アドバンテスト(6857)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


アドバンテスト(6857)の株価チャート アドバンテスト(6857)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 株式会社アドバンテスト(以下「アドバンテスト」)の企業グループ(以下「アドバンテストグループ」)は、半導体・部品テストシステム製品群とテスト・ハンドラやデバイス・インタフェース等のメカトロニクス関連製品群の製造・販売を主な事業内容とし、その他にこれらに関連する研究開発および保守・サービス等の事業活動を展開しております。

(半導体・部品テストシステム事業部門)

 半導体・部品テストシステム事業部門は、半導体・電子部品産業においてテストシステム製品を顧客に提供することを事業としております。この事業部門は、非メモリ半導体デバイスのテストシステムであるSoC半導体用テストシステム、メモリ半導体デバイスのテストシステムであるメモリ半導体用テストシステムなどの製品群を事業内容としております。

 この事業部門の生産活動は、アドバンテストおよび複数の外部委託企業が担当しております。

 販売活動は、主にアドバンテストが国内および一部海外ユーザー(韓国、中国等)を担当し、その他の海外ユーザーについてはAdvantest America, Inc.、Advantest Europe GmbH、Advantest Taiwan Inc. および Advantest (Singapore) Pte. Ltd.等が担当しております。

 開発活動は、アドバンテスト、Advantest Europe GmbHおよびAdvantest America, Inc.等が担当しております。

(メカトロニクス関連事業部門)

 メカトロニクス関連事業部門は、半導体デバイスをハンドリングするメカトロニクス応用製品のテスト・ハンドラ、被測定物とのインタフェースであるデバイス・インタフェースおよびナノテクノロジー関連の製品群を事業内容としております。

 この事業部門の生産活動はアドバンテストグループおよび複数の外部委託企業で行われ、販売活動は半導体・部品テストシステム事業部門と同様の担当で行っております。

 開発活動は、主にアドバンテストで行っております。

(サービス他部門)

 サービス他部門の内容は、上記の事業に関連した総合的な顧客ソリューションの提供、半導体やモジュールのシステムレベルテストのソリューション、サポート・サービス、消耗品販売、中古販売および装置リース事業等で構成されております。

 以上に述べたアドバンテスト企業グループ内の事業活動を系統図で示せば次頁のとおりであります。

事業系統図

 上記以外に連結子会社が26社あります。

 連結子会社(国内7社、海外33社、合計40社)

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてアドバンテストグループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

<The Advantest Way>

 アドバンテストグループは、経営理念として「先端技術を先端で支える」を掲げています。すなわち、「世界中の顧客にご満足いただける製品・サービスを提供するためにたえず自己研鑽に励み、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献する」ことがアドバンテストグループの使命であり、またこれを追求し続けることでアドバンテストグループの社会的な存在意義は拡大するものと認識しています。

 また過去からの事業拡大に向けた取り組みの結果、アドバンテストグループは多様な文化、言語、慣習、価値観を内包する組織となっていることから、経営理念に即した事業活動を行う前提として、共通価値観の醸成や共通の行動原則が重要となっています。

 これらを総合し、アドバンテストグループは2019年に、過去から有していた企業理念体系「The Advantest Way」を発展させ、アドバンテストグループが今後進むべき方向性と大切にすべき価値観を包含するものへ改定しました。現在のアドバンテストグループの中長期的な経営戦略や事業活動は、すべてこの改定版「The Advantest Way」に沿って展開されています。アドバンテストグループは、「The Advantest Way」に沿った活動を実践し続けることで顧客や社会への提供価値を最大化し、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。

 

 「The Advantest Way」は、以下の6要素から構成されます。

 

1. 経営理念(パーパス&ミッション):「先端技術を先端で支える」

2. ビジョン・ステートメント:「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)」

3. コア・バリュー:「INTEGRITY」

4. 「サステナビリティ基本方針」

5. 「行動指針」:「本質を究める」

6.「行動基準」

 1~3は、社会発展への貢献と中長期的な企業価値向上に向けてアドバンテストグループがどうありたいか、なにをなすべきかを規定しています。4~6は、望まれるステークホルダーとの関係性や、業務遂行にあたり役員や従業員に求める価値観やふるまいなどを定めています。

 

 なおアドバンテストグループは、ビジョン・ステートメントとサステナビリティ基本方針を2024年度より更新しています。ビジョン・ステートメントについては「(2) 中長期経営方針「グランドデザイン」」を、サステナビリティに関する最新の基本的な方針については「2 サステナビリティに関する考え方および取組 (1)サステナビリティ全般」をそれぞれご参照ください。

 

(2)中長期経営方針「グランドデザイン」

<2023年度までの経営方針振り返り>

 アドバンテストグループは、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、長期的にどうありたいか、そしてそのために何をなすべきかを定めた10年間の中長期経営方針「グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)」を2018年度に策定しました。そしてこの「グランドデザイン」で描いたありたい姿を実現すべく、2018年度以降、「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」と「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」の2つの中期経営計画をこれまで推進してきました。

 

 この2つの中期経営計画を通じて、アドバンテストグループは、過去主力としてきた半導体量産テスト用システム事業の強化に加え、半導体量産工程の前後工程にある半導体設計・評価工程や製品・システムレベルテスト工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容を拡大することに取り組みました。その結果、アドバンテストの事業ポートフォリオと製品ポートフォリオは充実し、それが顧客からの評価拡大につながり、さらに時宜を得た新製品投入や半導体市場の成長とあいまって業容を想定以上に拡大することができました。

 

 しかし将来に目を転じれば、半導体市場および半導体テスト市場は2018年の「グランドデザイン」策定時に予想した方向に概ね沿って推移しているものの、現下の生成AIの急速な普及に代表されるように、半導体やエレクトロニクス関連産業はダイナミックに進化し続けています。また、アドバンテストグループが対応すべきサステナビリティ関連の課題も、過去に想定したよりも急ピッチで対応の強化・深化が求められていくと思われます。

 こうした状況を総合し、アドバンテストグループが今後さらに発展を遂げるためには、より長期の視点に基づく経営方針が必要な状況にあると判断いたしました。そこでアドバンテストグループは、「グランドデザイン」の時間軸を延長するとともに、その内容をこれまでの経営・事業体制の変化や最新の長期事業環境見通しを踏まえたものへ2024年6月に更新しました。

 

<「グランドデザイン」2024年度改定版>

 最新の長期事業環境見通しを下敷きとしつつ、どうすればアドバンテストグループが顧客や社会にとって価値ある存在であり続けるかを、改めて見直しました。その結果として、今後アドバンテストグループがありたい姿を示すビジョン・ステートメントを下記の内容に更新しました。また、アドバンテストグループが主要なステークホルダーに対して提供すべき経済的・社会的価値を改めて定義し、それら提供価値の拡大をアドバンテストグループの経営における長期的な目標とすることを決定しました。

 

[ビジョン・ステートメント]

「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ」

(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)

アドバンテストグループは、提供価値の拡大を通じ、すべてのステークホルダーから半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーとなることを目指します。

 

[長期事業環境認識と対処すべき課題]

 マクロ的な事業環境における将来の不確実性は、今後も高い状態が継続すると予想されます。気候変動、地政学、人口動態の変化など、世界を取り巻く問題はより深刻化しており、エネルギーや人的資本の不足、サプライチェーンの再配置など、社会課題の複雑化が飛躍的に増しています。

 一方で、AIを代表としてこれら社会課題を解決するためのイノベーションが各産業で進行しており、それらのイノベーションを支える基盤である半導体に対しては、さらなる性能改善と経済合理性の確保に向けた企業間もしくは地域間連携の拡大や、域内供給体制の強化なども今後見込まれます。これらに沿い、半導体バリューチェーンは、その複雑さをさらに増しつつ、中長期的な発展を遂げていくものと想定しています。

