三井物産(8031)の事業内容、事業の状況や経営戦略、事業等のリスクについて

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事業の状況や経営戦略など
事業などのリスク


三井物産(8031)の株価チャート 三井物産(8031)の業績 沿革 役員の経歴や変遷

3【事業の内容】

 三井物産及び連結子会社は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進

等の各分野において、総合商社である三井物産を中心として全世界に広がる事業拠点とその情報力を活用し、多種多様な

商品の売買、製造、輸送、ファイナンス等各種事業を多角的に行っています。さらには資源・インフラ開発プロジェクトの構築、環境・新技術・次世代燃料やウェルネスに関連する事業投資やデジタルを活用した価値創出等の幅広い取組みを展開しています。

 

 三井物産は本店に事業別の事業本部を置き、各事業本部は担当事業領域毎に地域本部及びブロックと内外一体となった総合戦略を立案し、傘下の関係会社とともに全世界で事業活動を展開しています。地域本部及びブロックは地域戦略の要として担当地域を任されており、事業本部と連携しつつ各々傘下の関係会社とともに幅広い多角的な事業を行っています。

 これらの事業本部並びに地域本部及びブロックを、IFRS第8号「事業セグメント」による開示に当たり、経営者による経営資源の配分に関する意思決定やその業績評価の方法、取扱商品またはサービス等の内容を勘案した事業領域の性質に基づく7つの事業別セグメントに分類しています。

 

 三井物産グループの連結決算対象会社の総数は446社であり、その内訳は連結子会社が海外206社、国内72社、持分法適用会社が海外136社、国内32社となっています。

 

セグメント

取扱商品または

サービスの内容

主要な子会社

主要な持分法適用会社

金属資源

鉄鉱石、原料炭、銅、ニッケル、アルミニウム、合金鉄・金属リサイクル 他

三井物産メタルズ、Mitsui Iron Ore Development、Mitsui Iron Ore Corporation、Mitsui Resources、Japan Collahuasi Resources、Mitsui & Co. Mineral Resources Development (Latin America)

INNER MONGOLIA ERDOS ELECTRIC POWER AND METALLURGY GROUP、日本アマゾンアルミニウム

エネルギー

天然ガス・LNG、原油、石油製品、環境・次世代エネルギー 他

三井エネルギー資源開発、Mitsui E&P Middle East、Mitsui E&P USA、MEP Texas Holdings、Mitsui E&P Australia Holdings、Mitsui E&P Italia B、MEP South Texas、Mitsui & Co. Energy Trading Singapore、Mitsui & Co. LNG Investment USA、Mitsui & Co. Energy Marketing and Services (USA)、MIT SEL Investment、Mypower、e-dash、MIT RNG USA

ENEOSグローブ、JAPAN ARCTIC LNG、Japan Australia LNG (MIMI)、Mitsui E&P Mozambique Area 1

機械・

インフラ

電力、海洋エネルギー、ガス配給、水、物流・社会インフラ、自動車、建設・鉱山機械、産業機械、鉄道、船舶、航空 他

Mit-Power Capitals (Thailand)、MIT Wind Power、ミットパワーインディア、MITSUI GAS E ENERGIA DO BRASIL、Ecogen Brasil Solucoes Energeticas、MIZHA ENERGIA PARTICIPACOES、Shamrock Investment International、Mitsui & Co. Infrastructure Solutions、三井物産プロジェクトソリューション、東京国際エアカーゴターミナル、MIT Energy Southern Africa、Mitsui Water Holdings (Thailand)、GUMI BRASIL PARTICIPACOES、Toyota Chile、MITSUI AUTO FINANCE CHILE、Mitsui Auto Finance Peru、HINO MOTORS SALES MEXICO、Komatsu-Mitsui Maquinarias Peru、KOMEK MACHINERY Kazakhstan、MBK USA Commercial Vehicles、Ellison Technologies、MBK USA AUCTION、Autorentas del Pacifico、OMC SHIPPING、東洋船舶、三井物産エアロスペース

SEA TERMINAL MANAGEMENT & SERVICE、SAFI ENERGY、IPM Eagle、India Yamaha Motor、太陽建機レンタル、KOMATSU AUSTRALIA、Penske Automotive Group、PT. Bussan Auto Finance、Hino Motors Manufacturing (Thailand)、WILLIS MITSUI & CO ENGINE SUPPORT

化学品

石油化学原料・製品、無機原料・製品、合成樹脂原料・製品、農業資材、飼料添加物、化学品タンクターミナル、住生活マテリアル 他

三井物産ケミカル、日本アラビアメタノール、MMTX、Shark Bay Salt、ITC ANTWERP、MMCP、MIT Clean Energy、Intercontinental Terminals Company、三井物産プラスチック、Mitsui Plastics Trading (Shanghai)、Diana Elastomers、Mitsui AgriScience International、Mitsui Agro Business、Novus International

SMB建材、MVM Resources International、Nutrinova Netherlands、Ourofino

鉄鋼製品

インフラ鋼材、自動車部品、エネルギー鋼材 他

三井物産スチール、STATS (UK)、Regency Steel Asia

GRI Renewable Industries、日鉄物産、エムエム建材、Gestamp Brasil Industria De Autopecas、GESTAMP 2020、NuMit

生活産業

食料、ファッション、ヘルスケア、
EX(Employee Experience/従業員体験) 他

United Grain Corporation of Oregon、プライフーズ、KASET PHOL SUGAR、Mit-Salmon Chile、三井物産流通グループ、WILSEY FOODS、MKU Holdings、マックスマーラジャパン、ビギホールディングス、三井物産リテールトレーディング、三井物産サプライチェーン・ソリューションズ、エームサービス

フィード・ワン、IPSP Oriental Holding Company、スターゼン、DM三井製糖、Euricom、Minh Phu Seafood、MNインターファッション、IHH Healthcare

次世代・

機能推進

 

アセットマネジメント、キャピタルソリューション、保険、バイアウト投資、ベンチャー投資、商品デリバティブ、物流センター、ICTサービス、サイバーセキュリティ、BPO、デジタルマーケティング、TVショッピング、メディア、不動産 他

 

三井情報、三井物産セキュアディレクション、ワールド・ハイビジョン・チャンネル、M&Y Asia Telecom Holdings、三井物産インシュアランス・ホールディングス、三井物産アセットマネジメント・ホールディングス、SABRE INVESTMENTS、三井物産都市開発、MBK Real Estate Holdings、Mitsui Bussan Commodities、三井物産グローバルロジスティクス

QVCジャパン、アルティウスリンク、JA三井リース

 


有価証券報告書(2024年3月決算)の情報です。

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述は、現時点で三井物産が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、三井物産の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。

 

(1)中期経営計画の進捗状況

 2023年5月に公表した中期経営計画2026「Creating Sustainable Futures」の初年度となった2024年3月期においては、依然として先行き不透明なビジネス環境下でもリスク管理を徹底しました。同計画で掲げているグローバル・産業横断的取組み、ポートフォリオ経営の深化、基礎収益力向上に向けた取組み、サステナビリティ経営の更なる深化、グループ経営力の強化が着実に進捗しました。主な進捗は以下のとおりです。

