オリンパス(7733)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

TOP関連銘柄

事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


オリンパス(7733)の株価チャート オリンパス(7733)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 オリンパスグループは、オリンパス株式会社(オリンパス)、子会社80社、関連会社2社及び共同支配企業1社で構成されており、消化器内視鏡ソリューション事業及びサージカルインターベンション事業を主な事業とし、さらに各事業に関連する持株会社及び金融投資等の事業活動を展開しています。
 次の「消化器内視鏡ソリューション事業」及び「サージカルインターベンション事業」の2事業は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に掲げるセグメントの区分と同一です。

 なお、オリンパスグループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」の2区分を報告セグメントとしていましたが、中間連結会計期間より、「消化器内視鏡ソリューション事業」及び「サージカルインターベンション事業」の2区分を報告セグメントとすることに変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。

 

区分

主要製品及び事業の内容

主要な会社名

消化器内視鏡ソリューション

消化器内視鏡、消化器科処置具、
医療サービス

オリンパス

(連結子会社)

オリンパスメディカルシステムズ㈱、

オリンパスマーケティング㈱、
会津オリンパス㈱、白河オリンパス㈱、長野オリンパス㈱、

青森オリンパス㈱、ティーメディクス㈱、
Olympus America Inc.、Olympus Europa SE & Co. KG、

Olympus Deutschland GmbH、

KeyMed (Medical & Industrial Equipment) Ltd.、
Olympus Winter & Ibe GmbH、

Olympus (Beijing) Sales & Service Co.,Ltd.、

Olympus (Suzhou) Medical Device Co., Ltd.、
Olympus Korea Co., Ltd.、Olympus Singapore Pte. Ltd.、

Olympus Vietnam Co.,Ltd.

(共同支配企業)

Swan EndoSurgical, Inc.

サージカルインターベンション

泌尿器科製品、呼吸器科製品、

外科内視鏡、

エネルギー・デバイス、

耳鼻咽喉科製品、婦人科製品

オリンパス

(連結子会社)

オリンパスメディカルシステムズ㈱、

オリンパスマーケティング㈱、
白河オリンパス㈱、青森オリンパス㈱、ティーメディクス㈱、

Olympus America Inc.、Olympus Europa SE & Co. KG、

Olympus Deutschland GmbH

Gyrus ACMI, Inc.、Olympus Winter & Ibe GmbH、
Olympus (Beijing) Sales & Service Co.,Ltd.、
Olympus Korea Co., Ltd.、Olympus Singapore Pte. Ltd.

(関連会社)

ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ㈱

共通

持株会社、金融投資

オリンパス

(連結子会社)

Olympus Corporation of the Americas、

Olympus Europa Holding SE、Olympus Europa SE & Co. KG、

Olympus (China) Co.,Ltd.、

Olympus Corporation of Asia Pacific Limited.、
Olympus Global Treasury Services Limited

 

以上に述べた事項を事業系統図によって示すと、オリンパスグループの2026年3月31日現在の状況は次のとおりです。

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 オリンパスグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてオリンパスグループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 オリンパスグループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。また、2024年1月には、グローバル・メドテックカンパニーとして変革するため、従業員の行動規範である「Our Core Values」を改定しました。

 オリンパスグループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

 

 また2023年4月以降、「患者様の安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」、「生産性の向上」の3つを基本的な指針として掲げています。誠実で透明性のある企業であり続けるために、規制当局やステークホルダーと協力して、強固で持続的な組織の構築に努め、ヘルスケア業界ならびにESGを主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者様の安全を第一に掲げ、QA/RA(品質保証および法規制対応)に注力し、「グローバル全地域での品質システムと業務プロセスの統一を目指した改革の実施」「グローバルな品質・コンプライアンス機能の強化による、一貫した施策の展開」「コンプライアンス上の問題を解決したうえで、是正活動の完遂」等の取り組みを推進します。そして、長期的な戦略に沿った高品質な製品・サービスをさまざまな分野で提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

 

(2) 経営戦略

 経営理念の実現のためにオリンパスは2023年に新たな経営戦略を発表しました。

 