 さらに半導体テストの技術的な潮流について展望すると、さらなる微細化、新アーキテクチャの採用、先端パッケージ採用など、半導体の高性能化とエネルギー効率向上を実現するための技術進化が、設計検証や性能試験などの半導体テストの複雑性を今後も持続的に引き上げていく見通しです。とりわけ、今後の半導体市場の最大の成長牽引役と予想されるAIやHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)関連の半導体において、テストの複雑性は一層顕著なものになると目しています。

 このように複雑性の進行が業界のキートレンドとなる中、半導体テスト関連市場は、顧客のテスト能力増強投資を通じて中長期的な市場成長を遂げると予想しています。また今後のテスト・ソリューションにおいては、半導体の品質保証プロセスにおける効率性の向上、すなわち半導体バリューチェーンを横断して工数や作業負荷低減をもたらすような、より高度な自動化 が望まれる方向と分析しています。こうした潮流下において、アドバンテストグループは、より性能に優れる製品の開発・販売に加え、それら製品群を発展・統合した新たなソリューションやサービスを提供することがさらなる中長期の成長機会となると見込んでおり、その機会の具体化を今後の成長施策の基軸とする方針です。また業界全体が複雑化する中にあってはアドバンテストグループ自身においても効率が重要であり、経営および事業全般にわたってさまざまな効率性の向上に取り組みます。

 

[経営における長期的目標]

 半導体は、サステナブルな社会の実現や多様な産業の発展に向けて今後も不可欠な存在とされています。そして現在のアドバンテストグループにおけるほぼ全ての事業は、より性能に優れた半導体の実現と普及に深く結びつくものとなっています。このことからアドバンテストグループが経営理念に基づき、先端の技術開発を通じてより良い半導体の開発と普及に寄与していくことは、自社の持続的な成長のみならず、さらなる「安全・安心・心地よい」社会実現に向けても直接的に貢献する行為であり続けると考えます。

 この考えに基づき、今後アドバンテストグループは、「グランドデザイン」のもと、先述のテストの複雑化への対応などを含めた顧客課題の解決を軸としながらサステナブルな社会実現につながる取り組みを推進し、それを通じて各ステークホルダーに対して提供する経済的・社会的価値を多面的かつバランスよく拡大することをアドバンテストグループの経営における長期的な目標とします。

 

 アドバンテストグループの主要なステークホルダー、および今後拡大を図るステークホルダー提供価値の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方および取組 (1)サステナビリティ全般」をご覧ください。

 

(3)中期経営計画

<「第2期中期経営計画〔MTP2、2021~2023年度〕」の成果>

 アドバンテストグループは、MTP2期間を「中長期的にますます発展が見込まれる半導体市場の中でアドバンテストグループが成長するための基盤固めを進める3年間」と位置付け、成長投資を通じた事業強化と株主還元拡大の双方に向け取り組みました。目標とした経営指標の実績、MTP2における取組みの主な成果、および成長投資と株主還元の実績は以下のとおりです。

 

[経営指標]

 アドバンテストグループは当初、2021年度期首時点の中期的な市場動向の予測に基づき算出した財務指標の見通しを2021年5月に公表しました。その後、半導体テスト関連市場が当初の想定以上に規模が拡大したことを背景に、2022年7月に経営指標を上方修正いたしました。しかしながら、MTP2期間の後半から半導体市況が弱含んだことにより、2023年度の主要な民生品向けの半導体試験装置需要は2022年度と比べて大きく落ち込みました。その結果、当初設定したMTP2の経営指標についてはすべて達成することができましたが、改定後の目標においては、売上高に関しては達成することができた一方で利益を含むその他の指標については未達となりました。

 

 

MTP2(2021~2023年度)

(平均目標)

MTP2

2021~2023年度

(平均実績)*3

 

2021年5月公表値*1

2022年7月修正値*2

売上高

3,500~3,800億円

4,800~5,200億円

4,879億円

営業利益率

23~25%

27~30%

24.7%

当期利益

620~700億円

980~1,200億円

933億円

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)

20%以上

30~35%

28.4%

基本的1株当たり当期利益(EPS)*4

80~93円

128~158円

124円

*1 2021年5月の公表時において前提とした為替レートは1米ドル=105円、1ユーロ=130円

*2 2022年7月の改訂時において2022年度第2四半期~第4四半期および2023年度の業績予想の前提とした為替レートは1米ドル=130円、1ユーロ=140円(2021年度実績は1米ドル=112円、1ユーロ=130円。2022年度第1四半期実績は1米ドル=124円、1ユーロ=134円)

*3 2021~2023年度(平均実績)の為替レートは、2021年度実績は1米ドル=112円、1ユーロ=130円、2022年度実績は1米ドル=134円、1ユーロ=140円、2023年度実績は1米ドル=143円、1ユーロ=155円

*4 アドバンテストは、2023年10月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っております。「基本的1株当たり当期利益(EPS)」は、2021年度期首に当該株式分割が行われたと仮定して、期中平均の発行済株式総数から自己株式数を控除した株式数に基づいて算出しております

 

[MTP2における主な取り組み成果]

 半導体市場やテスト需要の変化を先読みした効果的な製品戦略や顧客・地域戦略を通じ、主力SоC半導体用試験装置「V93000」、メモリ・テスト・プラットフォーム、およびその他製品の売上を拡大するとともに、半導体テスタ市場において市場シェアを伸長することができました。とりわけ、半導体テスタ市場において過半のシェアを得られたことは、今後のアドバンテストグループのさらなる成長に向けた大きな成果と考えています。また今後の中長期的な半導体市場・技術展望に基づき、先端パッケージ等の新たな成長領域に向けた研究開発投資やマーケティング施策を積極的に実施しました。

 さらにこれらオーガニックな成長に向けた取り組みと並行し、さらなる飛躍に向けた戦略の一環として、ノン・オーガニック成長に向けた投資機会も精力的に探索しました。その結果、ここ3年間でパワー半導体用試験装置大手のイタリア・CREA - Collaudi Elettronici Automatizzati S.r.l.社、テスト・インタフェース用PCBに定評ある米国・R&D Altanova, Inc.社と台湾・Shin Puu Technology Co., Ltd.社を買収しました。

 これらの取り組みを通じてアドバンテストグループの成長基盤はより堅固なものとなりました。この成果は、半導体市場の拡大あるいは進化に沿って、順次業績に顕在化していくと想定しています。

 ESG方面の取り組みについては、CxO制を導入することでグローバル経営体制の強化を行ったほか、サステナビリティ関連の活動深化や開示充実を通じ外部機関からのESG評価が向上しました。主な外部からの評価については「サステナビリティ・データブック」(https://www.advantest.com/ja/sustainability/report/)を参照ください。

 

[成長投資と株主還元実績]

MTP2期間累計の成長投資と株主還元実績は以下となります。

 

MTP1(2018~2020年度)

実績

MTP2(2021~2023年度)

実績

研究開発費

1,206億円

1,740億円

設備投資

302億円

639億円

M&A等の戦略投資

477億円

407億円

株主還元額 (配当額+自己株式取得額)

617億円

1,934億円

総還元性向

39%

69%

(※) 総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益

 

