三井倉庫ホールディングスグループの企業集団は三井倉庫ホールディングス、子会社73社及び関連会社8社で構成され、その業務は倉庫保管・荷役、港湾作業・運送、海外における物流サービス・複合一貫輸送、航空貨物輸送、3PL、サプライチェーンマネジメント支援、陸上貨物運送等、様々な物流サービスを有機的・効率的に顧客に提供する物流事業とビル賃貸業を中心とする不動産事業であります。
三井倉庫ホールディングスは重要性の判断基準により、72社を連結子会社に、5社を持分法適用関連会社として組み込み、連結決算上の対象会社としております。これをセグメントとの関連で示せば、次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において三井倉庫ホールディングスグループが判断したものであります。
三井倉庫ホールディングスグループは、事業環境が急速に変化する状況下において更なる飛躍を遂げ、持続的な成長を果たしていくためには、企業グループとしての存在意義を見つめ直す必要があるとの認識から、2022年5月に『グループ理念(Purpose、Vision、Values)』を制定するとともに、2023年3月期を初年度とし、2027年3月期を最終年度とする5ヵ年計画『中期経営計画2022』を策定しております。
<グループ理念>
グループ理念を経営の最上位概念として位置付けた上で、本グループ理念のもとで策定した中期経営計画を推進することで、中長期的な企業価値向上を図るとともに持続可能な社会を築き、ステークホルダーの皆様と社会の期待に応えてまいります。
Purpose(存在意義)
「社会を止めない。進化をつなぐ。」
Vision(中長期的に目指す姿)
「いつもも、いざも、これからも。共創する物流ソリューションパートナー」
Values(価値観・行動指針)
PRIDE 社会を止めないことの責任と誇り
CHALLENGE 顧客視点と社会視点の、提案力と実行力で挑む
GEMBA 現場は原点であり、進化の起点であり続ける
RESPECT 多様な個を受け入れ、新たな価値を生み出す
<中期経営計画2022>
2022年3月期を最終年度とした5ヵ年の前中期経営計画では、前半3年間を反転期と位置付け事業収益力の強化と財務基盤の再建に注力し、後半2年間では持続的成長に向け、圧倒的現場力の構築、一気通貫の統合ソリューションサービスの構築、ESG経営の3点に重点的に取り組んでまいりました。その結果数値目標を全て達成、反転を成し遂げ、今後の持続的成長の礎を築くに至りました。
『中期経営計画2022』ではこれまでの取組みを「深化」させることで、更なる成長を実現してまいります。本中期経営計画の5年間では、お客様から信頼されるファーストコールカンパニーとして、「グループ総合力結集によるトップライン成長」、「オペレーションの競争力強化」、「深化を支える経営基盤の構築」の3つを成長戦略の柱とし、積極的な投資とともに攻勢に転じてまいります。
成長戦略
① グループ総合力結集によるトップライン成長
三井倉庫ホールディングス独自のビジネスモデルである統合ソリューションサービスの深化、競争優位性のある提案力と実行力を備えたサステナビリティ対応ビジネスの拡大、グループの幅広い顧客基盤と各物流機能を最大限に活用した業際業務の深掘を推進します。
② オペレーションの競争力強化
徹底した標準化への取組みを深化させることで、人の力とテクノロジーの力を融合した「圧倒的な現場力」を実現します。業務品質の向上による競争優位性を確保し、更にはオペレーションのローコスト化による収益性向上を目指します。
③ 深化を支える経営基盤の構築
以下の4つの側面から経営基盤の強化を図ります。
DX ビジネスモデルの変革や企業風土の改革
共創 イノベーションを生み出す仕組みづくりや各種プラットフォーマーとの提携強化
事業アセット オフィスビル/物流施設の新規開発、既存施設の資産価値向上、職場環境の改善
ESG 脱炭素社会実現への取組み強化、人的資本への投資拡充、ガバナンスの強化
財務戦略
前中期経営計画では財務基盤の再建を図るべく、投資を抑制し、有利子負債の圧縮に取り組んでまいりましたが、『中期経営計画2022』においては前中期経営計画で確立した財務基盤と収益性を軸に積極的な投資と株主還元強化の両立を目指します。
・総額1,300億円の投資を実施
-DX投資、新規設備投資(物流/不動産)、M&Aなど成長領域への戦略投資に1,000億円
-通常投資(既存施設の維持/更新投資)に300億円
・配当性向30%を基準とした株主還元の強化
・最適D/Eレシオ1.0倍を基準とした調達と運用
・高水準な資本効率の継続を目指し、ROE12%超を目標に設定
数値目標(2027年3月末)
営業収益 |
3,500億円 |
営業利益 |
230億円 |
営業キャッシュ・フロー |
300億円 |
三井倉庫ホールディングスグループは、日本、北米、欧州、北東アジア、東南アジアを中心に物流事業を行い、また日本において不動産事業を行っておりますが、これらの事業活動に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、下記は三井倉庫ホールディングスグループの事業その他に関し、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、ここに記載されたものが三井倉庫ホールディングスグループの全てのリスクではありません。
(1) 経済環境の変化
三井倉庫ホールディングスグループの主たる事業である物流事業において、荷動きは、世界各国の景気動向の影響を受け、また社会情勢の不安定化によって影響を被る可能性があります。特に、主要な輸出入国である北米、欧州、日本、中国及び東南アジアの景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、在庫の減少、域内運送の減少、国際間輸送の減少や価格競争の激しいマーケットにおける収受料金の下落を招く可能性があります。