 

1)グローバル・産業横断的取組み

 中期経営計画で定めた3つの攻め筋に沿って、厳選した成長投資を着実に実行しました。

 

  (a)Industrial Business Solutions

 FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の順調な立上げや稼働に加え、デジタルインフラの領域に進捗がありました。りらいあコミュニケーションズの公開買付け及びKDDIエボルバとの経営統合により、アルティウスリンクが発足しました。同社は、国内最大規模のコンタクトセンター事業者となり、生成系AIの活用等デジタル化によるサービスの高度化を進め、デジタル業務アウトソーシング(デジタルBPO)のリーディングカンパニーを目指します。また、三井物産が知見を有する領域とその周辺領域における事業群の形成・強化を推進しました。モビリティ分野では、ペルーの鉱山機械販売・サービス会社への出資を実行、建機・鉱山ソリューション事業群を形成しました。北米では、展開する自動車事業との相乗効果が見込める米国トラックオークション会社への出資を通じ、北米モビリティ・バリューチェーンの強化と事業群の形成に取り組んでいます。

 

  (b)Global Energy Transition

 タイのガス火力発電の順調な立上げや、台湾洋上風力発電、ベトナムBlock B天然ガス田開発における最終投資決断の実行等、将来の安定収益基盤拡充に向けた取組みを進めました。また、デンマークにおける、再生可能エネルギー電力等を活用するe-メタノール製造販売事業、ポルトガルにおける再生可能ディーゼル及び持続可能な航空燃料(SAF)の製造事業、米国における再生可能天然ガスの製造事業等に参画しました。引き続き、脱炭素社会の実現に向け、さまざまな分野でパートナー各社と協働し、先進国・新興国のバランスを兼ね備えた事業ポートフォリオの構築を進めていきます。

 

  (c)Wellness Ecosystem Creation

 タンパク質・ニュートリション・ウェルネス領域で積極的な成長投資を実行しました。タンパク質領域では、市場成長を背景に継続的な需要増が見込まれ、飼料効率が良いこと、育成期間が短く市況耐性を有していること、比較的安価に提供できることから、鶏とエビに注力し事業群形成を推進していきます。当連結会計年度においては、世界最大のエビ養殖事業者であるエクアドルIndustrial Pesquera Santa Priscila、飼料原料調達からブロイラーの生産・加工・販売まで一貫して展開するエジプトWadi Poultryに参画しました。また、米国Celaneseとの長年のパートナーシップに基づき、機能性食品素材を製造販売するNutrinovaに参画しました。さらに、ウェルネス領域では、国内大手給食事業者エームサービスを完全子会社化し、フードサービス事業の強化に取り組みました。

 

2)ポートフォリオ経営の深化

 欧州機関車リース事業会社Mitsui Rail Capital Europe、豪州電力事業会社International Power(Australia) Holdings、米国Kaikias油田等、資産リサイクルを推進しました。他方で、全社ポートフォリオマネジメントの視点から投資案件を厳選し、3つの攻め筋に沿った成長投資を実行しました。

 

3)基礎収益力向上への取組み

 既存事業の収益力強化や効率化、ターンアラウンドの推進及び新規事業の収益貢献により、中期経営計画では1,700億円の基礎収益力向上を目指しています。2024年3月期時点では、既存事業強化により200億円、ターンアラウンドと赤字事業からの撤退により250億円、新規事業の収益貢献により100億円、合計で550億円まで基礎収益力拡大が進捗しています。

4)サステナビリティ経営の更なる深化

 脱炭素社会の実現に向けた事業ポートフォリオ変革を進める中、当連結会計年度は発電事業ポートフォリオにおいて、再生可能エネルギー事業の最終投資決断や、石炭火力発電事業の売却に進捗がありました。また、自然資本の分野において、社会の関心が高まる中、自然への依存・影響の把握と分析を進め、10事業を重要な領域と特定し、三井物産ポートフォリオの良質化につなげるべくリスク審査機能強化や、自然資本を機会とする案件の推進につなげています。同時に、事業活動における人権尊重の取組みを強化すべく、取引実施にあたっての人権に関連する詳細調査の実行主体をコーポレートスタッフ部門から事業現場に一部移管するなど、実効性向上に向けた取組みを進めることで、将来リスクの低減につなげています。

 

5)グループ経営力の強化

 デジタルや知的資本等の三井物産グループアセットの活用を促し、1人当たりの生産性向上を加速させています。現場での主体的なDX推進を加速させるため、全役職員のデジタルスキルを向上させ、ビジネスモデルの変革を担うDX人材を育成しました。全社での更なる生産性向上に向け、既存業務の棚卸等、定型業務の効率化を加速させています。また、三井物産がさまざまな国や産業における事業を通じて培ったビジネスナレッジ・ノウハウ等を知的資本と位置づけ、その活用を促進しています。

 

6)グローバルでの多様な個の活躍推進

 社員一人ひとりがより自分らしく活躍するために、幅広いフィールドの中で自身のキャリアを自律的に形成できる仕組みづくりを目指し、2024年7月1日より新たな人事制度を導入します。新人事制度では、旧来の「担当職」と「業務職」を廃止し、「総合職」として統合した上で、自身のキャリア・ライフプランに応じて勤務地限定の有無を定期的に選択できるようにします。また、グローバルでの適材配置を支えるタレントマネジメントシステム「Bloom」の全世界での展開に向け、海外拠点にて先行導入しています。人は、三井物産にとって最大の資産であり、さまざまなバックグラウンドと強みを持つ多様な「個」が協働し、経営資源を最大限活用しながら、自らビジネスを創り、育て、展(ひろ)げ、新たな価値を世界中で生み出しています。

 

7)進化を続けるガバナンス体制

 2024年3月期は、ガバナンス委員会、経営会議、取締役会等において三井物産の執行体制及び機関設計に関する議論を実施し、監査役会設置会社の機関設計を維持しつつ、社外取締役比率を上げ、社内外取締役人数を同数とするなど、ガバナンス体制を変更することを決定しました。

 また、取締役会では、経営課題への対応の進捗状況を検証するため、個別案件のみならず、全社的な課題に関する付議・報告を行っています。2024年3月期は、コンプライアンス体制、サステナビリティ経営、労働安全衛生管理体制及びウェルビーイング経営、資産ポートフォリオ、リスクエクスポージャーとコントロール、サイバーセキュリティ対応等の全社的な課題について付議・報告が行われました。個別案件審議においては事前説明をより一層丁寧に行うなど、取締役会の審議の更なる充実化と効率化に進展がありました。

 

 

(2)経営環境

1)全般

 注:本項目は、2024年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、三井物産の現在の経営環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。

 

 当連結会計年度の世界経済は、米国が堅調に推移しましたが、欧州は停滞が続き、中国の回復も低調であったことから全体として減速局面が続きました。

 