<「第3期中期経営計画〔MTP3、2024~2026年度〕」の概要>

 半導体テスト関連市場は、短期的なダウンサイクルを織り込みつつも、中長期的に成長を続けると見込んでいます。MTP3期間においてもそのシクリカルグロース構造に変化はなく、目下の半導体テスト関連市場は調整局面を未だ脱しきれていないものの、2024年度から再び成長サイクルを迎えると見込んでいます。また先述のとおり、半導体市場の拡大に加えて半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中で、アドバンテストグループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。そうした環境下、アドバンテストグループは新たに策定したビジョン・ステートメントに沿い、下記の4つの戦略を推し進めることで中長期的なステークホルダーへの提供価値拡大に取り組みます。

 

[戦略]

1. Outpace the growth in our core market (コア市場の成長率を上回る成長実現)

 これまでの成長戦略に沿い、アドバンテストグループは事業領域を年々拡大してまいりました。その結果、かつては半導体テスタ(ATE)市場が注力すべき市場の大半を占めていましたが、MTP3以降はATEを中核としつつも、これまで広げた領域をコア市場としながらさらなる成長に取り組みます。この拡大したコア市場においては今後、半導体の生産量増加、半導体の高性能化対応、そして半導体の複雑性進行への対応が重要な成長機会となると想定しています。これに対しては、個々のテスト・ソリューションの性能向上に加え、顧客に“Automation of Test”、すなわち半導体テストの効率性向上をもたらす新たな価値を、アドバンテストが擁する多様な製品・ソリューション群の有機的な結合や社外パートナーとの連携などを通じて創造します。これらにより、アドバンテストの今後のコア市場において、市場成長率を上回る事業成長を引き続き実現することを目指します。

 

2. Expand adjacently / new businesses (近縁市場・新規事業領域への展開)

 半導体の高性能化や複雑性が進行する中では、より広く、統合されたテスト・ソリューションが望まれます。アドバンテストグループはこれまでもシステムレベルテストやテスト周辺機器への事業展開を進めてきましたが、今後もこのアプローチを継続することで顧客への提供価値をさらに拡大します。具体的には、アドバンテスト製品のインストールベースを活用したフィールド・サービスやAdvantest Cloud SolutionsTMの販促に取り組むほか、Applied Research Teamによる事業機会創生にも挑戦します。

 

3. Drive operational excellence (オペレーショナル・エクセレンスへの取り組みを推進)

 アドバンテストグループは、Chief Technology OfficerをはじめとしたCxOがグループ全体のオペレーションを管掌するCxO体制へ既に移行しています。今後、各CxOの強いオーナーシップのもと社内技術の活用を部門横断的に進めることで、半導体業界におけるテスト課題を解決していきます。また、アドバンテストグループのステークホルダー全てにとって価値がある企業となるためには、製品や技術面の優秀さだけではなく、あらゆるオペレーションの効率性と効果性を高めていく必要があると認識しています。それに向け、DXを通じた社内オペレーションの迅速化と省人化、強靭なサプライチェーンの構築、有能人財の登用や社員教育の拡充などによる人的資本強化、AIやデータ・アナリティクスを活用した社内生産性向上などに取り組みます。

 

4. Enhance sustainability (サステナビリティの取り組み強化)

 アドバンテストグループにおける長期的な経営の目標は、ステークホルダーに対する提供価値をバランスよく多面的に拡大することにあります。気候変動や人権問題をはじめとするサステナビリティ課題に対する能動的かつ積極的なアクション、法令遵守や企業倫理の徹底を含めた責任ある事業活動の遂行、リスクマネジメントの強化やコーポレート・ガバナンスの高度化などを通じて企業価値向上基盤をさらに強化するとともに、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。これらによりサステナビリティ、すなわち現在の生活水準を維持しつつ、未来の世代が同等またはそれ以上の生活水準を享受できるようにすることに貢献します。またサステナビリティに関する取り組みの推進にあたっては、その根源となるものは企業内の共通カルチャーや価値観であることから、これらの醸成と浸透にも努めます。

 

[経営指標]

 MTP3では、上記の4つの戦略を通じて収益拡大、収益性改善、資本効率向上を図ることで、企業価値の向上に取り組みます。これに沿い、MTP3において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、投下資本利益率(ROIC)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの向上に努めます。なお各指標の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には市場変動の影響を平準化できる3か年平均の値を用います。

 

 

MTP2(2021~2023年度)

平均実績

MTP3(2024~2026年度)

平均目標*1

売上高

4,879億円

5,600~7,000億円

営業利益率

24.7%

22~28%

当期利益

933億円

930~1,470億円

投下資本利益率*2(ROIC) *

21.2%

18~28%

基本的1株当たり当期利益(EPS)

124円

127~202円

*1  MTP3財務目標値の前提とした為替レートは1米ドル=140円、1ユーロ=155円

*2 投下資本利益率:NOPAT÷投下資本(期首・期末平均)。NOPAT:営業利益×(1-税負担率25%)。

  投下資本:借入金+社債+資本合計(リース負債含まず)

 

[コスト・利益構造]

 優れたテスト・ソリューションの販売促進、サプライチェーン・マネジメントや製造オペレーションの最適化などを通じ、売上総利益率の改善に取り組みます。また研究開発投資や人的資本強化投資など、持続的な価値創造の源泉となる費用については積極的に投下する一方、DX化などの経営効率や業務生産性を高める施策を展開することで収益構造の継続的な改善に努めます。他方で、世界経済やアドバンテストの市場環境における将来の不確実性は高い状態にあります。環境変化に即した機動的な財務マネジメントを遂行していくことで、上記経営目標の達成に努めます。

 

[資本政策、株主還元]

 資本政策として、研究開発、設備増強、M&A等の成長に向けた事業投資を優先します。半導体市場の長期的拡大と半導体のさらなる高性能化に即してアドバンテストグループの将来キャッシュ創出力が拡大するよう、MTP3期間中に予想される累計6,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(研究開発費控除前)を、中核事業におけるオーガニック成長投資ないしノン・オーガニック成長投資、および近縁市場への事業展開の加速に振り向けます。また、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用してまいります。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針であります。

 2024年4月から始まるMTP3の3年間における株主還元方針は、安定した事業環境を前提として、配当については1株当たり通期30円を最低限とする方針のもと、安定的・継続的な配当実施に努めてまいります。総還元性向※に関しては、MTP3期間の3年間合計で50%以上を目途といたします。

 また手元現金水準については、平時における目安を1,000~1,200億円と見積もっています。成長投資や運転資本への資金需要を超えて余裕資金が生じる場合は、配当や自己株式取得を通じて株主に還元します。

(※) 総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益

 

(4)2024年度の経営環境および重点施策

 今後のアドバンテストグループを取り巻く事業環境を展望しますと、暦年2024年は半導体需給の改善が期待されるとともに、生成AI関連の投資の活発化が予想され、半導体市場は暦年後半から活況に転じると考えます。半導体試験装置市場においても、生成AIに向けた半導体の需要の高まりに連動して、関連する半導体試験装置需要の増加が見込まれます。具体的には高性能DRAMに向けた旺盛な試験装置需要が通年継続するとともに、SoC半導体用試験装置においても暦年後半以降に徐々に需要が立ち上がることを予想しています。一方で、自動車や産業機器関連では半導体試験装置への投資に一服感が見られることや、スマートフォン市況の回復の不透明感も継続する中、関連する半導体試験装置の回復には時間を要するものと想定しています。このようなことから暦年2024年の半導体試験装置市場は前年からやや上向くものと見込んでいます。他方、世界経済を俯瞰すると、景気後退に対する懸念は払拭されておらず、加えて地政学的リスクの拡大や急激な為替変動リスクなど、不確実性の高い状況が継続すると見ています。