(長期的かつ持続的な成長のための戦略的な価値の源泉)

 今後は、「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、主要セグメントにおけるオリンパスの市場ポジションの拡大や、最終的に患者様の体験価値と治療成果の改善を目指しています。これに資する長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、4つのキードライバーとして、「ⅰ)事業拡大とグローバル展開」「ⅱ)戦略的M&A」「ⅲ)ケア・パスウェイの強化」「ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム」です。

ⅰ)事業拡大とグローバル展開

 世界的な人口動態の変化と疾病発生の増加を受けて、オリンパスの製品・サービスが対象とする疾患に対するソリューションへのニーズが高まる中、引き続きオリンパスがリーディングポジションを持つ消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域に注力し、「先進イメージング」「精緻な治療」「高付加価値ソリューション」を通じて、患者様のケア・パスウェイに最適なソリューションを提供します。

・主力の消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」:2021年3月期に欧州、アジア、日本で、2024年3月期には米国、中国でも発売しました。今後さらなる拡販を目指します。

・シングルユース内視鏡:2022年3月期に気管支鏡を、2024年3月期に咽喉鏡を発売しました。2025年3月期には尿管鏡を発売予定であり、今後は十二指腸鏡、胆道鏡の領域においてもシングルユース内視鏡の発売を目指しています。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)

・中国市場:オリンパスにとって戦略的に重要な市場の一つであり、「臨床医の教育プログラムやトレーニングへの投資」「中国の医療従事者のアンメットニーズの探索」を継続します。また、中国国内に現地生産拠点を準備中で、中国市場向けに中国国産製品を提供することを検討しています。

 

ⅱ)戦略的M&A

 消化器科、泌尿器科、呼吸器科における既存の疾患領域や高い成長が期待できる関連分野において、タックイン M&Aの機会を通じて製品ポートフォリオを継続的に強化し、「臨床・治療ワークフローの変革」「ケアの向上」「事業の地理的拡大」を図ります。包括的なソリューションの提供によって患者様の治療成果の向上に貢献していきます。

 

ⅲ)ケア・パスウェイの強化

 オリンパスは、医療水準の向上によって患者様のアウトカムを改善することを目指しています。消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域を中心に、早期発見や診断、ステージ分類、治療、予後のケアに至るまでのケア・パスウェイの中で、オリンパスのソリューションを通して患者様と医療従事者のエクスペリエンスを向上させ、より多くの患者様に医療アクセスを提供し、診療の質と成果を改善します。

 

ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム

 慢性疾患の増加と高齢化を受けて、より良い治療成果をより多くの人に届け、医療提供者と患者様のエクスペリエンスを向上させながら、医療コストを抑えることの必要性が一層高まっています。オリンパスはこのような課題に対して、コネクティビティ、AI、データインサイトを活用したインテリジェント内視鏡医療によるソリューションの提供を検討しており、「ワークフロー管理」「CAD*およびリアルタイムな手技の支援」「AIによる臨床・業務インサイト」等を通じて、ユーザーエクスペリエンスを標準化していきます。AIを活用したインテリジェント内視鏡医療エコシステムは、新たなソフトウェアプラットフォームによって、お客様、オリンパス、そして、パートナー企業との間で価値の共創を可能にし、プラットフォームのソフトウェアやアプリケーションのアップグレードによって、常にイノベーションを提供し続けるビジネスモデルに移行することを目指し、より精度の高い早期発見、診断、治療を実現していきます。

*Computer Aided Detection/Diagnosis:AIによる検出/診断支援

 

(投資とイノベーションを可能にする取り組み)

 オリンパスは、投資やイノベーションといった価値創造の取り組みを実現する基盤の強化のため、特に以下の4点に注力して取り組んでいます。

・QA/RA:一貫性のある強固な品質システム導入や体制強化によるQA/RAの改革および是正活動の完遂

・R&D:イノベーションの加速に向けたR&D投資のスピードアップと投資額の増加。より強固なイノベーション・パイプラインの構築、より積極的な戦略パートナーシップ推進、市場投入までの期間の短縮