 米国経済は、良好な雇用環境のもとで底堅い個人消費に支えられ、堅調に推移しました。先行きはインフレがさらに落ち着いていく中で、FRBによる利下げも見込まれることから、景気拡大が続くものとみられます。欧州では、金融引き締めの影響や輸出の不振などから景気の停滞が続きました。先行きは物価の上昇が落ち着く中で個人消費の回復が期待され、ECBによる利下げも見込まれることから、緩やかに回復に向かうものとみられます。日本では、企業収益が好調であることに加え、インバウンド需要も回復しましたが、物価高の影響などにより個人消費が低調だったことや年初に一部自動車メーカーの出荷停止などがあったことから景気回復の勢いは弱まりました。先行きは昨年を上回る賃上げや所得税減税により個人消費の持ち直しが期待されることから景気は回復基調に戻るとみられます。中国は、輸出は昨年の不振から脱しつつありますが、不動産市場の低迷が長引く中で、消費が伸びず、経済成長は減速しました。先行きは政府の政策対応によって持ち直していくことが期待されます。ブラジルは、昨年、農産物の輸出が伸び、消費も底堅く推移しましたが、今後は昨年夏からの利下げが景気を支えることが期待されます。ロシアは、国際社会から課された経済制裁による経済活動への下押しが続く一方で、軍需品の生産が伸びており、プラス成長は維持するとみられます。

 世界経済の先行きは、米欧先進国のインフレの落ち着きに加え、米欧の利下げなど金融引き締め局面からの転換が期待されることから、2024年後半以降、減速局面を脱する道筋に移行していくものとみられます。ただし、中東情勢の不安定化など地政学的リスクは懸念されます。

 

2)事業セグメント

上記経営環境を踏まえた各事業セグメントにおける環境認識並びにリスクと機会は、以下のとおりです。

 

(a) 金属資源セグメント

環境認識

・人口増加・世界経済の成長に伴う素材・資源需要の継続的増加

・EV化・電動化をはじめとする脱炭素社会に向けたEnergy Transitionと、地域偏在性ある重要鉱物の必要性

・鉱山操業やサプライチェーンにおける気候変動・自然資本・人権関連対応の拡大

リスク

機会

・中国経済減速による資源需要への影響

・インフレ・高金利による事業コスト影響

・技術革新による商品の需給や価格への影響

・リサイクルを含むグリーン鉄源・素材の需要増加

・金属資源需要地としてのインド・東南アジアの継続的成長、資源供給地としてのアフリカの将来的可能性

 

 

(b) エネルギーセグメント

環境認識

・ 人口増加・世界経済の成長に伴い、エネルギー需要は増加する見込み

・ エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に対する社会ニーズの高まり

リスク

機会

・世界的な地政学的リスクの高まりや、主要国の選挙結果を受けた政策変更等に起因するエネルギー価格の大幅な変動

・流動的なEnergy Transition進捗の時間軸

・エネルギー安全保障・安定供給ニーズに伴う底堅い化石燃料需要、及び現実解としての天然ガス・LNG需要の増加

・脱炭素化の進展による、クリーンエネルギーや次世代エネルギー需要の増加、またそれに伴うエネルギーソリューション事業機会の拡大

 

 

 

(c) 機械・インフラセグメント

環境認識

・脱炭素社会に向けたEnergy Transitionニーズの高まり、デジタル化に伴う電力需要増、国・地域ごとの電源多様化

・半導体不足による自動車供給不足は今後正常化の見込み

・環境負荷の低いモビリティへのシフトが進む見込み

・ばら積み船需要は安定的に推移、またタンカー需要増は継続見込み

リスク

機会

・世界的なインフレ傾向と金融マーケットの変化

・社会ニーズの変化を受けた新規資源開発の減少など産業構造の変化

・DX活用の進展、デジタルインフラ需要増加

・気候変動対応に伴う再エネ電源や、次世代燃料・電動化など輸送インフラのサービス需要拡大・多様化

 

(d) 化学品セグメント

環境認識

・気候変動対応に伴う環境配慮型事業に対する社会からの要請の高まり

・人口増加や経済成長に伴う食料やエネルギー由来の化学品需要の増大

・健康意識の高まりによる食の高付加価値化ニーズの増大

リスク

機会

・気候変動対応に伴う石油化学産業の構造変化の加速

・地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの再編と地産地消化

・エネルギー価格高騰、金利高や人手不足によるコスト上昇や商品需要の低迷

・サプライチェーンの変化による安定供給ニーズの増大

・次世代燃料・リサイクル素材をはじめとする環境配慮型素材・製品・事業の需要増加

・健康・ウェルネス、Quality of Life向上への関心の高まり

 

(e) 鉄鋼製品セグメント

環境認識

・脱炭素社会に向けた技術革新による段階的なグリーン化の進展

・地政学的リスクの顕在化継続による地産地消の重要性増加

・中期的な世界鉄鋼需要はインド・東南アジアを牽引役として増加見込み

リスク

機会

・国内粗鋼生産減少を背景とした流通構造の変化

・地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの影響

・人件費高騰・労働力不足

・脱炭素化、地産地消ニーズに伴う新たなサプライチェーン構築需要の拡大

・循環型経済の加速によるインフラ長寿命化・メンテナンス需要の高まり

 

 

 

(f) 生活産業セグメント

環境認識

・先進国でのライフスタイル多様化と健康志向、サステナビリティなど社会価値への関心の高まり

・新興国での人口増・経済成長・所得増・高齢化によるヘルスケアニーズの高まり

・原材料費・労務費等の上昇が継続する見通し

リスク

機会

・気候変動による伝統的産地の移動

・地政学的リスクによる貿易構造の変化

・医療規制動向及び人手不足、GAFA等異業種参入に伴う医療業界パラダイムシフト

・価値観の多様化・細分化、及び消費行動の多様化

・未病・予防、健康への行動様式や価値観の変化

・アジア等新興国における医療需給ギャップ拡大、先進国における未病・予防市場の拡大

 

 

(g) 次世代・機能推進セグメント

環境認識

・生成AIを用いたサービスや、サイバーセキュリティ対応に関するニーズの高まり

・環境意識の高まりなどの市場環境・ニーズの変化を捉えた投資判断の重要性増大

リスク

機会

・株価変動などの市場価格変動リスク

・金利上昇、インフレに伴う景況感、企業業績の悪化

・技術進化に伴うICTソリューションニーズの高まり

・ライフスタイルの多様化に伴うデジタルサービスの普及

・気候変動対応に伴う金融商品組成機会、ボラティリティ上昇によるヘッジニーズ増加

 

(3)2025年3月期事業計画

 2025年3月期は、「Creating Sustainable Futures」をテーマとする中期経営計画の2年目となります。「挑戦と創造」の精神で、三井物産の強みを活かし、グループ全体でグローバル・産業横断的なビジネスを展開し、価値を提供することで、基礎営業キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローから運転資本の増減に係るキャッシュ・フローを除き、リース負債の返済による支出額を減算したもの)1兆円、当期利益9,000億円を計画します。また、コア事業の強化、赤字事業の削減、厳選した成長投資及び戦略的リサイクルの加速からなる重点施策を実行し、一層の企業価値向上に取り組みます。

 

1)5つのCorporate Strategy

 中期経営計画2026の実現に向けて着実にCorporate Strategyを推進します。

 