 中長期的には、半導体は社会の隅々まで広がるインフラストラクチャーとして、生産量の増加やさらなる高性能化、品質・信頼性向上への要求もより一層高まっていくものと予想します。また社会要請としての気候変動対策を背景に、エネルギー効率改善を実現する半導体技術の重要度も増しています。半導体メーカーは、技術開発を通じてこのような社会課題の解決に向けて日々取り組みを進めていますが、特に先端半導体においては、設計難易度、製造難易度は年々増しており、まさに複雑性の時代(Era of Complexity)を迎えています。

 このような中、アドバンテストグループの経営理念である「先端技術を先端で支える」を忠実に遂行し、最先端のテスト・ソリューションで顧客の課題解決に貢献することで、半導体のイノベーションを支えながら、より良い社会の実現に寄与していきます。今後とも、すべてのステークホルダーに対する責任を果たすべく、誠心誠意取り組んでまいります。

 

<2024年度重点施策>

• 半導体の複雑化が進む高成長領域に向け、付加価値の高いソリューションの提供と供給体制の拡充

 - HBMなどの高成長領域の急峻なテスタ需要の高まりに応じる供給体制のさらなる増強

 - 先端技術の確立に挑むリーダー顧客の課題を把握し、最先端の試験技術開発と統合テスト・ソリューションを拡充

 - 複雑な半導体の設計からシステムレベル、データ・アナリティクスまで、テスト工程を一貫してカバーする”Automation”の取り組みを通じさらなる顧客価値を創造

• 収益性改善の施策を推進

 - HPC/AI,先端メモリなど高機能半導体における優位性の維持

 - 今後の需要変動にも柔軟に追随するサプライチェーン管理および生産体制の高度化

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 

(1)アドバンテストグループのリスクマネジメント体制について

① 組織

 内部統制委員会が定めたリスクマネジメント方針のもと、各ユニットがリスクマネジメントを行い、その状況を内部統制委員会が監督・評価してフィードバックを行います。コンプライアンスに関するリスクはChief Compliance Officer(CCO)に情報が集約されます。その他、取締役会、経営会議に直接報告されるリスク情報もあります。

 また、有事の際に迅速に対応するため、Group COOを本部長とする危機管理本部も設置しています。

 

② プロセス

 取締役会、経営会議が策定した経営計画を、各ユニットが自部門の施策に落とし込みます。

 内部統制委員会では、それらの施策達成を阻害する要因をリスクと定義し、各ユニット(各本部・事業部門・主要な海外拠点(6拠点))にリスクの特定およびリスク対応の報告を求めるとともに、全社的な視点から各ユニットのリスク分析およびユニット間の情報共有等をサポートしています。各ユニットは、自部門におけるリスクマネジメントの状況を、年2回内部統制委員会に報告します。内部統制委員会は各ユニットのリスクマネジメント状況を確認し、各ユニットに対してフィードバックを行います。内部統制委員会事務局から、各ユニットに対し、適宜、リスク分析・対応の提案、情報提供等の支援も行っています。

 また、コンプライアンスに関するリスクはCCOに情報が集約され、CCOを通じて取締役会、経営会議に定期的に報告されています。コンプライアンスに関するインシデント発生時には、CCOが迅速に関連ユニットに対応を指示し、対応状況を取締役会・経営会議に報告しています。リスクの性質に応じて、取締役会または経営会議に直接報告されるリスク情報もあります。取締役会または経営会議では、適時に意思決定をして関連ユニットに指示を出す等、コーポレートレベルでのリスク対応を行っています。

 緊急の案件が生じた場合には、危機管理本部の指示のもと、より迅速な対応が可能となっています。

 

(2)事業等のリスク

 アドバンテストグループの事業等に関連するリスクにおいて、財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクとして、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項は、以下のとおりです。ただし、これらはアドバンテストグループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

 リスクにおいて想定されるシナリオならびに、リスクへの対応については、個々のリスク項目の中に記載しております。また、「発生可能性」については、短期的視点に加え中・長期的に発生する確率、「影響度」については、発生した際に売上高、当期利益に与える影響により、それぞれ評価しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてアドバンテストグループが判断したものであります。

 

リスク項目マップ

(注)図表の中の記号は、リスク種別ならびに通し記号であり、後述する各リスクの分類と一致しております。

 

(1)外部環境リスク

 (1) - a 業界特性

 

アドバンテストグループの事業と業績は半導体産業の顕著に変動する需要に影響されます。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループの事業は、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリーおよびテストハウスの設備投資に大きく依存しております。これらの企業の設備投資および一般投資は、主に半導体に対する現在および将来の需要、ならびに半導体を利用した製品に対する需要によって決定されます。また、その需要は世界経済の全体的な状況の影響を大きく受けます。

 今日までの経験として、半導体業界の不況時において、一般的に半導体メーカーのテストシステム投資を含む設備投資は、半導体の世界的な出荷額の減少率よりも大きく減少します。半導体業界では、過剰在庫の時期が繰返し発生するなど今まで周期的な動きを示しており、そのことがアドバンテストグループの製品を含め、半導体業界のテストシステムに対する需要にしばしば深刻な影響を与えてきました。

 近年の半導体の複雑化に伴い、信頼性確保の必要性が増大し、同時にテスト効率改善の難易度も高くなる傾向にあり、テスタ需要は今後、持続的に増加することを予想しておりますが、国際政治情勢の大きな変化や深刻な感染症の蔓延等による世界経済への影響による半導体需要変動、テスタ需要変動のリスクは有しています。

 半導体市場の顕著な需要の変動は、以下の様々な要因から影響を受けます。

  ・世界経済の全体的な状況

  ・半導体業界の動向

  ・ニューラルネットワークを活用したAI・人工知能、画像認識、音声認識サービス拡大による高性能半導体市場の動向

  ・通信インフラ投資の水準およびスマートフォンやウエアラブル機器などの通信機器端末の需要の動向

  ・データセンター、パソコンおよびサーバー業界の需要

  ・テレビ、ゲーム端末、VR(バーチャルリアリティ)/AR(拡張現実感)機器を含むデジタル・コンシューマー機器に対する消費者の需要

  ・自動車、ロボティックスおよび医療機器などの産業機器市場の動向

 

 当連結会計年度における半導体市場の需要とアドバンテストグループの業績については、「4.経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績の状況の分析」に記載のとおりであり、アドバンテストグループの業績は、引き続き半導体業界の顕著な需要変動に大きな影響を受けると考えられます。そのため、半導体業界における大規模な不況が発生した場合、過剰な在庫を抱えたことによる棚卸資産の評価損などアドバンテストグループの財務状況と事業成績に、悪影響を及ぼすこととなります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、半導体量産工程の前後にある、半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場への事業拡大を図るとともに、生産のアウトソース化推進、リカーリングビジネスや新規事業を含むサービス他事業の強化により、需要の変動にも対応できる体制構築に取り組んでいます。

 

 (1) - b 外部環境への感度

アドバンテストグループの事業は、国際的な事業展開に伴う経済的、政治的またはその他のリスクを有します。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは世界中で部品の調達、製品の生産および販売を行うため、その事業は国際的な事業展開に伴うリスクを有しております。アドバンテストグループの当連結会計年度の総売上高に対し、台湾、中国および韓国への売上が大半を占めるアジア地域(日本を除く)は84.6%、米州は7.7%、欧州は3.6%を占めております。海外事業での売上高は、今後も継続して売上高全体の大きな割合を占めると予想されます。また、アドバンテストの販売・サポートの子会社は米州、欧州および台湾、シンガポール、韓国、中国等のアジア地域に展開し、サプライヤーや生産工場も韓国やマレーシア、アメリカなどの海外に展開しております。したがって、アドバンテストグループの将来の業績は、以下を含む様々な要因から悪影響を受ける可能性があります。