・製造、サプライチェーンマネジメント:売上原価の改善、組織規模と拠点構造の最適化、プロセスの合理化とデジタル化、更なる効率化の追求

・GTOM(Global Target Operating Model):グローバルのガバナンスとオペレーションの継続的な改善。意思決定プロセスの明確化、イノベーション推進に向けたより効率的なリソース配分を可能にするハイパフォーマンスな組織の実現

 

(財務ガイダンス)

 2024年3月期から2026年3月期の3年間の財務ガイダンスは以下の通りです。「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、約5%の売上高CAGRと、20%前後の調整後営業利益率を維持しつつ、EPSは売上成長を上回る約8%のCAGRを目指し、安定的な価値創造と競争力のある成長を実現していきます。

* 為替前提を固定

** 特殊要因調整後:その他の収益および費用等を除く。為替レート変動による影響は調整せず。実際の為替レートを使用

 

(3) 総合的な品質変革プログラム「Elevate」

 基本的な指針における「患者様の安全と持続可能性」に関連して、オリンパスは2024年3月期から2026年3月期までの3年間、QA/RAシステムやプロセス、ケイパビリティを強化するための取り組みを実施しています。このプログラムを通じて、オリンパスの潜在能力を最大限に引き出すとともに、将来のイノベーションに向けた強固な基盤を構築し、持続的な成長の実現に繋げていきます。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 オリンパスグループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性があります。オリンパスグループは、経営理念や企業戦略などの事業目的達成を支援するため、グローバルなエンタープライズ・リスクマネジメント手法を導入しており、リスクマネジメントは、「リスクマネジメント及び危機対応方針」及び関連規程に基づいています。また、オリンパスグループは、「機会」と「脅威」の両面からエンタープライズ・リスクマネジメントに取り組んでいます。機会は、オリンパスグループの持続的な成長と価値創造につながる積極的かつ適切なリスクテイクを通じて捉えられる一方、脅威は、事業目標の確実な達成とコンプライアンス違反の防止のために特定され、優先順位をつけて対処されます。

 2023年4月よりオリンパスグループは、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(以下、GRC)に関連するリスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティの4つの機能を統合し、グローバルGRC組織として新たに立ち上げました。加えて、既存のエンタープライズ・リスクマネジメント・ポートフォリオを先進的な手法に移行し、オリンパスの全ての機能で、この強化された方法にしたがってグローバルなリスクポートフォリオを検証、改良するためのリスク評価を実施しました。

 特に注力したエンタープライズ・リスクマネジメントの活動は以下の通りです。

- グローバルなリスクコントロール機能の構築

- グローバルな手法とアプローチの構築

- グローバルに調和したプロセスの構築

 これらの活動に注力することで、合理的なエンタープライズ・リスクマネジメントが実行され、事業計画及び財務計画にリスクを反映することを企図しています。また、十分な情報に基づいた経営の意思決定をサポートすることで、オリンパスの事業目標と企業戦略の達成の確度を高めることを目指しています。

 

エンタープライズ・リスクマネジメントの組織体制

 オリンパスグループは、グローバルおよび地域レベルの新しい委員会組織として、グローバル及び地域リスクアシュアランス・コンプライアンス委員会(以下、G-RACC、R-RACC、総称してRACCs)を設立しました。RACCsは、リスクに対処し、適用される方針、法律、規制を遵守するための枠組みを確立、実施、管理することを目的としています。また、勧告、指導、重要リスクについては、グループ経営執行会議(以下、GEC)、取締役会、 監査委員会に定期的に報告され、継続的なモニタリングが行われます。

 また、リスクオーナーとして、グローバル事業・機能責任者、地域事業・機能責任者を任命しました。また、各事業・機能でリスク管理を担うリスクコーディネーターを任命しました。リスクオーナーは、自身が管轄する領域において対策(例:組織体制、プロセス準備、重点対策など)を講じる責任を負います。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント体制>

 

 