2)ポートフォリオ経営の深化

 三井物産の強みである、先進国と新興国の双方においてバランスよく分散されたグローバルなポートフォリオを継続的に見直し、組み替えます。厳選した成長投資や事業群戦略を踏まえたボルトオン投資を実行し、早期収益貢献と長期収益基盤の構築を両立させることで、三井物産の収益基盤をより強固なものとしていきます。同時に、世界中の各業界を代表するパートナーとの関係性を深化させ、それぞれの機能を組み合わせたプロジェクトを実行していきます。さらに、資本効率を意識することで資産の入替えを加速し、戦略的リサイクルと以下の3つの攻め筋に沿った成長投資(中期経営計画2026の3年累計で1兆8,000億円を予定)を推進します。

 

(a)Industrial Business Solutions(中期経営計画2026の3年累計で8,000億円の成長投資を予定)

 グローバルかつ産業横断的なプレゼンスや事業ポートフォリオを通じ、資源開発、機械・モビリティ、インフラ・デジタルインフラ等のコア領域でさまざまな産業における課題解決に向けた取組みを強化します。資源開発事業においては、優良資源の積増しを通じ、長期収益基盤を盤石なものとします。また、機械・モビリティ領域においては、船舶事業のバリューチェーン強化、モビリティ事業群の形成・強化を実行します。デジタルインフラにおいては、デジタルBPOの提供を通じ、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

 

(b)Global Energy Transition(中期経営計画2026の3年累計で6,000億円の成長投資を予定)

 天然ガス及びLNGをコア事業として安定収益基盤を拡充し、エネルギー安定供給と気候変動対応の双方の観点か

ら、事業を通じて社会課題であるエネルギートランジションの実現に貢献します。また、長年培った知見やパートナーシップを通じ、厳選した良質な案件を獲得し、多様な低炭素メタノールの製造・販売、クリーンアンモニア等の次世代燃料安定供給への取組み、再生可能エネルギー事業の着実な立上げ、低炭素鉄源事業の推進等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを進めます。

 

(c)Wellness Ecosystem Creation(中期経営計画2026の3年累計で4,000億円の成長投資を予定)

 コア事業の競争力強化、市場成長・ニーズを捉えた事業群戦略を推進します。食・ニュートリション領域におい

ては、新たな事業獲得による鶏・エビを核とするタンパク質事業群の形成及びバリューチェーンの高度化、事業間シナジーの実現を推進していきます。また、ウェルネス領域では、未病・予防ソリューションの強化のほか、IHH Healthcareを中核とするヘルスケア事業を通じたアジア市場の成長の取込み、完全子会社化したエームサービスの収益力強化を目指します。

 

 

3)キャッシュ・フロー・アロケーションの最新見通し(中期経営計画3年累計)

 2024年3月期の実績と今後の見通しを踏まえて、昨年5月に公表した中期経営計画3年累計のキャッシュ・フロー・アロケーションをアップデートしました。基礎営業キャッシュ・フロー及び資産リサイクルの増加を反映しキャッシュ・インの増加を見込みます。これに伴い、マネジメント・アロケーションは中期経営計画2026の3年累計で1兆1,300億円から1兆7,500億円までの拡大を見込み、厳選した成長投資及び株主還元へのバランスの取れた配分を予定しています。引き続き、投資機会と事業環境を総合的に勘案し、成長投資と株主還元へ柔軟で戦略的な資金配分を実行します。

 

(4)利益配分に関する基本方針

 株主還元策については第 4 提出会社の状況 3 配当政策をご参照ください。

 

 

(5)2025年3月期連結業績予想

①2025年3月期連結業績予想

 

[業績予想の前提条件]

25年3月期

予想

24年3月期

実績

期中平均米ドル為替レート

145.00

145.31

原油価格(JCC)

81ドル

86ドル

期ずれを考慮した三井物産連結決算に反映される原油価格

86ドル

91ドル

 

単位:億円

2025年3月期

業績予想

2024年3月期

実績

増減

増減要因

売上総利益

13,200

13,197

+3

 

販売費及び一般管理費

△8,300

△7,943

△357

退職給付制度改定

有価証券・固定資産

関係損益等

1,500

1,785

△285

資産リサイクル

利息収支

△1,100

△1,038

△62

 

受取配当金

1,500

2,107

△607

エネルギー、金属資源

持分法による投資損益

4,700

4,916

△216

商品価格下落

法人所得税前利益

11,500

13,024

△1,524

 

法人所得税

△2,200

△2,219

+19

 

非支配持分

△300

△168

△132

 

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

9,000

10,637

△1,637

 

 

 

 

 

 

減価償却費・無形資産等償却費

2,900

2,936

△36

 

 

 

 

 

 

基礎営業キャッシュ・フロー

10,000

9,958

+42

 

 

・為替レートは2024年3月期の145.31円/米ドル及び95.32円/豪ドルに対し、2025年3月期はそれぞれ145.00円/米ドル及び95.00円/豪ドルを想定します。また、2025年3月期の原油価格(JCC)を81米ドル/バレルと仮定し、期ずれを考慮した三井物産の連結決算に適用される原油価格の平均を86米ドル/バレル(2024年3月期比5米ドル/バレル下落)と想定します。

 

 

オペレーティング・セグメント別での業績予想(当期利益(親会社の所有者に帰属))は以下のとおりです。

 

 

(単位:億円)

2025年3月期

業績予想

2024年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

2,900

3,351

△451

鉄鉱石価格

エネルギー

1,400

2,817

△1,417

前期一過性利益反動、LNG物流

機械・インフラ

2,300

2,487

△187

自動車・船舶事業

化学品

700

392

+308

関係会社業績改善

トレーディング

鉄鋼製品

250

112

+138

関係会社業績改善

生活産業

750

941

△191

前期一過性利益反動

次世代・機能推進

650

538

+112

FVTPL益、国内中核関係会社伸長

その他/調整・消去

50

△1

+51

 

連結合計

9,000

10,637

△1,637

 

 

オペレーティング・セグメント別での基礎営業キャッシュ・フロー予想は以下のとおりです。

 

(単位:億円)

2025年3月期

業績予想

2024年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

3,600

4,091

△491

鉄鉱石価格、関連会社配当

エネルギー

2,900

2,478

+422

LNG配当入金
(24/3期からの期ずれ)

機械・インフラ

1,500

1,769

△269

子会社の関連会社化

関連会社配当

化学品

800

634

+166

関係会社業績改善

トレーディング

鉄鋼製品

150

85

+65

関連会社配当

関係会社業績改善

生活産業

500

402

+98

トレーディング

関係会社業績改善

次世代・機能推進

500

454

+46

 

その他/調整・消去

50

45

+5

 

連結合計

10,000

9,958

+42

 

 

 

② 2025年3月期連結業績予想における前提条件

 2025年3月期連結業績予想における商品市況及び為替の前提と価格及び為替変動による当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は以下のとおりです。

価格変動の2025年3月期

当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額

2025年3月期

前提

 

2024年3月期

実績

市況商品

原油/JCC

81

 

86

連結油価*1

24

億円(US$1/バレル)