 

・ 米中貿易戦争や経済安全保障の影響による輸出入制限や許認可制度の歪みを受け、アドバンテスト製品の需要喪失や製品・サービスを供給できないリスクあるいは部品が調達できないことによる供給力低下リスク

・ 政治、経済、技術の覇権争いあるいはテロ・戦争等における国家間の関係悪化等による社会的・政治的混乱が発生するリスク

・ 部品を調達し、製品を生産および販売する国における政治的、経済的な混乱、紛争、自然災害、疫病またはその他のカントリー・リスク

・ 税法の改定または当局との見解相違による潜在的なマイナス影響

・ 移転価格税制等の国際税務に関するリスク

・ 事業展開が広範囲におよぶための人事・管理面の困難性

・ 異なる知的財産保護制度

・ 遠隔地であることおよび法規制が異なることによる売上債権回収の困難性

・ サプライヤーや生産工場が、機械加工および組立のインフラのレベルが発展途上の国にある場合の調達および生産における品質低下のリスク

・ 地球温暖化に伴う局所的な重大災害発生がサプライヤーや生産工場の操業停止を招き、製品製造や出荷が遅延・停滞するリスク

・ 各国、各地方環境当局の環境規制によるサプライヤーの生産停止リスク

・ サプライチェーンにおいて低品質品および模造品が混入した場合の、コストの増加や納期の遅延および商品修理費用が発生するリスク

・ サプライチェーンにおいて人権侵害に関与するリスク

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、海外拠点のリスクに関する情報収集をタイムリーに行うことに加え、顧客およびサプライヤーとの関係構築をより一層強化するとともに、サプライチェーンリスクの見える化、カスタム要素の高い専用部品の供給契約の締結、調達ルートや生産拠点の拡張を図りつつ、環境や人権などにも配慮したエシカルサプライチェーンの構築に向けての活動を進め、経済や政治動向に左右されにくい体制構築に取り組んでいます。またサプライチェーンにおける人権問題に関しては、調達方針を定めた上でサプライヤーに対して人権や労働安全に対する取り組みの理解を求める働きかけを行うことでリスクの軽減を行っています。

 

 (1) - c 諸規則改変

利用している化学物質に対する規制の強化や環境関連の法規制の厳格化が行われた場合には、その対策に多額の費用が発生する可能性があります。

発生可能性

影響度

アドバンテストグループが利用している化学物質の中で、その製造、処理および販売に関し、日本の政府機関や外国の様々な業界組織、またはその他の規制機関の環境関連法と規則が適用されるものがあります。そしてこれらの規制機関は、アドバンテストグループが使用する化学物質に対して、適用される既存の規制強化や、新たな規制に乗り出す可能性があります。アドバンテストグループは、製品に組み込む部材に含まれる有害物質の排除を進めておりますが、製品の信頼性の確保を優先するため、電子部品の取付けにおいては、一部の製品を除き鉛の含まれるはんだを使用しております。また、半導体・部品テストシステムやメカトロニクス関連製品の冷却方式では、使用に関わる法的規制を受けていないフッ素系液体を一部使用しております。アドバンテストグループは、製品の安全性や信頼性の確保を第一に、製品の環境対策を進め、化学物質の使用における規制を遵守していると考えておりますが、特定の国において規制要件が変更された場合には、関連する変更に対応しなければなりません。新しい要件への対応のために多額の費用がかかる可能性があります。関連する政府または業界規制への対応ができない場合、販売の継続または拡大の妨げとなる可能性があります。地球環境問題については、温室効果ガス排出規制、エネルギー効率規制、欧州サーキュラーエコノミーに関する規制、炭素税等の環境関連の法規制が将来さらに厳格化した場合に、その対応のため多額の費用が発生する可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、環境規制に係る化学物質の動向ならびに法規制についてモニターするとともに、化学物質については代替技術の検討を行っています。

 

 (1) - d 競合他社

アドバンテストグループは激しい競争に直面しており、シェアを維持、拡大できない場合は、ビジネスが損なわれる可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは世界中で激しい競争に直面しております。アドバンテストグループの主要な競合企業は、半導体・部品テストシステムの市場においては、Teradyne, Inc.、Cohu, Inc.、YC Corp.、UniTest Co., Ltd.、EXICON Ltd.、Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech) および Beijing Huafeng Test & Control Technology Co., Ltd.(Accotest) 等があります。メカトロニクス関連の市場においては、テスト・ハンドラでは、Cohu, Inc.、TechWing Inc.、Hon. Precision, Inc. および Hangzhou Changchuan Technology Co., Ltd.(CCTech) 等、デバイス・インタフェースでは、TSE Co., Ltd.、ISC.Ltd. および BeLINK Co.,Ltd. 等と競合しております。一部の競合企業はアドバンテストグループよりも多くの資金、その他の資源を有しております。

 アドバンテストグループはその事業において、テストコストの削減につながる半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品を望む顧客からの圧力が強まるあるいは顧客によるテストシステムの内製化など、多くの課題に直面しております。デバイス・インタフェースについては、リカーリングビジネスである特性(顧客のランニングコストに相当)故、常に強いコスト削減要求を受けており、競合企業がビジネス確保のため、コア技術部品のベンダーを買収したり、高性能を実現する上で不可欠なPCBの設計/製造技術が競合企業に流出した場合、製品性能の優位性と価格決定主導権を喪失し、ビジネスの維持/確保が困難になります。

 アドバンテストグループが競争に打ち勝ち、シェアを維持、拡大していくためには、継続的にそのビジネス・プロセスを改良して製品コストを削減する、あるいは全体的なテストコストを低減させる必要があります。また、競合他社が今後も価格と性能の向上した新製品を投入し、そのカスタマー・サービス/サポートの提供を増強し続けたり、新規参入企業による低価格テスタの投入などが予想されます。競争が大幅に激化した場合、アドバンテストグループの利益が減少する可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、顧客ニーズを把握した上で、競合についての情報収集・分析を行い、独自技術、付加価値の高いソリューションを提供することで、製品競争力が維持できるよう努めています。

 

 (1) - e 災害・壊滅的損失(災害)

主要な研究開発施設、生産施設、情報技術関連施設、製造委託先またはサプライヤーの施設が巨大な損害を被った場合、業績に重大な打撃を受けることになります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の国内の主要な研究開発施設、生産施設ならびにサービスの拠点は、群馬県、埼玉県および宮城県にあります。また、主要な基幹システムサーバーとネットワークのハブは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の承認を受けたシステムセンタに設置され、さらに、日本の一部の事業所にもローカルにサーバーが設置されております。

 日本は地震が起こる可能性の高い地域であり、これらの施設、特に半導体・部品テストシステムの工場が地震、洪水等による巨大な損害を受けた場合、事業に支障を来し、製造、出荷および収益に遅れが生じ、施設の修理または建て直しのために巨額の費用が発生する可能性があります。アドバンテストグループは、地震以外の原因によるほとんどの潜在的な損失をカバーする保険に加入しておりますが、これらの保険は起こり得る損失すべてを十分にカバーしない可能性があります。また、製造委託先、サプライヤーの施設、または情報サービス網の施設が同様の重大な損害を受けた場合も、アドバンテストグループの事業に支障を来す可能性があります。

 アドバンテストグループは、大規模災害等の危機発生時に備え、各部門で対応手順書を定めておりますが、さらに、基幹事業を停止させないこと、停止した場合でも重要な設備を含め可能な限り短期間で再開させることを目的として、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し実施しております。しかしこのBCP計画が有効に機能しない場合には、大規模災害等の危機発生時に基幹業務が停止し、再開に長期間を要する可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、BCP計画を策定するとともに、生産拠点や外部サプライヤーの分散化、クラウドの活用によるデータの分散保存等により、事業運営に支障が出ないように努めています。