エンタープライズ・リスクマネジメントの手法とアプローチ

 オリンパスグループでは、5つのリスクカテゴリー(1.戦略(外部環境変化を含む)、2.オペレーション&製品、3.ファイナンス、4.ガバナンス、5.IT&デジタル)、及びそれらを具体化したサブカテゴリーによるエンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチを用いています。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント リスクカテゴリー>

 

 また、オリンパスグループでは、事業目的の達成や企業戦略に影響を及ぼす可能性のある個々のリスクを評価し、明示するために、3つのリスク評価基準(1.エクスポージャー、2. 脆弱性、3.速度)を用いています。

- エクスポージャーは、発生可能性と発生時の影響によって決定します。可能性とは、リスクが顕在化する確率を示し、影響度とは、リスクが顕在化した場合の結果の重大性を示します。可能性と影響度のレベルは、定量的(財務的数値に基づく)または定性的基準として評価します。

- 脆弱性(Vulnerability)とは、リスクが発生した場合に、組織がそのリスクを管理する準備がどの程度できているかを示します。

- 速度 (Velocity)とは、リスク発生後、オリンパスがどの程度の速さでリスクの影響を受けるかを示します。

 これらの基準に基づき、オリンパスグループは積極的にリスクを特定、軽減し、監視しており、対応策を定期的に見直し、有効性を検証しています。また、リスクを可視化して管理するため、エクスポージャー、脆弱性、速度を組合わせてリスク評価結果を4つの象限に分け、当該リスクにどのように対処するべきかについて示す「3Dリスクマトリックス」と呼ばれる手法を用いています。さらに、最新のITツールを用いたデータベース及びダッシュボードを導入することにより、十分な情報に基づくリスクベースの意思決定を行うための支援も行っています。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント評価手法>

 

エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス

 オリンパスグループのエンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスの主な構成要素は以下の通りです。

- リスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価)

- 対応策(リスクの低減、リスクマネジメント活動の実行及び調整)

- リスクモニタリング(リスクモニタリングプロセスの設計、実施、リスクトリートメント活動の有効性の評価)

- リスク報告(リスク及びその対応策を集約・評価し、関連するステークホルダーに定期的に報告する。リスク報告は、リスクマネジメントの年次計画の一部として立案・社内へ展開される)

 エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスでは、スリーラインモデルの考え方に沿って、リスクコントロール機能と各事業・機能が緊密に連携を行っています。また、リスクコントロール機能は、エンタープライズ・リスクマネジメント手法及び運用ガイダンスを提供、維持、開発する責任を負っており、新しい組織体制・手法の社内への浸透を進めています。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス>

 

マクロ経済ビジネス環境

 ウクライナにおける戦争と中東情勢の影響により、世界のマクロ経済が大きな影響を受けており、エネルギー価格は上昇し、世界レベルで高止まりしています。さらに、インフレの進展は、引き続きサプライチェーンの混乱の影響も受けています。顕著な技能労働者の不足もあり、経済と消費の全体的な減速につながっていましたが、供給サイドの問題が解消され、金融引き締めが続く中、ほとんどの地域でインフレ率は想定よりも早く低下しつつあります。

 また、地政学的な不安定性は経済成長にとって最大の脅威の1つであり、他にもサイバー攻撃、大きな災害を伴う異常気象、原材料や部品の調達から製品供給までの不確実性などに起因し、潜在的な影響の大きいサプライチェーン・リスクは近年増加しています。貿易摩擦が激化し、原材料の安定的な調達が難しくなることで、原材料価格の上昇や製品の供給不足が発生しており、サプライヤー管理の強化に集中的に取り組む必要があります。

 さらに、世界的に環境問題への意識が著しく高まっており、あらゆるステークホルダーからの要請が増加しています。

 技術面では、あらゆる領域でデジタルトランスフォーメーションが加速しています。それに伴い、開発サイクルの短縮が求められる傾向にあり、いわゆる技術革新領域(AI/ロボット/ICT)の実用化も進んでいます。

 