86

 

91

米国ガス*2

13

億円(US$0.1/mmBtu)

2.46

 

2.66*3

鉄鉱石*4

27

億円(US$1/トン)

*5

 

119*6

原料炭

3

億円(US$1/トン)

*5

 

294*7

*8

7

億円(US$100/トン)

8,700

 

8,483*9

為替*10

米ドル

34

億円(1円変動あたり)

145.00

 

145.31

豪ドル

25

億円(1円変動あたり)

95.00

 

95.32

*1 原油価格は期ずれで三井物産連結業績に反映されるため、それを考慮した連結業績に反映される原油価格を連結油価として推計している。2025年3月期には約35%が4~6カ月遅れ、約30%が1~3カ月遅れ、約30%が1年超遅れ、約5%が遅れ無しで反映されると想定される。上記感応度は、連結油価に対する年間インパクト。

*2 三井物産が米国で取り扱う天然ガスはその多くがHenry Hub(HH)に連動しない為、上記感応度はHH価格の変動に対するものではなく、加重平均ガス販売価格に対するインパクト。

*3 米国ガスの2024年3月期実績には、2023年1月~12月のNYMEXにて取引されるHenry Hub Natural Gas Futuresの直近限月終値のdaily平均値を記載。

*4 Valeからの受取配当金に対する影響は含まない。

*5 鉄鉱石・原料炭の前提価格は非開示。

*6 鉄鉱石の2024年3月期実績欄には、2023年4月~2024年3月の複数業界紙によるスポット価格指標Fe 62% CFR North Chinaのdaily平均値(参考値)を記載。

*7 原料炭の2024年3月期実績欄には、対日代表銘柄石炭価格(US$/MT)の四半期価格の平均値を記載。

*8 銅価格の価格感応度は、2024年1月~12月のLME cash settlement price平均価格がUS$100/トン変動した場合に対するインパクト。

*9 銅の2024年3月期実績欄には、2023年1~12月のLME cash settlement priceのmonthly averageの平均値を記載。

*10 上記感応度は、各国所在の関係会社が報告する機能通貨建て当期利益に対するインパクト及び一部海外出資先からの受取配当金の影響。円安は機能通貨建て当期利益の円貨換算を通じて増益要因となる。関係会社における販売契約上の通貨である米ドルと機能通貨の豪ドルの為替変動、及び為替ヘッジによる影響を含まない。

 

注) 経営成績に対する外国為替相場の影響について

 2023年3月期及び2024年3月期の海外の連結子会社及び持分法適用会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計はそれぞれ8,946億円及び7,429億円です。これらの海外所在の連結子会社及び持分法適用会社の機能通貨は、主として米ドル及び豪ドルです。2025年3月期連結業績予想の当期利益(親会社の所有者に帰属)に対する為替変動の影響について、三井物産は簡便的な推定を行っています。

(a)具体的には、業績予想策定の過程で、海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を各社の機能通貨別に集計し、まず米ドル及び豪ドル建ての予想当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計額を算出しました。これら2つの通貨別に表示された海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)に一部の海外出資先からの通貨別の配当金を合計した金額に対して為替変動の影響を評価しました。これによれば米ドルに対する円高/円安は、1円あたり34億円程度、豪ドルに対する円高/円安の影響は、1円あたり25億円程度、当期利益(親会社の所有者に帰属)の減少/増加をもたらすと試算されます。

(b)なお、豪ドルを機能通貨とする資源・エネルギー関連生産会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)は、両通貨と契約上の建値通貨である米ドルとの間での為替変動の影響を大きく受けます。この影響額は、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

(c)ただし、資源・エネルギー関連生産会社などでは、一部において、販売契約の契約通貨である米ドルと機能通貨の為替ヘッジを行っているほか、外貨建の当期利益(親会社の所有者に帰属)の円貨相当評価に係る為替ヘッジを行っている場合があります。これらの影響額についても、(a)に述べた2つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

 


事業等のリスク

3【事業等のリスク】

 

 三井物産及び連結子会社を取り巻く多種多様な定量・定性リスクに対し、関係のコーポレートスタッフ部門各部がそれぞれの職掌に定めるリスク管理分野において各種社内規程等の制定を行うと共に、事前審査もしくは事後モニタリングを通じ、相互連携して対応しています。また、経営会議及び経営会議の諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社一元的に管理する統合リスク管理体制を構築し、全社リスクを横断的に見て、発生頻度と想定損害規模及び全社リスク許容度に鑑み、重要なリスクを特定、対策を講じています。当連結会計年度末における重要なリスクは以下のとおりです。

 なお、サステナビリティ取組みへの関心の高まりに伴い、中長期的な企業価値向上と持続的成長の観点から三井物産及び連結子会社が責任を果たす重要性がますます高まっています。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、事業継続に支障をきたし、今後の事業への影響が多岐にわたる可能性が想定されるため、当連結会計年度より新たに「(13)人的資本の制約に関するリスク」及び「(14)人権に関するリスク」を追加しています。

 

(1)事業投資リスク

 三井物産及び連結子会社は、持分・株式取得を通じ、さまざまな事業に対する投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金が回収不能となるリスク、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。

 また、三井物産及び連結子会社は第三者との合弁事業、あるいは、第三者に対する戦略的投資を通じて多様な事業分野に参入しています。しかしながら、その結果の予測は困難なことがあります。すなわち、

・これらの事業の成否は、合弁事業のパートナーや戦略的投資先企業の業績や財政状態といった三井物産及び連結子会社が制御しえない事象が決定的な要因となる場合があります。

・更に、持分法適用会社での事業において、経営、業務運営、資産処分に関する適切な統制ができない、あるいはパートナーと事業目的及び戦略的課題を共有できないために重要な決定ができなくなる可能性があります。

こうした事態の発生は、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態において重要な割合を占める金属資源や石油・ガスの探鉱・開発・生産事業の一部において、三井物産及び連結子会社はノンオペレーターの立場で参画しています。この場合、三井物産及び連結子会社はオペレーターである事業参加者が作成した情報に基づき事業性を検討しますが、開発及び生産に係る意思決定を含めた事業の運営はオペレーターの定める方針に影響を受けます。オペレーターによる事業運営が適切に行われない場合、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、新規投資の実行については必要収益率などの定量基準や定性評価に基づき意思決定するとともに、全事業の保有意義を定期的にモニタリングし、不振事業や撤退アラート基準に抵触する事業の改善計画や撤退方針を擦り合わせ、効率的な資産の入替えを行っています。また、連結財政状態計算書上の資産に内在するリスクに加えて、マーケットリスクや保証債務などのオフバランスのリスクを一定の基準で評価し、リスクアセットとして定期的にモニタリングしています。また、一定の前提の下にストレステストを定期的に実施し、ストレステスト下におけるリスクアセットと株主資本の比率への影響も検証しています。

* 営業債権や投資、固定資産などの連結財政状態計算書上の残高及び保証債務などのオフバランスシート・ポジションに、その潜在的な損失リスクに応じ三井物産が独自に設定したリスクウェイトを乗じることにより算出している想定損失の最大額。