 

(2)意思決定リスク

 (2) - a 事業価値評価/投資判断(M&A/資本業務提携)

企業買収により生じるのれんおよび無形資産は、多額の減損損失を計上し、アドバンテストグループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

 有形固定資産、のれんおよび無形資産については、減損の兆候が存在する場合に、減損テストを行っております。のれんについては、減損の兆候の有無を問わず、年次での減損テストも行っております。

 減損損失は、資産、資金生成単位(CGU)またはCGUグループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に認識しております。特に企業買収により生じるのれんおよび無形資産においては、利上げに伴う割引率の上昇や、期待されるシナジー効果が出せずに多額の減損損失を計上した場合、アドバンテストグループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、M&A等の事業取得に際しては、資本コストを意識した回収可能性を十分に考慮したうえで投資判断を行っています。また、M&A後に、戦略・販売網・管理体制・従業員意識・情報システム等を有機的に機能させるため、Post Merger Integration(PMI)計画を遂行し、シナジー効果の早期実現を目指しています。

 

 (2) - b 製品ライフサイクル

アドバンテストグループが顧客の技術面の要求を満たす新製品を競争力のある価格でタイムリーに投入できない場合、既存の製品が陳腐化し、財政状態および経営成績に影響を及ぼします。

発生可能性

影響度

アドバンテストグループは、急速な技術変化、新しい製品やサービスの頻繁な導入、変化する予測不可能なライフサイクル、進化する業界標準を特徴とするいくつかの産業界に向けて製品を販売しております。アドバンテスト製品の将来の需要の大部分は、現在設置されている半導体テストシステムでは適切に対応されていない新しいテストニーズを生み出す半導体の技術革新によるものであると予測しております。これらの技術革新に対応する顧客のニーズ、および市場環境に対応したより高い費用効果と効率に対する顧客のニーズには、次のものが含まれます。

· より高度なメモリ半導体、ロジック、アナログまたはセンサ回路を搭載したSoC半導体に対応したソリューション

· 大小のモーター駆動を制御するパワー・デバイスのテスト・ソリューション

· 3D実装技術など先端パッケージ技術を用い、ロジックやメモリなどヘテロジニアス(異種)チップ同士を高度に集積した、複雑なSoCに対応するソリューション

· 電気的特性とタイミング特性を測定、評価することで最先端の半導体プロセスをモニターするパラメトリック試験ソリューション

· より高速に、正確に、安定的にデバイスやシリコンダイを搬送するメカトロニクス関連製品

· 半導体チップに組み込まれる自己診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション

· 試験チップ周辺回路に搭載される診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション

· 最終製品の性能を保証するシステムレベルテストのソリューション

· 試験環境を動的かつ繊細にコントロールするテスト温度ソリューション

· 故障時の迅速な対応と修理に要する時間の最短化

· 顧客のテストコストを削減できるようなトータル・ソリューション

· 最先端フォトマスクのパターン寸法計測、および欠陥観察に対応したソリューション

· 顧客の最新のテスト対象デバイスとテスト仕様に合わせた治工具類

 また、アドバンテストグループは、半導体・部品テストシステムをはじめとするアドバンテスト製品の需要が、パソコンや高速無線および有線通信のデータ・サービスならびにデジタル・コンシューマー機器、EV自動車、先進運転支援システム(ADAS)、さらにスマートフォン、ウエアラブルおよびデータセンターなどの通信端末に対する需要レベルに、強く影響されると考えています。これらの製品とサービスに使用されている技術の発展により、新しいテストシステムが必要になると思われます。アドバンテストグループが新技術を用いて効果的にテストおよび測定できる半導体テストシステムをタイムリーに投入しなければ、既存の製品とサービスは時間の経過につれ技術的に陳腐化します。

 アドバンテストグループが顧客の技術的要件を満たす製品を競争力のある価格であるいはタイムリーに供給できない場合、その製品が競合他社の製品または代替する技術ソリューションに置き換えられる可能性があります。さらに、アドバンテストグループが製品の価格競争力やタイムリーな供給に必要な人材を十分に確保できなかった場合や、顧客が要求する性能基準を満たし許容可能な価格で製品を提供できなかった場合、その顧客による評価を著しく損なうことになります。そのような評価の低下により、将来その顧客に対する製品やサービスの営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、主要な顧客との技術交流イベントを開催し、最先端ソリューションに関する情報交換の機会を設けることで、次の技術革新、新しい製品、および目まぐるしいスピードで創出される新市場を特定することに努めています。そして、次世代や将来を見据えた要素技術の基礎的な研究や、製品開発の初期段階から量産に向けた生産技術の開発を行っています。また、アドバンテストグループは、PDF Solutions社との業務提携により、半導体製造工程のデータ解析を活用し、顧客ニーズをタイムリーに捉え潜在的な需要も考慮する新製品の研究を行っています。

 

 (2) - c ビジネス・ポートフォリオ

アドバンテストグループの主な製品の市場は極めて集中しており、販売機会が限られているため、製品の売上を拡大できない可能性があります。

発生可能性

影響度

 半導体・部品テストシステム事業の中でも、特にメモリ半導体用テストシステムの市場は極めて集中したものであり、少数の大きな半導体メーカーとファウンドリーおよびテストハウスが業界全体の売上に大きな割合を占めております。このような業界状況は、近年の半導体業界において、大手の半導体メーカー、ファウンドリーおよびテストハウスによる企業の買収や事業の統廃合などの再編が進むことにより、一層加速していると考えられます。アドバンテストグループの売上の増加は、大口顧客から受注を獲得し増加させることができるかどうかに大きく依存します。また、半導体メーカーの統廃合により過剰な設備が中古市場に流れた場合や、あるいは製品が個別仕様への対応に遅れをとった場合にも、製品の販売機会を失うリスクがあります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、様々なアプリケーションに対応した製品を展開することで、顧客とのパートナーシップを強化し、販売機会を逃さないよう努める一方で、新規事業の立ち上げ、M&A等により、事業領域の拡大を目指しています。

 

 (2) - d 事業価値評価/投資判断(設備投資)

アドバンテストグループは、設備投資を回収できない可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、設備投資を継続的に行っています。設備投資に対して、顧客の設備投資の抑制により想定した販売規模を達成できない、あるいは競合他社との激しい競争による製品単価の下落などにより、設備投資を回収することができない、または回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、アドバンテストグループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、資本コストをベースとした回収可能性を十分に吟味したうえで投資判断を行っています。また、投資後は事業成長率をベースにモニターし、資産の有効活用を図っています。

 

 (2) - e 製品開発

アドバンテストグループは新製品の開発コストを回収できない可能性があります。

発生可能性

影響度

 既存製品の改良と新世代製品の開発は、ほとんどの場合多額な費用を必要とします。さらに、半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品の購入決定は高額な投資を伴うため、一般的に販売活動に要する期間が長く、販売に至るまで多大な支出と営業活動を必要とします。アドバンテストグループが製品を改良し新世代の製品を投入したとしても、顧客ニーズの変化、競合他社による新技術・新機能搭載製品の投入、顧客による異なる試験機能を必要とする新製品投入、または顧客の製品がアドバンテストグループの期待する速度、レベルで成長しないことにより短期間で時代遅れとなれば、開発と営業の費用を上回る売上高を達成できない可能性があります。場合によっては、業界動向を先取りし、顧客側の製品実用化よりも先に製品の開発を行わなければならないため、革新的技術によるビジネス上の実現可能性を判断する前に、多額の投資を行わなければなりません。したがって、顧客がそれらの製品を迅速に投入できない場合や、またはそれらの製品が市場に受け入れられない場合、アドバンテストグループは販売量の増加による製品開発投資のコストの回収に失敗する可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、技術交流会等を通じて顧客ニーズを満たす製品ロードマップの策定や、製品のプラットフォーム化による開発効率の向上、ROICによる投資効果の事前評価等により回収率の向上を図っています。