業界特有のビジネス環境

 医療分野では、医療費の抑制や医療サービスの安全性・有効性の向上による患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指し、国内外で医療制度改革が継続的に実施されています。その結果、米国食品医薬品局(以下、FDA)や欧州医療機器規制(以下、EU-MDR)をはじめ、各国の医療機器申請・登録に対する法規制要件は年々厳格になっています。また、感染予防や再処理(洗浄・消毒・滅菌)に関する要件も複雑化しています。

 各国の医療政策の変化、医療費の削減、医療関連法規の強化、感染予防や再処理に対する要求のさらなる高まりなどにより、技術開発のハードルや複雑さは増しています。それに伴い、新技術や代替技術だけでなく、IT技術大手をはじめとする異業種からの医療業界への参入もあり、事業環境は厳しさを増しています。

 さらに、先進国を中心に社会の高齢化が進むにつれ、医療に対するニーズは確実に高まっています。高騰する医療費を適正化し、効果的で質の高い医療サービスを提供するため、各国で医療制度改革が進められています。また、このような状況下、オリンパスグループが関わる事業領域には多くの競合他社が存在し、技術革新も進んでおり、特に治療機器事業における競争は、一層激化しています。

 中国市場では、米中貿易摩擦が激化し、国産優遇政策や集中購買の推進など、不透明感が強まっており、今後も注意が必要ですが、オリンパスグループは、中国市場を持続的な成長が期待できる市場であると認識しています。その他の新興国市場においても、経済成長とともに医療ニーズが高まっており、さらなる成長が期待出来ると考えています。

 また、オリンパスグループが事業を展開する業界では、 グローバルで人材獲得競争が激化しており、労働市場の変化で退職率の高まりもみられ、人材の採用・育成・確保がますます重要になっています。

 

 

オリンパスグループのリスク状況(2024年3月期)

 2024年3月期に実施したグローバルリスクアセスメントに基づき、リスクを特定・評価しました。

 3Dリスクマトリックスにおいて"Improve"の領域に特定されたリスクについては、対応策の優先順位を高く設定しています。"Test"の領域に特定されたリスクについては、既にコントロールが実施されていますが、同時に、定期的なモニタリングにより、既存のコントロールが適切にかつ効果的に機能しているか、確認しています。"Monitor"の領域に特定されたリスクは、エクスポージャーが許容可能なレベルであることを継続的に確認し、必要に応じて追加の対応策を設定します。

 

 

リスクカテゴリー:戦略(外部環境変化を含む)

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーは、「計画・資源配分」、「事業開発・投資」、「コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント」、「マーケットダイナミクス」、及び「不可抗力」のサブカテゴリーで構成されています。最も高いリスクとして評価されたのは、地政学の脅威、サプライチェーンの中断、不安定な市場における事業展開であり、このカテゴリーには市場・競合状況に関するリスクも含まれています。以下はその一例です:

•価格、技術、品質等において、競争力を有する製品を適時に投入する必要がありますが、その成否によっては収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

•M&A先の選定には、機会と脅威の両方があり、リスクに基づいた慎重な選定、契約前のデューデリジェンス、デューデリジェンス結果をフォローアップする統合プロセス、契約後のデューデリジェンスが必要ですが、その成否によってはオリンパスグループの事業遂行に影響が生じるほか、のれんの減損や、その他これに伴う費用の発生など、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

対応策

 オリンパスグループでは、上記のリスクに対応するために以下の対応策を実施しています。

•市場における代替技術・製品の出現などを含めた競争環境を注視し、マーケティングや知的財産および関連部署との協力の下で、採用すべき新技術の選定および開発の迅速化に努めています。社内での開発のみならず、M&Aやアライアンス等を通じた社外の技術の取り込みも積極的に検討するとともに、市場ニーズに即した高付加価値の新製品・技術の開発にも取り組んでいます。

•サプライチェーンの脆弱性を低減するための、サプライチェーンのビジビリティを高める取り組み。

•グローバルな事業継続マネジメントシステムの強化。

•合併・買収プロセスの見直しと強化。

経営戦略・方針との関連:成長のためのイノベーション、生産性の向上

 