 

(2)地政学的リスク

 ロシア・ウクライナ情勢や米中関係等、国・地域間の政治的・社会的緊張の高まりにより、三井物産及び連結子会社が当該国・地域に展開する事業の業績が悪化、または継続が困難となるリスクを負っています。

 地政学的な不確実性により、三井物産及び連結子会社の事業を取り巻く環境が大きく変わる中、難易度の高い組織運営と責任のある主体的な行動が一層求められており、各事業に関わるステークホルダーとの緊密なコミュニケーションも必須となっています。こうした地政学的リスクの高まりによる不確実な情勢の中で機動的に対応するために、三井物産では以下のようなリスクヘッジ策を講じていますが、全ての地政学的リスクを回避することは困難であり、三井物産業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

・事業を展開する国・地域の政治・経済情勢等の動向を定期的にモニタリングし、その国や地域に存在するリスクや事業環境の変化について慎重に判断を行っています。

・地政学的リスクが高いとされる地域へ事業を展開する際は、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等の金融的手段によりリスクを低減しています。

・有事の際の対応についてのノウハウを蓄積し、国・地域をまたぎ複数の現地法人が連携、従業員の安全を図り、日本国内または海外で事業を継続する体制を構築しています。

 

 ウクライナ情勢に関して、三井物産は国際社会が協調し制裁措置を取る中で、それらを遵守しつつ各事業に取り組んでいます。ロシア向けの投融資保証残高は2024年3月末時点で3,030億円となり、三井物産及び連結子会社の投融資保証残高の約4%となりますが、将来の不確実なロシア・ウクライナ情勢によって影響を受ける可能性があります。また、ウクライナ向けの投融資保証残高は僅少です。なお、2024年3月期決算における影響については、連結財務諸表注記事項31.「ロシア・ウクライナ情勢のロシアLNG事業への影響」をご参照ください。

 

(3)カントリーリスク

 三井物産及び連結子会社が世界各地で展開する事業は、各国の政治・経済・社会状況の変化により、当該国に所在する取引先等に対する債権や、出資先もしくは進行中のプロジェクトに関する投融資等の回収が不能になる、もしくは在庫・固定資産等の価値が毀損するリスクを負っています。

 さらに、三井物産及び連結子会社の事業活動は、特定の国または地域の特定の分野に一定程度集中しています。例えば、三井物産及び連結子会社は、

 

・ブラジル、チリ、ロシアにおいて金属資源・エネルギーの探鉱・開発・採掘・液化に係る投融資残高があります。

・マレーシアにおいて、アジア広域のヘルスケア事業に係る投融資残高があります。

・モザンビークにおいて、エネルギーの開発・生産・液化に係る投融資残高があります。

・インドネシアにおいて、消費者関連事業等に係る投融資残高があります。

 

そのため、カントリーリスクについては、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。

 また、ポジションを有するすべての国について債権、投融資、保証等のエクスポージャーを国別に定期的に把握するとともに、原則として先進国を除く国を対象に、カントリーリスク状況の定性・定量的なモニタリングを行い、年1回及び必要と判断する都度、カントリーリスク管理上の対応方針を策定しています。全社ポートフォリオの定期的なモニタリングにおいては、事業分野別だけでなく国別のアセットサイズが適切なレベルかどうかも検証しています。

 

(4)気候変動に関するリスク

 気候変動による将来影響を把握し、また成長機会として取り込むことで、より事業ポートフォリオを良質化すべく、2050年の「あり姿」としてNet-zero emissionsを掲げ、2030年はその「あり姿」に向けた道筋として、2020年比GHGインパクト半減を目指しています。

 グローバルな経営環境の変化に対して柔軟に対応し、戦略のレジリエンスを高めるため、中長期なシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析に際しては国際エネルギー機関(IEA)のシナリオ等を参照して移行リスクの分析を行い、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にて採用される代表的濃度経路(RCP)も参考に物理的リスクの分析を行いました。

 

 中長期的に発現する可能性がある移行リスクとしては、主に以下を認識しており、既存ポートフォリオを維持する前提では、長期的には保有権益・資産の価値毀損により三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・政策・法規制リスク:各国・地域の政策によるエネルギー・電源構成の変更や、炭素税の賦課などの排出規制は、三井物産及び連結子会社が出資するGHG排出量が多い事業の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・技術リスク:気候変動に適応した新技術の導入による既存商材・サービスの需給の変化や既存製造設備の陳腐化が生じる可能性があります。

・資金調達リスク:金融機関・保険会社の低・脱炭素方針により資金調達上のリスクが発生する可能性があります。

 

 現在から2050年までの4℃シナリオ下において、猛暑、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧の四つが三井物産への影響が大きい物理的リスクと認識しています。分析対象企業65社のうち、2050年にリスクが高い企業数は、猛暑に関しては約8割、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧に関しては、半数近くになります。中でも、山火事のリスクが高い企業は現在から約2倍に増加します。また、熱帯低気圧は、現在もリスクが高い企業が多く、新たにリスクが高まる企業は少ないものの、その発生頻度や巨大化により、被害の深刻化が懸念されます。三井物産及び連結子会社各社において、保険付保、複数サプライヤーの確保、危機管理方針策定、設備増強等の対策は取っていますが、物理的リスクを完全に回避できるものではなく、将来の三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、三井物産では、レジリエンスの向上とGHG排出削減効果のある取組みの促進を目的に社内カーボンプライシング制度を導入し、案件審査の一要素としています。

 リスクの対応策を含めた気候変動に関する三井物産及び連結子会社の取組みについては「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)気候変動対応」をご参照ください。

 

(5)商品価格リスク

 鉄鉱石、原料炭、銅、原油、天然ガス・LNGなどをはじめとする各種市況商品の生産及び売買は、三井物産及び連結子会社の重要な事業分野です。これらの商品価格は、需給の不均衡、景気変動、在庫調整、為替変動などの三井物産及び連結子会社にとって制御不能な要因により、短期的に乱高下あるいは周期的に変動します。

 価格変動は、連結子会社及び持分法適用会社が保有する権益持分相当の生産量からの販売収入に直接的な影響を及ぼします。2025年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、原油価格でUS$1/バレルあたりの価格変動により24億円、鉄鉱石でUS$1/トンあたりの価格変動により27億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2025年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。

 そのため、三井物産及び連結子会社は、商品価格リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に商品価格リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、市場リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。

 

 また、三井物産及び連結子会社は、市況商品に係る営業活動を行うにあたり、約定残高のキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に商品スワップなどのデリバティブを用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。

詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。

 また、予想外の相場変動は、以下に示すように三井物産及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・多額の投資を行ってきた金属資源・エネルギー生産事業等で、販売価格の下落により、生産した商品の販売を通じた投下資金の回収が困難になる、あるいは許容しうる価額での三井物産出資持分の売却が困難になることがあります。

・評価差額をその他の包括利益に認識する資本性金融資産(以下、FVTOCI)に区分するLNGプロジェクト等に対する投資の価値の下落により、三井物産及び連結子会社の包括利益に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)為替リスク