 

 (2) - f 価格設定

アドバンテストグループの製品は価格低下圧力を受けております。

発生可能性

影響度

アドバンテストグループが事業において受けている部材コストアップ、製品価格低下圧力は、営業利益率に悪影響を及ぼします。昨今、多くのアドバンテスト取引先部品メーカーが材料費の高騰を理由に部品価格の値上げを実施しています。一方で、アドバンテスト顧客の半導体メーカーは材料費高騰を生産性の向上、テストコスト低減等で吸収しようと努力しており、アドバンテスト製品価格低下への圧力は依然強い状況です。

また、近年、複数社ベンダー方式を導入する顧客の増加により、一層の価格低下圧力を受けています。今後、価格低下圧力がさらに強まれば、アドバンテストグループの将来の財務状況と事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、独自技術、付加価値の高いソリューションを提供することで、顧客納得感のある製品価格が維持できるよう努めるとともに、生産コスト低減による利益率の向上にも継続的に取り組んでいます。

 

(3) 財務 価格リスク

 (3) - a 外国為替

為替変動が収益性に影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の95.9%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約72%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。アドバンテストグループが販売にあたり使用する外貨(主に米ドル)が円高に転じた場合、必ずしも製品価格に転嫁することはできないため、アドバンテストグループの売上に悪影響を及ぼす可能性があります。なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、円と外貨(主に米ドル)の間の大きな為替変動により、海外において円建てで販売される製品価格を引き下げなければならない場合や、また米ドルやその他の外貨建てで販売される製品売上の円相当額が減少した場合には、収益性に影響を及ぼす可能性があります。これらの変動により、製品価格が相対的に高くなり、潜在的な顧客による抑制または先送りが生じる可能性があります。過去において、アドバンテストグループが販売にあたり使用する外貨と円との間の為替レートに、大きな変動が生じたことがあります。

 また、子会社の報告通貨の外国為替レートが円に対して変動した場合、アドバンテストグループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。外国為替レートの変動は、外貨建ての金額を連結財務諸表の報告通貨である円に換算する金額に影響し、為替変動の向きによってはアドバンテストグループの財政状態、経営成績および純資産の状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、保有通貨のバランスを調整することに加え、為替予約取引等の金融商品を利用すること、外貨建て金融資産負債が相殺されるようなバランスシート管理を行うことで、為替変動による影響を少なくするよう努めています。

 

(4) 財務 流動性リスク

 (4) - a 市場の集中

アドバンテストグループの売上高は、上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、これらの1社または数社を顧客として失うことや上位顧客の設備投資の変動が、アドバンテストグループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの上位顧客の財政状態が悪化した場合、売上債権の回収リスクが発生します。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループの成功は、重要顧客との関係を継続的に発展させ管理することにかかっております。現在ではこれらの少数の顧客が売上高の大きな割合を占めております。顧客上位5社による売上高は、前連結会計年度の売上高全体の約28%および当連結会計年度の同約29%を占めております。これら主要顧客の1社または数社を失うことや主要顧客の設備投資の変動あるいは主要顧客の主要な製品の成否が、アドバンテストグループの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、多額の債権を有する顧客の財政状態が悪化し、期限どおりの支払が得られない場合、アドバンテストグループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、営業効率に配慮しつつ、新領域の参入を含め、新興市場や新規顧客の開拓により、幅広い顧客層を獲得することを目指しています。

 

 (4) - b キャッシュ・フロー

アドバンテストグループは、必要な時に資金調達ができないリスクを有しています。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、必要な運転資金について、営業活動により稼得した現預金を充当するほか、企業買収や急激な経済状況の悪化などで資金調達が必要になった場合には社債の発行や金融機関からの借入れ等を行うことがあります。金融市場が不安定になったり、信用力悪化でアドバンテストの信用格付が引き下げられた場合には、アドバンテストグループにとって好ましい条件で適時に資金調達をできる保証はなく、アドバンテストグループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、急激な需要変動に耐えられるよう堅固な財務体質を築くとともに、コミットメントラインの活用などを通じて十分な流動性を確保しています。また、資金調達が必要な場合に即時に実行できるよう、複数の金融機関と良好な関係を維持しています。

 

(5) ガバナンスリスク

 (5) - a サクセッション・プラン

Group CEO等経営層の後継者計画が機能しない場合、経営の安定性と持続可能性を確保できない可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストのGroup CEOを含む経営執行役員および各ユニットにおけるキーポジション(執行役員クラス)の後継者計画が機能しない場合は、経営の安定性と持続可能性を確保できない可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、Group CEOの後継者計画については、指名報酬委員会で、(1)求められる人財要件の整理、(2)候補者の選定、(3)候補者の人物評価、(4)候補者の絞り込み、(5)候補者の育成等について、経営執行役員から構成される経営チームの観点も考慮して、審議、実行しています。さらに、取締役会は指名報酬委員会からの報告を受け、主体的にその内容について議論しています。その結果として、2024年4月1日付で、Group CEOを吉田 芳明氏からダグラス ラフィーバ氏に変更しました。今後の後継者計画についても、同様のプロセスで進めていく予定です。各ビジネス・ユニット、ファンクション・ユニットのリーダー等のキーポジションの後継者計画については、Group CEOを責任者とする検討委員会で毎年レビューされています。さらに、検討委員会で策定された方針に基づき、執行部門は後継者候補に対してトレーニングや育成計画を設計・実行し、指名報酬委員会および取締役会に適宜状況を報告しています。

 

(6) 評判リスク

 (6) - a イメージ/ブランド力

アドバンテストグループは、ブランド力の毀損または信用喪失などにより、財務状況および事業成績へ悪影響を受ける可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、法令や社会的倫理に違反する行為、あるいは製造物責任を含む安全性・信頼性・製品性能などの低下によりブランド力の毀損または信用を喪失する恐れがあり、結果として取引の停止や制裁など社会的措置を受ける可能性があります。

 なお、ISO9001など世界的に認められている品質管理基準にしたがって製品の生産を行っておりますが、これらの製品について欠陥がないという保証はありません。一方、製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。したがって部品の品質不良や製品の製造不良による出荷停止や納期遅延、製品の欠陥による大規模な事故の発生や、製品の障害発生および不適切な障害対応による顧客対応費用の増大や、損害賠償請求などを受ける可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、コンプライアンス部を設置し、会社信用保全のために法令等の遵守意識を高める活動を全社的に継続して行っています。また、安全性・信頼性が高い製品の提供ができるようにステートゲートシステム等に代表されるプロジェクト管理手法を運用し、各フェーズにおいて品質を含む定期的な開発レビューを行っています。さらに、生産過程において様々な品質確認を行っていることに加え、品質保証部門によるクロスチェックにより品質の安定化に努めています。

 

(7) 情報処理 / IT リスク

 (7) - a インフラ

アドバンテストグループがビジネス上の基幹システムや基幹プロセスのデジタル・トランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことができなかった場合、アドバンテストグループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