また、不動産事業においては、主な物件が首都圏に位置しており、特に首都圏の賃貸オフィス市場の需給バランスや市況動向の影響を受ける可能性があります。
(2) 公的規制の変化
三井倉庫ホールディングスグループは、事業を展開しております各国において、事業・投資の許可を始め、保管、作業、運送、通商、独占禁止、租税、為替管理、気候変動、環境、各種安全管理等の法的規制の適用を受けております。これらの規制を遵守するためコスト増加となる可能性があります。また、遵守できなかった場合は、三井倉庫ホールディングスグループの活動が制限され、事業及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 業界構造の変化
国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少等に起因し、産業界全体においてサプライチェーンを維持するために必要な人的リソースの不足が深刻化しており、これを背景にIoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの利用が拡大しております。労働集約型である我々物流業においては、デジタル化・装置産業化が進展する中で、業種間の垣根が低くなり、異業種の参入を招くリスクがあると認識しておりますが、その一方で、機械と人の融合による「現場力」、お客様のサプライチェーンの高度化に資する「ソリューション提案力」、さらには、それを支える「人材」の重要性についても強く認識しております。
三井倉庫ホールディングスグループでは、圧倒的な現場力の構築をすべく、業務プロセスの見える化、標準化を進めることで物流品質の改善、底上げを図り、その上でIoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーを利用した省力化、省人化にも積極的に取り組んでおります。また、グループ連携を強化し、フルスペックの物流サービスによりお客様のサプライチェーンにおける課題解決に向けたソリューション提案を通じて他社との差別化を図っております。それらを下支えする人材については、継続的かつ積極的な採用活動や、教育研修による育成を行うだけでなく、「安全、多様性、働きがいのある労働環境の実現」をESG経営のマテリアリティ(重要課題)の1つに定め、従業員のモチベーション向上にも取り組んでおります。それにもかかわらず、一連の取り組みが計画通り進捗しないことで、他社に対する優位性が低下した場合には、三井倉庫ホールディングスグループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 為替レートの変動
三井倉庫ホールディングスグループの物流事業の売上のうち、国際間輸送では、US$建ての海上運賃、航空運賃が多くを占めております。従いまして、円建ての連結損益計算書では、円高は売上高の減少となります。
また、海外の連結子会社の売上高、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円貨換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨による価値が変わらなかったとしても、計上する円貨換算額が変動する可能性があります。
(5) 金利の変動
三井倉庫ホールディングスグループは、物流という社会インフラを支える企業の使命として、安定的に事業を継続するために、必要な設備の新規投資や更新を行っております。有利子負債の適正水準維持に努めるとともに、必要な設備資金及び運転資金は主として外部借入により調達しております。
固定金利による長期の安定的な資金調達を行っておりますが、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。
(6) ESGの重要性の高まり
ESGに対する世の中の関心は年々高まっており、SDGsへの取り組みなど環境、社会、ガバナンスの3つの課題への対応は今後益々重要となります。三井倉庫ホールディングスグループは、「物流」という重要な社会インフラを支える企業として、新たな価値を創出することが事業を運営していく上で重要であると考え、「共創を通じた持続可能で強靭な物流サービスの提供」、「安全、多様性、働きがいのある労働環境の実現」、「積極的な環境負荷低減による脱炭素社会・循環型社会への貢献」の3つを三井倉庫ホールディングスグループのマテリアリティ(重要課題)として特定しております。
「共創を通じた持続可能で強靭な物流サービスの提供」については、お客様の物流を止めないこと、ソリューションを提供しお客様の課題を解決していくことが社会課題解決と企業価値向上につながると考えております。「安全、多様性、働きがいのある労働環境の実現」については、働く人からも選ばれる会社を目指し、働き方の多様化への対応や、社員やその家族を大切にする制度・環境の整備、安全確保等への取り組みの他、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権尊重の取り組みについても積極的に推進しております。「積極的な環境負荷低減による脱炭素社会・循環型社会への貢献」については、運送等環境負荷が大きい業務を行っている我々物流事業者の取り組みは欠かせないと認識しており、CO2排出量削減など環境負荷の低減に関する具体的取り組みや、TCFDの枠組みに沿った情報開示の充実に取り組んでおります。
このように重要課題の解決に向けグループ全体で取り組みを実施しておりますが、これらの取り組みが遅れた場合や対応を誤った場合には、レピュテーションの低下や投資対象からの除外など、三井倉庫ホールディングスグループの持続的成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 災害や社会インフラの障害等の発生