リスクカテゴリー:オペレーション&製品

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「研究開発」、「製造・修理」、「エンド・ツー・エンド・サプライチェーン」、「販売・マーケティング・サービス」、「品質」、「資産」、及び「人的資源」のサブカテゴリーで構成されています。最も重大なリスクは、製品品質、エンド・ツー・エンドのサプライチェーン、マーケティング&セールスに存在します。これらは、製品のライフサイクルだけでなく、製品の安定的な供給に関するリスクも含まれています。以下はその一例です:

•2023年3月期にFDAより受領した警告書のフォローアップ活動に関連し、大規模な品質改善プログラムと改善活動の推進により、製造、品質、サプライチェーンマネジメント、及び研究開発の非常に多くのリソースが用いられ、通常行うべき業務とリソースのバランスを保つ必要があり、その成否によってはオリンパスグループの事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。

•地政学的危機、自然災害、その他サプライチェーン上の課題が増加する中で、サプライチェーンの外的な混乱に対するオリンパスの回復力を更に向上させる必要性を認識しています。自然災害リスクが顕在化した例としては、令和6年能登半島地震があり、オリンパスの製造機能にとって重要なサプライヤー及び当該サプライヤーからの短期・中期的な原材料供給に影響を与えています。

対応策

 オリンパスグループは、患者様の安全に最も重点を置き、顧客に高品質な製品・サービスを提供するため、エンド・ツー・エンド・サプライチェーンの安定と品質プロセスの改善に注力しています。

主な活動は以下の通りです:

•品質マネジメントシステムと品質プロセスをグローバルかつ持続的に強化し、調和させるために、グローバルな複数年にわたる品質プログラムを実施。

•サプライチェーンの可視性を向上させ、特定のサプライヤーに依存しない体制を構築するためのプロジェクトを実施。

•グローバルな事業継続マネジメントシステムの強化。

経営戦略・方針との関連:患者様の安全と持続可能性、生産性の向上

 

 

 

リスクカテゴリー:ファイナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「資本構造」、「会計・報告」、「流動性・信用」、「収益サイクル」、及び「税務」のサブカテゴリーで構成されています。

 オリンパスグループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品およびサービスを提供しており、為替についてのリスクを認識しています。為替が円高に推移した場合、オリンパスグループの業績に悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響を与える可能性があります。外貨建債権・債務について可能なものについてはヘッジを行っていますが、急激な為替変動が生じた場合、あるいはヘッジの対象となる債権・債務の発生が予定と大きく異なった場合、オリンパスグループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 資金調達のリスクについて、オリンパスグループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境変化によっては、オリンパスグループの資金調達に影響が生じる可能性があります。また、オリンパスグループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、オリンパスグループの資金調達に悪影響が生じ、一方、業績良化等により資金調達コストが低下した場合、好影響を与える可能性があります。

 さらに、世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等により、追加の税負担が生じる可能性があります。繰延税金資産については、経営状況の変化や組織再編の実施等により、回収可能性の評価を見直した場合、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となる可能性があります。そのような事態が生じた場合、オリンパスグループの業績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

 この他にも、オリンパスグループでは、顧客や取引先等の信用リスクなども認識しています。

対応策

 オリンパスグループでは、為替変動リスクを軽減することを目的として、先物為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化などを通じて、外貨建債権・債務の縮小を図っています。

 資金調達に関するリスクに対しては、コマーシャル・ペーパーや公募社債の発行等、資金調達手段の多様化による調達コストの低減に取り組んでおり、長期の有利子負債は基本的に固定金利を採用することで、金利上昇の影響を限定的にしています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化や財務管理の強化を図っています。

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等に関しては、法令の改正や規則の変更に対するモニタリングを行いながら、社内の取引ルールを適宜見直していきます。繰延税金資産については、グループ各社の収益性をモニタリングしながら、それぞれの会社が適切な収益を確保出来る様に業績を管理することに加えて、グループ会社間の組織再編においても再編後の収益性の変化に留意することでリスクの最小化を図ります。