 三井物産及び連結子会社は外国通貨で表示された資産及び負債の換算リスクを負います。また、海外の関係会社に対する投資やFVTOCIに区分する投資は、為替変動によりその価値を減じ、三井物産の包括利益及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 2025年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、米ドル/円で1円の変動により34億円、豪ドル/円で1円の変動により25億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2025年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。

 三井物産及び連結子会社は、為替リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に為替リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、為替リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。

 三井物産及び連結子会社は、世界各国で多種多様な営業活動を行っており、所在国通貨以外での売買取引より生じる外貨建金銭債権債務及びファイナンス取引より生じる外貨建長期金銭債権債務などのキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に為替予約や通貨スワップなどのデリバティブ取引を用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。さらに、三井物産及び連結子会社は、主に在外営業活動体に対する純投資の為替変動リスクを回避することを目的として、主に外貨建借入金を用いてヘッジを行うとともにヘッジ会計を適用しています。

 詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。

 

(7)保有上場株式の株価リスク

 三井物産及び連結子会社は、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化を図るため、市場性ある資本性金融資産への投資を行っており、株価リスクを有しています。当連結会計年度末において、三井物産及び連結子会社はFVTOCIに区分する市場性のある資本性金融資産を1兆1,582億円保有しており、総資産の6.9%に相当します。三井物産及び連結子会社は、全銘柄を対象に株式ポートフォリオの見直しを定期的に行っていますが、株式市場の価格変動や相場の下落は投資ポートフォリオを毀損し、その他の包括利益の悪化により、三井物産及び連結子会社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 三井物産及び連結子会社は、株価リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に株価リスクに関しては、時価総額の増減要因の把握を行うことにより管理しています。

詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示(6)リスク関連」をご参照ください。

 

(8)与信リスク

 三井物産及び連結子会社は商取引や融資取引のあるさまざまな顧客や事業に係る多額の与信リスクにさらされています。

 三井物産及び連結子会社は、多数の取引先に後払い条件で商品・サービスを販売し、あるいは販売契約に付随する融資プログラムや顧客の借入に係る支払保証を供与することがあります。当連結会計年度末において三井物産及び連結子会社の損失評価引当金控除後の流動売上債権等は2兆2,167億円であり、総資産の13.1%を占めています。控除した損失評価引当金残高(流動)は173億円となっています。

 さまざまなプロジェクトにおけるファイナンスのため、回収リスクを伴う多額の貸付や保証を行っています。

そのため、定期的に取引先の状況を確認し、適切な決裁者により承認されたクレジットライン管理を行うと共に、債権等の回収期日経過状況をモニタリングしています。また、必要に応じて取引先に担保などの提供を要求しています。詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連」をご参照ください。

 しかしながら、こうした管理を行ったとしても、三井物産及び連結子会社における与信管理政策は、与信先の財政状態悪化により発生しうるリスクを完全に排除することはできません。加えて、流動性危機の発生、不動産や株式などの市場価格急落による取引先の支払不能、あるいは企業倒産の増加などによって、三井物産及び連結子会社の債権回収が困難となる可能性があり、将来の三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)資金調達に関するリスク

 金融市場の混乱や三井物産格付けの引下げ、あるいは金融機関及び機関投資家の融資及び投資方針の変更は、三井物産及び連結子会社の資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、三井物産及び連結子会社の財政状態や流動性に影響を及ぼす可能性があります。

 三井物産は、10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行うと同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借換えリスクの低減を図っています。また、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、三井物産の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。

資金調達及び格付けについては、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(5)流動性と資金調達の源泉」をご参照ください。

 

(10)オペレーショナルリスク

 三井物産及び連結子会社は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進の各セグメントにおいて、全世界に広がる事業拠点とその情報力を活用し、多種多様な商品の売買、製造、輸送、ファイナンスなど各種事業を多角的に行っており、さらには資源・インフラ開発プロジェクトの構築、環境・新技術・次世代燃料やウェルネスに関連する事業投資やデジタルを活用した価値創出などの幅広い取組みを展開しています。これらの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害等のさまざまな操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 環境事故が生じると、三井物産及び連結子会社は資源・エネルギー権益の所有者として、またノンオペレーターとして操業に全く関与していない場合であっても、当該事故への寄与度や過失の有無に拘らず、清掃費用、環境破壊への賠償、事故被害者への健康・財産被害や休業補償・逸失利益補填等のための損害賠償費用、環境当局からの罰金や補償金等の負担を強いられることで、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 三井物産及び連結子会社は、リスク軽減策・損害防止策を検討するほか、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 

(11)役職員による法令及び社内規定の遵守違反に関するリスク

 三井物産及び連結子会社は、その規模、業務範囲及び活動領域が広範にわたっていることから、日常業務は自ずと分権的に運営されており、従業員が全ての法令や社内規定を遵守しているとの確証を得ることはできません。例えば、従業員が必要な社内許可を取得しないまま社外との取引を行うこと、投融資案件において許可されたリスク・エクスポージャー限度額を超過することや、与信限度枠を超えて取引を拡大することもあり得、それらはどのケースにおいても予測不能な損失や管理不能なリスクに繋がります。また、従業員が日本あるいは外国における輸出貿易規制、汚職防止法、独占禁止法、税法などの法令を犯すこともあり得ます。

 三井物産及び連結子会社では、グローバル・グループベースでのコンプライアンス体制を強化、経営幹部が継続的にメッセージを発信し、コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートを設置すると共に、スピークアップ文化を醸成し、コンプライアンス違反に対して厳正に対処する等、さまざまな取組みを行っています。詳細は、第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要「③内部統制システムの整備状況 (d)コンプライアンス体制」をご参照ください。

 しかしながら、このような取組みをもってしても、従業員の全ての不正行為を完全に排除することはできず、従業員の不正行為はその内容次第で三井物産及び連結子会社の事業、社会的信用、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報システム及び情報セキュリティに関するリスク

 通信ネットワークのグローバル規模での運用が進展、またサイバー攻撃が全世界的に増加する中、ITシステムの適切な運用と情報価値の把握並びに適切な取扱いが重要です。三井物産は、情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、三井物産及び連結子会社が保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性を適切に確保し、またリスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏洩等のリスクを管理し、通信ネットワーク監視等を通じた外部からの攻撃への対応や非常時を想定した定期的な訓練に努めています。

 しかしながら、予期できない水準の情報システム基盤や通信回線の重大な障害、あるいは経営に関わる機密情報の破壊・窃取が発生する可能性を完全に排除することはできず、この様な場合、業務効率の著しい低下が避けられず、事業継続あるいはビジネスの伸長に困難をきたすことから、三井物産及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、可能かつ妥当な範囲において、外部からの攻撃に伴う被害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 なお、情報セキュリティに関する三井物産の取組みについては、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (6)情報セキュリティ」をご参照ください。

 

