悪化した場合には、プロジェクトの受注及び収益性に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 大規模災害について
三井海洋開発グループは、地震、風水害、感染症の世界的流行(パンデミック)など各種災害に対して発生時の損失を最小限に抑えるため、危機発生時の対応体制や対応指針をまとめたグループ危機管理ガイドラインを策定しております。しかしながら、このような災害による物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等により、FPSO等の建造工事、リース、チャーター及びオペレーションといった三井海洋開発グループの事業活動に影響が生じる可能性があります。
三井海洋開発グループは、国内外での事業の遂行にあたり、それぞれの国での各種法令、行政による許認可や規制等を遵守しております。しかしながら、これら法令の改廃や新たな法的規制が設けられる等の場合には、その結果が三井海洋開発グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
Copyright (c) 2014 かぶれん. All Rights Reserved. プライバシーポリシー