 また、信用リスクについては、与信先の財務状態等をモニタリングの上、必要に応じた対応を行います。

経営戦略・方針との関連性:生産性の向上

 

リスクカテゴリー:ガバナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「カルチャー」、「規制、法務」、「コンプライアンス」、「データプライバシー」、及び「コーポレートガバナンス」のサブカテゴリーで構成されています。以下はその一例です:

•契約管理プロセスと契約管理データベースの統合が不十分なことで、透明性の欠如を引き起こし、契約違反やクレーム、債務を誘発する可能性があります。

•多くの医療機器規制や法律、複雑な貿易規制に直面しており、書類の不備や違反が直ちに製品供給に影響を及ぼす可能性があります。

•2023年3月期にFDAから受領した警告書で指摘された事項に対して実施中の是正活動は、規制を遵守するために完全に実行する必要がありますが、今後の経過によっては、FDAによりさらなる規制措置が取られる可能性があります。

•グローバルに一貫した事業継続マネジメントシステムの統合に遅れが生じる可能性があります。

対応策

 これらのリスクに対して実施・継続している主な活動は、以下の通りです。

•契約管理プロセスの評価および強化。

•規制要件に対応する改善プロジェクト及び全社の品質向上プログラムを統合し、総合的な品質・規制対応を強化。また、グローバルなメドテック企業での経験と知見を有する社外取締役で構成される品質保証及び法規制委員会を設置し、同プログラムの活動の監督および戦略的な助言を実施。

•オリンパスと規制当局の間における、計画と期待の整合性を確保するための緊密なコミュニケーションの確立。

•グローバルに一貫した事業継続マネジメントシステムを構築し実行するためのプロジェクトをキックオフし、既存の事業継続措置との統合を目指す。

経営戦略や方針との関連:患者様の安全と持続可能性

 

 

 

リスクカテゴリー:IT&デジタル

リスクタイプ:機会と脅威

リスクシナリオ

 このカテゴリーは、「ITセキュリティ・サイバー」、「ITアプリケーション」、「ITガバナンス」、「ITインフラ・サービス」及び「デジタル」のサブカテゴリーで構成されています。オリンパスにおいてはサイバーセキュリティ侵害のリスクを重く評価しており、常に注意と対応が必要だと考えています。

 また、患者様への治療の質と効率を向上させるために、オリンパス製品にデジタル技術を活用することが増えており、サイバーセキュリティの侵害に対する対策は、製品開発からバリューチェーン全体に及んでいます。

対応策

 サイバーセキュリティ侵害を回避し、適切に管理するための最も重要な対応策は以下のとおりです。

•ITおよび情報セキュリティに関する取り組みの維持・管理のため、ITおよび情報セキュリティ機能を強化。全社的なセキュリティ態勢強化のため、グローバルプロジェクトを実施・継続

•エンタープライズ・リスクマネジメントシステムに直結する、ITリスクマネジメントフレームワークを導入

•サードパーティのプロバイダーとのセキュリティおよび連携要件を見直し、強化

•サイバーセキュリティ侵害が顕在化した際に顧客や患者様への影響を最小限に留めるため、事業継続管理を全社で整合させるプロジェクトのもと、事業継続計画と災害復旧計画を強化

 •サイバーセキュリティ侵害から製品とデジタルサービスを守るため、最新のサイバーセキュリティ要件を考慮した技術やプロセスなどの対策を講じるための全社的な取り組みを開始

•サイバーセキュリティの脅威や日常の業務で取ることのできる回避策について、従業員教育を定期的に実施

経営戦略・方針との関連:患者様の安全と持続可能性、生産性の向上

 

 リスク評価手法の変更およびリスクポートフォリオの全面的な見直しにより、リスクの内容および順位を変更しました。この結果、以下のリスクは前述のトップリスクよりも評価が低くなったため、上記に記載していません。なお、これらのリスクはすべて、オリンパスグループのリスクポートフォリオに含まれており、現在も対応・モニタリングを行っています。

•訴訟に関するリスク

•人材に関するリスク

•気候および環境を含むサステナビリティに関するリスク




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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