 データとデジタル技術で企業の競争力を高める取り組みであるデジタル・トランスフォーメーションは、IoTや人工知能を駆使したデータ活用による製造現場の革新、生産設備と物流のデータ共有による新価値創出、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経営環境の変化への対応など幅広い分野で期待が高まっています。

 しかし、アドバンテストグループがデジタル・トランスフォーメーションを進めるにあたり、既存のITシステムの老朽化や複雑化やブラックボックス化により、データが十分に活用されない、あるいは既存システムの維持や保守に資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができない等によって、データ活用が進まなかった場合、競争力を失う、古いシステムの維持管理費が高額化する、またはシステムの保守運用担当者の退職や高齢化によるシステムトラブルやデータ滅失などが発生し、アドバンテストグループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、保有しているITシステムを洗い出し、用途・継続性と市場の新しい技術への代替を推進しています。また、Digital Workplace(デジタル技術が創造する職場)のコンセプトをグローバルに展開し、組織がイノベーションを起こす機会に繋げることに努めています。

 

 (7) - b 情報セキュリティ

アドバンテストグループの情報技術ネットワークやシステムが被害を受けたり妨害されたり停止した場合、業務の継続を妨げ、社会的信用を失いかつ多額の費用負担が発生する可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、機密データや個人情報を含む電子情報の処理、送信、蓄積のために、また製造、研究開発、サプライチェーンの管理、販売、会計などを含む様々なビジネス活動およびそのサポートのために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムに頼っています。アドバンテストグループは情報セキュリティ委員会が、情報セキュリティ対策の方針制定を行っております。また、情報技術ネットワークやシステムについては、前述の方針に基づき、IT部門が構築・運用しております。しかし、ハッカーやコンピューターウイルスによる攻撃、情報セキュリティシステムの誤用、不注意な使用、事故や災害などがあった場合には、アドバンテストが実施する防御を超え、業務の継続を妨げ、情報の漏洩やその情報が改竄される恐れがあるだけでなく、法的請求、訴訟、損害責任、罰金を払う義務などが発生し、社会的信用、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、サイバー攻撃に対する常時監視による検知強化や定期的な情報セキュリティ教育を通じた従業員のリテラシー向上に努めています。また、Advantest CSIRT※を構築し、情報セキュリティインシデントに対する初動体制を構築しています。

※CSIRT(Computer Security Incident Response Team)

 

(8) 業務運営リスク

 (8) - a 外部からの調達

部品が調達できないことにより製品をタイムリーに提供できない、あるいは市場の急拡大に伴う需要に対応しきれない場合には、将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、その製品の製造に関し、組立作業の一部をサプライヤーに委託しております。また、アドバンテストグループの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品における多くの部品は、サプライヤーがアドバンテストグループの仕様に沿って製造したものであります。サプライヤーへの依存により、生産工程に対する管理は届きにくく、生産能力の不足、出荷遅れ、基準未満の品質、労働力の不足、高コストなど、重要なリスクに直面する可能性があります。さらに、アドバンテストグループは、一部の部品または部分品に関して1社または少数のサプライヤーに依存しており、ほとんどの部品および部分品に関して長期間の供給契約を結ばずに個別の発注で購入しております。

 サプライヤーが部品または部分品を必要な数量または満足できる価格で提供できなくなった場合、サプライヤーの事業の撤退等により既に採用または今後採用するカスタム部品および汎用部品の生産もしくは販売が中止となった場合、あるいは大規模な災害や電力不足が発生した場合、条件に合った代替品を見つけて仕入れなければならず、それができなければ、テストシステムの供給能力が損なわれる可能性があります。

 今後半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の市場が急激に拡大した場合には、人員増を含む生産能力を大幅に増強することや、需要が増加する部品を、サプライヤーから適時適切に確保することが必要となってきます。サプライヤーを選び、適切な代替部品または部分品を選定するのは時間のかかる作業であるため、それができなければ、顧客の要求に合った製品をタイムリーに提供できなくなる可能性があります。製品需要の大幅な増加に対応しきれない場合、既存の大口顧客を失う、または今まで取引関係の少なかった、あるいは全くなかった潜在的な大口顧客と強い関係を築く機会を失う結果を招く可能性に加え、受注取消し、製品納入時期の変更調整が発生する可能性があります。その結果、アドバンテストグループの将来の市場シェアおよび棚卸資産の評価損等、財政状態と事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、社内ワーキンググループ活動を行い、最新技術を考慮した製品設計に関するルールにしたがって、部品ライフサイクルを考慮しながら、複数調達先を候補とする標準部品リストを作成・更新し、特定のサプライヤーに過度に依存しない体制の構築に努めています。さらに、部品および部分品のサプライヤー選定時には、様々なリスクを考慮したベストパートナー探しを行い、継続的な評価・見直しを行っています。また、部品入手性を向上させる取り組みとして、主要サプライヤーとの供給保証契約の締結交渉や、前工程加工を済ませたウエハーの状態で備蓄する「ダイバンク」等で、中間品を確保する対応を行っています。

 

 (8) - b 人的資本

労働力市場は競争が激しいため、アドバンテストグループが多様な専門技術スタッフや多様な運営上の重要なスタッフを採用し維持できない場合等により、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、変化の激しいエレクトロニクス業界において事業を発展させるため、開発、製造、マーケティング、営業、保守サービスなどの分野において専門技術に精通した多様な人財や、経営戦略や組織運営上のマネジメント能力に優れた多様な人財の採用および育成を継続的に行い、維持していくことが重要であると考えております。

 しかしながら、必要な人財を継続的に採用し維持するための競争は激しく、働く環境の改善が遅れ、アドバンテストグループの制度が時流に則さないものとなったり、報酬水準の競争力が下がったりして従業員にとって魅力が薄れ人財が流出した場合、社員教育が不十分であった場合、または人財の高齢化、退職に対し知識や技術の伝承が不十分であった場合、アドバンテストグループの事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、多様で経験豊かな人財のグローバルベースでの幅広い採用、確保を目指します。そのため、経営戦略や人財育成基本方針、社内環境整備方針に基づき、中長期的な採用計画(新卒およびキャリア採用)の策定、ミッション・ビジョン・バリューの浸透活動、働く環境の改善やエンゲージメント向上の取り組み、外部競争力のある報酬水準の確保、一部キーエンジニアに対するリテンションRSU(譲渡制限付株式報酬)の導入、社員教育への投資、知識・技術伝承の仕組みづくり等により人財の安定化を図っています。

 

 (8) - c 知的財産権

アドバンテストグループは、知的財産に関するリスクとして、第三者にその知的財産を侵害したと主張される可能性、およびアドバンテストグループの知的財産を適切に保護できない可能性があります。

発生可能性

影響度

 アドバンテストグループは、意図せず第三者の知的財産権を侵害し、その結果、侵害の責任を問われる可能性があります。この場合、高額な賠償、裁判費用、またはライセンス料を支払わなければならない可能性や、製品を販売できなくなる可能性があります。

●対応

 アドバンテストグループは、リスクを軽減するため、第三者の知的財産を侵害することのないよう、製品開発時や製品出荷前において知的財産調査等の実施に努めています。

 また、アドバンテストグループは、各国で特許権、実用新案権、意匠権、商標権および著作権等を取得することにより、アドバンテストグループの知的財産を保護しています。しかし、アドバンテストグループの知的財産を侵害していると思われる第三者の製品を入手し侵害を立証することは一般的に困難でもあります。アドバンテストグループは、その知的財産権を第三者による侵害から保護することを重要と考え、今後も第三者の製品を監視し、適切な知的財産権の保護に努めてまいります。また、アドバンテストグループの顧客に対してもコンプライアンス遵守する旨、発信していきます。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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