(13)人的資本の制約に関するリスク

 三井物産及び連結子会社は、「人」こそが持続的な価値創造の源泉であるとの考えのもと、人材の確保と育成、評価、報酬等の人材マネジメントに取り組み、事業の立案・評価及び実行や人員の指揮・監督などにあたる人的資本を投入しています。しかしながら、事業分野や国・地域によっては求められる人材が不足し、事業価値創出機会の逸失や、安定的なオペレーションに支障をきたす可能性があります。事業に対するこうした人的資本の制約は、三井物産及び連結子会社の事業展開と経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、リスクの対応策を含めた人材戦略に関する三井物産の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (7) 人材戦略」をご参照ください。

 

(14)人権に関するリスク

 三井物産及び連結子会社は、川上から川下まであらゆる機能・サービスを提供しており、世界中で多岐にわたる事業を展開する中で、さまざまなステークホルダーに影響をもたらします。三井物産及び連結子会社の事業活動が人権への負の影響を引き起こしている、あるいはサプライチェーン等の取引関係を通じて人権侵害を助長していることが明らかになった場合は、レピュテーションリスクに加え、その影響の解消・緩和による追加的費用の発生等によって、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性や、信用毀損等の影響を受ける可能性があります。

 そのため、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取組みが求められていることを認識し、「三井物産グループ行動指針 -With Integrity」においても改めてこれを明確化し、グループ各社の経営理念や役職員行動規範にも反映すべく推進していきます。三井物産及び連結子会社の事業活動に関わる人権への負の影響を特定、評価、防止、軽減するために人権デューデリジェンスを実施すると共に、課題発生時には適切な手続きを通じてその是正・救済に取り組みます。また、サプライヤー等の取引先との協働による人権尊重の取組みや、社内プロセスへの人権リスク管理の組み込み等を通じた、事業活動における人権尊重取組みの一層の強化に取り組んでいます。なお、リスクの対応策を含めた人権に関する三井物産の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (5) サプライチェーンと人権」をご参照ください。

(15)自然災害、テロ・暴動遭遇、感染症等によるリスク

 三井物産及び連結子会社が事業活動を展開する国や地域において、地震や水害、テロ、感染症、電力不足等が発生した場合には、三井物産及び連結子会社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

 三井物産及び連結子会社では、災害時事業継続計画(BCP)や災害対策マニュアルをあらかじめ策定するとともに、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練などの対策を講じていますが、全ての被害や影響を完全に排除できるものではなく、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、当連結会計年度末に重要なリスクとして特定したもの以外で、三井物産及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。ただし、これらは全てのリスクを網羅したものではありません。

 

・三井物産固有のリスクではない、一般的なリスク

 

- 世界マクロ経済環境の変化によるリスク

 世界的なあるいは特定の地域における経済情勢、景気減速は、製品・素材の流通量の減少、個人消費や設備投資の低下をもたらしえます。その結果、三井物産及び連結子会社の商品及びサービスに対する需要が減少し、三井物産及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

- 法的規制に関するリスク

 三井物産及び連結子会社は内外の広範な法令に従い事業活動を展開しています。三井物産及び連結子会社の事業は、具体的には、各種の商品規制、消費者保護規制、事業及び投資に対する許認可、環境保護規制、外国為替規制、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、投資規制、制裁関連法令、各種税法、独占禁止法などの制約の下にあります。例えば三井物産及び連結子会社による新興国でのインフラ開発プロジェクトは、十分に整備されていない法基盤の下で遂行されることがあり、包括的な法令体系の欠如や、一貫性のない法令の適用及び解釈、監督当局による規制措置の一方的変更などに対応する費用負担が増大することがあります。また、これらの事業が供給する製品あるいはサービスに賦課される税率、環境規制に係る技術的要件、所得税及び関税、投資元本及び配当の還流に関する為替規制などの諸法令などについて、予想外の変更が行われることがあります。

 三井物産及び連結子会社は、豪州、ブラジル、チリ、ロシア、中東等において一連の環境規制の制約を受けていますが、これらの地域における法令は、事業区域の浄化、操業停止あるいは事業終了、重大な環境破壊に対する罰金及び補償金、高額な汚染防止設備の設置、操業方法の変更などを課すことがあります。

 三井物産及び連結子会社が行う探鉱・開発・採掘事業について、必ずしも事業権に係る契約の相手方による義務の履行がなされる保証や契約期限到来時に事業権の存続期間が延長される保証はありません。また、これら事業に係る規制当局が、金属資源や石油・ガス生産事業における生産量、価格体系、ロイヤリティ、環境保護費用及び借地権等に関する契約条件に関し、一方的な介入あるいは変更を行わない保証はありません。規制当局が一方的に契約条件を変更した場合、あるいは、変更・新設された法令について遵守に対応する費用が増大する場合、三井物産及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、技術・資材調達・資金調達・環境面を含む当局による規制などの変更により、当初の想定より工期が遅延する可能性があります。

 

- 競合リスク

 三井物産及び連結子会社が提供する商品及びサービスの市場は、概して競争的な環境にあります。他の総合商社をはじめ、各種分野において同様の事業活動を展開する競合他社は、商品によって三井物産及び連結子会社の内外の顧客に対してより堅固な取引関係を有している場合や、より充実した世界的ネットワーク、特定地域に係る専門知識、広範な海外顧客基盤、金融サービス機能、市場分析能力を有することがありえます。三井物産及び連結子会社が、顧客の求める革新的かつ総合的なサービスを競争力あるコストにより提供できない場合、市場におけるシェアや顧客との取引関係の喪失につながり、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

- 金利リスク

 三井物産及び連結子会社は金利変動に係るリスクを有しており、金利変動は営業費用全般、並びに金融資産・負債の価額、とりわけ資本市場及び金融機関借入により調達される負債の価額に影響を及ぼします。金利水準の上昇、特に日本及び米国における上昇は、三井物産及び連結子会社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 三井物産及び連結子会社の資金調達の状況については、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(5)流動性と資金調達の源泉」及び連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示」をご参照ください。

 

- 確定給付費用及び確定給付債務に関するリスク

 国内外の国債等の債券や上場株式の価格下落は、三井物産及び連結子会社の制度資産の価値を減少させます。制度資産の価値の下落あるいは確定給付制度債務の増加は、その他の包括利益及び利益剰余金の悪化により、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 確定給付費用については、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」及び連結財務諸表注記事項19.「従業員給付」をご参照ください。

 

- 訴訟及び紛争に関するリスク

世界各地で展開する事業活動において三井物産及び連結子会社は、訴訟や紛争のリスクにさらされています。また、通常の事業活動において、三井物産及び連結子会社に対する訴訟その他紛争が偶発的に発生し、また訴訟にはいたらないものの、クレームが提起される可能性があります。

訴訟その他の紛争には不確実性が伴うため、三井物産及び連結子会社が関与する訴訟その他の紛争の最終的な結果を予測することは不可能です。三井物産及び連結子会社が、いかなる訴訟その他の紛争にも勝つ保証はなく、また、これらの訴訟その他の紛争が、将来、三井物産及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。重要な係争事件については、連結財務諸表注記事項27.「偶発債務 (2)係争事件」をご参照ください。

 

・IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合があります。この前提条件の置き方などにより、三井物産及び連結子会社の経営成績や財政状態に影響を及ぼすことがあります。詳細は、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」をご参照ください。

 




※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。

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