三井倉庫ホールディングスグループでは、災害、テロ、感染症、その他の要因による社会的混乱の発生等に備えて損害を最小限に留めるために、日常点検・整備の実施、発生時の対応マニュアルの作成・更新、事前の訓練等必要な措置を講じておりますが、地震、風水害等の災害の発生、あるいは停電、通信回線の不通等の障害の発生による被害を完全に防止できる保証はありません。これらの被害が発生した場合、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
また、三井倉庫ホールディングスグループは、情報システム技術を利用して、顧客に物流情報等を提供しておりますが、災害、障害、あるいは事故、犯罪等の発生により、これらの情報提供サービスに支障が発生する可能性があります。
(8) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
三井倉庫ホールディングスグループは、北米、欧州、中国を始めとする北東アジア及び東南アジア、南アフリカ、南米で事業活動を行っておりますが、これらの地域への進出には以下に掲げるようなリスクが内在しております。
① 予期できない法律または規制の変更
② 事業活動に不利な政治または経済要因の発生
③ 未整備な社会インフラによる影響
④ 税制等の変更
⑤ 戦争、テロ、感染症、その他の要因による社会的混乱
(9) システムに関するリスク
三井倉庫ホールディングスグループは、物流サービスを、より高品質で、より効率的に提供すべく、事業運営のシステム化を積極的に推進しておりますが、システムの高度化、各システム相互間の接続や通関性増加、あるいは社会一般的にサイバー攻撃が増加・巧妙化している中で、システム障害に関するリスクは年々高まっており、当該リスクを防止・低減させることも益々重要になっております。
このような状況に対して三井倉庫ホールディングスグループとして、持株会社にグループ全体のシステム運営・管理を担う専門組織である情報システム部を設置して、システム障害発生を防止するとともに、障害発生時にはその影響を低減しつつ早期に復旧させられるように、包括的・多面的なシステム運用体制を構築しています。また、社員教育の強化やシステム障害発生対応訓練の実施等、ソフト面での対応強化も行っております。
それにもかかわらず、社内要因(自社要因)、あるいはサイバー攻撃等の社外要因によりシステム障害が発生した場合には、物流サービスを提供することが困難となる可能性があります。
(10) 情報漏洩に関するリスク
三井倉庫ホールディングスグループは、事業活動を通じて取引先の機密情報やお客様の個人情報を保持しておりますが、情報全般の取り扱いに関する社会的な意識の高まりや、各国政府等によって定められる関連法規の強化等を踏まえれば、当リスクに適切に対処する必要性は一層高まっております。
三井倉庫ホールディングスグループでは、情報資産の保護、管理に関して、情報セキュリティ委員会を設置して情報漏洩防止、外部ネットワークからの不正侵入の防止等に関わる全社的対応策を実施しております。また、グループ全体のシステムを対象に継続的な点検を行い、システムの脆弱性を早期に検出して対応する等、情報漏洩を未然に防ぐ対応を実施しております。
しかしながら、情報が不正に外部流出した場合には、損害賠償請求を受けたり、各国政府から制裁金や課徴金の支払いを命じられたり、あるいは顧客や社会からの信用・信頼が失墜して競争力が低下するといった可能性があります。
(11) 保有資産の時価の変動
保有資産の時価が大幅に下落し、かつ当該資産から十分なキャッシュ・フローが見込めない場合には、減損が発生する可能性があります。
また、投資有価証券に関しましても、市場価格のない株式等以外のものにつきましては時価が30%以上下落した場合に減損計上し、市場価格のない株式等につきましては当該会社の実質価額が50%以上下落し、かつ回復可能性が見込めない場合に減損処理しておりますので、将来の株式市場の変化または投資先の財務状況の悪化により減損が発生する可能性があります。
(12) 退職給付債務
三井倉庫ホールディングスグループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は退職給付債務については即時に認識され、退職給付費用は将来にわたって規則的に認識されるため、将来の費用に影響を及ぼします。
また、三井倉庫ホールディングスは、退職給付会計が導入された2001年3月期に退職給付信託の設定を行っており、毎期末の信託している株式の時価の変動により発生する数理計算上の差異につきましても、退職給付債務は即時に認識され、退職給付費用は将来にわたって規則的に認識されております。
従いまして、割引率の低下、運用利回りの悪化、あるいは信託株式の時価の低下は、三井倉庫ホールディングスグループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13) 固定資産の減損
三井倉庫ホールディングスグループは、有形・無形の固定資産を所有しております。
これらの資産については、その価値が下落した場合や期待通りの将来キャッシュ・フローが見込めない状況となった場合、減損処理が必要となり、三井倉庫ホールディングスグループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)借入金の財務制限条項
三井倉庫ホールディングスグループの借入金の一部については、シンジケートローン契約を締結しております。当該契約には、融資契約上の債務について期限の利益を喪失する財務制限条項が定められており、これに抵触した場合には、三井倉庫ホールディングスグループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
※金融庁に提出された有価証券報告書のデータを使用しています。
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